やまけんの出張食い倒れ日記

近江牛のサカエヤさんが近江牛のドライエージングに成功しているようだ! 新保社長と南山の当たらしい取り組みがこの秋から始まる!

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先週の天空居酒屋にて、実は写真の牛肉を持参して焼かせていただいた。というのも、前々日に近江牛のサカエヤ新保社長より連絡があったからだ。

「やまけんさん、実はとある場所に熟成用の冷蔵庫を確保して試験的に運用していたんですが、かなりいい仕上がりになってきたので食べて欲しいんです。近江牛のA2や経産牛をドライエージングできたらと思ってね。送るんで、食べてもらえますか?」

このブログでも再三採り上げているとおり、いまや肉の「熟成」はとてもホットなキーワードになっていて、各所で熟成肉というメニューがみられるようになっている。しかし、これも書いてきたとおりだけど、結果的には単に乾燥させているだけでドライエージングビーフ特有の香りがなかったり、腐敗っぽい匂いがでてしまったりしているケースも多いようだ。

でも、僕は今年出荷した自分の短角牛「国産丸」の熟成肉をサカエヤさんにお願いしていたこともあり、ここの熟成には信頼を置いていた。というのも、さの萬さんに依頼した「さち」の熟成香よりはじゃっかん弱かったものの、きちんとNYでも嗅いできたあの香りがする肉になっていたからだ。

そのサカエヤさんが「送る肉は、けっこう端っこの方の、カビが生えてる部分に近い部分です。だから、けっこう香りがキツイかも」というほどのものだ。実際、端のほうは「いっちゃってる」ようにも見える仕上がり。

 

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上の方についている網目は、ガーゼ状の袋の網目です。ドライエージングの肉は真空パックしてはダメ。酵素を含んだ内部の水分が抜けてしまうので、ミートペーパーか布で包まないといけないのです。で、こいつを焼いた結果が冒頭のステーキ。

いやもう、ビックリするほどに美味しかったですね。香りはブワンブワンと漂っているし、筋の部分もタンパク分解酵素の働きのせいか、口から出さずに食べられてしまうほど。筋繊維の分解によって水気が多くなりジューシーに汁がしみ出てくる感じ。もう結構お腹いっぱいになっていた人たちが「うわっ 何これ、初めて食べた!」と驚くような味と香りになっていた。

この肉は経産牛。つまり黒毛和牛の子牛を産むためのメスを、何産かとったあとのものだ。血統をみると、曾祖父に谷福土井など、どちらかといえば増体型の血が濃い肉だった。ドライエージングにする場合、外側を2~3割削る必要があるので、どうしてもロースのバンが大きいほうが有利だ。その点では増体型の血統のほうがいいのかもしれない。

それにしても経産牛でA2以下に格付けされるようなものは、片っ端からドライエージングにしてしまった方がいいのではないか、と思えるほどの仕上がりだった。後日、新保さんから送られてきた熟成庫内の写真をみてまたビックリ。

 

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この熟成庫の写真で観るべきポイントは、新保さんに向かって左側の日本のロースの表面についている白カビの厚み。これはサラシで巻いている訳じゃありません。そして、庫内の清潔さだ。NYで視察した熟成庫は衛生的にはクエスチョンマークがつくようなところもあり、もしかすると微生物の活性のためには庫内が清潔すぎるといけないのではないかと思っていたのだけれども、どうもこのサカエヤ熟成庫を見る限りではかなり清潔度が保たれているような気がする。

サカエヤのこの熟成肉、なんとこの秋から京都のきたやま南山にて食べられるようになるとのこと。詳細が決まったらまた報じることにしたいと思う。関西にまた一つ、おいしい熟成肉を出す店が出てくる。なんだか、関西のほうが関東よりも進んできたような感じがするのは僕だけだろうか、、、