やまけんの出張食い倒れ日記

門前仲町が誇るバー オーパの水澤君が独立する! オーパでの最後の夜のシェイクを目に焼き付けておこう。そして次は赤坂にて会おう!

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僕が2004年からこのブログをやってきて、今までで最も印象深い記事は何か、と言われたら、すぐさま答えることができる。

それは、2004年06月07日付けで書いた、水澤君が日本一に輝いたバーテンダー技能協議会のエントリだ。

■真のドラマを観た!第31回全国バーテンダー技能競技会で、門前仲町「オーパ」水澤君はどう戦ったか!?
https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2004/06/31.html
https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2004/06/31_1.html

バー オーパ門前仲町店は、今までの人生で僕が最も通った店だ。それほどお酒には強くもないし、呑むのがそれほど好きでもない僕だけれども、この店は特別だった。それは、トップバーテンダーである水澤君の作るマティーニに惚れてしまったからだ。

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2003年、僕が門前仲町にある農産物流通の会社に勤めているころから店にぽつぽつと行き始めた。水澤君とは同じ年の生まれ(学年は僕の方が一つ上)ということがわかって一気に親しみがわいた。そして、なによりマティーニが旨かった。それまで僕がいちばん美味しいと思ったマティーニは、女優で、なんと僕の大学時代の同期生のお母さんでもある浜美枝さんに連れて行ってもらって呑んだ、銀座の名バーである「テンダー」の上田さんのマティーニだった。あまりにも完璧な味。

水澤君のマティーニを呑んだとき、ジンが僕の好みではなかった。オーパのマティーニはビーフイーターだったのだ。「ゴードンにしてくれるかなぁ、そんでもってドライで。」とお願いして作ってもらったのが、一発ではまった。

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ある日、水澤君が「今度、神戸で開催されるバーテンダーのコンクールに、関東代表で出られることになったんですよ」と言う。

「ふうん、じゃあ俺、応援に行くよ!」

と気軽に言った。関西の友のニシガイチも、岡山の津田君も「おれも行く!」と言った。まあ、まさか優勝とかは考えていなかったのだが。その模様が、冒頭に挙げた過去ログに掲載されている。優勝しちまったのだ! 彼の実力からすれば当たり前なんだけどね。

日本大会の優勝者は、翌年に開催される世界大会へ派遣される。翌年の大会はなんとフィンランド。いいや、新婚旅行ついでに応援に行くよ、ということになった。

■世界バーテンダー技能競技大会で水澤君はどう戦ったか!?
https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2005/10/post_666.html

https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2005/10/post_667.html
https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2005/10/post_668.html
https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2005/10/wcc.html

結果はエントリに書いてあるとおりだ。世界の壁は厚い。というか、世界にはちゃんと戦術を練って打って出なければならなかったのだ。

まあしかしともかくそんなこんな、割と濃い付き合いをさせてもらってきた。付き合いだけじゃなく、僕と水澤君には一つの、かなりくだらない絆がある。

それは、、、 二人とも、こんにゃくを食べることが出来ないということだ。僕は昔、物心つく前に食べ過ぎてもどしてしまって以来、食べられなくなった(らしい。記憶にはない)。彼の原因は識らない。けど、食えない。それがわかったときの僕たちの仲間意識の高まりは、おそらく他の人にはわかるまい。

その水澤君が、とうとう12月に独立する。場所は赤坂。詳しくはまたここで報じたい。

オーパでの最後の日、もちろん店に行ってきた。実は、僕の1冊目・2冊目の食い倒れ本で、オーパを掲載させてもらった。でも、それ以来この店にカメラを持ち込むことは滅多になかったと思う。今回はカウンター越しに、存分に撮らせてもらった。オーパのバーコートを着てのシェイクはこれが最後だからね。

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素人目だからわからないし、ひいき目にもみているからより客観性がないけれども、水澤君ほど、所作が綺麗なバーテンダーも珍しいと思う。なんといっても、指の動きをきれいに見せられるために、茶道を習う男なのだから。

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また、シェーカーに酒を注いだりする際にも、ガチャンと余計な音を発することがない。それはまだ若いバーテンダーとは対照的に写る。

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僕の好きな薬草系リキュール・シャルトリューズを使ったモヒート。薬草っぽいクセがミントと調和して旨い。

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この店から水澤君がいなくなったら大丈夫なんだろうか?とも思うけど、後を引き継ぐ人材はもちろん着実に育っている。内藤君がトップに、そしてその脇を城戸君が固める。

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二人に期待したい!

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「水澤君て、いつもシェークする時、どこみてるの?」

とうちの嫁が素朴な疑問。

「ふふふ、、、実は、壁に掛けてある写真、開高健さんの『オーパ!』の写真なんですけれども、あれを観てます。表面がガラスなので、自分のフォームが正しいかどうかチェックできるんですよ。」

うーーーーーーーーーーーーーーん そうだったのか! 6年通ってて初めて識った真実。

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モナンの洋なしシロップ、日本のさくらリキュール、そしてバカルディが並ぶと、水澤君が優勝したあの創作カクテルだとすぐにわかる。そう、「スプリング・ヒル」だ。

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いったい何杯これを呑んだことか。そうか、僕の結婚記念パーティーにも来てもらって、これを来場してくれたみんなに振る舞ってくれたのだった。

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さてそろそろ僕もフィニッシュだ。ゴードン、ノイリープラット、そしてビターズで、マティーニを作ってもらう。

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さて、最後に彼独特のレモンピール。レモンの皮を絞るとき、苦みのある重い油を入れないように、軽やかに香る比重の軽い油だけをグラスの縁に当たるよう、蝶が舞うように手を動かすのだ。

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2003年のあの夜に呑んだマティーニと同じ味。ドライだけどシルクのような滑らかな飲み口。美味しい。

水リン、これまでお疲れ様。

そして12月、新しい店のオープンを心から待ちわびています。みなさんも12月は赤坂にて美味しいカクテルを呑みに行きましょう!