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2004年01月27日

大阪インデアンカレー 衝撃の事実が発覚した!

 さて 「こけし」でカツ丼を食べ、すぐさま地下鉄で2駅戻り、長堀橋地下1Fにあるインデアンカレーに向かう。この店に対する僕の入れ込み度合いはすでにご存知と思われるが、大阪を訪れる時にこのカレーを食べないなどということは考えられない。
 これまでは常に、大阪駅から地下道を歩いてすぐの阪急地下街にあるインデアンに食べに行っていた。しかし、どうやら大阪人によれば、店に寄って味が違うらしいのだ。この辺、情報が錯綜していて、「いや、あそこのカレーは一箇所で作っているから、味は同じだ。」という人が居たり、「店によって味が確実に違う。」という人が居るのだ。これは、真偽のほどを確認しなければならないな、と、やまけんが立ち上がることにしたのであった。

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■インデアンカレー 長堀橋店
住所:大阪市中央区南船場2 クリスタ長堀地下街2号8番
電話:06-6282-2040

メニュー:
インデアンカレー 730円
インデアンスパゲティ 680円
ハヤシライス 600円
ミートスパゲティ 600円
ピラフ 600円
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 見てのとおり、梅田店と違ってメニュー数が多い。梅田店ではカレーとハヤシライスだけだが、ここではスパまであるという。ハヤシはこないだ食べて、独特の旨さを感じたが、スパとかピラフと言うのはどうなんだろう。いずれ試してみよう。けど、やっぱまずはカレーだ!

 さっきカツ丼を食べてきたことだし、ここは大人になって普通盛りのカレーに卵の黄身ひとつで我慢しよう、と思っていたのだ。地下道を歩いているときは。でも、、、楕円形のカウンターの、一番奥の席に座った途端に、その大人っぽい決意や諦念は吹き飛んでしまっていた。

「インデアンご飯大盛り ルーも大盛り、 それと目玉!」

注)「目玉」とは黄身二つというオプションである。親友の竹から聴きました。
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いやあカレーの魔力って恐ろしいもんです。
ここでシマッタ!と思うことが。店の一番奥の席に座ってしまったので、飯盛り人の背中しか見えない!これまで書いてきたように、インデアンはカレーを盛る人(私は勝手にチーフと呼んでますが)の美技が素晴らしいのだ。大きなレードルですくったカレールーを、綺麗に盛り上げた白飯の上に肘と手首のスナップをシャコっと返すあの技。美しいとしか言いようが無い。阪急梅田地下街店の山田チーフの美技に惚れた僕としては、あれクラスのカレー盛りを切望するのである。

 ところが、この店に入店した時から感じるのだが、なんだか緊張感がない。飯盛り人は若い男性、その周りで接客をするのは4人のおばちゃんズだが、態度が悪いとか沿う言うことは無いのだが、あのピンと張り詰めた気が、漂っていない。いや、レベルが低いと言うわけではないけど、普通なのだ。ちょっとだけ、嫌な予感がした。

 そして、僕のオーダーが運ばれてきた。
curry.jpg

 すでにこの時点で、全体のフォルムに緊張感が感じられない。スプーンで一口すくう。口に運ぶ。そして驚愕

「味が、ぬるい、、、」

 一言で言えば、脇が甘いということだと思う。店内と同じく緊張感が無い味なのだ。何故だろう?あの特徴的な甘味と、その後に襲ってくる辛さは一緒のような気もするが、やや甘さに傾き、マシンガンのように速射される辛さの粒子が感じられないのだ。
 もう一口食べてみて、その理由がおぼろげにつかめた。ルーの温度だ。味がぬるいと思ったのは正解で、ルーの温度が若干低く感じる。したがって辛さも和らいで感じるのではないだろうか。

 味の世界は第一印象がすべてだ。一度、ぬるい味と思ったものが、しり上がりでよくなるというのはそうないことだ。2つ乗っている黄身を崩して旨味を増してみる。通常の旨さはある。しかし、、、なんだか満足度が低いのであった。

 あの梅田店の山田チーフの盛るカレー、そして店内にピンと張り詰めた「うちは旨いもんを出してる」という誇りが感じられる雰囲気、それが欲しいのだ。こんな風に僕は書いている。

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 これまでも観察していたのだが、この飯櫃前にいるのが店のチーフである。山田と名札に書かれた、20代後半っぽいそのチーフは「いらっしゃいませ」を言うとき、愛想笑いのひとつもない。かといって不快な無愛想感を漂わせているわけでもない。そして飯櫃から適量のご飯を皿に盛り、カレーをレードル一杯分、綺麗にかけて供する手際は、どうみてもプロフェッショナルである。このカレーかけはどんなに店が混んでも彼一人が担当している。
 大阪は、善い。顧客を喜ばせるためのプロフェッショナリティとサービス精神に満ち溢れている。
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 この時おぼろげに感じていた印象が、味わいに大きな影響を及ぼしていたんではないかと、思うわけだ。ちなみに大阪在住の友人女性によれば、もう一つあるインデアンの店も、梅田店に比べてぬるい感じがしたそうだ。 うーむ、、、もしかしたらインデアンの中でも、梅田店は特別なのではないか?

 ただし、本日は新しいオプションも発見した。なんだか興が乗らないので、いつもはついてくる分だけしか食べないキャベツの甘酢漬け(これをピクルスというらしい)を、追加で頼んでみようと思うのだ。

「おばちゃん、ピクルス!」

「大にする?小にする?」

「(え?大小があるの?そりゃ当然、、、) 大にして!」

「追加で50円になりますが、いいですか?」

「(おお、50円かぁ安いぞ。) ええよぉ!」

おばちゃん、ピクルスを皿に盛り始める。そこで一発。

「いやぁ ここのピクルス旨いもんねぇ」

おばちゃん、一瞬動作が止まってニマッとする。

「そうやろぉ、、、」

おお、ドンドンとピクルスが盛られていく!ぜったいにこれは規定の分量ではないだろう、キャベツ大盛りである。これは絶妙なタイミングであった。俺もこすくなったもんだ、、、

しかしこのピクルスが絶品の旨さなのだ。この旨さは梅田店と変わらないなぁ。ちなみに下の写真は、カレー皿にピクルスを半分いれてから、写真をとってないことに気づいて撮った。ので、皿の上部に写ってるピクルスと、皿に残ってる分の総量が盛られてきたと思って欲しい。通常は今、皿に残っている分より少ないのだ、、、むちゃくちゃ嬉しい。
picles.jpg

さて本日食べたのは、カレーにほぼすべてのオプションが加わったオーダーだ。
「カレー ルーもご飯も大盛り、目玉(黄身二つ)、ピクルス大追加。」
これを表すのが下の写真のプラ札だ。
nefuda.jpg
おばちゃんにこのプラ札の意味するところを教わったんだが、忘れてしまった。

 このようにちょっとがっかりした、初めての梅田店以外のインデアンだったが、収穫はあった。俺は梅田店ファンなのだ。これで迷うことが無くなった。いや、ほかのまだ行ってない店が旨ければいくけどね、、、

 そんなこんなで、仕事に向かうのであった。お腹は調度よい状態である、、、ウソです。

Posted by yamaken at 23:59 | Comments (5) | TrackBack

大阪・日本橋 とんかつ丼 「こけし」で憩う

 満を持して大阪で迎える朝。講演が始まるまで少々時間があるので、このblogの読者さんであり、ライターをやっていらっしゃる堺三保さんから教えていただいた、大阪日本橋のカツ丼・カツカレーの店「こけし」に行くことにする。色々とルートを調べると、宿泊した天満橋から地下鉄で日本橋まで行き、カツ丼を食べてから、地下鉄で1駅向こうの長堀橋駅構内に、なんとインデアンカレーの店があるらしい。僕にとって初めての「梅田店以外の」インデアンである。今回をこのコースを採用しようではないか。

それにしても大阪の人たちはフレンドリーである。地下鉄の出口の目の前の大通りで、いったいどっちにいけばいいんだっけ?と思って信号待ちのおっちゃんに「日本橋ってどっちですか?」と訊くと、大きなジェスチャーを交えて、熱の入った説明を3分くらいしてくれる。でも、その内容は「こっち側をまっすぐ行けばいい」という簡単な内容なのだが、懇切丁寧に教えてくれるのだ。しかもおいらのインチキ関西弁ではなく、ホンモノの大阪弁(いや、俺には判別できないが)である。なんだかその人情に感動してしまった。あまりに感動しておっちゃんの姿を遠くから盗撮(?)してしまった。

■この人だ↓
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 さて日本橋(にっぽんばし、と読む)は、東京で言う秋葉原、電気街である。その日本橋駅から地下鉄では一駅向こうの恵美須町近辺に、その「こけし」があった。
 この店は、秋葉原に於ける牛丼「サンボ」のような位置づけなのだろうか、とても愛好者の多い店である。この店独特のの作法とおもしろさはこちらのWebにかなり詳細にまとめられているので見て頂きたい。

 さて堺さんからは「ダブルエッグ ダブルカツ セパレーツがいいですよ!」と教えて頂いた。これは、玉子2倍、かつも2倍、具とご飯は別皿でという意味だ。相当にボリューミーである。これでご飯が大盛り(スーパーという)だと、「フルコース」という符丁になる。しかし、その直後にインデアンカレーも攻めなければならないことを考えると、ここは自重しておきたい。出張が続くので、体調管理には気を遣っているのだ。ということで、すぐに見つかった「こけし」に入店する。

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■こけし
住所:大阪府浪速区日本橋4-5-18
電話番号:06-6633-4956
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 店内はわりと綺麗で広く、明るい雰囲気だ。席の前にはこけしが沢山ならぶショーケースみたいなのがある。
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 この店のメニューが出色のできばえだ。表面はこのようなオーソドックスな品書きだが↓
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 裏面はこのように↓、系統図による分類がなされているのである(笑)!
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「ダブルエッグのセパレーツお願いします。」

「はい!」

 待ち時間の間に、タクワンをぽりぽりと噛む。そう、ここは「たくわんのわんこ蕎麦状態」を味わえる店なのだ。タクワンが減ると、すぐさま店員さんが補充してくれると言うことで有名。これは、皿を伏せるまで続くという。果たして、店内を一定時間で回遊している店員さんが「たくわんいかがですかぁ
と言って、2枚放り込んできた。タクワン自体は蛍光色の強い、みるからにその手のタクワンであるが、妙に美味く食べてしまう。ポリポリポリ。

 そして程なく運ばれてきた「ダブルエッグセパレート」がこれだ!
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 盛りはそれほど多いわけではない。うーむやっぱりダブルカツオプションをつければヨカッタかなぁ などと思うが、ここは次のインデアンにむけて自制心をはたらかせたのであった。

 セパレート(別皿)のカツをご飯にのせる。あれ?と思うほど薄い肉である。ショウガ焼き用に肉に少し厚みが加わったくらいか。しかし、この薄切り加減がきっとこだわりなんだろう。タマネギと玉子が絡まったご飯を一口食べる。関西風にしては濃く甘辛い香りが拡がる。カツ自体にもタレが染み渡っており、柔らかくかき込める。ナカナカに旨いではないか。というか、家でご飯を食べているような感覚だ。
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 店内を見回すと、同じようにホッとした顔をしながら、日本橋の各電気屋情報を交換したりというパーティが多い。そう、この店、やはり電気街のオアシスなのだ。秋葉における喫茶「東洋」(閉店しちゃうんだよなぁ、、、残念)や、牛丼「サンボ」(ここもBSE問題でやばいんじゃないかなぁ、、、心配)と同じ位置づけなのだなあ、と思う。

たくわん攻撃を2回受けたので、皿をひっくり返しておく。甘辛いカツ丼がすっきりと腹に入っていく。

「ごちそうさまでしたぁ」

 ダブルエッグセパレートは820円。それほど割安とは言えないが、みな安心感と満腹感を味わいにやってくるのだろう。

 日本橋の暖かな良心をみた。堺三保さん、情報ありがとうございました!

 さて地下鉄恵美須町から、インデアンカレーのある長堀橋駅へと向かうのであった、、、

Posted by yamaken at 19:05 | Comments (4) | TrackBack

大阪のうどんも旨い!つまみも旨い!2杯食っちゃった「川福」

 はりはり鍋の徳家から5分ほど歩いたところにある「川福」にきた。
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「大阪のうどんは、もっちりはんなりしてるのが多いけど、讃岐っぽくコシがあるうどんはあまりないんよ。でも、ここは最高!」

と友人が言う。彼が言うなら旨いはずである。
この店に至る道とかはよくわからない。酔ってたので忘れてしまいました。Googleで検索してみてください。

店内はこんな感じ。一杯飲んできた人たちが〆に入るみせという風情だ。
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お品書きにはうどん以外にもいろいろなメニューが並ぶ。牛筋みそおでんなどひねりの効いたタネだけでも1面を占拠。その他オムレツなど旨そうだ。

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「冷うどんも旨いけど、冬だしあったかいうどんを食わんと!」

と友人は言う。でも俺は冷も温も好きだ!ということで、かき揚げ天ぷら冷うどんときつねうどんのあったかいのを頼む。
ここ、厨房内はきっちりと割烹着を来た料理人が忙しく立ち働いている。非常にしっかりした、好感のもてる厨房であった。
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出てくるものも非常に気が利いている。このエビのオムレツ(卵焼きと書いてたかな)なんぞ、中華か洋食家で出てきても不思議は無いほどの完成度だ。ニンニクがビシっと効いていて、焼きの加減も絶妙。餡ともよくからんで旨いの何の。

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当然ながらうどんも旨い。サクサクのかき揚げにいろいろとのった冷うどん、実に綺麗。僕は型に入れて揚げたかき揚げは嫌いだが、ここのはそんな心配しなくても旨いかき揚げだ。全部よくかき混ぜて食べると、さぬき系のうどんなんだが、やはり大阪、いろんな旨い要素をとりいれたごちゃまぜうどんで最高である。

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そしてきつねうどんがまた最高であった!
友人の言うようにあったかいのが旨い!出汁が実に滋味溢れている。
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讃岐とは別系統の出汁。ほっとする。これで本日打ち止めしていい味だ!
あまりに旨く、秒速で食べる俺をカメラは捕獲できないのであった↓

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大阪の一日目の夜はこうして素晴らしいものになった。

その代わり、体のことを考えてホテルに帰って腕立て伏せ160回、スクワット50回やって寝たのであった。明日もまだ続くのだ、、、

Posted by yamaken at 01:42 | Comments (10) | TrackBack

関西の鍋と言えばハリハリ鍋にとどめを刺す! 大阪「徳屋」

jpg 大阪出張である。またもや講演なのだ。でもそれだけではない。関西で同世代の市場関係者、流通関係者に友人が数人居る。僕が大阪に行く時はほぼ必ず会って飲み、意見を交わすのだ。この友人達に言えるのは、キャラや強みがまったくかぶらないということだ。だから、非常に仲が佳い。その仲間が「やまけん、ハリハリ鍋食ったことがないならぜひ行こうや」と言ってくれた。そんな言葉に乗らぬ僕ではないのであった。

 ハリハリ鍋といえば鯨肉と京菜(水菜)を出汁で煮て食べる、関西圏を代表する鍋の一つだ。現在大ブレイク中の水菜にさっと火が通るか通らないかくらいで引き上げ、鯨肉と共に噛み締めると、「ハリハリ」という歯触りが楽しめるというこから名前が付いたと言うが、本当だろうか。ま、それはともかく僕はどこかの料理屋で、小鍋仕立てのハリハリを食べた記憶はあるが、全くその味については印象がないほどにインパクトがなかった。

 ところで鯨といえば相変わらず「食べちゃダメ」というワガママを押しつけてくる国際的なインチキ団体が多いが、全くもって腹立たしい。今や鯨は増えすぎており、イワシの漁獲量の低下などは実は鯨によるものではないかという推論もある。詳しくはこの本をご参照。保護しすぎてある個体が増えれば、そのしわ寄せがどこかに来るのは当たり前だ。しかもそれが食物連鎖の上の方に位置する動物なのだから、水産資源の圧迫は深刻だ。食い倒ラーとしては捕鯨反対には断固反対である。 ま、その理由の最たるものは「くじら食いたい」なんだけど。小中学生の頃に給食に出たくじらの大和煮が忘れられないのだ。あれは旨かった、、、

 さて今回友人が連れて行ってくれるのは、「大阪では知らぬ者がいない」という老舗の名店だそうだ。その名を「徳屋」という。場所は千日前だそうで、これは東京で言う歌舞伎町のようなところだそうだ。たしかに商店街に足を踏み入れると、風俗店と通常の小売店と飲食店がワイワイがやがやと軒を連ねる猥雑な空間が拡がっている。こういうところには旨い店が多いこともまた事実。非常に楽しみなのである。

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■徳屋
住所:大阪市中央区千日前1-7-11 上方ビル2F
電話:06-6211-4448
ハリハリ鍋 単品だと一人前2000円程度だったと思う
各種鯨肉刺身、ベーコン、竜田揚げ
コロおでん、さえずりおでん等
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 老舗と言うことで、喧噪の中に佇むあばら家を予想していたのだが、店はきれいなビルにあった。それも2階と3階にまたがっているらしく、相当に景気がいいようだ。店にはいると、テーブルや座席で客がつつく鍋の熱で、ムワッと熱い気がする。
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友人が言う。

「俺ここを予約の電話かけた時、おばちゃんが『ああ、はいはい予約ですね、、、あ、チョット待って下さいネ』って言われて それから5分くらい戻ってこんかったわ。もうこんな店いくの辞めよて思ったけどなぁ。」

 どうやらそれほどぞんざいに客を扱っても大丈夫なくらいに流行っているようだ。程なくもう一人の友人も来て、座敷に上がる。

 品書きには鯨の各種料理と鍋料理が並ぶ。まあとりあえずハリハリ鍋を2人前と、鯨肉の刺身とおでんなどを頼む。

 で、結論から言うと、この鯨肉料理がすこぶる旨かった

■さえずりとコロのおでん
 さえずりは鯨の舌。クニュクニュトロリとした食感がじつにかわいらしい。これがトロトロに煮込まれ串に打たれて出てくる。芥子をちょいと塗って食べると実に最高。
 コロは脂身である。皮目もついていて、そこの若干固い食感と柔らかくとろける脂味との食感ギャップが楽しい。
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■百尋(ひゃくひろ)の煮物
 百尋とは鯨の小腸である。ソーセージの輪切りのような見た目だが、食感はまさにソーセージ系。ま、鯨はほ乳類なので当たり前か。歯触りが強く弾力に富み、味も非常に濃い。焼き目を漬けてポン酢に浸して供してくれる。

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■くじらの刺身
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 最上と言われる尾の身と、赤身と脂身を交互に重ねたものを注文。しかしこれは感心しなかった。せっかくの尾の身はまだ十分に解凍しきっていない。刺身は切り身にする前に解凍しておかないと、旨味がドリップと共に流れ出て無惨なことになる。果たしてこの尾の身も、安酒場で頼むマグロの赤身のようなべったりとしたモノに化してしまった。赤身と脂の刺身は、まあ食えた。

■ハリハリ鍋
 刺身のまずさにかなり気分的に冷えてしまったのを温め返してくれたのが、やはり真打ちのハリハリ鍋であった。鯨肉と水菜がてんこ盛りになって運ばれてくる。
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 これを一見すると量が多そうにみえるが、、、水菜なんてのは加熱してしまうととたんに分量が減ってしまう。鯨肉は数片あるのみだから、案外にこの店の利益率は高いのではないかと見た。綺麗なビルにはいることはある。
 ただし味付けはまったくもって見事であった。しっかりした味の出汁には激辛唐辛子のハバネロが入っていて、これが全体の味を締めている。
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そこに鯨肉を入れるのだが、一口大の鯨肉にはあらかじめ片栗粉をまぶし下味を付けて茹でてある。この片栗粉の衣が出汁に溶けてプルプルとろとろの絶妙な加減になるのだ。鯨肉が煮上がってくると鍋の表面に浮いてくる。そこに水菜をざっと投入し、しばし火が通るのを待つ。そしてグラグラと煮立ってくるところに箸を入れて、水菜とくじらをザクリと食べるのである。
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「うーーー 旨い!」

 鯨の癖のある香りと衣のトロ味、そして一緒に食べる水菜の食感が際だち、あっさりとしてはいるが強い味の出汁が実に旨い。ハリハリというのがこんなに風流で旨い鍋だとは思わなかった。しかし、あっという間に水菜が無くなってしまう。

「もう一人前ね!」

 と頼むと、すぐに運ばれてくる。それをよーく見ると、、、???
なんだ?さっき二人前って頼んだのと、大差ない量が盛られている。鯨肉は若干量が少ないが、水菜の分量はさっきと同じくらいだ。水菜、皿に山盛りにすると崩れそうになるから、限界量があるのだろう。てことはつまり、ここでは一人前ずつ頼んで、追加しながら食べていくのが正解ってことだ!と三人ともに得心するのであった。

 3人とも農産物の流通に携わっている人間だけあって、

「この水菜は土耕か水耕か?」

「いや絶対に土耕でしょ。味が濃ゆいし」

 等々のつっこみが入る。そう、水菜は最近水耕栽培品が多いが、風味も食感も、土耕品とは別物。安い水菜はそれなりの味しかしない。だけどもキューピーなどのCMで採り上げられているせいか、流通の世界でも大ブレイク中である。

 ハリハリを3人前食べて、濁り酒を飲み、議論を交わし、いい気分になった。

「やまけん、旨いうどんを食べに行こう!」

と、大阪の町をさらに探索することになったのであった。

Posted by yamaken at 00:42 | Comments (2) | TrackBack

2004年01月26日

関西出張から生還。

 、、、ハードだ。

 月曜日大阪→火曜日大阪で講演後、和歌山へ→水曜日和歌山で早朝から仕事を終え、ただ今東京へ帰ってきた。その間にコメントをいただいた人には、レスを返せず申し訳ない。

 その間、さまざまなものをひたすら食べ続けた。これをきっちり消化するためにホテルでは腕立て伏せ150回以上とスクワット100回以上を課し、酔い覚ましの早歩き散歩を30分を心がけた。

 命を削りながら食べた記録を現在鋭意執筆中である。今回は少なくともWeb上には絶対に見あたらないようなネタを用意できた! またもや続く大量UPを待て!

Posted by yamaken at 22:52 | Comments (2) | TrackBack

北の都・札幌の寿司はやはり旨かった ススキノ「みのる」

 さてジンギスカンに舌鼓を打った後は、岩崎氏の手引きで少々アルコールを飲み、満を持して寿司へと向かう。
 先にも書いたとおり、僕は人生においてこのススキノで初めて「タチ」を食べたのだ。タチとは、昨晩までの帯広出張記録にもあるとおり、真鱈(マダラ)の白子だ。これを湯通ししてポン酢と紅葉おろしをかけたものが関東でも並ぶが、生のタチを寿司ネタとして食べられるのは、やはり北海道ならではだ。この季節、札幌の寿司屋でタチがなければ何を食べるのだろうか、という感じだろう。僕にとって「タチ」の最初の一口が、ここススキノの名店「みのる」なのである。

 この「みのる」、残念ながらどこを探してもWeb上に情報が載っていない。しかもまずいことに、住所や電話番号が載っていた箸袋を持って帰ろうとしたのに、落としてしまったらしい。今度訊いておくのでとりあえず場所データは無しとさせていただく。まあ、ススキノであることだけは間違いない。

 雪が凍結した路麺をツルツルと滑りながら店にたどり着く。この写真に写っているのが岩崎氏だ。
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「みのる寿司」は大将と女将さんの二人だけで切り盛りしている。オヤジさんは温厚そう、白髪交じりの頭は年期と風格を感じさせる。このみのる寿司と岩崎氏はいろいろと関係があるそうで、本当に昵懇である。旨い物を作るという双方の共通した目的があるせいだろうか、目に見えない信頼感で結ばれている感じだ。
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 さてここでは大将にお任せである。

「あのタチが忘れられません!」

「いいのがありますよ。」

そうしてまた、至福の時が始まったのだ。

順序は違うのだが、やはりまずこのタチ(真鱈の白子)から見て頂こう。
昨晩帯広で食べたタチも実に旨かった。そして本日のタチも最高!

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このプリンプリンの輝きである。妖艶である。口に入れて歯を当てると、官能的にムッツリとはち切れ、口中にそのトロトロを放出させる。ブワっと拡がる旨味、しかしそこには一片の生臭みもない。

「フウンム、、、」

とフランス人ぽく唸ったまま僕は動けない。その動けない状態の写真がこれ↓だ。

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なんだか歌舞伎役者の決めのポーズみたいだな。アホな顔である。

その後も素晴らしいネタが続く。昨晩の帯広に引き続き、シャコを所望する。北海道のシャコは旨いと言うことを知ったからだ。
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口にするとザラリ、ホッコリとした歯触り。おお、これはメスのシャコだ!いわゆる子持ちシャコである。肉の旨味はあまりないが、卵を抱いた甘みがある。

「本当はオスの方を出したいんですけどね、メスがお好きなお客さんが多いんですよ。」

いや、これはこれで非常に旨いです!

そして北海道の旬、ボタン海老だ。

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海老は金沢で旨いのを食ってきたが、北海道のボタン海老もやはり旨い。どっちがいいと言うことではなく、やっぱり質が違うような気がする。そう、北海道のネタは「大陸的」で男性的な味だと思うのだ。

と、岩崎氏が「おお、出たぁ!」と唸るネタ。生アワビである。
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生のアワビなんて、実はそれほど好きではない。柔らかく煮たアワビの方が旨いと思う。でも、この生アワビは実に素晴らしかった。よく出てくる水貝のように固い歯触りというだけではない。適度に柔らかく適度にコリコリ、そして旨味ジュースがタップリである。うーん やっぱ素晴らしいなぁ。


そして出てきた「ホッキ貝!」。
この堂々の偉容を見よ!美しく角が立っている。
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噛むと貝の甘みがシャッキリとした切り口から滲み出てくる。ホッキって旨いもんだ。貝の鮮度的にはやはり北海道の方が東京より有利だなぁと思う。

実はそれはウニについても同じだった。今回ぼくが一度食べたネタを所望したのは、タチとウニだけだ。

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このウニが、、、このウニが、、、本当に素晴らしいのだ。いつも寿司匠で食べるバフンウニの赤も旨いが、みのる寿司のウニはそれを上回る鮮度とみえる。もう、雑味はどこにも見あたらない。10メートル平方の白い絹布をバッと拡げても、どこにも汚点が見あたらないという感じだ。清廉にして濃密、クリームが舌の上で溶けていくのだ。

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と、程よい頃合いで、タチのみそ汁を女将さんが出してくれる。熱が入ったタチはまたその濃度を増し、味わいがふくらむ。ひたすら旨い。

昨日の帯広の寿司といい、このみのる寿司といい、「どちらが旨い」ということではない。北海道の寿司とはこういうモノだ、という気合と気概をストレートに打ち出してくる、誇り高き職人と、それを受け止める素晴らしい客がいる。そういう真剣勝負の中で、不味い寿司が生き残れようハズがない。

ビバ!北海道!
この1ヶ月で、また寿司に対する見識が拡がったのではないかと自分でも思う。そして以前にも増して、寿司が好きになった自分がいる。

ススキノに行かれる方は、ぜひタクシーの運ちゃんにでも訊いて、「みのる」に行ってみて欲しい。

満腹になった腹を抱え、凍結路面にツルツルと滑りながら、さらに奥深く分け入り、酒を飲みに行くのであった、、、

今回の北海道編はここまで。

Posted by yamaken at 01:20 | Comments (8) | TrackBack

2004年01月25日

北の都・札幌にて生ラムジンギスカンに驚倒する ススキノ「だるま」

jpg 帯広から札幌へ。前回、夕張から近くの栗山町の生産農家、岩崎氏の家で自家蕎麦を粉に挽いて蕎麦打ちをしたエントリをご記憶だろうか。あの岩崎氏が本日はメロン生産者の会議に出ているということだったので、札幌で合流することにしたのだ。
 北海道のメロンの世界では、如何にして味を向上させビジネスを安定化できるかという技術・経営双方についての生産者レベルでの議論がガンガン行われているらしい。そっちの会議も覗いてみたかったな。

 さて札幌といえば一 大歓楽街であるススキノだ。僕が札幌を訪れるのはこれが二度目。最初のススキノも、やはり5年前に岩崎氏に呼んで貰って北海道の農業者に講演をした際に連れてきて貰ったのだ。 その時も食いまくったものの記憶で忘れられなかったのが、「ジンギスカン」、「手打ちの蕎麦」、「タチの寿司」である。
 で、本日は岩崎亭ではないので蕎麦は無理だが、ジンギスカンとタチの寿司を食べようということなのである。

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 ところでジンギスカンには2種類ある。羊肉をあらかじめタレにつけ込んで焼くものと、生の味付けしていない肉を焼いてタレに漬けて食べるものの2つだ。前回食べた「カネヒロ」は、タレにつけ込んで食べるものだ(ちなみに帯広のノムさんには「あんなんだめだぁ」と言われてしまったが、、、)。僕は実を言うと漬け込みタイプしか食べたことがない。タレにつけ込んで旨~くなった肉のほうがよさそうじゃん、という感じであった。

「じゃあ今日は、生ラムジンギスカンを食べに行こう。」

と、岩崎夫妻は路面凍結しまくりの凍えるススキノをずんずん奥へと進んでいったのであった。小さな横町を入るとまさに雰囲気のある、汚い小さな店ばかり並んでいて興をソソル。そんな並びに、「だるま」があった。

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■ジンギスカン 「だるま」
札幌市中央区南五西四
生ラム 一人前700円
※しかし一人前では絶対に終わらない、、、

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すでに並ぶ人がいる。深夜までこの店は行列が途切れることがないという。うーむ人気店である。看板からは旨そうな雰囲気が漂っている。まどから覗いてみると、カウンターのみの店内は狭く、15~6人くらいで満杯になりそうだ。

「まあこの店の客の回転はラーメン屋並だから、ちょっと待とう。」

jpg そうはいいながらも根の生えた客がいたりして、僕らが入店するまで10分はかかったのであった。
 入店してからも壁に張り付いて待つ。秒速で動くおばちゃん4人で切り盛りされているこの店では、おばちゃんとの語らいとかは全くしている余裕がなさそうである。事実、客は一心不乱に生ラムを焼き、口の周りをタレでべとべとにしながら酒を飲んでいる。しかし女性が非常に多い。男性と半々ではなかろうか。水商売の女性らしき人たちと、一般の人が同等にいる。これは旨いってことだろう。


さてやっと席に着くことが出来る。

jpg 勢いよく燃える炭の入った七輪に、ところどころ穴の空いた鉄鍋がかぶさる。そのてっぺんには羊の脂が乗っている。てっぺんから鍋のふもとまでに数本のスリットが入っていて、それに沿って羊脂が流れて材料に絡まり、旨くなるのだそうだ。

「とりあえず生ラムと野菜。」

「はいよ!」

ときた材料をどーんと盛る。

炭火の威力で次第に肉が焦げ、旨そうな香りがしてくる。

「そんなに焼きすぎないで食べて大丈夫だから。」

という声で、すぐさまタレにつけて食す。
jpg タレは醤油ベースだが爽やかな酸味もある。そして生ラムはというと、、、僕はこんなに旨い羊肉を食べたことはない!!!

 まず、信じられないくらいに柔らかい。特にコッテリと白い脂身の部分はフンワリしており、筋目を全く感じない。

 そして、、、旨いジンギスカンでいつも言われることだが、まったく臭くない。臭くないどころか、程よい羊の香りがするのみで、嫌な成分が全てカットされているような感じ。

「旨いよぉ!!」

ここからはとにかくラムを頼み、食べまくったのであった。総計10皿は行っただろうなぁ。何故かは知らぬが、牛肉と違って嫌になることがないのだ。純粋に胃袋の限界まで突っ走ることが出来る。タップリ盛られたタマネギや長ネギなどの野菜を挟むとますます食欲が増す。
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あ!いかんいかん このあと寿司にも行くのに、大満足になるまで食べてしまった!しかしこれ一軒で打ち止めにしてもいいと思うくらいの美味い店なのであった。

帯広の岡坂さんノムさん、札幌のジンギスカン旨かったっす!(また怒られる、、、)
また連れてってクレー岩崎さん!

Posted by yamaken at 22:19 | Comments (2) | TrackBack

豊饒の大地・北海道帯広編その4 帯広インデアンカレーにまた新事実発覚だ

jpg 朝、目覚めると空腹である。昨晩あれだけ食べたにも関わらずきっちりと腹が減るのはどういうことだろう。でも、ホテルの朝飯などを食べるつもりは毛頭ない。帯広駅周辺のブランチといえば、インデアンカレーしかない!

 インデアンカレー。前回も述べたとおり、どうやら大阪のインデアン」とは全く関係ないらしいのだが、そのシンボルキャラクタはそっくりである。ただ、似ているのは名前とそのキャラクタだけで、味のほうは全く別物である。別物であるが、実に旨い!一番ベーシックなカレーが380円。日本風トロトロカレーであり、スープ系カレー好きの友人Yには敬遠されそうだが、僕はこの帯広インデアンのカレー、衝撃的に好きになってしまった。

 さて今回も帯広駅前の長崎屋に行く。開店前の5分間、中学生やらオババやらがうわーっと押し寄せる。そうか本日土曜日だもんな。でももしかしてこの人たち、一斉にインデアンカレーの店に向かったりして(笑)
 開店後の奔流にのって店内へ。インデアンカレーの看板が見えてくる。前回職人芸を見せてくれた眼鏡の彼が居る。

「いやーまたきちゃったよぉ!」

「あ、、、いらっしゃいません、、、」

彼の中のおぼろげな記憶が、この図々しく話し掛けてくる人間に見覚えありと囁いている。そしてしばしたって合点がいったらしく、にっこりとしてくれる。

「あんまり旨いんでねぇ、また東京から来ちまったよ。」

「ありがとうございます。」
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彼の名前は吉田君。

「店では下っ端です」

というものの、腰の据わったいい動きを見せるカレー職人だ。

本日食べるものは決まっている。それは、、、お世話になっている農協の、岡坂さんとノムさんのご上司であるI澤さんがいつも食べるという「シーフードカツカレー」だ。これは実はメニューには載っていない。
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I澤さんが頼むってことはそりゃぁ旨いと言うことだろう。

「シーフードカツカレー大盛りね!」

「はい!」

 吉田君がすぐさま調理にかかる。まずフライヤーでカツを揚げる。カツは中々立派なもので、正直、こういったスタンドで出てくることが想像できないようなものだ。そして平行してナス・ピーマン・たまねぎといった野菜類を素揚げする。
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 カツに火が通ると油を切り、素揚げした野菜を大盛りご飯にのせ、そこにシーフードルーをかける。ルーは味別に鍋に蓄えられているのが見えた。
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これで完成だ!大盛りにした分と、カツが載っている分で、てんこもり状態になっている。

■シーフードカツカレーライス 大盛り 950円
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これが一番この店で高いメニューだと言う。
スプーンを入れるとカツの層にぶち当たり進まない。仕方が無いのでカツをすくう。カレーの邪魔をしないよう、衣は微細できめの細かいパン粉で仕上げている。カリッと仕上がったその揚がり口はお見事である。このカツとシーフードのルーが実にベストマッチング!

「やっぱ旨い!東京から食いにくる価値あるよぉ」

「ありがとうございます。」

吉田君ともどうやら二回目で心の交流ができそうな気配だ。僕が自分のWebを見てもらおうと、メモにアドレスを書き始めると、

「それ、インターネットのアドレスですか?聞きたいと思ってたんですよ!」

と言ってくれる。よしよし、見てくれよな。ぜひ社長さんによろしく。

さてシーフード大盛りは中々のボリュームだった。旨かった!本日はこれで打ち止めにするつもりで、「大盛り」にしたのダ。

し、しかーし!

大変なことが発覚してしまった、、、机上にのっているメニューを何気なく持ってみると、裏面にも何かが書いてある。
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なんと!ここのカレー、辛さ調節ができたのだ!
メニューを良く見てなかったから、辛さは一つしかないのかと思ってた!

これはどうしたものか!?そのとき神の啓示のような内なる声が僕に囁いた。

「そこに山があるから登るのだ!」

僕の闘魂は燃え上がった。

「吉田君!大辛ちょうだい!」

もう厨房内のもう一人の女性も大笑いしている。やっぱ食べるんじゃん!
でも実は少々日和っているのだ。一番辛いのは極辛。でも本日は戦闘態勢ではないので、一歩手前の大辛で様子見なのだ。

すぐさま出てきた大辛は、やはりどことなく唐辛子の赤色が指しているような気がした。
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そういえば厨房にはGABAN社のカイエンヌペッパーとカレー粉の大缶が出ている。あれが辛さの源になっているのだろう。一口食べてみる。二口食べてみる。三口食べてみる、、、

「辛い。」

いや、辛い。これは辛い。なんといってもトロトロ系の強いルーなので、したの上に滞留する時間が長い。したがって唐辛子の刺激成分が刺さりまくる感じである。もうすぐさまブワッと噴出す汗。この情けない顔を見よ!↓
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写真では見えないだろうが汗が頬を伝っている。ていうか、すでにTシャツ姿であるところに注意。

だがもちろん食べられない辛さでは全然ない。けど、吉田君はこう言う。

「女性でいつも、極辛の3倍というのをオーダーされる方もいらっしゃいます。みていると、平然と食べていらっしゃるんですよねぇ、、、」

上には上が居るものである。その勝負は放棄したい。
あー辛い。辛かった!
でも旨い。やっぱ大好きだ帯広インデアンカレー。
社長さん、このカレー、東京でも受けると思いますよ。いちど進出考えてみてください。

超満腹になり、勘定。ここのカレーだけで一人1000円を越すのは中々居ないだろう。吉田君で再会を約束し、長崎屋を後にする。

帯広編、ご満足いただけただろうか。引き続き、札幌ススキノ編が始まるのである。

Posted by yamaken at 16:17 | Comments (3) | TrackBack

豊饒の大地・北海道帯広編その3 仰天の牛トロ寿司は帯広にあり

 引き続き、岡坂さん、ノムさんが言う。

「ヤマケン! あのな、金沢の寿司食ったくらいで『最高!』とか言ってんじゃないよ!旨い寿司はなぁ、旨い寿司はなぁ、、、帯広にあるんだよ!」

えええ?本当ですかぁ?(半信半疑)
おいら、寿司は結構食ってるよ?いいんすか?そんなこと言って、、、というのが僕の内心の呟きだ。正直、大地の恵みが旨いこの十勝において、寿司が旨いというのはちょっとわからんなぁという気持ちだったのだ。

、、、しかしこの浅薄な推測は、とてつもなく仰天の寿司によって覆されるのである。

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■金ちゃんの店 吟寿司
帯広市西一条10丁目
0155-23-6641
※帯広駅からすぐ、繁華街の大通り沿いにある。
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「かかし」から100メートル程度にある金ちゃんの店 吟寿司の暖簾をくぐる。路面に出ている看板をみて驚いた。「牛トロ寿司」が一番上に誇らしげに書かれているのだ。

「ヤマケン、ここの牛トロを食ったら、もう忘れられねーよ」byノムさん

そうなのか、、、
しかしここで心の中には不安がよぎっている。牛トロかぁ、、、サシが入った牛肉を生で食ったって旨いもんじゃないだろうになぁ、、、
いや、例外はある。以前、北千住にてバードコートの野島さんに連れて行って頂いた焼き肉「京城」では、熟成されまくった肉をそのまま焼かずに食べて、ムチャクチャに旨かった。しかしそれはトロトロになるまで肉の熟成を進めているからだ。寿司屋の感覚で肉を使う場合、そこまで熟成させるだろうか、というのが疑問なのだ。

頭の中に「???」マークを点灯させながら入店する。顔はにこやかだが目つきが異様に鋭い大将(おそらくこの方が金ちゃん)と、よく似た顔の息子さん「ケンちゃん」そして控えめな女将さんが迎えてくださる。

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ちょうど5人程度の先客の分を握っているところで、大きな板に寿司を握っている最中であった。

「ちょっとだけ待っててね、今すぐ握っちゃうから。」

そう言うや、金ちゃん大将が握りを始めた。

速い!
驚速の握り技術である。いろんな寿司職人さんをみてきたが、この吟ずしの金さんの握りに優るスピードはみたことがない!みるみるうちに25貫程度の握りが板を埋め尽くしていく。
その握りが出て、いよいよ僕たちの番である。

「じゃあオヤジさん、今日はね、、、今日はね、、、どうしようかなぁ」

とノムさんがしばし熟考。意を決したごとく怒濤のオーダーを決める。

「サバ、シャコ、タチ、トロ巻き、穴子、そんでトロ寿司。」

そして、快楽のひとときがやってきたのだ。

いい感じにトロトロと〆られたサバをいただくと、金ちゃんの握りは凄まじい速さながら、柔らかくまとめられたモノであることがわかった。
そして出てきたのが、とってもおおぶりのシャコだ。

■シャコ
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以前も書いたが、僕は江戸前のシャコが嫌い。食べるなら瀬戸内のきめ細かいものが好きだ。しかし北海道のシャコは堂々の存在感と、強く濃い濃い旨味がすばらしいものであった!
とにかく身が大きく熱いため、その旨さを存分に味わうことが出来る。塗られたツメも程よく甘く、シャコの甘さと香りと、そしてみずみずしい身の食感と相まって、思わずため息が出る。

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「うー、うー、ウマいっすよこのシャコ!」

「北海道もね、旨いシャコがあるんですよ。特に○○○あたり。」

残念ながら食べるのに夢中で、この○○○がどこだったのか忘れてしまった!うーん岡坂さん、どこでしたっけ?

そして、次にアレが出てきてしまったのだ!

■生タチ(真タラの白子)
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タチの旨いのを食べようと思ったら、残念ながら築地では遠すぎる。北海道で食べなければ、、、北海道での何年かぶりのタチだ。当然ながら臭みもえぐみもない。極めて繊細でトロトロの冷たいポタージュが、むっちりと弾けるのだ。

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さて、そして問題のネタが出てくるのである。

■牛トロ巻
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よく冷やしてある牛を、柳刃包丁で細いスティック状に切っていく。それを軍艦巻に盛りつけたものが「牛トロ巻き」である。サシは入りまくっている。ご覧の通り美しいピンク色だ。

「醤油つけないで、このまま食べてください!」

どうかなぁと思いつつ口に入れる。
冷やしているため、牛のネットリとした脂は最初は溶け出してはいかない。しかし噛んでいるうちに、牛を載せる前に軍艦に仕込んだとおぼしき、濃い旨味を持つタレ成分の味がひょいと顔を出してくる。そしての旨味が牛を包み込んでいく。若干の塩気の強みが、牛のモッチリした脂に包まれ、結果的に絶妙なバランスの味となるのダ!

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これは僕の人生で初めての生牛肉の味だ。「京城」のようなトロトロ感のある熟成肉ではない。どちらかというと熟度はそれほど進めていないフレッシュな感じ。そしてそのこなれ具合をビンビンに加速する謎の調味料があるのだ!

「こ、これ、どういう味付けなんですか?」

「ヤマケン!それが秘密なんだよ!特殊なミソなんだよ!」byノムさん

いやこれは素晴らしい。

「じゃあ、穴子で一息入れるよ。」
「うちの穴子はねぇ、東京には負けないよ。絶対に自信があるんだよ。○本譲二なんて、15貫食べてったんだから!」

そうして出てきた穴子は、実に見事、本当に江戸前でもナカナカ食べられない旨い穴子だった。

■穴子
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僕の好きな「焼き」の強い穴子である。タレは最初から刷毛で塗りつけて焼き目を入れているらしく、非常に香ばしく身にまとわりついている。代々木上原「カストール」の藤野シェフによれば「おそらく今の時期だと、築地から北海道に行ってると思いますよ。旨いのは産地よりきっと職人さんの腕でしょう。」という個人的コメントがあったのだが、実際そうなんだろう。この穴子、好みです。10貫食べたい。

しかし、そうはさせてもらえないのだ。この後、いよいよこの吟寿司の最大の目玉である「牛トロ寿司」が来るのだから、、、

■牛トロ寿司
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見よ!この誇らしげな切り口の立った牛肉片を!秒速の握りの工程をみていると、この牛の裏に瞬時に塗ったのは、ほぼ黒い粘着性のペーストだ。岡坂さんが言うように蟹ミソ系のものだろうか。それを塗り込み素早くシャリと合わせ握る。

「はいよっ これが牛トロ寿司!」

「ヤマケン、これを食ってみろ!ヤマケン!」byノムさん

食べた!
う~ん これは旨~~~い! 先に出てきた、細口切りの牛を軍艦に載せたトロ巻きとは全く違う感覚だ。一体なんだろう、肉の旨味が強く感じられる。生で食べるともっさりするはずの牛脂が、心地よい甘みで、溶けている気がする。ご存じと思うが牛脂は融点が高く、人間の体温では溶けない。マグロは溶ける。従って牛は生で刺身で食べると旨くないはずなのだ。しかしこの牛トロ寿司は、舌にロウがかぶさるような嫌味が全くないどころか、、、いやマジで旨いのだ!あの魅惑的な謎のミソの味が、噛んでいるうちにどんどんと染み出てくる。

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「どうだヤマケン!帯広の寿司は旨いだろ?」byノムさん

「、、、はい、初めてです、こんな旨いの、、、」

岡坂さん、ノムさんは満足げに微笑んででおられる。

「俺たちもここんとここの店ばっかり通ってるもんな!」by岡坂さん

「はい、岡坂さん野村さんは、この店の常連ベスト3に入ってます!」byケンちゃん

そう、そういうことなのだ。今回の組み立ては、店に通い詰めていないととうてい辿り着けない。例えば、牛トロ巻の後にいったん穴子を挟んでリセットしてから牛トロ寿司にいくあたりなんぞ、観光客には絶対にまねできないだろう。
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岡坂さん、ノムさんはご家族の分を包んで貰っている。お二人の心根の優しさがビシビシと伝わってくる。

「ヤマケン!旨かったか?」

「はい、もう最高っす!」
それしか言えない。ここでお二人とお別れ。僕も通常ならもう少し何かを食べに行くだろう。しかし、、、そうする気になれない。今日はこれで心の満足を持って打ち止めにしておきたい。それほどまでに素晴らしい寿司だったのだ!

 お二人とお別れする。本当にありがとうございました。しかしこのお二人を上京時にはどこへお連れすればいいのだろうか。悩みが増える今日この頃であった、、、

明日は帯広を発ち札幌へ向かう。その前にまたもや帯広インデアンカレーを襲撃する予定なのであった。

Posted by yamaken at 15:57 | Comments (3) | TrackBack

2004年01月24日

豊饒の大地・北海道帯広編その2 おふくろの味 「かかし」の豚丼とノムさんを味わう

 JAでの仕事は無事終了した。トラブルにも見舞われず、本当によかった。これに向けて徹夜で頑張っていた後輩もホッとした表情だ。
「お疲れ様でした!」
「うん、じゃーどこいこうか。何食いたい?」
そう、これから夜の部開始なのである。

 昼から一緒にいて下さる岡坂さんと、そのご同僚の野村さん(ノムさん)がお相手をしてくださる。ちなみに前回もこのお二人に美味い店に連れて行って頂いたのだ。お二人とも生粋の幕別生まれの幕別育ち。ノムさんは岡坂さんの高校の後輩である。
「いや、俺も岡坂さんと課長には頭が上がらないのよ。」
というノムさんはしかし、初対面の時には「こいつぁヤバイ」と思ってしまうムッツリ触れると切れちゃうヨ系の怖さを醸し出している方なのだ。でも段々とうち解けてきてくださると優しくニコッと笑ってくれるナイス兄ちゃんなのであった。
 そして、金沢編に引き続き、このノムさんこそが帯広に於ける味の先導人となったのである!
■ノムさん
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 さて帯広に来るととにかく豚丼しか食ってないということもあり、普通の居酒屋にいってみたいと所望する。そういえば今回も泊まるホテル「パコ」のそばに「かかし」という店があって、そこの豚丼もナカナカだという噂を聞いた。ということで、今回は「かかし」に行くことになったのである。

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■かかし

住所 : 北海道帯広市西2条南10
電話 : 0155-25-5911
営業時間 : 15:00~24:00
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品書きにはやはり海産物が多い。とはいっても、首都圏でみる居酒屋メニューとそれほど変わるわけではない。問題は、そのありふれたメニューの中身が、首都圏で食べられるそれとは全く違うということだ。

■いも団子
 これは北海道では広く食べられているものだ。じゃがいもをマッシュにし、片栗粉を加えてよく練り、団子状にしてあげたモノだ。これにバターと甘辛醤油タレがかかっている。
「これも豚丼系のタレの味なんだよ。」とノムさん。


■ししゃも
 ししゃも、、、実は東京にいる僕らは、ホンモノのししゃもを食べる機会がそうないのである。いっぱんにホンモノのししゃもが出回ることはごくまれで、よく似た別物の子持ち魚が売られているのが殆どだ。
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「ヤマケン、おめぇ、ししゃものホンモノ食べてケ!」とノムさん。
運ばれてきたししゃもは、なんともふっくらとし、かつ水分が適度に載った、我々が食べているものとは別物の出で立ちである。旅館の朝食とかで出てくるのは銀色だが、なんだかこちらのはオレンジがかった色だ。レモンを軽く搾ってかぶりつく。すると適度な塩の利いたジュースがじゅわっと溢れてくる。そして卵がモロモロと崩れる。まったくパサパサしていない!逆にトロリモロリと水分が絶妙なのだ。

「う、ウマいっす!」

「ヤマケン! これを食わないで出張食い倒れ日記なんて書いてちゃ ダメだ!」

そう、ノムさんはこれを言いたかったのだということが判明!ここから怒濤のノムさん責めが始まるのであった。

■イカの一夜干し
「ヤマケン! あのな、イカってのは北海道が一番旨いんだからナ!俺たちなんか、イカにゴロ(ハラワタ)巻いて凍らせたルイベで酒が何杯でも飲めるんだぞ。ま、とりあえずこの一夜干し食ってみろ。」
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 なんてことはない一夜干し、、、にみえた。しかし、驚くほどにふっくらとしたスルメイカの身は、一夜干されることによって旨味を増し、水分が抜けることによって絶妙に官能的な歯触りとなって、歯にむっちりとした弾力を返してくるのであった。

「おう、ちょっとまちな、今、特製ドレッシングつくってやっから。」
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と言ってノムさん、やおらマヨネーズに細工をし出した。
まず、マヨの小皿に七味を入れる。まあそれは我々もよくやることだ。次に、それに醤油を加える。ふうむなるほど。そしてみていると、なんとそこに、日本酒を加え始めるではないか!そして一気呵成にかき混ぜる!
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「これがポイントなんだぁ。知らなかっただろ?日本酒の性質で、いつまで経ってもマヨが乾いたり色が変わったりしねーんだよ。ほれ、食ってみろ」

この特製ドレッシングにイカをつけて放り込む。旨い!結構日本酒がはいっているのにも関わらず酒の香りは殆どしないが確実に旨味が増している。

「これ、「こまい」にも合うからつけてみろ」

と、丸焼きにしたこまいに漬けて食べる。当然ながら旨い。

「海老にもつけてみろ!これはブラックタイガーだな」

と、海老の丸焼きはかなり大ぶり。皮を剥いて特製ドレッシングで食べると、実に旨いのである。
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この時僕は海老に付いている皮は全部剥いて食べたのだが、そこでノムさんすかさず

「ヤマケン! 海老はね、薄皮は残して食べる方がうめーんだよ!そんなことも知らないで食い倒れ日記じゃねーぞ!」

へええええ そうなのかぁ、、、と思ったが後の祭りである。次回また海老で試してみるとしよう。

■ホッケ
さて北海道といえばほっけである。塩焼きを所望すると、「だいぶ小さいな」というサイズのものが運ばれてくる。我々にとっては十分な大きさなのだが、、、

「さてヤマケン、このホッケ、開いてある骨側と骨なし側、どっち側の身が旨いと思う?」

うーむ それは考えたこと無かったけど、、、太陽光に干して旨味成分が凝縮されるのは骨の周りだよなぁ、と思って骨側を指すと、

「違うよ!骨側はな、骨の厚みで干しの旨さが身まではいっていかねーんだよ。だから骨の周りは確かに旨いんだけど、そこの一枚だけなんだよなぁ。で、骨なしの側は、ブロックされねーから、中身まで旨くなるんだよ。食って確かめてみろ!」

食ってみた。確かにそうだ!骨側は骨を除いてしまうと、あとは白い淡泊な肉があるだけだ。しかし、骨のない側は、干された旨味タップリの部分が中まで浸透している感じだ。

「仰るとおりっす!」
「だろ?ヤマケン! だめだよこれくってから日記書かねーと!」

全くその通りだ。そして、さらにホッケの一番旨いカ所というのを教えて頂く。

「それはな、ここだ!」画像参照↓
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ホッケは背開きで開いている。つまり、開いた状態で頭の下の真ん中の部分が、いわゆる「はらす」の先っちょということになるのだ。

「せっかく俺がほじくってやったんだから食え!」

おお、たしかに歯触りがシコッとしていて、脂の乗りも旨さも他の部分とは段違いだ!
この後もしっかりシッポを持って皮をむけ等、実に含蓄の深い叱咤をいただきまくる。

そしてこの店の豚丼を食べたのである。

■「かかし」の豚丼
ここの豚丼は、フライパン焼きである。そして特徴としては、タマネギの千切りが一緒に炒められているのだ。
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「これはね、家庭でやる豚丼でよくやる方法だね。」
なるほど。食べてみる。昼間に食った「鶴橋」の黒豚丼に比べると全然あっさりしているが、これはホッとする味である。タレは甘め、でも適度にしゃっきりした味だ。飲んだ後をしめるにはちょうどよい程よい豚丼だ。

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いや、ずいぶんにたのしませていただいた。
この間、冷や酒が何本も空いている。僕も後輩もかなり酔っぱらってしまった。岡坂さん・ノムさんも酔っぱらっている。

さてこのかかしを出て、我々はすぐに帰っただろうか、、、?
いや賢明なる読者の皆さんにはわかるはずだ、、、これで終わるわけがない。この日最大のクライマックスとなる必殺ストレートがノムさんから繰り出されるのだ。

「ヤマケン! お前、金沢の寿司くらいであんなに日記かいてんじゃねーぞ!寿司はな、帯広が一番うめーんだ!」

ええええええ? 帯広で寿司っすか?それは違うんじゃねーの?と思いながら歩くこと100メートル。帯広駅からすぐの大通り沿いにある寿司屋に我々は誘われたのである、、、

(つづく)

Posted by yamaken at 13:57 | Comments (0) | TrackBack

豊饒の大地・北海道帯広編その1 黒い豚丼の謎!「鶴橋」

 眼下に広がる青い海面が突如として、一面の白い絨毯に変わる。雪の北海道に来るのは何年かぶりだ。
 JAの岡坂さんから「雪の北海道を舐めてはイケマセン。完全防備で来ること。」と言われていた僕は、数年ぶりにモモヒキ(ボディタイツという名前で売っていた)と、二重にした靴下、そしてゴアテックスのキャラバンシューズで防寒していた。飛行機を降り、にこやかに出迎えて下さった岡坂さんはしかし、上下作業服に無造作にパーカーを羽織り、ゴム底の運動靴という軽装であった。
「いやぁ今日は暖かいから大丈夫だよぉ」
言ってること違うじゃないですか!
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 さて本日はとっても重要な仕事の日だ。が、すでに岡坂さんは僕が何のために帯広に来ているか、よーくご承知なのである。
 
「じゃあ、行きますか、黒い豚丼。」

そう、黒い豚丼というのがあるんだそうだ、、、

「俺が子供の頃からオヤジに連れて行かれてよく食べてたのが、そこの豚丼なの。俺の記憶だと、そうだねぇ、店を建て替えるまでは普通の豚丼出してたと思うんだけど、なぜか建て替え後から真っ黒な豚丼になっちゃったんだよね。でも俺はそっちも好きだったから、俺がよく食う豚丼はそこのなんだ。だけど、人によって食べらんない人が居るんさ!だから山ちゃんがどうなんだか、楽しみなんだよ、、、」

おおおお
そいつぁ楽しみである!
空港から20分程度、帯広市街のハズレのあたりに、その店はあった。

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■豚丼専門店「鶴橋」
帯広市柏林台東4-1
TEL0155-34-1155

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紫の暖簾をくぐって店内に入る。1時を回っているのに満員状態である。
「あらあらごめんなさいねぇいつもは空いてるのに今日はすごいことになってるのよ。」
とお母ちゃんが迎えてくれる。厨房内には眼力の鋭い腰の据わったオヤジと、その息子さんらしき方がフライパンを振っている。それにお母ちゃん、むすこさんの嫁はんという構成らしい。


品書きは豚丼の並と特盛り、みそ汁は別注文で豆腐となめこが選べる。ちなみに帯広の豚丼専門店は、なぜかみそ汁が別注文の店が多い。でも岡坂さんによれば「付いてくるところもあって、よくわかんない。」んだそうである。
当然のごとく「特盛り」をたのみ、みそ汁は「なめこ」を選ぶ。

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超満員のお客さんを捌くために厨房はフル回転している。のぞき込んでみると、タレが入っているとおぼしきホーローびきのボウルがある。その横で息子さんが、でかいフライパンで肉を焼き、タレで煮付けている。そう、この店のスタイルは炭火焼きではなくフライパン方式なんである。

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「なんか、炭火焼きだとあっさりしちゃっててね、、、旨いとは思うんだけど、満足しないのサ。」

それは前回「ぱんちょう」で食べた時に僕も感じたことだ。炭火だと、余分な脂が落ちることもあるのだろうが、全体的にあっさりめに仕上がる。タレをネットリ絡ませたコッテリ豚丼が好きな人には、フライパン方式の方がいいようだ。

30分くらい待っていると、とうとう出てきた!

うわっ
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マジで黒~い! そして、香りが半端じゃない。香ばしいというのをちょっと通り越した、少しコゲ香の入った強くねっとりとした香り、いやクラクラしそうな「匂い」が立ち上っている。豚を食う。

「おお、ニガ旨い!」

みたとおりちょっと苦い!けど、その苦さと濃さ、甘辛さが渾然一体となって、強い刺激を味覚細胞を襲ってくる。次にこの黒タレがかかったメシを喰らう。
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「タレだけでご飯がいけちゃう~」

すんごく濃厚なタレがご飯に絡むと、苦さは消え、程よいまろやかな「まぶし飯」になるのである。これは旨い!

「ああそう、山ちゃんも好きかい、よかったよぉ。俺もタレだけでご飯たべれちゃうんだよね。」

いやこれマジでウマいっす。

実は黒い豚丼というのを訊いて、その黒の由来は何だろうと大体の想像はしていたのだ。おそらくカラメルで黒とコクを出しているのだろうなと。砂糖を炒めてできるカラメルは、実は様々な料理にコクとテリを出す秘密兵器だ。岡山名物の海老メシ(東京では、カレーショップの「いんでいら」と八丁堀のダイニングバー「ラティーノ」で食べることが出来る。)も、こげ茶色の炒めご飯だが、カラメルが大量に使われている。
この「鶴橋」の豚丼もそれではないかと。最初の一口は苦さを感じるかも知れないが、その奥から深みのある香りと旨さが立ち上がってくる。コッテリ好きには堪らない第4の味覚を刺激されるような感じだ!

食べてみた感じ、カラメルとして使っているかはともかく、予想通り糖類を加熱してできたコゲ味ではあろうと感じた。夜の宴席におつき合い頂いた、岡坂さんのご同僚のノムさん曰く
「鶴橋の豚丼のタレにはさぁ、ザラメと黒砂糖を合わせて使ってるらしいんだ。」と仰っていた。フームなるほど。

この豚丼についてくる真っ黄色のたくわん、実は豚丼との相性がばっちり。豚丼→タクワンという連鎖でいくらでも食べられてしまう。空港レストラン「白樺」の豚丼についてきたキュウリのキューちゃんもそうだが、やはり豚丼は浅漬けではなく古漬けとの相性がよいのであろう。
 しかしこれ、家庭ではとうていまねできん!と思う。食べ終わった後のドンブリは真っ黒黒状態。割り箸に付着したタレはおそらく絶対に洗っても落ちん!
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 特盛りはかなりの分量があるが、通常の僕であればもっと食べられる量だ。しかし、ここの豚丼には大満足だ。もう何も食べなくても大丈夫だ。

「岡坂さん、おれ、これ好きっす!」
「そうですかヨカッタ!俺の嫁さんはここ、ダメなのよ!」

このように好みがまっぷたつに別れる「黒い豚丼」、帯広を巡るなら絶対にはずせないところだ。また一つ、ぼくの豚丼ライブラリに欠かせない店が登録されたのであった。
さあ、仕事だ仕事!

Posted by yamaken at 09:24 | Comments (0) | TrackBack

2004年01月22日

出張予告とお詫び

さて、すでに恐怖の出張月間に入っている。
明日は、猛吹雪の帯広に発つ。しかもJAS便だ。(でも問題の機体ではないらしい)
帯広では、また新手の豚丼を食べる。JAの方が、
「まっ黒の豚丼を食べに行こう!」とおっしゃってるのだ。むふふふ楽しみである。こんな短期間で何種類の豚丼を食べているのだろうか。

新年明けてからいろんな人と「飲もうね」という声を交わしている。が、そのほとんどに応えられないまま、繁忙期に入ってしまった。BLOGへのコメントで「飲もうね」約束をさせていただいた皆様にも申し訳ない。3月まで待ってくれ~

ちなみに明日からも食い倒れ更新はするが、きちんと仕事してるんだからね!食い歩きに行ってるんじゃないんだからね!勘違いしないでね!
という、お詫びでした。

Posted by yamaken at 23:23 | Comments (2) | TrackBack

速報! 明日発売の「デジタルID革命」

 食倒ラーであるやまけんはしかし、またの姿として農産物ITコンサルタントという身分を持っているのだった。で、日経新聞のIT戦略チームである「デジタルコア」というところが本を出すのだが、そこに寄稿を要請されたので書きました。
 本の名前は
「デジタルID革命」
だ。

 明日発売なんだが、すでにAmazon.comでは予約できるようになっとる。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532311179/qid%3D1074769034/249-4467765-3286718

この本、分かり易く言えばIDタグ(RFIDタグね)の技術と社会との関連について書いた本だ。で、技術的な話などが並ぶ中、食品のトレーサビリティというコラムで僕が3000字くらい書いている。関心がある人は、ぜひ手に取って頂きたい。

ちなみに主著は、有名な國領二郎先生(慶應義塾大学)だ。

立ち読みはやーよ。

Posted by yamaken at 20:02 | Comments (0) | TrackBack

三軒茶屋 盛岡じゃじゃ麺「じゃじゃおいけん」と カレー「とんがらし」のハシゴ その1

 すっげー気になっていたのだ!とうとう、東京にあの盛岡じゃじゃ麺の専門店ができたというニュース! 「元祖盛岡じゃじゃ麺専門店 じゃじゃおいけん」というその店、三軒茶屋の思いっきり小さな店らしいのだが、ココロザシの高い若店主により営まれているという。うーむ食べに行きたい。

 と、そこに「三軒茶屋には美味しいカレーを出す「とんがらし」という店がある。」と、カレー好きYからの情報が。それぢゃあ、ぜひこの二軒をハシゴしよう!ということで、急遽三茶に出向いたのであった。もちろんこんなハシゴ企画にYがのってくれるはずもなく、事前に僕が一人でじゃじゃ麺を食べ、その後カレーをということなんだけどね、、、

さて
 盛岡じゃじゃ麺という食べ物をご存じだろうか?中華料理屋で出てくるジャージャー麺とは違う。盛岡オリジナルの素晴らしい麺料理だ。通常、日本の中華料理店でジャージャー麺というと、ラーメンの麺と同じような灌水(カンスイ)入り、玉子麺を茹でた上に、キュウリの千切り、もやしの茹でたのを置いて、そこに甜麺醤(てんめんじゃん)タップリの肉みそをかけたものを指す。
 一方、盛岡のじゃじゃ麺は小麦粉・塩のみで練った、うどんを平べったくしたモノ、、、というかきしめんみたいなプレーンな麺だ。そして、その麺が茹で上がると、水に通すことなく熱いままをドンブリに盛り、キュウリやネギをトッピングし、ここに肉みそをかける。スタイルは同じなのだが、肉みその味や先述の麺の違いなどから、全然別物だと言える。

 この盛岡じゃじゃ麺を創り出したのが、盛岡市内にある老舗白龍(パイロンと読む)」だ。僕は今から8年前の大学院生時代に、講演のついでに東北一周をしている最中にこの店に行って食べた。あまりに美味しくて、普通盛りを食べた後に大盛をもう一つ食べた!
 この店で面白いのは、じゃじゃ麺を食べ終わる頃、少し肉みそを残しておき、テーブルの上の生卵を割り入れてかき混ぜ、厨房に「チータンお願いします」と言うと、うどんの茹で湯を入れてくれるのだ。これがかき玉肉みそスープ「チータンタン」である。こいつが実に旨いのである!以来、じゃじゃ麺の店が沢山できるのだが、この「白龍」こそが、チータンのスタイルも含め、盛岡じゃじゃ麺の発展に多大な影響を与えているわけだ。

 で、実は、本場中国のジャージャー麺は、実は盛岡じゃじゃ麺スタイルらしい、という説がある。こちらを参照して欲しい。

炸醤麺と水餃子情報

僕はこのWebを1年くらい前からチェックしているのだが、とにかく情報量がスゴイ!ジャージャー麺に対するあくなく執着心を感じる、お見事な論考ページだ。いや、論考どころか中国や台湾にも実際に足を運んでジャージャー麺研究をしておられる。世の中、素晴らしい食い倒ラーが居るものだ、、、

 さて話を戻すと、その盛岡じゃじゃ麺の店が東京にできた!と言うわけだ。

■「元祖盛岡じゃじゃ麺専門店 じゃじゃおいけん」
http://member.nifty.ne.jp/yudai/oiken/
↑この方のWebで、店へのアクセスや食べ方が説明されているので、読んでください。

 で、申し訳ないんだが、この日、デジタルカメラを忘れた!なので久々に活字オンリーである。うーむこういう時のためにカメラ付きケータイというのがあるわけだなぁと納得。

 三軒茶屋の南口から歩くこと5分。コスモ石油の裏手にその店はあった。中にはいると本当に小さい。カウンターが9席くらいの店だ。その時店内にはお客は居なかった。

「いらっしゃいませ」

メジャーリーグ・マリナーズのイチローをもう少しぼんやりさせたような、長身の若い店主が迎えてくれる。愛想笑いのヘタそうな、ひたむきな一直線のまなざしを持っていう。

「中盛り。」 ←この後にカレーも食べるのでセーブした

麺が鍋に入る。わりと小刻みに箸でかき混ぜながら茹でているのをみると、くっつきやすいのだろう。麺がゆだるまで店内を眺める。直筆らしい筆字で書いた、じゃじゃ麺の食べ方などの解説がある。そして、ところどころに詩のような、決意表明のような文句をしたためた色紙がある。きっとこの店主が書いたのだろう。

と、男性客が一人入ってくる。すぐ後に女性の一人客も入ってくる。女性は、中盛りにビールを頼んでいる。かっこええなぁ。

 と、じゃじゃ麺が出来上がってくる。うーん 写真がないのが残念だ、、、実に盛岡じゃじゃ麺なのだ。白いきしめんのような麺の上にきゅうりとネギの小口切りが乗り、無造作に肉みそがぽってりと載っている。さて、食べる作法だが、、、とにかくこれをかき混ぜるのダ!上品に食べてはいけない。じゃじゃ麺は絶対によくかき混ぜて食べる食べ物なのだ

 これでもかと言うくらいにかき混ぜ、全体が肉みそに絡まったら、食べる。温かい麺に絡んだ肉みそは、ゴマがタップリ入っており、風味が香る。味はそれほど濃すぎず、上品な肉みそだ。キュウリとネギの食感が素晴らしいアクセントになり、どんどん食べ進むことができる。
 僕としては、白龍の肉みそのギトギト感が欲しいところだが、この店のスタイルはこのあっさり上品系肉みそなのだろう。それに異論はない。実に美味しいじゃじゃ麺だと思う。

 ここで異変発生。隣の男客にもじゃじゃ麺が運ばれたのだが、彼はやおらすり下ろしニンニクを放り込んでかき混ぜている。そのニンニクの香りが暴力的に僕を揺さぶるのダ!いや、実はニンニクは絶対に入れるべきなのだ!でも、、、おいらこの後、人と会うんだよネ、、、と、やまけんらしくない弱気姿勢で、入れてなかったのだ。うーんニンニクいれてぇ と思いながら自制する俺様だった。

 最後の一口を残し、卵を割り入れてかき混ぜ、店主に「チータン」と言って渡す。当たり前のように茹で湯を入れてくれ、あのチータンタンが運ばれてきた。湯気の立ち上るそれを啜ると、小麦粉が溶けた湯の、茫洋とした拡がりの中に肉みそとネギ、そして混沌からカタマリへと遷移し始めた生卵がからみ、喉を焼きながら通っていく。 これに出会いたかったのだ、、、

 一気に食べ、勘定(650円)をする。店主に旨かった、東京に店を出してくれてありがとうと声をかける。

「盛岡の方ですか?」

と目を輝かせながら若店主が言う。

「いや、違いますけど、白龍のファンなんです。」

と言うと、にっこり笑ってくれた。

この店主、目力がナカナカひたむきで佳い。じゃじゃ麺の味はこれからもっと深みを増していくだろう。この店、カメラを持って近く再訪しよう。そしてこの次は絶対に、特盛りににんにくを落として食べよう!と決意しながら、カレーの「とんがらし」へ向かうのであった、、、

(続く)

Posted by yamaken at 18:30 | Comments (1) | TrackBack

なんと大手町のロメスパ「リトル小岩井」にトッピングメニューが!

tennai-l-s.jpg 所用で大手町に行く。時間17時、ちょうど小腹が空きまくって仕方がない。ということでいつもの通り「リトル小岩井」に行くのであった。さすがにこの時間、行列はないけど、それでも店内にはお客さんが途切れることがない。

 で、メニューを眺めてビックリした。なんと、トッピングメニューが選べるようになっているのだ!
topping-l-s.jpg

 トッピングできるのは温玉(温泉玉子)、メンテルバター、ガーリックチップの三種。すべて50円増しだ。1ヶ月くらい来ない間に、こんなことになっていようとは思わなかった!店員の兄ちゃんにきくと、「ええ、つい最近始めたんです。」とのこと。
さっそく本能的に温泉玉子の黄身がトロリとケチャップと合わさった旨味を想起してしまう。

「ナポ大盛に温玉!」

程なくして出てきたのがこいつダ↓
napo-l-s.jpg

そして玉子を割ったのがこいつダ↓
napokimi-l-s.jpg

 予想通り、ケチャップの濃さに黄身の濃厚さが絡んで劇ウマ!これは素晴らしい。ただ、温泉玉子のはずだが、あまり白身が固まっていない。生卵と温泉玉子の中間という感じ。でも、これで普通の温泉玉子なみの堅さだと、スパとうまくからまないな、とも思う。きっと厨房で試験が繰り返されたのだろう。

 と、ここで激しく後悔!

 なんで俺は、 「トッピングメニュー全部盛り」 を試さなかったんだろう、、、出張の谷間だから自分に手加減をしてしまったかもしれない。金沢でよく食べたから、この谷間は節制を、、、などと思っていた自分がそこに居た。

いかん!イカンいかんいか~ん!!!

ということで次回はじぇったいにトッピング全部盛りをするゾ!

しかしこのトッピング、ロメスパにおいては革新的ではないか。ジャポネではこれ、ないもんね。リトル小岩井の味は、ジャポネよりは全体にあっさりしているので好みが別れるところだった。しかし、このトッピングを駆使することにより、全く違う味の地平が切りひらかれるかもしれない!

 大手町周辺の人は、要チェックである。

Posted by yamaken at 18:29 | Comments (2) | TrackBack

2004年01月20日

ビバ金沢!素晴らしき店、酒と肴と人との出会い 金沢駅百番街「黒百合」

.jpg 各地でいろいろと美味しいものを食べているが、美味しい食べ物をもっと美味しくするのは、他でもない人との出会いというスパイスだ。電車のボックスシートに座ったらとりあえずそのボックスに座ってる人と仲良くなる方法を考えてしまう僕としては、始めていった土地で、誰か先導人を捕まえることがその土地を楽しくするための成功条件となる。そして本日、これまでの食い倒れ人生においても最大級に痛快かつ魅力的な人との出会いがあった。

 金沢出張の最後、講演終了後にほうと一息つくためだけに立ち寄った、金沢駅構内の飲食店街。そこで一番最初に目についた居酒屋に、今回の講演の招聘元の責任者さんと入る。格別の期待をしていたわけではなかったのだ。それが、この出張で最高の経験と満足と、人の縁を感じることになるとは、夢にも思わなかった、、、

 金沢での講演終了後、夜7時半の飛行機に乗るまでの1時間ちょっとを、かぶら寿司をお土産に買うのと、一杯ひっかけるというくらいの気持ちだったのだ。昨晩の宝生寿司と、本日昼に行った回転寿司で、もう寿司については食傷気味だ。大体のところはわかった感じ。ただ、なんとなく物足りないモノもあった。よく考えてみるとそれは、加熱した料理を食べていないというところにあったかもしれない。そういうこともあって、気の置けない居酒屋で燗酒と温かい皿を所望したいと思ったのだ。

 金沢駅構内にある、おみやげ屋さんが並ぶ一角、その横に飲食店の通りがある。ここを流しながら一番最初に目についた居酒屋の品書きを覗いてみると、「このわた」「たにし」「ふぐの粕漬け」等、僕が今回まだ口にしていない渋~い食べ物達がゾロリと並んでいるではないか。

「いっちゃいますかぁ?」
「いってみようか!」

と、機構の方とのれんをくぐったのだ。

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黒百合
http://kanko.tabimado.net/kanko/go/resource$id=SHIS010091
場所、、、金沢駅構内!簡単ですよん。
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 店内に入ってまずビックリした。超満員なのだ。ちょっとした居酒屋くらいにしか考えてなかったが、店内は熱気に溢れており、客も騒々しく賑わっている。入れるかな、、、と心配になったが、ちょうど2名が勘定をしている最中で、カウンターに座ることが出来た。隣には渋いおっちゃん(60歳過ぎくらいか)が一人でおでんをアテに飲んでいる。

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 カウンターの向こうにはおでんの鍋がグツグツと旨そうに煮立っている。関東では見慣れないタネが多く、その全容が掴めないほどに種類がある。その湯気の向こうの板場では、魚を中心とした料理をさばく板前が3人。そして我々のフロントには、愛想がいいのか悪いのかわからん、オババが数人でサーブしてくれるという布陣だ。

 まずは酒、の品書きを見る。この店、実は加賀の銘酒「萬歳楽(まんざいらく)」が充実している。というかそれ以外の酒が見あたらない。しかも一杯370円から燗で飲める。同行の方はビールで、僕は最初から燗酒を頼んだ。
 そして料理の品書きを見る。そこには、またあの煌めく品書きがあったのだ!過去数度このblogでも登場しているが、いい店の品書きは勢いがあり、煌(きら)めきがあるのだ!

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刺身が食いたいが、「がんどう」というのはなんだろうか?

「がんどうはね、ブリになる前の子供!」

 そう、関東ではハマチだが、こちらではガンドウと言うのだそうだ。食べねばなるまい。それにナマコの内臓の塩からである「コノワタ」、そして超・気になっていた「フグのぬか漬け」、同じく気になっていた「固(かた)豆腐」そして金沢と言えばこれで決まりの「治部煮(じぶに)」を立て続けに頼む。
 この、注文を通していく中で、きっかけは忘れたが、隣に座っていたおっちゃんとの関係が始まった。

「ほう、東京から来てる割りには、金沢の旨いもんを全部しっとるね。」

このおっちゃん、おでんの皿を前に悠々と酒を飲んでいる。格好も崩れておらず、丹田に気が落ち着いた、いい感じの深みをもったおっちゃんである。このおっちゃんが、この後出てくる料理と酒についての導き手になったのである。
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■がんどうの刺身
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 1泊の金沢行で感じたのは、とにかく冬の金沢での魚は、ブリと海老を食べていればいい、ということだ。本当にこの辺で食べるブリは旨い。
 しかし、おっちゃん曰く

「ブリは高いんだよ。この辺の人は実はがんどうを食べてる。こっちの方が安いし、味もいい。」

とのことだ。確かにこの一皿、かなり分厚く切られた刺身が沢山載っていて1000円程度だから安い。写真だとわからないかも知れないが、大ぶりの切り身がゴンゴンゴンと載っているのだ。
 もう一つ面白かったのは、こちらでブリ(やガンドウ)が出てくる時は、必ず大根おろしのあしらいが付いてくる。当然、意味があるのだろうと思っておろしを載せて刺身を食べる。これが実に合うのダ!ブリの刺身にはオロシ! 

 おっちゃん曰く、

「そう、ブリには大根おろしが合うんだ!でも、上品に刺身にのせるんじゃないの。わさびとおろしを一緒に醤油にドロドロに溶いちゃって、それを刺身にまぶしつけて食うのが旨いの。」

言われたとおりにした。ホントに旨~い! おっちゃん、言うことがマジで的確である!

■堅豆腐の刺身
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 この堅豆腐には、ちょっと甘め・濃いめの醤油がついてくる。おっちゃん曰く、

「堅豆腐もね、わさびを醤油にドロドロに溶いちゃって、豆腐をベタベタにして食べるのが一番旨い。」

 おお、本当にその通りである。堅豆腐は本当に堅い。おっちゃんによれば水が旨いからこうなるということなんだが、まあ製法に特徴があるんだろう。大豆の風味が素朴に強く残ったいい味である。

■コノワタ
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おっちゃん曰く、

「この店には常連が一杯居るんだけど、中にはコノワタ一つを前に置いて、何時間もズーッと酒を飲み続けてるヤツもいるよ。磯の香りが口に拡がって、これは本当にいい肴なんだ。」

 オーダーを通す時に、仲居のオババが「卵つけます?」と僕に訊く。おっちゃんに訊くと黙って首を振る。

「まあ人の好みだけど、卵はいつでも頼めるんだから、まずは素のコノワタを味わってご覧。」

まさに道理である。そして食べてみて納得。5ミリ片くらいを口に運んだだけで、ムワッと瞬時に拡がる磯の香り。こいつだけで日本酒が3杯飲めるのは間違いないだろう。

■ふぐのぬか漬け
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 このフグのぬか漬け、そして粕(かす)漬けは、実は昼間に視察したスーパーでもパックに入って売られていた。この辺の郷土食なのだろう。フグの卵巣のぬか漬けは聞いたことがあるが、フグの身もぬか漬け・粕漬けになっているのだ。
 どちらにしようかと悩んだが、庶民的にして酒のアテになりそうなぬか漬けを所望すると、おっちゃんはニヤリとする。曰く、

「そう、格としては粕漬けが上だけど、酒飲みはぬか漬けで行くのが正解。」

ふぐのぬか漬けは薄く切られて出てきた。これをそのまま口に放り込む。強い塩辛さとヌカ臭、噛み締めると芳醇な旨味がじりじりと湧き出てくる。ああ、コノワタが日本酒3杯であれば、このぬか漬けで5杯飲めてしまう。

おっちゃん曰く、

「このぬか漬けはな、薄~く切れば切るほど旨い。どれどれ、、、(パクッ) ん、、、ちょっと厚いな。これをさらにもう二枚に切ると最高なんだけど、、、まあこれでも旨いけどね。

なるほど、、、おっちゃん、かなり厳しい手合いなのである。

■治部煮
 治部(じぶ)煮は、僕が大好きな料理の一つだ。鴨の抱き身に片栗粉かくず粉をまぶし、甘辛い醤油味でトロリと煮付けていく。煮ていくと衣が溶けて「じぶじぶ」と煮立つところから治部煮という名前になったとかいろんな説があるようだが、この「じぶじぶ」という響き、実に旨そうではないか。

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 この店の治部煮、実に絶品だった!具は大ぶりに切った鴨、早堀りのタケノコ、生麩(ふ)、ワカメ、シメジ。以前、料亭かなにかで食べた治部煮は小さなさらにちょこっとしか具が盛られていなかったが、ここのは大盛りである。これで600円てのは解せない、、、

おっちゃん曰く、

「治部煮は殿様料理だぞぉ、、、豪華だろ?鴨、旨いだろ?ここのは、ちゃあんとした鴨を契約で仕入れているから、他の店では冷凍の輸入品だろうけど、この店は生のホンモノの鴨なんだよ。」

ううむ納得だ。

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 ここまで一気呵成に食べて、おっちゃんとの語らいをしてきた。その中で一点気になる印が。それはおっちゃんのジャケットの襟元に付いたバッジだ。花びらのような、文様のそれが、何を示すモノなのだろうかと興をソソル。その筋の人だとしても、意外性はないなぁ。ま、そうだったとしても、別に問題はない。僕にとっては旨い物の素晴らしき先導人なのだ。

 さて魅惑的な皿はまだ続く。

「おっちゃん、あの旨そうなおでんのネタは、何が旨いんかな?」

「まず、この店で絶対に頼まないといけないのは、大根。他のネタはともかく、この大根は鍋を三回替えて煮上げとる。タコとかなんとか、旨そうに聞こえるタネもあるけど、ほとんど出汁ができったカスじゃわ。そんでな、大根を頼むと、いづみちゃん(オババのことである)が、『味噌はどうします?』ってきいてくる。この店では大根おでんに練り味噌か、ゆず味噌をつけてくれるんだ。で、お薦めはゆず味噌。これで行ってご覧。」

うーむ実に含蓄に富んだアドバイスである!
言われたとおりにいづみちゃん(オババ)に頼むと、程なく出てきた大根おでんは、実に芸術的な逸品だった!

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この満月のような大根をはしですうっと割ると、、、↓

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こうなるのダ!
大根は完全に味が染みこんでいるのにもかかわらず、煮崩れることがない。きりっと居住まいの整った大根おでんである。これに、カスタードかと見まごう濃度のゆず味噌が美しい。櫛形に切り分けた大根を口に運ぶ。60年以上も使い続けているというおでんの出汁は、実に深みのある、芯の通った味である。関東でも関西でもなく、金沢のおでんづゆ、という感じだ!

「旨い!旨いですよおじちゃん!」

「よう食べるねぇ、健啖家やねぇ、、、」

本当にここのおでんは旨いのだ。ビックリした。このあと、麩(ふ)とロールキャベツも食べた。鯖のヌタもたべた(おっちゃん曰く「ぬたは当たりはずれがあるんだけど、今日のヌタは旨いなぁ」とのこと)。

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もうこの辺ですでに相当に酔っぱらってしまう。おばばが金属製の片口でつけてくれる燗酒が、しみじみと旨い。
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そうこうしているうちに、空港行きのバスに載らねばならない時間がやってきた。おっちゃんとの別れが寂しいが、、、そこで、意を決して、最後にお名前を尋ねることにしたのだ。

「ん?ああ、ちょっと待って、、、」

と言っておっちゃんが名刺を取り出す。おお、とうとう彼のバッジの身の上が明かされるのか!でも、どんな人だったとしても、俺はこのおっちゃんのことが大好きだぞ!

 と! 真実は小説よりも奇なるものであった、、、

差し障りがあるといけないのでお名前は控えるが、名刺の肩書きはなんと

「石川県教育振興会会長
 石川県退職公務員連盟副会長」

 うええええええ  教育者のトップじゃん!
道理で、、、疑問氷塊である。的確なタイミングにビシッと無駄のないアドバイス。そして、強くお薦めを述べながらも立場は中立を保つ。絶妙なガイドとしてのテクニックは、なんと長きに渡る教員生活からの賜(たまもの)だったのだ。

「いやぁ~ もう退職した人間だから、毎日ここで飲んでるだけだよ。この店がね、20年くらい前にまだ、カウンター5席程度しか無かった頃からだからねぇ。だから、この店のマスターと、仲居のおばちゃんと、跡取りの娘さんと、そしてこの店の先代のおばあちゃんも、ようしっとる。
 まあ、また金沢に来た時にはここにいらっしゃい!招待しますよ。」

 ありがとうございました!

 とてつもなく幸せな気分におぼれそうになりながら、勘定をする。2人で食いまくって飲んで、7500円。一人4000円以下じゃん!うーむ安いのである。
 おっちゃんと固い握手をしながらお別れ。本当に名残惜しい。人間の関係の深さというのは、会ってる実時間は関係ないのだなぁと実感。また来たい、この店。

 帰りの空港行きのバス、飛行機内、そして羽田からの電車の中で、このエントリを夢中になってしたためる。

 断言しよう。金沢に来たら、寿司も旨いが、まずは金沢駅の黒百合にいってみるべきだ。そしてカウンターに座る頑固そうなおっちゃんがいたら、頃合いと距離感をはかりながら話しかけてみて欲しい。

「おでんのタネは何が一番美味しいですかね?」と。

Posted by yamaken at 21:56 | Comments (5) | TrackBack

2004年01月19日

日本最高の漬け物「かぶら寿司」と金沢の魚で討ち死に 金沢「宝生寿司」

 日本が誇る発酵食品「漬け物」。しかし、ここのところ浅漬けブームで、ホンモノの漬け物があまり出回らない。スーパーに売っているのは、殆どが野菜を調味液につけて数日のうちに食べる「浅漬け」ばかりである。漬け物とは本来、冬季の農産物が収穫できないシーズン用の食べ物、つまり保存食として発展してきた経緯を持つ。長期間保存可能とするために、微生物による醗酵の力を借りる。乳酸醗酵に代表されるような醗酵の過程を経て、野菜は全く別の味わいへと変容する。それが「古漬け」や「本漬け」と称されるものである。

 でも残念ながら、昨今、古漬けは売れない。消費者の好みが、よりあっさりした浅漬けに傾いてしまっているのだ。インパクトのない、調味液の味を食べるようなもので、僕は浅漬けはそれほど好きではない。乳酸醗酵してすっぱみが出ている本漬けが大好きなのだが、、、

kaburazusi-s.jpg ま、そんな文句を並べ立てたいわけではないのだ!今夜は、日本を代表する素晴らしい漬け物を、その本場で食べたのだ!それは、北陸が誇る「かぶら寿司」という漬け物だ。

 寿司と言うだけあって、そのネタは非常に豪華。聖護院系の大きな蕪(カブ)をハンバーガーバンズのようにものをはさめるようにカットし、軽く塩漬けする。そこへ、北陸の海で水揚げされた寒ブリに塩をし、挟み込む。ここに麹(こうじ)と大根、ニンジンなどの酵素が強い野菜もはさみ、重しをして漬け込むのである。どのくらいの期間つけ込むかは知らないが、そうしてしばらく麹と野菜の酵素の力で乳酸醗酵させた蕪とブリは旨味を増し、上質な酒のような深い芳香を発散する。円形のそれを4つに割って断面をみると、漬け込んでいたとは思えないほどに深紅の美しいブリの断面が見て取れるのだ。
kaburasusi2-s.jpg 僕は漬け物大国・日本の中でも、このかぶら寿司は一、二を争う代表的な美しい漬け物だと思う。これに匹敵するのは、 北海道の厚岸にある大根と鮭のはさみ漬け(素材が変わるだけで作り方はほぼ同じ)位ではないだろうか。

 で、食べに来てしまったのである。東京からはるばる金沢へ!遊びではないよ!明日、農水関連の団体のセミナーに、講師として参加するのである。山本センセイなのである。小松空港からバスで金沢駅まで40分、ホテルにチェックインして招聘元の皆様とおちあい、夕食をと言う運びに。あらかじめ事情通が教えてくれたのが、金沢港のすぐ近くにある有名な老舗「宝生寿司」だ。

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宝生寿司
http://www.housyouzushi.co.jp/cos/main.html
■所在地 :金沢市大野町 4-58
■TEL.076-267-0323 (フリーダイヤル :0120-100323)
■営業時間 :11:00~22:00
■定休日 :毎週水曜日
※金沢駅東口からタクシーだと2000円強程度。
houjo-s.jpg
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 老舗旅館風の落ち着いた佇まいの引き戸を開けると、天井までの吹き抜けが心地よい、カウンターと座敷席が並んでいる。カウンターに正面腰を落ち着ける。後でわかったのだが、どうやらこの店のマスターの前に座れたようだ。ラッキーである。
 地魚で決めるおまかせコースが、12貫でなんとたったの2500円!東京もんとしては金沢の物価指数を疑わざるを得ない。そうして官能のひとときが始まったのだ。

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nigiri-s.jpg まず出てきた鯖は 「これは生鯖だからネ。」 えー生でっか?口に運ぶと、臭みなどというものは全く無縁の、ただただ綺麗な香りと脂がシャリと合わさって溶けていく。白身はおそらくヒラメだが、申し分ない。しかし、何と言っても旨いのは甘エビだ。
 ご存じだろうが、金沢は海老の宝庫だ。「今日は3種類しかないけど、多い時は8種類くらいの海老があるよ。」というくらいなのだ。東京ではあえて食べたいとも思わない甘エビ、しかし金沢で食べると、本当に濃ゆい甘みがトロケルのだ。
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鯵も旨かった!バイ貝も旨かった!貝類も豊富で、まんじゅう貝という、江戸前では余り見かけないようなネタが多数あった。

そして、クライマックスがやってきた。

nigiri3-s.jpg

写真の右端にある軍艦巻きにしてある握り。これは、「じゃ海老」という、変な名前の小さな海老を数匹分軍艦に盛ったものだ。

■↓これネ!
jaebi-s.jpg

「おそらくこの辺で一番甘い海老がこいつだよ。小さいけどね。」
というそれを、少しだけ醤油を漬けて口に放り込む。途端に、ショッキングなほどに甘く、濃厚でネットリとした香りと食感が襲ってきた。旨い~。眉間にしわを寄せ、3分ほど噛み続ける。マスターがこちらを見て笑っている。

「旨いっしょ?」

旨い! こんなに素晴らしい海老は初めてだ。
ちなみにその隣にあるのはこれまた江戸前ではお目にかかれない「ガス海老」というもの。これも実に濃厚な旨味があり、旨い。けど、ショック度では「じゃ海老」が遙かに上だな。とにかく感動してしまった。

 おまかせ12貫はこれで一回りだが、勿論食べ足りない。大将と相談しながら、白身の王様、クエとマンジュウ貝、そして椎茸の握りをお願いする。

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このクエが実に最高。しっとりふっかりしたペルシャ絨毯のような食感と、のってりとした濃厚な脂分、そして上品なコク。どうしてこんなに旨いのか。マンジュウ貝は名前に反してあまり印象に残っていない。それより印象に残ったのは椎茸115という握りだ。実は日本海側には椎茸の面白い産地がいくつかある。その総本山は鳥取なのだが、金沢にもすごいのがあったのだ。この写真を見て欲しい。

shiitake-s.jpg

shiitake2-s.jpg


でかい、分厚い、そしてずしりと重い。これを焼いて、握って貰うわけだ。椎茸の強い香りと、何とも言えない火を通した茸(きのこ)の優しい柔らかさが、実に素晴らしかったのだ。

kuroobi-s.jpg この店、酒も実に素晴らしい品揃えだ。メインは地元の福光屋の「福正宗」だ。この福光屋はものすごい酒造で、2万石という堂々たる生産量にして、しばらく前に全量純米酒へと切り替えた銘酒蔵である。これはものすごいことなのだ。首都圏ではメインの福正宗よりも「黒帯」の酒造と言えば分かり易いかもしれない(「黒龍」や「黒牛」とは別モノです)。

daigin-s.jpg 「黒帯」の燗を頼み、寿司と合わせると、実にベストマッチだ。さらに、この宝生が特別に作ってもらっている、その名も「宝生」という酒がある。つい勢いで頼んでしまって後悔したのが、これは大吟醸であったのだ。酒米を30%以下の歩合に精米し、米の中心部のみで醸したのが大吟醸だ。とはいっても、やたらと香りばかりが強くたつ大吟醸が多く、食中酒としては飲みたくない。
 ところが運ばれてきた「宝生」を一口飲んで唸ってしまった。余分な香りは全くない。いや、香りはとても強い。しかしそれはあくまで米と麹の香りだ。磨き込まれた酒米からしか醸せない、雑味を極限まで排除したストイックにして芳醇な味と香りが、酢飯で痺れた舌をうっすりとリフレッシュしていく。素晴らしい!

kaburasusi2-s.jpg そうそう、書くのを忘れていたが、勿論「かぶら寿司」を頼んだ。この美しい切り口を見て欲しい。惜しいが一口で食べる。かぶらの「クニュ・シャリ」としたどっちつかずの食感の後、ブリが歯の上に認識される。漬け込み時間を経てもなお弾力に富み、噛み込んだ歯を心地よく押し返してくるブリから、パッと凝縮された旨味が弾けるのだ。麹の香りが濃いので、醸造系の味が好きでない人には勧められないが、とにかく一度は食べてみて欲しい一品である。

 もう一つ、大根寿司というのも頼んだ。カブを大根にしただけと思ったら、切り身の魚の食感が違う。少々堅めで癖のある香りは、なんとニシンであるそうだ。これまた実に旨いのであった。


 さて、寿司を都合15貫にかぶら寿司と大根寿司。そしてビール、純米酒、そして大吟醸と食べ・飲んだ。一体いくらになるのだろう、、、と勘定書を覗くと、なんと4人で18900円。ひとり5000円でおつりが来てしまう。何たることなのか?
 しかしそれでもタクシーの運転手さんが、「我々庶民からすると、あれは高い部類だよ」という。うーん 素晴らしい。ビバ!日本文化!ビバ、金沢! 将来引っ越してもいいかなリストに加えてしまおうか。
 ただ、一つだけ気になったこと、、、入店の際も、会計の際も、女将さんかどうかはしらないが、女性の方の対応が非常に覇気が無く、それだけならよいが、客を迎えるという心づもりがみてとれないのが残念だった。板前さんたちが快活なだけに、惜しい。

 本日、食べ終わってホテルに帰り、速攻でこれを書いている。やはり食倒れ日記は冷静に書くなどできないのだ。酔っぱらって気分よく高揚している時が一番勢いがある!
 さて明日は昼飯に何を食べようかなぁ、、、

Posted by yamaken at 22:21 | Comments (7) | TrackBack

2004年01月18日

気軽で本格ほっこりビストロ 保谷 「La・毛利」

 4月から始まる、とある雑誌の新連載のための取材企画をした。詳しい内容はまだ発刊前なので書けないのだが、発刊日を迎えたらババーンと出すので、本屋で見かけたら平積みにするように!
 で、その会場となったのが練馬。練馬といえば独特の品種「練馬大根」でも有名な農業の名門地域だ。西武池袋線の駅から歩いて3分もしない住宅街の中に、ひょっこりと農地が現れる。それも、当たり前のようにだ。一つ一つは面積が小さいが、それが点在している。都市と農地が共生する、とてもいい空間があった。住民も、農地が身近にある喜びをわかっているのだろう。僕の住む木場には全く農地がないので、実に羨ましくなった。

 さて、その企画取材の場となったのが、保谷駅から徒歩すぐのところにある小さなビストロ「La毛利」だ。

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南欧食堂 La毛利
http://r.gnavi.co.jp/g465600/
〒178-0064 東京都練馬区南大泉3-27-9 吉田ハイム1F
03-3923-0817
tennai-lamouri.jpg

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 4人がけのテーブルが2つに2人がけが1つ、そして8人がけが1つという、こじんまりした店内だが、実に暖かで好感のもてるもてなしを受けることができる。
 オーナーでシェフの毛利さんは、僕の一つ上の34歳、目上の方にこう言うのもなんだが、素晴らしきナイスガイである。見事に陽のパワーが放射されているのだ。
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 実はこの日は、素材の仕込みが必要な取材で、毛利さんと僕とで朝の9時半から3時間、野菜を切ったり煮たりしていた。その間ずっと話していたのだが、彼の剛直なシンプルさと、てらいのない人柄が大いに気に入ってしまった。フレンチとイタリアンの双方を修行し、自分の店をいきなり立ち上げてしまったというところからは豪快さがうかがえるが、向こう見ずとかそういうのではない、丁寧な面を持った上での豪快さと見受けた。

 取材が6時くらいにあがって、へとへとだが、そのまま打ち上げに入らせていただく。店は通常の営業に立ち返る。あわただしく開店準備をするなか、テーブルにドンドンと並べてくれた料理は実に素直に美味しく温まる皿ばかりだった。

■自家製パンとチーズ3種
 彼の店ではパンは自分で焼いている。昼・夜二回オーブンに入れるパンはしっとりした仕上がり。実にストレートな旨さなのだ。
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■燻製オードブル 自家製ベーコンとスモークチーズ、スモークサーモン
 毛利さんは自家製の燻製を出している。僕も燻製好きです、と言うと、燻製談義に火がついてしまった。彼の燻製は、店内の中華鍋でスモークする温燻方式だが、「うそっ」と言うほどに旨い仕上がりだ。微妙な火加減で、たんぱく質から旨味が最も引き出される温度帯で火を入れている。
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■温野菜スープ煮
 実は毛利シェフも自家菜園を持っている。そのせいか、野菜のつかい方は実に旨い。写真の温野菜は白菜・じゃがいも・大根だけのシンプルなものだが、火加減が絶妙で、それぞれの素材に合った温度と時間で、優しい味が引き出されている。
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■はまぐりのワイン蒸し煮
 唐辛子を強めに効かせたハマグリはビリっとしながらふっくらと蒸しあがり、塩気と合まってビールが進んで仕様が無い。
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■ひな鳥のロースト
 「はいよっ」とばかりに出てきたのは、なんとも豪快に雛鳥一匹だ。比内地鶏のヒナの腹に米と栗をフィリングとして詰めてローストしてある。塩が効いている皮目と、柔らかく滑らかな中身と、汁を吸ったライスのコントラストが楽しく美味しい。
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■ブイヤベース
 超・大皿にドンドンと盛られた鯛・チヌ・渡蟹・エビなどから出た旨味がギュッと凝縮されたスープをパンに浸して貪る。上品に食べなくていいんだぁとホっとしながら、魚にかぶりつき、骨をしゃぶる。
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■豚肉とりんごの白ワイン煮
 所要があり帰らねばならなかったので、その旨を伝えようと厨房を覗くと、
「あともう一つ、すぐ仕上がるから居てくださいよ。」
という。そして出てきたこの一皿が、彼の優しさ、暖かさをよく表している一品だと思った。
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 ご馳走様! 
 この店、お任せコースがなんと3500円である。ワインを飲んでも一人5000円で確実に満腹・満足になること請け合いだ。パワーが欲しいとき、暖かさを求めている時、この「南欧」的パワーに満ちた空間に行ってみてはどうだろうか。

Posted by yamaken at 20:46 | Comments (4) | TrackBack

2004年01月15日

温かく柔らかい煮蛤(にはまぐり)に心も温まる 寿司匠

nihama1-s.jpg 河豚(フグ)鍋をいただいた後に、もう少し何か食べたいと思う。でも、せっかくの河豚の後に、ラーメンという選択は適切ではないだろう。やはりここは握りを3貫程度つまんで帰るというのが、粋というものだ。

 匠の暖簾をくぐり、とりあえずネタケースを眺める。冬のこの時期、大ぶりのネタが目立つ。カワハギなんぞ、肝がフォアグラ大だ。この店の売りであるキンメも半身がやたらとでかい。
さっと選んで、
「赤身のヅケと〆鯖とキンメ。あとお茶ね。」
と通す。
 3貫全て以前の記事で写真を掲載しているからここでは割愛するが、どのネタも一年の中で最も旨い時期を迎えていると断言できる。締まりがよく、かつ旨味と脂の乗りが最高潮に達している。

と、加藤ちゃんがボソッと、

「今日、煮ハマがあるんだよね、、、」

と言う。高いので滅多に仕入れない鹿島の地蛤(ハマグリ)を、今日はフンパツしたらしい。煮ハマと言えば、江戸前寿司の要と言えるネタの一つだ。しっとりと甘辛く煮たハマグリの握りは、噛めば噛むほど味が出てくるので、永遠に噛んでいたくなるネタの代表格だ。僕の好きな筑地場内の「寿司文」の煮ハマと煮貝(アワビ)は、江戸前の粋であると言いたいネタだ。

 さてこの煮ハマ、匠では高い部類に入る1貫700円だ。でも、酔っぱらってるし、河豚はご馳走になってしまったし「食うよ~」と頼んじゃうのだ。

 あいよ!っと握られた蛤は、実にほんわりと柔らかな姿形でシャリの上に横たわっていた。

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よくみかける煮ハマは、もう少し照りが出るほどに煮詰めてあって、歯ごたえがあるような感じ。しかし加藤ちゃんの煮ハマは

「柔らかめに煮て、少しだけあぶって出します。」

この最後のあぶりが効いていて、人肌程度のぬくもりが、旨味を倍増させる。大ぶりに拡がった握りを一口でほおばると、歯を立てた途端に柔らかな身からジュースが滾(こん)と湧き出てくる。しっかりした味の一歩手前の繊細で淡いアタリだ。それに穴子のツメを一捌け塗っているのが、実にまだらに効いてくる。

「、、、本当に、旨いねぇ、、、」

しみじみとしてしまった。
あまりに美味しいので、本日はバカ食いする気になれない。4貫で大満足して帰ることにする。

帰る前に加藤ちゃんに言われた。

「やまけんさんがインターネットに書いてくれたおかげでお客さんがそれを見て来るんだけど、住所とか書いてないからわからないんだってさ!」

あー そうだっけ?

■「寿司処 匠」に至る路
・地下鉄東西線で、船橋方面に向かって先頭車両に乗り、門前仲町で降りる。
・目の前の階段を上がり、出口2番を地上に出る。
・出ると目の前にある大通りが永代通り。それを右に5メートル歩く。フルーツ屋の角を右に入る。20メートル歩くと突き当たるので左へ曲がる。そのまま15メートル歩いて右に暖簾が出ている。

電話番号:03-3643-1224

※このページを見て行く人はぜひ「出張食い倒れ日記を見てきた」と申告してちょーだい。特典は付かないと思うけど。

無論、煮ハマがあったら速攻で頼むべきだ。あまり数を仕入れないハズだからネ、、、

Posted by yamaken at 23:45 | Comments (6) | TrackBack

冬といえば河豚(フグ)だ!銀座コアビル河豚鍋コースで酔っぱらう

chiri2.jpg 白状するが、社会人になるまで、本当のてっちりを食べたことがなかったのだ。横浜駅近くにある割烹で初めてフグのコースを食べて、僕はもう泣きそうになった。フグ刺しは勿論旨いが、鍋の実にして熱が入り、フンワリほっこりシコシコと旨味を湛えたフグのぶつ切りを食べた時、たしかに河豚を食べて誇らしげに死んでいく人の気持ちがわかったような気がしたのだ。
 だから今でも河豚のお誘いには弱い。僕を何かに使いたい人は、ぜひ河豚攻めを薦める。あ、そういえば大分の臼杵のゴトーちゃんのところにも河豚食べに行かなきゃなぁ、、、


 さて本日は銀座コアビルのB2にある「日本料理 いらか」にて河豚コースである。ありがたいことに、情報交換会ということでご接待いただいた。

■日本料理 いらか 銀座コア店
http://r.gnavi.co.jp/g021402/
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 けど、申し訳ない。フグについては、僕は大したことは書けない。だって「美味しい」としかいいようがないのだもの。

ふぐ刺し。いわゆる「てっさ」は、この世でポン酢との相性が一番いい食べ物ではあるまいか。
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 てっちりは、フグコースのクライマックスだ。
 仲居さんが取り分けてくれるフグ鍋を受け取り、ポン酢に浸したフグの身を口にした瞬間、自分の顔から陽光が放射されるのが自分でわかった。だってすぐに仲居さんがにっこりと「美味しい?」と訊くのだもの。 「美味しい、、、」

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申し訳ない。河豚に関しては、それ以外に書きようがない。
本当に美味しい。 本当にご馳走様でした!

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Posted by yamaken at 23:39 | Comments (0) | TrackBack

【予告】怒濤の出張月間が始まる

 そうなのだ。正月明けからぼちぼちと首都圏を中心に食い歩いていたのだが、これから実に怒濤の地方出張月間が始まろうとしているのだ。

やまけんの出張人生始まって以来の密度、かつ場所は散逸しまくりのダイナミック月間になるかもしれない。

1月
19日  金沢  かぶら寿司、寒鰤、カニ、
23日  帯広  インディアンカレー、豚丼
24日  札幌  ジンギスカン、寿司
25日  大阪  インデアンカレー、 はりはり鍋
26日  和歌山  鯖のなれ鮨、ラーメン

2月
2-3日 帯広  豚丼以外のもの
5-6日 山形  蕎麦! 肉蕎麦! 納豆汁
10日  福井  蕎麦!
第3週以降、断続的に帯広、和歌山。

うーむ
俺の身体ははたしてどこまで持つのだろうか?
命をかけて食い倒れるゾ!
刮目して待て!

Posted by yamaken at 22:11 | Comments (4) | TrackBack

太ってねーゾ!

 オムライスのエントリへのコメントで、「やまけん太った」説が矢のように刺さりまくったので、急遽昼飯を抜いてジムへ飛び、測定してきた。

、、、太ってねーよ!

それどころか体脂肪率が落ちてるよ!

 年末の飲み会シーズンで毎日飲み歩いていた前回計測時に19で、今回は18になっとる。30才以上の男性の平均値が17~23だぞぉ!ただし、年末年始にトレーニングできなかったから、筋肉量が少し落ちていた。誤差範囲だけどね。

 ということで、皆さん写真をみて「顔がでかくなった」と指摘するが、これは「写真のマジック」なのだと判断したい。ていうか、そういうことにしといてよ。

 まあよく言われるのだ。なんでこんなに食い歩いているのに、ボテボテの肥満にならないのか。それは、、、当たり前のことだけど努力してるんだよーん。

 フィットネスジムではよく言われていると思うが、食事はカロリーで表されるエネルギーに転化する。これを消費していくのが人間という生き物だ。エネルギーが余ると、脂肪になる(太る)。足りないと、身体に付いた脂肪層を燃焼して代替する(つまり痩せる)。この原理は絶対不変だ。ダイエット法の本が沢山でているけど、この基本原理だけは絶対に変わらない。

 痩せたい~と思っている時にメシを抜くというのは、余り意味がない。そのメシ抜き状態を毎日続けられるのであればいいのだが、毎日など続くわけがないのだ。それよりも、脂肪を効率よく燃焼させるためには、筋肉量を増やすことが有効だ。筋肉は、動作時にエネルギーを消費してくれるからだ。つまり、ただ歩くだけでも、筋肉が多い方が消費エネルギーが多くなる。これを基礎代謝の向上という。

 この基本原理は、僕が高校生の頃(今から14年くらい前だ)に買って貪り読んだ「チャック・ウイルソンのトレーニング・バイブル」で勉強したものだ。

 チャック・ウィルソンといえば、よくテレビ番組に出ていたからみんな知っているだろう。実は彼は優秀なトレーナーなのだ。ちなみに高校時代、僕は仲間と「プロレスリング研究会」を作り、毎日体育館のマットの上で異種格闘技戦(僕が柔道で友人がテコンドー、空手とか)をやっていたのだ。その仲間の間でこの本はよく読まれ、バーベルを体育館に持ち込んで、ベンチプレスをしていたものだ。バカな高校時代だった、、、(遠い目)

 そういうわけだが、ここ最近のダイエットとかフィットネスの話を聴いても、10数年前に出版されたチャックの本で書かれていることをなぞっているか、今日的に体裁が変わっているだけだ。ということで、僕は黙々とバーベルを上げ、筋肉量を増やし、水泳をし、基礎代謝を上げて、日々食い倒れているのである。

 以上、僕のいいわけでした。さて、今夜は接待でフグを食う。

Posted by yamaken at 17:41 | Comments (5) | TrackBack

2004年01月14日

ぷるぷる官能小説的オムライスを蹂躙する。 銀座「喫茶YOU」

 今日は11時から銀座で一日仕事をした。そうなったら昼飯は、当然ながらロメスパ「ジャポネ」しかない。本日はジャリコ横綱である。
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 もはや横綱レベルでは全く意外性がない自分が居る。いずれ未開の地である「親方」へ、そしてその先にある「理事長」への彷徨が始まるだろう、、、
 さて、仕事、、、

(仕事終了)

 2時から6時までの長尺の会議が終了。頭を使い、腹が減る(横綱食っといてほんとか?)。気力が萎えてきたので、銀座で何か元気快復を図りたい。以前にも書いたように銀座は周辺部が好きだ。中央に行けばいくほど高くてコストパフォーマンスが悪くなる。
 そこで向かったのは東銀座、歌舞伎座の横。けっこう有名な店だが、絶品なオムライスを供する喫茶店「YOU」である。

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喫茶YOU
東京都中央区銀座4-13-11
03-3541-5204
営業:8時~22時30分(日祝9時~) 基本的に無休
※とにかく歌舞伎座を出て左に歩いてすぐのところにあるので、
 道は間違えようが無い。

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 オムライス、、、それも、故・伊丹十三監督の不朽の名作「たんぽぽ」に出てきたオムライスの流れを汲む、トロトロオム乗っけ系のオムライスである。同じような系統に、これまた有名なグリル満点星のオムライスがある。こちらはピラフをきちんと炊くところからはじめており、上にかけるのはドミグラスソースと、非常に高度な洋食技術がてんこもり。間違いなく美味しいけど、オムライスって、もう少し手軽なほうがいいなぁ、という人には「YOU」がお薦めだ。

 プルプルのオムレツをケチャップライスの上に載せ、客席でそれにスプーンを入れて、中から流れ出るトロトロを楽しむというスタイルのオムライスでは、何は無くともそのオムレツの出来がすべてを左右する。オムレツをプルプルに仕上げるコツ、、、それは、技術とかそういうものの前に、「思い切り」が必要である。何の思い切りかというと、「高カロリーへの恐怖を捨てる」という思い切りだ。

 オムレツをプルプルに仕上げるのは、フライパンを繰る技術を抜かせば、それほど難しいことではない。卵液に水分を足せばいいのだ。それにより、卵の凝固点が下がり、柔らかく仕上がる。これはだし巻きも同じことだ。ただ、だし巻きと違い、西洋風に仕上げるためには乳製品との相性が最高だ。中でも生クリームは、風味と濃厚さは言うまでも無く、その適度な粘性がフンワリトロトロに仕上げてくれる、卵との相性抜群な相思相愛関係的恋愛対象なのである。
 その代わりクリームの量をけちってはいけないのである。例えばここ「YOU」で使用するのは、卵の半分量のクリームだ。これに、焼き上げる際のバターを足すと、カロリー的にはかなりなものになる。家庭料理とレストラン料理の差とは、技術はもちろんのことだが、実はこういった「思い切り」の違いが大きな部分を占めると思う。たま~にお菓子作りをすると、投入する砂糖の量にびびってしまうのと似ている。

 まあしかし、食い倒ラーはそんなことを斟酌してはいけないのである。ここ「喫茶YOU」では、普通盛りのオムライス、大盛り、そして特大(400円増し)が選べるようになっている。当然食べるのは「特大」しかないに決まってるジャン!と自分を鼓舞する僕です。

 そうして運ばれてきたオムライスを見ていただきたい。まさに美の極致であろう。優雅にして典雅。気品すら感じる、一切のこげ目の無い、ライトイエローのオムレツが、その柔肌を惜しみなく横たえているのである。

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 このオムライスを表現するのは、申し訳ないのだが官能小説的にならざるを得ない。
 (以下、18歳以下は閲覧禁止である)

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 柔肌の中心部にスプーンの切っ先を入れる。 プニョリン ポニョリン と 震える柔肌を金属の硬質な輝きが舐めながら切開していく後には、トロトロと溶けた中心部が恥ずかしそうに覗く。横一文字に開かれた割れ目はしかし、未だ恥ずかしそうに閉じた花蕾のままだ。それを優しくちょっと強引に押し広げると、中から耐え切れない吐息のような湯気が「ホウ」と立ち上るのだった、、、さらにトロトロの周縁から中心部にかけて深紅のケチャップを塗り広げると、柔肌は暴力的に蹂躙された様を呈し、先ほどまでの清楚さは消え失せ、途端に蠱惑的な表情で私を誘うのだった、、、
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

うわぁあああああああ~
    もう我慢できねぇえええええ~
         喰わせろぉおおおおおお~

 と、このような興奮を毎回楽しめるのである! これが一回1200円!(←普通盛りね)

■蹂躙(じゅうりん)前の柔肌
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■蹂躙後の夜の姿
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 本題に立ち返るが、味も実に綿密に設計されている。クリームたっぷりのオムレツのトロトロ感と、適度に濃厚な風味は実に最高。土台のケチャップライスはケチャップ控えめだがしっかりとした味で、食感はオムのそれと反対にかなり固めの仕上がりだ。これはオムのトロトロ感を際立たせるための設計だろう、実に心憎い仕上がりである。
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 「特大」は普通盛りの約二倍だろうか、食べ応えも十分過ぎるほどである。また、その辺のカフェなんかよりずーっと居心地がよいのもこの店の特徴だ。70年代モダンジャズが流れる2Fでオムライスを食べ、昨日よりも寒さを増した東銀座界隈を眺めていると、なんだか日常の些事が流れていくような気がする。そんな夕方だった。

Posted by yamaken at 21:18 | Comments (6) | TrackBack

2004年01月13日

鴨卵・超絶官能の黄身を絡ませて食べる鴨丼 巣鴨「加瀬政」

kanban-kasemasa-s.jpg 何を隠そう、肉の中では鴨の肉が一番好きだ。野趣溢れる香りとしっとりとした歯触り、分厚くコクのある脂。煮ても焼いてもスモークしても旨い。が、これまで一番美味しい鴨料理と思ったのは、大学時代に住んでいた長屋の、僕が里親のように慕って、週に4日くらいは飯をごちそうになっていた山田家のかあちゃんが作ってくれた「鴨丼」だ。薄切りの鴨肉を甘辛く煮付け、汁と一緒に飯にかけて食べるだけなのだが、、、アレを超える鴨料理にはまだ出会ったことがない。
 しかし、本日まったく違うジャンルと言える、秀逸極まりない激旨鴨丼を食べた!のでここにレポートしたい。

 まあ、偶然出会ったわけではない。うちの協力会社さんが、僕のこのblogをみて、「美味しい店がありますよ!」と教えてくださったのだ。それが、巣鴨とげぬき地蔵通りにある割烹「加瀬政」だ。

 この店、実は結構有名らしく、dancyuにも採り上げられている。この冬の季節は、鱈(タラ)の全ての部位を使ったじゃっぱ鍋や、味噌仕立てにして鴨の卵をつけて食べる桜鍋などが垂涎のメインコースであるらしい。

 で、この店のランチに、鴨の卵を2個使用した鴨丼なるものがあると言うことなのダ!
 鴨は、ご存じの通り野鳥である。この卵、実に旨い。僕の母校の大学キャンパスには、鴨が越冬をする池があって、用務員さんが餌付けをしていた。池には巣箱を浮かべていたのだが、そこに卵が生み付けられていることが多々あるらしい。んで、ある日その卵を一ついただいたことがある。これを目玉焼きにしてみたのだが、、、絶品中の絶品だった。それはそうだ、飼い慣らされた家禽としての鴨ではなく、虫や雑草をたくましく食べている野生の鴨の卵だ。ネットリとした黄身の濃さに、うちふるえたものだ。
 この加瀬政の鴨卵は福井から取り寄せているらしい。その質がいかなるものか、楽しみなんである。

 何年かぶりに、とげぬき地蔵を歩く。カレーうどんで有名な古奈屋(こなや)もこの界隈。いくつか支店が出ているが、最近食べてないなぁ。鴨丼を食べてから、おやつにカレーうどんを食べてもいいが、時間がないなぁ、昨晩もインドカレーを2杯食ったのだが、、、

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割烹「加瀬政」
http://www.hirame.com/kasemasa/index.html
〒170-0002 豊島区巣鴨3-14-16
03-3918-1286
営業時間11:30~14:00 ・ 17:30~21:00
月曜定休(但し縁日(4,14,24日)と重なった場合は翌日 )
電話03-3918-1286

鴨丼 1550円
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 寺をこえたすぐ先に、店を発見。ランチタイムを少し外したので店はそれほど混んでいない。調度は綺麗で清潔感があり、好感がもてる。レジや壁に、木にさした干し柿がつるされていて、これは果たして食用なのだろうかとスンゴク気になる。
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 さて、これがランチメニューだ。はっきりいって鴨丼以外を頼む手はないだろう。一期一会かもしれないから、大盛で注文を通す。

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 待つこと5分。お新香はきちんとした古漬けのたくあん・ショウガのみそ漬け、キュウリの古漬けで好感が持てる。そして出てきたみそ汁と綺麗な朱塗りの碗に入った鴨丼。蓋をとると、、、
 ドドーンと最初に目に飛び込んできたのが、ご自慢の鴨の卵の黄身だ!
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 極めて濃いレモンイエロー、ドーム型に盛り上がる大きな黄身が、鴨肉とネギを卵とじにした上に鎮座している。素晴らしいプレゼンテーションだ。まずは、黄身をそのままに具に箸を入れる。鴨肉は腿肉と抱き身(胸)のミックスだ。鴨肉にはしっかりと火が通り、味が染みこんでいる。割り下は甘めで、江戸前の醤油がプンと香る、程よい決め味だ。
「旨い!」と唸る。
すると、なんと奥から、主らしい割烹着を着たおっちゃんが出てくる。

「鴨丼、旨い?」

「いや、ウマいっすよ。でもまだ黄身を割ってないんだけど、、、これ、まぶしたほうが旨いんかな?」

「いやまあ、好きなようにしなヨ。」

このオッサン、ただ者ではないと一目で感じる。完全に肩の力が抜けている。全身脱力のしなやかさが見て取れるのだ。急いで黄身に箸を入れる。

そして驚愕した。

黄身が濃~い!!! 箸で黄身の中身(割ってから)をつかんで上に上げると、カスタードクリームのような粘着度でトロトロと流れ落ちていくのだ!下の画像を見て頂ければその粘着度合いの一端が知れよう。

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これを鴨肉にマブしてご飯とともにかっこむ!

「う、うまい!!! ムチャクチャ旨~い!」

極めて濃厚な黄身の風味が、甘辛味を柔らかく包み、コクをさらに増すのである。やはり、通常の鶏卵ではなく鴨の卵を使うからこのような濃厚度あいが確保できるのだろう。

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主は言う。
「鴨はね、この時期くらいに寒いとあんまり卵を産まないんで大変なんだよ、、、」
なあるほど。

と、さっきまですんごく気になっていた干し柿(↓)のことを訊く。
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「あの干し柿は食べられるの?」

「出さないよ。」

一言である。しかも脱力。微塵にも余分な力みがない。何たる余裕か、、、昨晩のインドカレー「タージマハール」のおいちゃんといい、昭和のオヤジどもはちょっと格好いい。

 さて、この店の夜のメインコースである、タラのじゃっぱ鍋と、桜鍋は絶対に食べたい。

「だったら早めに予約しないとダメだよ。だって次の年末の予約がもう今から入ってるくらい何だから。」

ええええええ
 なんなんだそれは、、、 とビックリしつつ、絶対にくるぞという念を再確認したのである。

 全国の鴨ファンの皆様、ここの鴨丼は旨い。鴨の卵は偉大である。

Posted by yamaken at 20:04 | Comments (3) | TrackBack

蒲田周辺はカレーの聖地か!? 「タージマハール 蒲田店」

KANBAN-s.jpg ものすごいカレー屋と出会ってしまった、、、皆さんは小麦粉をこんがり炒めたルーを使った和風のカレーと、インド系のさらさら汁カレー、どちらがお好きだろうか。僕はどちらも好きなのだが、本格インド料理は油分が多い上にインパクトが強いことが多いので、連日食べるのは厳しいかなと思っていた。たとえば湯島の名店「デリー」のカレーは大好きで、コルマカレー大盛のホットなんかたまに食べるくらいで十分だった。

が!

毎日食べてもいいかも、、、というインドカレーがあったのダ、、、

 いつもどおり、池上の美容室に髪を切りに行ったのである。で、カレー好きの友人Yと、このBLOGでも採り上げたインディアンに行こうと、蓮沼駅前の本店まで行ったのである。実は、蒲田西口店と池上の店にしか行ったことが無かったのだ。本店の味を見てみたい!(ちなみに池上にもインディアンがあるのだが、系列が違うらしい)

 、、、しかし、ふられてしまったのだ。19時に行った時点で閉店。蒲田西口店も閉店。空腹にカレーの話ばかりしていたため、やるせなく怒る友人Y。まあ、適当に蒲田駅周辺を歩いて、カレーを見つけようということになったのだ。僕としては、駅からすぐのところにある、「カレー屋ケンちゃん」的トラディショナルなカレースタンド「南蛮カレー」380円を食って腹を満たすかと思っていたのだが、そこに至る途中にある怪しげな店の前で友人Yが「この店気になる」と言う。


 それがインドカレー「タージマハール」だ。

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 タミール語らしき看板と、やけにチープでフレンドリーな「営業中」の電飾、そしてメニューにはそれなりにリーズナブルな価格(チキンカレーが950円等)が載っている。しかししかし、ドアのガラスがよくわからない感じの曇りガラスというかそんな感じで、中が見えにくい。もうすんごくアヤシイのである。こういう店は、大きなあたりかその反対かどちらしかないだろう、、、
しかし友人Yはここにいたく惹かれたのである。白状すると僕もだ。その店の前で逡巡していると、20代とおぼしきカップルがその店から出てくるではないか!

「おお!結構まともな店なのかも。」

で、入ることにしたわけだ。

OICHAN-s.jpg 店内は狭く、L字型カウンターだけのつくり。インドの写真やらシヴァ神などの神像がお定まりのようにテーブル上に鎮座している。店の人は格別の愛想があるわけではない、ご年配のおいちゃん一人。

 メニューはチキン、ポーク、キーマ、ムング豆とラム、ナスなど。べて850~1000円くらいで食べられるような構成になっている。ここまでの段階で、小麦粉のルーをつかう日本風カレーの店ではなく、インド料理スタイルのカレーだろうことは想像がつく。

 メニューをぐーんとにらんで、Yはムング豆とラム。僕はチキンとした。おいちゃん、やおら炒めものの音をさせながらカレーを作っていく。ものの4分くらいで出てきたカレーは、実に空腹をそそる香りとプレゼンテーションだったのだ。

■ムング豆とラムのカレー
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■チキンカレー
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 出てきたカレーは、さらさら汁系の極みという感じ。上には油が浮くが、さらりとした仕上がりである。湯気と共に香るのは、各種スパイスの混沌とした宇宙の香り、その中でも特にクローブ(丁字)が一際落ち着いた香りを呈していた。
 そして秤(はかり)に載せてきっちりと重さを確認しながら「はい。」とだされたご飯は、赤飯のような赤紫のツブツブが。
「これはね、古代米。まあ、黒米っていうよね。高いんだけど、ちょっとづつ混ぜてお出ししてるの。」
 この古代米入りライスにしゃぶしゃぶのカレー汁を一さじかけ、口に運ぶ。

「!!!」

 二人、顔を見合わせてしまった! 旨い! さらりとした見た目からは想像できない濃さと深みのある刺激と、鼻を抜けるクローブとコリアンダーの香り。しかし、単純にインド風カレーと言い切ってしまうにはあまりにもオリジナルな味である。
 食べ進むうちにじわじわと汗が出てくる。ラム肉には下味が施され、軟らかく煮られており、食べやすく旨味十分。チキンもカレーと別々に調理したようで、柔らかふっくらに仕上がっている。しかもこの後もう1皿食べることになるのだが、都合3品のカレーの味がすべて違う。きちんと素材の素性によってスパイス・味を作り分けておられるのだ。

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■タージマハール 蒲田店
東京都大田区西蒲田7-70
03-3734-0913
※蒲田駅西口を出て左へ歩き、東急線のガードの角にある「南蛮カレー」を右に入り、ガード沿いに20メートルほど。一筋違いの通りをもっと奥に行くと、富士吉田うどんの「縁」と、インディアンカレー蒲田西口店がある。

スペシャルインドカレー(チキン) 1000円
ムング豆とラムカレー 950円
※共にサラダが付く。
※他にも、「小松菜カレー」「七面鳥カレー」「ワニカレー」「ダチョウカレー」等、通年で50種類以上のメニューがあることが判明。毎日攻めても新技が出てくるという、、、

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 店内には客が我々しかおらず、期待値をはるかに上回る美味しさだったので、つい声が出る。
「おいちゃん、旨いよ、これ!」
「ああそう、ありがとう。」

と、鋭い眼ながらもほっこりと表情を崩し、とつとつと、このカレーとその生い立ちにまつわる話をしてくれたのだ。

 このお話が、まさに珠玉の玉手箱だったのだ。



■オヤジの語り

KI-MA-s.jpg「この店を始める前はねぇ、蓮沼でラーメン屋をやってたんだよ。焦がしネギを薬味にしたラーメンが流行ってるけど、昭和35年にもう俺がやってたんだよなぁ、、、台湾で食べたのが旨くて、やってみたんだよ。

 俺は元々、阪急に勤めてたんだ。食堂で洋食を作ってたんだけど、大阪の方の大きな店が入ってくることになって、首になるんじゃないかと思って、自分から「辞めます」って言ったんだ。そしたら「何で辞めるんだ?」て訊かれたから、とっさに「ラーメンやります」って言っちゃったんだよなぁ。
 でも開店資金がなくて、当時のお金で200万必要なところ、親族から100万しか集まらなくて、それでもなんとかして店を出したんだ。それが当たって、3年で元金は返したよ。」

「でも、何か違うことをやりたくなってねぇ、、、海外を旅するのが好きで、いまでも必ずインドには年2回行ってるんだけど、その時もインドに旅行に行ったんだよ。各地を歩いて、向こうのカレーが旨くて、これをやってみようかと思って、帰国して店を出したんだ。

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 当時はこんな汁のカレーなんて無かったから、お客は『これはカレーと違うよ!』なんていわれたんだよなぁ、、、でも、そのうちエスニックとか激辛とかのブームがやってきて、お客さんがついてくれて、今じゃあ新橋ともう一カ所に息子達が支店を出してるんだよ。」

「ホントはぇ、20年前にイタリアのピザをやろうと思ってたんだ。ナポリにいって、ギリシャにも回って、あの辺の料理を食べて、ピザが旨かったんだよ。石釜でね。でも、買おうと思っていた店を不動産にだまされて買えなくて、仕方なく断念したんだよ、、、」

「俺はね、10年経ったら何か新しいことをやろうと思って、それまでのことを全部清算しちゃうんだ。保険だって10年で解約しちゃうんだよ。10年間保証してくれてありがとうねって。10年単位の中で色々あったよ。ピザはダメだったけど、、、カレーは10年を超えて、ちょっと延ばしちゃってるね。今は65才だけど、これからはね、アマゾンの方のを何かやってみたいんだよ。」


 なんてかっこいいオヤジなんだ! すさまじい生き様である。もう、二人してノックアウトされてしまった。30分くらいずっと話をしてくれたが、その間、力みは微塵もない。落ち着いて淡々とした、力の抜けた凄みを本当に感じた。
※ちなみに余り旨いんで、キーマカレーも頼んで食べました。

 一方で徹底したコスト削減というか、経営センスが光る。カウンターには、ナプキンではなく街頭で配られる武富士のティッシュを籠に入れたものが載っている。それだけではない。トイレのトイレットペーパーはカラ。焦ってよくみると、貯水タンクの上に武富士のティッシュが積まれているのだダ!(笑) 友人Yはトイレの中で爆笑してしまったそうだ。

 蒲田周辺は、本当になんというか、カレーの聖地と言えるかも知れない。A級なのかB級なのかはよくわからんが、実にソソル!しかも蒲田というロケーションで食べてこそ、この奇妙な満足感を感じるのだが、、、
 結局カレー食べるのに1時間以上も腰を落ち着け、おいちゃんと記念写真を撮りつつ店を辞した。汗は引いていたが、代謝の活性と、痛快・爽快なお話を聴けたという満足感で一杯になりながら、寒風ふきすさぶ蒲田を後にしたのであった。

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2004年01月11日

ネットリうまうまの米、「ミルキークイーン」を知ってますか

 ご家庭で食べている米、いろいろあると思うが、比較的最近によく見かけるようになったミルキークイーンという品種をご存知だろうか。炊いていない状態の米粒がミルクのように白濁した色味であることからネーミングがついたこの品種、今最もぼくが好きな米だ。昨日、ある友人から届いたので、早速食べてみた。
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 ミルキークイーンは、もち米とうるち米(普通のお米のことね)を掛け合わせた品種。掛け合わせ(交配)は、それぞれの長所を引き出すためになされるものだが、ここでのねらいは「低アミロース化」。アミロースとは、でん粉質の一種で、この含有量が高いほどボソボソ感が強く食感の硬い米となる。このアミロースを低くすればするほど、ネットリ感の強い米になるのだ。
 で、ミルキークイーンは、もともとアミロース値が低いもち米の特質をうるち米に発現するようにチューニングされた品種なのだ。だから、ネットリもちもちの食感と、独特の香りを持っている。冷えても硬くならず、美味しい米なのだ。詳しいことを知りたい方は、

独立行政法人 作物総合研究所 の研究成果のページ

をご覧いただきたい。 僕はこの研究所の所長さんと別件でお話をしたことがある。所長室に行くと、1時間ばかり話をして、5時のチャイムが聞こえたところで、
「さてと、、、」
と、パタンと資料類を閉じて、部屋の片隅にある冷蔵庫を開け、ビール瓶を3本抱えて、
「じゃあ、本音で話しましょうか。」
ということに相成った。そこから2時間半くらいいろんなことをお聞かせいただいた。途中で、
「うちではね、低アミロース小麦ってのも作っていて、これで作ったうどんが旨いんだよ!」
と言って、本当に研究所の給湯室で茹でて食べさせてくれた。これがまた劇ウマだったのだが、、、

 話を元に戻そう。
 ミルキークイーンは素晴らしい品種だが、当然のことながら誰が作っても旨いというものではない。僕はいろんな産地のを、それこそ15種くらい食べてきたが、最も旨い、と思うのは福島県のある生産者団体のものだ。ただし、その生産者団体、生産量が極めて少ないため残念ながらここでは明かせない。残念だ、、、そこのは、ネットリとモッチリ感だけではなく、米の細胞壁の強さというか、しっかりした噛み応えがあり、香り、風味共に素晴らしいものなのだ。洋食にでも和食にでもあわせられるオールラウンダーで、毎食食べても飽きなかった。
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 さて本日はその品種ではなくて、秋田県の有望な若手農業者のミルキークイーンを紹介したい。名前を伊藤裕樹、通称「ひろっきい」という。昨年末に親友の本城しんのすけから紹介され、意気投合した人である。

出羽大内産 伊藤家のお米
総責任者 伊藤裕樹

※伊藤さんのWebより画像引用↑

 彼は、実は週末農家だ。東京ではなんと、経営コンサルタント会社の代表取締役であり、かつ最近流行りのコーチングの専門家である。で、週末や繁忙期になると、秋田県大内町の実家(専業農家)の田んぼに舞い戻り、ご両親と作業をする。関東圏からするとかなり大きな規模で稲作をやっているのだ。で、彼が作ったミルキークイーンを食べてみようと、買い求めてみたわけだ。
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 発送直前に精米してくれているのがとても嬉しいところだ。早速炊いてみた。ミルキークイーンは、通常の米よりも少し水を少なめにしたほうが旨く炊ける傾向がある。僕の愛用しているミニお釜を使って、細心の注意を払いながら炊いてみた。
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 炊き上がり~蒸らしときた段階で、少し水が多かったと認識する。やはりこればかりは都度、新しい米を買うたびに、水加減を試行錯誤する必要がある。
 米だけでかみ締める。あのネットリ感と、程よく強い甘さ、そして女性的な香りが鼻を抜ける。旨い。この米には、若干強めの味のおかずが合う。そこで、兄弟分の工藤ちゃんが作ってくれた自家製ベーコンを厚めに切ってカリカリに焼き、目玉焼きを2個つくり、これをミルキークイーンにのせていただいた。
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 ねっとりした黄身と燻したベーコンの脂が染みた米は、テリテリと輝き、なんともしっかりと旨味をましていった。納得の味である。今度は少し水加減を落として食べてみよう。米を代えるだけで、毎日の朝が楽しみになる、、、

 ひろっきいの米は、通販で買える。興味のある人は試してみては如何だろうか。ただし、ミルキークイーン以外の米は、まだ食べてないゾ。

Posted by yamaken at 12:23 | Comments (11) | TrackBack

2004年01月08日

愛媛県の旨いもの ~瀬戸内の穴子は日本最高である~

 踊るうどんに引き続き、愛媛県の旨いものを回想したい。何度も言うが、僕が産湯をつかったのは愛媛県の港町である今治市だ。母親の実家は、今治では有数の企業家的な存在だったらしく、祖父はこの辺でドレメ(ドレスメーカー、つまり洋裁の工場)を最初に立ち上げた人だったそうだ。昔は、その工場の縫い子さんを連れて裏山に上り、たくさん生えていたマツタケをすき焼きにして腹いっぱい食べていたそうだ。その頃に生まれたかった、、、

 さて
 僕は幼き頃の食体験をつぶさに記憶しているのだが、幼少のみぎりに最も好きだったのが、穴子飯だ。瀬戸内では街中で、水揚げされた魚を担いで行商するおばちゃんが沢山いたのだそうだ。そんなおばちゃんから買った魚が食卓を彩っていたわけだ。海はもちろん瀬戸内海である。
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 この海、大型魚はいないが、小型それも雑魚といえるような魚がめっぽう旨い。例えば瀬戸内の鰯(いわし)の刺身を食べたら、江戸前の入梅鰯なんか食べたくなくなると思う。その大きな差が「微細さ」と「香り」だ。瀬戸内の魚は、とにかく味が細やかだ。細胞の組成が通常の10分の1位なんじゃないかと思うくらいに、こまやかな味がする。雑魚の中の雑魚といえる小さなベラを酢漬けにしたものなんて、涙ものの旨さだ。そして、とても美しい香りがする。こればっかりは食べないとわからないと思うが、、、

 たとえば江戸前の寿司ネタのシャコが好きな人がいるだろうか?僕はあんな味気ないバサバサしたものを食べたいと思わない。しかし瀬戸内のシャコは、外観は気味悪くどでかいヤツをさっと塩茹でにするだけで、殻をバリバリと割って、中の瑞々しさがほとばしらんばかりの身にむしゃぶりつくと、甘い甘い汁がジュワっと口に広がり、こっくりとした旨味を感じ、そして甲殻類に独特の香りが鼻腔を上っていくのだ。それで、10匹300円くらいなのだから笑ってしまう。

 そのこまやかさと香りを最も体現しているのが、穴子(あなご)だと独断で言い切ろう。僕が瀬戸内の魚で最も愛するのがこれなのだ。寿司ネタで穴子といえば江戸前と、江戸前寿司の職人は言う。けど、僕は江戸前の穴子が旨いとおもったことがあまりない(もちろん皆無ではないが)。僕の感触では、江戸前は天ぷらに合う。けど、焼きには合わないのではないか。最終的な香りにすこし泥臭さというか、大味な感覚が残る気がする。
 瀬戸内の穴子は、私見だが天ぷらには向かない。味が細やかなので、ダイナミックさが感じられないのだ。しかし、焼くと最高だ。柔らかな甘みと、凝縮された旨味、そして気高い香りがするのだ。思わず抱きしめたくなる穴子、それが瀬戸内あがり。愛媛で旨いものリストを作るとしたときに、間違いなく上位にくるのが「穴子飯」というか「穴子ご飯」なのだ。幼稚園や小学校低学年の頃から、ぼくはこれが食卓に上るのが待ち遠しくて仕方が無かった。大きくなると、なかなか遠方の親族と疎遠になってしまうが、今治との距離も大きくなってしまった。
 しかし、ちょっと前に愛媛で仕事があり、なつかしの叔父・叔母の家を訪問したのだ。もちろん、事前に「頼むから穴子飯を作ってくれ」とお願いして、、、

 叔母が「謙ちゃんが想像してるんと違うかも知れんヨ」と言いながら運んできてくれたそれは、もう見た瞬間から食欲大全開の代物だった。
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↑どーだ!旨そうでしょ?
これ、コツがある。穴子は割いた身を買ってきてよいのだが、その際に頭と骨も所望する。これはスーパーなどでは無理だろうが。そして、その頭と骨をみりんと醤油で炊き、穴子の旨味を完全に濃縮したタレを作るのだ。そしてそれを塗りながら網で身を焼く。タレを飯にツツと一回しかけ、大ぶりの穴子をババンと乗せ、三つ葉を散らす、、、

 これが、僕の愛する穴子飯だ。たいがい、記憶の中の味覚は美化されて、それを超えることはないものだが、叔母ちゃん特製の穴子飯はすこぶるつきの旨さだった!

 残念なのは、これは家庭の味だということで、店でこういうのが出てくるのはマレだ。かまぼことか、じゃこ天とか、いろいろとみやげ物があるが、ぜひともこういう、普通の家庭で出てくるものを旅人に食べさせてあげたいものだ。それが結局のところ、一番美味しいものなのだから、、、

Posted by yamaken at 23:02 | Comments (2) | TrackBack

カマタスエコ女史

うどんのエントリに、カマタスエコさんがコメントを下さった。
彼女は、僕と同じかそれを上回るくらいの旨い物好きである。そんな彼女のサイトは、レシピも含め、すばらしい充実ぶりだ。

電脳カマタ食堂http://www.cx.sakura.ne.jp/~bistro/

ちなみに彼女はライター/デザイナーといった色んな顔を持つアネゴである。僕が連載を書いている「農耕と園芸」誌に、同じく連載を持つ仲間でもある。しばらく前までイタリアにはまっていたらしく、blogの横にその特集記事があるので、ぜひご覧いただきたい。

アネゴ、メシ食いに行こうな。

Posted by yamaken at 19:29 | Comments (1) | TrackBack

インデアンカレー情報

ライターの堺さんという方から、インデアンカレー情報をいただいた。
また、ご自分のblogにも所感を書いて頂いている。

堺三保さんのblog(1月8日のエントリを参照のこと)
FIAWOL-log

大阪の人からの反応が多いところをみても、本当に人の心に残るカレーなんだな、、、
そして私は、1月26日に大阪出張なのである!
今回は梅田店で食べた後、足を伸ばして堂島店にも行くつもりなのである!

そして、上記の堺さんが書いておられる日本橋にあるカツ丼専門店「こけし」にも行ってみたいという欲望がムラムラとわき起こったのである! よし、この日の昼は3軒ハシゴ決定なのであった。

Posted by yamaken at 19:23 | Comments (10) | TrackBack

2004年01月06日

愛媛県で最も旨いと思われるうどん 「踊るうどん」

 正月明けで、しばらく出張の食い倒れネタがないので、これまでの膨大なアーカイブから、ぜひとも紹介しておきたいものを小出しにしていきたい。そう、「食い倒れクラシックス」である。

 第一弾として紹介したいのは、愛媛県が誇る激烈旨うどん屋である 「踊るうどん 永木」だ。

 先ず言っておきたいのだが、僕は愛媛の今治市で産湯を浸かった。愛媛県は、隣の香川県(讃岐)と同じく、圧倒的なうどん文化である。旨い蕎麦屋はほぼ皆無。しかも、瀬戸内といえば、極上品のいりこやうるめ干しが産出され、魚系の出汁には事欠かない。うどんがまずい条件がほとんど無いのである。
 ま、讃岐のうどん文化にはひけをとるのであるが、そんな愛媛にも劇ウマなうどんがある。讃岐うどんがはやる一歩前くらいに、高知の親友と車で名店を回り、1時間半で13玉のうどんを食べたこの僕がみても「こいつは、讃岐より旨いかも、、、」と思ううどんだ。それが、「踊るうどん永木」なのだ。

 ここは、愛媛の企画会社の女社長さんに「やまけんちゃん、愛媛の旨いうどんを教えてあげる!」と連れて行ってもらったのだ。松山市内から少し車で郊外に出たあたりにあり、わかりにくい立地。でも、この辺でこの店を知らぬ者はない。

「踊るうどん 永木」
愛媛県松山市須賀町2-1 リバーサイドナカオ
089-953-5162
営業時間10:30~午後2:30
金曜のみ午後7:00~9:00
定休日 毎週日曜・月曜

 ここにきたら、先ずはとにかく生醤油うどんを頼むのが良い。お約束の、セルフサービス大根おろしセットが来るので、おろしを擂る。その内にゆであがったうどん玉を水でキュッと〆て水切りをしたものが運ばれてくる。これを、テーブルのおろしと生醤油でいただくのだ。
 この一発で、ノックアウトされた。讃岐の、麺の角が立った感覚とも違う。とても柔らかく、はんなりふるりんとした感触なのだが、むっちりとしたコシがあるのだ。讃岐では、大体さいしょからブルリンというコシが目立つのだが、ここのうどんはムッチンとした官能的な腰使いだ。
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むろんこれだけでは足りない。同時に頼んでおいたごぼう天ぷらうどんが運ばれてくる。かけスタイルのこちらは、牛蒡を薄切りにしたものを天ぷらにしている。ここでは油に細心の注意を払っており、酸化の形跡はほぼゼロだ。香り高く揚げてある。かけ出汁も旨味が濃く、うどんをすするにふさわしい強さを持っている。
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瞬く間にたいらげてしまい、まだまだまだ腹が減っていたので、釜揚げを所望する。店の人もさすがに苦笑していた。手持ち無沙汰で店内を見渡す。小さな店だが、客足は全く絶えない。
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天ぷらケースを覗いてみると、大好きなちくわ天とゆで卵天を発見。すぐにひっさらう。
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それをつついていると釜揚げが出てきた。通常、釜揚げでは、どうしても麺の腰が決まらずふわふわした食感になりがちだ。讃岐の名店「わら家」や、満濃町の「長田」のように、釜でも腰がのり、歯をはじき返す麺が食べたい。しかし、この「踊る」釜揚げは実に素晴らしかった。うどんというもの、弾力だけではないのだなぁ、、、おいらの讃岐紀行、偏りがあったかも、、、
いやそんなことは無いと思うが、踊るうどん、最高に旨い。
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ここのHPをつぶさに見ていただくとわかると思うが、店長の永木さんは若い。そして、なんだか顔が仏様のようだ。そして言動やモットーも宗教的ビジョンが色濃く出ている。そんな踊るうどん永木が大好きだ!

愛媛県人とくに松山在住者が羨ましい、、、
足を運ばれる人は、ぜひいっていただきたい。うどん一杯400円程度で大満足間違いなしである。

Posted by yamaken at 00:16 | Comments (6) | TrackBack

2004年01月05日

下町「三ノ輪」の金玉と路麺

 下ネタではありません。

 年末のご挨拶に市場に行った帰り、三ノ輪で地下鉄に乗る前に食事をしようと思ったわけだ。師走で活気のある商店街を冷やかし歩く。うなぎを店前で炭火で焼く店があったり、八百屋も威勢が良いし、とても好ましい商店街だ。朝から1時半まで何も食っていなかったので、中華定食をがっつり食べたいと思う。

 見つけたのが、「福楽門」という店。いろいろ品書きを見たが、旨そうだ。なんだかテレビに出たとか書いてある。なんだろう、、、と思い、店に入る。
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「いらっしゃい」
とおじさんが迎えてくれる。厨房には少し若めの中国人女性。おそらく夫婦か。
店内は本格中華の色が濃いので、こう言う店はオーソドックスに攻めたほうがいいはずだ。
「八宝菜定食。」
と頼む。

 と、目に飛び込んできたのが、厨房のカウンター上に張られている暖簾だ。
「金玉満堂」
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これはどう言う意味なんだろう、、、でも、下ネタではなさそうである。かくして運ばれてきた八宝菜は、なかなかのものだった。
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 金玉の謎は残るが、店を出てしばらく流す。なんだかまだ食い足りないと思って歩いていると、けっこう路麺店が多い。よし、ソバでも啜るかと思い歩く。薄汚い、今にも倒れそうな立ち食いうどん屋に惹かれるが、それは侘しさに惹かれているのであって、決してよい結果を生まないことはわかっている。そう思いながら選別して歩くと、地下鉄日比谷線の三ノ輪駅まで来てしまう。本当は、少し歩いて吉原大門の前にある天丼「伊勢屋」に行きたいところだが、ちと時間がない。

 と、そこに路麺をみつけた。
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「峠のそば」 というその店、どうやらチェーン店らしいのだが、更科系の蕎麦を生そばで食べさせるらしい。つまり立ち食い店ながら、茹で麺ではなく、いちいち生蕎麦をゆでて供するということだ。面白い。ここにすることにしよう。
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前にも書いたと思うが、初めての路麺店で試すのは天玉と決めている。今日は、生そばを味わいたいので天玉蕎麦である。生そばをゆでるせいか、やはり時間はかかる。品書きを隅々まで読みながら4分ほど待ち、仕上がった蕎麦は、「おっこれは!」と思う、僕好みのたたずまいをみせていた。
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 まず、絶対条件である、「いびつなかき揚げ天ぷら」。型に入れて揚げた天ぷらは概してまずい。ここの天ぷらはたまねぎ・人参を薄い密度でふんわり揚げていて、これも僕の好みだ。
 出汁はいさぎよい関東風。少し甘めのが、実に滋味深い。そばにはこれでよいのだ。そして、蕎麦は、、、本当に生蕎麦だ。更科の上品で繊細な食感と喉越しを感じる。玉子の黄身をかき揚げにまぶし、グズグズになる手前の揚げを麺と一緒にすすりこむ。旨い!

 この峠のそば、実にツボを心得ているなぁ と思い、きっちり満腹になった腹を抱えて地下鉄に乗った。さて、今年は旨い路麺にどれくらい出会えるだろうか。

Posted by yamaken at 00:26 | Comments (8) | TrackBack

スパムサンドには脱帽だ。

 このところ、親友の加賀谷とよく会ってお茶をする。彼が月島、僕が木場なので、中間地点の門前仲町で会うことが多い。そして最近のひそかなスポットが、フレッシュネスバーガーだ。

 この日はまず、気持ちの良い陽光を浴びながらと言うことで、よくドラマの撮影現場に使われるリバーシティの大橋のたもとで駄話をしながら、茶を飲む。
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 そしてフレッシュネス。ぼくはファーストフードは嫌いではない。とくに牛丼は大好きだ。ただし、「子供が10歳になるまでにバーガーの味を舌に覚えこませる」などとのたまう某大手ハンバーガーチェーンは大嫌いなので、この先一生食べたいと思わない。
 その大手チェーンに価格競争ではかなわないため、高級志向を目指すのが、他チェーンの戦略となっている。それは正しい。モスバーガーはその仕入担当者さんのお話を聴いたことがあるが、立派な思想がある。
 で、フレッシュネスはモス路線でもなく、独自の商品展開をしていると思う。びっくりしたのは昨年後半に投入された「スパムサンド」だ。
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スパムとは、沖縄やハワイでは当たり前に食べられているあのランチョンミートのことだ。セブンイレブンの傑作おにぎりの一つ、「ソーセージおにぎり」は、「スパムすび」を原型にしていることをご存知の方も多いだろう。そう、スパムとマヨネーズに醤油、ご飯の相性は最高なのだ。
 フレッシュネスの「スパムサンド」は、これを柔らかいフォカッチャ風のバンズで挟んだものだ。具材は厚手のトマト、千切りレタスに半熟目玉焼きに照り焼き系のソースと、手が込んでいる。こいつが、実に旨いのだ、、、半熟の黄身が焼きスパムにからみ、照り焼きソースの甘辛とあわさると、実にこたえられない。この商品を開発した人間がどんな人かは知らないが、素晴らしい一本を獲られてしまった。

 ファーストフードは良いものとは思わない!けど、スパムサンドは好きだ! うーん 困ったもんです。

Posted by yamaken at 00:21 | Comments (8) | TrackBack

2004年01月01日

明けましておめでとうございます

 新年は、寿司匠での大忘年会で迎えました。食べたものは、、、
・あんこう鍋  こんなにアン肝の入った鍋は初めてだ!
・スッポン鍋  セイちゃんが捌いたスッポン、最高!スープも旨いし生き血も飲みました。で、もちろん雑炊も。
・刺身 いつものネタを豪勢に、、、
・餃子 浅草「末っ子」のを各自2人前くらいずつ

ということで正月から食い過ぎです。

今年もよろしくお願いいたします。

Posted by yamaken at 02:43 | Comments (7) | TrackBack