やまけんの出張食い倒れ日記

超異常寒波で野菜は高騰。環境変化によって大変な時代が始まる。しかしこの寒さで長島農園野菜が冴え渡っている!

随分前になるが、異常気象というのが常態化して、いまや「超異常気象」であるという新書本が出て話題になった。しかし今やこの超異常気象というのが常態化してしまっている。ここ連日報道されているドカ雪などのニュースに接するたび、今後の世界的な食糧事情の変動を考えずには居られない。

「食糧生産は地球のどこか効率のいいところで行い、それをグローバルな貿易網で利用し合えばいいのだ」

という基本的なグローバリゼーションの考え方と、日本の農業は自由化(外的には貿易自由化、内的には農地法などの規制緩和)の方向へ動くべきだとする論がセットになり、強い流れとなっている。

しかし、上記は「毎日太陽が昇るように、いつまでも食糧は生産され続ける」というような楽観論に基づいたものだ。そして今日の超異常気象や世界的な食糧関連のレポートをみれば、穀物作物などが今後減少していく可能性の方が高いと言える。しかも農業者に対する政治的な締め付けは日本だけではなく先進国全体で強く、今後生産者自身が減少する傾向になるのではないかと思っている。

今回の大寒波によって野菜の値段が高騰しているのがよくニュースになるが、この価格が「高騰」ではなく「通常」になる日も来るかも知れないのだ。大体今の野菜の価格は安すぎるしね、、、
ということでこの大寒波&野菜高騰を、単に「やだなぁ」と思うだけではなくて、来年以降もこうなるかも知れないのだから、日本の食糧供給を如何に安定させればいいのか、ということを考える一つの機にしてみるのもいいのではないか、と思う。

で、
我が家では三浦半島の長島農園から送ってきてくれた冬野菜群でありがたく年を越した。

「今年はね、白菜がシビレルほど旨いですよぉ!」

という勝美君の言葉通り、寒波によって霜に強く当たり、甘みが増した白菜は絶品だった!

堅く締まった中身の黄色い部分が最も甘い。
惜しげなく鍋物等に使わせてもらったが、塩をして2週間ほど漬けて古漬けにしても最高だろうな。


長島農園のホウレンソウは、まったりした味になるのが土質的な特徴だと思うのだが、今年のはしゃっkりした食感と甘みの強さがあり、これも寒波の影響かと思うが実に旨い!

寒波の影響で西日本にはこれからしばらく不足するだろうサラダ菜がまた旨い。


酢のきいたドレッシングに和えると、しんなりしてたくさん食べられる。ジューシーで、少しほろ苦いのがイケル最高のサラダ具だ。

葉と根の間が紫色になるミニ大根が意外に万能的な旨さで驚いた。

綺麗な紫のアントシアン色素を活かそうと、洗って一本丸ごとを下ゆでして、雑煮の具にしてみると、長い一本のミニ大根がおおぶりの椀を一周する。葉は柔らかく、身も適度な歯触りになり、捨てるとことがない優れた野菜だった。

そして今回一番驚かされたのが長ネギだ。

勝美君は一昨年、僕の雑誌連載企画で葱の9品種食い比べをした時に気に入った「ホワイトスター」という品種を育てている。昨年度に彼が生産したホワイトスターはまずまずの出来、というレベルだったが、今年のは段違いに旨くなっていた!

「今年は窒素を可能な限り切って、リン酸を吸い込むように調整したんだよね。しかも三浦は寒波だけど雪が降っていないから、葱が甘く美味しくなる条件が揃ったんですよ!」

というが本当に素晴らしい出来だ。包丁で切った瞬間にジクッと染み出る果汁とみっしりと密に詰まった巻き、これを年越し蕎麦用に小海老とかき揚げにしたら絶品中の絶品だった。

味噌汁の具に、葱のみを少し火を通していれてみたが、これもまた絶品。
嫁さんが正月用に築地で最上の削り節を仕入れてきたのだけど、その出汁でとった味噌汁と葱の相性が抜群で、もう気が遠くなるかと思ってしまった。
最近、インスタント味噌汁を常用する家庭が多いらしいが、食べてみればこの違いは一目瞭然だ。他の支出(例えば携帯電話)を押さえてでも、基本食材にはお金をかけるという方向性になればいいんだけど。

ブロッコリの強めの食感と香りも秀逸。ただし株がかなり小さめなのは、寒波のための生育遅れで、これは仕方がない。

ちなみにブロッコリの実として食べている部分は、実は花蕾(からい)である。しばらくすると黄色くなってくるのは、花になるからなのです。

そして出ました三浦大根。スケールがデカイので全体が写せなかった!

三浦大根は、中太という姿形で、文字のごとく先端と根本が細く、中間が太くなる形状だ。つまり収穫の時に抜きにくい。現在主流の青首は生産しやすく収穫しやすいのだ。でも、年末には三浦大根の需要が発生する。ナマス用だ。

実際、塩で程よく脱水し、酢に漬けただけのナマスという料理で、これほどシャキシャキ感と深い風味を醸し出せる大根品種も少ないだろう。もちろん煮物にしても最高である。京都の聖護院大根と並ぶ美麗な品種だと思う。

キャベツは、あまりの寒さでアントシアン色素がでて紫がかっている。

結球野菜も寒さに当たると甘く美味しくなる!このキャベツも芯まで残らず楽しませてもらおう。

野菜が高いから野菜を買わない、という選択も仕方がないのだけど、この時期の野菜は本当に美味しい。元来野菜はご馳走なのだと思いながら、ぜひ買って食べてみて欲しい。おそらくいつもより野菜の味に敏感になるはずだ。