やまけんの出張食い倒れ日記

夏こそ熱いものを食べるべし。 熱々モンゴル火鍋「天香回味」はオールシーズン対応の絶品!

「山本さぁ~ん、いやねぇ、すぅごく美味しい鍋なんですよぉ~ スープを飲んだとたんに汗が噴き出してくるんですよぉ、、、」

凄腕ベンチャーキャピタリストにしてグルメなF氏は、前の会社時代に大変お世話になった方だ。空前のITバブル期が弾け、一気に冷え込んだ冬の時代にも、前の会社を守り続け、黒字に導いてくださった恩義ある方なのである。そして僕が会社を辞して独立することになった時も、「で、どうするの?」と気を揉んでくださり、無事に暖簾を掲げた今でも公私に渡り気にかけてくださる。僕が足を向けて眠れない方である。

その彼が「旨い」と言うのだからそれは間違いなく旨いはずなのだ。

「あのね、僕が数年前に飲茶でもしようと思って入ったら、そこのオーナーが出てきて『飲茶は今、できない』っていうんだよ!品書きには書いてあるのにね。で、何が出来るのって訊いたら『モンゴル発祥のスゴイ鍋が食べられる!』っていうんだよね。冬でもないのに鍋かよ、まあいいかって思って頼んでみたら、、、これが凄かったんだよ!」

という話で、再三お誘い頂いていた店に、満を持して行ってみることにした。ちなみに、F氏のオフィスに伺う時にいつもお茶を出して頂くKさんが超美人で、前の会社の社長とは「今日は俺がいくよ」「いや僕が行きます」といつも報告の取り合いをしていたものである。今回はそのKさんと、もうひとかたの生え抜き美女を連れてきてくださるという!むっふっふ、、、

 ちなみに、空前の猛暑が続いているが、こんな熱い時にこそ、温かいものを食べた方がよい。夏はどうしても水物やつめたいものを食べてしまいがちだが、そうするとどんどん内蔵特に腎臓が冷えていき、ダメージが貯まる。秋にかけてだるくなったり調子が悪くなりがちな人は冷えが原因だ。だから、努めて温かい飲み物と、東洋医学で言う「陽」の特質を持つ食べ物をとる方がいい。本日は汗をダラダラと流しながら鍋を囲むという寸法なのだ。

 さてその店は、日本橋三越本店の裏の通りにある。日本橋三越には僕の親父が長らく勤めていたので、あの入り口にある獅子の像を観ると子供の頃を思い出す。日本橋はちょっとだけ郷愁を感じる場所だ。

 裏側には飲食店がずらりと並ぶが、そのビルの中に、かなり立派な高級中華風の店構えがあった。

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■テンシャンフェイウェイ
東京都中央区日本橋室町1-13-1
(地下鉄銀座線三越前駅A4出口から徒歩1分 )
03-5255-7255


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店内は広々としている。すでにF氏は馴染みなので、にこやかに上の階に通される。店内は落ち着いた調度でゆったりしており、そして驚いたことにこの真夏日が続く中、すでに数組の客が鍋を突いている。

「開店したての頃はあまりお客さんが入ってなかったんですけどねぇ、最近は結構有名になりましたよ。」

ちなみにこの店、台湾の台北市で開業されたらしい。台湾生まれのモンゴル鍋という、ちょっと複雑な生い立ちなのだが、そのルーツ等は他のWebを参考にされたい。

■この店について書かれている他のページ
http://www.tabitabi-taipei.com/html/data/10155.html

さて
3980円の鍋コースを頼むと、早速くだんのスープを満たされた鍋が卓上に運ばれる。

中国の火鍋のように、2つに区切られ一方は真っ赤、一方は白濁したスープである。同席の女性陣から「わぁ~辛そう」という声が挙がる。

「いや、このスープ、辛そうに見えてそれほど辛くはありませんよぉ」

と仰るF氏の言葉通りであった。「まずはスープを」と店の人が一口飲ませてくれたスープは、辛みは無論あるものの、それとは別種の力強さ、熱があって、飲んだ瞬間に胃の府にジンと染み渡る暖かさを感じた。

味も旨い。まだ素材からでるスープが出ていない段階で、十分に濃い。薬膳臭さはなく、複雑な組成の旨味が感じられる。

「このスープには60種類の素材が使われております。どれも漢方としての薬効があるものばかりですから、これを飲んでいれば体の調子がよくなります。」
「そうそう、本当に変わるんですよ!きっと今夜から身体の調子がよくなりますよぉ!」

なるほどぉ、、、

 基本的に食べ物の気というのは、口に入れた瞬間に大体感じることができる。この鍋は落ち着いた陽のバランスがとれている。冷えやすい女性には特によい料理だと思う。

さてその説明をいただきながら、なかなかに旨い前菜が運ばれてくる。

■アワビタケの刺身

アワビタケというのは茸なのだが、食感がクニクニしていて本当にアワビのようである。また、旨味も豊富で、刺身醤油で食べるだけなのに滋味深い。

中国は茸については本当にいろいろな種類があるようだが、日本で食べられるものは多くない。どんどんこういうのを食べていきたいものだ。

■棒々鶏 カラスミ載せ

「ああ、これなんか、前はもっとカラスミがドンドン!と載ってたんだけどなぁ、、、」

とF氏が悔やむが、しかし十分なボリュームでカラスミが載ってくる。蒸し鶏との相性もなかなかに妙で旨い。

そうこうしているうち、鍋のスープがぐわぐわと煮立ち始めた。

これに、店の人が素材の説明をしながら具を投入していく。

「これは若竹の子ですね、これはタモギタケ、、、」

具材には野菜がとにかく多め、それもつまらない野菜ではなく、味が出るものであったり、下ごしらえをしていたりと多彩である。

鍋はたちまちの内に混濁状態となり具で満ちる!食べ時である。

熱々の具材を取り、スープを満たしていただく。

「うお、旨いなこれ!」

叫びたくなる旨さではなく、じんわりとした旨さである。見た目の派手さとは逆に、落ち着いた味なのである。外食はどうしても刺激が強くなりがちで内臓に負担がかかるが、この鍋料理、実にそうした身体へのインパクトが配慮されており、ホンモノの健康志向を感じる。そして、健康なだけではなく、あきらかに旨い!

 具材には東南アジアっぽい、各種つみれ団子が投入されるが、このすり身がまた旨い。丸のニンニクも柔らかくなるまで煮込まれており、これを崩しながらすり身と合わせると実に旨いのだ。
 また、気に入ったのはタモギタケという茸だ。日本ではあまりこれも見かけないが、ブナシメジを大きめにして食感をもっとはっきりとさせ、かつ旨味を加えたような茸で、非常に旨い!

 また、野菜が非常に旨い。なんの変哲のないキャベツも、このスープで煮ることで陰陽が調整され、旨味を引き出されるようである。ありそうでない野菜料理の旨い店としても、この鍋はお勧めできる。

 最初、汗がブワッと噴き出すのではと思っていた赤いスープも、実は落ち着いた辛さで、無茶な激辛ブームの産物とは全く違う。白いスープは、白濁具合が物語るように奥の深い旨さである。いや、これは旨い。

 無論、一日3リットルくらいの汗をかく僕は、Tシャツがびっしょりになってきている。確実に内臓が温まっている。女性陣も心地よさそうだ。そう、クールよりウォームがいいのだ。みんなハッピーになる。


最後、翡翠色の麺(クロレラを練り込んである)を投入。ツルツルとしていて旨い!満腹なんだが心地よい、つらさのない満腹加減である。

デザートはもちろん台湾で人気のコレだ。

黒いゼリーがヒンヤリと内臓を潤す。


「どうですか やまもとさぁ~ん 旨かったでしょ?」

「いやこれは絶品です!」


F氏は僕にこういわせてにんまりしておられる。
ちなみにF氏は若かりし頃(今も若いが)タイに数年駐在し、その際には美味中の美味を味わっていたようだ。舌の肥えた先達がこの世には無数にいらっしゃる。わたくしは謙虚に素直に謹んで着いていきたい!だから皆さんまたいいとこ連れてって!

 外に出ると、温風のような風が涼やかに感じた。身体の内と外、両方を磨きたい人には最適の店である。くれぐれも暑い夏、冷たいものばかり飲まぬよう。半身浴などして腎臓を暖めるようにしていただきたい。