やまけんの出張食い倒れ日記

和歌山二日目は有田みかんを巡る日々となったのである。


今の和歌山といえば、有田ミカンを避けて通ることは出来ない。
愛媛の今治の産婦人科で生まれ落ち、そして関東で育った僕にとって、みかんとは長らく愛媛のものであった。実際、愛媛ミカンは関西以南にはあまり出回らない。流通の関係で、関東より北に出回る。そして和歌山のミカンは関西方面に出回るのが普通だ。だから関西では「愛媛ミカン」のブランドをあまりよく認知していない人が多いくらいなのだ。

醤油の発祥の地として有名な湯浅から山に登る。目指すは、この辺で3町歩、全体で5町歩という広大なみかん園をもつ山下さんの園地(えんち)だ。


この風景に写る斜面の園地すべてが山下さんのものである。右側の方はオレンジのミカンの実が見えないが、早生ミカンをすでに取り終えてしまったからだ。今年は極端な不作。いつもなら残してしまうようなところも採らないと、需給に追いつかないのだ。

凄まじい急斜面を、昔は肥料袋を担いで登ったらしいが、モノラックという、モノレールのように一本のレールを敷設し、レール下部に仕込まれた溝に歯を噛ませながら登るエンジン付きの乗り物で登るようになった。これができたことで果樹の管理は相当に楽になったのだ。

「うちのは30年前から使ってます」

と、若手の山下さんが持つモノラックは、手入れがいいのか30年前のものとは思えない綺麗なもので、すぐにエンジンがうなり声を上げた。

生産者団体の集荷担当の上田君とともに後ろに乗せてもらう。背もたれなんかはついていないので、落ちないように片手でモノラックのフレームを持ち、片手にカメラをもって後ろを振り向いて写真を撮るのは至難の業だ。

ミカンを詰めたコンテナを大量に積載してもちゃんと稼働するモノラックは、人間4人が乗ってもぐんぐんと進んでくれる。そのスピード感は、下の写真の左側の風景のブレからもわかってもらえるだろう。

ミカン山の上に立つ。向こう側の斜面は実がとりつくされて緑色しかない。いまこちら側で収穫しているのは中生(なかて)の品種だ。極早生(ごくわせ)、早生、中生、晩生(おくて)と品種群は連なる。

「うーん、山下さんのところは管理がいいですよ。」

と上田君が感心する中、下の方から再度モノラックが、カメラマンの八木澤さんと編集のI女史を乗せて上がってくるエンジン音がブブブブと響いてくる。


この疾走するスピード感!
モノラックはミカンだけではなく、斜面で栽培する果樹全般と、そしてお茶生産地でよく使われている。

それにしても今年はミカンが不作だ。
もともと今年は裏年といって、ミカンの不作は最初からわかっていたことだった。
ミカン類には裏年と表年というのがある。専門的には「隔年結果」と言って、全国的に一年ごとに豊作と不作になる現象を言う。日本のミカンの樹が一斉に、同じように不作になったり豊作になるのだ。今年は裏年なので、どこの産地もミカンの収量が少ない。

この隔年結果がなんで起こるのか、どうやれば回避できるのかは、実は一部では知られていて、僕も昨晩のクエ鍋を囲む席上で篤農家(とくのうか=優秀な農家さんのこと)であるマッちゃんに、その驚愕の理論を聴くことができた。そういうことだったのかぁ、、、と言う感じだ。

今年は裏年なのだが、ミカンの味は非常に佳い。これもまたよくわからない話だが、温暖化が関与しているかもしれない。実は今回尋ねた農家さんが異口同音に言っていたのが、最近、ミカンの実が収穫前に落果する率が例年より高いのだそうだ。これは温暖化が原因らしい。ミカン産地もこれからやりにくくなるだろう。

それにしてもミカン山は美しい。
有吉佐和子の「有田川」はこのミカン山で起こる悲喜こもごもが美しく描かれている名著だが、その現場だなぁ、としみじみ嬉しくなる。

それにしても山下さんとこは5町歩もみかん園をするなんて、すごい豪農だ。なんといっても5町歩といえば100メートル×100メートルが5つ分なのである。気が遠くなる面積だ。

ため池まで降りていくと、その脇になんと昨日のなれ鮨を巻いていた葉である「アセ」が群生していた。

殺菌力をもった葉でなれ寿司やおにぎりを包むことは、この辺では常識だったのだ。

一路、別の農家さんの園地へ向かう。

これが有田を上から眺めている状態だ。


ここの農家さんは、地元でも有名な篤農家であり、そしてホントに有名な釣り師でもある宮井さんだ。釣り具メーカのシマノのフィールドテスターでもあるらしい。

またもやモノラックでぐんぐんと登っていく。


ほんの5メートル高度が変わるだけでも風景が変わる!



こちらも中生の品種だ、美しい。


帰りのモノラックは、行きと逆で下方向にグワッと傾く。


宮井さんの自宅兼倉庫で、面白い品種のミカンをいただいた。

このミカン、通常のミカン品種に比べて果糖の含有量が高く、甘さが直接的に舌にビビッと強く感じるみかんなのだ。

まだ植えて何年も経っていないので100ケース程度しかでないらしいが、、、これは面白い品種だった。


さて食い倒れの旅は続く。
地元の学生御用達だった洋食「グリルカレー」へ。



カツハヤシ、甘くて深みのあるドミソースが旨い!

一番豪勢なCランチ、ステーキとハンバーグ、そして海老フライという文句なしの合わせ技だ。

オムチーズ海老フライ載せグリルカレー。ルーが足りなくなったら所望。

オムライス大盛りは凄まじいご飯量であった!

でも、これを隣のテーブルのおっちゃんはぺろりと平らげていた。恐るべし和歌山、、、

家族の肖像。長女さん(右)はホテルの厨房で修行していた方で、これから店を継ぐそうである。

「来月には店内の壁のクロスとかを綺麗にするから、また撮りにきてよ!」

はい、了解です。

そして地域のファーストフード店「玉林園」へ。和歌山県人であれば、アイスクリームはここの「グリーンソフト」がスタンダードであるという。それと「てんかけラーメン」。これは僕も初めて食べる。




グリーンソフト、てんかけラーメン、たこ焼き、スタミナラーメン。お味の方は、週アスに書きますです。

最後、和歌山ラーメン(中華)の新星・楠本家へ。ニューウェーブ和歌山ラーメンの旨さがここにあった!






もうはいらん。
この怒濤の一泊二日をアテンドしてくれた津田君、本当にありがとう!
さーてようやく熱も治まったし、今週はバリバリ行くぞ。