やまけんの出張食い倒れ日記

これは旨い、、、世界は広い。沖縄の豚肉文化の一端を見た、、、


沖縄で養豚業を営む小山さんという方から、「ぜひ食べてみてください」ということで加工品を送っていただいた。

 私は沖縄で豚を養っています。まだまだマイナーですが、西洋料理の数人のシェフからは「脂に甘味があってうまい」といった評価をいただいています。せっかくの豚肉を肉だけで売るのもつまらないと思い、数年がかりで加工品を開発し、去年から売り始めました。

 沖縄は日本で唯一、豚が皮ごと食肉になる地域です。そこで豚肉をこの皮ごとよく練って作ったソーセージを作りました。アツアツにかぶりつくと、ジュわっと肉汁があふれてくるのが特徴です。練り込んだ皮もこのジューシーさに一役買っていると思います。この技術を応用して肉だんごもこのほど作りました。

 もし沖縄にみえる機会がありましたが、ぜひ私どもにお立ち寄りいただけませんか。何もできませんが、とびきりの豚加工品を温めてお待ちしております。

ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
皮ごと練り込んで、ジュワッと肉汁が溢れてくるというそのソーセージが食いたいっ!

とりあえず次回沖縄に行くときにはぜひ伺いたいけど、その前にソーセージを買わせてください、とお願いしたところ、「こちらからお声がけしたのに買っていただくわけにはいかない」と、代表的な商品を送って下さった。

くだんのソーセージとロースの味噌漬け、そしてスーチカだ。スーチカは沖縄の伝統食で、塩漬けの豚肉保存食だ。イタリアのパンチェッタみたいなものだろうか。

予め書いておくと、僕はこうして送っていただいたものを片っ端から掲載しているわけではない。食品関連の仕事をしていればわかると思うけど、色んなところからサンプルや商品をいただくのが日常だし、それをいちいち掲載している時間はとてもなく、第一身が持たない。

しかし、この豚肉加工品群は大変に上質、旨かった!


皮が練り込まれたソーセージは、茹で上げたのにかぶりつくとパシンと柔らかい弾力を見せながら弾け、メールに書かれていた表現どおり肉汁がジュワッと溢れる。特筆すべきは、この肉汁が実にあっさりと上品な香りと味なのだ。沖縄の豚肉ということで、コクのあるストロングな風味を予想していたのだが、実に上品な味わいだった。しかしそれは味が薄いとかそういうことではなく、逆に実にじつに味がある豚肉だった。

それにもまして気に入ったのが豚肉の味噌漬けだ。


豚と味噌の相性は言うまでもなくよいので、美味しくないはずがない。けど、若干甘めで麦の香りのする味噌が、この上品な豚肉にしぶとさを与え、ご飯が進むことこの上ない。

スーチカは、バラと肩ロースの二種が入っていた。


バラはしゃぶしゃぶで、肩ロースは焼いて食べることが推奨されている。
佳い豚肉は、しゃぶしゃぶにしたときに肉の旨みが湯に溶け出さず、アミノ酸を細胞内に留めるものだということを養豚業者の人によく言われる。その伝えで行くとこのバラは確かに旨みが逃げない。
肩ロースはこんがり焼き目を付けて食べた。塩豚ではあるけれども、塩気をギリギリ最低限のところで抑えており、結果これも上品な仕上がりになっている。僕はもう少し塩を強くした方が料理に使うにはいいと思う、とメールしたところ、小山さんもそう思っているとのことだった。

「でも、豚肉の味がわかるということで、この味を好まれる方が多いんです。ですから、塩の濃さで数種類の商品を分けてもいいかと思っています」

ということだった。

さて
実はこの豚、僕はあたまから、沖縄の在来豚であるアグーではないかと思い食べていた。なぜなら、味噌漬け豚肉のロースの形状や、スーチカの切り身から想定できる肉の大きさが、通常のLWDよりは小さいサイズだと思えたことと、脂の上質さが、あぐーを連想させたからだ。

しかし!
この製品に使われているのは、なんと通常のLWDだったのである!
もちろん小山さんのところで飼養されたスペシャルLWDなのだが、、、

うちで「万鐘 島ぶた」と呼んでいるのは普通の三元交配です。アグーは、あきれるような価格になってしまうので、このような加工品にはとてもできないのです。品質のよい普通の三元交配を使い、安全でおいしい味を徹底追求していくのが、目下、私どもがとれる唯一の道です。

うちで飼っている豚の品種は、三元交配種(LWD)と純系アグーの2つです。前者はありふれた品種ですが、飼い方が普通と全く違うので、味や香りにかなりの違いが出るようです。肥育期間がだいぶ長いこと、自然の乳酸菌がヨーグルトの300倍あるとされる発酵床の上で、発酵床を遊び食べながらのんびり育つこと、配合飼料はあまりやらず、もろみ酢かすやパンのみみで作った自家製餌で育てていること、などが特徴です。

品種ももちろん重要なのですが、飼い方に徹底してこだわることで味や香りは全く違うものになります。この点をご理解いただければ幸いです。

先日の梅山豚のエントリにも書いたように、

品種×餌×飼い方

という豚の味の方程式がある。梅山豚は品種(梅山豚×留め雄)、餌(リサイクル自家配合)、飼い方(豚舎+放牧)という凄まじいオリジナルな方程式を持っているわけだ。

しかしこれはギリギリの経済性の中で成立しているものだ。年間出荷頭数1000頭規模という絶妙な希少性の中でバランスしている。通常の養豚家ではおそらく経済性と品質、そして価格を両立できないだろう。

多くの養豚家はLWD((ランドレース×大ヨークシャー)×デュロック)という三元交配品種を用いる。それは、経済的に最も優れ、かつ大多数の消費者のニーズに適しているからだ。
そして、意欲的な養豚家は、LWDの品質向上を追求する。それは品種以外の要素、つまり餌と飼い方を最適化していくというものだ。あるものはコーンを中心とし、あるものは大麦主体の給餌というように探求をしていくわけだ。

「万鐘 島豚」はLWDとのことだが、加工品の肉質を見る限り、かなりの高品質だと思う。いやーてっきりアグーだと思いました。自分の不明を恥じます。ていうか、このLWDで十分じゃないか。ということで、最近のいただきものの中で極めてビックリしたものとして、エントリに書くことにした。

下記でものを買うこともできるらしい。
■万鐘島豚
http://www.bansyo.co.jp/

小山さんには、次回沖縄来訪時はお伺いしたいとお願いしておいた。
いまから楽しみだ、、、
それにしても本当に豚は奥が深い。もっと勉強しなければいけない。