広島酒場巡りその2 いまビールが一番熱いのは広島だ!銀山町で毎夕2時間だけ開店する新・伝説のビールスタンド重富の5種+αの注ぎ方にノックアウト必至なり! 基本の5種の注ぎ方をレポートする!

2014年8月 1日 from 出張,食材

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さて今回の広島行きでいの一番に電話をかけたのは、いつもの竹鶴酒造杜氏・石川達也である。というのも、前回の広島での酒飲みにつきあってくれたとき、案内してくれた店がここ「重富酒店」。「広島を生ビールで元気にしたい!」と叫ぶ酒屋さんだ。

 

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■広島県はレモンの収穫期! 竹鶴酒造の石川達也杜氏と、農業者・菅君と廻った広島の昼酒の心地佳さ!
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2013/12/post_2045.html

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その時は開店前だったしいきなりだったんで挨拶だけさせていただいたのだが、店主の重富寛さんだ。実は重富さん、ある時ビールの講習会を受けた際に、「いまのビールの注ぎ方は、わざわざビールを不味くするものだ」ということに気づく。そう、よくあるビールの液体と泡を別々に注ぐ、あの仕組みだ。そこで研究を重ねた結果、昭和初期に使われていた設備を再現。それは、おそらくあの灘コロンビア(”灘コロ”がわからない人は検索してみよう)で使われていたものと非常に近い原理のものなのである!

もうこの時点でビール好きなら「オオッ」と前のめりになっているだろう。東京では、灘コロの技術を継ぐ「ビアライゼ’98」が新橋で頑張っている(メンチカツ最高!)が、まさか広島で灘コロ方式に出会うことができるとは思わなかった。

しかも、ビアサーバーが昔の方式だったとしても、それだけで美味しく注げる訳がない。だってすげー難しいんだから。この設備で注ぐには技術が必要なのだが、その注ぎ方でビールののどごしやクリーミーさ、味わいが劇的に変わることを発見。5通りの注ぎ方を修得されたのだ。

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ちなみに一杯500円で、提供できるのは2杯まで。え、それじゃあ一人で全ての注ぎ方を味わうことはできない、、、なぜかというと、彼は酒屋さんである。重富さんのお客さんは周りの飲食店なのである。したがって、何杯も飲ませたらお客さんの営業妨害になる。それよりも、最初の一杯を楽しんでもらい、つまみや料理の美味しいものが食べたいとなったら周りの飲食店に言って下さい、というのがこの店の趣旨なのである。筋が通っていてご立派!

しかし今回は!

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石川達也の顔のおかげで、その「一人二杯」の禁を破り、いろんな飲み方をさせて下さるという!いやーーーー重富さん、そしてタツヤンありがとう!

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このビアサーバーの戸を開けると、、、

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ご覧の通り、氷冷システムでビールが通る管を冷やしている。

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ビールを注ぐコックが二本あるが、向かって右側のコックが昭和8年のドラフトコック。一気圧という強い圧力でビールを注ぐものだ。そして左側がクリーミーな泡を創り出すことができる現代のドラフトコック。この二種類のコックがあるので、あとは注ぐ勢いや角度、コックの使い分けで様々な味わいを作り出すことができるのである。

では、実演お願いいたします!

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■壱度注ぎ
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ごらんのようにシューーーブワブワッと、強い気圧で押し出されたビールをするりと一度で注いでいく。

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泡の粒子は眼でみえるほどに粗めで、バチバチと弾ける感じ、駆けつけ一杯に飲むのに一番美味しいと思えるのがこの壱度注ぎだそうだ。

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みなを代表して僕が最初の、そして一番おいしい何口かを飲ませていただく。

フー、シュワシュワシュワ、パチパチパチ! 炭酸が元気にわき上がり、舌をピリピリ刺激する、元気な味わいだ。美味しい!

「さあそれでは弐度注ぎの「昭和」です。」

■弐度注ぎ・昭和

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この泡が、もうさきほどの壱度注ぎとまったく違うのだ!

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ネッ!?

先ほどのクローズアップ写真では泡の一粒一粒がみえたけど、この弐度注ぎは泡の粒子が小さすぎてみえない!

口をつけるとフワッとした泡の触感が上唇を包む。そして先ほどの壱度注ぎよりも炭酸のバチバチ感が抑えられた、バランスの良い味わいだ。

「ではこの口当たりをさらにモッチリした泡にしていく、「弐度注ぎ・平成」です。」

■弐度注ぎ・昭和

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とここまでは弐度注ぎの要領で、昭和のドラフトコックで注ぐ。しかしこの後、左方向へシフト!

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二度目の注ぎを、細かい泡を作り出すことのできる現代のドラフトコックで注いでいるのである!なるほどっ

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この注ぎ方によって得られる泡は、さきの「昭和」と比べ「もっちり」という感覚があるそうだ。

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泡の粒子のキメじたいは、さきの「昭和」のほうが細かいかもしれない。しかし、その粒のテクスチャーがたしかにちょっと違う。

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飲んでみて納得。たしかにもっちりしている!上部の泡がコシのあるなめらかさなので、下部の液体になっているビールが口に流れ込む時に、泡を引き込む。そうすると、口腔内にコシのある泡があたるのでもちもち感を感じるのだろうか? これ、スゴイです。

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ごらんのように、のんでものんでもクリーミーさが消えない。これが泡のコシというものだろう。

さあ、そして注ぐのに5分かかるという、参度注ぎだ。

■参度注ぎ

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いちど、思い切り垂直に泡を立てて注ぐ。その泡が収まるまでの間、しばし談笑。

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収まってきたら二度目の注ぎ。

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この段階でこんな泡。

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とても粗い泡!

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え~どうなるの?とギャラリー一同。

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そして参度注ぎ!

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これがフィニッシング!

いやー 個人的にはこれが一番好き。炭酸をかなり抜いているので、泡のみならず液体部の口当たりが実にまろやか。二杯目以降はこれで行きたいナーという感じなのである!

さあそして、最後が重富さんが開発した「重富注ぎ」である!

■重富注ぎ

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現代版ドラフトコックで、かなり傾けたところからスタート。

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一度目の休息。そして傾きをたてつつフィニッシング!

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ゴメン、じつはもうこの辺から、アルコールが廻っちゃってよくわからなくなってきてしまった。

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でも、やはり泡のキメは非常に細かい。そして炭酸もほどよく落ち着いている。つまり現代版ドラフトコックを使って、適度にやわらかく注ぐのがこの方式なのだろう。参度注ぎだと柔らかすぎて飲み応えがない、と言う人にはこちらのほうがいいかもしれない。重富さん、違ってたら教えてね!?

さて公式にはこの5通りだが、実は裏バリエーションがあって、合計10種類くらいの注ぎ方があるのだそうだ。

たとえばこれ、わらっちゃうんだけど、ビールの泡を入れ換えちゃう技。

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そんで無くなった方には違う注ぎ方で泡だけ追加。

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どー考えても、重富さんはビール変態であります!

しかしどれもきちんと味が違う!味が違うということは、区別ができているということ。すべて理論が通っているのである。やはりビールの道は深いのである。

「石川さん、やってみませんか?」とのことで、タツヤンビール注ぎにチャレンジ!

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それ、いったいナニ注ぎ? ゴジラ注ぎ?

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いやー最高!

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重富さん、実に最高である。実は広島でキリンが瓶ビールしか置いていなかった時代に、三台前の店主つまり重富さんのおじいちゃんは、他よりはやくアサヒの生を売っていたんだそうだ。そしてお父さんもアサヒ生を売っていた。重富酒店は代々、生ビールで広島を元気にするという使命を持っていたのである。

そうこうしているうちに開店時間が迫ってきた。店の外に出ると、もう行列。しかも若くて可愛い女の子ばかりである!

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やっぱりみんな美味しいものには敏感!ここで一杯キューッとやって夜の町にくり出す美しき妖精達よ。いや~ん最高!

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広島の酒場の新名物! 17時から19時までの2時間限定。まずはここでビールの美味しさに舌鼓を打ってから、広島の夜を堪能してみることをお薦めする!

ビールスタンド重富
広島県広島市中区銀山町10-12
http://sake.jp/beer_stand/concept/

重富さん、お忙しいところ、本当にありがとうございました!