やまけんの出張食い倒れ日記

素晴らしきひょうご在来野菜の数々! 4年ぶりにお会いする山根成人さんの飄々たる生き方の格好良さと、在来品種の灯火を絶やさぬ事の切実な意味を再認識する。知らないうちに遺伝子組み換え作物が日本でも容認されそうになっている現実を、直視しなければならない。

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9月3日の「野菜の学校」は実に痛快、楽しかった! 野菜の学校は、NPO法人「野菜と文化のフォーラム」が主催している、野菜の食べ比べ勉強会だ。故・江澤正平先生が常々言っておられた「野菜は食べてみなけりゃわからない」という言葉を大事にし、とにかくその時期集められる野菜を集めて食べ比べてみようという会である。僕も出席率はそんなに高くないけど、スタッフの末席に座っている。

■「野菜の学校」
http://www.yasaitobunka.or.jp/katsudo.html

今年の野菜の学校のテーマは各地の在来野菜なんだけど、9月のテーマは兵庫県の在来野菜。どうも兵庫県は非常にこの分野に協力的ではなかったようで、問い合わせてもらちがあかなかったようだが、僕もその著書に心動かされたこの方に行き着いたらしい。

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兵庫県周辺の在来品種を大切に収集し、かつ「種採り」の技法などを伝えている山根成人氏だ。この方とは2007年、庄内でお会いしている。

■2007年12月08日 山形県の庄内地方にはものスゴ~く深く広い食文化が横たわっているのであった! 山形県在来作物研究会のフォーラムに参加し、農家民宿「母屋」に泊まり、それはそれは濃い一泊二日をおくったのであった。 在来作物研とアル・ケッチャーノの食事、そして母屋。
https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2007/12/post_1094.html

このエントリの翌日、藤沢カブの焼き畑風景の視察をご一緒させていただいた。その折の写真をプリントして送ったら「あんたがどういう仕事してるかわからんけど、興味深いな」とご返信をいただいた。

秋葉原の会館に入ってすぐ挨拶にうかがうと、「おー あんたの顔、どっかで観たことある」と(笑)本当にご無沙汰してました。

さて兵庫県の在来野菜は非常に層が厚い。というのは、行政とか団体が決めた伝統野菜的なくくりではなく、個人が種採りをして、だんだんと個性的な形になっていったものを民間で伝承しているので、とにかくいろんなのがあるのだ。

しかも、実に興味深いのだけれども、どれも「美味しい」。

と書くと「伝統野菜、在来野菜はどこでも美味しいものなのではないか?」と言われそうだが、それは今日的な、勝手なイメージである。もともと伝統野菜・在来野菜といわれるものは、「その地域では土質や気候的な制約からこれしかできない」というような、ある種ネガティブな立ち位置もあったわけだ。実際ぼくが食べさせてもらった全国の在来品種の中で、万人受けするような美味しさを持つものは少ない。むしろ非常に味を構成する要素のどれかが突出した、アンバランスなものが多い。それが、アンバランスさを補正するような郷土の料理文化を誘発し、郷土食というものを創り上げていったと考える方が自然なのだ。

一方で、「美味しい在来野菜」も存在する。例えば大阪は泉州の馬場ナスや、愛媛県西条市の絹皮ナスなどは誰が食べても目を見開いて「こんな美麗なナスは食べたことがない」と言うだろう。けど、皮が極端に柔らかくて傷つきやすく、流通に乗りにくかったりする。作り方が難しくてやりたがる農家が少なく、ほとんど市場出荷されないなどの理由で、一般品種にならず「在来品種」に甘んじているケースもある。

兵庫県近辺は気候も極端に暑かったり寒かったりすることもなく比較的落ち着いていることから、「食べて美味しい在来野菜」が多く残っているのかもしれない。

ところで、氏の写真をみておわかりのとおり、山根さんの講義は抱腹絶倒。

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ご自身が命名された品種などの話、農家の話などが面白くて、ついつい引き込まれる!

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ご自身は農家出身ではなく、1985年、思うところあって有機農業の世界に入る。有機の世界はもともと自家採取を奨励していたのでそちらに目が行くようになり、だんだんと種の交換と自家採取への関心が加速し、いまや「ひょうごの在来種保存会」を率いているわけだ。この辺は彼の著書に詳しい。

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種と遊んで山根 成人

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中でも感動しちゃったのは「ぺっちん瓜」。

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マクワウリの仲間だが、濃緑色の皮がビロード(ぺっちん)のようで果肉はメロンのごとき芳香がある黄色。加古川、明石周辺で栽培されていて、浅漬けにするという。

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本当に、このぺっちん瓜の浅漬け(塩漬け)が最高! まずその繊細な食感が絶妙で、白瓜のようなざくざくというものじゃなく、歯が果肉に入っていく時には「ペリリリ」という感じで、細胞サイズが小さいのかとにかく繊細! しかも、立ち上る香りはうっすらとメロンの香りで、それが塩味で供されるのがまさに極楽。こいつは最高グレードの瓜だね。

もふたつ、「御津の青瓜」と「網干メロン」も素晴らしかった!

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写真左上の、緑色の濃いのが御津の青瓜。

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シマウリ群の黒門系だという。瓜類はそれほど突っ込んで調べたことがないのでわからないが、これも歯触り絶妙。白瓜のように漬物にして食べるが吉。

もう一つの網干メロンが、唖然としてしまうほどの美味しさ!

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断ち割ってみると本当にメロン!どうやらマクワウリと洋種のメロンを掛け合わせたものらしいが、大正時代から栽培されていたらしい。150g程度の、手のひらに載ってしまう小ささなんだけど、愛らしい形状、割るとその種は実に小さい。

「種ごと食べてしまえるんやで」

とおっしゃるので種もそのまま食す。

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ホントだ! 種もパリパリと難なく噛み切れ、そのクランチ感が逆に美味しさに転化している。果肉からは淡い甘さとメロンの美しき香りがする。時期的に少し遅かったようで、本来はもっと甘いらしい。なんと素晴らしい品種か!

ちなみに、この野菜の学校では凄腕調理スタッフが数人居て、毎回これらの在来野菜を美味しい料理にして試食させてくれる。その一環で、一つの野菜をテーマにして、数種類ならべての食べ比べをする。このコーナーの司会進行を(出席している時は)僕がやっている。

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この日は、兵庫在来種の「八ちゃんナス」と、日本で最も一般的な品種である千両、長なすのトップシェアである築陽、そして熊本の赤ナスと比較。

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これがもう八ちゃんナスが圧倒的に美味しい。というのは、しっかり個性のある味がするわけだ。千両と築陽はこれに比べると本当にナス感の弱い、だからこそ何にでも合うというような感じ。「在来野菜は主張する」のである。

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ベストシーズンの八ちゃんナスはものすごくピカピカに艶やかで、形ももっとハッキリ美しいという。ぜひ食べてみたいものだ。

その他、山根さんの著書に載っていてずっと食べてみたかったハリマオウにんにくも、とうとう実物をみることができた!

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こいつが、もんのすごく強烈に臭いらしい(笑)

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これもご自慢の大納言。

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瓜文化と豆文化については兵庫は非常に深いものがあると実感。

それと、生でかじっても爽やかに美味しいオクラ。

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そして、何より感動したのは種を広めていこうとするその気持ちだ。2007年の在来作物研究会の席でも、大納言の説明をしながら「この種、後ろに置いときますから、興味のある人は持って帰って」と、おしげなく種を分けておられた。下はフダンソウの在来種「とっちゃ菜」。

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こちらは「富松一寸空豆」

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山根さんは種子会社による食糧支配を非常に警戒しておられた。

「種は本来、誰のもんでもない。いま、世界的な種子会社はターミネーター種を投入しようとしてる。これは遺伝子操作をして種子が次世代に命を伝えられないようにする技術。つまりタネを取っても発芽しない!そうなると、農家は必ず種を買わなければならなくなる。当然、多様な品種は減ってしまい、生命の多様性も無くなってしまう。そしてアメリカを中心とする食糧支配が完成してしまう!」

これはオーバーな話ではなく、本当に差し迫った世界だ。事実、日本では震災後のごたごたに乗じて、遺伝子組み換え作物の輸入が解禁されそうな気配だ。

「わしんとこにひっそり、遺伝子組み換え作物に関するアンケートがきよった。こういう重大なことは、他の重大事が起こってる時にひっそりやるんや。」

とおっしゃっていたが、ホントにそう思う。僕も今年の上期からこの話題をいろんな場所で耳にしている。このままだと遺伝子組み換え作物はここ数年のうちに日本でも許容される流れが出来てしまいそうだ。僕は遺伝子組み換え作物は反対だ。その遺伝子組み換え技術の危険性がいまだよくわからない云々もあるけれども、それより何より遺伝子組み換え作物を認めたら、技術的に先行している世界的なコングロマリット企業の独占市場になってしまうのが危険だというのだ。少なくとも日本の種子メーカーを守っていくことが何より重要でしょ。

そして、日本の各地域に「まだ」残っている在来種の灯火を消してはいけない。生物多様性は植物の多様性からである。そんなことを改めて思い出させていただいた一日だった。

山根成人氏の著書「種と遊んで」は名著である。興味を持たれた方はぜひ読んでみて欲しい。

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