やまけんの出張食い倒れ日記

さちの肉を巡る物語最終章 静岡県富士宮市「さの萬」さんのドライエージング肉をいよいよ焼く!

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さていよいよ焼きだ!佐野社長はドライエージングビーフ(DAB)を求めてもう何十回も欧米を訪問しており、アメリカのDAB業者のところに通い詰めて、とうとう熟成の秘密をかなり深いレベルまで教えてもらっている人だ。だから当然、焼き方も一過言ある。

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「そうですね、DABの特徴として、普通にズーッと焼き続けてしまうと、水分が抜けてばさばさしたものになってしまいます。ですから、強火で周りを焼き固めてからコンベクションオーブンで60度程度の弱い火入れを30分程度かけて、最後にまた表面の水分を飛ばすために少し焼くという方法を推奨しています。」

それではやっていただこう!

 

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まずはまんべんなく塩。フランスの海塩を使用。

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煙が立つまで熱したフライパンでまずは肉の側面から焼き付ける。

周りの4面を焼き付けてから(このときは時短のため脂身部分だけを焼いた)、一番面積の大きい表・裏面を焼く。

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かなり強い焼き目をつける。

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表面にバリッと焼き色がついたらコンベクションオーブンへ!

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設定は60度で20分。焼きながら「もう少しだな、、、」ということで5分足したので最終的には計25分。さの萬さんにはスチームコンベクションオーブンがあるけど、温度調節さえできれば通常のオーブンでもOK。

さーて25分経ったのを、取り出して表面の水分を飛ばすように焼いて終了! 店舗の隣にあたらしくできた「さの萬キッチン」というアトリエに移動する。

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ここってレストラン営業した方がいいんじゃないの?というようなゴージャスな空間。生ハム類が吊された冷蔵庫の奥に、キッチンがある。

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ぱんぱかぱーん これが佐野社長が焼いてくれた、さちのDABのサーロインである!

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お見事! いい感じに内部が仕上がっている!

「僕的にはもう少しレアっぽい方が好きなんですけど、スミマセン」

とおっしゃるけど、僕はこれくらいの方が好きなのよ。ということでいただきまーす!

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口に入れる前から、DABに特有の熟成香が飛び込んでくる!それもそうとうに凝縮されたのが。歯を立てると、「コレが短角かい?」と思ってしまうほどに柔らかく歯が通っていく。短角としては例外的にサシの入ったさちの肉であるということに加えて、60日感近く熟成させていたことで、タンパク質のペプチドへの分解が進んでいるのだろうか。細胞間の結びつきがほどけてヤワヤワになっているような、そんな印象を受ける。そして、ブシューッとしみ出てくる汁が、もううま味のジュースである。そのジュースにもあの特有のBeefyな香りが充満しているのだ。

こたえられない、、、これはたまらなく美味しい熟成肉だ!

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佐野社長も、神楽坂しゅうごの広瀬シェフも「これは、、、マジで旨いですね!」と褒めてくださる。うーむやっぱり短角牛をDABにしたら、それはまた次元の違う肉に消夏されるのだな、と実感したのである。

「さーて じゃあ広瀬君も焼いてよ!」 ということで、シェフが焼きに挑む!

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塩した肉に、広瀬シェフは小麦粉をまとわせる。

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「蒸し焼きにする感じにしたいので、表面に粉をまとわせるんです」とのこと。

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肉の表面を焼き付けていく。

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さて、このアトリエにはスチームコンベクションオーブンはなくて、通常のオーブンがある。広瀬シェフどうするかとおもったら、なんと今まで焼いていたフライパンのうえに焼き網をおき、肉をそこへ載せる。

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そしてフライパンへ水を投入!すると水蒸気がもうもうと上がる!

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この状態でオーブンの中へ入れるのである!なるほどぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお

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「こうすると、水分が適度に補給されるので、ばさばさした仕上がりではなく、しっとり焼き上がるんです。豚肉なんかでは非常に有効なので、今回もDABに応用してみます」

そう来たか、さすがだぜ!

さてここから長丁場で30分くらいは温度を確認しながら焼き続ける。

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よしっ適温!と言うタイミングでひきあげる。

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これが内部温度58度前後の肉塊。

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この表面をカリッと焼き付けていく!

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完成!

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おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

こちらは佐野社長もお好きな、レアっぽいが60度前後の火が通ってうま味が活性化した焼き加減!

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素晴らしい、です、な。

僕的にはもう少し火が通った方が好きだけど、この状態でも熟成香が香る薫る!

「うーん よし、こうなったらうちがいつも出している、ホルスタインのDABも焼いてもらいましょう!」

おおっとすごいことになってきた、佐野社長がノっておられる!そう、さの萬では通常はホルスタインの肉をDABにする。それは、みての通り40%もそぎ落としてしまうDABでは、最初の段階で高い肉だとどんな高級店でも使いにくい。それと、いつもはあまり評価されないホルスの肉も、DABにすると非常に美味しくなるので、「安くてたいしたことのない肉を非常に美味しくする技術」としてドライエージングを使うというのが本道だろうと彼が考えているためだ。

僕としては、それでもポテンシャルの高い肉を使えばもっと美味しくなるだろう、と思っているのだけど、試行錯誤しながら佐野社長がたどり着いたのがホルスのDAB。果たして焼いてみてどうか!?

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ホルスのDABは、やっぱりその肉質が全然違う! もともと乳牛ということもあって繊維感がちょっと粗いのが功を奏して、歯に弾力がくる感じがいい。さちのDABよりも歯にグッと反発を感じさせてくれて、若やいだ感じのDABに仕上がっている。反面、しっとり感やジューシーさ、うま味の量についてはやはり短角に部があるようにも思うが、これはもう好みによるだろう。

ついでに、佐野社長がしばらく前に競り落としてきた黒毛和牛も。これはDABではなくウェットエージング。

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さすが佐野社長のメキキ、非常にさっぱりした脂質のよいお味。黒毛はこういうのがいいよね、というお手本だ。でもまあ、やっぱりDABと比べてしまうと負ける。つまりDABという技法は、黒毛以外の品種を、ただでさえインパクトのデカイ黒毛以上の存在感に昇華するための素晴らしいツールなのである。

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ものすご・おいしい萬幻豚の生ハム(坂戸のセラーノで熟成)もでて幸せいっぱいです。一年しか寝かせてないのに凝縮感がすごい。色は淡いがうま味は濃い!

途中参加の岩澤さん達と歓談し、帰途についたのでした。

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富士宮の神社境内には、富士山の水系から湧き出ている水が。

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あれだけ食べたにもかかわらず、お宮横町にて、富士宮ヤキソバ全開!

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このほか二店のヤキソバ食いました。あと、マス(鱒)バーガーね。

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週アスの「旅三昧」の取材で来たのが懐かしい、、、

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富士山系の水をたっぷり飲んで、帰ってきたのでした。

さちのドライエージングビーフについてはまだ続きます。