やまけんの出張食い倒れ日記

キャベツ畑でつかまえて! dancyuキャベツ特集号で訪れた富士宮にて。

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dancyuの先月号のキャベツ特集の中で、僕がビオファーム松木さんの取材をしているページがあるのを読んでくれた人はいるだろうか。かなり面白かったので、ぜひ手に取っていただきたい。

B0038Z7OEE dancyu ( ダンチュウ ) 2010年 04月号 [雑誌]
プレジデント社 2010-03-06

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ちなみに今月発売している号では、卵特集。僕と懐石小室の小室さん、そしてイタリアンのペルゴラの齋藤シェフの3人で、11種の卵を食べ比べている。こちらもぜひ読んで欲しい。

 

B003DQ5Y9A dancyu ( ダンチュウ ) 2010年 05月号 [雑誌]
プレジデント社 2010-04-06

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さて、そのキャベツ取材だから2月の始め。まだまだ冬キャベツが多い頃だけど、いまは店頭で春キャベツばかり並んでいる。さっきラジオで「春キャベツが高い!」とアナウンサーが言っていたけれども、高くないよ。こんなに天候が変動し気温が上下する中で、植物の生理が正しく発現するはずがない。出荷する側だって、高値がついたからといって儲かるわけじゃない。だって高値になっているということは出荷量が少ないということで、それは畑にあるキャベツが使い物にならない(生育不良)状態になっているということだから。少々高値で売れたって全体的には儲からないのだ。

 

ということで、1玉350円だろうがなんだろうがぜひキャベツを買ってください。一玉丸ごとのキャベツを楽しむレシピがdancyu誌にあるから(笑)!

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まだ結球もしていないキャベツ。

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今回、松木さんの畑の近隣でキャベツを大規模に栽培している方のところに伺ったのだけど、富士宮市はキャベツの作付け量で全国一位になったことがあるらしい。その折に最も面積でかかったのがこの方だそうだ。

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なんつってもロケーションがスゴイ。富士山がこんなふうに見えるんだから、、、

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キャベツにはおおまかに寒玉と呼ばれる、冬にもっとも出荷量の多くなる品種と、春玉と呼ばれる春キャベツがある。寒玉は形が扁平で、ギュギュッと密に巻いており、葉はパキパキと固く、甘みが乗る。春玉は形が丸っこく、葉の巻きがやわやわで、食感が柔らかい。

「春キャベツは柔らかくて甘くて美味しい」

と書く料理本が多いけれども、「柔らかい」は確かにそうだが「甘い」というのは嘘だろう、と思ってしまう。甘さは寒玉に比べれば比較的乗りにくい。

外食店や惣菜店などではキャベツを大量に使うが、店からすれば寒玉をずーっと使いたいと思っている。シャキシャキして甘さもあり美味しいし、歩留まりがいいからだ。春キャベツは葉の巻きが緻密でないから、つまり一玉あたりからとれる千切りキャベツの分量が少ないということである。春キャベツの時期はいろんな店が苦労をしている。

しかし原則的に、3月~5月あたりに寒玉は作りにくい。春玉の品種に寒玉の品種をかけたものが最近では出回りつつあるけれども、まだまだ万能とは言えない感じだ。

ちなみにこの方は200品種くらいは作ってきたという(!)

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松木さんはこういったエキスパートの人達と交流しながら、自分の農場にも技術などを還元しているのだろう。

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この品種など、寒玉と春玉のミックスであることがよくわかる。

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この日は松木さんのキャベツをメインに料理してもらったのだけど、松木さんの農場のキャベツはちょうど収穫の谷間で、小さいものしか残っていなかった。そこで、メインの撮影用の料理はここの立派なのをもらいにきたというわけだ。

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この日の撮影は、僕がdancyuに初めて書くこととなった種子島の黒糖の取材でご一緒させていただいた古市さん! 超・御大である! dancyu読者なら必ず古市さんの写真を観ているはずである。古市さんの撮影は(dancyuの場合は)銀塩写真中心になるので、デジタルだけしか使わない僕にはわからないことも多い。だけど、とにかく現場にご一緒するだけでもものすごく学ぶことがある。明るくフレンドリーなお人柄で、この日も「はい、写真関連のDVD,焼いてきてあげたよ」とプレゼントをいただいてしまった。

それ以外にも、古市さんが自作した秘密兵器も「やまけんちゃん、これあげるから使いなさい」と下さった! その秘密兵器とは、、、

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カメラのレンズにスポッとはめて使う円形の銀レフ板! DIYショップなどで薄い樹脂ボードなどを買って、そこにアルミシートを貼る。それを円形に切り抜き、さらにレンズ鏡胴の太さに合わせて穴を開けたもの。

料理写真では光を回すことが重要だが、カメラの前面はふつう黒く、光を反射しない。そこでこれをつけることで、外部ストロボからの光が反射し、カメラ前面からハイライトが入ってくれるということだ。うん、原理はしごく明快だけども、これを自作してしまうところが素晴らしい。

もうひとつ、机の上に置かれている銀レフ板、これも古市さんの自作。売っているものもあるけれども、古市さんは自分用に考え抜いてカスタマイズする。このレフ、やたら薄いのにお気づきだろうか。実はこれ、アルミシートをこいつの内側に貼ってあるのだ。

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いや、ホントすごい。なにがって、古市さんほどの大カメラマンがこういうことをされているというのに、感じ入ってしまうのだ。

こちら、古市さんご使用のニコンF4。

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グリップにもラバーが付けてあって、ご自分が使いやすいようにカスタマイズしておられることが伝わってくる。それとレンズの先についている黒いフードにご注目。設置しているところに黒いウレタンが貼ってある。カメラを置く際に、重量バランスの関係でどうしてもレンズ先端が設置してしまうことがあるわけだが、その衝撃を少しでも緩和しようという工夫だろう。ここまで自分でやる人はあまりいない。古市さんは真の意味でカメラをハックしている人だと言えるだろう。

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そんな古市さんがバシッと撮影された松木さんのオリジナルキャベツ料理。

最高傑作はなんといっても「丸ごとキャベツのロースト」。

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丸のままのキャベツを三段に切り、塩を振る。

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断面にコンビーフを塗りたくるようにおしつけて、、、

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たっぷりの溶けるチーズを乗せて、ここに「えええっ!」と声が出そうになるくらいの量のオリーブオイルをふりかける。その後、3分割されたのを元の状態に積み直し、オーブンで40分ほど焼く。上面が焦げるので途中でアルミホイルをかける。

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これ、大傑作ですよ!

オーブン開けたとたんにジャジャーと心をくすぐる音、ブワッとアブラナ科特有の香ばしい香り、オイルの香りが満ちる。佳くきれるナイフでケーキのようにカットすると、キャベツの甘~い汁と上質なオイルが一体になったジュースが滲み出る。一缶150円のコンビーフと溶けるチーズの存在感が10倍くらいに増幅されたような旨味。

一個丸ごとのキャベツを食べるのにこれほどダイナミックでしかも安価にできる料理法もないだろう。オーブンがある家庭ではぜひお試しいただきたいと思う。

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■撮影データ

屋外のキャベツ畑の撮影は、D700+タムロンの90mmF2.8マクロを中心にしている。このレンズ、あまり登場機会がないのだけれども、やっぱり美しい写りだ、、、