やまけんの出張食い倒れ日記

日経新聞は「日本には農業は要らない」と考えているのですね。

木・金と青森二連戦。素晴らしい産地視察だった、、、 これはしばらく後に詳しくリポートしたい。

ところで、帰りの飛行機で日経新聞を読んでいたら、社説欄に正々堂々とこんなことが書かれている。

『FTAと農業改革の連動を』

・日本の農産物市場の開放が不十分である。
・日本も品目数で九割の自由化を目指すなど、市場開放の姿勢を鮮明に打ち出すべき。
・そのためには国内の農業改革を加速し、FTA戦略との連動を深めるべき。

要は、国際貿易上、輸出したい品目(自動車とか?)を拡大するためには、日本側が農産物の輸入に関して関税撤廃を薦めていく必要があるんだから、米・麦・乳製品などについても自由化しろよということだ。

いつも僕が日経新聞が卑怯だと思うことは、この記事のタイトルや内容を読むと、一見すると正論に読めるということだ。しかし「FATと農業改革の連動を」というタイトルで記事を書いているならば、その「農業改革」の中身をもっと詳細に、そしてFTAとどう連動するのかを書くべきだ。しかし、記事の大半は日本の農産物はまだまだ自由化にはほど遠い、という例証で、最後にほんの一文「農業改革を加速し、FTA戦略との連動を深めるべきだ」と書いているだけである。

最後の最後に読み手の潜在意識に「農業改革を進めれば農業も生き残っていけるんだから」という印象を与えかねない、ミスリードを誘う文の書き方だ。でも、結局この社説の執筆者が言いたいのは、

「日本の農産物市場が関税撤廃しないから、輸出振興が進まない」

ということだけということは見え見えだ。だったら正々堂々とタイトルを「農産物市場を自由化すべき」と書けばいいのである。でも書かないのは何故なのか聴きたいところだ。表だって農業関係者を敵に回したくないからなのだろうか?しかし書いていることははっきりとした日本農業不要論である。私は騙されませんよ。

日本の経済界で最も影響力がある新聞の一つなのだから、読者を誘導するような記事は辞めてほしいものだ。「農業改革」を加速するというが、どういう農業改革のことを言っているのか。現在政府が進めている、一部の「担い手」といわれる意欲ある農家に資源を集中させ、競争力を増していくという政策のことだろうか。しかしそれがどんなに加速したところで、日本の農産物はアメリカやオーストラリア、中国といった産地に太刀打ちできるほどのコスト削減は不可能なことだ。日本の食料生産コストは高いのだ。それは今どうしようもない。けれども日経新聞は、安い海外産を輸入することで様々な問題が起こっていることを無視しているのか?食料は自国で生産した方がいい。そうした考え方を持たない経済人が多い先進国は日本くらいである。

最近、登場する農水大臣の不祥事が相次いでいるけど、これはもしかしたら、大詰めを迎えているWTOやFTAがらみの国際的な舞台で、日本の農相が活躍できないように、どこからか足を引っ張っている勢力があるのではないか?という考え方ができるようで怖い。このの経済界は本当に日本に農業は要らないと考えているんだろうか。 世界的に石油燃料や穀物が高騰し、食料価格が上がってきている現在、簡単に食物を輸入できる状況がずっと続いていくとでも言うのだろうか。

日本の自給率はここ数年横ばいだった40%を割り、とうとう39%に減退した。このままいくと、7割程度を占める高齢な第一次産業従事者が数年のうちに引退することで、どんどん国内での食料自給はままならなくなるだろう。いざ危機が来たら日経新聞は「間違った方向で進んでいた農業改革」などと言って政策を非難するのだろうか。そのためのエクスキューズとして「農業改革を加速すべき」と書いているのではないか。