やまけんの出張食い倒れ日記

山形が世に問う米の新品種「山形97号」はコシヒカリとどう闘うのか!?と考えながらそばをはしごするのであった

ちょっと体調不良だったのだけど、山形へ出張。14:30からの会合の前に、かなり昔にいって感動した「一寸亭」に寄ることにする。

山形には「冷たい肉そば」というジャンルのそばがある。これは他県にはないもので、ドンブリにキンキンに冷たい汁が張っており、これまた冷たく締めたそばが入り、そこに鶏肉の煮染めた肉片が浮いているのである。

汁はかけそば用の甘汁ではなく、鶏ガラなど肉からとった出汁が配合されていて、こくがある。しかし脂は冷やした段階で取り去ってしまうようで、一片も浮いていない。肉系のスープだがキンキンに冷えており、くどいところはほとんどなく、腰のあるそばにビシッとマッチする非常に美味しいそばである。

これを初めて食べたときは本当に感動して、

「山形県人は天才だ!」

と思ったものだ。その、初体験が山形駅からタクシーで1200円程度の「一寸亭」なのである。
5年ぶりくらいにのれんを潜り、ランチセット(ミニ天丼がつく)の肉そばを頼む。5年ぶりにたべるそれは、しかしちょっと期待値が高かったのか、やや満足感を覚えぬものであった、、、
うーむこれはどういうことだろうか。やけに汁があっさりしていて、細めの麺との絡みがそれほどよいと思われない。全体的に満足感を感じない。
同じく肉そばだが、非常にこゆい味で有名な朝日町の「太郎亭」の味に慣れてしまったからだろうか?

やや不満だったので板そばも頼んでしまう。

中太の仕上がりの麺、まずまずである。
何とも釈然としない気持ちのままに山形キャッスルホテルへ。

本日は「山形97号ブランド戦略会議」という、かなり大変なイベントに出席していたのである。

これは、山形県で育種された米の新品種「山形97号」をどう売り出していくか、という戦略を練る会議である。なぜか僕も委員に任命されたのだが、他のメンバがそうそうたる顔ぶれであった。第一、県知事が最初から最後まで3時間近くも列席したというところに、山形県としての強い意気込みを感じる。だいたい、メンバの中には、今をときめく庄内の「アル・ケッチャーノ」の奥田シェフや、「吉兆」の徳岡総料理長(この日は欠席)までが名を連ねているのである。

山形の主力品種といえば「はえぬき」である。また駅弁「牛肉どまんなか」で有名になった「どまんなか」もその一つだ。しかしどちらも、全国的には販売面で思わしい結果を残しているとはいえない。はえぬきは銘柄米の世界では5位なのだけど、コシヒカリのダントツ1位はいいとして、上位の米からは相当に水をあけられている。

ちなみに「はえぬき」は素晴らしい食味の米である。これは間違いない。
余り知られていないが、某最大手コンビニエンスストアのおにぎりの米は「はえぬき」である。
ただし、はえぬき米として明示的に販売されていることが少ないため、消費者の認知度は低い。また、優秀な農家の作ったはえぬきは最高だが、沢山の農家から集荷し混ぜて作られる米商品には、今ひとつ評価できないものも見受けられた。

しかし今回の山形97号は、食味計値からするとコシヒカリを超える可能性があるのである。

実際にコシと比較して試食したところ、香り、粒の揃い、粘り、食感といった点で、コシを越えるというよりもかなりオリジナルな上質さを感じた。端的に言って美麗に旨い。コシのように油脂や塩分が強いおかずと合わせるよりも、日本型、それこそ山形の漬物などに合わせると引き立ち合う味だと感じた。

いろいろお話しをして、解散。
NHKラジオの来週分の原稿提出を忘れていて、喫茶店で40分で書きあげて送信。その他もろもろの処理は帰りの電車に持ち越す。晴れて自由の身になり、山形県庁内でも有名なそばマニア・芳賀さんに連絡。

「じゃあ、やまけんさん好みの太めのそばを廻りましょう。」

まず連れて行っていただいたのが「水車」。

板そばを頼むと、つゆと薬味、漬物が出てくる。

あれれ?山形ではこの時期、小ナスの漬物が出てくることが多いんだけど、、、

「やまけんさん、コスト削減ですよ。蕎麦屋も景気に左右されるんです。」

うーんそうか、残念!

板そばはかなり立派な盛り。
そばに何もつけずにすすり込む。ブワッとした香りは立たないが、ぎしぎしと噛み込んでいくうちに香りがほどけてくる。なかなかに佳し。

ちなみに山形では薬味に一味が好まれる。これを、そばの上に一文字に線を引いていくのである。

こうすると、辛みよりも唐辛子のツンとした香りが薬味となり食を増すのである。

さて時間があるのでもう一軒。
大きな国道の脇にある、ドライブイン的外観の店「そうえもん」。



「こんな造りで、けっこうポピュラーな店ですけど、なかなか旨いですよ」

と芳賀さんが仰るのでかなり期待。

確かに旨し!
そばの香りの強さはこちらのほうがハッキリ感じられる。
それにしても板そば、しかも太めの麺のはしごは、後半戦に勢いが無くなりすすりにくくなる!
しかし芳賀さんはリズミカルに「ズッズッ、ズー ズズッ」という一定のパターンでそばを順次すすり込む。
太麺でそれをやるのは至難の業なのにな。さすがはご自身でも打たれる山形そば試合巧者である。

車中、今回の山形97号に限らず、育種の話をいろいろ伺う。芳賀さんはいまは県庁本体にいるが、もともとは農業改良普及員で、現場でバリバリに技術指導をしていた方である。山形県内にはいろいろと面白い品種があるにもかかわらず、宣伝がヘタだ。これは東北のどの県にも共通することなのだが、、、

さて山形47号、今後どうなるのだろうか。次回の会議は9月の予定。いまから楽しみだ。