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2004年02月29日

「安全な食べ物は安くはなりません」続編。

 先回、表題の件について思いのたけを兄弟blogである「俺と畑とインターネット」に書いたところ、オンライン・オフライン・メールその他で意外な共感の声をいただいた。あれからしばらくたって、いま、鳥インフルエンザなどの新たな脅威が出現しまくっている。食の危機は加速中である。
 ので、ちょっと書いてみました。食い倒れモードとは全然違うので、お好みの方だけどうぞ。

俺と畑とインターネット
「食べるものがなくなる日がくる」

Posted by yamaken at 22:50 | Comments (0) | TrackBack

2004年02月27日

いやぁ いい夜だった! & なんばん最終本数

 本日、前の会社の上司と飲みに寿司 匠に行った。引き戸を開けると、カウンター手前には、助っ人板前の清ちゃんが客として食べに来ていて、奥の座敷には先日紹介した雑誌「やさい畑」の編集部の皆様が居て、そして、、、カウンターの端に、若夫婦らしきお二人が。人なつっこい感じの男性の方が、僕をみてニコニコしている。もしや、、、と思っていたら、板前の加藤ちゃんが言う。

「やまけんさんのWebをみている方ですよ!」

「初めまして、マツザワです。」

いやぁ、 本当に嬉しかった!
最近、ぼくのこのblogを読んでくださっている方とオフラインで会うことがあるのだ。先日も、人形町にて、僕の友人リンクにつけてあるReitaroさんとKeitaさんと食って飲んだ。そして本日はマツザワさんである。

「いやぁ 実は昨年の秋頃から欠かさずみてます」

もう、一瞬にして盛り上がってしまった。
彼は、なんと中高生の教育者であった。 食についてもぜひ生徒に教えていきたいという。及ばずながら力にならせて頂きたいと思う。奥さんもきっちりと自分の定見を持った方で、久々に「いい夫婦」に会った。

その後はバー「オーパ」にてマティーニをいただく。ずっと話していたのだが、やはり食べ物を大切にする心を持っていること、グルメとか粗食とかの一義的世界観のみではなく、もっと違う観点から食べることを実感するということが21世紀のキーになるという点で、強く意気投合したのであった。

こういうことがあるから人生は面白い。
ますますオフ会が楽しみになった。みんな、食倒れを覚悟して欲しい。

そうそう、なんばんの粕漬け、とうとう60本の大台に乗りました

Posted by yamaken at 23:28 | Comments (2) | TrackBack

東京・森下の石釜ピッツァ 「ベッラナポリ」なんだが、、、うーむ

 都営新宿線もしくは大江戸線の森下駅の交差点を南に100Mほど歩いた商店街「のらくロード」のならびにある石釜ピッツァの有名店だ。いろんな料理雑誌に掲載されているので説明も要らないだろう。ピッツァ職人が目の前で焼いてくれる、非常に臨場感溢れる店だ。
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 ここにくるのは3回目なのだが、、、過去2回しか食べていないが、実を言うと僕はこの店のピッツァを食べて 「 あ~ 満足した! 」 と思ったことがない。 生地は薄手ながらモッチリとしており上質で、具もあっさり目のものが多い。チーズも油もいい物を使っている。けど、なんだろうか、味覚中枢に訴えかけてくるものが感じられなかったのである。

 で、そういいながら素晴らしき人生の先輩と仲間に誘われ、会食の夕べを持つ。初顔合わせになった方はなんと、名古屋であんかけスパ(過去ログをご参考のこと)のチェーン店を展開する方であった。本来この日のトピックになるはずだったテーマはどこかに吹っ飛び、あんかけスパについての熱き議論がたたかわされたのであった。

 そうしながらピッツァを食べる。
pizza.jpg

マルゲリータのピッツァ
ポルチーニのピッツァ
サルシッチャのピッツァ
カプリチョーザ
クアトロ・フォルマッジョのピッツァ
、、、

「やまけん、もう喰えないよ!」

と言われたのでその辺で辞めておいたが、前回までの感想と変わらず、だ。美味しくないとはいわないが、とりとめのないスナックのような感覚。この後に牛丼を食べたくなってしまう。
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 この店ではピッツァだけではなく、立派なメインの皿もある。牡蠣のフリットと、トリッパと豆の煮込みポレンタ添えを食べた。どっちかというと、これら料理の皿の方で満足する感じか。
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ただ、大きくない店だから回転を上げたいと言うのは理解できるのだが、少し皿の間が空いただけでウェイター(カメリエーレといったほうがいいかな)が

「何か他にお頼みになりますか?」

とくるのはいただけない。これ見よがしに、空いた皿やグラスを持っていってしまうのも気に入らない。正直、サーブのレベルは低いと感じる。

うーむ
あまりこのblogでマイナスなことを書くことは少ないのだが、なんだか書いてしまった。
(いつもは、美味しいと思った店だけを書いているんですけどね)
でもなんだか釈然としないのだ。それとも単にピッツァに求めるものが違うというだけなんだろうか?

Posted by yamaken at 00:54 | Comments (4) | TrackBack

2004年02月26日

山形「なんばんの粕漬け」明日で締め切りますよぉ

 なんばん粕漬けの共同購入、なんと今のところ、40本オーバーです。
皆さんコメントやメールで「そんなに辛いなら」というので、本当に誰が食べても辛いと思える水準だろうか、と毎日食べているのですが、

やっぱり辛い!

ので、ご安心ください。きっとお気にいると思います。もしイメージと違ってても勘弁してネ!

 明日の夜〆切らせていただき、週末に「まあどんな会」の佐藤さんに連絡します。
やまけんの超繁忙期がまだ続きますので、その間じっくり冷暗所に寝かせておき(笑)、

①しかるべき時期に食倒れオフ会を開催し手渡し
②オフ会とは別に日程調整して手渡し

のどちらかでお渡ししたいと思います。オフ会は人数次第では分割開催(笑)します。
では よろしくです!

Posted by yamaken at 20:59 | Comments (3) | TrackBack

トレーサビリティにご関心の方は

「俺と畑とインターネット」の方で詳細告知をしますが、今年度の農林水産省トレーサビリティシステム実証実験事業の報告会が開催されます。参加費無料で、だれでも申し込める(ただし予約制)ようなので、ご関心の方は是非ご覧下さい。

http://www.yamaken.org/mt/oreto/

 珍しく仕事モードの僕を観ることが出来ると思います。

Posted by yamaken at 14:01 | Comments (0) | TrackBack

有楽町ロメスパ「ジャポネ」のヘルシー激辛には気をつけろ!

 ジャポネで、「ヘルシーの激辛、横綱」という、極めて健康を損ねそうな一品を食べてきた。事の発端は僕のジャポネの過去ログを観て欲しいのだが、ナポをたべる僕の横に座った人が

「ヘルシーの大盛り、激辛!」というわけのわからないオーダーをとっていたのだ!むちゃくちゃ おもろいなぁ 何がヘルシーなんだろうと言う感じだ。

そうしたらなんと!そのご本人様からコメントをいただいてしまったのである

はじめまして。

ジャポネで検索して飛んできました。
文中に出てきた“ヘルシー激辛、大盛り!”の
注文をしたのは私です。となりで横綱の画像を
とっていらっしゃったので覚えています。

ヘルシースパ激辛は是非試してみて下さい。
鷹の爪が6~8本入っていましてそれも焼かれているので食べられます。
鷹の爪は思ったほどは辛くありませんが汗だくは必至です。(^ ^;
食べた後に胃が温かくなるのも冬場はありがたいです。

Posted by: COZY at 2004年02月13日 19:26

な、なるほどぉ~~~~~

COZYさんどうもありがとう!ということで頼んできました!!
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相変わらず厨房ではバカデカのフライパンでぶっとい麺が炒められまくっている。
若干緊張しながら

「ヘルシー激辛、横綱!」

とオーダー。 うーむ やばい傾向だ。 席に座るまでは「ジャンボ(大盛り)」で済ませようと思うのに、いざ注文をしようと口を開くと、一段階上の階級を口にしてしまうのである!
注:この店で横綱とは、大盛りの1.5倍である。

さて運ばれてきたのがこいつだ。
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このおびただしい鷹の爪攻撃を見よ!
しかもこの鷹の爪たち、まっ黒になるまで炒められている。そのせいかカリっと揚がっており、食べやすい。コゲ香はもちろんするが、美味しく食べられるぞ。そして、、、

やっぱ辛い!

辛いし、炒め油のマーガリンがギトギトだし塩味強いし、全然ヘルシーではないぞ!

でも旨い!
野沢菜の漬物が入っているのが実に好いな。大盛りのカイワレもナイスポイント。しばし黙々と啜りこむ。

しかし、、、塩味で横綱だと、やっぱり終盤戦は味が単調になってしまう。横綱だからいいが、この上の階級である「親方」やそのまた上の「理事長」クラスになると、この味では飽きてしまうと思った。

しかし、貴重な情報であった。COZYさん今度私を見かけたらぜひお声をかけてください!ひきつづきジャポネファンでありつづけるやまけんより、、、

Posted by yamaken at 00:39 | Comments (9) | TrackBack

魚が旨い! ビバ和歌山の活魚料理 「たか屋」

jpg 和歌山は山海の幸すべてが旨いのだが、やはり魚とくに白身の魚は絶品の旨さである。味が全体的に上品でほの甘く、風味が濃い。香を楽しめる魚なんてそうないだろう。その代表格として思うのは実は太刀魚だ。僕のお袋は愛媛出身なので、よく埼玉の実家では太刀魚の塩焼きが食卓に上がったが、実は関東では最近まではマイナーな魚であった。だから、太刀魚を刺身で食べるなんていうと、びっくりされていたものだ。しかし関西では、太刀魚の刺身なんてけっこう当たり前。だって旨いもんね!

 その心の味に久しぶりに会えたのであった。和歌山にきて魚が食べたければぜひここに足を運んで欲しい。

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■活魚料理「たか屋」
和歌山市東長町5-75
073-433-6388
※和歌山県庁のそばです
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 ここは漁船から直接仕入れているような店で、店主のたかやさんがお若いのに非常に研究熱心で、むちゃくちゃ質の良い魚介を食べさせる店だ。実は僕の和歌山案内人であるT氏の高校での同級生でもあるらしい。
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 まず何は無くとも刺身だ。
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この中にくだんの太刀魚の刺身があるのだ。どうだこの美しさ!↓
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 薄ピンクの柔らかな身は、繊細に迅速に包丁で引かないと、崩れてしまう。これを角を立てて引き、銀色の皮であしらいをつける。実に芸術的ではないか! これを若干甘めの仕事をした醤油に浸しいただく。限りなく甘くトロリととろけるのが、太刀魚の身上だ。素晴らしい。この太刀魚の刺身で丼をつくってくれないだろうか、、、

太刀魚だけではない、イカも旨かった。北海道のウニとイカのお造りは、独り占めしたいのが叶わぬのがまたよいのであった。
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さてこの店、一品料理も非常に気が利いている。たか屋の品書きも、あの煌く(きらめく)品書きである。つまりどれも旨そうなのだ。
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一品料理で際立って面白かったのが「お好み揚げ」。どういうもんかと思ってたら、本当にお好み焼き風の天ぷら料理だった!
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海老などをフンワリカリっと揚げたものにソースとマヨネーズ、青海苔で食べるのだが、これがサクサクと楽しい食感にマヨソースがからまり、旨いのだ。こういう遊び心は、好い。

いろいろ食いながら、やはり冬ということで鍋が出てくるのである。はじめて行った時にはフグ鍋、二回目には真鱈の白子、真たこ、穴子のしゃぶしゃぶ であった。もう死んでもいいというラインナップである。
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この豪華狂乱鍋のあとにウドンをぶちこんでもいいのだが、、、実はこの店の最大の旨い飯がある。それは、、、季節の魚を土鍋で炊き込んだ魚飯だ。これが絶品なのである。
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若干柔らかくなりすぎのきらいがあるのだが、もう本当に滋味あふれる一品だ。
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どのくらい旨いかというと、土鍋にこびりついたご飯粒を一粒たりとも残さないようにむしゃぶる俺が居るほどに旨いのである!
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これでも足りないと言うと、なんと真鱈の白子寿司を作ってくれた!この冬何度目かわからないが、この壮観な軍艦たちを見よ!
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ちなみにこの店では時々忙しいときに手伝いに現れるママ(たかやさんの実母)の存在もまた嬉しい。飲みだすともうブレーキが利かない最高なおかあちゃんなのである。
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ああ、魚が旨い。残念ながらこの店でまだ会計を持たせていただいたことが無いので、いったいご予算いくらかはわからん!のだけど、ぜひ県外の方で和歌山の魚を堪能したい方は、電話を入れて足を運んで欲しい。土鍋ご飯はぜったいにリクエストするように、、、

Posted by yamaken at 00:02 | Comments (3) | TrackBack

2004年02月23日

川崎は実はペルーだった!? インカの至宝「インティライミ」再訪

jpg いや、怒涛の夜であった。JASの最終便で帯広に行くはずだったのだ。しかし空港で1時間待たされた後、大雪のため欠航ということになってしまったのである。JA幕別の岡坂さんが夜、飲みに連れて行ってくださるはずだったのに、、、もしかするとこれがいったん最後の帯広の夜になるかもしれなかったのに、、、

 と、憤懣やるかたなく居たため、憂さを晴らそうと思ったわけである。羽田周辺の旨い店、、、うーん と思って気づいたのが、前も取り上げた川崎のペルー料理「インティライミ」である。実はこの店の記事を書いた後、ウェイターの東君から、記事に対する御礼のメールをいただいたのだ。

 彼がリニューアルしたインティライミのWebを見て頂きたい。
http://www.intiraimi-rest.com/
「インティ料理の感想へのリンク!」というところに僕の記事へのリンクがあるのダ!光栄である。

 さてそういうことで悪仲間を集めて川崎を襲撃したのであった。悪仲間とは、大学の同期でプランナーの加賀谷と、彼の友人のバシ師匠、そして、この食い倒れ日記の僕の似顔絵を書いてくれているプロのデジタル漫画家、金子重人である。
 そう、金子は週刊少年ジャンプのネット版でデジタル漫画を連載している。ぜひ見て頂きたい。こんなやつが書いているのである。
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 ちなみに彼は幼少の頃、アルゼンチンに住んでいたことがあるのだった。

 さて騒がしく料理を頼むことにする。ペルー料理でまず欠かせないもの、それはセビッチェとアンティクーチョだ!

■セビッチェ(魚貝のマリネ)
 今回はセビッチェと、ムール貝のマリネも加えた豪華版を頼んだ。激ウマである。インカ独特のとうもろこしのボイルがついてくるのだが、これがまた旨いのだ。
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■アンティクーチョ(牛ハツの串焼き)
 そしてこのアンティクーチョを食べるために、この店に来ていると言って過言ではない。独特のスパイスで刺激的な味にしあげた串焼きは、実にジューシー&スパイシー。
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これにアヒという唐辛子ベースのソースと、パセリとニンニクのソースを乗せて食べるのがまた最高なのだ。
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■パパ ア ラ ウアンカイナ(じゃがいものチーズソースかけ)
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 じゃがいもを茹でたのにチーズソースをかけた一品で、これもお袋の味系の料理である。これしみじみ旨いのだ。ジャガイモは男爵系ではなくメークインである。ちなみにペルーというかアンデスはジャガイモやトマトなどの「ナス科植物」の原産地である。きっと現地では多種多様なじゃがいもでこの料理を作るのだろうな。
 とはいえこの日本のメークで食べるウアンカイーナも実にしみじみとした旨さを湛えている。

 ビールはクリスタルという銘柄が旨い。高地のビールだからか、味わいは軽く、どんどんいけてしまう。
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 さてワイワイと騒いでいると、ママさんらしき人が「美味しいですか?」と話し掛けてきてくれる。前回はみかけなかったこのママさん、貫禄もたいしたものだがエキゾチックに美しい方だ。
「セビッチェが大好きなんですよぉ!」
というと、「よく知ってるわねぇ」とびっくりして喜んでくれた。
そして、メニューには名前だけ載っている料理を「あたしからのサービス」と、持ってきてくださったのだ!
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 ママさんとはすっかり仲良くなってしまった。実は彼女は日本人。幼少の頃をペルーで過ごしたらしいのだが、きっとすごいストーリーがありそうだ。こんどゆっくり聴いてみよう。
 ママさんのお薦めディッシュはこれ↓光量が足りなくて良くわからないと思うが、要するにビーフカツの横に、バジリコスパゲッティが添えられているという、ものすごい一皿だ。これがペルーでは大人気の料理だと言う。しかしこのカツとバジリコスパが旨いのなんの!スパはかなーり茹ですぎの麺だが、これに真緑色のペーストが絡まっている。イタリアンでは絶対にありえない味だが、むちゃくちゃに親しみやすい味なのである。ペルー料理は、本当に日本人の口に合う。
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■アロス・コンポージョ
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本日一番楽しみにしてきたのは、このアロス・コンポージョだ。言ってみれば鶏肉炊き込みご飯だが、この店を紹介してくれた友人の食いしん坊・柴田さんが絶賛する一品である。
ご覧の通り色が緑色なのは、このペルー料理最大の特色とも言える素材のためである。

「これはね、香菜(コリアンダー)のペーストを使ってるのよ。普通は瓶詰めになってるのを使うところが多いんだけど、うちではいつもフレッシュの香菜をミキサーにかけて、毎回新しいのを作っているの。これを沢山入れないと美味しくならないから、高くついてもそうしてるのよ!」

 なんと素晴らしいではないか。このコリアンダーペースト、南米食材点にいけば入手可能で、僕も買い求めたことがある。しかし、すぐにカビが生えてしまうので扱いが難しい。しかしここではフレッシュを使っているという。うーむ レシピを教えて欲しいものだ。
 コテコテにコリアンダーの緑がまぶされたライスを口に運ぶ。瞬間、鶏の旨味とコリアンダーの風味が口に溢れる。まさしく美味である!香菜が苦手な人は厳しいかも知れないが、好きな人には最高だ。頼まない手はないだろう。先の友人柴田氏によれば、

「セビッチェの汁やウアンカイーナのチーズソースを絡めて食べるとまた最高!」

とのことであった。今回、その二品を先に食べてしまっていたので、試すことが出来なくて残念。どうもペルー料理も、各種ソースやペーストを絡ませて食べると、旨さ倍増する感じである。

■アヒーデガジーナ(ペルー風チキンカレー)
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 この料理、日本向けにカレーと書かれてはいるものの、パプリカなどで赤色がついているらしくほぼ辛みがない。カレーというより鶏シチューご飯添えという体である。ペルー料理は実はこういう落ち着いた味の料理が多く、だからこそ日本人にも親しみやすい。今回はこの前にアロス・コンポージョという曲者を食べてしまったため、味的にはちょっと物足りなくなってしまったのだが、あまり風味の効いたエスニックが好きで無いという人にはお勧めできる。

■名前忘れた、炒め物
 ここまで4人でガンガン食べているのだが、実はこの店、一皿の盛りが非常に多い。通常なら、セビッチェなどの前菜をとったら、あとはご飯付きの料理を一皿取るだけで2人で満足してしまうような分量なのだ。だから、総体的に非常にコストパフォーマンスが高い店なのである。しかし、このヤマケン一行がそれで終わるはずがない。すでにバクバク食べている僕らにウェイターの東君は「大丈夫ですか?」と訊く。そんなこと訊かれたら僕としては「まだまだ行けるよ」といわざるを得ない。そこで彼がリコメンドしてきたのがこの料理だ。名前は長すぎて忘れた。とにかく牛ヒレ肉の細切りとタマネギ、トマト、フライドポテトなどを、酸味のきいたソースと共に炒めたものをご飯にかけた料理だ。
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 これが存外に旨かった。フライドポテトが炒め物に入っているなんてちょっとびっくりだが、向こうでは割と当たり前らしい。ミックスベジタブルがピラフに入っているとつい手抜きか?と思ってしまうのと同じ感覚だが、ここのポテトはカリカリに揚げたてのものが使われており、ソースが絡んでもカリカリが抜けず、非常に食感が楽しい。その食感とマイルドな牛ヒレの旨さ、そしてソースの酸味が食をソソるのである。

■デザート群
 いや さすがに腹一杯である。もう食えん。でもまだデザートが残っているのだ。この店でお薦めのデザートは、カボチャの粉を使ったドーナツといわれていたのだが、前回は売り切れだった。今回頼むと、すかさずママの解説が入った。

「うちのドーナツはね、手間がかかってるのよ、、、カボチャとお芋を干して、それを粉にするの。そこに、日本にはないペルーのハーブ(名前忘れた)を入れて練って揚げるのよ。これはこの辺でもうちしかやっていないんじゃないかしら。」
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というむちゃくちゃに手のかかったドーナツは、見た目とは裏腹に非常に軽い食感。クリスピーにサクサクと食べられるので、まったく重くならない。かぼちゃと芋の風味がするが、食感はまったく違うものだった。そこに謎のハーブが効いていて、かなり面白い、日本では出てこない味である。

それと、これは有名なアロス・コンレチェ
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 アロスは米、コンレチェは「With Milk」の意味だそうだ。その名のとおり米をミルクで甘く煮たものだ。タイ料理のカオニャオのデザートと一緒であるが、シナモンが効いていてこれまた不思議な食味。

そしてとどめは、最高に甘くて濃いプリンだ。これ、コンデンスミルクとミルクと玉子と何かが入っているスペシャルなプリンなのだ。いい感じに固めに仕上がっていて、とにかく甘いが、コクがあって非常に旨い。コーヒーと合うだろうな。
なんか、ヌメっとしたテクスチャが妖艶で綺麗でしょう?
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とまあ、食い散らかした食い散らかした、、、ビールも相当空けてしまった。
勘定をお願いすると、、、ここにはかけないほど安かった。一人4000円行かない値段なのだ。これはいくらなんでもママのお情けが入っていると思うが、量が多いから、僕と一緒に行かなければ誰でも2皿で満足するだろう。

この店では、第三週の金曜日に、アンデスの民族音楽「フォルクローレ」のバンドのライブをしている。いつも満員立ち見御礼らしい。次は3月19日だ。いこうかなぁ、、、

そう、面白いことに、実はこの日、僕のblogの読者であるMさんがこの店に来ていたのだ。なんとこのインティライミからすぐのところにいらっしゃると言う美女であった。わざわざお手製のフォンダンショコラをいただいてしまった。これがまた実に玄人っぽい出来で旨かったのであった。うーむ最高。ご馳走様でした!

大変に満足して、突風吹き荒れる川崎を歩いた。突風は、嵐のように食いまくった我々の興奮と共鳴したかのように吹き荒れていた。明日は北海道にいけるのだろうか?と思いつつ、家路に着く僕の心には、まったく憂さというものが消えていた。


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Posted by yamaken at 00:42 | Comments (9) | TrackBack

2004年02月22日

宇都宮餃子の正道を観た! 「正嗣(まさし)」

jpg 朝九時の山形新幹線で、宇都宮に向かう。と言っても、東京から40分くらいで着いてしまうので、居眠りをする間もない。このように首都圏に近いところに出張というのは、本来的には避けるところなのだが、実は僕は宇都宮には降り立ったことがないのだ。今回は、栃木県の生産者団体さんが僕を講演で呼んでくださったので、初の宇都宮詣でとなる。

 宇都宮といえば餃子である。僕の敬愛するライターというより作家さんであるイタバシ師匠が昔、雑誌の取材で宇都宮餃子を10店以上回ることになり、餃子を100個以上食べることになって、その時初めて

「満腹によって失神する」

という事態を経験したそうだ。あまりに満腹になりフラフラと歩いているうちに意識を失い、気づいた時は全く知らない道をとぼとぼと歩く自分がいたそうである。それほどに宇都宮餃子はオソロシイものなのであった。

 冗談はともかく、最近では首都圏でも「眠眠」など、宇都宮に本店をもつ餃子屋が店を出している。しかし、そういうのはあまり好きでないのだ。やはりその土地で食べてこそ意味があるのではないか。ということで、講演終了後に出荷団体の方に、地元の人が旨いと思う店と訊いたのである。

 野口さんは瞬間的に目をぎらっとさせた!

「先生、そんなことでしたら先に言って頂ければご案内したものを、、、そうですね、有名なのは眠眠ですが、「まさし」という店も同じくらい有名で、私はそちらの方によく行きますね

と言うわけでその近くまで連れて行って頂いた。ちなみに午後1時半。昼食はもう弁当を食っているのだが、それに上乗せして食べるのであった。泉町という繁華街に入ると、すでに行列ができている店がある。

「あれが眠眠です。その先の小路を曲がると、小さい店が、、、あ、あそこです。まだ店が開いてないのに並んでますね」
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本当だ。まだ店は準備中なのにならんでいるのだ。急いで野口氏に別れを告げ、店に走る。ラッキーなことに、すぐに店が開いて、最初から3番目の客として入店できた。
ちなみに「まさし」というのは写真にあるとおり「正嗣」という難しい漢字で書くのであった。

これが店内である。
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びっくりしたことがある。何かというと、、、この店には「餃子」以外のメニューがないのだ! 「焼き餃子」と「水餃子」があるのだが、それだけだ。ビールもない。ご飯もない。ラーメンもないのである!そして価格がまた笑ってしまう。焼き餃子も水餃子も、一人前がなんと170円である!今どきファミレスでもこれはないだろう。
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とりあえず「焼き2人前と水餃子1人前」と頼む。親父さんと奥さんの2名体制である。親父さんは、ほとんど愛想のない無表情さでもくもくと仕事をする。「何人前?」としか訊かないでいいメニュー体系だからだ。無造作に餃子を鉄鍋に放り込み、焼けた端から皿に盛って出してくれる。
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 薬味は醤油と酢、そして自家製のラー油だ。このラー油が実に辛くて旨かった。自家製ラー油はかなりのポイントだが、ここのは陳皮などの香り素材よりも、ストレートに唐辛子を多量につかって辛みをだしているようだ。適度に調整をして待つこと4分、焼き餃子が運ばれてくる。
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思ったより一つ一つが大きい。3人前頼んで大丈夫だったろうかと、俺らしくない不安。一口、タレにつけてほおばる。熱い! そして味だが、以外にもさっぱりあっさり、淡泊な味わいだ。ここを紹介してくださった野口さんも、

「眠眠はギットリしていて、私なんかはまさしの淡泊さが好きです。」

と仰っていた。しかし、2つ、3つと食べ進めるうちに物足りなさが消えていった。なぜか、旨さ、味が積算されていく感じなのだ。野菜がタップリ入った餡(キャベツが多い)はまったくくどくない。皮は薄くもなく厚くもない、食べやすく上品な厚みだ。そして底面の見事なパリッと焼きの入り方。素晴らしいではないか。
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 黙々食べていると、水餃子が丼に入ってやってきた。ここの水餃子は、焼きと同じ餃子を鍋で茹でたものだ。
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 おやじさんが無造作に生餃子をつかんで、沸き立つ鍋に投入、その後茹でをしていたものだ。タイミングをみはからって丼に湯を少量入れて暖め、茹であがった餃子と湯をいれて出してくれた。最初これを、焼き餃子と同じ、ラー油と醤油と酢のタレにつけて食べてみる。水餃子はこれはこれでホックリとした味わいとなり、よい。と思ったらなんと!おやじさんがボソッと声をかけてくれたのだ

水餃子はね、丼の中に醤油と酢とラー油をいれちゃって、スープごと飲んじゃうといいよ。身体があったまるよ。醤油は入れすぎると塩辛いからね。」

これを、とにかく無表情でぼそっと仰るのだ。僕はちょっと感動してしまった。大阪インデアンカレー梅田店の山田チーフのような、にっこり愛想笑いも無駄な世間話もしない、しかし客に対して最高のものを提供しようとしている崇高なプライドが、そこに見えたのだ!

 おやじさんの言うとおり、丼に直接、醤油と酢、ラー油を投入してみた。
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 汁ごと餃子を食べてみると、実に最高! 湯から引き上げて小皿のタレにつけるよりはるかに味わい深い!湯は本当にただの湯のはずで、餃子から少々旨味が染み出ているのかもしれないが、それでも白湯に近い。なのに、醤油と酢とラー油のみで、とても深みのある味が出ているのだ。いったいどういうことなんだろう?

 とにかく偉大なおやじだ。この店、メニュー構成をみても(焼き餃子と水餃子しかないんだぞ!)、価格を見ても(1人前170円だぞ!)わかるとおり、とにかく質実剛健、実直な仕事しかしないと宣言しているような店だ。ビールもない。ご飯もない。あるのはただただ餃子だけだ。客は黙々と餃子を平らげて出て行くのみなのだ。ある種の感動を覚えてしまった。

 ちなみに店内の壁に、計算表が貼ってある。何人前だと幾ら、という価格表だ。これをみると、なんと25人前でもたったの4250円だ。しかし過去、この25人前を頼んだ人が居るのだろうか?できれば僕が頼んでみたい、、、
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 いや、本物のプロを見た。素晴らしい。今後、栃木とは関係ができそうなので、またこの素晴らしき郷土色「宇都宮餃子」を攻めてみたい。きっと、もっとディープな世界が広がっているはずだ。わくわくしながら、帰途に着いたのであった。

Posted by yamaken at 18:54 | Comments (2) | TrackBack

名古屋の駅弁 「ひつまぶし弁当」はなかなかのものである。

 岐阜出張である。11時過ぎに新幹線で出たため、昼飯の時間を車中で過ごし、1時過ぎに名古屋駅に着く。乗り換え時間が10分しかないので、矢場とんのみそカツを食べに行くわけにも行かない。喫茶コンパルの海老フライサンドも時間がかかるので無理だなぁ 断腸の思いである。
 仕方なく駅弁売り場をみる。みそカツ弁当などがある中で、ひつまぶし弁当に目がいった。ちょうど昨日、友人が名古屋にいるので旨いひつまぶし屋を教えてくれと言われたので、栄の松坂屋に入っている熱田蓬莱軒の支店を教えておいた。そのせいか、鰻が食いたいと僕の胃袋が言っているのだ。

 僕は鰻は、関西風のものが断然好きだ。東京にいてあまり鰻を食いに行かないのは、江戸前の鰻に飽き足らないからだ。釈迦に説法かもしれないが、関東風は白焼きにした後に蒸して、脂を落としてトロトロにする。この柔らかく脂の落ちた上品なのを好きな人もいるわけだが、僕には物足りない。ひるがえって関西では蒸さずに皮目をバリッと焼くため、脂ののりが極めてしつこく(笑)、これが俺様好みなのである。それに、タレも心持ち関西の方が濃く感じられる。ギトギトしている。その中でも一番好きなのは、宮崎県にある名店「入船」だ。知ってる人は知ってるだろうが、国内のウナギの養殖の多くは、宮崎や鹿児島の河川で行われている。だから南方のウナギもおかしい話ではない。事実、鹿児島の寿司屋ではウナギをネタに使うのをよくみかける。

 と、弁当をみながらそこまで考えたところで時間が来たので、とりあえず買うことにする。ひつまぶし弁当1100円也。メーカーは「だるま屋」というところだ。パッケージには「日本一弁当」と書かれている。よくよくみると、パッケージが面白い。

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日本一のうなぎ生産地三河一式の蒲焼、、、日本一の抹茶生産地、西尾のてん茶、、、日本一長い守口大根を添えた、、、日本一、名古屋の抹茶ひつまぶし

 巧妙に「日本一」が誇大表示にならないような手を使っているわけだ(笑)
 何が何でも日本一って言葉を使ったるぞぉ!という気概に満ちたネーミングなのだ。ていうか、上記説明が箱の上部に書いてあるのだよ。この箱もなんだかいい紙使ってるし、意味もなく中身が2重になってるし、豪華すぎる。

 箱を開けてみると、膨大なつき物群が。お手ふきに箸、うなぎのタレと山椒、そしてワサビの小袋ともみ海苔。そう、ひつまぶしにはワサビだもんね。これらのギミック類を除いた後をみると、結構にウナギの分量が多く、豪勢な見た目である。
 ひつまぶしのご飯にはあらかじめタレが絡められているので、すでに味が付いているのだけど、そこから更にタレをかけるというところが名古屋だな。

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 山椒、タレ、ワサビ、もみ海苔を載せて、いただきます。これが、予想外に旨い!ウナギの皮は期待を裏切らずにストロングもっちんもっちんで噛み切れないくらいだ。やっぱり味も濃い!量的にも、おやつにはちょうどよい(笑)というのは冗談だが、まずまずの満足度なのだ。

 食べていてはっと気づいた。包装の豪華さ、日本一にこだわるネーミング、そして中身のギミックの多さは、すべて名古屋人気質といえば説明が付く。嫁入りの豪華さのみならず、名古屋を通過する全国の旅人に対して、

「日本一やゾぉ」

とにたりとしながら微笑む名古屋人。そう思えば、1100円という価格帯でここまで豪華にするのも気質から無理を通した結果と思える。うーむ 素晴らしいではないか!

と堪能しているうちに、大垣に着いたのであった。望外の満足度なのであった。

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2004年02月20日

一番好きな和歌山ラーメン「丸三」が改築しておった。

 和歌山ラーメン(地元の人はラーメンといわず「中華」と言うが)で、今のところ一番好きなのは「丸三」である。以前にもこの日記で記事化したが、出張の際にしばらくぶりに連れて行って貰ったら、いつのまにか改築されていてビックリ。
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店の人には悪いが、はっきり言って不味そうなドライブインという風情である。でもまあ、もうすでに超有名店だし、店構えのセンスなんぞ、どうでもいいのだろう。

店内は明るく広くなっている。
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前の店と大きく変わったのは、厨房が広くなったことだろう。みなさん働きやすそうなのであった。
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さて 和歌山のラーメン屋には必ずといっていいほど置いてある早寿司だが、僕はこれが大好きなのであった。今回も待っている間に1本食べた。
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食べ終わったけどまだラーメンが出てこない。なので、巻きずしも食った。
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正直、巻きずしは大したこと無い。やっぱり早寿司ナンバーワンである。

さてラーメンが出てくる。相変わらず見事な小宇宙を、丼内に構成している。完成度の高いラーメンもとい中華であると思う。
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ラーメンを黙々と啜るのもいいのだが、、、僕はいつもこうしてしまう。早寿司をラーメンスープに浸けて食べるのダ! これが劇旨! 早寿司の酸味とスープのコクと脂のマッチングが実に佳いのだ。
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新しい店になっても、丸三は最高に旨いので安心したのであった。

さてこの後日また丸三に行ったのだが、「店主急病のためお休み」となっていた。僕ら以外にも数台の車が駐車場をうろうろしていて、中には店をのぞき込む親父まで居た。
はやく病気直して再開できるようになることを、切に祈っています。

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2004年02月19日

「なんばんの粕漬け」大ブレイクにつき





いやビックリした。山形県で買ってきたなんばんの粕漬けがあまりに旨かったので、取り寄せるということを書いたら、予想外に「私の分も買って!」という打診をいただいている。コメントに書いてくれるのもあればメールでご連絡もあったりで、今回は20本取り寄せることになりそうである。

 これを受けて、くだんの生産者グループ「まあどんな会」に電話をかけてみた!生産者のラベルに記載されている佐藤洋子さんに、である。

 ご本人が出たのでいきさつを説明する。

「あのぉ、、、粕漬け買ってくれる前に、講演しに来てくれた方?」

と仰るので「そうです」と言うと、もう大爆笑で一瞬にしてツーカーになってしまった。佐藤さんにいろいろ訊いた。

 まあどんな会は、置賜郡の白鷹町というところの生産者の奥様方が、夏の間だけきのこや山菜などを調理加工するグループなのだそうだ。

「スキー場の施設が夏は使われないから、そこで作業するのよ。」

とのことだ。まあどんな会は県の普及員さんにお世話になって立ち上げたそうだが、夏だけなので生産量はどうしても限られてしまうそうだ。そこがまた、マニア心をくすぐるところだ。

 で肝心のなんばんだが、

「あれはねぇ、味噌は全く使ってないの。なんばん(唐辛子)とにんにく、くるみ、ごまなんかを粕と混ぜて寝かせるものなの。」

という。更によだれの出そうな情報を訊いた!

「あれはねぇ、酒粕だから蓋を開けなければ何年でも保つの。寝かせば寝かすほど美味しくなるの!瓶を開けたら、周りがかびやすくなるからダメだけどね。」

なにぃいいいいい
じゃあ5本買って俺は寝かせるぞぉ! なんばん粕漬けの10年ものはどんな味になるんだろう?

 この他にもいろいろな話をしたのだが、最後に佐藤さんが言ってくださった。

「夏には色んな美味しいものがとれるから、団体様で泊まりに来て下さ~い 待ってますよ!」

これは行くしかあるまい!

 食い倒れ日記でこんな展開になるとは思わなかったが、いつか有志で山形旨いもんツアーを開催するというのはどうだろう?
 「まあどんな会」視察&食い倒れの翌日は、山形市内にいき、鈴木製粉の大師匠に入門して一日蕎麦打ち体験をするというコースではいかがなものか?

 なんだかわくわくしてきた。是非もない。今回、初めて僕にメールやコメントを下さる方々の通信を読んで、読者の方々からのダイレクトな声を初めてきいた思いだ。今後も頑張って色んな旨いもん情報を出していきたい。

ああそうそう、肝心のこと。

■なんばんの粕漬け共同購入について

・来週いっぱい、希望を受け付けます。
・価格はなんと!1本350円+送料。送料は20本程度なら1300円くらいなので、それを本数で割ります。
・ただし 商売ではないので、手渡しでしかお渡しできません。都合は別途連絡とりあいましょう。
・それと、いい機会なので、「食い倒れオフ会」を開催しようと思います。寿司匠で握りを堪能した後、晴弘の支那そばを食べに行きましょう。ただ、私の仕事の関係があるので3月中旬以降にさせてください。ちょっと先にはなりますが、この席上で引き渡しも可能。

そんな感じです。

※すでに受付は終了しています!

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一応宣伝をしておこう。僕が最も旨いと思うトマトを。

g-4.jpg 販売数量が非常にすくないので、実は宣伝を差し控えていたのだが。

 数年前からBIGLOBEのグルメカテゴリで、商材を提供している。僕の顔が出ての販売なので気恥ずかしいのだが、、、

BIGLOBEグルメ 旨極の青果物


 旨極は「うまきょく」と読みます。完全に造語です。週間50ケースしか分けてもらえないのですぐに売り切れてしまう、、、
 今みたら、2月中配送分は売り切れ、3月からの配送分はあと2箱しか残ってませんな、、、

 味は、ええ、この私が、フルーツトマトで最も旨いと思う生産者の一人がここなのですよ。まあ間違いはないです(断言)。

 もし、、、どうしても欲しいって人はメール下さい。無理だったらゴメン。

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2004年02月18日

山形のおばちゃんが作った旨いもんみつけた

 山形出張の際に、農家グループによる加工食品の直売イベントが面白いと、山形が誇る美人農業改良普及員である高橋さんと一戸さんに連れて行ってもらった。これが本当に面白かった!観たことも聴いたことも無いような名前の山菜の乾物などが、ところ狭しと並んでいる。そしてそれを売るおばちゃんたちが、またパワフルでよい!
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こんなおばちゃん達が、いろんなものを売っているのだ。「イワダラ」とか「ギボシ」だとか、スベリヒユの干したものとか、おそらく首都圏の人間には奇怪なものが並んでいる。うーむ全部買って帰りたい。
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この写真↓は、山形名物「雪菜」だ。雪の下で育つので遮光され、うどやもやしのように軟白され、辛味がでてくる。風雅な味わいの菜っ葉なのだ。
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さてそんな中で、いくつか買い物をした際に、おばちゃんにこの「なんばんの粕漬け」を薦められたのだ。「なんばん」とは唐辛子のことだ。青唐辛子を粕漬けにしたものらしいが、見た目は味噌である。
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「これを一口食べると、口の中が退屈しないよぉ」

という意のことを山形弁でいわれ、菜ばしにちょこっと味噌をつけて差し出してくれる。人差し指ですくって舐めてみると、、、

「おおおおおおおおおお 辛~~~い! むちゃくちゃ 辛いぃ!」

もう、爆発的な辛さである。日本の唐辛子もこんなに瞬間的爆発力があったか!しかし辛味の嵐の後には、粕の甘い香りが残り、非常に旨い!

「買った!」

ということで買ってしまったのだ。

帰宅後、改めて食べてみる。
これだけ入っているから、食べ尽くすに時間がかかるだろうなぁ。
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炊き立てご飯に乗せてたべてみる。
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涙が出るほど辛い!
けど旨い! もう一口
けど辛い!
けど旨い! もう一口
けど (以下略)

絶品に旨いのであった!
辛みそは結構あるけど、粕との組み合わせはあまりみたことがない。粕の麹香と甘味、塩の旨味、そしてなんばんの辛さが絶妙の塩梅なのだ。
これはまた買おう!と決意。
シールを見ると、生産者は「まあどんな会」 、、、人を食った名前である。
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宅配代金がもったいないので10瓶くらい取り寄せようと思うが、欲しい人はいるだろうか?

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2004年02月16日

蓮沼 「インディアンカレー」本店はやはりすごい店だった

kanban-indian.jpg この日記でもレビューしているが、蒲田近辺に隆盛を誇る「インディアン」という店がある。なんだか混乱しそうだが、大阪「インデアン」や帯広「インデアン」とは違い、「インディアン」である。供するモノも違う。ラーメンとカレーなのである。この店でそのどちらか片方だけを食べる人というのは、まずいない。ラーメンとカレーを食べることに最適化された味なのだ。

 とりあえず初めて耳にする方は、まず僕の過去ログを読んで頂きたい。

 インディアンの本店は、東急池上線で蒲田の隣駅「蓮沼」を降りたすぐのところにある。その噂は耳にするものの、僕はこれまで蒲田西口店と、池上駅近くにある類似店(どうやら支店というわけではないらしい)にしか行ったことがないのだ。これは片手落ちというものだろう。あのこだわり抜いた味を創り上げた張本人が居る店に行かずして、インディアンは語れないのであった。で、いつものように髪を切りに行ったついでに、池上駅からとなりの蓮沼駅まで歩いていくことにしたのであった!

蓮沼駅の改札を降りてすぐのところにあるインディアン。外見はこれだ!
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 このように幼児を連れた親父が並んでいるところをみても、地元民に愛されていることが見て取れる。程なく入店すると、そこには眼光するどい親父がいるのであった。この方が武田さんであろう。
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 時折ちらっちらっと店内に鋭い眼を走らせるのだが、これは別に客に睨みを利かせているというわけではない。インディアンでは、ラーメンかカレーの片方だけを頼む客はほとんどいない。ほぼ全ての人が、ラーメンとカレーを頼む。その場合、まずラーメンが出てくる。それを半分以上たべたところで、カレーが出てくるのだ。このタイミングには意味があるらしく、確かにこの順番で食べると、非常にそれぞれの個性が際だつのだ。店主のチラッチラッという視線は、このカレーを盛るタイミングを計る視線なのだ。

 さてこの店の品書きがこれだ↓
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 これをみたら、だれしもラーメンとカレーの両方を食べたいと思うだろう。お腹に自信のない人は、ラーメンと半カレーのセットにすればよいのだ。とにかく、この両方を食べないとこの店を味わったことにはならない。

 さて僕は当然ながらラーメンとカレーのセットを頼む。店の大将の他に、奥さんらしい方が皿を運んでいる。厨房の奥には若い女の子が皿洗いなど下働きをしている。どうやらこの女の子は娘さんらしい。時折大将を「お父さん」と呼ぶのでわかったのだが、この娘に対する態度が実にご立派なのだ。皿を洗っている娘さんに対して、静かに平静な口調で、

「その皿、洗ってくれる?」

「もう洗ったけど?」

「もう一回洗って。」

とダメ出しをしているのだ。怒るでもなく、淡々とダメだし。娘も口答えするわけでなく、皿を洗い直す。親子の絆の中で、プロ意識を叩き込んでいるのだろうが、この平静さ、実に素晴らしいと思った。いずれ僕もこんな親子関係を築きたいものだ。

 さて自分の娘以外に向けるまなざしもことのほか優しいことに気づいた。先に入店した幼児2人が、キャッキャッと騒いでいるが、大将の顔色は変わらない。そして、何も言われなくともピンクとブルーの子供用茶碗を出した。そして、皿の温め用の寸胴にスッと入れて、若干で引き出した。そう、この店ではラーメンとカレーの皿は、温め専用の寸胴に張った湯で極限まで温められる。運ばれてきた時に触れないくらいに熱くしてくれるのが、この店の素晴らしい特徴なのだ。ていうかまず、温め用の寸胴鍋でコンロを一つ占有しているのがスゴイではないか。しかし、2人の子供のための茶碗は、若干温めただけで引き出している。子供に熱い茶碗は危険だからだろうが、なんだかこういった細かい気遣いをみると、この大将の人格がしみじみと浮き彫りになるように思うのだ。

 と思っているとラーメンが出てくる。
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 スープはもう完全に魚貝系オンリーの味である。しかし旨味は実に実に濃い。塩分が控えめなので、それがまたスープの旨味と魚ダシ香を際だたせている。みてくださいこの透明度の高いスープを!
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 麺は中太で若干のちじれが入っている。チャーシューはホロホロに煮込まれたロースで、薄めのスープと対極的に味が濃いので、このチャーシューをかじりながら麺を啜るのが絶妙のコンビネーションなのである。ほうれん草もいい味だしていて、具と麺とスープのマッチングは最高である。
 ひとまずは一心不乱にラーメンを啜る。そして半分以上食べたところで、カレーが運ばれてくるのである。
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 非常に濃い茶褐色の外観が、味の奥深さをそのまま表現している。この店を訪れ、初めて口にした人が一様に驚くのが、その「苦み」である。焦げる寸前の極限までルーを炒めこんでいるらしく、強いほろ苦さと香りが鼻を抜けるのだ。しかし、旨い!強烈な感覚に目覚めた後は、多くの人がインディアンマニアになってしまうほどに旨いのである。
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 そして、このカレーを食べながらラーメンのスープをすする。これが絶品なのである。ラーメン単体でいただいていた時のスープの旨味に、スパイスとルーの香ばしさが混ざり、全く違う味世界が口中に現出されるのである。ここからはカレーを食い、スープをすすり、の繰り返しになる。

 うーむ
 実に旨かった! やはり本店の味は、まったく隙がない。 一点気になったのは、店内に魚貝系のヒネ香がしていたことだ。サバ節などの素材がちょっと酸化したような香りだ。スープをとった後の滓が醗酵してしまっているのかと思うが、これはあまり褒められたものではない。
 ま、しかしそれは些末なことだ。大将の細やかな気配りは、どんなに人気店になってもペースを崩さない一徹さがみてとれる。その意識は娘さんにも伝わっていることだろう。

またいくぞインディアン!おいらもマニアになりました。

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2004年02月15日

新連載開始! 「やさい畑」でトマト大特集

 2月16日、とうとう発売日を迎えるので、大いに宣伝させていただこう。

 新しい連載を開始する。

雑誌名「やさい畑」 家の光協会 刊
定価 880円
 
やさい畑ネットでも情報を配信している。
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 この雑誌、家庭菜園家向けのバイブルといえる雑誌だ。ベランダ菜園がお好きな方はぜひお買い求めいただきたい。ちなみに今月号はトマト特集。ぼくが担当しているのは、なんと13品種ものトマトを、ひたすら食べ比べて特性を分けているというものだ。これまで類似の企画は無きに等しい。書店でぜひ手にとっていただきたい。

 その取材時のノートを、ここに公開する。13種類のトマトのテイスティングのすごいシーンをぜひご覧あれ。


tomato2.jpg さて。
新しく連載を書くことになった。内容は発売になるまでは詳しく言えないのだが、農産物の食べ比べ記事だ。野菜・果物には品種が星のようにあるのだが、消費者はほとんどそれを知らないで選んでいる。表示されていないのだから仕方がないが、本当は品種で大きく味が変わる事が多い。そこで、種苗会社が売り出している品種を一同に集めて食べ比べをし、その品種が何に向いているのかを分析するという企画を立てたのだ。

 僕は農産物の流通をしているので、これに類することは実はずっと前からやっている。楽天市場のグルメカテゴリでしばらく連載していたこの記事なんかはその派生物だ。こうした試みはそうたくさん行われているわけではない。一つの品目を集めるにも相当労力がかかるし、テイスティングをする際のノウハウも必要となるからだ。そのテイスティング方式の詳細と評価手法については、申し訳ないがここで書くわけにはいかないのであった。

tomato12.jpg さて記念すべき第一回目は僕の得意技の「トマト」だ。なんと全国の種苗会社から取り寄せた13種類のトマトを食べ比べするのだ。しかも、生・煮る・焼くの3通りで。会場はあの北千住の焼き鳥名店「バードコート」。テイスターとして、僕とNHKの家庭菜園ものの講師をしているF教授、料理研究家のIさん、僕の親友の若手洋野菜農家の長島勝美君、そしてバードコートの野島さんという豪華なメンバを揃えた。テイスティング方法を説明し、実施するのだが、何と言っても13種類なので手間がかかる。


 また、皆さん試食前は「本当に味の差なんてわかるかなぁ」と不安げだったのだが、こうすると如実に差が現れるのだ。果たして皆さん、真剣にしかし楽しみながらテイスティングをしていただいた。

tasting.jpg それにしても13種類ものトマトが並ぶと壮観の一言だ。12時半から初めて17時すぎまでかかって終了。面白かったぁ。そして僕は原稿書きに入る。2月に発売になるので、脱稿したら誌名を公表するので、ぜひ書店で手に取っていただきたい。

 ちなみに僕はその前日から、編集部でトマト13種たべ、当日嫌と言うほどテイスティングし、もうトマトはしばらく見たくない!という状況なのだが、、、残った生・煮トマトをいやというほど持ち帰らされてしまった。こうなったらやることは一つだ。13種類のトマトをぶち込んだトマトソースとラグーの料理だ。どんな味になったのか?興味のある人は我が家に食べに来てください。もう僕はしばらくはトマトはいらない!

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2004年02月14日

山形vs福井 名物対決~赤カブの巻

 今月は出張月間なわけだが、その先々で様々な郷土食材を味わう機会に恵まれることになる。北海道帯広と札幌、そして遠く東京にて鱈の白子をいただいたのは先日だが、野菜でとなると中々興味深い。そして、今回ちょっと採り上げたいテーマが見つかってしまった。それは、山形県と福井県の双方で名物になっている「赤蕪(かぶ)」である。

 蕪という作物は、実はむちゃくちゃに種類が多い。店頭に出回っているのがいわゆる中玉から小玉の白いカブばかりなのであまり実感が湧かないかもしれないが、地方にいくと、その地元にしかない品種が多いのだ。中には、「ほんとにカブかぁ?」という形のものも多い。大根のように細長い形であったり、聖護院蕪のように巨大に丸い蕪も、実は各地にある。

 そうした蕪の中でも極めて面白いのが赤蕪だろう。スーパーで赤蕪の酢漬けを売っているのをみて、「着色してるんでしょう?」という人も多いのだが、赤蕪とは天然の紅色素を含んだ蕪である。漬けこむと赤い色素が滲み出て紫がかった深紅の美しい色合いになる。そしてなぜか風味も白い蕪よりも強いことが多い。そして、山形県と福井県には、それぞれが誇る郷土野菜としての赤蕪が存在するのだ。

 山形県で有名なのは、「温海(あつみ)かぶ」と「藤沢かぶ」という品種だ。どちらとも、焼畑で作られるそうだ。その辺、このWebに詳しい↓
http://www.slowfood-yamagata.jp/home/album/20031130.html

 今回は、山形の農業改良普及員さんである一戸女史が連れて行ってくれた、生産者グループがつくった加工食品を販売するイベントにて、「これは買っちゃダメ。あ、こっちが本物。」と教えていただきながら、「藤沢かぶ」をセレクトした。このように、まるで大根のような姿形の赤蕪なのである。

fujisawakabu-s.jpg

 対する福井県では、「河内(こうち)蕪」が有名なのであった。これは僕も知らなかったのだが、福井の農業改良普及員さんである土屋さんが、わざわざ手配して取り寄せてくださった。
 なんとこの蕪も焼畑農法で作られる。赤蕪は焼畑でつくると旨いのかなぁ 詳細はこのWebを参照のこと↓
http://info.pref.fukui.jp/nourin/syunfile/syun5/akakabu.html

 この河内蕪、やたらめったらに生産量が少なく、入手は難しいらしい。だから福井県外にはそれほど知られていないということか。土屋さんいわく、
「かなり硬くて、ボリボリと派手な音がします。」
とのこと。それは硬い物好きの俺好みなのであった。

 ご用意いただいたのは上記のWebに書いてある生産者さんの赤蕪漬けである。この飾らぬパッケージが秀逸である。

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さて この二つを食べ比べてみようではないか。

■外観
 外観、といっても漬物になっているものを刻んでしまうので、あまり意味は無いのだが、、、

 山形の藤沢蕪は大根に近い形であり、これを櫛形に切っていただくことにした。画像をみていただければおわかりのとおり、大根のような断面である。
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 福井の河内蕪は、形はオーソドックスな丸型らしい。今回の漬物は最初からカットされている。大きさを観ると小玉のものが使われているらしいが、本来的にはもう少し大きい玉が多いらしい。
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 双方の画像を見ていただければおわかりのように、なぜか双方同じような色である。どちらも深紅というよりは少し紫の入った魅惑的な赤だ。

■食感
 山形の藤沢蕪は、形こそ大根だが、食感は当然ながら蕪である。ただししゃきしゃき感があり、通常の蕪のようなクニョッとした感覚は皆無。代表的な赤蕪の食感と言ってよいだろう。この食感が欲しくて、漬物を食べるのである。
 福井の河内蕪は、土屋さんがおっしゃるようにかなり歯ごたえがあった。それこそバリバリという感じの音で、蕪の細胞壁の強さが感じられる。

■食味
 食味と食感は連動しているのだろうか。藤沢蕪はとても柔らかい味と香りがする。対して河内蕪は非常にワイルド極まりない。辛味が一瞬鼻に抜ける感覚がある。モルツとドライ系ビールのような対比である。無論、味については漬け込み用の調味液に拠るところ大だから、一概には言えないのだが。


 というように食べ比べをするわけだが、、、どっちも旨いんである。素材感を活かし、調味液にはオーソドックスな甘酢のみを使用しているわけで、プレーンな味わいだ。
 どちらがどうのこうのというより、遠く離れた山形と福井で、赤蕪栽培にはなぜか焼畑というのが共通しているということが、非常に面白いではないか。

 そう思いながら、バリボリバリボリ 気づくと蕪4つ分くらい齧っていた俺を発見したのであった。

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2004年02月12日

越前の国はソースカツ丼の聖地であった!

 フレンチで程よいお腹になったところで、福井名物ソースカツ丼を食べに行くのであった。さて福井県のソースカツ丼を語る上で欠かせない存在があるという。その名を「ヨーロッパ軒」というらしい。正体は洋食屋で、福井県内に10店舗前後の支店を出している。普及員の前川さん曰く

「もう小さい頃から食べ慣れているカツ丼の味といえば、ここです。」

とのことだ。まさしく福井県流ソースカツ丼の正調と言えよう。

 ヨーロッパ軒についてはこの店のWebに詳しい。そこにはソースカツ丼の来歴というか、出生秘話も掲載されているので、研究者には必読である。

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ヨーロッパ軒
http://homepage2.nifty.com/yo-roppaken/
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 前川さんがしきりに「本店にお連れしたい」と仰るのだが、あいにく本店は火曜日定休であった。本店以外の店もだいたいは火曜日定休、しかし県庁近くにある「城山店」一店のみが火曜日もやっていた。

「残念です。本店だとソースの量を自分で調節できるなど、県外の方に対する気配りがあるのですが」

それはソース大好き人間の僕には素晴らしい話ではあったが、でもまあ美味しければいいやと思うのであった。そして連れて行って頂いた城山店の外観がまた!実に食い倒ラーの心をくすぐるものだったのだ。

 みよ!この洋食屋らしからぬ店構えを!↓まるでそば屋である。
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 雪よけだろうか、店の入り口は更に奥まっているのだ。のれんの自体は流行のレトロ風だが、まあこれは創業以来これなんだろう。つまりレトロどころかホンモノなのだ。何と味があることか!
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店内は思った通りひなびた市井のそば屋といった佇まいである。しかし、壁のメニューをみるとチキンカツやポークチャップ等がならんでおり、間違いなく洋食屋のものであった。
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「ここはほぼ全員がソースカツ丼を頼みますが、夜でも頼めるAランチ(笑)とかもメンチ・海老フライなどがのっていて壮観です。」by前川氏

 席に着き、注文をとる。割烹着を着たおばちゃんにソースカツ丼大盛りを頼む。どのくらい大盛り何だかわからないので、とりあえず大盛りを頼むのである。もうこの辺は僕の習慣なのでどうしようもない。土屋さん前川さんは苦笑されながら普通盛りを頼んでいらっしゃった。
 トイレに行くついでに厨房を覗いてみると、おばちゃん2人による調理場であった。通路にドカンドカンと西日本のナショナルブランドである「イカリソース」の一斗缶サイズが並んでいる(ちなみにウスターソースであった)。このイカリをベースに、いろいろと秘密の材料と配合でソースを創っているのだろう。特製ソースがなみなみとはいったステンレスのストッカーが厨房に鎮座しており、ここにざぶりとつけられるのだろうという気配が濃厚に漂っていた。

 さて席にてしばし待ったのち、ソースカツ丼が運ばれてきた!お約束通り、ドンブリからはみ出ている!
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これがソースカツ丼の全貌だ!
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 大盛りだとご飯の上にカツが4枚。もう完全にご飯は見えない。ちなみに普通盛りだとカツは2枚である。
 さてここで前川さんが仰る。

「やまけんさん、福井ではソースカツ丼を食べる時、ドンブリのふたにカツをよけて、一枚だけご飯の上にに残るようにして食べるのが標準です。カツが全部のったままだとご飯に辿り着けません。」

ほれこの通り↓
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おおお なんと! すばらしい智恵ではないか!

 数十年に渡るソースカツ丼食いの歴史の中で、数知れぬ先人達が試行錯誤したに違いない。カツをのせたまま飯をすくおうとするとカツが転げ落ちてしまったり、逆に飯がぽろりと落ちてしまったり、、、そのたびに先人達は「何かいい方法はないものか」と様々な方法を試したのだ。そう、ソースカツ丼方法論序説である。そしてソースカツ丼食い中興の祖たる御仁が、この「ドンブリ蓋にまだ食べないカツを待避させるの法」を編み出したのだ!そうだそうに違いないっ!

 、、、というのはちと大袈裟だが、このような地元の人が知らず知らずのうちにしてしまっているTipsを知ると、初めてきたのになんだか無性に嬉しいのである。

 さてカツをいただく。
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 カツはそれほど分厚くない。8ミリくらいの厚さだろうか。それが10センチ大の大きさにカットされ、中挽きのパン粉にとじられ揚がっている。がぶりつくと、とってもジューシー!ロースである。肉の断面から中を観ると、タテに数本、包丁の切り込みが入っているのが認められる。箸を使わずとも柔らかく噛み切れるための工夫であろう。筋も完璧に切られており、口に不快が残ることは皆無である。ソースに浸されているにもかかわらずパン粉のカリっ感は完璧に残っており秀逸だ。もう一つの主役であるソースの風味は、どちらかといえば辛口のウスターを、独自配合だろう野菜等の甘みで柔らかくしているように感ずる。このカツと共に、ソースがいい塩梅にまぶされた飯を一口掻き込む。

「うーむ これは旨い!」

もう絶品の取り合わせである。特にソースご飯が佳い。その昔、我が家でご飯に醤油やソースをかけて食べようとすると、母に怒られたものである。「塩分がつよいんだから毒なのよ!」と言っていたように思う。そう言われるともっと食べたくなるのが子供というものだ。以来、醤油かけご飯とソースかけご飯は、背徳の美味を味わせてくれる究極の一皿になっている。
でも!
この福井では、このソースかけご飯が一つの紛れもない正統なのである!何と素晴らしいことか。ソースとカツの揚げ油がほどよくまとわりついた飯はキラキラネタネタと輝いている。旨いカツと飯とソース。この蜜月といえるトリプル関係性の中に、卵や醤油、ダシが介在してくる余地は全くないと言えよう。

4枚のカツと大盛り飯を食べると、さすがに腹が苦しくなった。これから講演なのに、、、
前にいらっしゃる土屋さん前川さんも苦しそうだ。でも、カツを食べるというのは、ある種ジビエ喰いにも似た興奮がある。内なる野生をたたき起こすような感覚。それはしかしタフでハードなソース味でなければ生まれてこないものだ。

ふと壁を観ると、五木ひろしの色紙が飾ってある。しかも二枚!一枚目の下には、福井公演の際に2日連続で来店したとのこと、2枚目は再度の公演のさいにまた来たとのことであった。その気持ち、わかるよ。

大変に美味しいものをいただいた。

 福井でグルメといえば反応的に越前ガニばかりがとり上げられることが多い。そりゃぁ旨いに決まっていよう。でも庶民は毎日蟹食ってるわけじゃぁないのだ。そう言う意味では福井の味の正統を貫いている一つがソースカツ丼であるといっても過言ではないはずだ。

 心に念じていただきたい。福井県に行ったら、ヨーロッパ軒にてソースカツ丼を食べること!これなくして福井の文化は語れない。

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2004年02月11日

越前の国探訪その1 ~福井市フレンチ「サレポア」

 和歌山から福井へ移動する。和歌山駅構内の立ち食いそば屋にて朝食をとる。関西のうどんに不味いモノ無しと思っていたのだが、薄いプラスチック製のドンブリに伸びたゆで麺、冷たいエビ天で温度は低く、絶好の不味さだった。おまけにおばはんの髪の毛が一本入っていたが、面倒で文句も言わずにおいた。
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 サンダーバード11号で新大阪を出て近江あたりにさしかかる。琵琶湖と山脈、そして湖畔ののどやかな風景を楽しんだ。そのまま読書を続け、ふと気づくといきなり雪国の風景へと変異していた。通過した駅をみると敦賀である。
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ああ、俺は太平洋側から日本海側へと移動しているんだなぁ、、、という感慨が少しこみ上げてくる。やはり人間は視覚的な刺激を最も直接的に感じるのだろうか。意識のありようが全く代わってしまうのである。

さて和歌山から3時間少しで福井駅に着く。すでに農業改良普及員の土屋さんと前川さんがお迎えに来てくださっていた。車中、僕が食べることだけが好きな男だと言うことを話すと、

「はい、そういうことだったんで、店はいろいろ検討しました。せっかくですから、福井にもフレンチのいい店があるので、昼はそこにそこにお連れします。」

ということだった。福井でフレンチ!といえば、魚介が旨いだろうな!

 でも僕には一つ攻めておきたいテーマがあった。それは「ソースカツ丼」だ。ご存知だろうか、福井県はソースカツ丼のルーツの一つなのである。ソースカツ丼といえば、群馬県桐生市や長野県駒ヶ根市が有名だ。そしてもう一つの雄と言えるのがこの福井県福井市なのである!

 そもそもソースカツ丼をご存知だろうか? 揚げたての豚カツを、別鍋でグラグラ煮たソースにドボンと浸し、これをご飯に乗せたものだ。至極美味である。これにキャベツが加わったりする場合もあるが、基本形はソースまみれのカツが飯に乗っかっているものだ。通常、このようなソースカツ丼が隆盛を誇る地域では、醤油と出しで煮て卵でとじたカツ丼を「玉子かつどん」とか「煮カツ丼」というように別名で呼ぶことが多い。つまり、その地に住む人たちにとって通常のカツ丼とはソースカツ丼を指すのである。なんとも痛快だ。

 ということで、なんとしてもソースカツ丼の有名店に行って見たい。昼はせっかく予約までしていただいているので、帰りの飛行機に乗るまでの時間でささっと食べる、ということで行こうと思い声をかけると、

「先生、ソースカツ丼食べたいですか? 先生さえよろしければフレンチを食べた後にご案内しますが、、、」

な、なんとぉ! 僕のことをよくわかっていらっしゃる! 後で聞けば、実はすでに僕のこのWebを観てくださっていたのだそうだ。うーむ

ということで、本日の昼飯はフレンチそののちソースカツ丼なのであった。


 福井駅から車で5分程度、繁華街の片町近辺にその店がある。
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salez et poivrez (サレポア)
福井市二の宮二丁目28-21 セトラルヴィレッジ1F
0776-28-6288

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 店にはいるとすぐに清潔で綺麗なオープンキッチンがある。コックコート姿の職人達が忙しく立ち働いている風景は、非常に清潔感が溢れており、いい店であることを予感させる。
 実はこの店のオーナーシェフである八木氏は、農業生産に従事していた経歴がある。もともと福井出身のシェフは、フレンチの修行を積み、東京でシェフをしていたそうだ。しかし、福井に戻って農業をやりたいというたっての願いがあり、しばらく前に戻ってきたそうだ。その時相談したのが、農業改良普及員をはじめとする農業関係者で、本日ぼくを読んでくださった土屋さんも、就農の検討の席に居たそうだ。ハウスを建てるなどしてかなりきちんとした農業をしていたそうだが、やはりフレンチへの情熱は忘れがたく、店を福井に出したということだ。最近では農業生産をやる暇がとれないようだが、一度でも農業生産に従事したのであれば、農産物の特性については熟知しておられるはずである。これは楽しみだ。
 前菜とメイン、デザートのコース(1800円)を頼むことにする。

■カリフラワーのムースと魚貝のサラダ仕立て
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 カリフラワーのムースは丹念にミキシングされており、滑らかなクリーム状になっている。この状態からカリフラワーを連想できる人はいるまい。甘くうっすらと香る独特のキャベツ香がよい。強めに火を通したカリフラワーとサワークリーム、フィメ・ド・ポワソンを加えてミキシングしているのだろう。鯛とホタテ、水タコ等の切り身が載せられているが、ベースのムースが淡い味付けのため、あまり映えてこない。これらの魚は思い切って昆布締めにしておけばコクが乗り、よかったのではないかと思う。

■ハタのフライパンソテーバターソース
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 目鯛のソテーや牛フィレステーキ等が並ぶメインから選んだのは、ハタのフライパンソテーバターソースである。ハタは旨い。福井のハタはもっと旨いだろう、と思って土屋さんに訊いたら「いやぁこの辺じゃあまり食べないですねぇ、、、」とのことであった、、、
 しかしいい皿であった。レモンを絞り込んであると思われるバターソースの微かな酸味が、焦げ目をつけた、旨味の強いハタの身をグッと引き締めた味にしている。いや、なかなかである。

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 この通り誠実そうなシェフによる店であった。客席には、首都圏と同じく主婦のグループばかりがいるのと、奥にビジネスランチらしいスーツ姿の一団がいた。福井のフレンチのレベルも、なかなかのものでした。

さてそしてすぐさまソースカツ丼を目指したのであった。

「先生、3時から講演ですから、早めに行きましょう」

もちろんです。時間がなくてもすぐ食べます。そして一行、福井ソースカツ丼の有名店「ヨーロッパ軒」へと向かうのであった。

Posted by yamaken at 22:54 | Comments (4) | TrackBack

2004年02月08日

やばい!体脂肪率が、、、

 うーむ いかん!

 山形遊行編の途中だが、、、本日ジムでフィットネススコアを調べたところ体脂肪率が18→20に増えていた!

まあそりゃそうだ。あんなに食べたからなぁ、、、先週は月・火が帯広、木・金が山形。そして明日から和歌山そして福井という2連戦である。

3月に入り出張が終るころ、僕の身体がどうなっていることやら、、、

Posted by yamaken at 23:32 | Comments (3) | TrackBack

山形遊行編その2 幻の蕎麦を幻の達人の手で打っていただいた!「蕎麦打ち虎の穴」の巻

2月11日改定:「でわかおり」→ひらがなで「でわかおり」が正解でした。

jpg 出張二日目のメインイベントは何かというと、なんと蕎麦打ち体験である!これは、この2日目に講演で僕を招聘してくれた農業改良普及員である芳賀さん、一戸さんが企画してくださったものだ。お二人とも、上京時に僕の行きつけの焼き鳥&釜飯屋にて痛飲し、意気投合したのだ。その際、蕎麦打ち名人である芳賀さんが、
「いずれやまけんさんを山形に呼びます!」
と言って下さった。その約束が果たされたのが今回なのだ!

 ちなみに農業改良普及員という職業について解説すると、県の職員として農業者に様々な支援・指導をする人たちである。その細かい中身は解説すると長くなるので略すけど、おそらくその土地の旨いものについてもっともよく知ることが出来る立場の人たちである。考えてみて欲しい。一人で500人くらいの農家の担当になって、常にコミュニケートしているのだ。だから、ピンポイントで「あそこの○○さんとこの何番目の畑で獲れた枝豆が一番旨い」ということがわかる人たちなのだ。そしてなぜか、僕の仕事はこの普及員さん達にお話することが多いんである。むふふ。役得とはこういうことを言うのだ。

さて
 蕎麦打ち名人の芳賀さんが言う.

「やまけんさん、山形の蕎麦関係者で知らぬものの居ない、すごい人にお引き合わせしますよ。実は、蕎麦屋さんが蕎麦うちを習いにくる方です。」

 そう、山形蕎麦に欠かせない伝説の仙人がいらっしゃるのだ。この方は鈴木製粉所という、そば粉を石臼で挽いて販売をする製粉業の社長さんで、鈴木彦市さんという。地元ではむちゃくちゃ有名らしいのだが、この方が、市中の蕎麦屋さんに蕎麦粉を販売しながら、打ち方指南をしているというのだ。
 そして、

「この鈴木社長の打った蕎麦は絶品で、私(芳賀さん)にとっても一つのベースとなっています。でも、社長さんは粉屋さんですから、商売として打つことは一切ありません。なぜならお客さんである蕎麦屋さんに失礼だからです。ですから鈴木社長にそば打ちを教えていただいて、かつ食べることができるというのは、すごいことなんです。」

 なんとまあ、すごい話ではないか!
そして、山形駅前のホテルから車で数十分、高速を降りて山間部に入ったところに、石臼挽きの粉の工場である「石臼館」がある。石臼以外の工場も近隣にあるらしいが、この立地にも分けがある。それは、この辺が以前、蕎麦畑であったこと。いい蕎麦ができる条件である霧がけぶる冷涼な気候の土地であることなどが、蕎麦を製粉し保存する工場としての立地によいということだそうだ。
 なんだかわくわくしてきた。何かを無心に追求し専心している人に会うことが出来る、しかもその蕎麦工場の立地の話だけでも素晴らしい含蓄である。

jpg ←その鈴木社長がこのお方だ。

 なんと鈴木社長、昨日の僕の講演をわざわざ観に来て下さったそうだ。

「わかりやすくていい話だった。」

と仰っていただいて、恐縮至極である。そして
のっけの一言目から、とんでもない謎かけが発せられる。

「あのね、10割蕎麦が一番簡単なんだ!難しいのは5・5だ。」

5・5とは、蕎麦粉が5割、小麦粉が5割という意味だ。いったいどういうことか。鈴木師匠の言うところ、

「10割なら蕎麦粉の茹で時間だけ気にすればいいけど、小麦粉と蕎麦粉ではゆだる時間が違うんだよ。」

ということらしい。 むうー 蕎麦打ちではなく茹でにもそんな話があったか!

「じゃあ、打ちましょうか!」

おお!とうとう始まるぞ!ちなみに場所は、この石臼館の中にある蕎麦打ち道場である。同時に8人くらいが蕎麦をこね、打つことが出来るくらいの設備がある、まさに「蕎麦打ち虎の穴」である。


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「蕎麦碾處石臼館」
http://www.suzukiseifun.co.jp/ishiusukan/index.htm
〒990-0014 山形市大字滑川字谷地411
開館時間 9:00~ 17:00
休館日  原則として土、日 、祝日定休

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dewakaori.jpg ちなみに今回使わせていただいたのは、山形県が育種した蕎麦に最適な品種である「でわかおり(でわかおり)」だ。これも現時点ではまだ生産量が多くないため幻と言える。昨年度は天候のせいで収量も上がらなかったそうだが、今年からは大増産態勢に入るとのことで、来年度以降、でわかおりを使った旨い蕎麦が食べられるようになるだろう。

 でも、現時点では幻なんだよーん!!

さて計量した粉をこね鉢に入れ、水を加えていく。蕎麦うちはこの時点でほぼ決まると言われるくらい重要な「みずまわし」である。
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 ちなみに僕は蕎麦打ちを10回くらいしたことがある。そのうち4度は人から教わりながら。あとは自宅のボウルとテーブルでやったものだ。そして成功率(まともな蕎麦になった)のは3回程度というお粗末さ。なので、素人である。

 しかし!なんだかこの回数だけを聞いて、普及員の芳賀さん、一戸さんは僕を「できる」と勘違いしてしまったらしい。すっげープレッシャーなのであった。でも、水回しをしながら、大師匠が
「おお、10年くらい水回ししてる手つきじゃ」と言って下さった!素直に感動である。

水が蕎麦粉に浸透していくと、だんだんと粉が粒になり、粒が塊になり、と言う風にまとまってくる。そうなったら捏ね(こね)にはいるわけである。
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さて僕がこれまで失敗を重ねていたわけがここでわかるようになる。捏ねの意味を取り違えていたのだ。うどんやパンと同じように、強く揉み込んでコシを出すように刷ればいいのかと思っていた。  全然違うらしい。  蕎麦の場合は、蕎麦粉の粒子たちを「つなげる」ために捏ねるのだ。だから、手のひらで強く押し込みながら練ると、逆に粒子が離れてしまう。僕は一心不乱に練りつづけてしまった、、、

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さて捏ねてまとまった生地を台にとり、「のし」の工程に入っていく。
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最初は手で優しく伸ばし、それを麺棒で均等にひろげる。
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伸びてきたら麺棒に巻きつけ、5・4・4・3(←長くなるので説明は略します)の割合で伸していく。
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そうするとなぜかこのように真四角の美しい生地が出来上がるのである!

さて
この辺で、僕の生地はどうにもうまく伸せない! うがーーなんでだぁーーー
と悶絶する僕を尻目に、初めての蕎麦打ちにも関わらず一発で乗せてしまった一戸女子が笑っているのが下の写真である。くっそぉ~
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で、結局僕の生地はダメだった。どうしてもまとまらないのである。 うーん 大師匠すみません! しかし本日メインゲストはこの僕であるため、参集した皆さん(この時点で10人くらいいらっしゃっていた(汗))の目が僕につきささる!

絶対になんとかせねば!

「まあもう一回やってみっか。小麦粉を1割入れて、トイチ(10:1)にしよう。」

トイチとは、10割の蕎麦粉に1割の小麦粉である。大師匠いわく、

「食べてみて旨いと思うのはトイチだよ」

とのことだ。もうヤマケン、必死である。芳賀師匠(鈴木大師匠→芳賀師匠→ヤマケンという序列だ)にも教わりながらなんとか生地をまとめることができた。ふううう
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なんとか伸せた後はコマ板を使っての麺切りだ。実は麺切りは結構得意である。師匠、大師匠からもなんとか及第点をいただいた。
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しかし、師匠の切り(↓)から比べると、肩に力が入りすぎである。うーむ 蕎麦包丁買って修行しようかなぁ
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さて、完成である。あとは茹でるだけだ。うーんこんなに緊張したのは初めてです。
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さて、大師匠の奥様が茹でてくださった蕎麦が運ばれてくる。まずは僕や一戸さん、芳賀師匠が打った蕎麦から試食する。
僕のような素人が打った蕎麦でもやはり、旨い!コシが効いていて、ダシの乗りが良い、美しい味だ。
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しかし、、、
大師匠の蕎麦が運ばれてきた瞬間に、北海道の栗山町の岩崎農場にて味わった至福の蕎麦以来の衝撃が、僕を襲ったのだ。
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大師匠の蕎麦は非常に細い。山形では太めの麺を良く見かけるのだが、師匠のは江戸前でもあまり見られないほどに細い。それを何もつけずに一口すすってみる。

「ガツン」と衝撃を受けた。
蕎麦のあの香りがする! 香がするというレベルではなく、口から鼻にかけて強く蕎麦の香りが突き抜けていく!
強いコシと、角のびしっと立った切りによる口当たりは極めてシャープだ!

「これはトイチ(10:1)だよ。」

そう、師匠はこの味を10割ではなく10:1で出したのだ!正直言って10割蕎麦より旨い。ていうか、腕前はともかく、同じ作り方をしているのになんでこんなに差が出るの??

もう、びっくりなのである。

さてこの蕎麦のおかげで、やまけん人生史上の最高記録が出た!

山形が誇るでわかおりの蕎麦を9.5枚食べました

1枚100g前後だと思うので、950gだなぁ、、、
いやほんと、旨かったんです。だって幻だよ?これを逃すと食べられないんだよ?
でも、さすがの僕もしばらくは喉に蕎麦が滞留していました。
15時からの講演でこれを話したらみんな笑っていました。

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大師匠にお礼を言う。この気さくなお師匠さん、俺は大好きだ!ぜひ、腕を磨いてから、またお会いしたい。そして、今度は1日かけて、石臼で挽いた粉を蕎麦に打ち、師匠のお話を伺ってみたい、と強く思うのであった。

鈴木大師匠、ありがとうございました!
そして連れて行ってくださった山形県農業改良普及員の皆さん、ありがとうございました!
でもまだまだ山形紀行は終らないのであった、、、

Posted by yamaken at 12:58 | Comments (2) | TrackBack

2004年02月07日

山形蕎麦の時代がきっとやってくる! 山形遊行編その1 山形スタンダード「庄司屋」

shoujiya.jpg ずーっと心待ちにしつづけてきた山形出張の日である。しかも2日連続講演、従って宿泊である。仕組んだわけではない。農業改良普及所の講演を受託した翌日に、こんどは県の方から農業者向けの講演依頼をいただいたのだ。どうせなら日程を連日にしてしまおうということなのである。
 しかも今回、改良普及所も県の方も、どちらの担当者さんも僕が食倒れにしか関心がないことを よーーーーーく 知っている。 なもんで、綿密にコースをたてて頂いているのであった。

 山形といえば僕にとっては蕎麦の一言に尽きる。東京で一番旨いと思う蕎麦屋は、虎ノ門「ゆとり都山形」というアンテナショップに入っている「出羽香庵」であり、ここは山形の名店「庄司屋」が出店しているのだ。そう、今僕が一番好きなのは山形蕎麦だったりするのだ!北海道の栗山町で、粉を挽くところから初めて自分で打たせて貰って食べた蕎麦が、これまで最高の体験ではあるが、店で食べるという場合にはやはり出羽香庵が最高だ。
 そして本日、山形に足を踏み入れてすぐさま連れて行って頂くのは、この出羽香庵の本店である「庄司屋」なのだ!

 庄司屋は蕎麦好きばかりの山形市内の中でも、まず最初に名前が出てくる老舗だという。老舗といっても、山形市内だけで10件は老舗と呼ばれる店があり、それぞれに麺やつゆの個性が違うらしい。通になると「あの店の蕎麦をこの店のつゆで食べたい」などという高度な談義をするらしい。店によっては箸を刺すとそのまま直立するくらいに盛りが深い(盛りがいいということだ)蕎麦だったり、本当にいろいろらしい。そう、山形蕎麦といっても、一口には語れない、個性に富んだ食文化なのだ。
 しかし、そんな個性溢れる老舗群の中で、やはり筆頭に名が上がるのは間違いなく「庄司屋」なのだそうだ。その秘密はどこにあるのだろうか。東京の支店しかしらない僕としては、なんとしても本場のそれを味わってみたいと思っていたのだ。

 僕を庄司屋に誘ってくださったのは、県の担当者のK氏とO氏だ。どちらも勿論蕎麦好き、そしてO氏は枝豆を自分で栽培している方だ。山形駅の改札で僕を迎えてくださり、駅ビルの上にある講演会場でPCのセッティングのみ行い、すぐにタクシーで庄司屋へ。1メーターで行けてしまう距離ではあった。ちなみに山形は雪である。先週まで北海道に行っていたから、雪ナンざぁびっくりもしないやと思っていた。しかし、、、東北の雪と北海道の雪は違うんだなぁ、、、なんというか、山形の雪は「重さがある」という感じだ。北海道は横にだだっ広いが、山形は世界がタテなのだ。勢い、雪の質もタテにつもり、重さを感じるのだ。

 さて庄司屋は立派な一軒家ではあるが、老舗にありがちな観光対応ではまったくない。近在の勤め人が三々五々食べに集うという感じの、無理のない構えである。入店して板場近くの座敷に座る。
 出羽香庵ではいつも板蕎麦のみだが、ここでは相盛りがある。相盛りとは、通常のせいろと更科蕎麦のあわせ盛りだ。僕はこれに天ぷらをつけたものを頼んだ。それがこれだ。
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 ふうむ、出羽香庵のせいろ蕎麦とまた少し違う。こちらの方が細め泣きがする麺である。海苔はいらないんだけどなぁ、、、と思いながらチョンチョンとつゆにつけ、たぐりすする。文句なしに旨い!やはりこれは出羽香庵で親しんだ蕎麦である。二八くらいの割合なのだろうなぁ。のど越しよく、外見よりストロングな噛み応えを持つ蕎麦である。

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そして東京の出羽香庵には置いていない更科蕎麦をすする。これはとにかく抜けるような透き通った白色である。蕎麦の香りは当然ながら薄いが、ぷつりと潔く切れる感触が心地よい。
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さてこの時点で僕にはこの相盛り天ぷら蕎麦ではまったく「足りない」ことがわかったので、即座に「鴨汁せいろ大盛」を頼んだのであった。要するに旨いので食欲に火がついたわけである。
鴨を使った蕎麦は、生来たんぱくな蕎麦に奥行きのあるコクを与えてくれる、ベストマッチな一品であるといえる。
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鴨汁の濃さと鴨肉の厚み、ともにばっちりである。柚(ゆず)の皮が強く効き過ぎだったかもしれないが、それもまた風味があって旨い。蕎麦の盛りは僕にも満足モノであった。思い切り蕎麦をすすりこみ、噛み締める。

 そう、山形の蕎麦は、つゆにちょんとつけてすすり、噛まずに飲むという体のものではない!

 山形のそばつゆは、江戸前とは違って辛つゆではないのだ。そのまま食べて美味しい加減になっている。だから、存分につゆに浸してそばをすするのがよい。江戸前は、蕎麦を食べ進むにつれてちょうどよくなっていくくらいにチューニングされている。だから、蕎麦につゆを漬けすぎると辛くて食べられたもんじゃない(最近はそうでもないといわれているが)。噛むということについてもそうだ。山形蕎麦は、江戸前に比べると若干太めに打たれているケースをよく見かける。これは噛み締める食感を大切にしているからではないか(←思いっきり私見。)。

 だから僕は、板ソバをたべるときはもう時間をかけてもぐもぐもぐもぐもぐもぐ噛んで食べるのである。だってその方が旨いんだもーん。

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庄司屋は、やはり山形市周辺の蕎麦のスタンダードと言える店であった。安定した火力をいつでも発揮できる店だ。タクシーで1メーターだし、山形に立ち寄る方はぜひ寄って頂きたい。

このようにご満悦の表情で会場入りし、講演を務めたのであった。
そういえばますます僕の出張が「メシ食ってるだけじゃん」と疑う人がいるんだけど、ほんとに仕事してるんだよ!一応仕事場面をお見せしよう。

■ほら!僕の名前が書かれてるでしょ?
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■お客さんも160人観に来てくれてるんだよ!
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1日目はまだ終わらない。この後に続く、、、

Posted by yamaken at 22:41 | Comments (0) | TrackBack

2004年02月05日

和歌山が世界に誇る発酵食品 「なれ寿司」7種を食べ比べた県外人は俺ぐらいだろう。

narezushi.jpg 和歌山ラーメンには付き物の「早寿司」。これは、鯖(さば)の切り身を一口大の押し寿司にしたもので、和歌山のラーメン屋さんにはこれが山と積まれていて、客が会計時に食べた個数自己申告するという、おおらかなスタイルになっている。
 さてこの早寿司、何が「早い」のだろうか。名前には意味がある。早いの反対には遅いがある。そう、実はこれは対語だ。早寿司の対極には、「なれ寿司」があるのだ。

 「なれ」は「熟れ=熟成」の意を持つ。ご存知の方も多いだろうが、寿司とはもともと、魚を長期保存するために発酵させた食べ物であった。魚に塩をし、発酵を促進する米や麹などと一緒に漬け込み、乳酸発酵させたものだ。琵琶湖周辺の名物である「フナ寿司」もルーツは同じだ。

 さて和歌山県の「熟れ寿司」には、当然ながら鯖が使われる。鯖に塩をして下漬けする。これを、ぎゅうぎゅうに押し固めて空気を抜いた飯の上に乗せ、重石を載せて発酵させる。押し固めて重石を載せるのは、空気を出来るだけ抜いて嫌気性発酵させるためだ。この辺の詳しい事情は、僕が敬愛してやまない、東京農大の小泉武夫教授の著書を読んでいただきたい。彼は世界随一の熟れ寿司文化探検家である

 とにかくこうしてできた熟れ寿司は長期保存可能な食品となる。特徴はとてもわかりやすい。「におい」である。とにかく、初心者には手におえないにおいであると言ってよい。僕も発酵食品は大好きで、たいていのものは美味しく食べられる。けれども時々「こいつぁダメだ!」と唸るものに出会うこともある。
 けど、フナ寿司は大好きだし、熟れ寿司も大丈夫なはず、と思っていた。そう、何だかんだ講釈をたれたが、実はいままで手に入らなくて食べたことが無いのである。

 以前、和歌山の農業者さんたちに講演をさせていただいたことがある。その講演後、予算をやりくりして、みなさんがぼくに熟れ寿司を買ってくださると言う。もちろん所望したわけなんだが、、、車を飛ばして老舗といわれるところに行くと、その普通の民家のような店のおっちゃんが「熟れ寿司はちょうど切れてて、早寿司しかない」という。そのときは仕方が無いので早寿司を20本買い求め、電車の中で5本食べ、家で10本食べ、会社に5本だけ「お土産だよぉ」と言って持っていった。

 そんなわけで今回初めて食べたのだ!

 食べさせてくださったのは、名前はいえないが僕の和歌山で最大級に敬愛する友人T氏である。このT氏が、熟れ寿司を食べたいという僕のリクエストを訊いて、なんと5種類の熟れ寿司を用意してくれたのである!買い求めに行ってくれたのは彼の美しい嫁はんである。

みよ!和歌山を代表する(と思われる)熟れ寿司、早寿司のラインナップである!

7shu.jpg
この中で本当の熟れ寿司は3本。有名な「弥助寿司」と「丸正(だったかな?)」そして「八つ房」のものである。その他は早寿司だ。

これらの熟れ寿司&はや寿司を買いに行った奥さんがコロコロと笑いながら言う。

「お店の人がね、『あのね、これはとぉっても臭くて、奥さんみたいな若い女の子はよう食べられんと思うよ』って言うんですよぉ。自分が売ってる商品なのにねぇ、、、」

そう、売り込みかけるどころか「大丈夫?ほんまに大丈夫?」と訊かれまくったという代物なのだ。面白すぎる!実はこの熟れ寿司、和歌山で出会う人たちに片っ端から聞いても、20代の人たちは一様に「食べたこと無いんです」という。T氏はかろうじて、おばあちゃんちで作っているのを食べていたそうだが、「やっぱり臭かったですよ」とのことだ。ますます興味深い。

さて何はともあれ食べてみたい。3種の「熟れ」を切ってみる。「弥助」の熟れ寿司を切ろうとビニールをはずす。店の人が「におうからねぇ」と厳重にラップを巻いてくれたそうだ。紙の包みをとると、アセという葉に包まれた棒寿司が出てくる。
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もうこの時点で、あたりには異臭が漂っている。それもそのはずで、空気に触れやすい面は発酵が進んでこんなドロドロ状態である。
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 あたりに漂うのは、匂いというより「臭い」という感じで称したほうがいいだろう。本当に臭い。まさに異臭である。友人T氏は「くっさぁ~」と避難している。これを奥さんが全メーカー分一口大に切り、皿に取り分ける。
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おそらくこんな感じで多種の熟れ寿司、はや寿司を食べ比べると言うのは、和歌山に居てもないことだろうなぁ。なんという贅沢か。

 さて ソファにすわり、T氏と共に思い切って口に運ぶ。瞬間、未曾有の体験が僕を襲った。

すんげぇ 臭いである。

強烈の一言だ。

この瞬間のT氏を写した2枚の写真を見ればそのショックはわかると思う。

■これが、口に入れた瞬間。
T1.jpg

■臭いが鼻に回った瞬間。
T2.jpg

きっとフナ寿司と同じようなすっぱい発酵なんだろうと思ったのだが、淡水魚のフナと海の鯖とでは、動物性蛋白のありようが全く違うらしい。鯖はむちゃくちゃに複雑にしてストロングな臭いを発生させると見える。

しかし、、、臭い臭いというだけではない。非常に高度にして複雑な味がある。いや、まさしくこれは旨い、と3種の熟れを食べて思うようになった。
弥助寿司の熟れは、かなり発酵がキツイ。鯖の切り身を下に当てるとピリっとやばそうな刺激がくるくらいに熟れているのだ!対して八つ房の熟れは非常に上品。発酵臭はするものの、食べやすい。丸正はその中庸の位置か。

ここでびっくりしたことがある。熟れ3種を食べた後に、それぞれのメーカーの早寿司を食べたのだ。ゆっくりかんだ瞬間、T氏と僕は顔を見合わせた。

「味が無い。」

 そう、あまりにストロングな味を咀嚼していたためか、舌の感覚のダイナミックレンジが極限まで拡がった状態が出来上がったのだ。複雑な旨味の織り成す技だ。で、その直後に、発酵を経ていない、シンプルな味付けの早寿司を食べたものだから、味の要素が感じにくくなってしまったのだ。これはT氏も同意見。てことは、やっぱり熟れ寿司って豪華なものなのだ!
 いや本当にびっくりした。

 この熟れ寿司&早寿司、全部ぼくが持ち帰りさせていただいた。その後1週間、毎日食べました。もうこの味、香りに馴れてしまって、刺激がすごく心地よい。ビギナーには進められないが、、、

 もし和歌山を旅することがあったら、ぜひ街の人に聞いて熟れ寿司を買って帰ってみて欲しい。すぐに月と同じくらいの距離に飛び出せることを請合おう。でも、本当に美味しいよ!こういう複雑な旨味を、たまには舌に刺激として与えないと、正常にして繊細な味覚は出来ないと思う。とても高度な味わいだと、この熟れ寿司については断定したいと思う。

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2004年02月04日

「うすいえんどう」を知ってますか

usuiendou.jpg 出張の合間に料理をする。そうでないと気が狂う。
さて関西の人には表題のような質問をしても「何いうてんの」と笑われるだけだろう。けど、関東の人はおそらくこの名前をほとんど知らないのではないか。

「うすいえんどう」

もちろんえんどう豆の一種だ。さやごと食べる鞘豆とは違い、グリーンピースのように肥大した中の豆を加熱して食べるものだ。関西の「豆ご飯」は、このうすいえんどうを使ったものである。その味わいは、グリーンピースよりも絶対的に繊細で、甘味がある。

 産地として有名なのは和歌山県だ。和歌山の人はこのうすいえんどうの話をすると、急に遠い目つきになって、

「あれをね、卵とじにすると美味しいんよぉ、、、」

などと仰る。これを、和歌山出張のついでに買ってきた。無論、豆ご飯を作るのである。


豆ご飯の作り方はそれほど難しくないが、絶対はずせないポイントがある。

1.豆はご飯と一緒に炊いたほうが、見た目は悪いが旨い。
 ご飯と炊くとどうしても色味が悪くなるので、別に塩湯でして炊きたてご飯に混ぜると言う人も居るが、僕は一緒に炊いたほうが、豆の味がご飯に移って旨いと思う。

そしてもう一つ、これが実に重要なのだが、

2.豆をとった鞘(さや)を茹でてダシをとり、このダシでご飯を炊くこと。
 これを言うと皆びっくりするのだが、、、本当の話である。

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■鞘から豆をはずす
saya.jpg

むいた豆は、薄めの塩水につけて下味をつける。

■鞘を茹でてダシをとる
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中火でゆっくり煮込んで豆の味を出し尽くす。途中、味見をしてみると、びっくりするような甘い、いいダシが出ているはずだ。

■材料が揃う
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写真の下のグラスに湛えられたダシを見て欲しい。こんなえんどう豆色になるのだ。
これでご飯を炊くだけだ。今回は秋田県「ひろっきー」のミルキークイーンで炊いてみた。

■炊く
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水加減は豆がある分、少し多めにしたほうがいいだろう。それと、鞘からとったダシには当分が含まれているため、ガス火で炊くと焦げやすいので注意。僕のは小型のお釜なのでコゲがしっかりと出来た。

あとは、食べるだけだ

mamegohan2.jpg

ご飯に豆の甘さと緑々しい香りが鼻腔を抜けていく。豆はほくほくとして、淡い味わいだ。決してキラーアプリケーションではないが、本当にほっとする料理なんである。

和歌山県のうすいえんどうは旨い!
ご馳走様でした!

Posted by yamaken at 23:22 | Comments (8) | TrackBack

2004年02月02日

ジビエの快楽に酔いしれる その2 「カストール」

jpg さて、この季節に絶対に一度は訪れ、鴨を食べる店があるということは以前にも書いた。代々木上原の「カストール」である。いつも藤野シェフに鴨が入手できたかどうか、そして熟成度合いが一番よくなるのはいつ頃かということを伺って、ベストタイミングを見極めて食事に行くのだ。
 今年は鳥インフルエンザの影響もあって、この前のシエラザードのエントリで書いたように、野鴨の入手が困難だ。しかしここでは新潟の信頼おける猟師さんとの付き合いがあるので、きちんとしたものが手に入る。今年初めての鴨を食べに行こうと、気合を入れて体調を整えたのであった。

 店に入るとすぐに、サービスの浅利さんと椎名さんが暖かく迎えて下さる。でもって、シェフもすぐに厨房から出てきて一言、
「あんなに寿司ばっかり食べてちゃダメですよ(笑)」
シェフ、今度一緒に行きましょう。

 本日は鴨のメインは決まっているが、その前に素晴らしい2皿を堪能することができた、、、
先ず案内されたのはタラの白子だ。お分かりだろう、北海道で「これでもか!」という旨い白子をいただいてきた身に、フレンチの技法で切り込んでいただけるのだ。うーむ
 そしてもう一皿、、、
「とてもいいトリュフが入手できました。これとフォアグラをあわせてパイ包みにしたものを、、、」
と言って浅利さんが持ってきてくださったのがこのトリュフだ!
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ずしっと大きく存在感のあるトリュフが、強く馥郁(ふくいく)たる香りを漂わせている。こんなにもトリュフの香りを味わったのは初めてかもしれない。ヤラレタ。この2品双方をいただくことにする。
 ハウスワインをいただきながら待っていると、世にも美しい色彩の立体絵画が運ばれてきたのであった。
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 美しいだろう?白子は軽くソテーし、オーブンで中心に火が通るか通らないかの絶妙な加減で熱を入れてある。鮮やかなトマトソースとオリーブオイルのソースに白子を乗せ、上にリーキ(西洋ネギ)の細切りを揚げたものを載せている。
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 ナイフを入れると、堪らず内からトロリと白子が溶出する。これをソースにからめ、揚げリーキをのせて口に運ぶ。むせ返りそうになるほど濃厚な白子に、ソースと添え物が豊かな響きを与えている。北海道で食べた白子(タチ)の寿司が馬頭琴による孤高の独奏の趣だとすれば、この一皿は伸びやかに相乗し合う弦楽四重奏だと言えるだろう。

 さてこの夢のひと時をさらに深くさせる一皿が運ばれてきた。このシンプルなミートパイ然とした外見を先ずは見て欲しい。
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「では、ソースをかけますので、ナイフを中央に入れていただけますか?」

 浅利さんが脇について、僕がナイフを入れるタイミングで、銅鍋に湛えた暖かなソースをパイの内側に注いでくれる。
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※注)本来、鍋の底を客前に向けることはしてはならないことですが、絵柄を考え、無理を言って浅利さんにこういう向きでソースをかけて頂きました。

 内を切り開くと、フォアグラの厚い層に、トリュフを贅沢に敷いているのが顔を出す。パイを切り、ソースによくからめて口に運ぶと、第三の素材が顔を出した。ジャガイモのマッシュが、フォアグラの脂と旨味、トリュフの幻惑的な香りを吸い込んで、ねっとりと舌にまとわりついてくるのだ。
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美味」とはこういう料理を言うのだろう。それ以上の美辞麗句を並べるのは野暮天というものだ。

 正直言ってもうこの時点で相当に満足している。でも、本日はメインイベントがあるのだ。野生のパワーをいただく一皿。野鴨である。
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 この凝縮された世界観を見て欲しい。手前に長く切りそろえた抱き身と、奥右手にはパートフィロで包んだもも肉、砂肝、ハツと小麦。左手には付け合せとしてアンディーブのソテーだ。定番のソースサルミには、ヤマケン対策でもある肝(レバー)が溶かし込まれ、ただただコク味を増している。堪らず抱き身にソースをまとわせ、かぶりつく。濃い芳香と血の風味、ワイン色の力をゆっくりと咀嚼し、嚥下する。
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パートフィロを破ると、適度に火の通ったもも肉とモツ群が顔を出す。これらはかみ締めるほどに弾力を見せ、旨味を染み出させてくる。

 望外、というものだろう。本当に期待したのを上回る感動を与えてくれるコースである。
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 今回は僕らが最後の客だったこともあってか、早々にシェフが「どうでした?」と出てきてくださる。本日の同行は、新しく連載を書くことになった「やさい畑」編集の方である。ひとしきり日本の野菜談義に花を咲かせる。いずれ、藤野シェフにも僕のこの連載にからんでいただきたいとお願いする。シェフは、ただにこやかに笑っておられた。
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 この短い期間に、鹿と野鴨という二種のジビエをいただくことが出来た。書店のグルメコーナーを見ると、ジビエ特集をしている雑誌がある。いろんな店で面白い皿を出しているらしい。幸いなるかな、僕にはすでに基点となる店が二つもある。ここをベースにしながら、たまにはこの領域をちょっと出て、散歩をしてみようと、思う。

 ジビエの季節は長くない。染井吉野が咲く前までに、もう2回くらい、その生命をいただけるだろうか。
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Posted by yamaken at 10:38 | Comments (7) | TrackBack

2004年02月01日

ジビエの快楽に酔いしれる その1 三浦・横須賀の地域密着凄腕フレンチ 「シエラザード」

 出張の合間だが、毎年の儀式を行う。それはこの時期最高に美味しくなるジビエの賞味だ。ジビエでは鴨が一番好きなのだが、鹿も好き。ウズラも癖があると言うけど好き。ウサギ大好き。とにかく冬のジビエと赤ワインは、毎年の儀式だ。野生のパワーをいただくことで、自分の内なる魂に活を入れるという感じなのだ。その際に生じるエネルギーは、なにもジビエ本体だけから発するものではない。そこにシェフの技巧と魂が乗じられることによって、ジビエが「料理」に昇華するのだ。そうして生まれた一皿を味わうためには自分の体調も完全に整えて、真剣に皿と対峙するというのが、客の立場に求められる姿勢だろう。そうしてこそ、ジビエを味わう感動を十二分に堪能できるのだ。

 そんな至福の時を、この冬すでに2回迎えてしまった。今回はその2店を紹介させて頂きたい。



2004年1月18日

 ご存じだろうか。首都圏でも有数の旨い物極楽地帯が三浦半島であることを

 私の友人である山口さんがやっている三浦半島まるかじり クック&ダインというインターネットショップを覗いてみればお分かりの通り、通が唸る、マニアが喜ぶ旨いアイテムがぞろりと並んでいるのだ。農産物について言えば、キャベツと大根の大産地であることが有名だ。極めて豊穣な三浦の台地の土壌で育てられた三浦大根は、煮物に最高の一品である。この三浦・横須賀地域において何か食べたいと思うのであれば、先のクック&ダインにも登場する長島農園の野菜をお薦めする。元々クック&ダインに長島農園を紹介したのは僕だったりするのダ!
けどその辺の話は、このエントリでは長くなるのでまたいつか紹介することにしよう。

 で、三浦から山一つ超えた横須賀に居るわけだ。横須賀といえば港町というイメージだろうが、内側に入れば山と農地が街道沿いに点在している。YRP野比という駅からYRP(横須賀リサーチパーク)に向かう途中に、長島農園がある。現在跡取りとしてメインに働く勝美君は僕の1つ下の31才。見た目はおとなしそうだが、実はドイツ人の美人嫁さんをぶんどったどう猛な豪傑だ。

 本日は、この長島農園に、雑誌「農耕と園芸」の連載企画の一環として気象ロボットを設置しにきたのだ。気象ロボットは、北海道の素晴らしき気象情報企業であるアグリウェザー社の横山社長さんが進呈して下さったのだ。この会社が本当に素晴らしくて、通常は250万円くらいする気象ロボットを、同等の精度で40万円以下で販売できるような商品を開発したのだ。それを一台長島農園に設置して下さるという。なんともありがたい。下の画像がその設置風景だ。
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 この気象ロボット関連の顛末については連載でも書くし、紙面に書けないことはblogでも書いていこうと思うので、興味のある方は連絡して下さい。

 さて、アグリウェザー社の横山社長さんには、せっかく北海道から出てきて頂いたので、地元の美味しいものをご馳走したい。実は長島農園のある「長沢」という地区からすぐのところに絶品のフレンチを出すレストランがある。店は小さいが、これは本当にビックリするくらいの凄腕シェフの料理が楽しめるのだ。

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■シエラザード
http://www.sceherazade.com/
(↑今このWeb見たけど、なんとぶっきらぼうなページなんだろう。店の外観や地図さえ載っていないゾ。もったいない。)

神奈川県横須賀市長沢6-29-1
046-849-6649
月曜日定休

ランチ:1800円~
ディナー:4000円~

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 道路沿いに畑や住宅、学校などが点在する中、ひょっこりと欧風の店構えのシエラザードがある。欧風なのは当たり前で、実はマダムの森川さんは、国籍をオーストリアに移している。つまりヨーロッパの人なんである。このマダムと、新進気鋭の伊崎 至シェフがタッグを組んで営んでいるのが、この店である。

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 テーブル4客に広めのカウンターの店内は、調度も美しく落ち着いた雰囲気だ。マダムのセンスだろうが、落ち着いたゴージャスさを気持ちよく味わえる。今日はもちろんかぶりつきでカウンターに座らせて頂く。長島君を通じて、我々仕様にスペシャルランチをオーダーして頂いているので、楽しみだ、、、
 ただし、僕から長島君経由で鴨を所望していたのだが、一連の鳥インフルエンザの騒ぎで鴨が出荷できない状態になっているらしく「どうしても手に入らない」ということだった。今回はやっとの思いで入手できた鹿を食べさせてくれるという。鹿も勿論大好きだから全く問題はないのであった。

 ボディのずっしりした赤ワインをとり、ブーケを楽しんでいると、一皿目が運ばれてきた。
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 北海道のホタテと長島農園の野菜を合わせた一皿。と言えば簡単だが、、、ホタテの鮮度は最高。シェフがさっき、オーブンに入れる寸前に殻から身を外しているのが見えたのだ。野菜は二種のカリフラワーと菜花だ。ホタテからのスープだけではなく、おそらくフィメ・ド・ポワソンだろうか、滋味溢れるスープで汁気の多い一皿に仕立てている。そしてこれを、北海道から来た(笑)横山さんが食べて唸っている。
「うーむ、、、美味しいですねぇ、、、北海道でもこんなに美味しい料理はそうそう、、、」
この一品、見事なホタテの分厚い貝柱も素晴らしいが、それ以上に肝やヒモといった、付き物が実に旨い。肝のほくほくとした食感と深く濃い味わい、そして柱以上に旨味の濃いヒモを、長島農園の野菜と堪能。とくにあまり出回っていないグリーンのカリフラワーを、絶妙のトロトロ加減に火を通してソースに仕立てているのが憎いのである。

そして、三浦・横須賀地域ならではの一皿が運ばれてくる。

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 神奈川が世界に誇る大根品種である「三浦大根」をコンソメで煮、中をくり抜いて蟹のフィリングを詰め、上にオランデーズ系のソースをかけてグリルし焦げ目をつけたものだ。まずその美しいフォルムにため息が出る。
 三浦大根は、一般的な青首とは違って、大根の真ん中が太くなっている品種。従って、引っ張って抜こうとするとその真ん中部分がつかえて抜きにくいので、この三浦以外では生産されていない。しかし、年末から2月にかけて旨くなるこの大根は煮物にした時に最高のパフォーマンスを発揮する。みっちりと密に詰まった果肉と細胞組織は、スープを吸ってもまったく崩れず、絶妙の柔らかさとホッコリシャックリとした食感を抱き合わせで魅せてくれるのだ。
 その三浦大根の絶妙な旨さを味わうにピッタリな料理だ。この大根を割ると、こうなる↓
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どうダ!?

 もう、最高のプレゼンテーションである。コンソメを十分に吸った大根に甘い蟹のフィリングを載せ、カスタード然としたソースを塗っていただく。これこそ「滋味」というべき味なのだ。噛んだ瞬間にトロリと崩れる、その絶妙な食感と、蟹の香り。そこに濃厚さを与えるソースのコンビネーションは、本当に素晴らしい。
 ただ、僕はこの土台となる大根にもう少しコクのあるスープを合わせた方が好きかも知れない。フォンドボーだとおごり過ぎかも知れないが。大根は、素直にスープの特性を反映する。コンソメだとお澄まし風の上品な大根が味わえるが、イノシン酸中心の旨味だけでは少し平板かとも思った。何らかの形でグルタミン酸系の旨味や油分を合わせると、また違う味空間になるだろうと思った。いや、これは単に好みの問題なんだが。うん、また食ってみたい。

 さて
 この時点で大技が出てくる。ウサギとフォアグラである。

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 ウサギの部位はなんて言うかわからないが、筋繊維のまっただ中と思われる切り身と、長島農園の蕪(カブ)、その下にソテーされたフォアグラが敷いてあり、最後にほうれん草のソテーが全体の土台となっている。これに濃いめの赤ワインソースがかけて供されている。ソースの濃度、味と香りの立ち方、共に最高である。シェフのお若さからか、強い前進力を感じるソースなのである。ウサギの淡泊にしてきめ細かい味わいと、対照的に濃厚なフォアグラ。爽やかなカブの甘さと香り、そしてほうれん草のトロ味が素晴らしい。一点、ウサギ肉が少し冷めていたことだけが気になったが総体として実に素晴らしい!実に冬の恵みと言える一皿だ。一同、しばし無言で咀嚼し続ける。

 そう、このシエラザード、農産物流通を生業としている僕がみても、実に皿から感じ取れる季節感が自然だ。それは、極めて単純にして恵まれた理由で、その時期その場所で獲れるものを使って料理をしているからだと思う。年間に120品目を作付けする長島農園が近くにあるので、シェフも農園に通い、その時期に収穫できる野菜を受け取ってメニューを組み立てている。また三浦横須賀が漁港町であることは言うまでもない。長井漁港までひとっ走りの立地であり、最高のものが手に入りやすいわけだ。これ以上に自然を表現できる方法はない。さっきから、今一番旨いと思う食材が出てきている。この店がこの立地にあるから出来ることの一つではないだろうか。

 さて、皿は進む。この段階でウサギとフォアグラが出てきて、次はどうなるのかと思ったら、ビックリしたことに大技が出てきた。
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 黒アワビである。この美しさにしばし圧倒される。僕はアワビについては生ではなく蒸しか煮たものが好きだ。そしてここのアワビは、どうやら蒸してある。カウンターからつぶさに観察できる調理場には、中華に使われる蒸籠(せいろ)が積んであるのだ。旨味を素材から逃さず柔らかな火を入れていく最高の技術である蒸しで供されたアワビに、ネットリと絡まる濃厚なブールブランソースが素晴らしい合わせ技である。モッチリムッチリとしたアワビの食感は絶妙だ。どれくらい火を通したらこんな魅惑的な食感になるんだろうか。本当に素晴らしい。これがメインと言い切ってしまっても十分に満足してしまう一皿だ。

 しかし、メインは別にあるのだった。そう、鹿である。この美しいプレゼンテーションを見て欲しい。僕はこの凝縮された世界観を崩したくなく、見ほれてしまった。デジカメの枚数もこの皿が一番多い。
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「業者が、鴨がどうしても手に入らないから鹿で、というのでそうしたけど、なかなかいい肉でした。」

という通り、すばらしい熟成加減の鹿だった。蝦夷鹿は何回もいただいているが、今回の鹿は深いワイン色のレア部に、芳醇旨口なトロリとした味わいが乗っている。ソースサルミには、

「もう昨日から鹿の骨をローストして、フォンにとっていたものを使ってます。本当はもっと時間をかけて煮出したかったんだけど、入手自体が遅かったから、時間切れ。」

というが、実に旨かったですよ!いやビックリである。本当にこのシェフのソースの尖り加減は僕好みだ。そして、付け合わせを見て欲しい。スペイン風オムレツときんぴらゴボウである。醤油は使っていないだろうけど、、、これは実に正解。この時期最も旨い食材はゴボウとニンジンと大根とほうれん草。ここではゴボウとニンジン、それを鹿肉に合わせるとは最高な相性だ。油によって香りと味わいが引き出され、素材の色が滲み出ている。これとソースサルミ、肉のコンビネーションが全く持って素晴らしい。今度はきちんと時間をかけて準備できる時に、また食べさせて欲しいと強く願う。
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 デザートをいただきながらマダムとシェフとお話。マダムが実に面白い人生を送ってこられた方で、思わず欧州話に聞き入ってしまう。
 デザートも二品。プリンとアイスクリームとパイだ。もう、満腹の一言である。

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 このような凄まじいコースをいただき(しかも昼から!)、ワインも一本空けて、勘定書はビックリするほどの安さだった。けど、おそらくは長島農園を意識して頂いた特別価格だろうと思うので、ここでは控えさせて頂こう。でも、おそらく確実に都心で食べるよりは安いと思うゾ。

 最後にシェフが言っていた。

「本当はねぇ、やっぱり東京で勝負したくなってきましたよ。もうちょっと力をつけて、出てみようかなって感じです。」

マダムも言う。

「そうよぉ だってそうじゃなきゃつまらないもの。」

でも!

 この三浦・横須賀という地域に店があるということは、素晴らしい重要なポイントになっていると思う。東京進出の際にも、ぜひこの地物の仕入ルートは手放さずにやって言って頂きたいと切に願うのであった。

 こうして今年初めてのジビエの楽しみが過ぎていったのである。

(更にこの項、続く、、、)

Posted by yamaken at 12:32 | Comments (3) | TrackBack