February 29, 2004

食べるものが無くなる日がくる

 表題の件がテーマとなったNHKスペシャルを観ていた。ある識者が最後にこういうことを言っていた。前後の文脈込みなので意訳になるがご容赦。

「鴨などの水鳥は昔からインフルエンザの宿主として知られてきた。でも、鴨はウイルスとともに生きている。人間は何かウイルスが発生すると、例えば鴨を根絶やしにすることで制圧しようとする。これは、自然に生かされている人間として不遜なやりかたなのではないか。鴨のように、うまく共生する方法を探らないと、、、」

 実にこの世界に対して謙虚な方の意見だと思い、敬服した。

 先回、このblogに「安全な食べ物は安くはならない」ということを書いたが、相当な人から共感をいただいた。本編もその続きとなる。

 これから起ころうとしていることは、我々が食べるものがドンドンなくなっていくということなのだが、それにお気づきだろうか。BSE問題により牛肉に対する不信感が高まった。輸入野菜の農薬問題で、青果物に対する信頼感が低下した。鳥インフルエンザは人に感染するとわかり、パニックを引き起こした。豚や魚や、いわんや野菜もどうなるか全くわからん状態だ。こんな状況は、10年前には予想だにしなかったことである。

 10年前、、、僕の母校の大学のK先生が、政策系の講義で農業問題を取り上げたことがある。当時、米の自由化問題が話題の中心だったGATTウルグアイラウンドについてである。その際、僕は学生代表としてプレゼンをやれといわれ、もちろん自由化反対の立場から論陣を張った。自由化をするのであれば、段階的に国内の競争力を向上する施策を打ってからにすべきだという話をした。
 これに対してK先生は真っ向から自由化反対論を切り捨てた。その頃はこんな造語はなかったが、今から思えばこの先生も「グローバルスタンダード」の時代がくるという発想だったのだろう。こういってのけたのだ。

「山本君、米が日本で作れなくなったら、韓国や中国から輸入すればいいんです。」

その瞬間、頭が真っ白になるほどの怒りを覚えたのを記憶している。当時バブル終盤ということもあったからこその話かもしれないが、、、

この発言が成立するには、大きな条件が3つある。

1.日本に食料を輸入する(つまり買う)だけのカネがあること
2.輸出してくれる国があること
3.その品目が輸入可能になっていること

 さて、このところ起こっている問題を考えたときに、これらの条件はどこまで守られるだろうか。牛肉や鶏については、3.がすでに×である。世界的に当該品目が取り扱えなくなるのだ。
そして1.2.については、もうしばらくしたら問題が顕在化するだろう。中国が消費国になれば、日本に輸出する必要性は無くなるはずである。

 もしこうなったら、日本はどうなるのだろうか。

 先日発表されたばかりだが、農林水産省の調査では、日本の食料自給率は40%である。これは、先進国中ぶっちぎりで最下位である。この食料自給率の内訳の中で、野菜はかなりの自給率を占めている。問題は穀物だ。主食用穀物つまり米については61%だ。

「お、いいじゃん」

と思ってはいけない。飼料作物を含め、すべての穀物の自給率は、なんと28%である。小麦などはたった13%しか国内で生産されていないのだ
 飼料作物というのは、家畜の餌だと思っていただきたい。乾燥トウモロコシや乾草が主体で、牛も豚も鶏もこういうものを食べている。これを含め28%ということはだ、日本の食卓にあがる肉類も含めて、米を除くほぼすべての穀物が海外産だということなのだ。

もっと詳しく知りたい方はぜひ下記農水省のWebを見て欲しい。
http://www.kanbou.maff.go.jp/www/anpo/sub63.htm

つまりだ。今、のほほんと食べている食品は、半分以上が(60%が)他国に依存して生産されている。今までは脅威となる要素が見えにくかったから問題になってこなかったが、いよいよ食べるものがなくなる危機が目に見えてきたと言うことなのだ。

 世にも恐ろしい「トウモロコシウイルス」とか「小麦粉病原体プリポン」なんてものが発生したら、牛肉だけではなくすべての畜産が吹っ飛ぶのだ。きっとそうなったら、消費者はこう言うに違いない。

「え?牛や豚って草たべてれば育つんでしょ?その辺の草を食べさせればいいじゃない!」

そうはいかない。家畜に食べさせる草を国内で生産するコストよりも、海外から輸入した方が断然安かったから、輸入中心になったのである。それを国内産に切り替えろと言うことはつまりコストが上がり、

「牛肉の値段が今の数倍になる」

ということなのだ。もちろん牛だけではない。すべての畜種だ。

 あと、草だけ食べさせた牛や家畜はおそらく現在の日本人の嗜好には合わない味になるはずだ。日本人に好まれる霜降り肉は、トウモロコシなどの高カロリーな飼料により生産される。草を食べさせると牛は、極めて健全に(つまり脂肪がつかない)育つため、霜降りにはならない。ま、僕はそういう赤身中心の肉も好きなのだが、、、

 それ以前に、国内で今の肉供給量を保つことができるために必要な飼料作物を作ろうとすると、、、人間が食べられる他の作物をつぶして牧草畑にしなければならないだろう。本末転倒である。

 ずいぶん長くなってしまったが、肉の問題だけではないのだ。すべての食品に対して、このように「明日から食卓に上らない」可能性があるということを知って欲しい。

 そして、このエントリで最もいいたかったことをこれから言うのだが、、、

 この状態を創り出したのは、他ならぬ我々自身なのだ。

 安いものしか買われなくなってしまった小売店頭で、商品を棚に並べてもらうためには、原価を下げるしかない。原価を下げるためには効率的に食品を生産するしかない。国内で手配ができないのであれば国外のものに手を出すしかない。それにも安さを求めるのであれば当然国外の生産地では想像だにしない資材や農薬を使い、、、
 とこう言うことではないだろうか。

 だから、結論として「これから、食べ物は高くなる」という事実を受け入れるという選択が必要だと思う。今、消費者の多くは「安全/安心」を求めているようだ。それはそうだろう。では、少々高くなっても我慢しよう。肉の生産がダメージを負っている。肉をあまり食べないようにしよう。その方が元来、東洋医学的な見地からいけば健全だ。国産の小麦で作られたパンが外国小麦のパンよりも高いけど、そちらを買うようにしよう。

 そんなのは、すべて他の拠出(嗜好品や服や娯楽)から割り引けばいい。何度も言うが、きらびやかな服は外を飾ってくれるが、食べ物は人間の内部、そのものを構築するものなのだ。粗悪なものを食べたら、粗悪な細胞になると、なぜ思わないのだろうか。

 やや書きなぐりの感もあるが、ちょっとホトバシリマシタ。今回はこんなところで。

Posted by yamaken at 01:01 PM | コメント (7)

February 26, 2004

トレーサビリティシステム実証実験の報告会

農協流通研究所主催で、下記のセミナーが開催される。

「食品トレーサビリティシステム普及推進セミナー」
http://www.nrk-net.org/fukyu.pdf
3月11、12日開催
※詳細はWebをご参照。

この中で、11日の14時から、僕が関わっている「青果物流通研究会」の発表をする。プレゼンテーターも僕がやることになる。

僕が関わったトレーサビリティシステムの実証実験は下記ページのようなものだ。
htttp://www.gls-net.jp/

セミナー参加範囲はだいたい農産物生産・流通関係者が主だが、一般も問題なく参加かのうとのことだ。もしご関心の向きは申し込みをされたい(僕に言ってもダメよ。)。

会場で声をかけてください。

Posted by yamaken at 05:00 AM | コメント (0)