やまけんの出張食い倒れ日記

遅くなりましたが完全版アップ! 震災被害の状況をきちんと見つつ、美味しいものの記事再開します。 地粉うどんの逆襲が始まる! 群馬県富士見村の「だんべ」再訪!

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震災の関連情報に触れていると、なかなか美味しいものの記事を書く気になれなかったのだけれども、ある人から「やまけんが美味しいもののことを書くことで気持ちが救われる人もいるんだから、書きなよ」といわれた。被災地で食うや食わずの状態でいる人たちに申し訳ないと思いつつだが、首都圏では飲食店の落ち込み方がひどい状況でもあり、コレを活性化していかなければならないとも思う。なので、書く。

この週末は、群馬県にいる相談役と今後の事業のあり方について相談をしてきた。群馬といえば僕の高校時代からの親友である和太鼓奏者・石坂亥士がいる地だ。そういえば前回訪れた際に、亥士がすばらしき地粉うどんの店に連れて行ってくれたなあと思い出す。そう、「だんべ」うどんである。あの後、テレビ放映されたり雑誌に採り上げられたりして、お客さんが来るようになったそうで、店の大将も喜んでいるときく。じゃあぜひ行ってみよう、ということで亥士とともに足を運んだのである。

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■うどん そば処 「だんべ」
富士見村時沢860ー3
027-288-6857

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前回が2008年だから、ちょうど3年ぶりだ。

「いやー 山本社長、ホントに嬉しいです。よくきてくれました!」と出迎えていただく。なんか、テレビも雑誌も、取材者が僕のブログを読んで来たとのこと。なんでも「食い倒れ日記に載ってるなら信用できる」と言ってたそうだ。マジ?ホントにそんな信じていいの?(笑)でも、お好みに合ったならよかったです。

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※ちなみに上の写真の「だんべうどんが美味しいわけ」の字は亥士が書いています(笑)彼は書家でもあるのです。

「だんべ」のうどんの特徴は、群馬県の地粉を石臼挽きで挽いたものを使っていること。小麦の品種はうどん用でポピュラーな農林61号で、藤岡産のものが大将にとって最高だそうだ。

「もうね、いろんなところの粉を探しましたけど、藤岡のが最高です。香りと味があるんですよ」

その香り・味を最大限に活かすため、長時間熟成はさせずにゆでる。加水して長くおいてしまうと、コシの面ではいいが香りが飛んでしまうそうだ。汁に化学調味料は一切使わず、野菜も肉も群馬県産。ここの名物であるだんべ肉汁うどんには、赤城の名ブランド豚である和豚もち豚が使われている。

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今日は少しずついろいろ出しますので、と言ってくれたので気合いを入れていただくことにした。

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まずはメニューに載っていない湯盛り。つまりは釜揚げうどんだ。

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もうこの時点で、さぬきうどんのようなオーストラリア産小麦の純白さとは違う、色づいた麺であることがわかる。

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麺の表面にはつぶつぶが見え、全粒粉であることが見て取れるのである。石臼挽きで、メッシュの目でふすまの部分だけを除去して、あとは打ち込んでしまうわけだ。この見た目にもストロングな麺をつゆにつけていただくと、湯に溶けた微かな塩の風味だけで食べられる!それは麺をかみしめたときにはっきりとした「味」と「粉の香り」がするからである!鼻にブワッと抜ける小麦感たるや、存在感つよし!

ほとんど間を置かずに、この店の人気商品である「だんべ肉汁」到来。

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うどんを水で締め、もち豚と長葱の温かいつゆでいただく名物だ。

この写真を見ておわかりのように、うどんはかなり不揃いの乱切り。これは大将が下手なんじゃなくて、わざとこうしているのだ。

「食感が変わった方が楽しいし、せっかく機械打ちじゃないんだから」

ということで、太く、細く、中間というように3パターン程度分けて打つのである。

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切り口も不揃いで、そのせいでつゆがよく絡むようになっているのだ。

もう一つユニークなのが、別皿に盛られてくるきんぴらゴボウの存在。

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これをつゆにいれることで、また味が濃くなりゴボウの香りとにんじんの甘さで風味が変わるという楽しみがあるのだ!

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このつゆにドブッとつけてすすり込むうどんは、これはもうタマラナイおいしさなのであります!

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しかーし、この後にまた主役登場。それは、前回ぼくがここに来たときには食べられなかったカレーうどんである。

実はこの店をオープンした当初、大将が心血注いで完成させたカレーうどんがあったのだ。しかしながらこのカレーうどん、超めんどい工程を経て完成するので、そうそうは作れない。そこでしばらくのあいだ欠番メニューになっていた。その頃に僕が来たわけだ。

けれどもこのカレーうどん、大将にとっても思い入れの強いメニューだったらしく、とにかく「うーんカレーうどんも食べてほしかったなぁ」という。俺も喰いたいよ!

で、今回は事前に亥士経由で連絡してあったので「もちろん準備しておきます!」とのことだったのだ。

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長ネギともち豚のバラ肉のみの簡潔な具、適度にトロリとしたカレー汁。一口汁をすすると、スパイシーさが前に出るわけではないのだけれども、しっかりとカレーしてる感じだ。もちろんベースとなるかえしや汁のうまさがプラスされるから、実に佳いお味です。

なにより、、、

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この個性の強いうどんが、カレー汁の濃厚さに負けずバチバチと戦っている感がすばらしい!この強烈な麺にマッチしたカレー汁の作りだと思います。一つだけ言えば、豚肉にもう少しかりっとした焼き目がつくくらいにしたほうが、豚のうまさが汁に溶けてもっとうまくなると思う。

このカレーうどんとだんべ肉汁を交互に摂取。

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これで十分かなぁと思ってたら、なんと味噌煮込みうどんがこんな体でやってきた!

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注:これで一人前です(笑)

田舎風の味噌煮込み、これもまた乙なものです。寒いうちにどうぞ。それにしても大将、はりきりすぎててすべて通常の盛りで出してくれてるから、この辺でもうグロッキー気味!もうくえねぇ、、、と思っていたが、まだ蕎麦が残っているのである。

実は前回、蕎麦については「いまひとつかな、、、」と感じていた。うどんの強烈な個性に対して、蕎麦にはみるべきものがないと。しかし、、、その感想はここにきて見事に裏切られたのだ!

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むっ 前回よりやや太めに切られた印象!薬味は地元の辛み大根と葱のみだ。

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うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

こいつぁ 旨い! ほどよい歯ごたえ、その奥から十分に香りも立ち上る。

今回もっとも感動したのはこの蕎麦の方かもしれない!

「いや、たしかに太さは変えました。それがいい方に転んだんですかね、、、」

そう思います。以前のは上品な印象ではあったけれども、なにか場にそぐわないというか何というか。ある程度の太麺にすることで、蕎麦を呑まずに噛むようになる。かみしめることで初めて立ち上る香りがある。それを感じることができるようになったので、味わいが出てきたと言うことだろうか。いやすばらしいです。

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大将と奥様のツーショット。いや、この店はやっぱり個性的です。とにかく、さぬきうどん一辺倒な世の中に対して、関東の地ごなを使った、「匂いのあるうどん」とでも評せばいいのだろうか?そういうジャンルを突いていると思う。

「うちは群馬県の農林61号の石臼挽きにこだわりたいと思います。地震のこともあって粉がどうなるかわからないけど、しばらく分は買ってます。」

うん、その粉が手に入るウチにまた食べに来ますね。うどん好きで群馬県に足を伸ばせる範囲の方にはぜひ、この店をお薦めしたい。大将、ごちそうさまでした!