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2004年10月18日

野菜が高いとお嘆きの皆様

 しばらく前のエントリで予告したとおり、野菜が高騰している。台風が連続して襲来していることで、畑で成育中の野菜類が壊滅的に被害を受けているのだ。これまで、沖縄・九州を集中的に襲ってきた台風が、だんだんと北上し関東・東北まで巻き込むような形になってきているのが恐ろしいところだ。現在、そうした台風をすりぬけた産地のみが出荷対応可能になっている状況で、品薄になっているのである。

 ただし、これは「異常な」状態であるとは言い難い。たまたま今回の原因は台風だった。皆、「いずれは元通りになる」と思っているかも知れないが、果たしてそうだろうか?

 異常気象による台風頻発が、今後是正される見込みがあるだろうか?全世界的な気温上昇や二酸化炭素排出量の増加には歯止めがかかっていない。ヒートアイランド現象は頂点を極めた感がある。来年度、天候条件が好転すると予測するに足る条件はどこにもないような気がするのだ。

 それに、中央大学の授業でも学生達がショックを受けていたように、ここ6~7年くらいで急速に農業者の数は減っていく。ほとんどが65歳以上の人たちが担っているからだ。今年のこの台風過でやる気をなくした農業者の離農がまた、進むだろう。

 店頭に並ぶ野菜で少しでも値頃感のあるものが並ぶとしたら、その原産国の表示を観てみよう(もし表示されていないのであれば、それは表示法違反だ)。ほぼ輸入品であることは間違いない。農薬問題で一時市場から消えていた中国産野菜だが、実は今、輸入業者さんの元にどこの小売業からもオファーが相次いでいる。今までは絶対に輸入は扱わないと言明していたところでさえも、だそうである。これは先日、当の業者さんから直接聞いた話だ。

 この局面で学ぶべきことは色々あるのだが、重要なのは下記だろう。

①毎朝 陽が昇るように、明日も自分が食べる食料があるはず、と思うのは間違いである。

②人間活動は天候に大きく影響を与えている。またこの影響はグローバルなものであり、全世界的に被害を被るものである。

③食料の生産者は人類の宝である。

「野菜、高いなぁ~」

と顔を背けず、高くなった現状をきっちりと観て、自分が何を食べたいのか、どのような食生活を望んでいるのかを考え直すいい機会ではないだろうか。

そもそも、ここ数年の青果物の小売価格が安すぎるのである。案外、今店頭に並んでいる青果物価格が、実効的な価格なのかも知れない。食うや食わずの人には厳しい話だが、この国の大半は食費よりも違うところに出費を割いている、つまり余裕はあるはずだ。明日の食料を確保するためには、消費者が生産者をサポートすることが必要なのだ。

「輸入でまかなえばいいじゃない」

というのも意見だろうが、輸入は、向こうにものがあって、かつこちらに買う原資がないと成立しない。グローバルな天候不順で輸出国が食糧危機になったら、日本はどこから仕入れればいいんだろうか。中国はもう輸入国に転じ始めているというのに、、、先の輸入業者さんも苦笑いをしながら、

「そのうち中国も、日本になんか輸出する余裕が無くなっていくと思うよ」

と仰っていた。

この時期、日本人は試されているのかもしれない。明日は食額塾というイベントだ。いいタイミングでこういうテーマに直面したな、ということを思いながら、スーパーの店頭を観ていたのであった。

Posted by yamaken at 2004年10月18日 16:58 | TrackBack
Comments

>中国はもう輸入国に転じ始めているというのに

知らないと言うのは罪なのだろう。

「湯水のように使う」
この言葉だって今では「湯水のように大切に使う」の意味に転じていると思う。

あまりにもあまりにも僕たちは知らなすぎる。

Posted by: MAX at 2004年10月18日 20:22

 実はワインの世界でも…温暖化の影響が徐々に深刻化しています。要は葡萄の栽培適地が変遷してしまう虞があるのです。
 実際、フランスとかでも、どんどん暖地のものとされた品種の栽培北限が上がっている状況だそうです。 結果、フランスのワイン制度が大きく変遷してしまう可能性も否めないとのこと。

 消費者と生産者の共栄関係。必要です。特に都市農業・都市近郊農業ではすぐにでも必要です。これはぬのくまがずっと訴え続けてたことです。
 ただ、単純に援農できるかといえば、これもまた難しい。野菜がすぐに手に入る仕事は人気があっても、椎茸のコマ打ち作業には人気がないというような状況もあったりします。

 一番のネックであり、もしかしたら一番原動力になりうるのが、流通に介在する人々なのでしょうけど… どうも考えがまとまりません。己の無力さと衰えを感じます。

Posted by: ぬのくま at 2004年10月19日 00:51

ぬのくま君:
 ブドウは日本でもすでに産地が移行しつつあると言われているよ。山梨とかが高温になってきているので、山形の方が作り易いということなんだよね。
 しかしお前、俺より若くしてなにが「衰え」だ!メシ食う量が足りないぞ。あ、そうだ、いただいた醤油、旨いです。毎日使ってます。ありがとうね。

MAXさん:
 そうですね、まず知るところからなんですよね。って、俺も知らないことばかりナンですけどね。

Posted by: やまけん at 2004年10月19日 08:26

こうしたことは、戦後政治が先進国化=高次産業化という共同幻想のなかで流れて来たことの帰結でもあると思えますね。だって、第一次産業専攻の高校(水産、農、工など)って、ぶっちゃけ学校の勉強苦手な人が行くっていうイメージがあるでしょう(これは偏差値世代の私だけなのかしら?)。本当はそうであってはいけないのにずーっとそうしてきた行政の責任も重いと思いますね。それが故(それだけではないけど)の第1次産業従事者の減少、高齢化、空洞化、食料自給率の長期低迷だと思えますもん。今日、行けないのは残念でありますが、良き「貧者の一灯」であることを期待しています。

Posted by: らっぱー at 2004年10月19日 09:26

近所のスーパーのもやし1袋の値段
1年前:10円(税抜き)。4月:15円(税込み)。8月:18円。10月:19円。

インフレが進んでますよねぇ。中国の食料品価格は、前年比14%の上昇です。
中国砂漠化の影響もあるのでは?と思ってます。

追記:「インカのめざめ」を買いました。梅村芳樹という人物が指導していた農場から購入。
ユニークな味でしたが、幼児期から舌になじんだ味と違うのが、ちょっと・・・
個人的に印象に残っているジャガイモは、ニュージーランド・クライストチャーチの大学構内にあった屋台の、ふかしジャガイモ。

Posted by: 平手 緑 at 2004年10月19日 10:29

ぬのくまさん>>
「野菜がすぐに手に入る仕事は人気があっても、椎茸のコマ打ち作業には人気がない」という援農の状況にはなるほどと思いました。農業者の方々と僕たち消費の側の人間が(顔の見える)コミュニケーションをとることが必要視されていますが、ことはそんなに単純ではないんですね。

単純でないといえば、日本の食料自給力の問題。農業問題のみで片付けられませんよね。都市近郊農業の大切さはわかりつつも、歴史的に形成されてきた産地依存型の日本の食料産業事情を無視することは出来ないし、食の地方分権のためには政治・経済・社会的な地方分権が必要(やまけんさんのセッションより)ですよね。さらに、食料問題の根本には忙しい→簡易な食料の需要→外食・中食(お惣菜や冷凍食品など)などの食品産業への依存が強まる、ということが潜んでいるように思います。食品産業の側はどうしても安定的かつコストを抑えて生産供給を行わなければならない面が大きいから、輸入野菜への依存が強まる。長期的な不安よりも、短期的な利益のほうがどうしても優先されてしまいますよね。結局、社会の中での「生き方」自体を含めて食を考えないとならん、ということなのでしょうか。

個人的には「生き方」と食を結び付けているつもりです。その環を少しでも広めていきたいものです。気持ちはラディカル、アクションはフィージブル。具体的アクション模索中。。。

さて、今日の「銀座食学塾」での発見を楽しみにしています。

Posted by: しまかわゆうた at 2004年10月19日 12:26

ふう~む。
仰る通りですね。自分の身近な問題です。
改めて認識させられました。

Posted by: みの at 2004年10月19日 14:37