忙しい!今、絶好調に繁忙期である。なのになんでblogを書く暇があるんだ?とか、いつも食ってばかりじゃん、とかいうつまらないつっこみはご勘弁。日々仕事をこなすので精一杯な中、メシだけが息抜きなんである。
本日午前から午後までガーっと仕事をやっつけ、銀座に向かう。10月19日に、銀座の紙パルプ会館というビルの会議室で、「食学塾」という、食に関するシンポジウムが開催されるのだが、そのシンポのファシリテータを仰せつかったのである。小規模な会なのだが、面白いものになりそうだ。このblogでも正式に告知するので関心のある方は参加されたい。
で、その会議後もまた予定があるので、行く前に簡単に腹にいれていこうと思う。考えてみれば日本橋のSOHOオフィスに入ったはいいものの、それほど貪欲に新規開拓をしていない。と思い、この周辺の飯屋情報をひっくり返す。
その中でふと心にとまったのが、プロのジャズマン(トランペッター)の辰巳さんが僕にくれたメールだ。一度オフィスに遊びに来てくれて以来、結構やりとりが続いているのだが、そんな彼が好きな麺の店を教えてくれていたのだ。
あと、山本さんのオフィスから行ける範囲でお勧めできるものは、 京橋にある「しんせん」(昔はこうや実験麺房って名前だった)のワンタンメン。アクセス 京橋交差点から鍜治橋通りを外堀通り方向に約100m行き、1つ目の4つ
角を左折して柳通りを約150m、右側。または、東京駅八重洲南口を出て富士屋ホテル
の右側の道に入り1つ目の4つ角を右折すぐ右側
住所 中央区八重洲2-10-10
電話 03-3275-0303
おお、銀座に行く途中じゃないか!ということで、行くことにした。
この間、このblogへのアクセスがやたらと増えたので、もしやと思い確認すると、ライブドアの堀江社長が自分の社長日記というblogで、先日の長島農園行きのことを書いているのであった。いつもは日に3500アクセスなのだが、本日は5100アクセスだった。なんだかすごいなぁ 俺は野球には全く関心がないけど、、、
さてそうこうしているうちに店に着いた。

冨士谷ホテルの裏側にあるこの店、店構えからは特徴はつかめない。店にはいると、サラリーマン二人連れとOL3人組が、ひと皿料理をとりながら酒を飲んでいる。料理はあたりまえかもしれないが中華である。店名には「支那そばしんせん」の上にアジアンダイニングと書かれていることもあり、ラーメン屋というよりは中華ヨロズ屋であることを伺わせる。
メニューをみると、まあ通常価格帯といって良い構成だ。

このうち、辰巳さんが奨めてくれた雲呑麺(わんたんめん)が気になる。通常の支那そばから250円も差が出ている理由をしりたいわけだ。ということで普通盛りで頼んでみた。
隣の席ではOLのお姉ちゃん達がワイワイと話をしている。
「やっぱりさぁ、どこか大きな部屋に引っ越したいなぁと思って、そのために結婚でもしようかなぁなんて思っちゃったりするのよね~」
「無印良品の物干し竿は白とシルバーでかっこいいけど2000円もするのよ!ホームセンターの物干しはダサイ水色だけど、300円なの。うーん困っちゃうけどやっぱ300円よね」
云々。酒を飲んだ女性のくだ巻きは聞いていてとても勉強になるなぁ
さてしばらく後に雲呑麺が運ばれてきた。うーん全く予想しなかった展開がそこには拡がっていたのだ。

まずみて頂ければおわかりのとおり、スープは白濁しており脂が浮かぶ、かなりギットリ系の概観だ。

そして雲呑だが、非常に存在感のある、肉餡を包み込んだ大型ワンタンである。
このワンタンを別に食べるためにタレとトウガラシペーストが別皿で出てきたのも面白い。「ワンタンはこれをつけて食べて下さいね」と仲居さんが言うのである。

やってみると確かにきちんとしたワンタンである。餃子やシュウマイと違い、なめらかに茹でられた皮がツルリと喉越しよく飲み込まれていく。ただし肉餡はきっちりとその存在感を主張している。
気をよくしてスープをすすると、ギットリ系に見えるのに、インパクトを恣意的に押さえた、抑制の利いた味である。臭みは全くない。

本当のこというと、濃い味ギトギト系が好きな僕だが、ことラーメンについてはあっさりとしたものが好きだ。でもこの店のスープは僕でも旨いと思う。博多系ではまったくない、江戸前の混濁系を洗練させたような味である。どちらかといえばミルキーな感じだ。

麺はオーソドックスな細麺。量がかなりあって、850円の価格も納得である。何より、きちんと手がかかっていると感じた。
味にアクセントが欲しい人には、ラー油の作り粕かどうかはわからないが、トウガラシペーストみたいなのが置いてあるので、これを足すべし。

なかなかに旨かった。辰巳さんと僕の味覚は結構合うのである。やはり有数のオフィス街である。食べる処には事欠かない。今後もタレコミ情報には積極的に対応していきたいと思うのであった。
週末は、光栄なことに北千住のバードコート店主である野島さんのご自宅に招待頂く。
「いや、何もないけど来て下さいよぉ~」
ということである。実はもう一つ理由があって、彼が紋付き袴デビューする日なのである。覚えておいでだろうか、僕と野島さんとで、「和服を着る男の会」を結成したのである。浴衣と単衣を仕立てた野島さんはすっかり和服の虜になってしまったのである。
「以前は、店がはねるととにかくメシを食うくらいしかストレス発散の方法がなかったんだけどね、、、和服を着ると、それだけですごく気持ちが良くて、気分転換になるんですよぉ!」
ということで、この日、明治記念館で行われる親しい人の結婚式のために、紋付き袴を仕立てたという訳なのだ。僕はといえば、浴衣を仕立てたものの、一回着ただけで、しかも新品の雪駄が足に食い込みすり切れ、泣きそうになってしまって以来は足を通す気になれない。やはり僕は粋人ではないということであろう。まあいいや。
で、この日は我々の和服を作ってくれた呉服屋「千菱」の森田華子嬢も参戦ということになったのである。
北千住に着き、駅からすぐのマンションを訪ねると、まだ野島さんは帰ってきていなかった。奥さんのチーさんと息子さんの海(かい)君、そしてバードコートの若手さんである菊池ちゃんと力ちゃんと先にシャンパン・ロゼで乾杯である。

何もないなんてのは全く嘘で、さすがに飲食店のご家庭の料理である。チーさんの作る料理は実に旨いのなんの!



特に、XO醤で味付けした焼きそばは絶品中の絶品であった。

この他にも最後に、極細スパゲッティのバーミセリを、肉みそにからめ、パルミジャーノをかけた一品が出てきた。見た目はミートソースなので、食べてびっくりという算段。実山椒が入っていて、ピリリと効いて実に最高だった。
さて、程なくして野島さん登場。これがバードコート店主、野島さんの和服姿である。実に決まっているではないか!

「いや、今日はね、本当にいい結婚式だったんですよ、、、」
野島さん、人の結婚式をしみじみと自分のことのように喜ぶ。優しい人なのだ。
「でもまあ、この和服のおかげで、自分の格好は『間違いない』って思えるんですよ。僕と、僕の師匠の和田さん(銀座バードランド店長)だけが和服だったんですけどね。いいもんですよやっぱり。」
若き呉服アドバイザー・森田華子嬢も嬉しそうにしている。いえーいナイスツーショットなのである。

ま、おいらには依然として和服は高嶺の花だが、野島さんのような立派な方が頑張って広めてくれるであろう。任せました!
〆は、チーさんがぱぱっと手早く作ったミョウガの梅酢づけとイクラをご飯に散らした寿司。これがまた抜群に旨かった!チーさんの料理も店で食いたいと思った俺である。

最後、見送られて帰る時に、玄関脇の部屋でびっくりした! 竹鶴酒造の石川杜氏の家にも業務用冷蔵庫があったが、野島亭にもこんなでっかいのが、、、

俺も家にこんな冷蔵庫を備え付けたい、と強く願うのであった。野島さん、ごちそうさまでした!
3ヶ月ほど前から、焼き鳥と釜飯の名店「鳥長」が、長期で閉店しているという連絡を数件いただいた。
かなり気にはなっていたのだが、閉店している以上、行っても仕方がない。そう思っていたら、しばらく前のコメントで「開いていた」とのことだったので、久しぶりに大将の顔を見に行ってきた。大阪からやってきたハタナカ君が「焼き鳥が好きですねぇ~」というので、東京の焼き鳥も旨いってコトをアピールするためでもある。
人形町の路地裏にある鳥長の引き戸を開けると、変わらぬ店内で大将が待ちかまえていてくれる。
「いやぁ、やまけんちゃんのインターネットみて来る人が結構いてね、、、俺が『青筋立てて客を怒るオヤジ』だって書いてるだろう?みんなそれを楽しみに来るみたいだよ!」
はっはっは、そうかそうか。しかし、心なしか大将、痩せた感じだ。
「ん、6キロ痩せたよ。あのね、病気しちゃってさ、、、40日入院してたんだよ。」
そうなのだ。残念だが、僕の儀式である、チューハイを人数+一名分(大将の分)を頼むの儀はしばらく取りやめだ。大将、カロリーを厳しく制限しなければならない身体になってしまった。
「でもまあ、仕事はきちんと出来るからよ、来てくれよなヤマケンちゃん!」
了解した。いつも通り、鶏刺し、焼き鳥多数、そして釜飯の特大盛りを食べる。


そういえば、秋と言えば、この「エメラルド」が旨い時期だ!

「こいつぁ これから最高だよ!」
今日はなぜか二本ついていた。噛むとほろ苦みと芳香が拡がり、ネットリと歯にくっつく感覚が最高だ。

久しぶりだったこともあり、釜飯大盛りに、かしわ(正肉)とつくねを一本ずつ乗せた超ゴージャス版にした。気持ちよく酔い、ハタナカと大いに語らい、満腹になった。
ちょっと遅れたけど、鳥長カムバックおめでとう!大将、長生きしてください。
抜けるような青い空は、明らかに夏から秋への移行期を物語っている。この季節も大好きだ。そんな空の下、横須賀にある長島農園に向かった。久しぶりに勝美君に会うということもあるのだけど、もう一つ、ライブドアの堀江社長と情報交換もあるのだ。彼も球団参入とか色々忙しそうだけど、都心から1時間半はかかるところまで、社用車でやってくるという。

農園に着くと、大体の作業は一段落していた。一般の人は余り知らないだろうけど、農家さんは朝、陽が昇る前から仕事を始め、昼食後の暑い時間は作業を避けることが多い。季節によって変わるが、昼下がりはお休みタイムである。
「カストールから注文が来たから、プルピエの選別しようかヤマケン。」
そう、代々木上原のフレンチ「カストール」の藤野さんは、長島農園のファンになっていただいたようで、かなり野菜を買ってくれているそうだ。そのオーダーにあるプルピエを選別する。

ちなみにプルピエって何だかおわかりだろうか?日本でもごく普通に生えている、いわば雑草である。日本名はスベリヒユだ。この画像を見て、「あ、うちの庭に生えてる!」という方、良く洗って生のまま、サラダにしてみて下さい。酸っぱいドレッシングと良く合い、少し粘りけのある美味しい野草なのです。

畑には、ちょうど季節の切り替わりなのであまり作物はない状態。そんな中でも10品種くらいは面白い作物が植わっているのが長島農園の面白いところだ。
珍しい赤オクラは、さやが長くなっても固くならない。少し分けてもらったので、食べてみようと思う。

じゃがいもはこの辺ではまだこれくらいの生育状況。しかし、陽光下で撮影すると、植物って本当に美しい。

「面白いトウガラシもあるよ!」

というので行ってみると、なんとハラペーニョである。和種の大なんばんも含め少し分けてもらう。うーん何に入れようかな。

この日は、勝美君の妻君であるフランチェスカも横にいてくれた。彼女はドイツから嫁いできた超美人である。もう日本で5年くらい経つので、日本語もかなりなレベルに達している。海外の男性と結婚する日本人女性は多いが、その逆はあまり訊いたことがない。勝美君あっぱれである。

そうこうしている内に堀江氏登場。2時間あまり、色んな話をする。

特にビジネスの話をしている訳ではないので、あまり勘ぐらないようにしてくらはい。
呑みにも誘いたかったのだが、会議があるとかで、とんぼ返り。ああ、飲みに行きたいなぁという目で車に乗り、去っていった。
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「じゃぁ、メシに行こうかぁ!」
長島家で風呂を浴びさせてもらい、汗を流して出陣である。長島農園は、京急線のYRP野比という駅が最寄りである。YRPは横須賀リサーチパークの略で、かのNTTドコモの研究所などがあるのだ。一つ隣の駅には久里浜があり、地方都市としては栄えている方だ。そのため、小さな町だが気の利いた店も点在している。
「野比にこんなバーがあるのか!っていう店に連れて行ってあげるよ。まずはここで一杯やろう。」
と、YRP野比駅から歩いて3分の街道筋にある小さな小屋のような店に入っていった。
■サンライズ
神奈川県横須賀市野比1-19-9
TEL046-849-2611

小さな店で、L字カウンターに8人座ると満員になってしまう。ラフな格好のバーテンダー(店主)は30少し前の若い釣り師だが、横浜の某バーで修行していたしっかりものだそうだ。

初めての店をベンチマークする際にはやはりマティーニが一番だ。
「じゃあ、マティーニいただこうかなぁ。」
この店のマティーニはタンカレー、オレンジビターズ、ノイリープラットだ。観ていると、グラスを氷でキンキンに冷やし、ステアグラスに氷を入れた後、まずビターズを数滴垂らして氷をステアし、捨てる。その後、ベルモットを少し注ぎ、ステアした後にまた捨てる。そうしてできた、香りが微細に残り十分に冷えたステアグラスに各種を調合。

贅沢な造り方で出てきたマティーニは、ビリッと切れ味鋭い味、しかもドライに決まっており、実に美味しかった。
「ヤマケン、これで800円しかとらないんだよこの店。」
それは安い!横須賀、いいところではないかぁ!本当はこの店、軽井沢の「ヨナヨナエイル」というビールを出すのだが、この日は「丁度明日が入荷日で、古くなっているので」と、味見しかさせてもらえなかった。そういうところも良心的だ。勝美君はかなり常連化していて、店にくるお客さんとも談笑しながらの会となる。空きっ腹にマティーニを入れたので、もう僕は酔っぱらい初めである。
「よーし じゃあ飯だね!」
と向かったのは、一駅電車にのって久里浜である。

横須賀は海の町である。当然魚がいいわけだが、その横須賀近辺でも以前から「旨い魚が食える」と評判の店があるのだ。勝美君に以前連れて行ってもらおうとしていたら、残念ながら閉まっていた。今回、リベンジである。
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■海蔵
横須賀市久里浜4-16-4
046-835-5552


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店主一人、若い女性の仲居さん一人の小さな店だが、常連客で溢れている。カウンタに座り、メニューを観ると、刺身も1000円以下のものばかりでかなりリーズナブルだ。

まずは刺身盛りを頼む。
「今日は入ってるんでしょ、ウスイのタコ?」
「あ、すみません、今日はウスイのじゃないんです。」
「えええ?」
と絶句する長島君。
「いやね。ここに魚を卸している船頭さんが俺の友人なんですよ。彼のところで茹でたタコが最高なのに、今日はないんだなぁ。残念。」
「何が違うの?」
「ゆで汁。何年も継ぎ足し使ってきたゆで汁でタコを茹でるんですよ。もう、まったく違う味になるから。」
ということなのだが、運ばれてきた刺身盛りのタコでも十分に旨かった!これでもっと旨いっつうなら本当にすごいのだろう。


刺身はさすがに文句なしに旨い!漁港ならではの鮮度だ。


一品料理もかなり気が利いている。揚げナスにウニを乗せ、炙った皿は実に最高の相性を見せた。

天ぷらにあるレンコンの海老すり身はさみ揚げが秀逸。海老しんじょの種を挟み揚げたレンコンはしゃっきりした歯触りと中身のふっくらがマッチし、海老の風味も香って旨かった。


「カワハギの煮付けです。」
「おおおっ 肝が最高~!」 「フォアグラよりうめーな!」

そう、皮はぎはこれからが三浦での旬だそうだが、プルプルの肝が絶品であった。ホロホロと柔らかく崩れる身に肝をチョンと乗せ、口に運ぶと、あっさり目の身に肝のコクが乗って、ご飯を3杯くらいお代わりしたくなる旨さなのである。

「飯、メシ食おう!」
と頼んだのは、小柱のかき揚げ天丼だ。

これがもう絶品の〆ご飯であった。甘辛いタレにくぐらせた小柱かき揚げは、タマネギのシャクシャク感と甘みと小柱の弾力が相まって、次々とメシを口に運ばせる。
「なんだよ、旨い店じゃないかぁ、、、タコはなくとも十分だよ!」
ちなみに日本酒の品揃えもたいしたものだった。ただし食中酒には向かない十四代や磯自慢大吟などが奨められるので、これは辞退するのが吉。この日は田酒の燗を軽く一杯だけいただいた。
いやもうこれから長島君のところにいったら、ここに来るしかないな。絶品であった。しかも安い!東京からの日帰り行でも存分に楽しめるコースである。
「いや、今日はなかなか会えない人とも出会えたし、よかったよかった。」
という長島君と別れ、一路木場へ。日本橋までは京急で一本なので助かる。もちろんほろ酔い・満腹の身体をシートに沈ませ、眠るだけの帰り道であった。

日本橋の老舗書店である丸善が、10月に立て替えのため、一旦クロースする。すでに東京駅丸の内北口に大書店をオープンし、丸善グループ自体は刷新を始めているが、この本店ビルには人気の高い「レストラン丸善」がある。そのことは以前にもblogで書いたとおりだ。昼前から近隣のOL軍団、そして日本橋に足を運ぶご老人夫婦などがエレベータで屋上を目指し、そして行列をする。大人気の店なのだ。ここの名物は言わずとしれたハヤシライスだが、カレーも絶品の旨さだ。
このレストラン丸善の営業が、今週の土曜日すなわち明後日までだ。新しい北口の店舗でも、ここの名物であるカレーやハヤシを食べさせるコーナーがあるようだが、やはりなんと言ってもこの本店ビルの屋上にあるクラブハウススタイルの店舗で食べるのが、一番風情がある。
「この店はね、もうここの改築後も復活はしないんですよぉ。これで最後なんです、、、土曜日までにもう一回くらい来てね!」
と店のおねーちゃんに言われたので、最近、お客さんがくると必ずここへ案内している。

カレーとハヤシのあいがけは、普通盛りが1280円で大盛りが1480円。これが実に深く旨い。同行者も「甘めだけど、深い味だなぁ、、、変な洋食屋より全然旨いね!」とのこと。

このあいがけを食べる時は、カレーから食べてしまうと、刺激が強すぎてハヤシの感動が無くなるのでご注意。ハヤシから食べましょう。ハヤシ→カレー→双方を少し混ぜて という3パターンの食べ方を楽しむのが乙なのだ。


新しい店舗で食べるのも旨いのだろうが、、、この店、この小さな屋上のゴルフ練習場脇にある佇まいこそが、東京の粋を感じさせたのだが。残念である。

東京ビッグサイトで、明日23日までオーガニックエキスポというイベントが開催されている。
オーガニック関連商品や企業のエキスポで、日本での開催が今年で3年目になるイベントだ。僕も周辺業務ながらこの分野には関連が深いし、オーガニック食材のトレンドを観てみたいと思い、行ってきた。僕は招待券を持っているので無料だが、招待券を持っていなくても1000円で入場できる。
今年の目玉はなんといってもJETROが主宰している南米ブースだろう。

コロンビア、チリといった南米諸国のオーガニック関連商品が処狭しと並べられている。スリランカブースでは、スパイス類、紅茶に加えて、甘味料というか、沖縄の黒糖のような糖塊を試食させてもらった。

原料が何だったかは失念したが、濃厚ながらくどくない甘さと複雑なミネラル味は、本当に黒糖とタメを張る。ブースの兄ちゃんは流暢な日本語で、
「紅茶にこれを入れるんじゃなくて、紅茶を飲みながらこれを囓ると最高!」
と言っていた。
さて
イタリアのサルディーニャからも出展がされていたのだが、ここで思わぬ出会いがあった。ご存じシチリア料理の無二路で僕が大好きだったショートパスタ「スパッカレッラ」。輸入していた小さな商社が潰れてしまい、現在は日本のどこを探しても見あたらない。そのスパッカレッラにちょっと似たショートパスタがあるので、イタリア人に「スパッカレッラはないのか?」と訊いた。


日本語が全く通じないらしく、「シェフ」と呼ばれるある日本人が駆けつけてきた。

なんとこの人、、、あの兵庫県の赤穂市にあるピッツァ&イタリアンの名店、「さくら組」のシェフ、西川さんだったのだ! もう、超驚き&ハッピーである。「さくら組」へは、1年ほど前にニシガイチと一緒に行ったのだ。その時の感動したエントリはこちら!
「えええええ 俺、大ファンですよぉお」
「そうですか、どうもどうも!」
スパッカレッラは残念ながら扱っていないようだが、今後ちょっと情報交換をさせていただくことにする。いや、予想外の出来事で嬉しい。
この他にもあの納豆菌の応用加工食品であるテンペの商品ブースなどを見学。

まだ一般には出回っていないレア商品だが、この秋あたりからちらほら小売段階にもお目見えしそうだ。同行の津田ちゃんが営業の人と話しているのを訊くと、小耳に挟んだ価格はけっこう高い。ということは、これは健康食品扱いなのだ。日本という国の消費構造は面白いなぁ。健康という付加価値にはみな、お金を払うのだ。伝統食品の全てが何らかの健康要因を持っているというのに、、、
3年目を迎えたこのイベント、徐々に出展者も増えていい感じになってきた。何より、訪れる客層が一般化しつつある。これは重要。やはり普通の人が来るイベントというのが一番強いのだ。
もし関心のある人がいたら、1000円かかるけど一般枠でいってみてはどうかしらん。ブースで積極的にアタックすれば、ワインやチーズを試食できるはずだ。
沖縄行の最中から、また色々と農業をめぐる業界に動きがでている。
BSE問題で米国産牛肉の輸入をめぐり火花が散っているが、政治の水面下では着地に向けた地ならしが相当に進んでいる。しかし、この経緯と内包する意味については、決してこの国の一般紙からは伝わってこない。これは相当に腹立たしいことなのだが、、、
姉妹blog 「俺と畑とインターネット」 に下記エントリを書いているので、関心のある人は読んでおいて下さい。
■BSEに関して今、感じておくべきこと
http://www.yamaken.org/mt/oreto/archives/000458.html
悦楽の日々から、仕事モードへ。これもまたいいもんです。
旅を終えて1週間以上が経った今でも、あの濃密な日々を思いだしてしまう、、、一年に一回は確実に沖縄へ行くことにしたい。そういう人生を送ることに決めた。
さて
このblogには「食い倒れの殿堂」という、僕が勝手に選ぶランキングがある。今年上半期の殿堂入りが途絶えていたが、沖縄をここに入れることについては、異論ないだろう。特定の店ということではなく、「沖縄」という場所を、謹んで殿堂入りとしたい。
この沖縄編、これまでの食い倒れ日記史上で、一カ所での記事投稿では最多記録の16エントリとなった。実はエントリ化していない食べ物もいくつかある。美味しかったんだけど、書ききれん!ちゅうことで見送りました。ここで言ってしまえば、通堂のラーメンは、キッペイが言うように博多でも勝負できそうな完成度であった。キッペイが買ってくれた「チョコもち」は、カカオと餅米を練って焼いたものなのに、一瞬「洋菓子か?」と間違ってしまうような絶品な味わいだった。あと、クリームパインの旅に連れて行ってくれた粟国がポケットから出してくれたグァバも最高だった。この他にも細々とした面白いものがあったのだけど、それはまたの機会に。加賀谷のblogや、卓のblogをみていただければその一端が分かると思う。
沖縄編のエントリ一覧をここに作成しておこう。
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■第1日目 沖縄上陸編
沖縄そば「淡水」
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000439.html
夜 その1「洋食味処 こうちゃん」
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000441.html
夜 その2 ビーフステーキ「ジャッキー」
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000442.html
■第2日目 一路・名護へ
沖縄のハンバーガーインはココで決まりだ!「A&W」
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000443.html
ルートビアについての補足情報by卓
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000445.html
昼 驚嘆の一撃! コッコ食堂「地鶏ソバとオムレツ丼」
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000444.html
夜 名護の夜は居酒屋から山羊汁へと漂う。
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000446.html
■第3日目 名護から那覇へ
朝 沖縄パイナップル新世紀 驚きのクリームパインを食べた
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000447.html
昼 名護名物といえば実はこれ! オリオンビール工場を見学した!
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000448.html
昼 タコライスチーズ野菜は二次元的味覚の極地か!? 「キングタコス」
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000450.html
夕 伝説の沖縄在来豚・アグーを食べる「Gen」
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000451.html
夜 ポーク玉子おにぎりを首都圏でもぜひ導入して頂きたい!
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000452.html
■第4日目
昼 ついに来た大本命! 沖縄的3次元味空間が眼前に拡がった! イラブー料理「カナ」
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000454.html
おやつ 悶絶の絶品グリーンカレーは食い倒ラー対応であった! カフェくるくま
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000455.html
夕 琉球料理逍遙~未来に繋がる郷土の魂を堪能させていただいた 「琉球料理乃 山本彩香」
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000456.html
■第5日目~第6日目
イカ墨汁そばと沖縄の海とグッドバイ
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000460.html
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あと、最終的な僕らの道程は下記のようになった。機動的な変更で、より楽しめる沖縄行になった。これは、事前にコースの下見までしてくれたキッペイと卓の功績である。本当にありがとう!


この沖縄行では沢山の人たちに温かく迎えて頂いた。
卓、キッペイ、サック、太田ちゃん、オニユリ、ヤマコ、ナガハマちゃん、チカシ、さっきー、粟国、ナガハマ姉、ぐし、そして卓パパ。
皆様に謹んで御礼を申し上げます。どうもありがとうございました!
4日目、イラブー汁と山本彩香さんの料理を食べ、その果てしなく奥深い琉球料理の世界を垣間見ることができた。しかし、それも含めたうえで、沖縄での一番のご馳走は何だったろうか?それは、文句なしで「人」であった。出会った人たちとの交歓こそが、大ご馳走だったのだ。
5日目、朝から離島に渡って慶良間の海を満喫する予定だった。しかし、晴男ぶりには自信のある僕と卓がいるにも関わらず、かなり強い雨と風で、フェリーは欠航となる。残念だが島には渡れない。
「仕方がないね、丸一日呑んで過ごそう!」
キッペイの声がかりで太田ちゃんの家に皆で移動。仲間のナガハマちゃんのお姉さんが石垣島から石垣牛を買い込んできてくれているので、これを焼きながらの酒宴と相成った。

チューハイやらビールやらを30本以上買い込んでおり、泡盛は3リットル入りのデカイPETボトルで、これを延々と飲み続ける。沖縄の飲み会は長く、緩く続いていく。この独特の緩さが、暑さと相まって心を溶けさせる。

「沖縄ではね、仕事をしようとすると、人間関係があるかどうかで早さが変わるんだよ。飲み会で一度でも一緒に杯を交わしていると、すごくスムーズにことが進む。だからこれは、とても重要なことなんだよ!」
今回の旅路は、卓と高校時代の親友であるキッペイ、そのネットワークを巡る旅であった。全土にわたりキッペイの仲間ネットワークは張り巡らされ、どこにいっても友人達が杯を持って歓迎してくれた。素晴らしいのは、キッペイの友人達が、
「キッペイの友達は私たちの友達でしょうが!」
と、我々を喜ばせるために様々なことをしてくれたということだ。彼らの仲間意識は余りにも濃密だった。
この日最高に感動したのは、イカ墨汁だ。雨が上がったので、近くの海岸で少し泳ぎ、身体が冷やした後のことだ。
「やまけん、イカ墨汁で沖縄そば食べようね」
と、買い込んできた墨イカを女性陣が捌き、墨袋を取り出し、鰹だしにあわせて、イカと大根がタップリ入ったイカ墨汁を作る。

これを湯通しした沖縄そばにかけてすすり込むのだ。

「おおおお 旨いなぁ、、、」
しみじみと旨い!鰹だしとイカすみの風味が相まって、あっさりしていながらも旨い。冷えた身体に熱が入り込む。この「じんわり感」こそが、沖縄の味だなぁ、、、と思う瞬間だった。
しかし、東京で飲み会をやる時に、こういう風に郷土の旨い料理をささっと作って供するようなことがあるだろうか?イカ墨汁は八重山出身の女性が中心になって作ってくれたのだが、みんなで作って食べるというのがごく当然のような雰囲気だった。これこそが本当のもてなしだ。沖縄の友人達に、本当に脱帽した瞬間だった。
夕方、皆と別れて帰る時に、加賀谷が「オレはちっと呑んでいくから」と歩き出す。それをみたキッペイが「あ、じゃあおれも一杯だけ」といい、さらにその後をヤマコちゃんが追う。果てしなく続く宴。最終的には他の同窓会に出ていた卓も、ホテルでblogを書いていた僕も、そしてすでに3軒ハシゴしてきた卓パパも合流して、「こうちゃん」で呑むのであった。

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9月12日、沖縄での最終日。この日は卓が朝一便で帰京、キッペイが建築士試験の模試ということで、加賀谷と二人で最終の東京行きまで過ごす。
普通の観光客ならば一日目に足を踏み入れるであろう国際通りを、最終日になってようやく散策する。Tシャツを買い、食堂を楽しみ、市場を冷やかした後、手持ちぶさたになる。
「あー、今日が一番天気いいな、、、海でも観に行くかぁ」
そう、この6日間で最高の青空が拡がっていた。空港には5時間後に着けばいい。
「じゃ、路線バスで1時間程度走っていける海でビール呑もうや」
県庁前から、シートに落書きだらけの路線バスに乗り込み、58号線を北へ向かう。この道も見慣れた風景になった。昼寝をしながらガタゴトと揺られ、海浜公園という停留所で降りる。商業施設でビールとポーク玉子おにぎりををしこたま買い込み、海へ向かう。
テトラポッドの上から望む海と青空は、江ノ島のそれの100倍くらいの鮮やか度で迫ってきた。

僕も加賀谷も何も言うことはない。ひたすらビールを呷り、その水平線を眺め、空港に戻る時間まで心ゆくまで沖縄を満喫した。

この日の海が網膜に焼き付いたのか、帰りの飛行機の中では海の残像ばかりが夢に出てきた。きっとこれからもこの残像が残り続けるだろう。
熱く駆け抜け、食べ抜いた5泊6日であった。
誰か知ってる方、教えていただければ幸いです。
・記事数が多くなりすぎてきたので、カテゴリを再編しようと思っています。
・カテゴリに分けた時に、デフォルトでは表示される順番がエントリの日付の新しい順になっていますが、これを逆に、日付の古い順に表示したいと思っています。
・その場合、どのようなテンプレートを作ればよいのかを教えて頂けませんか。
沖縄編のカテゴリを早速作ったのですが、これを全部プリントアウトすれば友人にさっと渡せる記録になるので、、、 そのためには、日付が古い順になっている方がいいと思いまして。
ご存じの方、よろしくご指導くださいませ。
いや、ようやくクライマックスの一つを書き終えた、、、でもまだ印象深い旅程が、あと2日分あるのです。もう少しお付き合いのほどを。
さて
沖縄を案内してくれた張本人である川端卓のblogにも、同時進行版が書かれています。沖縄の旅程をセットしてくれた張本人のコメントや如何に?
http://kwbt.jugem.cc/?day=20040908
同行の加賀谷のblogにも、まだ1日目だけですがUPされています。
http://www.kagaya.com/archives/003519.html僕のblogは料理中心なのですが、加賀谷のは人間模様中心ってことで、、、
さて、食い倒れ日記の方ではこの後、沖縄終盤編に向かいます。
市内に戻り、レンタカーを返すと丁度、卓から連絡がきた。行きと同じパレットタウンくもじで卓とパパ様と落ち合い、タクシーで繁華街を抜ける。夕暮れ時の薄闇の中、小さく品の良い間口の店構えが見えてきた。
「この看板の字、うちの父が書いたんだよ。」

と卓が紹介する横で、川端パパは照れくさそうに斜に向きながらも、この石盤も僕の字なんだよ、と解説してくれた。

この店が、琉球料理の専門家として名高い、山本彩香さんの店だ。
■琉球料理乃 山本彩香
(今回、住所等は記しません。)
実は僕はこの沖縄行きに先立ち、卓から「事前勉強しておいてね」ということで、豆腐ようを手渡された。豆腐ようはご存じだろうか?水切りした豆腐を塩蔵し、麹や泡盛と一緒に漬け込んで発酵させた食べ物だ。中国の調味料である腐乳(フールー)に似ているもので、気の利いた居酒屋で食べることが出来る。卓からもらってなにげなくキュウリと一緒に食べたところ、そのあまりの上品さ、繊細さに驚愕してしまった!

「この店を主宰する山本彩香さんと僕の父は30年来のお付き合いでね。家族ぐるみで仲良くさせてもらっているんだ。」
と聴いた時には、良心的な小さな小料理屋さんなのかと思っていたのだが、とんでもない話であった! 山本彩香さんは、伝統の琉球料理を継承し、また新しい世の流れの中に対応づけをし、琉球料理の現在を創り出している沖縄料理界のキーパーソンだったのだ!まったく自分の不見識を恥じるばかりである。
店内に入ると、数人で調理場と対面できる印象的なカウンタではなく、座敷に通して頂く。山本さんはいらっしゃらないようだが、若いスタッフが対応してくださる。この若いスタッフさん達の所作がびしっと決まっており、押しつけがましくない態度で、素晴らしい。
「そりゃぁそうだ。山本さんはね、琉球舞踊の第一人者だったんだよ。」

パパが教えてくれたところによれば、山本彩香さんは実は琉球舞踊家として名声を獲得した人だ。沖縄タイムス芸術選の大賞を受賞するなど、その活躍は華々しかったらしい。それがある時、「このままでは琉球料理はダメになる」という実感を得、以来、料理の師である母君と料理店を出し、今に至るのだという。この辺は、他のWebでも検索すれば出てくるので、探してみて欲しい。
その彩香さんの舞踊で培われた居住まい、所作が、店のスタッフにも伝承されているのだろう。
「君は内地から働きに来て居るんだよね?」
とパパ様がスタッフさんに訊くと、
「はい、実は広島から来ています。」
とのこと。他にも、横浜から修行に来ている人もいるということだ。この一件からも、この店が沖縄料理の梁山泊的存在であることがうかがい知れる。
イラブー汁で感動をした夜に、また琉球の伝統料理をいただくことができる。これも僥倖というものである。

「さあ、泡盛を飲みながらまずこれだね。」
パパが手ずから水割りを作ってくれた後、運ばれてきたのがこの豆腐ようだ。
■自家製豆腐よう

麹の色だろうか、鮮やかな紅色が皿に一点の存在感を醸す。楊枝で小さく削り、舌の上に載せると、ネットリとした食感に、泡盛がさらに発酵したような濃い芳香と、チーズの数倍もありそうな旨味が拡がる。しかし、とても濃い味と香りなのに、なぜか上品だ。それが市販の豆腐ようと全く違うところだろ感ずる。

「ここの豆腐ようを食べた人が空港に売ってるのをお土産に買って帰ってね、『全然違うじゃないですか!』て文句を言われたことがあったね。当たり前だよ。ここの豆腐よう以上のものはみたことがない。だって大量生産じゃないんだから。」
後に伺うことになった彩香さんによれば、「泡盛と塩の抜き方を少しアレンジしてある。昔は冷蔵ができなかったから塩分が強かったけど、冷蔵庫が普及したことによって、豆腐ようの造り方、味も変えられるようになったのね」
とのことだ。そう、これが「現在」というものだ。時代と技術により、料理は変わっていくものなのだ。その一つの形が、この洗練の極みにある豆腐ようのなかに具現化されている。
「はい、ゴーヤーのしりしりです。」
■ゴーヤーのしりしり

「しりしり」とは、おろし金ですり下ろす音だそうだ。本州では「すりすり」だろうか。生のごーやーをおろし金で擂り、柑橘などのジュースを混ぜたものだ。口に含むと、苦い!しかしその苦さは柔らかで爽やかな苦みだ。苦みは胃液を増進し、味覚をリフレッシュさせる。これを最初の段階に配するあたり、これ以後の味世界に没入させるための絶妙なギミックである。
「おろし金で優しく擦ることで、細胞が壊れず美味しくなるんです」
とスタッフさんが説明してくれた。そういう「気持ち」がこもったドリンクだった。
■ミヌダル

いかにも琉球料理!というものが出てきた。たーむ(田芋)の揚げ物は、沖縄の田んぼでとれる芋で、様々な料理に使われる。これを素揚げにしたものだが、甘くネットリとした、慈愛に満ちた味だ。ゴーヤの天ぷらは、苦みの集中するワタの部分を取らずに揚げ、「粟国の塩」を添えている。口に運ぶと、アクやえぐみなど様々な味が拡がる。

この豚肉料理がミヌダルだ。豚肉の上に黒ゴマのペーストをのせて蒸してある。豚の味つけがシンプルな分、蒸し加減でさらに濃厚になったゴマの風味が際だつ。この料理、ゴマのペーストにしろ、豚肉にしろ、強い個性と旨味を内包する素材なのに、味の印象は非常に奥ゆかしさを感じる淡いものだ。
これらを食べて合点がいった。彩香さんは、非常に複雑性の味世界を構築する人だ。味覚とは、その振幅の広さで価値が決まる。「甘い」とか「辛い」といった、快楽中枢を直接刺激するだけの単純な要素では味は決まらない。サンマや鮎の塩焼きを食べる際に、あの苦みのある肝が入ることでどれだけ旨味の世界が拡がるかはご存じだろう。しかし、肝だけを取り出してみれば、苦いだけで食べられるものではない。そう、「美味しくない要素」を巧妙に絡ませることで、全く予期せぬ旨味の地平が拓かれていくのである。こうした美味しさは、生来インプットされたものではない。学習し、鍛え込んでいかなければ獲得できない、より高次の味覚である。この高次の感覚を磨き、楽しむことが日本の料理の「粋」なのではなかったか。ファーストフードの氾濫は、この高次の感覚を奪うものであり、そこに日本の食を巡る危機があるが、どうやら沖縄も同じ問題に直面しているのだろう。
彩香さんの料理は、この問題に鮮やかな解答を提示している。おそらく彩香さんの店でこの皿を食べることで、目の前を色彩が走るはずだ。食べてみれば分かる。
■ヤマンアーサ入りゆし豆腐

ゆし豆腐という、固めていないほろほろの豆腐にアーサという海藻とヤマン(山芋)を混ぜたものを載せ、カツオだしを張った料理だ。沖縄の豆腐は、大豆をすりつぶし呉汁にした後、生のままで絞りおからを取る。本州では煮てから絞るところが微妙に違う。彩香さんのゆし豆腐は、しっかりと堅い沖縄の豆腐からは想像もつかないふんわりとした口当たりだった。アーサという海藻は磯臭さが無く香りのみが残るものだった。
■イラブチャーの酢みそがけ

「イラブチャー(ブダイ)です。酢みそをかけて味わって下さい。」
これは、キッペイが努めるブセナリゾートの海底で沢山みることのできたブダイの刺身だ。
「よく沖縄の魚は刺身で食えない、なんていうヤツが居るけど、そう言うヤツは旨い店を知らないだけなんだよ。食べればわかるさ」
とパパが言うように、みただけで匂い立つ、いかにも旨味の濃そうな肉である。これに酢みそをタップリとかけていただく。

刺身の切り口は上質の蕎麦の角のごとく立っており、口に含むとなめらかに滑る。酢みその塩梅も最高である。沖縄の暖かい気候ではやや甘めの酢みそになるかと思ったが、さすがに抑制の利いた酢みそで、魚をきりっと食べさせる、背筋の伸びた味だ。
■すーねー(あえもの)

本州の白和えと同じ系統の味だが、じーまーみ(落花生)の風味がする。肝心の青菜がなんという野菜かを訊き損じてしまったのでわからないのが残念だ。フダンソウなどをよく使うらしい。
■(名前失念。)

これは、ネギの一種でイカ(クブシミー)の燻製を巻き、酢みそをかけたものだ。本州でも「野蒜(のびる)のぐるぐる」と言ってよく作るが、クブシミーのしっかりした歯応えがネギのジャッキリ感を引き立てる。クブシミーは鹿児島ではコブシメと呼ぶ大きくなる甲イカだ。

沖縄ではイカが実に旨いのだが、それはこのクブシミーのような味の濃い甲イカが沢山獲れるからだろう。
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と、ここで山本彩香さんその人が、小柄な身体から明るいエネルギーを放散しながら部屋に入ってきたのであった。
「はい、いらっしゃいませ!」

「卓の東京の友達が来たから連れてきたよ。」
「あらまあようこそ、、、」
本当に強いエネルギーを感じるが、とても優しい。そして、とても高貴な誇り高さを感じる。僕はこの店をくぐるまで、ちょっと小粋な小料理屋に連れて行ってもらえるんだろうという程度にしか考えていなかったのだが、全く持ってここまでの料理をいただく中で、居住まいが正されてしまったのだ。そんな僕や加賀谷に対しても、極めて優しく彩香さんは微笑みかけてくれたのであった。
「私はねぇ 卓ちゃんが生まれる前から知ってるのよ!」
と、卓も全く頭が上がらない様子だ。
そうしている内に運ばれてきた料理に、卓が強く反応している。
「やまけん、これ、この料理が一番のお奨めなんだ!」
■どぅるわかしー

「これはね、どぅるわかしーっていう料理なんだけどね。田芋を潰して、色んな具を混ぜたもの。どこに行っても食べられるかもしれないけど、どこにいってもきっと美味しいものには出会えないわね。これは、私が母から受け継いだ料理なの。」

マッシュされた田芋は、しっかりとした硬めの和え食感だ。これに豚バラ、シイタケ、キクラゲ、カステラかまぼこ、グリンピースなどの具を混ぜ込んで作られる。出汁の旨味をタップリと含んだ芋の甘さとそれぞれの具の持ち味と香りが合わさり、懐かしいような味だ。沖縄独特のかまぼこの食感がクニュクニュと楽しい。卓がいかにも旨そうに食べるのが、よっくわかった。
■そーみんの豆腐よう和え

「これはね、豆腐ようを作る中でどうしても形が崩れちゃったりしたものをどうしようかと思って、ささっと素麺に和えてみたらすごく美味しかったから、出すことにしたのよ!」

あの超絶の豆腐ようをあえごろもにしたそーみんが旨くないはずがない!泡盛の香りがふわっと軽く鼻を突くのが、大人の味わいになっている。
「豆腐よう、もっと食べたいでしょ、おかわりもってらっしゃい」
と僕らは豆腐ようを2つたべさせていただいた。ラッキーである。
「さ、これがらふてーよ。」
■らふてー

でた!沖縄料理の代表的存在だ。僕はこれまでらふてーは醤油ベースで味付けするものだと思っていたが、なんと彩香さんのらふてーは、白みそがベースになっている。そのせいか、非常に上品な味わいなのだ。

長時間煮込まれているはずだが、肉の繊維感はしっかりとのこっている。じーまーみ(落花生)をすりつぶしたものが含まれているということで、そのコクがじんわりと味濃いものにしている。
ちなみに彩香さんによれば、「らふてぃー」という表記は間違いで、正しくは「らふてー」だそうだ。気をつけよう!
■じーまーみ豆腐

じーまーみ豆腐は、落花生で作るゴマ豆腐のようなものだと思うのだが、友人の志乃ちゃんから、どこかでレシピを教えてもらってきて欲しい、と頼まれていた。
「彩香さん、じーまーみ豆腐の造り方を教えて欲しいっていう友人がいるんですが、、、」
と僕が恐る恐る切り出したところ、
「あら、いいわよ教えてあげる!」
と、そのまま口述筆記で教えて教えて下さった!
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆①落花生は生のものを使う。殻から出して太陽の光で干し、薄皮をパリパリに乾燥させたら手で揉んで薄皮を取り除く。まだ皮が残るので、ぬるま湯に漬けて最後まで皮を取る。
②豆をふやかしたらミキサーにかける。この時ピーナッツ3カップに水は6カップ。そこに芋のでん粉を1カップ加える。吉野葛などを使うと沖縄の味がでないので注意。必ず芋のでん粉を使うこと。
③②を木綿の布などで漉す。そうしてできた呉汁を鍋に入れ、中火にかける。ここからずっと木べらで掻き混ぜ続ける。電話が鳴っても取らないこと!熱が廻ったら弱火。40分間練り続ける。
④へらで鍋底に「の」の字を書いた時に、鍋底が見えるくらいの固さになったら火から下ろす。バットに流し入れ、上面を綺麗に平らにしたら水を張る。不安な人はガーゼを敷いて、その上から水を張ること。これを冷蔵庫にいれて固めて、できあがり。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

彩香さんのじーまーみ豆腐は、これがまた奥ゆかしい味。芋のでん粉の舌触り、粒状感が少し残るのが、オバアの味という感じである。洗練と土着の狭間の味わいがした。
楽しく話をさせて頂きながら加賀谷をみると、いつの間にかビデオカメラを回している!一瞬、彩香さんのお気に触れないか気になったが、彼女もそれを分かった上で何も言わず微笑んで話をして下さっている。卓のblogを観ると、実はこの時に卓も「大丈夫かな」と思っていたそうだが、彩香さんは我々のような沖縄への闖入者を受け入れて下さったようである。
しかし!
「私はね、気に入らない人は絶対に店に入れたくないの。だから一度ご来店いただいて、嫌な人だと思ったら、次から予約はとらせないのよ。」
これは本当のことらしい。僕と加賀谷で目を見合わせてしまった。
「大丈夫、うちの父さん経由で予約とればね。」
「あら、あなた達ならいいわよぉ。また来なさい」
前にも軽く書いたが、卓のパパ様は、沖縄のテレビ局の重鎮だったキャリアを持つ。今の僕らには実感がわかないのだが、やはりテレビ黎明期から隆盛期にかけて、メディアとしてのテレビの力は絶大だったのだ。その時代、沖縄で包装される番組を作る仕掛け側にいたパパ様の人脈はとてつもないものであったことだろう。
「もうね、川端さんには何から何まで相談に乗ってもらったのよ、、、」
と彩香さんが言う。彩香さんとパパは、実にいい大人の関係を育んでこられたのが、傍目からも分かる。我々余人には入り込む余地のない信頼関係が、そこにあった。
彩香さんの店の看板に始まり、メニュー、お土産用の豆腐ようの箱書きなど、至る所にパパの字がある。パパは書家という訳ではないらしいが、全くの我流で独自のスタイルを創り出した人だ。

「そういえば新しいお品書きも書いてもらわなくちゃ」
と彩香さんのお願いを微笑みながら「うん、どういうのにしようか」と乗っているパパ様はムチャクチャに余裕のあるオトナであった。卓よ、いい親父を持ったなぁ。
「あ、やまけん、これがまた最高に旨いんだよ!」
■とぅんふぁん

運ばれてきたのは、混ぜご飯のようなものだ。てっきりじゅうしいかと思ったら違った。なんとこれに、カツオだしを張るのだった!

ダシを張り、蓋を再度閉めてしばらく蒸らす。彩香さんがお話をされているのでずっと待っていたら、
「あら、もういいわよ。食べて食べて!」
と言われる。待ってましたと開けると、豚肉の脂がきらきらと溶け出した出汁から佳いい香りがする。

さらさらと啜ると、しっかりとした味付けのご飯がまたカツオだしの旨味を吸い、旨い!
「うーん おかわり食べたーい」と言いそうになるのをこらえる。彩香さんがずっとハイテンションでお話しされていなければつい言ってしまったかもしれん、、、
■しーくーびー

タピオカを浮かべた、ニッキのような香りのする甘い汁が何から出来ているのかは訊き損じた。甘さをすったタピオカが優しくしたを潤かす。
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「おいヤマケンちゃん、ここのご飯はオレがおごってあげるけど、彩香さんの本は自分で買いなさい。本だけは、自分でお金を出して買わなければいけません。」
とパパが言う。そう、本とは、この山本彩香さんが新聞に連載をしていた沖縄料理の話をまとめた「てぃーあんだ」という本のことだ。
■「てぃ-あんだ」 山本彩香著 沖縄タイムス社刊

http://www.okinawatimes.co.jp/aji/
実に丁寧な作りの、いい本だ。上記リンク先である沖縄タイムス社のWebで内容をみることが出来るようになってはいるが、これは絶対に買い求めるべき本である。

この本には、本日ぼくが食べた料理の作り方ががほとんど載っている。それは彼女のポリシーからくるものだ。
「私はね、沖縄料理を後世に受け継いで欲しい。だから、テレビ取材なんかでもぜーんぶ作り方を教えるの。前、イラブーを食べにいきたいって連絡が来た時なんか、『あら家で作れるわよ、ぜひやってみなさい』って言っちゃったのよ。でもその方が沖縄のためでしょう?」
そんな彼女の本には、作り方や調味料については載っているが、「大さじ一杯」とかそういう記述はない。
「自分で味を見て、自分の味を作って欲しい」
という気持ちがそうさせているのだ。
で、この本にぜひサインを書いて欲しいと思ったのだが、
「そんなのハズカシイからダメよ、だめ。」
と、さっさと封筒に入れて手渡されてしまった。残念!考えてみれば、卓パパという書家の前で筆をもっていただこうとした僕に愚がある。人間修養が全く足りなかったことを恥じるばかりだ。

もちろん我々は最後の客で、スタッフの人たちも片づけをしながらパパと談笑をしている。彩香さんが集めた沖縄の伝統的な布、そして店内にある珍しい置物などを楽しみながらタクシーを待つ。
「ヤマケンちゃんまた食べにいらっしゃい!」
とお言葉をかけて頂き、感動しながら店を出る。
この日、僕は沖縄のいくつかの真実を味わうことが出来た。イラブー汁に驚倒し、山本彩香さんの創り上げた世界観のすごみを感じた。しかしそれらに共通して、とにかく温かな光を感じた。これのじんわりと輝く温かい光こそが沖縄の魂なのだろう。いいものを押し頂いてしまった。
卓パパ! 素晴らしいご馳走を本当にどうもありがとうございました。
満ち足りた気持ちで床につく。明日は、晴れていれば慶良間の海岸でBBQパーティーなのである。
最後に一言。この店については、連絡先などはここには記載しない。本当に食べることに真摯な人でないと、行ってはいけない気がするからだ。読者の方も運良くたどり着けた場合は、心を鎮めてしっかりと味わい、感想をきちんと伝えるといいと思う。
「カナ」で味わったイラブーに満ち足りた気分で一路南下する。来る前は、
「イラブーの後にキングタコスかA&Wに入って何か食おうな」
などと言っていたのだが、とんでもない話である。精神的に満ち足りた僕はもうしばらく食わなくてよい。
「じゃー これからいくグリーンカレーの店ってどうすんの?」
「いや、それは行こうよ。せっかく卓がリコメンドしてくれたんだ。」
今回の旅程表(こちらを参照)に、一つだけ「ん?」と思うものがあったのだ。それが「くるくまのグリーンカレー」。卓によれば超絶品らしい。初日のコースに入れはしたのだが、「流れでやっぱ、沖縄チックな味を楽しんでもらおうと思ってさ」ということではずれたのである。
ならば、これから行くコースにこのくるくまは近いので、是非行こうよということになったのである。
そしてこれから行くところとはどこかというと、斎場御嶽(せーふぁうたき)という世界遺産に指定されている、沖縄の伝統的な祭場だ。
僕は、神社仏閣を観光する趣味はあまりない。のだが、今回は加賀谷が強く推すのだ。
「やまけん、ここは絶対にキテル。パワースポットだ。行こう。」
そこまでいうなら、たまには景色を楽しむのもいいな、と行くことにした。でも、景色を楽しむなんてものではなかったのだ。
■斎場御嶽(せーふぁうたき)
http://www.churashima.net/shima/okinawa/isan/20010301/05.html
せーふぁうたきは、琉球時代に女性のシャーマンが修行を積んだ場らしい。本来は男性禁制とのことで、恐縮しながら登っていく。そう、山行なのである。最初の、舗装された観光路から石畳に入っていく斜面で、ズシンと重い足応えがある。いきなり負荷がかかり、息が荒くなる。軽いめまいを覚えながら登っていくとその感覚がだんだんと身体中に平均化され、山のモードに調整される。
山自体は小さいもので、すぐにいくつかあるスポットに到着する。どういうところかというのはリンク先を見て頂ければわかるので詳説しない。他にも老若男女の観光客が来ており、写真をぱちぱちと撮っている。ちなみに僕はこうした霊的な場では写真は撮らない。ここはずいぶんと手の先にピリピリと来る場所なのだ。
「ここがすげーんだよ」
と加賀谷が言う、岩と岩がずれて半三角形に洞穴ができた三庫裏(さんぐーい)という場所の先にある、久高遙拝所(くだかようはいじょ)というスペースに立つ。石の上に立つと、数キロ先に浮かぶ久高島が眼前に見えるようになっている。
「シャーマンはここで島をみながらコンセントレートしたらしいゾ。」
なるほどすごい場所だった。こればかりは文章では伝わらないから何も書かないが、強力な磁場だった。しかし、言葉にしにくいのだが、石場に立ちながら、このうたきにはまだ公開されていない場所があって、そこが本当に重要な意味を持つ場所なのではないかという気がした。
加賀谷と無言で山を下りる。圧倒された後は言葉が出にくいものだ。と、駐車場まであと30メートルという地点で、いきなりピンポン球大の雨粒が叩きつけてきた!
「うおっいきなりきたなぁ!」
加賀谷もびっくりして車に走る。雨は降り始めからわずか5秒で、凄まじいスコールとなった。この車からの写真をみればその凄絶さがおわかりだろう。

山の上にまだ居た人たちがちゃんと雨宿りを出来ているか気になる。しかしこれぞ沖縄である。
こんなコト言う必要もないのだが、僕は極性の晴れ男である。イベントの時に晴れる率が高くなるというのはもちろん、台風には強くて、過去数回進路を変えたことがある(笑)ただし、条件があって、デートとかそういう場合に強いのである。今回だって、上陸が一日ずれていたら台風で欠航になっていた可能性が大きいのだ。
しかしこのスコールについては、どうも せーふぁうたき の場所的な諸力が関係しているようでびびった。というか、そういう解釈をしておこうと思った。
神妙な気持ちになりながら、五分ほどで雨あしが弱くなるのを待って発車。
「じゃ、行くか、グリーンカレー。」
沖縄の南部の海岸沿いの幹線から一気に山の方面に登る道に入り、ひたすら登って開けたところにカフェ「くるくま」はこちらという看板がある。そこを曲がってしばらくいくと、綺麗なリゾート風の建物があった。
■カフェ くるくま
沖縄県島尻郡知念村1190
098・949・1189
http://www.nakazen.co.jp/cafe/cafe.html

ん?ここかよ、、、
なんだか観光客向けっぽい感じがする綺麗な建物だ。本当に旨いのかぁ?と思ったが、卓を信じることにした。

店内も綺麗で、第一、シービューである。珊瑚礁に守られた湾が一望できる。と、海を観ているとまたスコールが始まった。

くるくまは、地元の健康食品関連の企業が経営しているカフェレストランらしい。なんとタイのシェフを招聘し、厨房を仕切ってもらっているので、アジアンテイストのレストランが出来ているらしい。メニューはカレー中心だが、タイ料理ももちろん多い。ここのウリはハーブ類が自家製であることらしい。本州ではあまりつくれないタイ特有のハーブも作られているようだった。

加賀谷は、ここのスペシャルカレーである台風カレー。
「そだね、じゃあ僕はグリーンカレーと、くるくまチャーハン」
と2皿を頼むと、きっちりとした身なりのウェイター君が眉間にしわを寄せながら、
「あの、かなりご飯の盛りがよいので、お一人様一つで十分かと思いますが」
そんなことをこの僕に言うなんて!なんたる愚問!と思い、「全然大丈夫だから持ってきてよ」とお願いする。大体、こんな小綺麗なカフェで出てくるカレー2皿食べられなくてどうするよ、と小馬鹿にしたような笑いをして待ち受けたのだ。
そして、驚愕の瞬間が来た。
■台風カレー

■グリーンカレー

■くるくまチャーハン

で、でけぇ!
どれも超大盛りである。写真に、比較対象物を乗せていないのが悔やまれるが、これはスゴイ量だ。ウェイター君の判断は半ば正しかった。心なしか、彼の目が「ホラ、言ったとおりだろ! ああいった手前、残すなよな!」といっているかの様である。
「お、いい盛りだねぇ。じゃ、いただきまーす」
と軽くいけるゼ感を演出しながら、内心は冷や汗ものだった。イラブー汁によりもたらされた平安な胃袋が、一気に最強食い倒れモードに突入する。
しかしここのカレー、実に絶品であった。
「うぉ、このカレー旨いよやまけん!」

加賀谷が呻く。やつの日本風カレーは確かに旨かった。そして僕が頼んだグリーンカレーだが、これが本当に素晴らしかった。

グリーンカレーは、出来合いのペーストで作ってしまうとどうしても今ひとつだ。やはり当日に石臼でハーブ類を潰して作ったフレッシュなペーストで作るカレーが最高だ。そしてこのくるくまのカレー、タイの鮮やかな色彩感溢れる香りと旨味に、日本ならではの柔らかなコクもプラスされているように感じた。
いや、旨い。チャーハンは、ハーブチキンを乗せたもので割と普通だが、これも旨い。けど、多い!うーんこれは死にそうに多い。

しかし僕は食い倒れ党の党首である。負けるわけにはいかない。
「オレは、米には強いんだよ」
とうそぶきながら、なんとか自分のグリーンカレーとチャーハンを平らげた。加賀谷は、自分の台風カレーのご飯を食いきれず、半分残している。いつもの僕ならその白飯もやっつけるのだが、今回は無理だ、、、
いやしかし
大盛りのイロモノで観てはいけない。このくるくまのカレー料理、実に素晴らしい内容であった。ここだけで夜飯を計画してもいいくらいである。
店の外に出ると、やはりスコールは上がっていた。車でしばらく海沿いの道を走り、市内に戻る。今夜はもう一つのクライマックスが待ち受けているのだ。それは、卓のパパさんが懇意にされている、琉球料理の伝承者、山本彩香さんの店に連れて行って頂くのだ。
そして、この夜は、信じられないほどに深い琉球料理の世界観を見せつけられることになったのである。明日、僕は渾身の力を込めてこれを書く。連休中だけどぜひ読んで頂きたい。
ようやく沖縄4日目である。かつてこれほどに濃密な食い倒れ旅行をしたことがないので、書く方も大変なのだが、どうか読者さんもついてきて頂きたい。何せこの4日目が大本番だったのだから。コメントにレスつける余裕もないのだがご理解頂きたい。
4日目の日中は、加賀谷と二人でフリータイムだ。卓とキッペイも、ほぼ僕にフルアテンドしてくれているので、そのままだと自分や家族とのの時間が持てないからだ。ただしこの夜は、卓の親父さんが懇意にしているという琉球澱伝統料理の店に連れて行って頂ける。
「ヤマケンがイラブーを食べたいっていうので、地元でも評判の店を予約しておいたよ。レンタカーで行っておいで!」
イラブーとは、猛毒を持つエラブウミヘビのことだ。古来、沖縄ではこのイラブーの燻製を珍重し、滋養強壮のために食べてきたという。ということなんだが、別に滋養強壮とかが目的じゃなくて、とにかく旨いらしい。以前、敬愛する東京農業大学の小泉武夫先生が、
「これこれ、このイラブー汁は、日本の宝ですよぉ!」
と叫びながら汁を飲み、滝のような汗をしたたらせていたのをみて、「いつか絶対に食うゾ」と決意していたのである。
卓がコーディネートしてくれたのは、「カナ」という店だ。
「すんごく小さな店で、わかりにくいところにあるみたいだから、レンタカーを借りてカーナビをセットするところまでは僕がやるから。」
と、卓は朝、親父さんとともにレンタカー屋まで同行してくれる。どこまでもいいヤツなのだ、卓は。沖縄での卓は、本州でみるビジネスバリバリ系の彼と全く違って、空気がゆったりとする。なんだよ、これが本来の卓なんじゃないか、と思いホッとするのであった。
「じゃ、いくよ~ん」
加賀谷が運転する車で県庁前の「パレットタウンくもじ」を出て、一路北へ。沖縄の幹線道路は今回の旅で大体巡ったので、理解できた。今日の道程も、2日目の名護へ通じる道だ。やはり沖縄は車社会で、旅にも車がないと十二分に楽しむことが出来なさそうだ。僕は諸般の事情で数年前に免許取消しになってしまったので、誰かと来なければいかんなぁ。
さて カーナビと格闘しながら、青い空の下、快適なドライブをしばし楽しむ。道が空いていたので、1時間しない内に目的地近辺に到着。しかし、幹線道路から一本入ったらただの田舎道で、どこに店があるのか全くわからない!勘で探したら、やっと小さな看板を見つけた。


「ふうぅ~ やっとついたね、、、」
しかし、車を停めた道からさらに奥に入っていくようだ。ほんとに店があるのかよぉ~と不安になる。

そういえば加賀谷はこの旅にDVカメラを借りてきて、僕が食い倒れる様を撮りまくっている。この写真でもカメラを構えている彼が居る。加賀谷は常々、「やまけん、食い倒れは動画に残すべきだ!」と言っているのだが、なかなかそうしない僕に業を煮やしたようである。

どんどんと道を歩いていくと、行き止まりになって民家があり、覗いてみると、店の玄関があった。
■カナ
沖縄県北中城村字屋宜原515・5
098・930・3792
月・日曜日休


玄関をあけると、予想通り民家のつくりで、居間と座敷にそのままテーブルを置いてあるという風情だ。お客さんが2組居たが、店の人は見えない。靴を脱いで上がると、厨房に親父さんがいらっしゃったので、「予約していたものです」と伝え、座敷に座らせてもらった。しかし、ちゃんとオーダーが通っているのかどうかが全くわからないのでまた厨房を覗くと、オバアがいた。
「あ、予約してきた方ね。うん、ごめんね、まだもう一人の店の人がきてないもんだから、忙しくてねぇ。イラブー汁定食でいいのね。待っててね」
というようなことを琉球の言葉で、そしてかなり沖縄時間で話してくれる。このオバアが実に力が抜けていていい感じだ。
さてそこからがまた長かった。コッコ食堂もそうだが、沖縄の飯屋では待つことが嫌いな人は楽しめないかも知れない。我々が入店した後も数組の客がきたのだが、皆不安になるらしく、おばあに色々確認しにいっている。その内に店の手伝いさんが到着。どうやらこの店では基本、おじい&おばあは料理に徹し、仲居さんが上げ膳下げ膳をやるということらしい。ちょっとホッとする。
このエントリを読んでカナに行こうという人は、ゆめゆめ焦らぬよう。沖縄時間を心に持って行動されたい。
なんてことを言いながら、僕は昨晩に抱いた疑問を消化できぬままでいた。その疑問とは、「アメリカからの流入による2次元的平面味空間ではない沖縄料理はどこへいっちゃったの?」ということだ。いや誤解しないでいただきたいのだが、この二次元空間は大好きである。A&Wなんか毎日通いたくなったし、キングタコス万歳だ。しかし、この沖縄には、それらが流入してくる遙か以前から存在していた伝統料理があるはずだ。それを、味わいたいと思っていた。このイラブーは完全な郷土食だから期待していいのだろうけど、どうなんだろう?
そんなことを考えながら、待ち時間、全く手持ち無沙汰で、外の景色を見たりしながらなんとなくやり過ごす。加賀谷もあまり話をせず、数日間の沖縄でのテンションを調整するような、静かな時間、、、
それが、一気に破られることになった!
「おまちどおさま!イラブー汁定食ね!」

おおおおおおお
これがイラブーかぁ! 写真でみるよりも映像でみるよりも、ショッキングな見た目である。スープは濃く濁った茶色で、見るからにゼラチン質豊富だ。昆布の巻いたヤツがドスドスと入っており、この写真では見えないがテビチ(豚足)も豪快なのが2塊入っている。そして上部に見える黒い棒状の物体がイラブーである。

特に、このイラブーの皮の見た目はちょっとグロいなぁと思ってしまいがち。お世辞にも食欲をそそるとはいえない外観だ。これは、イラブーを乾燥させ燻製にしているからなのだろうが、なんだかゴムホースみたいな見た目である。

「おおお、、、よっしゃ、食ってみるか、イラブー!」
まずはイラブーの肉をつまむ。加賀谷、DVカメラを構えた。緊張の一瞬!

びっくりした。想像できないほどに柔らかい!
皮目の部分はトロリと溶け、中からホックリとした茶色の身がでてくる。この身のホコホコ感を感じながら噛みしめると、実に豊かな味わいのダシが、肉ジュースが、口の中に拡がった!
これは 旨い! これだ! これに出会いたかったんだ!

スープを啜る。 加賀谷と顔を見合わせる。
「おおぉっ、、、 なんだよこのスープ!」
正直、こんな奥深い、旨味の強いスープを飲んだことがない。昆布やカツオ出汁も入っているだろうが、圧倒的な味わいを出しているのはイラブーから滲み出るエキスである。その旨味はこれまでに味わったことがないものなので、何とも表現できない。僕は初めて自分のボキャブラリーを恥じようとしている。

しかし本当に、このイラブーの肉ほど、見た目と食味のギャップがあるものはないだろう。ほとんどの人が、この黒い鱗片が見える肌を見るだけで、ゴムホースのような食感を想像するはずだ。しかし、事実は全く正反対で、柔らかく香ばしく、まさしく肉である。滋味がこんこんと湧き出る泉である。
以降、ほとんど加賀谷とも会話をせず、とにかく汁を啜り、オカズを食べる。

てびち(豚足)が多量に入っているので、二人とも口に含み、骨をとってコツコツと皿に空けていく。この豚足にイラブーの汁が染みこみ、とろけるような絶妙な味になっている。

ち