やまけんの出張食い倒れ日記

いま、もっとも美味しいジビエを食べさせる食肉集団エレゾの直営・紹介制レストラン、東京渋谷は松濤に現る!SNS等への投稿禁止の店だが、店主佐々木君の特別の許可により一挙掲載!その1

_D809247

ネットには書いては×なお店なのです。けれども特別の事情がありまして、今回特別に。おそらく他のネットメディアではいまのところ読むことのできない記事ですね、むっふっふ。

でもレストランの話をする前に、彼らがどんな肉を産み出しているのかを理解して欲しい。

十勝の食肉加工集団エレゾのことは以前から書いている通りだ。2009年、まだ工房立ち上げてから早い時期に出会ってから今まで、紆余曲折しながらも社長の佐々木章太君が頑張って率いてきた。下の写真の敷地すべてがエレゾ社である!

 

_2072886a

質のよいジビエを食べるなら、狩猟の段階から関わらなければならない。そのためにスタッフもほぼ全員が狩猟免許をとって猟に出る。また、契約する猟師の持ち込む獣に対しても、性別や年齢、撃つ場所や処理にすべて基準を設け、合わないものは受け取らない。

えーと、解体施設の写真もあるんですが、ちょっと掲載自粛しますね。

_2073201d

仕入れた肉は大きな自前の解体施設で、お客さんの要望に合わせて固まりのままで熟成。ごらんのとおり真空パックをしない含気熟成だが、NY式のドライエージングではなく、いわゆる枯らしである。かなり質のいい枯らし肉になる。

エゾジカやキジバト、ライチョウにヒグマなどのけもの肉ももちろんだが、エレゾでは畜肉も扱っている。豚、鶏、牛である。短角牛は北大牧場から取っているが、豚と羊については、なんと自社生産に乗り出してしまった。それも、、、

_2072972

放牧である!

_2072978

広大な敷地面積を活かして、LWDとバークシャーを放牧で飼う。

_2072998

もちろん日本の標準である170日で100kgの出荷体重というのはまったく無視。すくなくとも365日は飼っている。なぜかというと、生ハムを作るためである。

_2073210

よい生ハムにするためには、170日程度では未成熟で、そこそこの質のものにしかならないそうだ。そこで放牧をして、薄い栄養価でじっくり飼い、体重もしっかり140kg程度まで乗せていく。そこまで育てた後腿が、よい生ハム原料になるのだという。

_2073231

先の生ハム貯蔵庫、2010年に視察した時は在庫がびっしり吊されていたのだが、いまや大人気で品薄になってしまい、ガラガラ。要望に間に合っていないのである。

_2073153

彼らの仕込んだ生ハムを食べれば、いっていることがわかる。市販されているごくあっさりした生ハムとの味わいの違い、まとわりつくように滑らかで凝縮されたうま味の濃さには、驚くばかりだ。

_2073301h

ジビエも畜肉も、ロースやモモといった人気部位以外は余ってしまうことが多い。けれども、エレゾでは「肉が余る」ということはない。彼らはシャルキュトリー職人集団でもあるので、「売りにくい部分はすべて付加価値をつけて販売します」と言い切る。

_2073313

_2073341

これらレストランで使いやすい肉以外の部位は、シャルキュトリーにしてしまうのである。

_2073290

_2073070a

この写真に載っているシャルキュトリー、すべてエレゾ社でできたものだ。しかも特筆すべきは、牛肉以外はどの肉も自前で獲ったか、生産した肉だということだ。そこまでつきつめた食肉集団はこの日本に彼らしかいないだろう。

最近、にわかにシャルキュトリーブームになっている。獣害に悩む地方でも、駆除した害獣の肉を加工して販売するという企画がぼこぼことできている。しかし、残念なことにその多くが「美味しくない」。狩猟技術も、そのあとの処理も、そして食肉加工の3つの行程のどこかで中途半端な部分が存在するからだ。

_2073517

その点、エレゾには、元料理人で狩猟免許を取得した佐々木章太を始め、なだたるレストランで修業してきた料理人たち、そして狩猟者などがスタッフとして在籍している。つまり、獣をとらえ、畜産を行い、それらの肉を適切に処理して熟成し、食肉加工を行うところまでが一貫しており、それぞれのプロセスに関わる人がみなプロフェッショナルなのである。

_2073521

_2073399

そんなエレゾのとある日の昼餉。いやいつもこんなんじゃないとは思うけど、、、

すべて手造りのランチ

すっごいんですよ、ホント。ここにあるものぜんぶ自分たちで作っている。

_2073139

バゲットサンドのバゲットも、ブーランジェリー部門につとめていたスタッフが焼いたもの。そしてなんと、はさまれてるチーズもスタッフの奥様のお手製だそうだ!

_2073143

さきほどの写真にあったシカ挽き肉を使ったハンバーグ。

_2073149

激烈に美味しい、、、ジビエは臭いと思っている人、ちがいますよ。いい処理されたジビエは透き通る美味しさなのです。

とまあ、こんな人達が十勝に居ます。その彼らが数年前、札幌に「カマラードサッポロ」という店を構えたときはちょっと驚いた。

_EM10954

_EM11012

十勝のエレゾ工房で産み出された食肉製品をすべて味わえる店だ。

_EM11051

_EM11064

_EM11086

_EM11095

札幌ではすでに、同業者から「あそこはすげぇ」と言われる位置づけになっているらしい。そのエレゾが満を持して、東京に進出するという。それも、場所を訊いてびっくらこいてしまった。なんと渋谷の松濤美術館のすぐ近くの一軒家!

大丈夫かよ章太、、、

それが、大丈夫だったのである。
次のエントリで、松濤に新しくできた「elezoハウス」を特集します。