やまけんの出張食い倒れ日記

飯尾醸造の紅芋酢はこうやって搾られていた! 世にもヴィビッドな美しきピンク色の液体よ!

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さてこんぴらうどんでの至福の昼食後、蔵へ。といっても、いま飯尾醸造の酒蔵と、お酢を仕込んでいる工場は別の場所にある。

「まずは酒蔵へご案内します。ちょうどいま、紅芋酢の仕込みをしているところで、原料を仕込んでいるところともろみを搾っているところを両方みられるんですよ!」

おおおお!それは素晴らしい!

ここで解説しておくと、お酢はアルコールから造られる。ほんとうに真面目なお酢屋さんはアルコールから造る(そうでないところが大多数)。米酢はお米を日本酒にして、それに酢酸菌をつけてお酢にするが、紅芋酢の場合は原料となる紅芋をお酒にするのだ。それはみたことがないぞ!

 

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原料になる紅芋は、冷凍にしてある。保存性の問題かと思ったが、実はその方が色素がよくでるのだという。細胞壁が一度壊れるからだろうか。

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蔵人の皆さんとの再会。杜氏の藤本さんが出迎えてくれる!

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米作り担当の伊藤さん(下写真左)もいる! この時期の蔵人はみなお酒とお酢絞りに回されているわけだ。

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「さあ、やまけんさんのおやつがありますよ!」

えっおやつ? ああっ そうか!

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蒸かし芋です、、、(笑)

冷凍した芋を蒸かし、この状態で麹と一緒に水に入れて仕込むわけだ。

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みるとおわかりのように、そのまんま蒸すのではなくて、事前に包丁で芋の端のほうを削っている。

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なぜかというと、硬い繊維質が集まっている部分は醗酵しても分解しにくいため、搾る際にムラがでてしまうと言うことだ。だから、柔らかい部分だけにして仕込む必要があるのだということだった。_DSC9700

お芋の味は、もちろんサツマイモの味。それほど糖度が乗っているわけではないが、それでいいのだ。大事なのはデンプンとアントシアニン色素だからね。

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作業場の奥には、仕込んだ原料がお酒に変わっていくタンクが立ち並ぶ。

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もともと日本酒の蔵だったところを「廃業するので買って欲しい」と頼まれて手に入れたのがこの酒蔵だそうだ。

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さて、ここで仕込まれた紅芋のもろみがどんな状態になっているかをみるため、こんどはもろみを搾って酢酸菌をつけ、お酢にする工程を行う工場兼事務所へ移動。

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なんと、これが紅芋のもろみだ!

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なんと美しい、ヴィビッドな色なんだろう! もちろんまだ醗酵しているので、プクリプクリと泡がのぼって弾ける!

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このもろみは紅芋の固形分が多いので、搾って液体だけ取り出さねばならない。そこで使うのがこの槽(ふね)だ。

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このもろみを手桶に移し、、、

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袋に移し替えて、、、

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ならして槽(ふね)に積んでいく。

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この作業を延々と続けるわけである。

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この段階では自重のみで圧力を掛けずとも液体が槽口から注ぎでる。いわゆる一番搾りというヤツだ!

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本当に、こんな色なのだ。なんと美しいピンクなのでしょうか、、、

こうやって自重だけでほとばしり出てくれるわけではないので、、上から巨大な万力を仕掛けて、ギュウギュウともろみを搾っていく。さっきのもろみ袋を入れた上に、合計で400kg程度の材木を置いていく。これもきちんと上から押すときのバランス配分を考えながらやらないと、圧力が均等にかからないので、難しいそうだ。

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重しを載せた状態でまた数時間おき、それで搾れるところまでは搾ってしまう。

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ここからは人力である!

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手前と奥の日本の棒を使って、エイヤッと回す!

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高校時代に習ったソーラン節の振り付けを思い出してしまった。まあ、あれは船の櫓をこぐ動作だが、、、

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この時点で搾られる酒の色は、ピンク色ではなくて、これぞ紅色である。これもまた美しい、、、

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こうやって搾られた後、袋から出てきた粕はこんな感じになる。

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いまは堆肥などにしているそうだが、なんかいろいろ使い道がありそうな気がする(笑)

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さて、搾った紅芋のお酒に酢酸菌をつけて醗酵するわけだが、すでに仕込みの最終段階の桶がこれだ。

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中は、酢酸菌が表面に張った膜の、ものすごい光景!

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「もうこの酢酸菌は、ヘトヘトに疲れてる感じですね。あっちの富士酢プレミアムを仕込んでるほうの酢酸菌膜は元気な状態なんで、比べるとおもしろいですよ」

ホントだ!全然違うわ!

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たしかにこちらの膜はずいぶんと密に張っている。なるほどねぇ、、、

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酢酸菌にとってはこれから1年間の旅路なわけである。

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ちなみにこの昔からの蔵から、今年度中盤からは新しい蔵へと移る計画だという。

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新しい工場は道を挟んだ向かい側。ここに、最新のボトリング設備が配置されている。

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「これ、蔵人の健康をかんがえたら絶対に必要なんです。いまはみんな若いから思いもの持てますけど、いずれは身体がきかなくなるでしょう。でも長く働いてほしいんで、機械で出来る部分はどんどん効率よくしようと思って。その代わり、手でやらないといけないところは妥協しないでいきたいわけです。」

うーん ブラック企業の逆を行く飯尾醸造なのである。

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飯尾醸造のはなれにて、お酢のテイスティング。

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いつもやってることなんだけど、今回はとある特殊な処理をした紅芋酢をいただく。

うおっ 通常のより香ばしくて味も乗って美味しい! これはいったい、、、 いや、ここで詳細は書けないのだが、きっと近日中に発表があるでしょう。乞うご期待。

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いやー 米酢のできるまでは何となくわかったけど、紅芋酢の製造工程はホント、初めてです。彰浩社長に感謝!

まだまだこの項、続きます。