やまけんの出張食い倒れ日記

「強力」と「優男」 僕が名付け親になった土佐あかうしに会いに行く

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高知二日目、、、暑い! やばいほどに暑い! 直射日光をまともに受けると10分で気が遠くなります。地元の人たちも「これはきついわぁ、、、」と引き気味。そんな中、畜産試験場のある佐川・斗賀野あたりまでの遠出。

 

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なんと将来は放牧畜産をやりたいという、意欲的な岩手大学の大学院修士課程の学生君が来訪していて、彼がひまわり乳業の「乳を搾った日が分かる牛乳」を飲みたいというので、スーパー「サンシャイン」にて購入。でも、もっと買うべきはコーヒー牛乳だよ!ひまわり乳業のコーヒー牛乳は旨い。なぜならちゃんとコーヒーをきちんと美味しく煎れて、それを牛乳と混ぜているから。ということで僕と県の公文さんもも購入。

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高知龍馬空港の2F出発口に向かって右サイドにある土産物コーナーにひまわり乳業のヨーグルトや牛乳が売っている。ここで、宇宙を旅したヨーグルトを買い、コーヒー牛乳を土産に買えば完璧である。ちなみに地元の子供達は全国にあると信じて疑わない乳酸菌飲料「リープル」も売っている(笑)

さて途中にある越智という町に、ものすごい精肉店がある。

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松田精肉店というこの小さな店、コロッケが旨い!けど、そうじゃなくて、実は自前で土佐あかうしを育てている。そしてその肉を自前で売っているという、とにかく赤牛が大好きで人生を賭けている肉屋さんなのだ。

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ケース内にある牛肉はほとんど土佐あかうし。たまーに、自分が気に入らない血統の仔牛しか市場に出ていなかった場合は仕入れしないため、黒毛和牛になることもある。そういうときはわざわざ「今日のは黒だけど、ええの?」と訊くそうだ。だって、どう考えたって「あかうしのほうが旨いから」。

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この方が松田さん。畜産試験場の方が餌の配合や飼い方をいろいろ教わりにくるほどの経験を積んだ人。そして、肉を捌き売るところまでできる希有な人なのである。

もちろん、コロッケは絶品。つい揚げたて10個買いました、、、

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「やっぱりね、A3の土佐あかうしが旨いよね。A4、A5までいかんでもええんよ。ただ、A2になるといかん。それは餌を食い込んでないってことやからね。食い込みがたりんと、味が出ない。」

なるほどね、、、単にサシを落とすという考え方だけでは、その分、肉のうま味も減少させてしまうことになるというわけだ。

「んじゃ、松田さんとこの牛舎を観に行きますか。」

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高知はずるい。こんな風景がそこここに拡がっているんだもん。あ、ちなみにレンズは引き続き、AF-S16-35mmF4。このレンズ、買い決定です。ここんとこ、超広角はりいらんなと思っていたけれども、やっぱり超広角でなければ撮れない絵がある!

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肉牛には「繁殖」(子牛を産んで育て、市場に出荷する)と、「肥育」(市場で子牛を買って太らせて肉牛にする)の二携帯がある。放牧しているのは99%が繁殖。つまりあのまま肉牛として仕上がるわけではない。この松田さんとこの牛舎は肥育牛舎だ。

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こんにちは~

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ん?

 

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だれ? 誰が来たの~???

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こんなふうにひとなつこいのは土佐あかうしの特徴でもあるのだけど、やはり世話する人が優しくないとこうはいかない。

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松田さんとこは、メーカーの配合飼料ではなく単味飼料を吟味して与えている。

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粗飼料と穀物飼料をうまく組み合わせて、そのうえほぼ全頭を30ヶ月は飼っているという!通常、最大のコストとなる餌代がかかるので、できれば25ヶ月くらいで出荷したい!というのが肉牛農家の思いだが、それだと旨くならないというのだ。もちろん、高価な濃厚飼料ばかり食べさせないと肉にならない黒毛とは違い、粗飼料を食べて肉になってくれる土佐あかうしだからできることでもある。

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さて昼食後は畜産試験場へ。近づくと、車窓から山の斜面が開かれ、点々と褐色の牛たちがいるのが見える!

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牛たちがみえますか?

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左の林の陰に群れがいるが、これはやっぱり暑いからだ。放牧牛は木陰で涼をとることが多い。

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この試験場に初めて来たのが一昨年だったと記憶しているが、そのときにはここまで土佐あかうしとつきあいが深くなるとは思っていなかった。

ここでお願いしているのは、「粗飼料(青草とかね)を多給することで、赤身肉中心の土佐あかうしを作り出せないか」という研究だ。

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この試験場のツートップ。

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普通なら、黒毛に負けないサシの入る牛を作ることに腐心するのが現状の試験研究の方向性だが、そんな中で先のように「赤身肉が」とか「粗飼料中心で」とか、通常ならやらないことをテーマ化してくれた。いろいろ周りからいわれることもあるだろうが、それをものともせずに研究を続けてくださっているのはこの人達のおかげだ。

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さて、「強力」「優男」との対面。

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終息宣言が出されたとはいえ、口蹄疫への配慮から、牛舎から連れ出してもらって面会。

あれ????? 優男、すっげーでかくなってない???

「そうなんですよ、優男はやっぱり増体系そのものの血統ですね。この父親の「太郎」ってのがやっぱりでかいんですよ」

と現場担当者である松崎さんが教えてくれる。

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そして、心なしか子牛のころはギッと細くにらみつけるような目つきの悪さだった「強力」が、ちょっとおとなしい顔に変わっていた。過去ログで「強力」で検索してもらえれば出てくるので確認して欲しいのだけど、ホントに目つきが悪かったんだよ~ それが何かすこし優しくなった。

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それにしても、優男のでかさは半端じゃない。

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しかも優男の名前通り、端整な顔立ち。みてくださいよこの眉毛とまつげの長さ!エクステつけてんじゃない?ってくらいに長いのだ。

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脇腹のあたりをキュッとつまんだときの手触りで、いい肉牛になるかどうかがわかるという。その感覚をちょっと教えていただいた。

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教えてくれた尾石チーフによれば、増体性は優男がいいけれども、肉質は強力の方が期待できるとのこと。

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このお二人が、現場で二頭を面倒みてくださっているのだ。感謝。

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いやほんと、この二頭に限らず土佐あかうしは人をいやがらない。放牧で人とあまり触れ合わない短角とはまた違う牛なのだと実感。

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松田精肉店で買ってきたもも肉を刺身でいただきながら、現状の確認会。このもも肉、個体のせいか味がそんなに乗ってなかった。やっぱりそういうこともある。

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尾石さんがみせてくれた飼料設計をみると、ほんとうに青草中心の給餌スタイル。ただし、ぜーんぶ青草ではまかないきれない。そんなにたくさんの草をとるのも大変だし、それだけでは必須栄養素が充足できないのだ。だから適度に配合飼料も与える。そのさじ加減を意見調整。任せましたよ、チーフ!

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強力と優男が肉牛として仕上がるのは、2012年の2月あたりだ。この日本で初めての、粗飼料多給した土佐あかうしの肉を、また全国の関心ある人たちに食べてもらえるようにお肉セットにして販売することにしようと提案した。できれば通常の配合飼料で育てた土佐あかうしとの食べ比べができるようなセット。

どうだろう?いまから楽しみではないか、、、