やまけんの出張食い倒れ日記

魚醤パスタを造らせたら日本一!?の眞貝シェフ謹製、シラスパスタのできるまで。

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今回の熊本・芦北にも同道してもらったんだけど、数ヶ月前まで東京の大手飲食企業で働いていた眞貝シェフが、ホールスクエア福岡など丸菱の飲食店のシェフとして着任した。彼は日本ドライエージングビーフ普及協会の公認シェフでもあるのでこのブログでも数回登場してもらっている。

そこでは主に肉焼きストとしてだったのだが、じつは僕は彼を別の眼で観ている。というのは、、、彼は稀代の魚醤マニアなのだ。日本各地どころか全世界の魚醤を集めてそれぞれの味を熟知した上でイタリア料理をベースにした彼の料理に使い分けている。おそらく、日本の魚醤で彼が試していないものはないだろう。

だからことあるごとに彼に魚醤パスタ造ってくれと頼むことにしている。魚醤とパスタは相性が最高だ。ナンプラーやニョクマムのような東南アジア系の魚醤であっても使える。それは当たり前の話しで、魚醤とは魚が腐らないように強い塩をして貯蔵することで、魚体を酵素分解してアミノ酸たっぷりの液体にしたものだ。その原料として、カタクチイワシが使われることが非常に多い。

カタクチイワシに強い塩をしてねかせておくものといえば、、、そう、アンチョビがそうではないか。つまりアンチョビは魚が溶けてアミノ酸の液体になる途上にあるものということができる。そのアンチョビはよく、パスタの味のベースに使われることはご存じの通り。だから、魚醤をパスタの味のベースにすることはまったく不思議のないことなのである。もちろんパスタ以外の麺料理すべてに合うといえる。

実際、僕の好きなラーメン店などではスープのうま味強化のために魚醤を使用している。「大きな寸胴スープ満杯に対してほんの少し入れるだけで、うま味がズンと増すんですよ!」とホクホク顔で言っていた。

ただし注意があって、以上は原料に魚と塩だけをつかったものについてのみいえることだ。というのは、日本では魚と塩に加えて、麹を使った魚醤も多い。麹を使うことで発酵というプロセスが加わるので、早く商品化できる(魚と塩だけの場合は一年以上かかることが多い)ということと、麹によって醤油のような香りが加わるため、お醤油的つかいかたができると提案できるからだ。

しかし、僕からすると麹を使った魚醤は正直いって使えないものが多い。醤油のニセモノでしかないという感想のものが多いのだ。麹ってものすごく個性が強い味だ。それが昇華したのが醤油という調味料なのだけれども、日本料理や中華・韓国料理には使えるものの、それ以外の諸国料理に醤油を使おうものなら、たちまち味が日本的なものになってしまう。まあ、当たり前と言えば当たり前だけど、麹は支配力のつよい風味をもっているのだ。

だから、麹を原材料につかった魚醤商品はパスタには合わない(和風パスタならいいかもしれないけど)。他の使い方をしましょうね。

さて、本題にはいりましょう。熊本・芦北地方では、海の水質が浄化されたことが確認され、水産業が復活している。今回はシラス漁が行われている現場に伺ったのだが、一つ前のエントリのポートレートはそのシラス漁師たちの漁協の組合長さんの写真だったわけだ。できたての、中太の釜揚げシラスは味がシッカリしていて、とても美味しいものだった。

お土産に大量のシラスをいただいて熊本に戻り、翌日ぼくはホールスクエアで料理人向けのセミナーをすることになっていたのだが、「昼飯にパスタ造ってよ眞貝君、ひさしぶりに魚醤つかって、シラスたっぷりのやつ」とオーダーしたのだ。

それがこれだ!

 

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はい、そのプロセス。

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味のベースになるアサリの出汁を取って、アサリは具にするので出しておく。そこにもオリーブオイルで香りを出したニンニクが入っていることに注目。

そして、トッピング用にシラスをオリーブオイルでカリカリに揚げておく。揚げすぎると余熱も含めて焦げちゃうので、程よいところで金ざるにでもあげておく。

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他の具材としてナバナを塩ゆでして一口大に切り、ミニトマトもカットしておく。

パスタはもちろんマンチーニの2.2mm。

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しっかり塩味をつけたお湯で茹であげる。

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太い麺の場合は塩味がしっかりついてないとぼやけた味になるので注意。眞貝君は湯を数度飲んでチェックしてから麺投入をしていた。

仕上げ鍋に手でギュッと潰したニンニク数片を入れ、オイルで加熱。香りが出たところに組合長からいただいたシラスを贅沢に投入。

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そこに香りと風味づけに注ぐのは、白ワインではなくてベルモットのノイリー・プラット。

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マティーニに使う酒だが、実によい風味がパスタに加わるのだという。アルコールが飛んだらアサリ出汁を注ぎ、そこに魚醤を加えて少し加熱し、ソースの完成。

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この日使った魚醤は秋田のアミ塩辛魚醤。アミも魚醤によく使われるんだけど、まあ特徴はあまりなかったかな。使い勝手はいいけど、質のいいナンプラーとの差違が問われるところ。

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麺が茹で上がったら、ナバナ、ミニトマト、アサリとエキストラバージンオリーブオイルを加えて鍋でよく和える。

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麺を盛りつけてから、具材を上にもりもり。

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その上から揚げたカリカリしらすをトッピング。

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そこへレモンの皮をすっておろして、、、

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シラスとアサリたっぷりの魚醤パスタの完成だ。

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もういわなくてもわかるだろう。美味しさこの上なし。

魚醤は味のベースをつくってくれる存在だが、それ単体だけではたりないこともあるので、アサリ出汁を加えるとすごいことになる。貝の出汁と魚醤のアミノ酸が相乗効果でうまみを強化してくれるのだ。ぜひ試してみて欲しい。

この眞貝君の料理をこころゆくまで愉しめるイベントを12月20日、福岡のホールスクエアレストランで開催予定。やまけんオフ会の福岡版とも言えるイベントにするつもりなので、乞うご期待。もちろん魚醤パスタ腹一杯になるように食べてもらえます!