やまけんの出張食い倒れ日記

農産物の生産者が、苦境に陥った飲食店のシェフを助けるという発想に感動した!北海道の上士幌町、熟成ジャガイモの元祖といえる村上農場のレシピ公募の取り組みを多くの料理人に識って欲しい。そして消費者はぜひ本家の熟成ジャガイモを買って応援しよう!

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いまでこそ、ジャガイモを低温下に置いてでん粉の糖化を促し、甘くシットリした「熟成ジャガイモ」の存在は識られるようになった。もちろん北海道では、保管の意味で雪室に貯蔵して食べるジャガイモが甘く美味しいことは知られていたけれども、それを積極的に出荷するということはなかった。

これを「熟成ジャガイモ」としてきちんと体系化し、世に出したのは村上農場だ。

体系化というのは、その年その年の気象条件によって左右される雪室ではなく、敷地内に建てた冷蔵倉庫内に温度・湿度を管理できる環境を構築し、またそこで20種近くの品種ごとに最適な熟成期間を割り出した。

いまでこそ北海道の巨大系統組織であるホクレンも「よくねたいも」という、CA貯蔵で男爵薯やメークイン、キタアカリなどをねかせて糖度を増した商品を売っているが、なんといっても村上農場は自分達が育てたジャガイモをその敷地内でねかせるのだから、生産者によるばらつきもなく、薯のこまやかな品質に合わせた貯蔵を実現できる。

初めて食べたときは「ジャガイモってこんな味になるのか!」と驚嘆したのを思い出す。

2009年の写真、ふたりともはつらつとしている!(いまもだけどね)

ジャガイモはとても基本的な野菜品目であり、北海道では大量に生産・収穫することもあって、個人向け宅配や飲食店むけの細かいロットでの販売は、産地側としてはやりにくい。だから卸を通じて流通するのが普通だったわけだが、村上農場は早くから飲食店やスーパーとの直接取引に力を入れてきた。

村上農場の存在を教えてくれたのも、当時はまだ「ラ・グラディスカ」で腕をふるっていた、現「イ・ルンガ」の掘江純一郎シェフだ。一流のシェフはいい生産者にはくびったけになるものだ。

その村上農場がつい先日、このコロナ禍において苦境に陥る飲食店のシェフに向けた、おどろくような企画をたてた。ちょっと長いけど、文章の前半部を、村上智華さんの許可をいただいて、転載します。

【飲食店・生産者・加工メーカーのお友達へ】

予測もしなかった状況の中で、この一か月、自分が何をすべきか考えてきました。
全てが元に戻る為に、しばしの時間が必要だとしたら、私はこの強制的に与えられた辛い現状の中、批判や評価、嘆きよりも、未来に繋がる行動をとりたいと思います。

(中略)

村上農場は、お取引先の飲食店様に、農場のじゃがいもを使ったレシピのご依頼をしたく存じます。

私達はこの数年、料理提案・写真付きの売り場用POP作成をしてきました。
そして今回、更にお客様にお料理を楽しんで頂きたく、詳しいレシピを伝える為にQRコードを使用した展開をスタートさせる事にします。(農場のHPにはリンクさせない予定です)

小売店さん、お客様、村上農場、飲食店さんのみんなが繋がり、幸せになれる企画です。

お腹を割ってお伝えしますと、50万円の予算で、一件5万円で10店にご依頼をお願いしたいと思います。

農場ではこれまで外部委託に関し、通常、一レシピ1万円でお願いをした経緯があります。
今回の3レシピ5万円の価格は、プロの皆様にはあまりにも低価格で申し訳ないのですが、一個人農場として、出来る限りの予算の計上です。
何卒ご了承下さい。

※原文は下記をお読み下さい。

これ、スゴくないですか?

いままでは、料理人や小売店が「この生産者さん、すばらしいよ!」とスポットライトを当ててきた。生産者はか弱い存在、販売力もない生産者が多いしね。

でも、村上農場は多くの飲食店だけではなく、よい食材に目をつけて仕入れる各地のスーパーとも取引をしている。そうした小売業界はいま、昨対比140%程度のよい成績をおさめている。

だから村上農場は、飲食店にむけて支援を送ることができる。しかも、断じて施しではない!プロとしてのレシピ提供という、ビジネスでの支援である。そこが素晴らしいじゃないですか。

もちろん料理人のレシピを3レシピ5万とは安い!という人もいるかもしれないが、、、

食の世界で物書きをしている人間のひとりとして言わせてもらうと、料理人さんへのレシピ謝礼ってすげー安いよ、、、いま、この時期にできる支援として素敵じゃないかって思いますね。

ただ、メッセージ冒頭に
「飲食店・生産者・加工メーカーのお友達へ
とあるので、これまで村上農場と取引のあったシェフでないといけないんじゃないの?ということになってしまうと、それもまた世界が狭まってしまう気がする。

さきほど、村上智華さんとやりとりしたところ「この取り組みは村上農場とか、取引先とか、そういう狭い事では無いと思っています。」と、お友達限定の枠をとっぱらうことに賛成していただけた!

ので、ジャガイモレシピに自身のある料理人さん(といってもプロの、いま困っている料理人さん限定ですよ)、ぜひ村上農場さんに応募を。

ただしもちろん先着順とかじゃなくて、ちゃーんと選抜されます。村上智華さんはタダモノではない美食家ですからね、、、一流のレストランに出荷しているということは、そうした店の味をよーくわかっていらっしゃるということですからね、、、頑張って!

ということで、料理人さんにはそういうメッセージですが、消費者にもできることがあります。それは、村上農場のオンラインショップで熟成ジャガイモや絶品の豆類を買って、美味しく支援のお手伝い!

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■村上農場オンラインショップ https://imomame.jp/

ぜひ詰め合わせもので、その美味しさを識って下さい。なお、いまの時期、九州方面からの新ジャガイモが店頭に多く並んでいると思いますが、新ジャガはでん粉がまったく糖化されておらず、水分量も多いもので、あっさりした味わい。熟成ジャガイモとは全くの別物です。

熟成ジャガイモは、届いたらすぐに光を遮って冷蔵庫へ。あたたかく光のあたる場所だと、せっかく寒さで糖度増したのが還元されて甘くなくなり、また芽が出たり、緑化が始まってしまったりします。新聞紙などに緩くくるんで冷蔵庫の野菜庫へ入れることをお薦めします。

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村上農場のジャガイモは数種まとめて買えるので、これを混ぜ混ぜにしてフライドポテトにするのが僕の好み。僕のやり方はいちど塩ゆでで火を通します。皮付きのまま、15分ほど。それをいったんザルにあげて、粗熱とれたころに櫛形にカット。これを高温の油で、表面にカリッと揚げ色がつくまで揚げます。そこに、うちではフィンランドのハーブソルトを振っていただいております。表面カリッと中がホクッとで最高。糖化した薯の甘さとしっとり感にホックリ感と皮のカリカリ感が加わって最高ですよ。

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自宅撮りなので色が悪くてスミマセン、ことフライドポテトに関しては、高温での加熱により生ずるアクリルアミドが心配というはなしもあるけど、我が家ではフライドポテト毎日食べるわけではないのでね。

ちなみにわたしは、でん粉価が高くホクホクしているにも関わらず、煮崩れしにくいという特質を持つ「こがね丸」が大好きです。智華さんによれば料理人のなかでも大人気品種とのこと。

ぜひお試しあれ!