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2003年07月08日

大阪心斎橋で、小粋な割烹に心酔した

##0本日は大阪の市場に出張。

友人と夜、心斎橋の「大阪料理」を標榜する「浅野」に入店。
「この店は俺の中でも重要なやつとしかこんところよ」とのこと。ありがたし。
3階建ての小綺麗なビルで、全ての階が清潔感溢れる割烹作り。個室に通されると、まずは置かれてある品書きにびっくり。B4サイズの紙を2枚横向きに張り合わせた横長の紙いっぱいにびっしりと料理が並んでいる。それも「イカの海胆まきおつくり」や、「グジの唐揚げ野菜あんかけ」などが、小椀手の込んだ料理ばかりだ。これらが、小ぶりの椀に少なめに盛られて出てくるという趣向だ。料理が出てくるまでが圧倒的に早いため、出されたものを楽しみながら次を考えることができる。

食べたもの(特に旨かったものには*を付けている):
コチ薄造り
関さばお造り*
イカの海胆まき造り*
のど黒煮付け
カラスミと大根サラダ
さえずりと青菜煮*
鯛の納豆蒸し*
鱧の焼き霜造り肝ポン酢添え
スッポンのスープ煮*
レンコンまんじゅう*
グジの唐揚げ野菜あんかけ
穴子と茄子のおろし煮
合鴨中国菜くず煮
冷やし白ズイキ
イカとワケギのぬた*
水茄子浅漬け
納豆雑炊*

うーん半分以上が「特に旨い」ではないか。そう、つまりはほとんどが旨いのである!お造りはとりあえずあまり*をつけていないが、実はどれも鮮度抜群にして、お造りのそぎ方も適度でスバラシカッタ!醤油も魚に合わせて変えており(関サバには甘めの醤油、淡白なコチには濃い口というように)、仕事の繊細さが見えた。
また、出汁の精緻な味わいにも吃驚した。やはり関西の上品な出汁なのだが、例えば殆ど味の無いズイキには出汁がほのかに香るくらいのぎりぎりの線で出汁を含ませている。しかし透明感がありながらきっちりと仕事の余韻を残すことろが「大阪料理」の所以なのだろう。文句なしに旨い。
いや、正直言って勘定についてわからん。ご馳走になってしまった。これだけ食べたら相当いっただろうなぁ、、、ごっそさん。


14:29 | Comments (1)

2003年08月27日

北海道帯広にて伝説に残りそうな食い倒れをする

念願の帯広の農協への出張。体調は万全に整っている。帯広の旨いものと言えば、一も二もなく豚丼である。豚丼、、、単に少し厚めの肩ロース豚肉を焼き、甘辛いタレで少し煮詰め、それを飯の上に並べるだけのものである。しかし、こいつがすこぶる旨い!
初めてこれを食べたのは、ある懸賞論文コンクールで同席した酪農家と友人になり、家に遊びに行かせてもらった時のことだ。この辺では豚丼が旨いんだぁ、という友人に連れられて行ったのは、何の変哲もない食堂。だまされてるなぁと思いながら運ばれてきた豚丼を一口食べて、あまりの旨さにのけぞった。以来、周りの人間が帯広へ行くときにはかならず市販の豚丼のタレを買ってきてもらっている。しかし、あの味には及ばない。そして4年がすぎたのである。

4年ぶりの帯広空港。空港2階の食堂「白樺」は、レトロな百貨店食堂のような飾り気のないたたずまいにも関わらず、カツ丼1000円というように強気の価格設定の店だ。ここに当然豚丼がある。ちょうど羽田発が早朝だったこともあり、朝食をとっていないので、開店したてのこの食堂で小手調べである。

1食目:
帯広空港 二階食堂 「白樺」
豚丼 900円
butadon1.jpg

久しぶりに相まみえる豚丼は、色の濃いねっとりチャコール系の豚であった。人工的につきささる赤い紅生姜とキューリのキューちゃん、味噌汁のセットだ。これが予想外に旨い!空港の食堂とたかをくくっていたのだが、なんとも深い豚丼のタレである。しかも意外なのだが、いつもは手を着けないキューリのキューちゃんと豚丼の相性が最高なのである。びっくりした、、、10時30分のブランチとしては非常に秀逸。これから帯広空港ではかなり楽しめること間違いない。しかし、隣席でおばちゃんが食べていたカレーからもかなり良い芳香が。気になる、、、後ろ髪引かれつつ、仕事へ。


仕事先のJAで昼飯に連れていってもらう。この辺はそばも旨い、ということで近くの蕎麦屋へ。JAの人に「この辺でしかないものってなんでしょうねぇ?」と聞くが、いつものごとく「いや、特に変わったものはないよぉ」という。こういうケースは非常に多い。でもこういう発言を鵜呑みにしてはいけない。地元の人はいつも食べているから「変わったもの」という感覚がないけど、外の人から見れば「ええええっ?」というものは結構多いのだ。案の定、帯広周辺の蕎麦では「とりごぼう蕎麦」という定番があるのだった。温かい汁で鳥とゴボウを煮た蕎麦なのだが、これがしみじみ旨いという。当然ながらそれをオーダーするのだが、品書きに豚丼の文字発見。朝(というかブランチ)に引き続き無性に食いたくなる。だって帯広にこられるチャンスはそうない!
ということで豚丼もオーダー。JAの職員さんがこの私の食欲に大笑いして、「だったらあんた、蕎麦に天ぷらものっけなさいよ!」という。すさまじい食卓になった。

二食目:
幕別町 蕎麦「いつき」
とりごぼう・天ぷら蕎麦 700円
豚丼 700円
butadon2.jpg

まず豚丼が運ばれてくる。空港食堂よりあっさり風味だが、家庭の味に近く旨い。なぜだろうか豚丼は、牛丼よりもお腹へのインパクトが薄いように思う。どんぶり一杯食べても、それほどもたれないのだ。豚丼を片づけると同時にとりごぼう天ぷら蕎麦がくる。
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こっちのほうの蕎麦のかけづゆは、北国だからだろうか、とても色濃く甘め。そこにごぼうの風味と鳥の出汁が出て、美味なるものだ。蕎麦は精白度の低い、これまた濃厚な麺であり、つゆとマッチしている。実に滋味あふれており、さらっと食べ終えてしまうとJAのみなさんから拍手がおきる。
後で言われたが、「あんた、大したもんだ。記憶に残る人ってのはそういないけど、あの食べっぷりであんたは俺の気を大きく引いたよ」
食は身を助くのだ。
「これは、夜も下手なところには連れていけんなぁ~」
と期待を残しつつ会議終了。いったんホテルに帰り、夕刻に迎えにきていただくことになる。


ホテルから車で帯広の繁華街まで30分。入ったのは韓国料理の「あんじゅ」。ここでは詳細は述べない。一人4000円というコースで、おびただしい量の肉が運ばれてくるのだ。

タン塩
ネギタン塩
豚トロカルビ
上ロースぶつ切り
ハラミ
上カルビ
魚貝(えび、ホタテ、イカ)
焼き野菜
モツ(シロ、コブクロ、レバー、テッチャン)
ネギと小エビのチジミ
イカの辛味噌炒め
ビビンパ
豆腐チゲ

これらの中で圧倒的迫力説得力を振りまいていたのが、上ロースぶつ切りだ。並のステーキ二枚重ねた厚さのロースの表面をこんがり焼き、はさみでぶった切ってかぶりつくのだ。肉を喰う、、、という気分が最高に高揚する一瞬。しかしこれだけの量、1人どう考えても500gは肉を食べないと喰い終わらない。最後の方は必然的に俺だけが箸と口を動かしていた。
JAのAさんの一言。「十勝にきたら、肉食うのが一番お得だよ」
まったくその通りです。
yakiniku.jpg

場所をクラブに変えて飲む。おいらは隣に女の子がいても全然嬉しくないので、とにかく旨い店の情報を訊いて、箸袋の裏に書き付ける。おっとデジカメを焼き肉やに置き忘れた、ということで取りに行こうとすると、JAのOさんが一緒についてきてくれる。無事カメラを受け取り、店まで帰る通りに、かなり気を引く小径が。路地裏というのは人の気を引くのだ。「ここの蕎麦が旨いんですよ!」
Oさんがいう。ああ、Oさんやっぱり俺の性格をしらない、、、
「じゃあ食っていきましょう」
入店、ざるを一枚。旨い!なぜかここは麺にクロレラを打ち込んでいるということで緑がかった麺なのだ。
(続く)

 まだまだ終わらないのだが、ちょっと待って。このあと2食も食べます、、、

22:48 | Comments (2)

北海道帯広にて伝説に残りそうな食い倒れをする(その2)

 さて、帯広の夜はまだ終わらないのだ。
JAの職員さんに連れられていったのは、必殺のみどり色の蕎麦が出るという蕎麦屋さん(名前忘れた!)だ。一体、緑色の麺とは何か?10月の新蕎麦の季節には、水分含有量の問題か、うっすらと青みがかった蕎麦に出会えるが、この時期そんなはずはない。

ざるを頼んで出てきたのを観ると確かに緑色だ! ↓
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仕掛けは、蕎麦を打つ際のつなぎだった。店のおばちゃんが出てきてニコニコと教えてくれる。
「うちじゃあ健康のためにも、クロレラを入れてるのよぉ」
そうかクロレラか!でも、別に風味にはあまり影響がないな。
このおばちゃん、ほっといたらいつまでも話していそうな、いいおばちゃんだ。俺好みである。
soba2.jpg
でもクラブに残っている人たちをあまり待たせても都合が悪いので席を立つ。

クラブに戻ると、みないい感じで酔っぱらっている。
「おう山ちゃん!ラーメン行くぞラーメン!」
焼き肉を死ぬほど摂取した後に蕎麦をすすってきて、すぐにラーメンである。おそらく俺以外の人には捌ききれまい。連れて行ってくれたのは、北海道なのになぜか「八丁堀」という名前の横町。ここに名店「頓珍館(とんちんかん)」がある。
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「とにかくよぉ、ここのじいさんがよ、今にも死にそうにブルブルふるえながら作ってくれるラーメンが旨いんだ!」

それは旨そうだ。いや、旨くなくても食べてみたい!
ということで店に入る。確かにここのじいさんは、今にも消え入りそうなのに、なぜか光る存在感を醸している!
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醤油ラーメンを頼む。厨房を覗いていると、なんだか麺を茹でる鍋が、余り大きくない。嫌な予感がした。麺は多量の湯に泳がせないと、うまく茹で上がらないものだ。生茹でヌチャヌチャ麺はゴメンだな、、、と、この時点ではちょっと失望した。と、じいさんが麺を3玉のみ投入し、やおら鍋を菜箸で一定方向へかき回し始める。もしかしたらこれは計算尽くの方式なのかもしれない。と、2分程度で茹で完了。 早っ! スープの鍋も小さい。丼にスープを張り、麺を盛り整える。出てきた醤油ラーメンはオーソドックスな面構え。一口すすって驚いた。旨い!
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鶏ガラベースのあっさりめのスープだが、きちんと味がでている。化学調味料もあまり使われていない。心配していた麺だが、若干柔らかめではあるものの、それが最適化されたゆで加減であると思える、絶妙のバランスだ。メンマ、チャーシュー、麩、ネギという具の分量と味も言うことがない。何より、嫌なインパクトがないのだ。和食のようなラーメンだと言いたい。
「いやー旨い旨い!」
「何だ山ちゃん、もう一杯食べるかい?」
いや無理無理、、、と思ったら、なんと同行の女性が「私もう食べられない」といって、塩ラーメンのほぼ1杯分をこちらに寄越す。うわー でも塩か。食ってみよう。

食べてみた。美味しかった。

(以下、醤油ラーメンの部分をリピート)

あーーーーー
今夜はよく食べた!
JAの皆さん、俺の胃袋にマジで驚いておられる。次回来た時にはこれでは済まないだろう、、、

帯広の飯は本当に旨い。豚丼も焼き肉も蕎麦もラーメンも、、、

PS: この翌日の朝、帰京するために空港に行き、そしてやはりまた豚丼大盛を食べて帰りましたとさ。めでたしめでたし、、、

23:01 | Comments (1)

2003年09月02日

会津若松行きの電車で田口ランディを読む

福島にて明日、講演がある。東京から新幹線に乗り、郡山から在来線に乗り継いで3時間半の車中で、田口ランディの小説を初めて読んだ。読んだのは文庫本の「コンセント」だ。あまりに面白いので、一気に読み終えた。もったいないことをした、、、どうも俺には、流行っている作家の本をあえて読まないという、斜に構えた性向がある。これは、無駄だな。ユタとかシャーマニズム、セックスを露わにしていて、しかもエンタテインメントになっている。この小説で書かれている世界はずっと前から存在していたわけだけど、このような語り口が出きる人が現れてきたのだな。こういうのが売れるようになってきたのだな。それは一方で社会にこうした物語を求める人が多いということだな。やはり火星の接近と関わりがあるのかな。

 火星の接近の話題は、昨晩の藤幡正樹展のレセプションで、藤幡さんと交わした会話からのものだ。僕が影響を受けた農法にバイオダイナミック農法というのがある。思想家のシュタイナーが拓いたものなのだが、特徴の一つに天体のリズムと植物の生育に規則的な相関があるとし、これに合わせた作業をするということだ。天体の運行は軌道計算ができるので、365日分のカレンダーが制作されている。バイオダイナミック農業(BD)の実践者はみなこの農事カレンダーを携えているのだ。
 でもこれは当然植物への影響だけではない。菌類や動物にも作用する。ある星位になると、ヨーグルトやパンの発酵は調子が悪くなったり、養蜂家はミツバチがあまり蜜を集めてこないことを不審に思う。とすれば人間の生活にも何らかの作用があるはずだ。最近の社会に溢れるいろんな出来事も、我々がまだ意識に取り入れることのできないほど大きな秩序からの影響として引き起こされているのかもしれない。

 どちらにせよ、個人がどのように生きるのか、ということが決定的に重要なのだという気がする。そんなことを思わせるに至ったのは田口ランディの本の力だ。週末にでも他の本を読んでみようと思う。

16:50 | Comments (1)

2003年09月03日

福島の郷土料理は立体的味覚だった

福島の会津若松にきた。実は会津若松は初めてと言っていいくらいだ。ただ、かなり昔に会津田島でラーメンを食べて感動したことがある。そこは、ごくふつうの食堂なのだが、厨房にはいとも当然のようにかまどがあり、よれよれのお婆ちゃんがそれで麺をゆでていた。透き通った醤油スープにちぢれ太麺。シンプルきわまりないそのラーメンは、オーソドックスにして感動を呼ぶ味だった。今日は絶対にどこかで食べていこう。

講演前夜に歓迎会を開いていただく。割烹「てんぐ屋」では、素晴らしい郷土料理が並んだ。中でもとりわけ舌の記憶に残ったのが下記。

・身欠きニシンの山椒漬け
ニシンと山椒の葉を重ねて酢醤油に漬け込んだもの。これが滋味溢れて旨い!カチカチに干したニシンを戻した特有の苦みとえぐみ、薄い酢醤油のじんわりした味、それに山椒の葉の高貴な香りが絡んで、深くて立体的、重層的な味だ。地元の人から見たら
「そんなの特別なもんじゃないよ」
という感じだろうが、感動した。
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話は飛ぶが、この福島出張の帰りの電車で駅弁を買ったら、そこにも同じモノが入っていた。それを食べ、そのすぐ後に隣に並んでいた海鮮サラダのようなものを食べたのだが、その味の次元の違いに驚いた。マヨネーズと油脂、アミノ酸によって着味されたサラダは、1次元的に平坦な、のぺっとした味世界だった。これだけ食べていれば、全く問題はない。とてもわかりやすい味だ。しかし、ニシンの山椒漬けを口にすると、その味わいを認識するのに少々時間がかかる。香りと味があまりに複雑な組成だからだ。この旨さを、ファーストフードに慣れた人がどう捉えるだろうか。あまり美味しいと思わないかもしれないな、、、と思った。

・厚揚げの田楽
これは本当に絶品。この田楽は味噌がミソだとのことだったが、台となっている厚揚げに感動したのだ。見事な脱水加減の豆腐を、供する直前に菜種油か大豆油で揚げ、軽く表面を炙った後に味噌を塗って出している。それがわかるのは、厚揚げの揚げ部分と中の豆腐の境界がぶよぶよと厚くなく、カリッとした歯触りが伝わるからだ。甘めの味噌との相性は最高で、文句なしに旨い。

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そして、クライマックスは、ここの女将が手打ちしてくれる蕎麦だった。小さな椀につゆと一緒に盛られてきた蕎麦は、繊細な細打ちで、訊けば10割だという。期待せずに口にしたら、あまりに清々とした、背筋の伸びた味に、してやられた。

大満足なのであった。

とは言ってもこの後、スナックでしこたま飲んだ後、会津のラーメンを食べにいたのだった。ネギラーメン。あの懐かしい味が、そこにあった。
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この講演をお膳立てしてくれたのが、日本のカスミ草の生産関係者では知らぬ者のいない管家(かんけ)さん。以前、太田市場の卸売会社での僕の講演を聴いて、福島に呼んでくれるために奔走してくださった。静かな語り口、でも日本の花の生産・流通に人生をかける凄みのある人だ。こういう人に会えると本当に嬉しい。多謝である。
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14:12 | Comments (1)

会津若松の味はさらに続く

福島講演当日
 会場セッティングを終えると、管家さんが昨夜の酒宴で話題になった地元の伝統食材「さんぼ茸」をアルミホイルに包んできてくれる。さんぼ茸とは、サルノコシカケみたいな茸で、木の上になっているのを採集するのだが、堅くてそのままでは食べられないとのこと。それでどうするかというと、味噌の中につけ込んで3年ほどおいておくのだそうだ。そうすると良い具合に熟れて柔らかくなり、食用になるという。何時の遠くなる話か、、、
今日持ってきてくれたのは塩抜きをしているのでそれほど辛くはないという。楽しみだ。

、、、蕎麦やの桐屋にて、蕎麦を頼む。頼んでからくるまで時間が長かったので、サンボ茸を食べる。見た目はきのこ(茸)そのものだが、傘の上の部分がテラテラとしていて、不思議なテクスチャだ。僕のデジカメでは残念ながらそのテクスチャと質感が撮影できなかった。口にすると、やはり塩抜きをしているせいだろうか、歯触りも柔らかい。味は、思ったほど塩辛くないのだが、全体的に輪郭がぼやけてしまっているかもしれない。やはりこれは、地元の人がいうように
「一口舐めただけで、どうしようもなくしょっぱくてご飯が一杯食べられてしまう」
くらいの方が、それらしいのではないかと思った。管家さんには、次回があるならばぜひ塩抜きしていないモノをお願いしますとメールしておいた。

さて、それはそうと蕎麦である。昨晩の宴席は割烹だったが、そこの女将が打ったという蕎麦が絶品だった。山形蕎麦とはまた違う、細目だが角の立った、繊細な蕎麦だった。それをまた体験できるかと思い、この辺の名店と皆がいう「桐屋」にきたのだが、、、
結果から言おう。会津若松で2回食べただけという、非常に浅い体験ではあるが、旨い蕎麦は、その割烹の女将が打つ蕎麦であった、、、

14:14 | Comments (3)

2003年09月04日

兵庫県加西市と淡路島にはスバラシ食文化が横たわっていた

 会津若松・福島出張から帰った翌日、すぐさま兵庫県加西市に向かう俺であった。今回も農産物のトレーサビリティについての講演。そもそもは淡路島の農業改良普及員の小谷さんという方が、いきなりお誘いのメールをくれたのがきっかけで、結局、県の農協全体が結束して呼んでくれた。その際には勿論「夜は淡路にわたって旨いものをぜひ」とお願いしていたわけだが、淡路には今回初めていくことになるのだ。
 さすがに出張二連戦で疲れていたこともあるが、新幹線の中で爆睡。新神戸にて、迎えにきてくださった県の方と落ち合う。神戸から加西市の試験場まで1時間半の間に、車中で兵庫県の食について伺う。
 まずどこでも「この辺にしかない料理ってなにがありますか」と訊くことにしているが、ほぼ例外なく相手の反応は「いやぁ、、、ふつうですよ」というものだ。そう、彼らは生まれてからずっとその土地の食文化で生きているから、普通のものしかないと言ってしまう。けれども、外からきた人間が観ると「えぇ~ こういうものがあるの?」と言ってしまうようなことが多いのだ。
 今回面白かったのは、車の運転手をしてくださった榎本さん。いろんなことを訊いたのだ。例えば下記。

・兵庫では海でいかなご(小魚)がたくさん獲れる。これを甘辛く炊きあげて佃煮のようにするのを釘煮(くぎに)という。何で釘というか、だが、実はこれを作るとき、年代が上の人はわざわざ釘を水に漬けて錆びさせたものを鍋に入れる。すると酸化鉄の作用か何か知らないが、照りが出て美味しそうになる。黒豆もこうして釘を入れて煮るとよいとされている。この釘を入れるタイミングと時間が微妙なこつで、適当なタイミングで引き上げないと、鉄臭くなるのだ。

・加古川市では、「かつメシ」という食べ物がある。関西では割と有名でテレビにも取り上げられているが、、、どういうものかというと、ご飯に千切りキャベツを乗せたうえにトンカツが乗り、そこにデミグラスっっぽいソースをかけて食べるというもの。このソースが旨い。加古川では「かつ一」という店が元祖とされるが、運転手仲間では、その隣町のイナミという町のある喫茶店のカツメシの方が旨いとされている。高速道路の三木のSAでも食べられるよ

・姫路駅構内の立ち食い蕎麦屋には不思議な蕎麦がある。ここで「そば」というと、だしは普通の醤油だしで、麺が中華麺というものが出てくるのだ。もし、通常の蕎麦を食べたいならば「和蕎麦」と言わなければならない。そしてこのソバの味は、、、

とこのようなヨダレのたれそうな情報をたくさんくれる。

この話をしているときは昼食時で、加西市の近くの小野町にある「豊後」という魚料理の店。〆鯖の丼定食と、豊後巻きという、長芋と海鮮の海苔巻きという、二人前のメシを食べてしまった。悪いのは、旨そうな情報を教えて、やまけんの食欲を増進しまくる榎本さんである。

■豊後
〆鯖丼定食
豊後巻(山芋と海の幸を巻いた、超ビッグ海苔巻き)

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午後から始まった講演自体は大成功。それほど大きくない会議室に150人がすし詰めになり、熱心に訊いてくれた。会の終了後、そもそものきっかけをつくってくれた小谷さんと落ち合い、淡路へ。
その途中、例の三木SAに寄っていただき、カツメシを探す。なんとこのSA、地元の名門ホテルである宝塚ホテルのレストランとベーカリーが入っていて、とてもきちんとした料理を食べさせる。うどんコーナーで出てくるカツメシもしっかりとしたものが出てくるのだ。
 出てきたカツメシは、確かにソースカツ丼のソースがデミグラスベースのものになっているものだったが、それだけではない、何か特徴的な旨さがあった。それで680円である。スバラシイ。思わず榎本さんに電話で感謝の意を伝えてしまった。

■中国自動車道 三木SA 宝塚ホテル直営うどんコーナー
かつ飯 680円

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 さて、淡路である。まずは旅館にチェックインし、すぐさま宴席へ。ここで、実に実に旨い創作魚料理を堪能することになったのだ。淡路と言えばタマネギ。このタマネギをふんだんに使ったドレッシングが活躍するのだ。

■魚佐太(淡路島津名町)
0799-62-0215

太刀魚と焼きなすのおろしタマネギマリネ
レンコン豆腐のあんかけ
ハモとタマネギと水菜の小鍋仕立て
お作り三種(サンマ、鯛、鮪赤身)
瀬戸内の穴子のソテーゴマソース
鰻蒲焼きと茄子素揚げ トマトジュレ添え
穴子の磯部揚げ
茶碗蒸し
但馬牛のたたき

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この一つ一つが旨かったが、非凡に美味しかったのが、最初の太刀魚と、ハモとタマネギの小鍋仕立てだ。列席してくれた改良普及員さんから、淡路特産のタマネギの技術情報について色々教わった。いかにして糖度がきっちりと乗ったタマネギを作るか、いろんなノウハウがあるのだ。そうしたプロフェッショナルな話を聞いていると、マーケティングやトレーサビリティについてのコンサルをしている自分の足下がずいぶんと軟弱な地平のような気になる。ああ、生産技術っていいなあ、、、やっぱり早いとこ、畑がほしい。

なんと残念ことに今日の宿泊施設は11時が門限。一次会で切り上げということに。明日は淡路の農家の現場を数件のぞかせていただき、一路大阪へ移動である。


14:27 | Comments (1)

2003年09月06日

大阪・阪急梅田の地下にてインディアンカレーに感動す

関西出張3日目。あまり時間はないが、淡路島の北の方(北淡という)の農場を視察。花と稲作、そしてあまり規模の大きくない蔬菜生産が主流で、のんびりしている。南淡では対照的に大規模農家が多く、品目はレタスやたまねぎなどに絞られる。小谷さんが説明をしながら車で案内してくれたのだが、北淡の農村部は実に暖かい風景だった。高台から海が見えたとき、心がさっと開いた気がした。その後、市街地に戻ると、心の温かみはすっと引いた。小谷さんが「街はどこへいっても画一化されていますからねぇ、、、」と言う。そうか、植物はその環境によってまったく態様を変えるから、土地によって差異が出る。けど、街のありようは、どこに行ってもあまり変わらなくなってきている。では、街には郷愁を持ちづらいのだろうか、と考えてしまった。

淡路港から出ている高速バスに乗って大阪へ。小谷さん、どうもありがとう。淡路の暖かい気の流れと、農業を正面から考える普及員さんたちに出会えてよかった。

大阪に着くとすでに12時。仕事先に行く前に昼を取ることができる。幸い阪急梅田の地下街がすぐにある。ここで探そう、とさ迷い歩く。いくつか気になる店があったのだが、見つけたのはカレー屋「インディアンカレー」。バーカウンタースタイルのカレーショップで、店構えはこぎれい、メニューはカレーとハヤシしかない。あとは卵のトッピング。この店が繁盛していた。サラリーマンのおっちゃんばかりではなく女性もかなり入っている。こういう店は美味いはずだ。列に加わり店に入ると、食券を買うことになっている。通常のカレーを注文する。大盛りを頼まないのは、いまいちだった場合、すみやかに他の店をはしごするためだ。

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この店、店員の態度がよい。何がよいかというと、自分たちが供している食事がおいしいものであるということをよく理解していて、それを誇りにもちながらも、あくまで冷静に、客の邪魔にならないようにサービスをしていることがわかるからだ。不味い店で、従業員がそれを認識していて、かつ自分の仕事が淡々とその不味いものを出すことだと割り切っている店には、このピンとした空気は漂わない。これはイけるな、と確信した。
すぐに席が空き、並べられたカレーを見てそれが真実であることを知った。かなり盛りのよいライスに、インディアンといいつつもトロミの強いルーがかかっている。色は淡い。匙で一口目を味わう。最初に甘味を感じ、すぐにその色からは創造できない辛味が立ち上がる。こういう路面店で、客が辛さを指定できないカレーとしてはかなり辛い。そして、とても旨い!付け合せは福神漬けではなくキャベツの甘酢漬けだが、この相性がまたいい。一気呵成に食べてしまった。正直、大盛りを頼まなかったことを後悔した。でも、また大阪にきたときの楽しみが増えた。この店、東京に出ないかなぁ、、、

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蛇足だが、しばらく前に東京の蒲田で食べたおいしいシナそばとカレーの店も「インディアン」だ。このキーワード、押さえておこう。

すばらしい気分で店を出て、もう少しお腹に入れたいなぁと思い、もうひとつ気になっていた代わりカツ丼の店へ。いろんなトッピングができるのだが、大きなミスを犯した。キムチマヨネーズなるものを選んでしまったのだ。運ばれてきたのは、キムチ味のマヨネーズソースが豚カツにかかっただけのもの。ひたすら咀嚼し、すぐに店をでた。でも、インディアンカレーの味と香りはきっちりと舌の記憶に残っていた。

01:43 | Comments (42)

2003年09月09日

和歌山ラーメン地元の厳選3店を味わう

2003年8月11日
 和歌山出張である。和歌山といえば魚が旨いのだが、旅程が限られている場合は迷わず和歌山ラーメンである。ちなみに和歌山では「ラーメン」とはめったに言わない。通常は「中華」というのだ。僕は通常、ラーメンはそれほど好きではないのだけど、和歌山の中華は大好きだ。8年くらい前に和歌山で農業情報ネットワーク大会というイベントが開催された時に、当時すでに全国的に有名になりかけていた「井出商店」に行き、その旨さにノックアウトされたのだ。
 それと、他の地域では見かけないが、和歌山ではラーメンを食べながら「早寿司」という、一口サイズの鯖の押し寿司をつまむのが普通だ。この早寿司が旨い!僕はこれを中華の汁につけて食べるのが大好きで、ラーメン1杯に3個の早寿司を食べるのが普通だ。

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ちなみになぜ「早」とつくのか。本来この地域には、鯖に塩をして、米と一緒に1ヶ月以上漬け込んで乳酸発酵させる「なれずし」があったのだ。今は郷土の伝統食として、メジャーではなくなっているようだが、いわば滋賀県のフナ寿司のようなものだ。その簡易バージョンというか、発酵させていないものが早寿司なのだ。これがまた美味。以前、果樹農家さんの集会に寄らせていただいたら、お土産に20本くらい持たせてくれて、それを2日で全部食べきったときは、至福の時間だった。

 さて和歌山ラーメン(中華)である。今回は変則的だが、ある市場への野菜の入荷風景を視察するのが目的だったので、夜から和歌山入り。すでに10時だが、今回アテンドしていただける津田さんが、

「ま、まずは井出商店にいきたいでしょ?」

と連れて行ってくれる。美人の奥様の運転で、井出商店到着。ああ、懐かしい、、、儲かってるだろうに、まったく変わらない外観だ、、、もうかなり遅いのに店は満員である。なんと残念なことに早寿司が机の上に見あたらない。売り切れてしまっているらしいのだ、、、 悔しがる僕をみて、津田さんの奥さんは「相当におかしな人だ」と思ったらしい、、、
 憂さ晴らしではないが、中華大盛り、である。和歌山の中華は、注文から出てくるまでが早い。今回も速攻で出てきた井出の中華は、懐かしい濃いスープであった。

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スープをすする。 ん、旨い、、、 けど、化学調味料が前来た時より鼻につくなぁ。麺をすする。ん、若干柔らかすぎ、、、 カタ麺で頼むべきだったかも、、、 と細かい部分は気になるが、秒殺で食べ終わる。
 正直なところ、ほっとする旨さがあるけど、和歌山の人が「もっと旨いとこあるよ」というのも納得という感じだ。ま、一日目(というか一食目)だし、いいスタートということにしておこう。


 その後、津田さん宅にておもてなしをいただき、非常に心地よい時間を過ごす。夜中の1時から4時くらいまで市場と物流センタの見学と、ディスカッション。うーん大変。青果物の流通ってのはかなり大変なんですよぉ、読者の皆さん。
 仮眠を2時間くらいとって、午前中にやるべき仕事をし、店舗視察をした後、午後1時半ころにようやく昼飯。

「これくらいの時間にいかないと混んでて、、、」

といって連れてきてくれたのは「和歌山市内の人しか行かん」という、激レアな店「山為食堂(やまためしょくどう)」である。なんでもここは、一般的なラーメン店ではなく、うどんとかトンカツとかもある、普通の食堂。でも、客が「中華とご飯」以外を頼んでいるところをほとんどみないということだ。この店、通常の和歌山の中華に比べると「とにかく濃い」んだそうである。なので、自動的にご飯を頼んでしまうということらしい。ふむ、濃い味好きの私にはビッタシではないか。

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■山為食堂 073-422-9113
和歌山県和歌山市福町12
営業時間 11時~17時 ただし売り切れ可能性あり
日祝休み

中華そば 650円

山為の店内は本当に食堂。名物のおばちゃんが居て、すべてを采配する。中華は大盛りはできない。ので、中華とご飯を頼む。しばし後に運ばれてきた中華&ご飯は、確かに「濃ゆい」存在感に満たされていた。スープをすする。確かに濃い!豚骨醤油に魚系の出汁が混ざったような感じだが、とにかくねっとり感が強く、それだけでオカズたり得る味だ。迷わず白飯を一口。そして麺をすする。若干太めで黄色がかった麺はスープがよくからむ。煮豚チャーシューがいい相性だ。文句なしに旨い。化学調味料のにおいもあまり感じない。ゼロではないだろうが、それよりも魚系の出汁を使っているのではないか。スープを飲み干すと大量に残る粉っぽい堆積物が、それを物語っている。麺→スープ→白飯の繰り返しであっという間に食べ終わる。実に満足した。これで650円は安いぞ!

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 さて山為は美味かったものの、朝から何も食わずにラーメンとご飯(ドンブリ入りだったが)だけで満腹になる訳がない。同行の津田氏は「まだ食うの~?」と引くが、もう一軒ぜひ!

 行きたかったのは、これも津田さん情報で、あの井出で修行していたらしい人が始めた「丸三」という店。市内をしばらく走り、見えてきたのは比較的綺麗な一軒家の店だ。

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■丸三食堂
和歌山市塩屋6-2-88
0734-44-1971
営業時間11時〜23時
日祝 休み

中華 500円
特製中華 600円
大盛中華 600円
大盛特製中華 700円
早すし 100円

おおおおやった~! この出張で初めて早寿司に出会えた~!
歓喜の私である。大盛特製中華をオーダーした後、早速1つ食べる。旨い!
中華が出てきた。ちなみに特製とはチャーシュー大盛りのことだ。それに麺も大盛りにしたのが大盛特製中華。説明しなくてもわかるか。この、丼に表現された世界が実に美しい、、、写真をみていただきたい↓
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どうですか!? 小宇宙が見事に表現されている!(なんのこっちゃ)
井出も山為も、いい意味でぶっきらぼうな感じなのだが、丸三は芸術点を挙げたくなる完成度なのだ。そしてそれは外見だけではなかった。

「旨ぁ~い!」

個性が違うことを差し引いても、どう考えても今回一番の旨さである。よく考えて欲しいのだが、私はすぐさっき中華とご飯を食べている。その上に大盛を食べて「旨い」というのだから、客観的評価としてはすさまじい高得点になるはずだ。
 一番感じるのはスープの繊細さだ。豚骨醤油のベースは変わらないが、雑味が少なく、味わせたい要素を絞り、その各要素を際だたせることに成功している。濃厚さをあまり意識させない内に食べ終わってしまうのだ。麺は今回の3店中で最も細いので、これがスープを繊細に感じさせている要因の一つだろう。しかもチャーシューも手抜きナシで、旨い。バラ肉だと思うけど、味がきちんとしていて、口でとろける。とにかく旨いのである。
 おもわず早寿司をもう一つ食べる。中華のスープに少し浸して口に運ぶ。スープと酢飯は絶妙のコンビネーションだ。一口大のガリがスープの脂を引き締める。と、津田さんがレジに立って会計をしてしまう。あああ、、、この「あああ、、、」は、おごって頂いてしまったどうしよう、という気持ちともう一つ「早寿司もういっちょ食べたいんだけどなぁ」という2つの意味がある。
 それでもう一つ店員さんに100円払って早寿司を食べたのであった。それで諦めたけど、本当のことを言うともう一つ食いたかった。何せ最高なのである。

 大満足して帰途へ。なんと津田さんの奥様が、早寿司を10本セットで買っていてくださり、お土産にもたせてくれる。なんと出来た嫁さんなのだろう、、、でも、告白しよう。この10本の早寿司、東京の自宅について、寝る前にすでに5本食べてしまったのだ。だって旨いんだもーん、、、

 こうして和歌山ラーメン紀行その1は終わった。しかし情報によればまだまだいい店があるらしい。続編を期待して欲しい、、、

08:40 | Comments (2)

2003年09月20日

熊本県八代市で「い草」について教えてもらった

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 本日から熊本3連戦である。20日(金)は八代農業改良センタと、地元の農業生産者のパソコン利用クラブである「ぐりーんネット」の共催による講演会に招聘されたのだ。題目は勿論、「農産物のトレーサビリティ」。
 八代とは実は関わりが古い。まだ学生の頃、農業情報ネットワーク大会で知り合ったネットファーマー(ネットを駆使する農業者のことだ)に、八代の鶴山さんと宮本さんがいたのだ。二人は、ともに八代名産のフルーツトマトである「塩トマト」生産に取り組む篤農家達だ。生産圃場を見せていただき、その味に驚嘆して以来、取引させていただいたりしながら今に至る。

 熊本空港に着くと、鶴山さんが迎えに着てくれている。半年前の農業情報ネットワーク大会ぶりの握手。
「最近、熊本では黄化萎長病が流行しているんで、トマト農家は壊滅的な被害を受けてるんよ」
という穏やかならぬ情報を聴かせてもらいつつ、1時間半程度で八代へ。昼食には生け簀寿司の店で握りとバッテラをいただいたが、意外(!)に美味しい寿司をいただいた。
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「実は熊本の魚は旨いってことが、知られてないんだよねぇ」
本当にそうだ。僕はすばやく認識を改めた。

(続きはこちらをクリック↓)

 講演会場には60人くらいの聴衆が集まっていた。どうやらこれは「めずらしか」ことらしい。やはり今日的な話題で、しかも何をやらねばならないのかがかはっきりわからないテーマだからだろう。皆、熱心に1時間半の講演を聴いてくださった。



 終了後、市内のホテル「大黒屋」へ。ここは宴会場として一番有名なホテルなのだそうだ。料理は、熊本名物も盛りこんだものだが、基本的には宴会料理。九州ならではの鶏のたたきを集中的に食すことにした。

 さてこの宴席で一番面白かったのは、実は食べ物よりも生産者との話だ。それも、食べられる品目ではなく、いわゆる「い業」の話だ。い業とは、い草を生産して畳表(たたみおもて)をつくる仕事を言う(へぇ~)。やまけん的には食べられない作物にはあまり関心がないのだが、これは話を訊いていると非常に面白いものだった。いや、まずは話をしてくれた古島さんという若手生産者さんが面白いキャラクターだったので引き込まれてしまったのだが、、、ごつい外見でかなり笑わせてくれる陽の気を持った人だった。
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■い草の話 
1反部(10アール)の畑から、畳表4~500枚分のい草が収穫できる。そのい草を畳表に一次加工したものが、1枚分で900円~1200円になり、1反部あたり大体60万円前後となる。

 この畳表の流通構造だが、やはり一般の青果物と同じく、卸売市場があって、JA経由でそこに出荷、問屋を通じて全国の畳屋に流通することになる。これが一般的なルート。
 そして、ここで登場するのがネットだ。このぐりーんネットの生産者のうちの数人はいち早くWeb上で畳表の直接販売を始めた。顧客対象は当然ながら畳屋さんだ。実は、畳の世界でも、流通場の不具合が散見されていたのだ。例えば畳屋が問屋を通じて仕入れをする場合、いい畳表が手に入った時、「これと同じものを欲しい」と思っても、次回同じものを入手できる見込みは低い。卸売の仕組上、生産者までの指定が難しいらしいのだ。

 つまり、もし「よい畳表」が安定的に入手できるとなれば、直販ルートでも何でもよいという畳屋さんもいるということなのである。
 ここで重要になるのが「よい畳表とは何か」ということだが、これについては僕も選別眼は持ち合わせていない。ただ、もう1人話をしてくれた岡さんの話では、い草のニッチ市場があるという。

「通常、い草は泥染めといって、保存性をよくしたり独特の色合いを出すための着色をするんですが、アトピー等の問題もあって、これを嫌う人たちも居るんです。なので、うちでは完全に薬品等を無添加にして、安全な畳表を出荷しています。生産品の9割以上が直売で売れますね」

面白い話である。い草にもそんな市場があるのだ。世の中深いというか、農業はやはり面白い。どこにもあるのが、従来型の市場流通の構造的問題。そしてそれを踏み越える意欲的な生産者がいる。
 勿論、世の中の従来型の市場構造は、悪い側面ばかりではない。ただ、実状に合わなくなった構造は多数存在する。この構造を逆手にとって自己を確立する人たちもいる。日本の農業の衰退は目を覆わんばかりだが、まだまだ元気で面白い人たちがいると実感した。



 ちなみにこの後、二次会にて焼酎を飲み、ラーメン屋にて熊本ラーメンと餃子を食べたが、隣に座っていた兄ちゃんが、
「この店はラーメンよりもチャンポンが旨いよ」
と言うので、チャンポンも頼んでしまった。そして確かに旨かった!ありがとう名も知らぬ兄ちゃん。

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こうして熊本の第一夜が更けていった、、、

23:58 | Comments (2)

2003年09月29日

阿蘇のぽっこわぱ農園にて

9月21日 八代より阿蘇へ移動

 八代から、阿蘇の長陽村にきた。長い陽と書くだけあって、南と北には山が走っているが、その間の平野部に村が広がっている。熊本と高森を結ぶ幹線道路を降りてすこし入ったところに、ぽっこわぱ農園がある。僕が大学時代に、神奈川の藤沢から後輩達を連れて合宿に通っていたのがここだ。この農園は、思想家のシュタイナーが拓いた「バイオダイナミック農法」を実践していることで有名だが、そういうことよりも、完全に無化学肥料無農薬で4町歩近くの農地を耕し、野菜、米、茶をセットにして数百の世帯に宅配をすることで生計を立てていることに敬服する。ここに年に一回はこないと、自分の中のリズムが狂うようで、落ち着かない。

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ぽっこわぱに向かう道の風景は昔とまったく変わらず僕を迎えてくれる。今、ぽっこでは、創始者であるよし子さんとドニーさん(フランス人だ)の家族と、よっちゃんの家族、そして研修生数人の、計10人程度で運営されている。すぐにぽっこの空気に戻り、作業をする。
 日曜日は基本的には作業は休みだが、研修3年目のヨウゾウ君がレモンバーベナを摘んで茶を作るというので、手伝いをさせてもらった。バーベナは大好きなハーブだ。これを摘んで洗い、葉の水気を切って茶葉乾燥機に入れ、水分を飛ばすのである。
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その他、ナスときゅうりの収穫、にんにくの選別、牛にやる草刈り、葉物野菜のセルポットへの種まき。農作業は、人と話しながらするとにぎやかだが、一人で黙々とやるのもまたよい。それは瞑想に似ているが、実は生産という活動に直結している時間の流れだ。それはゆったりとしていて、コンデンスミルクのように濃い時間なのだ。
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 午前6時から朝作業、8時に朝食をとって9時から作業、日中は午後3時まで日差しを避けて休み、暗くなるまで作業。夕食をとって、選別などの中でできる作業。
 このリズムがだんだん気持ちよくなっていく。
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心地よい阿蘇時間が流れているのだ。

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2003年10月08日

大阪の秋。インディアンカレーと「浅井」再訪 その1

 待ちに待った大阪出張だ!過去ページを観ていただいていればわかると思うが、今回は2店舗、絶対に行きたい店がある。行きたいというよりは再訪したい、だな。前回行って、実に関心感動した2店なのである。大阪ってほんまに旨いんやね、ということを知った店だ。
 それは、阪急梅田駅地下街などにあるインディアンカレーと、心斎橋にある「おおさか料理」を標榜する割烹「浅井」だ。それぞれ過去ログを観ていただきたい。

 大阪へはのぞみで行く。3時間かかる時間、出張先へ持っていく資料を整理しながら、文集文庫から出ている名著 「すきやばし二郎 旬を握る」 を読み直す。
 すきやばし二郎は、言わずと知れた銀座の江戸前寿司の名店。その主である小野さんが、いかにして今の握りスタイルにたどり着いたかを、豊富な図解入りで語っている本である。感動させられるのは、この人の寿司に対する探究心の深さだ。車えびを旨く握る最適な方法を見つけるため、手を変え品を変えながら実験をし、大量に自分で食べる。そして「車えびは人肌で出すのが一番香りがたって旨い」などの知見を得るのだ。そう、食べ物については、味覚の正確さと、自分が経験した味の記憶の蓄積と、そして執着心がないとたどり着けない境地がある。それをまざまざと見せ付けられる本なのだ。今回はこれを仕事先でお見せするのだ。

 さてそうこうするうちに、新大阪に到着。まず目指すのは、前回の大阪訪問時に偶然入って、瞬時にその虜になってしまった「インディアンカレー」である。
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(続きは下記をクリック↓)

 前回は、淡路からバスで移動したのだが、そのターミナルのすぐ地下に店があった。今回は電車なので、大阪に不案内な僕には位置関係がようわからん。前行った店は「阪急梅田」にあるらしい。とりあえず大阪駅にきてみたが、どう行けばいいのかわからないので色々とモバイルで地図を探す、、、よくわからない。仕方ないので通りがかりの人に聞いたら、
「阪急梅田は大阪駅から歩いてすぐやで」
と言われた。ほんとだすぐだ!と足が浮き立つ。地下2階に降り立つと、強いカレーの香りが漂っている。再訪だ。

 このインディアンカレーについては、読者から情報をいただいた。

・ご飯大盛りにすると、ルーが足りなくなるので、ルーも大盛りにした方がいいよ。
・「目玉」と言うと、生玉子が乗せられてきます。これを混ぜながら食べると最高。

 なるほど!そいつぁありがたい。これを踏まえて注文は「ご飯とルー大盛り、目玉入り」とする。1030円なり。カウンター席に座ると、隣の人はハヤシライスを食べている。ケチャップ色に近く、玉葱がゴロゴロしていてこちらも旨そうだ。次回は両方食べよう、、、
と思っているとカレーがすぐに運ばれる。キャベツの甘酢漬けも別皿に盛られてくる。一口カレーを口に運ぶ。一口目から強い辛味が弾ける。旨い!
 そしてこの一瞬、実はインディアンカレーを構成する重要な要素に対する理解が瞬時にできたのだ。それは、このカレーを忘れがたくしているのは、この辛味ではなく、その裏にある「甘さ」なのだということだ。絶妙な辛みに隠しているが、このカレーには糖類の甘みがかなり入っている。それも、「タマネギをじっくり炒めて甘みを出しました」というようなものではない。直接的に甘みを入れているはずだ。思うに、、、浅めに火を通したカラメルではないだろうか。この甘みがあることによって、「辛い」→「けど甘い」→「辛い」→「うまーい!」というサイクルになるのだろう。
 卵の黄身を割ってまぶして食べると、これまたマジ旨!うーん やっぱり大阪のランチはインディアンカレーに限る!次回はハヤシライス大盛を食べることにして、一路仕事に向かうのであった。

00:37 | Comments (6)

2003年10月10日

大阪の秋。インディアンカレーと「浅井」再訪 その2

2003-10-08の続きだ。

さて、夜の部は心斎橋にある おおさか料理 「き川浅井」だ。この店は実に素晴らしい。前にも書いたが、勢いのある品書きだ。きらめくお品書きと言っていい。こうした、発光しているような品書きがある店は実に美味いことが多い。勿論この「浅井」も最高だ。

しかし、、、申し訳ないことがある。全ての画像をデジカメで撮影したのだが、デジカメが故障し、その画像を取り出せない!不測の事態になってしまった、、、この日食べたのは下記だ。
怒濤の品数、、、念のために言っておくと3人で食べたんですよ。まあ、ほとんど私が食べてましたが、、、

三寸
ナスごまクリーム和え
くじらベーコン
つぶ貝のお造り みそ醤油添え
コチのウニ巻きお造り
関さば生寿司
穴子白焼き
明太イカのお造り
かわはぎお造り肝ポン酢
甘鯛のポテトサラダ湯葉巻きグリル
レンコンとウニ餡の饅頭
合鴨ロースのマスタードクリームソース
鯨さえずりの土手鍋
ナスとあわびのウニ乗せグラタン
蟹入りひろうすの冬瓜あんかけ
うるか和え
納豆雑炊

 特に絶品だったのは「甘鯛のポテトサラダ湯葉巻きのグリル」だ。甘鯛の身でポテトサラダを巻き、その上からさらに生湯葉を巻いてアルミホイルでくるみ、蒸し焼きにしている。ポテサラの酸味が利いて、実に旨い!これが「おおさか料理」なんだなぁ、、、としみじみ納得。飾っていないのだ。ポテサラなんて、例えば京都では甘鯛に合わせないはずだ。でも、実質的に旨い。だから巻く。これが大阪のおおさか料理たるゆえんだろう。

 ここは今度、怖いけど自腹で来よう、、、 と堅く心に誓ったのだった。

00:06 | Comments (2)

大垣の名店「四鳥」にて駿河若シャモ料理を堪能する

 さて岐阜の夜は、大垣随一の名料亭、「四鳥(よんとり)」である。

四鳥
大垣市東外側町1-15
http://www.spi.ne.jp/~yontori

 ここは県知事が食べにいらっしゃるような超名店だ。料亭の跡取りであり、板長でもある津谷秀次郎さんは、日本料理の枠に囚われない自由な料理を創り出す。フォアグラがよく出てくる料亭ってそんなにないだろう。日本酒とワインにも精通している、素晴らしき人なのだ!
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なんでそんな格式の高い料亭に僕なんぞが行けるのかというと、この四鳥と昵懇にしている僕の先輩に連れて行って頂いたのだ。その時、食材の話になり「美味しい地鶏が欲しいんだよね~」という話があり、「それならば!」ということで、僕が食材を紹介したのだ。

 その食材とは、静岡県で育種された「駿河若シャモ」。このシャモについては、この日曜日にシャモを育種した静岡県中小家畜試験場に行ってハムとベーコンを作ってくるので、その際に詳しく紹介したい。とにかく今最も注目すべき地鶏である。特に鈴木さんという生産者さんが育てた地鶏が最も旨いのだ。この鈴木さんの地鶏を秀さんに送ったところ、ムチャクチャ気に入ってくれ、その後、鈴木さんとの取引が始まったわけだ。
 今日は、そのシャモを秀さんがどう料理しているのか、楽しみにして来たのだ!

(続きは下記をクリック↓)

 帰京するので2時間しかとれないのであわただしく入店。店の前にはハイヤーが数台停まり、お付きの人たちらしい黒服が数名。VIPがいるらしい、、、そこに俺ごとき若造が入っていくのはとっても違和感がある。
 たたきで靴を脱ぐと、女将さん仲居さんが「あらまあようこそ」と迎えて頂く。びびりそうな個室に通され、いざ宴(独りだけど)が始まった。

前菜
シャモの笹身の塩じめと霜降り
皮煎餅(竜田揚げ)

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 通常の鶏肉(ブロイラー)はどうしても短期間で仕上げるためか、旨味に乏しいのが常である。特に、牛肉と違って酸味が乗っていないというのが鶏肉の欠点と言われる。しかし、この駿河若シャモは、肥育期間が120日以上と長いため、鶏とは思えないほどの旨味が乗る。最もあっさりしているササミでさえも、ほのかな酸味を感じるのだ。その辺のエセ地鶏とは違うのである。これを気持ち濃いめの仕込み醤油でいただく。新鮮なササミにしか感じられない微細な繊維感とヌメ感。皮煎餅は片栗をまぶしてカリっと揚げており、心地よい。否応なく期待が高まるのだった。

 酒はぬるかんの「みちざかり」。僕はワインより日本酒だなぁ。特に燗酒は優しく身体に浸透し、心地よさを倍増する。仲居さんが良いテンポで皿を運んでくれる。

若シャモの首肉と茸、白菜の椀
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 鶏の部位で最もうま味と歯ごたえが良いのは、なんと言っても首肉だ。骨の周りに少ししか就いていないこの部位が、僕は最も旨いと思う。これを椀にしている。白菜が首肉の濃いスープに絡んで何ともいえず旨い。

若シャモ炭火焼き
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 待ちに待った腿と手羽先が焼かれて出てくる。正直言って、若シャモらしさを最高に活かすのはただの炭火焼きだと思う。これは秀さんも同意見とのこと。ここでは肉に塩まぶさず炭火であぶり、皿に添えられた塩につけるようになっている。塩は伯方の岩塩だそうで、適度に尖った酸味があり、若シャモに合う。シャモのモモ肉は強い弾力と驚くほどの旨味を含んでいる。どんな人でも噛んだ瞬間に他のモノと違うことがわかるだろう。
 手羽先はねっとりとしたゼラチン質がビッシリついており美味。ただし余分な脂がないので食べるところは少ない。これが平飼いの地鶏の特徴だ。

卵管、腹卵と肝の山椒甘露煮
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 この若シャモ、なんといっても肝が妙味だ。僕も驚いたのだが、丸で捌いたときに目に付くのは、肝がオレンジ色と言うこと。そんなの始めてみた。今回は肝、卵管、腹卵がこっくりとした甘露煮にされている。山椒の実と葉がアクセントになっている。実に酒が進む、、、
 甘露煮の甘濃さが強すぎる管もあるが、それは岐阜特有の甘めの味付け故と思えるし、第一甘くとも全く嫌みはない。山椒の実を噛むと広がる強い香りが甘さを緩和するので、爽やかだ。

手羽元のフライ味噌ソース添え
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 この日最高の一品がこれ。手羽元は細かいパン粉でフライに仕上げている。肉は驚くほどにほどに弾力に富む。かといってかみ切れない訳ではなく、絶妙の繊維感を歯の記憶に穿ちながら噛み切れていく。そう、肉の繊維の一筋一筋がきっちりと自己主張をしており、みっちりほくほくと歯に感触を伝えるのだ。これはどうやったら伝えられるのだろうか?食べてみれば、言っていることがわかると思うが、、、
 そしてこのフライと味噌ソースの相性が最高!味噌ソースとは、名古屋や岐阜では一般的なみそカツのあのソースに一手間かけたモノだ。秀ちゃんいわく、みそカツソースそのものだとシャモの味を壊す。レシピ教えてくれたけどここには出さないよーん。これがまさに絶妙で、シャモの味と香りを最大限に引き出すチューニングになっている。フライには塩よりも味噌ソース!こいつは大発見である。

モモ肉と胸肉の地鶏すき焼き
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 厚手の鉄板で、鶏すき焼きを作ってくれる。僕一人のためになんと手が込んでいることか、、、申し訳ないっス。甘めのタレで仕上げてくれるすき焼きは、「頼むからご飯をドンブリ一杯くれ~」といいたくなるが、ここで若女将(秀ちゃんの奥様)が登場。お相手をしてくださる。

 その後、冷や酒の純米大吟醸を持って秀ちゃん登場。酒は 可児市の林酒造の酒で「美濃天狗 いひょうゑ 純米大吟醸」←劇ウマ。
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料理にも満足した旨を伝える。俺、秀ちゃん大好き。飾らず、食への執着、探求心が子供のように純粋。僕が知っている旨い食材をすべて紹介したいと思う。ちょうど冬場のフルーツトマトを知らないというので、八代の塩トマトを今年は送ることにしよう。楽しみにしておいてね、秀ちゃん。

 〆はオムライスと冷やしうどん(本当はどっちか一品だけなんだけど)。満腹になり、大垣駅へ向かう。こうして一日が終わった、、、若シャモについては今度ゆっくり書きます。

00:54 | Comments (0)

名古屋駅新幹線ホームのきしめんと、郡上八幡の天コロ蕎麦

 本日は岐阜に出張だ。目指すは郡上八幡。はるかなる道のりだ。
 東京から新幹線のぞみに乗り、名古屋にて乗り換え。乗り換えの際には迷わず新幹線ホームの両端にある立ち食いきし麺屋に行く。これ鉄則。カレーきしめんが割と旨いのだけど、かき揚げ天ぷらきしめんを食べる。
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 多くの名古屋人が「新幹線ホームのきしめんがいっちゃん旨い」というのだが、数年前に店舗を新しく建て替えてからめっきりと味が落ちた。ダシが不味いのである。それでも標準以上の味ではあるので、食べる。

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 さて岐阜羽島から車で郡上へ。郡上八幡は、最高に風光明媚で空気と水の旨い地域だ。ここは水道水でさえも旨いのだが、多くの家庭で井戸や山からのわき水を使っている。極めて品が良く力強い水なのだ。旨い水と山々に囲まれた地域では、例外なく蕎麦が旨い。この日も昼食は、郡上出身のT氏が「この辺じゃここが一番旨い」という蕎麦屋「善兵衛」へ。
 盛り蕎麦500円。天ぷら蕎麦650円。ん?安~い! 郡上は何故か安いのである。この辺では冷やし蕎麦のことを「コロ」と呼ぶらしい。僕は天コロ蕎麦大盛りを頼む。程なく運ばれた蕎麦、実に旨い!細めの堅麺で、角がビシッとしている。つゆがシャッキリ濃いめの塩梅。天ぷらは大海老と、海苔の天ぷら二枚がアクセントになっている。
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なかなか感動してしまった。おかげで長引いた仕事の打ち合わせもきっちり済ませることができた。もうへろへろである。

そして日記は夜の部へと続くのであった。

11:09 | Comments (0)

兵庫県赤穂に「さくら組」あり

これは2003年8月8日の記事だ。

 自宅で普段使っている塩は「赤穂の天塩」だ。その「赤穂」が地名で、しかもあの赤穂浪士の赤穂だというのはうっすらとは知っていたが、余り正面に捉えては居なかった。しかし今や、赤穂と言えば!それは激旨イタリアンの赤穂と言うほかないでしょう!という認識が俺的宇宙の中で強く礎を築いたのだった!
 一言で言ってしまえば「赤穂には素晴らしいイタリアンがある!」ということです。

 大阪出張の後、本来なら熊本に講演で飛ぶはずだったのだ。しかしなんと台風が来ているため、前日夜にいきなりキャンセルの電話がかかってきたのだ。うーむ困るなぁ、、、しかし気持ちをエイヤと切り替える。神戸の親友である西垣内(ニシガイチと読むのだ)に相手してくれ~と言うと、「それなら俺も行きたかった店にいってみよか?」となる。いい友だ!
 その「いい店」が、兵庫県の端の端に位置する赤穂の「さくら組」だ。この店、結構有名らしく、大阪から車で食べに来る人もいるらしい。有名なのは石釜焼きのピッツアだという。けど、海っぺりにあるわけだし、ピッツア以外にも魚貝が旨いだろう。関西方面のイタリアンの実力を知るいいチャンスだ、ということで一も二もなく賛成した。

 翌朝、大阪から神戸に移動し、西垣内の車にて一路赤穂へ。これがムチャクチャ遠い。しかも台風の影響で大雨。雨も断続的に降る。いきなりあがる。晴れ間が見える。と思ったら視界20メートルくらいの大雨。大変な赤穂行きになっちまったのである。でもそのおかげで、西垣内の半生をだいぶ理解した。こいつ、本当にいいヤツなのだ。
 2時間半くらいかけて赤穂についた。西垣内も実は店の場所はよくわかってなくて、あてずっぽうで走っているうちに、その店が忽然と現れた。
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 瀟洒なつくりの店を想像していたら、小さいカフェのような、しかも雑然とした作りの店だったのでちょっと驚いた。いや、これはいい意味で言っているのだ。綺麗すぎる作りの、いわゆるリストランテではない。漁師町のトラットリアといった風情。実際はピッツェリアなんだが、その雑然さが、なんとも旨そうな予感を漂わせている。しかもすし詰め満員である。
 この店に来る前に西垣内が、
「きっと客層の大半が、近所のちょっとお金のある中年主婦ばっかりやろ」
と言っていたのだが、まさしくその通りだった。テーブルを囲むマダム達。思わず笑ってしまった。しかし、予約しておいて正解だ。平日の13時なのに待ちが沢山入っている。ちなみに男性は俺たち二人だけなのであった。

10分ほど待ってテーブルが空く。メニューを観ると、ぉお!あの、本当に美味い店でしか観られない煌めきが見える!メニューはオーラを放つのだ。ひと皿の単価は1200円~1800円と高めだが、それだけの内容なのだろう。じっくり考えたあげく、

前菜盛り合わせ
パスタ
カジキのソテー
ステーキ
デザート

というセットを2名で頼み、かつピッツアマルゲリータを頼む。足りなかったら追加するのだ。我々の軽妙なトークで可愛いウェイトレスちゃんを笑わせつつ、キリッと冷えた桃入り白ワインを飲んでいると、前菜の盛り合わせが出てきた。ドドーンと盛られたイタリアによくある威勢のいい前菜は、見た目も味も最高の一言だ。食事はたいていの場合、前菜で決まる。前菜の満足度が低くて、最後まで楽しめたことは少ない。しかもここは盛りがいい。
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次に出てきたペスカトーレが出色だ。かなり太めのリングィーネを使ったこのペスカトーレ(漁師風)、とにかく魚貝のダシが濃厚。アルデンテより固めに仕上げた麺にサルターレ(熱を通しながら絡める)をして、濃厚な味を麺に吸わせている。思わず西垣内と顔を見合わせて
「旨いっ!」
麺がもう200gくらい欲しくなるような、そんなパスタだった。
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ここでピッツアが出てくる。生地を捏ね、焼いているのは小柄な女性だ。しかし業務用の小麦粉袋を運ぶ彼女はタフだ。プロの匂いがする。出てきたピッツアもタフだった。なよっとした生地では全くない。台はパリっとし、小麦の香りが立ち、熱いチーズとうっすらと塗られたトマトとバジルの香りが相乗する、絶妙の味だ。森下にある某店で石焼きピッツアにがっかりした僕にとっては、目からウロコのピッツアだった。(食べるのに夢中だったため、写真はない。下の写真は、ピッツアを焼く石釜と西垣内だ。)
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そしてここから怒濤のメインだ。カジキマグロのソテーにはタマネギと赤ピーマンのソテーと粒ケイパーが絡まっており、レモンを搾って食べるだけのシンプルな構成。しかし、旨い。何というか、皿の裏に見えない文脈があるかのようだ。そう、勢いがあるのだ。そのスピード感に乗って食べるのが心地よい。
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そして牛肉のステーキ。網焼きではないけど、イタリアンパセリと粒胡椒を載せて、ヘタな味付けをしていないそれは、肉汁と野趣の溢れる、これまたスピード感抜群なひと皿だった。
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満腹。はるばる来た甲斐があった。西垣内も満足そうだ。
ドルチェには、桃のプリンとティラミス。桃は、生桃を裏ごしして固めたもの。ティラミスはでかくて甘くて下品で旨い。ヴォーノ!

これで二人で9600円程度か。安いとは言わないが大満足だ。あまりに遠いが、また来たい店である。

関西のイタリアンは旨い!少なくとも赤穂にはいい店がある。これは真実である。

21:07 | Comments (12)

2003年10月15日

大阪で絶品本格インド料理に出会う

india05.jpg またも大阪出張である。しかも朝からの仕事なので、前泊する。うーむ嬉しい!大阪には友人が多々いるのだが、同じ農産物の業界にいる親友と会うことにした。今回は翌日の仕事の関係で京橋というところにホテルをとったのだが、着いてみてビックリ、繁華街というか歓楽街というか、東京でいえば新大久保のようなところだった。びっしりと店が並んでいるが、立ち呑みの店や串揚げ、魚料理やラーメンなど、素晴らしく雑多にして猥雑な空間が広がっていた。こういうのは大好きなのである。片っ端から食いまくりたいという活力が身体からみなぎってくる。

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 友人と落ち合い、店に移動。実は、大阪出張編ではすでこのblogに2回登場している「インディアンカレー」が好きだ、と言っておいたのだが「この近くにあったよ。そこに行こう」という。インディアンカレー、京橋にあったっけ?と思いながら風俗街を抜け、繁華街のはずれまで歩いてきたところに、非常に美しいアジア女性が店先で通りをじっと見つめている光景に出会った。年の頃30台後半か。アルカイックな眼がとても印象的だ。と、思っていたら友人が「ここだここだ」という。
 えっ?インディアンカレーじゃないじゃん、と思いながら合点がいった。友人は、僕が「インドのカレー」を食べたいのだと思ったのだ。僕は「インディアンカレー」というチェーンに行きたかったのだが、説明不足だった。が、くだんの店は明るいログハウス風喫茶のような綺麗な店構えで、何よりこの印象的なアジア(っていうかインド)美女がいらっしゃる。非常に速やかに僕の心は本格インド料理向けにリセットされた。

店名:アルナーチャラム
大阪市都島区片町2-7-21
06-6881-6771

店内はきれいな喫茶店風だが、厨房を覗くと本格的なタンドールがある。ナンやタンドリーチキンを焼くための壺だ。金属製の壷の中に火をおこし、内壁にナンの生地を張り付けて焼くためのものだ。本格的なタンドールがあるということは、きっちりとしたナンが食べられるということだ。しかも料理人はネイティブのインド人が2名だ。それに先ほどのインド美人が厨房にいる。うーん楽しみになる、、、

メニューはワープロうちされたもので、全てに日本語の説明が入っているが、料理自体は全く北インドのバリエーションだ。タンドール料理各種にパコラ(揚げ物)、いわゆるカレー各種にビリヤニ(ピラフのようなものだ)。その各種に、チキンかエビか野菜か、素材を選ぶことが出きるようになっているようだ。
 店内でサーブしているのは日本人のお姉さんである。この人もなかなかに美しいので、いろいろと相談しながらメニューを決める。

・ベジタブルパコラ
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・チキンサグワ(チキンとほうれん草のペーストカレー)
・シュリンプガルニ(エビのカレー)
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・チキンのガーリック焼き
・チキンビリヤニ(ピラフ)
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・ナン

運ばれてきてびっくりした。どちらかというと王宮料理系の、まろやかにしてリッチな味わいのインド料理なのだ。二種のカレーのうち特にシュリンプのカレーは、トマトが多用されていて真っ赤で、そしてマイルドで非常に旨い。本気で旨い!東京でもあまりお目にかかれない系統のインド料理だと思う。


お姉さんにヒンディー語で「美味しい」はなんというのかと尋ねると、
「アチャ」
だという。ここから店内にブルースリーが2人いるような状態になったことは言うまでもない。
「アチャ、アチャアチャ!」
しかし実際に旨いのだ。マサラの芳醇な香りが、トロリとしたサグ(ほうれん草)と溶け合っている。いたずらに尖った辛みはなく、実にマイルドな王宮ぶりだ。

あまりに「アチャ」が多いので、料理人が代わる代わる僕らを見に来る。ひたすら食べて、最後に茄子のカレーとご飯をまた頼んでしまった。
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デザートはクルフィーというアイスキャンディーにチャイだ。もう大満足。友人Mよ、よくぞ俺の真意を誤解してくれた!なんと良い店に突き当たったことか。
 最後にみなさんと記念写真を撮った。なかなかインド美女は入ってくれようとしなかったが、、、

 これだから大阪はやめられない。もっとこよう、と思いつつ友人と別れる。その後、俺の足は自然と繁華街に向かっていた。風俗店の兄ちゃんが客引きをしてくる。その兄ちゃんに「あのさ、ラーメン旨い店ってどこ?」と訊くと、気勢を逸した兄ちゃんは「僕やったらサイガのスタミナラーメンですわ」という。その兄ちゃんを信じて、2分後にはサイガのカウンターに座ってスタミナラーメンと餃子を食べたのであった。

 さて明日は仕事だ、、、

23:54 | Comments (1)

2003年10月16日

大阪で食い倒れ完遂して大満足。

 今日は久々に完璧な食い倒れが満喫出来た。静かな満足が僕を包んでいる、、、

 朝から重要な会議。きっちり仕事しましたぜ!マジで! 朝飯も食べずに、客先を辞去したのが12時半過ぎ。もう腹は減りまくっているのであった。同行の青果物流通業者の方々と共に昼食をということになる。
 会議が住道(すみのどう)という場所だったのだが、駅までの道のりにいろんなものがあって冷やかして帰るのが面白かった。豆腐屋ではいかにも旨そうな生湯葉が売っていたので足を止めると、ひろうす(がんも)も旨そうだ。2つずつ買い求める。湯葉はわさび醤油か、柚子胡椒で食べると旨いらしい。

osaka01.jpg 商店街に入る前の空き地の横で、何やら面白い車が停まっている。なんと業務用の電気オーブンを積んで、その場でメロンパンを焼き、直接販売をしているのだ!焼き上がり時間の目安が書かれており、すでに5,6人の行列ができている。俺の闘魂は一気に燃え上がった。

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並ぶこと5分、見事焼き上がったメロンパンを同行の皆さん分も買い求め、出来たてアツアツのメロンパンにかぶりつく。表面は当然ながらクリスピー感たっぷりでカリっとしているが、クッキー生地の部分以外は驚くほどにフワフワ。生地に空気をたっぷり含ませているので、大きめなのに実にライトなのだ。内部に密に詰まっていないので、軽く食べられてしまう。これは幸先がよい。

■シャレードのメロンパン 120円/個
移動店舗(っていうか、車)なので、大阪府内を適当に巡回しているらしい。

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osaka03.jpgさて電車にのり目指すはキタすなわち梅田界隈である。実は大阪オリジナルのファーストフードである「イカ焼き」をまだ食べたことがなかった。阪神百貨店の地下食品売り場に旨い店があるというので、行ってみる事にした。そうしたらそのすぐ近くに551(蓬莱)の豚まんがあったので、豚まんと肉団子の甘酢タレ、シュウマイを買って立ち食いコーナーにて食いまくった。イカ焼きは、お好み焼きとは明らかに違うものだった。今後数回は食べてみないと理解できないかもしれない。

 さてその後は同行の方々とみっちり2時間の会議であった。梅田の地下街の喫茶店で会議をしている間、地下街のトイレに行ったとき、どうにも気になる店を見つけてしまった。それが「ピッコロカレー」である。osaka05.jpgインディアンカレーと同じように数店舗のチェーン展開をしているようだ。雑誌に取り上げられたりしているようで、店先には記事のコピーが貼られている。同行の皆さんに聞くと、
「うちのおかんは大阪ではピッコロカレーが一番美味しいって言うてました。」
という。
 実は本日は、昨晩食べられなかった「インディアンカレー」に絶対に行こうと思っていたのだ。しかしこのピッコロカレー、非常に気になる。なんといってもトイレの横にある8席しかないカウンターだけの店というのが、絶妙にソソルのだ。

その時、食い倒れの神が俺にこう囁いた。

「心配するでない。ピッコロカレーではビーフカレーを食し、その後インディアンカレーにてハヤシライスを食べればよいのだ。さすればカレーが重なることはない。」

おおっ そんなことは考えてもみなかった! なんと素晴らしい啓示だろうか!? 実は昨晩、本格派インドカレーを食べ終わり床に就き、ひそかに悩んでいたのだ。
「インディアンカレーは実に旨いのだが、あそこのハヤシライスも食べてみたい、、、でもカレーも食べたい、、、どおしよう!?」
この悩みが一挙に解消されるのである。あとは、肉まんやら何やらを詰め込んだ胃袋にカレーとハヤシが入るのか?という点だけであるが、そんな心配はないことは読者の皆様はご存知だろう。

osaka04.jpgピッコロカレー店内は、渋く光るカウンター席と、8席の丸イスで構成される純喫茶風の調度だった。ビーフカレー、チキンカレー、シーフードカレーが品書きされている。ビーフが旨いと聴いているので、ビーフを頼む。店番の女性がまず別皿に白菜の浅漬けを出す。大阪のカレーの付け合せは面白いなぁ、インディアンカレーでもキャベツの甘酢漬けがでるし。業務用アルミ鍋に一人分のルーを入れ、熱を通す。ご飯を盛ってその上にたっぷりと濃い茶褐色のルーをかけ、それは供された。

■ピッコロカレー
・ビーフカレー 980円

濃い。
とにかく濃厚なプレゼンテーションである。茶褐色というか暗褐色のルーは、見るからに煮込まれ度の高さと深さを感じさせる。スプーンで軽く混ぜ、口に運ぶ。インディアンのようなパッと散るような辛味はない。見た目通りの濃厚でねっとりとした芳香が立つ。牛肉はスネか肩を長時間煮込んでいるようで、やわらかい身がゴロゴロと入っている。これもおそらくバラ肉をつかってトロリと仕上げているインディアンとは対照的だ。無論これはこれで好ましい。美味しいカレーだ。量的にも価格相応に盛りがよく、満足いく。皿を舐めるようにいただいた。これは、家庭で食べる日本風カレーを、限りなくプロフェッショナルに拡張したカレーだ。そのため、実に心地よく懐かしく、期待を裏切らない味だと言える。いい店を見つけた。


しかし
と、地下街を「インディアンカレー」に向かって歩きながら自問した。俺が求めていたカレーはあのピッコロカレーだろうか、と。昨晩から俺の魂が欲していたのは、鋭くエッジの立った、風が通り抜けてゆくあの感覚ではなかったか、と。

 と、格好つけてみたが、単にインディアンカレーにも行きたいだけである。ここ1ヶ月半の内に3回目だ。いや、今後もできることなら大阪にきたら必ず寄りたいのだが。今日はしかし、カレーではなく、前回隣の人が食べていて気になったハヤシライスを頼んでみよう。エッジの立ったカレーはまた次回だ。
 ちなみにカレー780円に対してハヤシは600円と安い。スパイスや手間がカレーよりかかっていないのだろうか。カウンター中央の飯櫃(めしびつ)のまん前に座る。これまでも観察していたのだが、この飯櫃前にいるのが店のチーフである。山田と名札に書かれた、20代後半っぽいそのチーフは「いらっしゃいませ」を言うとき、愛想笑いのひとつもない。かといって不快な無愛想感を漂わせているわけでもない。そして飯櫃から適量のご飯を皿に盛り、カレーをレードル一杯分、綺麗にかけて供する手際は、どうみてもプロフェッショナルである。このカレーかけはどんなに店が混んでも彼一人が担当している。

osaka09.jpgハヤシが出てくる。なんとも初めて見る色彩である。オレンジに近いトマト色、玉葱は櫛型カットが大量にのっている。そしてグリーンピース6粒。うーむ適度なチープ感が漂っている。このハヤシは山田チーフではなく奥の厨房でソースがかけられて出てくる。さて、どのような味だろうかと一口食べて、驚いた。カレーで感じたあの甘さが、ハヤシだとストレートに出てきている。甘い。無論、好ましい甘さである。玉葱のプンとする香りが鼻腔を抜ける。ハヤシのソースはこれもまたねっとりしており、口中に適度な摩擦感を感じさせながら甘味を発しつづける。う、、、旨い!こんなハヤシライスは初めてなのだった。
 無論カレーとは違って辛味は一切ないのだが、なぜかあの「エッジ」を感じる。それは、完成度といってもいいかもしれない。全く、隙や脇の甘さがないのだ。それも味だけではなく全体の世界観を通じて、である。これはびっくりした。

その世界観の礎を発見した。さきほど触れた飯櫃である。osaka07.jpgこの飯櫃、単なる業務用のガス飯釜かと思ったが違う。本当に飯櫃なのだ。ステンレスの胴の中に、キャンバス地のような布の飯袋をいれ、そこに炊き立ての飯を詰めて保温しているようだ。これに気が付いて感動してしまった。大体どこのカレー屋でも、業務用ガス釜から直接飯を盛っている光景を見る。でもこの店では、飯櫃ひとつにもこだわりを見せている。そう思いながら見ていると、貴重な場面に出くわした。飯を使い切って、新たな飯を充填するシーンだ。奥から新しい飯釜を持ってきて、入れ替えをするところだった。残念ながらハヤシを食べ終わってしまい時間が経っているので席を立たざるを得なかったが、なんだかこの店の世界観を構成する重要なポイントを発見したような気持ちになった。

 大阪は、善い。顧客を喜ばせるためのプロフェッショナリティとサービス精神に満ち溢れている。仕事がうまくいったこともあり、気持ちよくのぞみ号に乗り込み、帰郷して、これを書いている。あー、旨かった。

20:46 | Comments (4)

2003年11月03日

静岡駅周辺の旨いもん 「堪三」

 SAVAさんからリクエストがあったので、静岡駅周辺の旨い店をお教えしよう。ちなみにSAVAさんは、高知県出身のカメラウーマンでありアーティストであり、よくわからない楽しいねーちゃんである。

 静岡県は、お茶の仕事や畜産関連でいきまくっているので、知っている店は多い。ただしその多くは山の中だったりするのだが、、、そんな中、駅から歩いていける距離に素晴らしい店がある。ちょっと値は張るが、その価値がある店だ。ぜひ参考にして欲しい。
 以下は過去に書いた記事で、まだ日の目を見ていなかったものだ。ちょうどよいのでここに収録したい。

やまけんの出張食い倒れ日記

「静岡伝説の職人の店で襟を正した。の巻」

 ずいぶん久しぶりになってしまった。ここのところ大変な繁忙だったのである。途中になっている九州編などちょい面倒で更新していないのだが、、、しかし!超絶美味いもんに出会ってしまった時にはついつい書いてしまう!本日も大変な店に出会ってしまったのである。
 読者の皆様からは「どうでもいいけど場所とかきちんと書いといてくれないと、出張とか行ってもわからない」というお声をいただいている。ので、今回はきっちりと記しましょう。

 この出張食い倒れ日記でも数回、静岡の旨い店を紹介しているが、そういうところを元々私が知っていたわけではない。私の静岡での導師は、おそらく日本最高レベルのお茶メーカーである「葉桐」の専務である。この葉桐との付き合いを書き出すと5万字くらいかかるので辞めておくが、とにかく茶も一流なら、食にかける情熱と旨い店を嗅ぎ出す嗅覚も超一流なのがこの専務なのだ。その専務が言う。
「やまけん君、いい店があるから、次に仕事で静岡に来る時は前日の夜からおいで!」
わざわざ携帯にかけてきてくれるのだからこれはただ事ではない。超繁忙のスケジュールを力技でこじ開け、静岡に前泊をしてその専務と落ち合ったのであった。
 静岡駅に19時に着き、市内繁華街のはずれの道を5分ほど歩くと、夏場には敬遠したくなるアンコウ鍋の店があり、その横に小さな、趣味のいい玄関口を持つ店があった。

牛味 「堪三」(かんざん)
静岡市昭和町10-9
054-273-3773
18:00~20:00(夜のみ営業)

 薄藍色の暖簾をくぐるり店内に入ると、10名程度が座れるL字ウンターと6人がけくらいの奥座敷のみの小さな店である。すでに7割方埋まっているカウンターに腰をかけると、ごま油の香りとパチパチと油がはぜる音が聞こえてくる。
 実はこの店が何を売りにしている店なのか、この時点では全く知らなかったのだ。
「牛味って書いてあったけど、天ぷらやなのだろうか???」
と専務に聞くとニヤッと笑い、「俺もここで何が出てくるのか、いつもわからないんだ。とにかくお任せなの。」とのこと。

 店の大将は50前後。眼光するどいが良く笑ってくれる北川さんと、女性が一人。僕はビール、専務は迷わず「お茶!」。なんとこの店の厨房にはこの葉桐の専務が書いた「お茶の入れ方十ヶ条」が貼ってあるのだそうだ。店の女性の煎れた煎茶を飲ませてもらったが、確かに上手に煎れてあった!
 突き出しはカニときゅうりの三杯酢だが、オレンジの何ともいえない味の珍味がまぶされている。大将に聞くと「柿。」柿を粗くおろしたものを加えているのだ。絶妙な味の突き出しで、もう一鉢頼もうとしたら刺身が出てきてしまった。静岡らしく新鮮そのものの鰯と鯛、中トロ。私は食べるペースが速いのだが、刺身を楽しんでいるうちにすぐ天ぷら用の和紙をひいた皿がでた。まずはオクラ、みょうがと夏の旬味が揚がり、旨味たっぷりのさいまきエビが添えられる。ちなみに、天ぷらで美味しい海老はやっぱりさいまきだなぁと思う。そしてそのむこうではなんと客前にある火鉢の網の上に、生きアワビがどさっと載せられた。俺の手前の鉢には松茸がどっさりと炙られている。やがて火のとおりがころあいとなった段階で、甘く火の入ったアワビの切り身と肝(これがめっぽう旨い)、そして松茸の盛り合わせにすだちが添えられてきた。この段階ですでにしみじみと幸せを噛み締める俺だった、、、

 しかし!!! ここまではほんの序の口だったのダ!

 実はこの大将、この「食い倒れ日記静岡とんかつ編」で軽く触れた、清水市の伝説の名店「かつ好」が一時期新業態店として出店していた牛舌の炭火焼店の板前を勤めた方だったのである。この牛タン店は実は今でもある。が、そこで出される料理の味は、北川さんの在籍時からすると比べることさえ罪だという。とにかくこの北川さんの技の最大の発揮ポイントは、、、やはり肉!なのである。

 そう、北川さんが焼き始めたのはまぎれもない牛舌。市販の薄いスライスではなく、ふっくらと厚みをもたせたタンである。炭火に脂が落ちて炎が上がり、タンをさっと舐める。旨そうな焦げ目を十分につけた後、皿に盛ってくれる。その芳醇な香りにしばし、我を忘れる。この香りは、低温冷蔵庫で2週間以上熟成させないと出ない香りだ。口に運び、一噛みするとほぼ抵抗なく繊維が割れ、ゴージャスな肉汁が染み出てくる。そしてあの香りだ。牛肉は香りで食べるものだ。そして香りは脂から立ち上る。旨いなぁ、、、
 と、北川さんがすき焼き鍋を用意している。マツタケと牛肉、糸こんにゃくという豪勢なすき焼きだ。うーむこれも食いたいと思っていると、北川さんが「これは向こうのだよ」と、カウンターの対面にいるお客さんグループを目で指して、微笑する。後ろ髪を引かれていると、僕ら用の牛肉を出す。やたらとサシの入ったロース肉だ。牛の格付け上、A4は確実に獲っている上肉だ。これを厚めに切り分け、やおら網で焼く。そして、あの香りがやってくる。供された肉をいただく。これも見事に熟成されたロースだ。とろりと溶けていくあの感覚。そして甘味と香り。牛肉のもつ複雑な味の組成が、分解されていくのだ。
 この後ご飯と香の物、フルーツが出て、北川さんとしばし歓談す。気さくな人だが、仕事には厳しい。仲居の女性は3人いるそうだが、そうとうに厳しくしているらしい。葉桐の専務はそれをいつも観ている。もちろんいじめではない。理由を述べながら怒る。だから、女性はみな、辞めない。今日いる女性はお腹に赤ちゃんができているそうだが、「ぎりぎりまで働かせてください」と言っているそうだ。

 これだけの店が、なぜ話題にならないのだろうか?非常に不思議。静岡名店の1店。都内で1万円以上の飯を食べるくらいなら、ここにきて食事をしてみてはどうだろうか。感動することは間違いない。

12:34 | Comments (1)

2003年11月05日

静岡駅周辺のうまいもん その3

 過去に書いた静岡編の一番最初の記事を掲載し忘れていた。SAVAさん、これだけあれば困らないと思いますよ。感想よろしく。

2002年3月22日

 たった今、新幹線で静岡に向かっている。本日はあるお茶産地の生産者グループに対して実施しているコンサルの最終報告会である。
 静岡には、農業関連の仕事をしている知人が多く、そうした人が私を講師として呼んでくれたり、コンサルの仕事を紹介してくれるため、接点が多い。また、そうした知人がほとんど全て食に関心の深いため、県外人である私に静岡の美味い物をこれでもかというほど食べさせてくれる。おかげで、静岡についてはその辺の人よりは通じていると思う。

 静岡というと、ほとんどの人が反射的に「お茶」を思い浮かべるだろう。事実、私の仕事としての静岡との関わりはお茶関連のものが多い。私がまだ大学院生だった頃、静岡市内にあるお茶メーカーとお付き合いができた。深蒸し茶全盛のこの時代に、あえて若蒸し(業界では「伸び」という)の本物志向のお茶を前面に押し出すそのH社の最高級茶は、かの高級スーパー紀伊国屋にて一番高い価格をつけている(なんと100g5000円である)。このH社の専務が、船乗りになろうと水産大学にいったのにもかかわらず家業の都合でお茶の道を目指すこととなった快男児であり、かつまた食道楽なのである。私の静岡美味いものの旅はこの専
務との連れ食いから始まる。
 当時まだインターネットの普及が始まったばかりの頃、このH社のWebを立ち上げるべく、泊りがけで毎月若手社員に指導にいった。3度の飯より食べることが好きな私のために、専務は本当にいろんな美味しいスポットに連れて行ってくれたのである。

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■とんかつ「かつ好(よし)」
特製ロースカツ定食 2500円(当時)

 中でも最高だったのは、とんかつの名店「かつ好」。静岡と清水に店があるが、最近では恵比寿ガーデンプレイス内にかっちょいい店を出しているので有名である。ここに入ったら、トクロー定食(特製ロースカツ定食2500円!)を食べるべし。包丁の入ったかつが銅製の網にのせてやってくる。それをソースを使わず、店独自に調製した塩でいただくのだ。今でこそこうした食べ方は珍しくなくなったが、当時初めてこのとんかつを食べて私のとんかつ観は抜本的見直しを要することになったのであった。豚特有の獣臭みを抑えながらよい意味での香りはなくさぬように飼育された豚肉を、あくまで軽くふんわりと揚げている。噛むと肉のジュースが口中に染み出てくる。塩を使うことで甘味が引き出され、これまた店で調製された芥子をつけることで一層味が引き締まる。元来とんかつにはソースをどぼどぼとかけたいのだが、このかつはそれを許さない凛とした佇まいがあった。
「学生時代からよくここで食べてたからここのオヤジはよく知ってるんだ。今は一番いい職人が○×店にいるから今度連れてってやるよ!」
と専務は言っていたものだが、数年後の最近、「いい職人が辞めて味が落ちたからもうあまり行ってない」とのことだった。あのカツがまた食べたい、、、その後、恵比寿店に何度か足を運んだが、確かに「あの味」ではなかったのである、、、

■しずはた蕎麦 静岡市内
(詳細わからず)

 もう一つ忘れ得ぬ店がある。静岡の郷土の陶芸に「しずはた焼き」がある。市内に、このしずはた焼きの器でそばを供する小さな店がある。何処にでもあるようなその気取らない市中の蕎麦屋で「しずはた蕎麦大盛り」を頼むと、しずはた焼きの大きな鬼の面を器に、蕎麦が盛られてくる。この店のスタイルで素晴らしいのは、つゆと薬味である。薬味には白葱、青葱、ゴマ、天かす、鶉の卵が付いてくる。これをつゆに投入しどろどろになったところに麺を「和える」。これが素晴らしく美味いのだ!以来、家で蕎麦をゆでる際には、この薬味が私の定番に
なった。

 しかし今回は新たにチャレンジをしようと思っている店がある。それは前回そのお茶メーカーの営業の人に聞いたとんかつ屋である。何でも、そこの「特上」は、皿の上にとにかく肉が食いきれないほど載ってくるというものらしい。

「とにかく肉を食べたぁ、って気になりますヨ!やまけんさんでもあの特上を食べたらばっちりなんじゃないですか?」

という。で、あれば絶対に食べよう!と決心しているのであった。
 そうこうしているうちに静岡に着いた。これから山間部に入るのでしばらく筆を休める。

 、、、最終報告会の午前の部、終了!ここ静岡の新間地区には、素晴らしい中華がある!それは、満留賀(みるか)という店なのだ!私はこの産地に来るたび、お願いしてここに昼食に来ている。はっきりいって静岡市街から30分ほど山に入ったところにある、完全に田舎(失礼!)の川沿いの店である。知らない人もいると思うので言っておくと、静岡という土地は、中心部である駅から10分も車を走らせるともう山と川、、、である。私の通う産地は新間という地域にあるが、どだいここの街道筋に中華の店を出してもなぁ、、、というロケーションである。
 しかし!この満留賀、むちゃくちゃに繁盛していて、昼なんぞは時間をずらさないと入れないくらいに四方八方に名声がとどろき渡る店なのだ。店構えは小さくて汚いその辺の中華屋なのだが、店内の厨房はビカビカに磨かれ、使い込まれている。大火力コンロは4口ほどあり、熟達の料理人が鍋を振っている。聞けば、この満留賀の店主は、大ホテルの中華部門でコックを長年やっていたのだという。
 その料理は本当に驚嘆の味と価格なのだっ!!

■満留賀 静岡県新間
坦々麺 550円
上海焼きそば 550円
五目あんかけご飯 650円
鶏とカシューナッツの炒め物 650円
セットB レバニラ炒めセット 700円
セットD 豚の角煮セット 700円

 この値段を見よ!この店のロケーションがなせる技であろうが、この価格で出てくるのは、本格中華料理である。横浜中華街の名店のレベルと大差ない技術がおしげもなく使われている。特に坦々麺の美味さは特筆に値する。ちまたの日本風坦々麺は、チーマージャン(ごまのペースト)がやたらと使われて味のりんかくがボヤケタ坦々麺で、あまり美味いと思うものに出会ったことが無い。しかし、この店の坦々はスープの味ベースがしっかりしている上にチーマーと肉味噌が乗っている。肉味噌を崩し溶かしこみながら麺をすすると、きっちりと味の輪郭が浮き上がりながらゴマの香りがするのである。美味いのだ。これが550円はないだろう。そして鶏のカシューナッツ炒めを食べて、その技術の確かさと食材への妥協のなさ、そして価格との落差を実感し、気が遠くなるのである。
 この店で私は毎回確実に2人前は食べる、、、麺とご飯ものと単品。本日は夜もあるしとんかつもあるし軽めにしよう!と思ったのだが、結果的にレバニラ炒めと上海焼きそばを頼んでしまった。カシューナッツ炒めはみんなで頼んだがみなおなかいっぱいと言って残しているので食べてしまった。産地の人手、私より1つ年下の石原さんがご飯を大量に残しているので、ご飯食べ残しを許せないやまけんとしてはつい引き受けてしまった。都合3人分だろうか、、、夜が思いやられるのである。

 そして最終報告会はバンバンに終わり、夜の打ち上げに進むのであった。とんかつはさすがに本日はムリだろう。まずは産地の方がいきつけの活け魚料理の店へ。

■克巳(かつみ) 静岡市羽鳥
石鯛お造り・ぼたんえび・ホタルイカ刺身・しめさば・かつお
黒はんぺんのフライ
黒はんぺん焼き
フライ盛り合わせ
すき焼き
鯖のバッテラ

 多くは言うまい。私は本気で静岡への移住を考えてしまった。なんで街中の家族経営のこんな小さな店で素晴らしい料理が出てくるのだろうか、、、
 活け魚料理は美味くない(いけすの中で身が細った魚が出てくることが多い)といわれるが、この店はなんとオヤジが船を持っており、底引き網で漁をしているのである。料亭にも魚を売っているらしいが、このオヤジ(ひょうひょうとした、ごくふつーのめがねオヤジである)はめっぽう魚好きらしく、いいネタは自分の店の水槽に持ってきてしまうのである。石鯛、おいしゅうございました。ホタルイカ、新鮮で目が飛び出そうになりました。そしてお酒は、静岡が誇る磯自
慢。端麗すぎて食中酒っぽくはないんですが、好き。
 そして私の大好きな黒はんぺんのフライ。静岡といえば黒はんぺんである!これは声を大にして言いたい!黒はんぺんとは、江戸前の白いはんぺんとはまったく異なる。いわしなどの小魚をすり身がベースとなったはんぺんで、どちらかといえば愛媛の名産であるじゃこ天に近いものがある。これの食べ方で私が一番すきなのが、フライである!パン粉をはたいて揚げた、湯気の上がる黒はんぺんフライにソースをどぼどぼとかけて食べるのである。底力のある黒はんぺんだからこそ、こんなタフな食い方ができるのだ!ちなみに私はこのフライにかけるには中濃ソースがよいと思うのだが、地元の人たちは「ウスターが定番じゃ!」とのことであった、、、
 そしてその後になんとすき焼きが出てくると言う、??という料理の展開。しかしこれがまた、素晴らしい肉が出てくるのです。私も肉牛農家にたくさん友人がいるので、牛肉のグレードは判別つきます。最上クラスのA5というグレードの肉がきっちりと出ていました。この時点で私は、本日はこの店で打ち止めでいいや、、、と思い、食いまくりました。
 そして最後に出てきたバッテラ。鯖の切り身がちょこんと寿司飯にのっかっているような物とは違います!大型の鯖の半身がご飯を抱きこむような形の変則バッテラ!つまり、外からご飯が見えないのです!切り分けるとご飯が身に抱き込まれているという、贅沢なシロモノ。しかも酢で締めすぎていないから新鮮な鯖の切り身感を存分に味わえるのである!ヤラレタ、、、

 さすがに私も満腹。次にもう一軒、県職員の知人の方々が集まっている二次会の店ではおとなしくしていました。海老しんじょを種に酒を飲む飲む、、、
 しかしそこを出た後に私は米の飯がくいたくて仕方なくなってしまったのです.お茶漬けかなんか、、、といったら県の方がつれていってくれました。隠れ家のような小料理屋(もう場所もわからず、二度といけないと思う)。ここの料理が美味くて、結局どんぶりめしにいわしの酢〆め、じゃがバター、茄子の味噌炒め(絶品!)。穴子の煮物があったのでこれでどんぶりめしおかわり。

これにて打ち止めとなったのでした。超ド級のとんかつは翌日に持ち越し!
(つづく)

05:07 | Comments (3)

予告

むふふ。本日は名古屋出張である。
名古屋と言えば、、、という店がいくつもあるのだ。

とりあえず昼食時間に間に合えば、下記を回ろうと思う。夜はそんなにゆっくりしてられないので、昼にかけるのである。こう期待。

チャオ 菱信ビル店のあんかけスパゲティ
住所 : 名古屋市中村区名駅4-8-12 菱信ビルB1
電話 : 052-562-5668
営業時間 : 11:00~(L.O.21:00)

矢場とんの味噌カツ
住所 : 愛知県名古屋市中村区椿町6-9エスカ地下街
電話 : 052-452-6500

コンパル テルミナ店 のエビフライサンド
住所 : 愛知県名古屋市中村区名駅1-1-2 テルミナ地下街B1
電話 : 052-565-0211
営業時間 : 朝8:00~夜9:00

07:28 | Comments (6)

名古屋にてその1 味噌カツ「矢場とん」と、あんかけスパゲッティ「チャオ」

 名古屋出張である。名古屋は大好きなのである。名古屋には独特の食文化がある。それは関東とも関西とも違う、やはり「名古屋」としかいいようのない文化が存在するのだ。鰻の焼き方が関西流になる(蒸さないで焼く、アレだ)のがだいたい名古屋からだし、とんかつのソースに味噌が使われるのもやはり名古屋だ。いや、ちょっと手前の豊橋でもそうだけど、マイルストーンとしては名古屋ということがいえるではないか。

 その名古屋の食の中でもひときわ異彩を放つのが、「あんかけスパゲッティ」だろう。これは、ちっと信じられない料理だ。まず麺は2.3ミリの超極太麺だ。ボルカノ食品というメーカが作っているもので、これをゆで揚げておいておく。そして注文が入るとその極太面をラードでこってりと炒めるのだ。ラードがまぶされて風味の就いた麺を大きな皿に盛り、そこにかけるのが洋風ソースだ。これがまた超弩級のオリジナルソースで、トマト風味ではあるものの、正体不明のとろみソースなのだ。ちょっとピリカラで、どう考えてもとろみは片栗粉系のトロトロ加減である。これを先の極太麺にたらーりとかけて、その上から各種の具をトッピングしていただくのである。これが見事にはまる。ラードがしつこいとか、とりあえず量が多すぎるとかいろいろとあるのだが、大体、僕が薦めてこれを食べた関東人は「おいしい」と言っている。そのあんかけスパの元祖が「スパゲッティハウスヨコイ」という店だ。テレビ塔から栄を錦通り方面に歩いたところにあり、数年前に僕はそこで衝撃の初体験をしたのであった。このヨコイ、愛好家が多く、こんなページもある。↓

 ヨコイではその独特のソースをレトルトで販売しており、僕の家にはかならずこのソースとボルカノ食品のスパゲッティが常備されている。
 名古屋名物はいろいろあるが、まあ僕にとってはこのあんかけスパをもって嚆矢とするのであった。

 さて名古屋では午後イチに重要な会議があるので、スケジューリングが難しい。昼の一歩手前に名古屋に着き、かつ手早く食べ歩かないといけない。なぜならそう、ハシゴする気満々だからだ。せっかくの名古屋だもんね~
 とりあえず13時から市内で会議なので、11時には名古屋に着いていなければならない。また、食べ歩きをするならば、できればあまり離れていない場所で2~3店を回りたい。また、今回は、まだ「行った事がない店」に行きたいと言う気持ちだ。ということを条件設定し、名古屋駅周辺で食べられるあんかけスパと味噌カツを食べることにした。

 店は下記である。

チャオ 菱信ビル店のあんかけスパゲティ
住所 : 名古屋市中村区名駅4-8-12 菱信ビルB1
電話 : 052-562-5668
営業時間 : 11:00~(L.O.21:00)

矢場とんの味噌カツ
住所 : 愛知県名古屋市中村区椿町6-9エスカ地下街
電話 : 052-452-6500

 そう、どちらも名古屋駅に隣接する地下街の中にある店だ。豚カツの矢場とんは、これまた有名だがまだいったことがなかった。矢場町というところが本場らしいが、名古屋駅横の地下街にあるので、まずはここからとしよう。で、味噌カツを食ってから、あんかけスパのチャオに行くことにしたい。チャオとは、先述のヨコイで修行した人が開いた店らしい。ここも超人気とのことなので、前から行ってみたかったのだ。この2店舗を攻め、その状況によってはもう一店攻めると言う計画を練り、就寝。

~起床!
 朝食は摂らずに「のぞみ」で一路名古屋へ。名古屋着が10時30分。地下街はすぐとなりなので移動に10分もかからない。早く着きすぎて、店の人たちの朝礼中だった。
「お客様に感謝して、一日をはじめましょう!」みたいな。
 この「矢場とん」の外観は、、、恐ろしくベタである(笑)このブタちゃんマークを観て欲しい。
yabaton1.jpg
このブタが店内にも跳梁跋扈している。さて11時ジャストに入店。僕が一番目のお客さんです。店のおねーさん(カワイイ!)に「初めての人が頼む場合、どれがいい?」と訊いた。「そうですねー基本はロースかヒレの定食ですよ。」とのことなので、ロース定食(1100円)にする。また、串カツでヒレも一本(200円)頼んでみる。
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 程なく運ばれてきたヒレ串をかじる。久しぶりのドテカツである。あ、ドテというのはこの味噌ソースの俗称である。串カツとドテソースの相性は素晴らしい。この矢場とんのドテは実にマイルドかつドライな風味だ。つまり甘すぎないと言うことだ。これには好感が持てる。
 そして運ばれてきたロース定食。とにかくカツが味噌色に染まっている。
yabaton4.jpg
先ほど書いたとおり、ここのソースはどちらかというと甘味抑え目のドライ。これも実に旨い。不思議なことに、なんだか家で食べているような懐かしい味である。僕の後、カップル2組がはいってきたりしているが、外では「お土産20本!」という声が聞こえる。あ、そうか、串カツを20本ということだな。中々いいお土産だな、、、ロースは1本150円だし。

ぱくぱくぱくぱく

12分で食べてしまった。御馳走様でした。

うん、旨いです。矢場とんの味噌カツ。ただし、なんとなく先入観としてある「甘~い味噌」というイメージではなく、甘味控えめのドライなソースなので、少し残念感があるかも。でももちろん、問題なく合格点。

さて15分経過だ。すぐさま駅の反対側に渡って地下街に潜入。あんかけスパのチャオに向かうのだった、、、

(つづく)

23:53 | Comments (5)

2003年11月07日

名古屋にてその2 あんかけスパ「チャオ」

 みそカツを食べた直後だが、目指すはあんかけスパの「チャオ」。あんかけスパといえば、本記事の「その1」に紹介した「スパゲッティハウス ヨコイ」が元祖だが、このチャオは、そこで修行した人が開いた店で、人気を二分しているという。実は僕はヨコイ一辺倒で、チャオにはいったことがない。今回は「矢場とん」もそうだが、行ったことのない店で攻めてみたい!ということでチャオを目指すのであった。

 さて、西口地下街の「矢場とん」から速やかに移動。目指す「チャオ」は東口の地下街にあるなのだが、、、見つけるのにすごい苦労したぁ~
 名古屋の地下街というのは非常に充実している。そして網の目のように張り巡らされており、初心者には全く全容がつかめない。駅前の地上にそびえたつビル群の地下にそれぞれ地下街があり、それが相互に連結して巨大な地下空間を形成しているといった感じなのだ。これはLANが相互接続することで形成されるインターネットの構造と同じだなぁ。

名古屋地下街はインターネット方式だった

ということだな。名古屋の地下街もLANの世界は保持されていて、例えば「テルミニ街」とか「ミヤコ地下街」など、ストリートや区画ごとに名称がある。新参者には訳がわからないのだが、、、しかし、この地下街でほぼ必要なものが全てまかなえるようになっているのはすごい。あらゆる業種の店があるようである。当然、食べ物についても困らない。名古屋のB級グルメの名店の支店がかなり揃っているのである。

 さて11時に矢場とんに入店し15分で完食。そこから5分で移動するハズだったんだけど、、、どこだかわからん!ビルの名前「菱信ビル」をアテに地上部を探すのだが、全くもってわからない。しょうがないので電話で店に聞いた。要するにメルサを背にしてみえる東京三菱銀行のビルの地下ということだ。道の向かいから地下に降りてその方面に向かったが、同じ所をぐるぐる回ったりと、苦労してたどり着いた。もう11時35分である。
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■チャオ 菱信ビル店
住所 : 名古屋市中村区名駅4-8-12 菱信ビルB1
電話 : 052-562-5668
営業時間 : 11:00~(L.O.21:00)

ミラネーズカントリー レギュラー 650円(だったかな?)
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 チャオは非常にきれいな店の作りで、地下街のカフェという感じである。しかし、そこで出てくる料理はギトギトなのだが、、、店内にはサラリーマンと家族連れに二分されている。12時過ぎには殆どがサラリーマンになるという。
chao2.jpg
 オーダーは当然「ミラカン」である。これが一番出ているメニューだそうだ。ミラカンとは正式には「ミラネーズ・カントリー」。ミラネーズというのはタマネギ、ピーマン、マッシュルーム、タケノコを炒めたもので、カントリーというのはそれにウインナーが加わるということだ。ここでスゴイのが、ウインナーは、ちょっと本格的な粗挽きウインナー、、、などではなく、皮が赤いあのウインナーなのだ!絶句であるが、これでないとあんかけスパではない!という痛快さだ。みよ、このプレゼンテーションを↓
chao1.jpg

 まずは麺とタマネギ、ソースをちょいっと絡めて食べる。うん、マイルド!ヨコイにくらべると食べやすい感じがする。麺がかなり強めに炒められているので熱い。ちなみにこのスパ、最初に麺とソースを混ぜたりしない方がよい。なぜかというと、麺にタップリこってりとラードが絡まっているのだが、そのままにしておけば下に流れ落ちて溜まってくれる。それをソースと丁寧に混ぜたりすると、ソースの中の片栗粉が油もまとってしまい、ギットンギットンになってしまうのだ、、、
 さて順調に食い進むが、なんだか違和感も感じる。チャオのスパは俺には合わない予感。食べやすい味なんだけど、なんか引っかかりがなさ過ぎる。それにちょっと油っぽさが好かない。ヨコイのラードもギトギトなので量的には同じかと思うのだが、こっちのは少し腹にもたれる。あ、いや、トンカツ食べてるからじゃないですよ。おいら、トンカツとスパなんてたいした分量じゃないっす。なんだか量的な問題ではなく、質的な問題なのだ。

 ま、そうはいいながら完食。ごちそうさまでした。割り切れない思いはあるものの、立派なあんかけでした。時刻は11時50分。11時から50分間で2食。ほんとうは喫茶コンパルの海老フライサンドも食べたかったのだが、今回は断念だ。

 急いでとある卸売市場に向かう。さ、仕事、、、

(更につづく)

08:51 | Comments (0)

2003年11月12日

最高級のラフランスはここで決まりだ

lafrance.jpg ラフランスが美味くなる季節がやってきた。洋梨は、食べ方とくに食べ頃の見極めが難しく、苦手とする人が多いのだが、ピークの時期を見極めて食べると超絶に美味しく、やみつきになる果物だ。ただし、それは「よく栽培されたラフランスであれば」ということになる。何でもいい訳ではない。

 そして僕は素晴らしい生産者を知っている。つい最近ぶどうを送ってきてくれた、山形県上山にある尾形果樹園がそれだ。僕はここの2代目、匡弘ちゃんと昨年取引をしたのだ。でも今年は取引はしない。けど、売れて欲しい。ということで、頼まれてもいないし仲介手数料も発生しないが、紹介したいと思う。その代わりテキストは昨年使用したものに少し手を入れただけだが、、、果物好きな人は必読だ。



「高貴な香り、滑らかな舌触り!本物・食べ頃の美味を!旨極のラ・フランス」

 山形といえば何を思い浮かべますか?さくらんぼ、ぶどう、、、はいはい、それもそうですが、今回はあの、山形が誇る高級フルーツをご紹介します!それは、、、秋冬の山形の味覚の女王、「ラ・フランス」です!

 山形県が誇る洋梨、ラ・フランス。これほど、有名で誰でも知っているにも関わらず、その真価を味わっている人が少ない果物もないでしょう。というのは、この果物、食べ頃を見極めるのが難しい!輸送中の事故を防ぐため、たいがいの産地では硬い実のまま出荷し、フルーツ店の店頭でもまだ硬いまま販売します。これを家庭で適度に熟させて食べ頃を見極めなければなりませんが、、、このラ・フランスは本当にデリケートなので、追熟に失敗することが多い!ですから、この旨極をみて「な~んだ今回は洋梨かぁ、、、」という人は、きっとまだ最適に熟成されたラ・フランスを食べたことがない人なのではないか!と思います。(個人的私見ですけどネ!)

 そこで!今回は、農家さんの段階で、最適な環境で追熟させたラ・フランスをお届けします!熟し加減の見分け方もきちんとご説明しますのでご安心。お値段は、絶対に安い!今回ご紹介する生産者さんは、山形でも有数の技術を持つ、地域の農業普及員さんが「あそこだったら間違いない!」とお墨付き太鼓判を押す生産者さんなんです!本当だったら超高級フルーツ店で、目が飛び出そうな値段になるハズの実を、、、今回は無理をお願いして限定で分けて頂きました!

■やっぱり山形はフルーツ王国だった!
ogata.jpg 山形の上ノ山温泉(かみのやま)駅から車で15分のところに、その農園があります。尾形匡広(まさひろ)さん。当年とって27歳のこの若武者が、今回ご紹介のラ・フランスの生産者です。尾形さんの一家は本当に果樹一家。3.2ヘクタールの西洋梨農園をもつ大規模生産者さんなんです。
 今回出荷のラ・フランスは、その中でも自信のある畑で栽培された、超一級品なのです!

「ラ・フランスはいろんな地域で作られているけど、今回出荷する畑では、化学肥料は使っていません。うちも入っている生産車グループ独自で原料(魚かすなどの有機質資材)を吟味して配合した肥料を施しています。また、よく陽が当たる畑で棚栽培にしているので、ひとつひとつの実に日光があたって味が抜群に乗るんですよ!」

 この畑、蔵王を背中にしょっている最高のロケーション。メチャ空気が澄んでいて旨い!水も旨い!用水路をちょろちょろと水が流れている音をバックに蔵王山系を眺めていると、こんな環境で育った果物がまずいわけないよなぁ~ と納得。

 さてこのラ・フランス、実はすでに収穫は終了しています!ラ・フランスは、この時期(10月中旬)に一気に収穫し、最適な温度帯に設定した冷蔵庫で保管して、長期熟成の期間に入るのです。この熟成によって、あの高貴な香りと滑らかな舌触りが産まれるんですネ~。今回はその冷蔵庫まで入ってきましたヨ!5分も入っていると身体の芯まで冷え切ってしまう環境の中で、じっくりと寝かせられ、熟成され、出荷を待つラ・フランスたちに対面してきました!薄緑色と、ところどころに黄金色がまざったような微妙な色合い。あの洋梨型のスタイルに微妙な凸凹があり、それが複雑な陰影を産み出しています。

■お買い求めは

キロ数と1玉の大きさで決めます。たとえばLサイズだと3K箱で11個入り、3Lだと9個入りになります。

   3K    5K
L  2300円 3000円
2L 2800円 3800円
3L 3200円 4500円
4L 3300円 4700円
5L 3500円 5000円

連絡・注文は下記に。
尾形果樹園
(FAX)023-674-3374


■最重要!おいしいラ・フランスの判断方法と保存方法
 ご説明したように、生産者さんの冷蔵庫にてぎりぎりまで熟成させますが、ご自宅についた時点ではまだ完全な食べ頃にはなっていません。食べ頃になるまで、一工夫が必要です。下記をご参考に、ご自分の好みの熟し加減を模索してください!

①到着したら!まずは箱をあけて、一目その姿を愛でてください!ただしまだこの時点では食べるべからず!
②追熟・保存をするには、お届けした箱で保存するのがベスト!ラ・フランスは、20度を超す室温だと呼吸が激しくなり、香りが飛び、日持ちしません。18度以下の室温がベスト!ただし、冷蔵庫は×ですヨ。例えば、雨や風が激しく吹き込んでこないベランダがあれば、その日陰に置いておくのもよし。ただし、日光で段ボール自体の温度が上がらないように、一枚別のの段ボールを上に置くといいでしょう。

③箱にシールで貼られている「食べ頃日付」は、正確には食べ頃というより食べ始めてよい日付です。ですからあくまでこの日付を目安に、追熟させた箱を開けて、香りをチェック!甘く麗しい香りがプ~ンと漂うようになったら食べ頃に近い!一つの実をそっと取り出し(両手でネ!)包装キャップをはずして、軽く指でお尻の部分を押してみて、抵抗なくスッと押せるようであればOKでしょう!ここから先は、ご自分の好みで更に熟成させるなどしていただくのが一番いいと思います。

④美味しい食べ方、、、お菓子に使ったりといろんな食べ方があるけど、、、やっぱり私は、熟したラ・フランスを食べる40分くらい前に冷やして、切りわけてそのまま食べるのが好きですねぇ~ 芸がなくてスミマセン。でも、本当に極上品だから、手を入れるのはもったいないカモ、、、

 やまけんは、いくつか手に入った時は、一度に食べきらないように、若い熟成の段階から、柔らかくなってちょっとやばくなる手前の、熟成しきった味までをまんべんなく味わうのが好きです!とはいっても、あんまりおいしいとすぐに食べ切っちゃうんだけど、、、

 ここまでやって美味しくないはずがない!本当の極上のラ・フランスを、ぜひご賞味あれ!!

00:52 | Comments (0)

2003年11月21日

宮崎にいくならチキン南蛮と釜揚げうどんを食べよう

 僕は宮崎が大好きだ!大好き!愛してる! 学生時代に農業情報ネットワーク大会というので初めてその地を踏んで以来、こんなにも好きな県はない。静岡とならぶぐらいだろうか。その後出張機会多数で、さんざん食い倒れさせてもらった。特に宮崎市の橘通りの裏側については「地元の人間より知ってますね」と言われたこともある。過去、こんな食い倒れ記事を書いたこともあるくらいなのだ。

 で、大学時代の友人(先輩)が宮崎によく出張にいくとのことなので、絶対に抑えておくべき店を紹介しておこう。

nanban1.jpg まず宮崎空港に着いたら、即座に空港内の3Fにある魚山亭(ぎょっさんてい)に直行して欲しい。11時半くらいにならないと空かないので僕は15分くらい、開店準備をする店員にプレッシャーをかけながら店の前で待っていたことがある。「おまたせしましたー」と入店し、すかさず飛行機が離着陸する様をみられる窓側の二人掛け席に座し、メニューも見ずに注文するのが「鶏南蛮定植」いわゆるチキン南蛮である。
 このチキン南蛮という料理、九州一帯では昔から食べられており、関東圏でその名を訊くようになったのはつい最近である。簡単に言ってしまえば「鶏の竜田揚げを甘酢にくぐらせてタルタルソースをかけたもの」なのだが、こいつが最高なんである。甘酢とタルタルの組み合わせがポイントで、酸味と甘みとタルタルの油分が食欲中枢を刺激しまくりなんである。店によってモモ肉を使ったり胸肉、ササミなど色々なバリエーションがあるが、やはり弾力があり旨味に溢れるモモ肉の南蛮が一番好きだ。宮崎では「小倉チェーン」というレストランチェーンが元祖ということなのだが、ぼくはこの魚山亭の南蛮が一番好きだ。小倉のタルタルは白っぽいのだが、魚山亭のはトマト系の何かが入っているのか、ちょっとピンク味がかかっている。もうこのソースがスペシャルで、ご飯4杯くらいはいけてしまうのだ。ちなみに恐ろしいことに、この魚山亭ではご飯おかわり自由である。ふふふ、、、

ちなみにこの日、僕は「鶏南蛮定食」に加え「冷や汁定食」も食べた。この写真がそれを証明している。店員は3度くらい「両方食べるんですか?」と確認していた。ちなみに昼飯である。
nanban2.jpg
 冷や汁も宮崎を代表する郷土食だ。ただみそ汁を冷やしたものではない。まず、すり鉢で魚(アジなどを焼いて身をほぐしたもの)をあたり、すり身になったところに地味噌を混ぜ、滑らかになるまで擦る。これをすり鉢の内部になだらかに塗り、コンロ(本当は炭火)に逆さに置いて火をつけ、表面が乾き軽く焼き目が付くまで焼く。こうして香ばしく変容した味噌に水・きゅうりの小口切り、シソ、ごま、みょうが等を投入し、混ぜたものが冷や汁だ。どうだこの手の混み具合!これをご飯にかけて食べるわけだ。うちの会社にいる宮崎出身の女性は、夏場には大量につくって冷蔵し、毎日食べていた。だいたいの居酒屋等で食べられるので、酒や食事の〆に食べてみて欲しい。


さて。
shigenoi.jpg 宮崎の旨いものでもうひとつ特記すべきものがある。意外だろうが、それは「釜揚げうどん」なのだ。宮崎市内では3軒の有名店がある。「戸隠」、「しげの井」そして「緒田薪(おだまき)」だ。このうち有名なのは「しげの井」と「戸隠」。しげの井は巨人軍キャンプの時にかならず長嶋監督が訪れたという店だ。そして戸隠は、タクシーの運ちゃんが必ず「あそこは旨いデスよぉ」と言う店だ。僕は3軒とも行ったが「戸隠」は推さない。先日行ったところ、一口で帰ろうかと思うまずさだった。それにくらべしげの井と緒田薪は素晴らしいの一言だ。今回はしげの井を紹介しよう。

shigenoi2.jpg しげの井に行きたいなら、夜の宿泊は「宮崎観光ホテル」にとるといい。何故ならその裏手にしげの井があるのと、そのまた近くにレタス巻きの元祖「一平」があるのだ。この一平についてはまたいずれ書こう。ただし、しげの井はひっそりとたたずんでいるのでわかりにくい。近所の人に聞きながら行こう。

 宮崎の釜揚げうどんは、細めの麺でそれほどコシはない。ムッチンブリブリのコシを効かせた讃岐とは全く違うベクトルで、のど越しとダシの旨味で食べさせるうどんだ。そう、ダシ概後なのだ。しげの井でも緒田薪でもそうなのだが、注文がはいってから茹でるので8分くらいは待つことになる。ついついその間、いなりずしを食べてしまう僕だ。店内には巨人軍のサインなどもあるのでそんなのを眺めていてもいいだろう。

shigenoiudon.jpg そうこうしているうちにうどんと茹で湯が入った碗と、濃いダシつゆが張られた碗がならぶ。ダシは濃厚茶褐色で、関西の透明感のあるダシとは文化圏が違う。万能ネギと揚げカスなどが最初から投入されており、椎茸の香りがプンプンする。うどんをたぐり、つゆにつけてすすりこむ。熱い!そして芳醇な旨味と魚貝の濃厚な香りが口腔中いっぱいに拡がる!あとは一気呵成にすすりこむだけだ。しげの井ではうどんの量で大中小があるが、お代わりを頼もうと思っても、「最初から茹でるから時間かかるよ~」となってしまうので、とにかく大盛りを頼むのが吉である。ちなみに写真は「中」だ。旨かったんでぼくは10分まってもう一杯「大」を食べた。それにいなりも食べたので、店のおばはんが喜んでいた。

 あ、ちなみにこれは、チキン南蛮と冷や汁を食べた日のおやつである。この後の夜にはさらに快進撃が続き、摂取カロリー数が5000を軽く超えることになるのだが、それはまたいずれ書こう。当時の僕の記録によれば、下記を食べていたらしい。

> ■朝10時半
> 魚山亭にて
> ・とり南蛮定食
> ・冷汁&ご飯
>  それとおかわり1杯
>
> ■夕方6時
> 茂の井にて(巨人長島監督のひいきの店)
> ・釜揚げうどん 中盛と大盛
> ・いなりずし 3個
>
> ■夜8時
> 鳥の里にて(地鶏専門店)
> ・鳥のたたき
> ・地鶏モモ焼き
> ・冷汁&ご飯
> ・焼酎(銘柄忘れた)×1杯
>
> ■夜9時
> 弁天寿司にて
> ・レタス巻き(宮崎が元祖らしい)×2本
> ・チキン南蛮巻き×1本
> ・サーモン&中トロあぶり握り
> ・キスの南蛮漬け
> ・自家製烏賊の塩辛
> ・霧島オンザロック×1杯

08:38 | Comments (2)

2003年11月26日

ビカビカに煌めくお品書きに出会った!大阪の中華「福龍園」

fukuryumon-s.JPG 僕がよく書いていることだが、旨い店のお品書きは例外なく何かの輝きを発している。。「旨いぜ!」という店主の意気込みが、オーラとなって品書きの背後から見えてくるのが、いい店の絶対条件である。そんな店に、また出会った。

 今日も大阪出張である。もう、ほとんど旨いものを食べるためだけに出張をしているということをよく知ってくれている友人が案内してくれたのは、中国酒家「福龍園」。

■福龍園
大阪市北区天満4-16-8 ハイツ天満宮1F
06-6353-7224


 車以外ではなかなかアクセスが悪いところらしいのだが、僕は車で行ってしまったので本当によくわからない。確かに裏通りにひょっこりとある店だ。しかも小さい。友人が「屋台に毛が生えたようなもん」といっていたのがなるほどという感じだ。

oshinagaki.JPG そして引き戸を開け、小さなテーブルについたとたんに目に飛び込んできたのが、壁に掛かった小さな黒板にぎっしり、びっしりと書かれた品書きだ。その勢いと確信的な配列が一瞬で僕を魅了した。
だってまず最初の行に
「アイガモとオレンジの炒め物」などという料理が載っている店はそうない。思わず品書きの端から順に頼んでいきたくなるが、この日はコースを頼んでいるそうなので、流れに任せるコトにする。

そして、至福のひとときがやってきたのだ。

・前菜5種
豆モヤシとアナゴの中華和え物
バンバンジー
小茄子の四川風挽肉炒め
エビのカレー風味揚げ
大根甘酢漬け
zensai-s.JPG
 魅惑の前菜だ。クラゲやザーサイなどで誤魔化さないのがよい。イタリアンやスペインの前菜盛り合わせのように、勢いを感じる構成だ。特に豆モヤシとアナゴの和え物が秀逸だった。それと意表を突く小茄子の四川風には美学を感じた。

・豚ヒレ肉と花ニラ、カリフラワーの炒め物
 この店の味付けの傾向がよくわかった。こんなにわかりにくいところにある小さな店で、高級中華のマイルド感を見事に出している。つまり、労働者階級に向けた味付けの濃い、一皿で満足する料理ではなく、重層的な味覚の積分でコースを堪能させるあの味付けだ。

・エビマヨ炒め
ebimayo-s.JPG
 きわめてポピュラーになったこの料理も、突出せず非常にマイルド。独自のマヨネーズとエバミルクをベースにしているが、香り付けにジンは使われていないみたいだ。

・生牡蠣のトウチ蒸し
 品書きだけで旨そうだったのがコースにも入っていた。白菜の芯を縦に裂いたものが敷かれ、牡蠣がトウチソースに浸されて蒸されている。牡蠣の半生の触感と、トウチジャンの濃い味付けがガツンと合って、職が進む。

・グレの甘酢あんかけ
 グレは癖のない魚だ。これをコイのように丸揚げして甘酢をかけている。みてわかったが、甘酢はスープと黒酢をベースにしたしつこくないもので、これも箸を進めさせるものだ。骨までばりばりと食べ、堪能した。

この辺まで、皿がくるごとに僕が「いや旨いな~」を連発していたせいか、店の奥の料理人のおっちゃんが、にこにこして話しかけてきてくれる。
「このあとマーボー豆腐がでるけど、スーパーマーボーにしたろうか?」
よくわからんけどスーパーの方がいいに決まっている。
「それでいって!がつんとね!」
というと、ニヤリと笑って鍋を振りだした。

・スーパーマーボー豆腐のチャーハンのせ
mabo-s.JPG
 劇辛である。四川の山椒である花椒(ホワジャオ)が、直線的にぱっと散る辛さと痺れ感(麻という)を降り散らす。辛くて痺れて、4人一同気を失いそうになる。もう僕はTシャツ一枚になって、汗をだらだらとかきながらメシをかっこむ。ああ、メシといっても白飯ではない。チャーハンである。

・蒸し鶏ソバ
 地獄のマーボーの後にはマイルドな鶏ソバだ。見事な上湯(シャンタン)で、実に滋味深い。極細ながら腰のある麺が大量のネギと絡んで実に旨い。
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 と、ここでコースは終わりなんだが、僕がどうしても食べたいのでもう一品いただく。

・茄子と豚の味噌炒め&ご飯大盛り
 やはりこういうオーソドックスな料理を食べないと、店の真価がわからない。果たして、テンメンジャンのこってり甘みが利いた炒めものは、ご飯大盛りをたいらげるに十分な味だった。

 このあとデザートに、上新粉の餅でカスタード餡を包み、ココナツフレークをまぶした温かいまんじゅうがでたが、これも旨かった!

shef-s.JPG いやー ひさしぶりにこんなに旨い中華を食べた!充実である。壁にはダンチュウなどに掲載された記事がたくさん貼ってある。知る人ぞ知る店なのだろうなあ。
 結局最後の客になったが、みせのおっちゃんもあきれかえっていた。
「ふつう、おなかいっぱいになってくれるようにコース組んでるのに、バンバン頼むからコースの流れが全く変わっちゃうよ。でもよく食べるねぇ、、、」
そういいながら笑っていた。

大阪で中華を食べるなら、ここ福龍園にきて損はない。またこようと、ココロに誓うのであった。今度は絶対に合鴨のオレンジ炒めを食べたい!

18:56 | Comments (3)

大阪カレー対決 インデアンvsピッコロに判定が下った

 すでにご承知の通り、初めてであったその日から、僕は大阪のインデアンカレーの虜である。一口目の甘さと、二口目から火花を口中に散らすがごとくの散弾銃的辛さの対比は、実に最高である。ルーの滑らかさ、牛バラ肉のとろける感覚、ご飯の粒の立ち方、そしてそれを盛りつける山田リーダーの手つきは、僕を魅了してやまない。
 しかし前回、ライバル(?)のピッコロカレー梅田地下店に入った際、チキンカレーが旨いという情報を訊いた。その時はビーフを食べて、インデアンの方が好きだという判定を下していたのだが、正式にはピッコロのチキンを食べてからジャッジしなければならないだろう。

 ということで、本日は年内で最後の大阪ということもあり、再度両店をハシゴすることにした。業界新聞の記者をしている友人女性と共に阪急梅田地下にあるインデアンへ直行する。今回はカレーのレギュラーで「目玉」(←卵の黄身2つのせ)を頼んだ。カウンターに座ると、やはり特製の飯びつの前にいるのは、あの飯&カレー盛りのエキスパートである山田氏だ。本日は若干余裕があるのか「いらっしゃいませ」と声をかけてくれる。すぐに我々のカレーを盛ってくれる。友人女性も初めてのインデアンということで、山田氏の無駄のないフォーム、寸分たりとも変わらない精確な飯盛りについて解説をしてあげたら笑われた。
indean1-s.JPG
 目玉二つは実に贅沢で旨い!黄身の油分が舌を保護するらしく、若干辛みが緩和されてしまうが、ルーを大盛にすれば比率的にも合うハズだ。しかし本当に旨~い。付け合わせであるキャベツの甘酢漬けのシャクシャク甘み感とのマッチングも最高としか言いようがない。まさしくこれが現時点でのマイベストカレーである。思わず、ピッコロにハシゴするのを辞めてもう一皿食べようかと思うが、食倒ラーとしての尊厳がそれを許してくれない。

 やっとの思いで「もう一杯!」という思いを振り切り、店を出る。ピッコロを目指し、梅田地下街を迷いまくる。もう一杯食べるぞというと、友人は仕事途中だしもう一杯なんか食えるか!と帰ってしまった。

それでも俺はいかねばならない。今日こそ自分の心にけじめをつけるのダ。

pikkoro-s.JPG ピッコロ到着。狭いカウンタに座り、チキンカレーを頼む。先回ビーフカレーを食べた印象としては、マイルドすぎて今ひとつパンチに欠けるというもの。しかし隣の人とそのまた隣の人がチキンを頼んでおり、目をやると若干色が黄色み強く、辛みが強そうな印象。その後いろいろと訊いてみたところ、味が違うというコメントあり。そこでチキンを頼んでみたのである。もしかして、インデアンを上回る味があるかも!?

 結果だけ記そう。やはりインデアンは最強だった。ピッコロのチキンは、ビーフと同じまったり系だ。肉の量はインデアンよりも多く存在感があり、これはこれで旨い。しかしパンチがない上に価格が850円と、インデアンの730円にくらべパフォーマンスが低いのだ。少なくとも僕にとっては。

 食べ終わって勘定をし、店外に出た瞬間に自問自答した。

「もう一杯インデアンを食べられるだろうか?」

答えはさすがにノーだった。憤死してしまう。
でも、心の中には充実感が残っている。

アイ・ラブ・インデアン。

今後の僕の人生において、大阪を訪れてインデアンに寄らない時はないだろう。
どんなガイドブックも見ずに出会ったこの感動は何者にも代え難い。

大阪「インデアンカレー」を、謹んで出張食倒れの殿堂入りとしたい。
新たにこのWebの右ツールバーに「出張食い倒れの殿堂」というカテゴリを作成した。ここには、最高グレードの評価を与えられる店のみを殿堂入りとして表記していくこととする。

19:36 | Comments (9)

2003年12月05日

予告:帯広に行って来る。

5日から日曜日まで、帯広を再訪します。
あの伝説の食い倒れの夜の再現となるのか、、、

01:09 | Comments (0)

2003年12月07日

豚丼は文化だ!帯広豚丼放浪記。(その1)

 念願の第二回帯広出張だ。前回は壮絶に食い倒れた。この記録を読んで友達付き合いを考え直したいと言う人もいたくらいだが、今回は前回に勝るとも劣らない食い倒れをしたのだ。
 今回のテーマはずばり「豚丼」だ。前回は帯広を広く味わうための回だったが、今回はその中でも特に豚丼にスポットを当ててみたいと思うのだ。しかし、結果として豚丼以外にもとてつもないインパクトの食に出会ったので、それについてもレポートする。まずは第一日目の顛末を観ていただきたい。


12月5日 JASの飛行機で帯広空港に降り立つ。同行の新人君とまず向かったのは、前回ダークホース的に旨い豚丼を食べさせてくれた空港2Fのレストラン「白樺」だ。レストランといっても、10年前のデパート最上階の食堂的雰囲気の店なのだが、ここの豚丼がめっぽう旨い!どのように旨いかは前回に詳しく書いているので、ご覧いただきたい。果たして、2ヶ月ぶりに食す豚丼は旨かった。肉をタレで少し煮詰めたスタイルの白樺豚丼は、すんなりと胃の府に収まった。
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 しかし今回は、もう一つテーマがあるのだ。前回の白樺編を見てくれればわかるように、僕はここのカレーライスにも関心があったのだ。そう、隣のおばちゃんの頼んでたカレーがとてもいい香りを漂わせていたのだ。と言うことで豚丼に引き続き、カレーを頼んだら、給仕のおばちゃんに変な顔をされた。 、、、カレーは間髪居れずに運ばれてきた。嫌な予感がする。すぐに出てくるのは、鍋でずっと保温されているということだし、一手間もかけていないと言うことだ。
香りはいいのだが、、、トロミたっぷりのカレー。しかし、肉片がかなりバラバラにほぐれている。つまりこれは極度に煮込みがかかっているか、、、もしくはレトルトか缶詰の高圧調理の結果だ。
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食べてみた。
缶詰だった、、、
豚丼の幸せな記憶が、缶詰カレーに上書きされてしまった、、、まあ仕方が無い。こんなこともあるのだ。トライ&エラーが大切だ。明日に同じことを繰り返さないことが重要なのだ。
「一つの店に豚丼とカレーは両立しない」
これが今回の教訓だ。



 さて商談だ。気合をいれて説明。そして打ち合わせ、現地視察。重要な変更事項が発生したものの、最後は先方もにやりと笑ってくれた。

「さあ、山ちゃんを今回はどこに連れて行こうか、迷ったんだよぉ」

たった2回目でこう言ってくれるまでになったということで、すでに満足である。

いったんホテルに帰って街に出るということになった。小一時間あくことになったが、この間ぼやっとしているわけにはいかない。今回泊まったホテルは「パコ」という変な名前のホテルだが、帯広では有名なシティホテルだ。そしてなんと、このパコから50メートルのところに、豚丼の元祖といわれている有名店「ぱんちょう」があるのだ!ホテルのフロントのあんちゃんに訊いても、「行列してますよ」と言う。そういわれるとますます行きたくなるのダ!ということで、駆け足(マジで)で行ってみた!
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 17時半と、時間的に谷間だったのか、それほど混んでいない。面白いのは、女性の一人客が数組いることだ。そういう食べ物なのだな、豚丼って。店のおばちゃんはじめ給仕の女性達は皆一様にやたらと礼儀正しい。
「どうもありがとうございました。」
「またぜひいらっしゃってください。」
などと客に声をかけている。持って来てくれた品書きを見ると、豚丼にはグレードがあって、

松 850円
竹 950円
梅 1050円
華 1250円

という順になっている。ここで注意して欲しいのは普通と逆で、「松」が一番低いランクになっているのだ、なぜかというと、、、どうやら女将さんの名前が「梅」なんだと(笑)
ということで梅がいままで一番高かったのだが、どうやらもう一つ上のクラスを新設したようだ。
 これから僕は会食があるので、華にいきたいのをぐっと我慢し、梅にしておいた。ちなみにここの店は豚肉を炭火焼きにするので有名だ。家庭などでは、豚をフライパンで炒めた後にタレを絡めて少々煮詰めるなどの方法が主流のようだが、豚丼専門店では炭火で焼くことが多い。そのせいか出てくるまでに時間がかかる。
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 6分ほどして出てきたのが、蓋をされた丼にはいった豚丼だ。しかし、蓋は閉まってないゾ!そう、梅とか竹とかの違いは、肉の量なのだ。期待に胸をときめかせながら蓋をとると、ふうわりと香ばしい炭火焼き独特の香りと、醤油ダレのこげた燻し香が鼻を刺激する。肉のプレゼンテーションはばっちりで、これは文字通りご飯が見えないまでに重ねられている。
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肉を食べてみる。うーむ 厚みのある肉がフカフカの食感に焼きあがっている。表面はカリッと香ばしくこげているが、噛むとふんわりフカフカもっちんもっちんとした優しい感触なのだ。そして肉にまぶされているタレは淡い。「白樺」の豚丼は、肉がチャコール色に染まるほどタレを絡めていたが、ここでは炭火で炙りながらタレはさっとしかくぐらせていないような風情だ。だからか、肉自体の味、とくに脂の甘味が際立つ。しかしながらおもしろいのは、ご飯にはしっかりと
した味のタレがまぶされており、こちらは塩気も強く、肉と合わせたときの感触は最高なのだ! これはさすがに元祖と言うだけあって、非常に練られた世界だと実感する。同時に、豚丼の奥の深さを思い知った次第だ。この豚丼は確かに旨い。けど、これまで食べてきた豚丼がこれに劣っているわけでもない。豚丼の味は、店ごと、家庭ごとに違うのだ。そしてその違いはすべて許容されるものなのだ。炭火焼もうまいし、フライパン煮詰めタイプも旨い。自分がどれを選択するのか、だけなのだ。

(その2に続く)

19:56 | Comments (3)

2003年12月08日

豚丼は文化だ!帯広豚丼放浪記(その2)

(その1より続き)

 さてぱんちょうのソフトにしてこってりした豚丼をたいらげた後は、夜の宴席である。もう先方も僕のことをよくわかって下さっているので、美味しい店に連れて行ってくれた。今回は魚貝である。前菜的位置づけでまず、毛ガニが並んでいる。当たり前のように一人一杯だ。身をほじくりだして食べていると、
「あのねぇやまちゃん、味噌の部分にかぶりつくだけでいいんだよ、カニはさ。」
という。ちょうどいいのでさっきからさがしているもののことを聞く。
「あの~、カニ酢みたいなのってないんですかねぇ?」
というと、先方お二人ともやおら首を振る。
「カニに酢なんかつけたら、カニの味がしないだろ!」
なるほどぉ、、、そう言うモノなのか。そして二人とも、身がぎっしり詰まっているカニの皿を
「おれはもういらね。」
と僕に流してくる。これをすべてほじくりだし、皿一杯になったところで一気に食べているのが下記の写真である。
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カニ、揚げ物、焼き物、魚の煮付け、寿司と食べ進み、コースがはねる。

「じゃあラーメンいくか!」
と向かったのは、当然ながら前回も行った、手がプルプル震えながらラーメンを作ってくれるおっちゃんの店「頓珍館」である。
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ここの塩ラーメンはやっぱり旨い。何でだろう、、、あんな小さい鍋で、、、

 ここで一同お別れ。どうもありがとうございました!次は年始に、、、
僕ら出張3人組はホテルに帰る。帰る道すがら、前回来た時に
「あそこは居酒屋だけど豚丼が旨い」
と言われて、行ってみたけれどもご飯がなくて食べられなかった「田悟作」の前を通りかかった。そのエピソードを知っている同行者が

「いいの?いかなくて、、、つき合うよ」

と言ってくれたので、これはもう突き進むしかない。田悟作に入店し、豚丼を3つ注文したのであった。
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運ばれてきた豚丼は、白樺で見たようなちょっと煮詰めスタイルの豚丼だ。口に運んで「ん?」と思う。この香りは、、、山椒だ!鰻丼のように、軽く山椒がふられている。しかもこれはタレに最初から仕込んでいるようだ。この山椒の香りと風味がアクセントになり、イケル!ただ、肉は少々ぱさつき感が強いようだ。タレは甘めの濃いめ。酒を飲んでの最後の締めにいい感じかも知れない。前に座っていたT氏が早々にギブアップ。半分くらい残っているのを僕が食べる。でも全部はさすがに食べられない。このころになるとさすがに僕の胃袋も相当にハードな状態である。
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■総評

下記がこの一日の食事だ。

(昼)
白樺の豚丼 ★★★
白樺のカレー ★

(夜)
ぱんちょうの豚丼(梅) ★★★
魚貝料理の店(名前ワスレタ) ★★
頓珍館 塩ラーメン ★★★
田悟作の豚丼 ★★

もー食えん、、、 
ただ、集中的に食べて、豚丼については定見ができた。

「豚丼に同じ味なし」

どの店や家庭でも、自分なりの味というものを持っている。それが豚丼だ。方程式としては、

焼きの方法(炭火かフライパンか)
肉のカット方法と厚み
タレの濃さ
タレのつけかた(煮詰めかさっと塗って焼きか)
ご飯へのタレの絡め方

という要素があるように思うのだが、肉やタレなどのベースが旨いから、どんな風にしたってまずくはならないのだ。従って、

「豚丼のベストチョイス」というものは存在しない。

と言える。あえて僕的に好きなのは、、、空港レストラン「白樺」の豚丼は旨いなぁ。

ちなみにこの豚丼のタレ、有名なのは空知(ソラチ)というメーカの商品だ。これは空港でも売っている。スーパーでもドドドドンと並んでいるので、北海道に来た人はぜひ買って帰って欲しい。ちなみにこれ、僕の冷蔵庫には常備されている、、、
■ソラチの豚丼タレ
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 注意が必要なのは、肉を焼いてタレをかけるというのではなく、フライパンの中で肉を焼き、頃合いを見計らってタレを絡め、少々煮詰めたほうが旨いということだ。それと、豚肉は集めの方が旨いので、トンカツ用の肩ロースを買って、これを包丁で3枚くらいに切り出すとよいと思う。
 また、コンロが汚くなって良いなら、魚焼き用の網を十分に熱し、肉を焼くと旨い。いや、炭火を用意できるならそれがベストだが。この場合は、タレを最初に肉に絡めながら焼くと良いと思う。

 まあとにかく言えるのは、「豚丼は帯広限定にするにはもったいない料理だ」ということだ。一日に3杯食べた人間がそう言うのだから間違いないだろう。北海道にいくならぜひ、食して欲しい。

08:44 | Comments (3)

なんと帯広にもインデアンカレーを発見

 帯広での質量ともにおびただしい夜が過ぎた。仕事は終わったので、本日は夕張の生産農家の友人宅に遊びに行くことにしている。 僕はホテルの朝飯は陳腐なのでいつも頼まない。それより、町に出て何かおもしろいものを探す方が楽しいに決まっている。特に、昨晩農協のOさんから聞いた一言が頭から離れない。

「山ちゃんさぁ、帯広でカレーって言ったら、ふつうみんなが思い浮かべるのがインデアンっていう店のカレーなんだよ。」

 帯広にもインデアンという店があるらしいのだ。フジモリという駅前にある食堂がその発祥で、道内に数店舗のインデアンというチェーンがあるとのこと。帯広の学生たちはこのカレーを食べて育つのだそうだ。ご存じの通り、大阪の名店「インデアン」カレーは、この出張食い倒れ日記の殿堂入りを果たしている(右側のツールバーを参照のこと)。名前が同じだし、旨いカレー、しかも地元での評判が高いということで、行ってみたいと思う。

 まずは帯広駅のビル内の喫茶店でコーヒーを飲む。やたらとひとなつこいお姉ちゃんで、
「まだいるよね、ちょっと買い物行って来るから」と客に店番をさせ、20分ほどもどってこない。帰ってきた姉ちゃんにフジモリの場所を聞くと、

「フジモリも近いけど、駅前のスーパー長崎屋の中にもインデアンが入ってるよ。そっちの方が安いから、、、」

ということだった。ではそっちに行ってみよう。

 長崎屋は本当に駅前すぐだ。2Fに上がると食品売場だ。ふつうスーパーといえば地下や1Fに食品売場があるが、ここは2Fからメインフロアが始まっている。もしかして、豪雪で1Fが使いものにならないからだろうか、、、それはともかく食品売場を回る。

 僕は初めての場所では必ずスーパーの食品売場とくに調味料売場を回る。その土地ならではのものがいっぱいあるからだ。特に北海道帯広である。調味料コーナーにはまず豚丼のタレが数種類おいてある。一番シェアが高いのは空知(そらち)のタレである。それと双璧をなすのが、ベルというメーカーのジンギスカンのタレだ。
 タレだけではない。ラム肉をジンギスカンダレに漬け込んだものが1つのコーナーを形成している。牛肉とか豚肉とかのカテゴリと同じように、ジンギスカンコーナーがあるのだ!思わずかって帰りたくなるココロを鎮めるのに苦労した。

 食品売場ですでに興奮してしまったが、そこを抜けると、ほのかにカレーの香りがしてくる。おお、あった!インデアンである。
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 キッチンの中にはちゃんとした調理スペースがあり、職人さんがタマネギなどを刻んでいる。基本中の基本であるインデアンカレーを注文。なんど380円という安さである。ここでびっくりしたことがある。
このインデアンカレーのシンボルマーク、大阪のインデアンとそっくりだ!!
上の画像の上部の「インデアン」という名前のネオンの左側に、ターバンを巻いたインド人のようなマークがあるだろう。これと、このページにある大阪のインデアンのマークを比べて欲しい。
 うーむ なんだなんだなんなんだ? もしかして系列店なのか?そうでなければどっちがオリジナル?
 と、カレーが出てきた。ネットリ感の強そうな真茶色のルーが、定番のアルミ皿にもられている。ビーフの角肉の量も多く、ご飯の盛りもよい。一口食べてみる。

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これは旨い!380円の味ではないぞ!

糸を引きそうなネットリ感とともに、まずは甘さがドンと舌にくる。大阪のインデアンだとこの直後に機関銃掃射のような辛さが点滅するのだが、ここ帯広インデアンではそれはこない。あくまで甘みが続く。しかしこの甘さがコクと絡み合って非常にイケル。子供から大人まで食べられるカレーだ。薬味は福神漬けを中心に3種。けど、オリジナルのカレーの味が旨いので薬味はいらないかもしれない。あまりに感動して、さきの疑問も含めて職人クンに聞いてみる。
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「いや 旨いね~ 東京から来てるんだけど、このマークって大阪のインデアンカレーと似てるね」
「そうなんですよ、、、実はココのオーナー(フジモリ食堂の社長)が大阪でインデアンカレーを食べて感動し、自分なりに作ったのがこの店らしいんです。」
「ええ?じゃあ資本関係はまったくないけどマークは似てるの?」
「まあそういうことになりますかね、、、」

いいんだろうか?これ、意匠としてはまったく近似しているぞ。ま、北海道の帯広に数店舗ということで許容されているのだろう。職人君も、旨いウマイを連発しながらいろいろ聞いてくる俺に興味が生まれたらしく、
「同業者さんですか?」
などと聞いてくる。ちなみに彼曰く
「もう一つある長崎屋の近くにある「一品」という店の豚丼が旨いです」
とのことだ。

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 いやーしかし旨いカレーだ。そういえば昨晩農協の人に連れられていったクラブのおねーちゃんが
「やっぱりインデアンでは、シーフードカレーが一番よね」
といっていた。

シーフードカレーは670円である。380円からいきなりグレードアップだ。気になる。ということで、もういっぱい食べることにした。本当はカレーを食べて、昼飯には駅で打っている豚丼弁当にしようと思っていたのだが、ここのカレーの方が今となっては興味の的である。
「シーフードもう一つ!」
というと職人君、目を丸くする。そしてやおらナスの細切れをフライヤーで素揚げにし始める。平行してルーを鍋に盛り、シーフードを投入する。さっと火を通し、ナスの素揚げを混ぜ込んでご飯にかけて供される。

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これは絶品である!びっくりした!
シーフードは、よくあるシーフードミックスの安物ではなく、小エビ、ホタテ、アサリがきちんと入っている。バター風味がほのかに香る。タマネギ、シシトウ、ナスがうまみを引き立てる。言うことないのである。いやほんとうに脱帽だ。てきとうに探したこの店でこんなにおいしいカレーに出会えるとは思わなかった。やばい、この店も殿堂入りさせたくなってきてしまったが、そうそうは簡単に殿堂には入れられない。しかしこのコストパフォーマンスは、大阪インデアンよりも遙かに高い。

 今や職人君も僕とある種の共感を分かち合うようになってしまった。また来てくださいね。おう、また来るよ。

帯広のスタンダードカレー「インデアン」は旨い!
しかも、大阪の殿堂入り名店「インデアン」の影響を受けた店である。必食である。

 そして物語の舞台は、夕張の生産農家の親友宅に移るのである、、、北海道編はまだまだ終わらないのであった。

12:01 | Comments (10)

2003年12月10日

北海道夕張郡にて人生史上最高の蕎麦を打ち且つ食した。(その1)

 さて帯広に別れを告げ、特急「スーパーとかち」に乗り、一路夕張を目指す。帯広インデアンカレーの余韻が消えないうちに、と車内で原稿を打っていると、にわかに景色が変わってくる。いつの間にか雪が降っているのだ。みるみるうちに空が曇り、パラパラとまばらに降っていた雪が、すぐに横殴りに降り積もる重めの雪に変化する。これが北海道なのだ。
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 カレーの余韻に浸る2時間はあっという間に過ぎた。新夕張に着くと、雪は止んでいた。簡素な駅の簡潔な改札に、ツナギを着た岩崎英伯(ひでのり)氏が迎えに着てくれていた。彼との出会いは7年ほど前。農業情報ネットワーク全国大会というイベントで出会い、その後、北海道に講演として呼んでくれたのだ。
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 この岩崎氏、夕張特産のメロンの生産農家としては僕が今のところベストと思う人だ。実際、一昨年前までは僕も売らせて貰っていた。夕張メロンといえば一玉5000円クラスが相場だが、彼は殆どを直販で売ってしまうため、見栄えにこだわらず(ネットが綺麗でなかったりという些細なこと)、とにかく味を追求している。彼のメロンを食べたら、おそらく今まで口にしていた夕張メロンとは何モノか、と思うこと請け合いだ。
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 ちなみにメロンは昨期がほんの一時期に限られてしまう。彼の農場では主力商品として中玉の高糖度トマトを作っている。こちらは僕の好みの味ではないのだが、かなりいい条件で販売ができているようだ。それと、日本では珍しくルバーブも生産している。東京近辺で手に入る生のルバーブがあったら、ほぼ間違いなく彼が生産したものだと考えて良い。築地市場には彼のものが入っているし、新百合ヶ丘にある某有名洋菓子店のルバーブケーキも彼のものが使われている。とにかく、一生付き合っていきたい素晴らしい生産者なのだ。
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 今日は、せっかく北海道にきているので、彼の家でお世話になることにした。実を言うと彼が上京する時は、僕の家に泊まることが多い。まあ、持ちつ持たれつと言うことだ。
 新夕張駅から車で20分くらい、栗山町という田園地帯が彼の拠点だ。一昔前に流行ったウインダムヒル・レーベルのCDジャケットのような自然風景が目の前に拡がっている。隣家との距離は通常200メートル先という感じだ。今のメイン品目である中玉トマトの巨大ハウス内を観る。イスラエル製の養液栽培システムを導入し、コンピュータ管理をしながらトマト生産をしている。養液水耕栽培は僕はあまり好きではないのだが、彼の作る中玉品種のレッドオーレはいい線いってる方だとは思う。岩崎農場の一族(母ちゃん父ちゃん、そして嫁さん)となつかしの再会をし、夜は近所のジンギスカンに行く。

■ジンギスカン 「かねひろ」
・上ジンギスカン 9人前
・野菜セットA 1つ
・野菜セットC 2つ
・大盛ご飯1杯+普通盛りご飯1杯
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 このジンギスカンがムチャクチャに旨かった!北海道内でもジンギスカンには2種類ある。ラム肉をあらかじめタレに漬け込んで焼くものと、味付けしていない肉を焼いてタレにつけて食べるものだ。栗山町ではタレにつけ込む派。僕もどちらかといえばこちらの方が好きだ。それにしても全く臭みが無くて旨い。思わずご飯大盛と普通盛りの2杯を食べてしまった。
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 この後、彼の部屋で酒盛り。本場韓国産のジンロ(日本で出回っているジンロは不味い。)と金沢の銘酒「萬歳楽」1本を空ける。話題は農業の話からシュタイナー教育、そしてインターネット産直の話へと変遷を続けていった。


 朝がきた。さてお楽しみの本番である。この岩崎農場にて、販売を目的として作っていない作物がある。「ソバ」である。自家製と、好きな人にだけ分けている分しか栽培していないというソバなのだ。しかも、幻の品種である。とても旨いのだが、収穫量が少ないということで試験場では採用されなかった品種のソバなのだ。このソバはものすごくて、終了は少なくても10割ソバとして(つまりツナギなしで蕎麦になる)食べることが可能な蕎麦なのだ!
 ソバの収穫は秋の終わりだ。岩崎農場でも収穫し、つい先日堅い殻を製粉所で取り払い、むきソバにした状態で保管をしていた。つまり、ちょうどこの日、岩崎家でも今年の新ソバを初めて食べるタイミングだったのダ!
 6年前にこの地を訪れた際にも、このソバを蕎麦に打っていただいたことがある。無論、美味しかったのだけど、実を言うとあまり心に残っていなかった。しかし、今年の蕎麦は全く違った。自分のこれまでの蕎麦観が変わるような体験を、してしまったのだ、、、

(その2へ続く)

00:35 | Comments (3)

2003年12月11日

北海道夕張郡にて人生史上最高の蕎麦を打ち且つ食した。(その2)

 皆さんは、蕎麦の粉を挽くところから蕎麦を打ち、茹でて食べるという経験をしたことがあるだろうか?まあ、身内に自家製粉するこだわりの蕎麦屋でもいないかぎり、ある訳ないわな。今回はそれをやってしまったのだ。しかも、そのソバを生産した農家の家で、、、とてつもなく贅沢なことをしてしまった。

 しかも笑えることに、まずはソバ挽き用の石臼マシンの改修作業から入るのだ。

「ちょっと機械を直すからサ。」

といって岩崎氏、電ノコで火花を散らしながら鉄板を切り始める。石臼マシンとは、簡単に言えば、石臼を自動的に回し続ける機械だ。ソバの剥き実を石臼内に流し込み、それを回転する石臼が挽き続けるのだ。そうして出てくるソバ粉は、まだ粒子が粗いので、目の細かい網でふるって、粒子の粗い粉を再度投入して挽いていく。ふるいにかけるのも自動的に行う機械があり、石臼マシンと篩(ふるい)マシンをドッキングさせたのが先の改修内容だ。これを繰り返し数時間かけて、数キロのソバ粉が出来上がるという算段。

■これが石臼&篩マシンだ! 今、ソバむき身を投入しているところ。
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■これが剥きソバです。ソバは秋の終わりに収穫後、製粉所で殻を取ってもらう。このむき実を一つまみ口に入れる。唾液が浸みると粒がボロっと崩れる。その瞬間、なんとも甘い、優しい味が拡がる。本当に旨いんだ。生でも。
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■石臼が回転して、ソバ粉が出てくるのダ。
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 このソバだが、先に書いたように、他にはあまり出回っていない品種だ。10割で打てて、しかも薫り高く旨いということなのだが、作りにくく収量が少ない。まあ、それでは誰も作らないわな。でも、味はバツグンなのだ。実はこのソバ、地元の蕎麦屋や製粉所でも大評判になっており、来年以降は作付けを増やして出荷するそうだ。

 通常、ソバは輸入だと1俵3000円程度で販売されるという恐ろしい安値なのだが、岩崎農場のこのソバは1万円をはるかに超える高値で売れるというすさまじい高級食材になるのだ。このソバ粉は、、、まあ、俺は数度食ったことがあるので、何の疑問もないのだが。

 さて粉を挽くのに時間がかかったので蕎麦打ちは翌朝。ああ、ちなみに先程来、「ソバ」と「蕎麦」とかき分けているのにお気づきだろうか。原料としてのそばは「ソバ」と標記し、調理の手が入ったものを「蕎麦」と記載するのである。

 さて蕎麦打ちは全くの素人ではないが、家でトライしても生地が割れたりしてナカナカ繋がらない。岩崎氏の指導のもと、トライすることに。これが意外にもすんなりと伸び、繋がってくれるので本当にビックリ。やはり素材の良さが最も重要なのだと痛感する。

■捏ね鉢とソバ粉
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■水回し。適量を見極め加水していく。ここが命といって過言ではない
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■捏ねた生地を「のす」作業に入る。面白いように滑らかに伸びてくれる
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■伸びた生地を切る。あっしも結構旨いんですぜ。揃ってるでしょ?
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■茹ではほんの数十秒
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■完成!画像ではわからないだろうが、新ソバ特有の青みがかっている
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さて打ち立て茹で立てを食べる。
 蕎麦通はよく何もつけずに蕎麦を一口すすり、味を確かめるという。が、おいらは濃い味好きなのでそんなんはどーでもいい。どーでもいいんだけど、まずはつゆにつけないで食べてみようかな、と一口すすってみる。

 衝撃が走った。

 蕎麦が、甘い、、、
 また、噛み締めた後に、蕎麦の香りが強く濃く香り立つ、、、
 どこの名店にいっても味わえなかった(竹藪にはいったことないけど)蕎麦の味だ、、、

 呆然としながら、つゆにもつけずに半分くらい食べてしまう。岩崎夫妻が次の蕎麦を打ちながらにやにや笑っている。お母ちゃんが通りがかりに

「あたしはねぇ、街に出てもぜったいに蕎麦屋には行かないんだよ。どこいってもがっかりしちゃうからね、、、この蕎麦を食べちゃうと。」

それはそうだろう、、、でもお蕎麦屋さんは泣くよ!

いや本当にビックリである。この蕎麦には薬味のネギもいらない。僕が薬味好き、濃いダシ味好きであることを知っている友人がこのシーンをみたら驚くと思う。そんなの要らない味なのだ。

 しかしそれより価値崩壊だ。それなりにいろいろと回って旨い蕎麦店を発掘していたつもりだったが、価値の尺度が根底から覆ってしまった。ああこれからどうしよう、、、お母ちゃんのようにがっかりしてしまうのだろうか。
 そうはならないように、とりあえずソバ粉はしっかりと分けて頂いた。ありがとう!家で打ちます。岩崎家では年越し蕎麦用にまとまった量の粉を挽き、その後は大体1月~2月で食べきってしまうそうだ。ううううう またそれまでに行こうと心に誓った俺だった。

 申し訳ないがこの岩崎農場の蕎麦については、まとまった量が出荷可能になるまではあま詳しいことは教えられないのであった。ふふふ どうだ羨ましいだろう? これぞ優越感というものである。
 蕎麦を食べ終わり、千歳空港へ。途中、北海道でしか売っていないアイテム(清涼飲料水コアップガラナ、ナポリン、ガラスープの素など)を買い込み、しばしの別れを告げる。

 ああ、北海道。そこは夢の世界だ、、、

23:52 | Comments (5)

2003年12月15日

本日は岐阜。

郡上八幡方面に出張なので、更新は夜以降ということで、、、

遂に明かされた!郡上八幡「ベトコンラーメン」の謎!

 夜も眠れないほどに気になっていたのだ。

betokon-s.jpg 岐阜県の郡上八幡といえば、自然に囲まれた風光明媚な観光地だ。といっても、繁華街はつつましいもので、自然環境もきっちり残っており、美しい街だ。そのメインストリートから校則のインターチェンジに行く途中の街道に、あまり美しくない看板で「ベトコンラーメン」という店がある。ここに出張に来るたびに、車窓からその看板を眺め、気になっていたのだ。足を運ばなかった訳ではない。いつも「食べてみよっか」と寄ってみるのだ。しかし、、、なぜか僕ら一行が足を運ぶと、必ず店が閉まっているのだ。定休日の時もあれば、5時まで休みになっていたりと、地団駄を踏むこと多数であった。

 いったい、「ベトコンラーメン」とはいかなる物体なのだろう? 謎は深まるばかりだった。

IMG_0018-s.jpg そして遂に、その謎を解き明かす時が来たのだ!本日は定休日でもなく、すんなりと入ることが出来たのだ。ベトコンというくらいだから、攻撃的な、中途半端エスニック風な店内を予想していたのだが、以外にこざっぱりした、普通の店だ。

「いらっしゃーい」

夫婦らしいおじさんおばさん、そしてホールのおばちゃんが3人で切り盛りしている。店主らしいおじさんはバンダナを締めて黙々と鍋を振っている。カウンターに座ると、目の前にスナップ写真が。

 なんと、ベトコンラーメンの店主夫妻と、えーとなんていったっけ、俳優の記念写真だ!
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 よく壁をみると、芸能人らしい人たちのサインや写真がけっこう貼られている。そういう店だったのか、、、ますます謎は深まるばかりである。
 メニューはこんな感じだ。新調したデジカメのおかげで、テキスト打ちしなくても良くなったのは快適至極だ。
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 初めて頼むのをどれにするか、、、こういうときは一番オーソドックスなメニューにするのが基本だが、このメニューの場合、「郡上ラーメン」がいいのか、それとも看板である「ベトコンラーメン」がいいのか、ようわからん。それに、「新・郡上ラーメン」なんていう、まったく想像できない不親切なメニュー体系になっている。なんだこりゃぁ? 悩んだ挙げ句、「ベトコンラーメン」と、奥美濃古地鶏の唐揚げを頼んだ。

 オヤジが振る鍋をのぞき込むと、肉・ニラ・もやしなどがスープと共に囂々と沸いている。愛知県によくある、台湾ラーメン系の作り方だ。スープを具材と共に中華鍋で煮立てて麺に合わせるスタイルだ。程なくあがったベトコンラーメンはこんな感じだ。

betokon4.jpg なんか、街の片隅にある寂れた中華料理店で出てくる「スタミナラーメン」という風情のラーメンだ。一同、予想と違ったので考え込みながら黙々と食べる。味は見た目ほど濃すぎず、少し塩が強いという範囲だ。もやしとニラはベトナム料理にも使われている食材だし、麺をすすっていると、ニンニクの素揚げが5片くらい出てくる。そうか、ベトナム戦争を戦いきったベトコンのパワーをニンニクで表現しているのか、と独り合点する。

 唐揚げも食って、満腹だ。後ろの壁に貼っている紙をみると、本日食べなかった郡上ラーメンのスープには、「長良川の鮎、飛騨ケントン(豚)、奥美濃古地鶏」が使われているという。そうか、お国の素材で作ったから、郡上ラーメンなのね。それと、ベトコンか、、、
 そう納得して、勘定をして外に出た。まあ、まずまずの味だったかな、、、と思って振り返ると、同行のI氏が、僕らより遅れて店から出てきた。満面の笑みを浮かべながら、

「君たち人生経験が浅いねぇ~ わからないことは訊かなくちゃ!」

と言う。そう、なんと彼は、「ベトコンラーメン」の由来を、おばちゃんに聞いてきたというのだ。そして、本日最高の衝撃が僕らを襲うのだった。

「あのね、ベトコンってのはね、『ベスト・コンディション』の略なんだってさ!」

えええええええええええ~~~~~~~~~~!

それなら「ベスコン」とかにしろよ!紛らわしい!!!
しかし、一つの謎が解け、歯ぐきの裏に刺さっていた魚の骨がスカッととれたような、そんな爽快な気分を味わったのであった、、、


2003年12月17日

郡上八幡土産の決定版 大国の「葉南蛮(はなんばん)」

 もし岐阜県の郡上八幡にいくことがあるならば、お土産は「葉なんばん」で決まりだ。葉なんばんとは、郡上名産の唐辛子の実と葉を佃煮にしたものだ。当然ビリッと辛いものだが、甘辛という感じで、こいつがあると、ご飯が進みすぎて大変なことになってしまうのだ。
 葉なんばんを売っているところもいくつかあるが、本家といわれているのが、街中にひっそりと店を出している「大國」という店だ。

■大國(おおくに)   (05756)5-2366
http://www.net-club.co.jp/ookuni/

葉なんばん 1瓶 650円
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この店の葉なんばんは、おばあちゃんとおじいちゃん夫婦が手作りしているものだ。しかもそのおばあちゃんが店番しているので、ついつい買ってしまうのだ。辛さも5段階くらいあるが、一番辛い「劇辛」にしても、僕にはちょうどよいくらいだ。これを納豆に混ぜて食べると、実に滋味深く美味しいのである。

この方がおばあちゃんである。可愛らしいおばあなのダ。
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また、葉なんばん以外にも、仕入販売している商品がいくつかある。本日、うるかが売っていることに気づいた。うるかとは、鮎のハラワタの塩辛で、酒呑みにはこたえられない肴だ。そう、郡上といえば清流・長良川。ここで育った鮎のハラワタのウルカといえば、垂涎の的である。2瓶買い求める。
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この辺では季節なのだろう、栃(トチ)の実を剥いたものも売っている。トチもちにするのだろう。
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自然薯も売っている。画像では見えないだろうが、「絶対に、なぶらないでください」と書いてある。これはおそらく「さわらないでください」ということなんだろうなぁ。
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こんなものを観ているだけで、なんだか幸せになるのが、郡上八幡なのだ。つまらない観光コースはどうでもいいので、この大國は絶対にはずさず、葉なんばんを買いに来ることを進める。そうそう、どうしても食べてみたい人は、上記のWebからFAXオーダーも可能だ。しかし、おばあちゃんに会って買わないと味が出ない気がするんだよなぁ、、、

2004年01月06日

愛媛県で最も旨いと思われるうどん 「踊るうどん」

 正月明けで、しばらく出張の食い倒れネタがないので、これまでの膨大なアーカイブから、ぜひとも紹介しておきたいものを小出しにしていきたい。そう、「食い倒れクラシックス」である。

 第一弾として紹介したいのは、愛媛県が誇る激烈旨うどん屋である 「踊るうどん 永木」だ。

 先ず言っておきたいのだが、僕は愛媛の今治市で産湯を浸かった。愛媛県は、隣の香川県(讃岐)と同じく、圧倒的なうどん文化である。旨い蕎麦屋はほぼ皆無。しかも、瀬戸内といえば、極上品のいりこやうるめ干しが産出され、魚系の出汁には事欠かない。うどんがまずい条件がほとんど無いのである。
 ま、讃岐のうどん文化にはひけをとるのであるが、そんな愛媛にも劇ウマなうどんがある。讃岐うどんがはやる一歩前くらいに、高知の親友と車で名店を回り、1時間半で13玉のうどんを食べたこの僕がみても「こいつは、讃岐より旨いかも、、、」と思ううどんだ。それが、「踊るうどん永木」なのだ。

 ここは、愛媛の企画会社の女社長さんに「やまけんちゃん、愛媛の旨いうどんを教えてあげる!」と連れて行ってもらったのだ。松山市内から少し車で郊外に出たあたりにあり、わかりにくい立地。でも、この辺でこの店を知らぬ者はない。

「踊るうどん 永木」
愛媛県松山市須賀町2-1 リバーサイドナカオ
089-953-5162
営業時間10:30~午後2:30
金曜のみ午後7:00~9:00
定休日 毎週日曜・月曜

 ここにきたら、先ずはとにかく生醤油うどんを頼むのが良い。お約束の、セルフサービス大根おろしセットが来るので、おろしを擂る。その内にゆであがったうどん玉を水でキュッと〆て水切りをしたものが運ばれてくる。これを、テーブルのおろしと生醤油でいただくのだ。
 この一発で、ノックアウトされた。讃岐の、麺の角が立った感覚とも違う。とても柔らかく、はんなりふるりんとした感触なのだが、むっちりとしたコシがあるのだ。讃岐では、大体さいしょからブルリンというコシが目立つのだが、ここのうどんはムッチンとした官能的な腰使いだ。
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むろんこれだけでは足りない。同時に頼んでおいたごぼう天ぷらうどんが運ばれてくる。かけスタイルのこちらは、牛蒡を薄切りにしたものを天ぷらにしている。ここでは油に細心の注意を払っており、酸化の形跡はほぼゼロだ。香り高く揚げてある。かけ出汁も旨味が濃く、うどんをすするにふさわしい強さを持っている。
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瞬く間にたいらげてしまい、まだまだまだ腹が減っていたので、釜揚げを所望する。店の人もさすがに苦笑していた。手持ち無沙汰で店内を見渡す。小さな店だが、客足は全く絶えない。
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天ぷらケースを覗いてみると、大好きなちくわ天とゆで卵天を発見。すぐにひっさらう。
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それをつついていると釜揚げが出てきた。通常、釜揚げでは、どうしても麺の腰が決まらずふわふわした食感になりがちだ。讃岐の名店「わら家」や、満濃町の「長田」のように、釜でも腰がのり、歯をはじき返す麺が食べたい。しかし、この「踊る」釜揚げは実に素晴らしかった。うどんというもの、弾力だけではないのだなぁ、、、おいらの讃岐紀行、偏りがあったかも、、、
いやそんなことは無いと思うが、踊るうどん、最高に旨い。
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ここのHPをつぶさに見ていただくとわかると思うが、店長の永木さんは若い。そして、なんだか顔が仏様のようだ。そして言動やモットーも宗教的ビジョンが色濃く出ている。そんな踊るうどん永木が大好きだ!

愛媛県人とくに松山在住者が羨ましい、、、
足を運ばれる人は、ぜひいっていただきたい。うどん一杯400円程度で大満足間違いなしである。

2004年01月08日

インデアンカレー情報

ライターの堺さんという方から、インデアンカレー情報をいただいた。
また、ご自分のblogにも所感を書いて頂いている。

堺三保さんのblog(1月8日のエントリを参照のこと)
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大阪の人からの反応が多いところをみても、本当に人の心に残るカレーなんだな、、、
そして私は、1月26日に大阪出張なのである!
今回は梅田店で食べた後、足を伸ばして堂島店にも行くつもりなのである!

そして、上記の堺さんが書いておられる日本橋にあるカツ丼専門店「こけし」にも行ってみたいという欲望がムラムラとわき起こったのである! よし、この日の昼は3軒ハシゴ決定なのであった。

2004年01月19日

日本最高の漬け物「かぶら寿司」と金沢の魚で討ち死に 金沢「宝生寿司」

 日本が誇る発酵食品「漬け物」。しかし、ここのところ浅漬けブームで、ホンモノの漬け物があまり出回らない。スーパーに売っているのは、殆どが野菜を調味液につけて数日のうちに食べる「浅漬け」ばかりである。漬け物とは本来、冬季の農産物が収穫できないシーズン用の食べ物、つまり保存食として発展してきた経緯を持つ。長期間保存可能とするために、微生物による醗酵の力を借りる。乳酸醗酵に代表されるような醗酵の過程を経て、野菜は全く別の味わいへと変容する。それが「古漬け」や「本漬け」と称されるものである。

 でも残念ながら、昨今、古漬けは売れない。消費者の好みが、よりあっさりした浅漬けに傾いてしまっているのだ。インパクトのない、調味液の味を食べるようなもので、僕は浅漬けはそれほど好きではない。乳酸醗酵してすっぱみが出ている本漬けが大好きなのだが、、、

kaburazusi-s.jpg ま、そんな文句を並べ立てたいわけではないのだ!今夜は、日本を代表する素晴らしい漬け物を、その本場で食べたのだ!それは、北陸が誇る「かぶら寿司」という漬け物だ。

 寿司と言うだけあって、そのネタは非常に豪華。聖護院系の大きな蕪(カブ)をハンバーガーバンズのようにものをはさめるようにカットし、軽く塩漬けする。そこへ、北陸の海で水揚げされた寒ブリに塩をし、挟み込む。ここに麹(こうじ)と大根、ニンジンなどの酵素が強い野菜もはさみ、重しをして漬け込むのである。どのくらいの期間つけ込むかは知らないが、そうしてしばらく麹と野菜の酵素の力で乳酸醗酵させた蕪とブリは旨味を増し、上質な酒のような深い芳香を発散する。円形のそれを4つに割って断面をみると、漬け込んでいたとは思えないほどに深紅の美しいブリの断面が見て取れるのだ。
kaburasusi2-s.jpg 僕は漬け物大国・日本の中でも、このかぶら寿司は一、二を争う代表的な美しい漬け物だと思う。これに匹敵するのは、 北海道の厚岸にある大根と鮭のはさみ漬け(素材が変わるだけで作り方はほぼ同じ)位ではないだろうか。

 で、食べに来てしまったのである。東京からはるばる金沢へ!遊びではないよ!明日、農水関連の団体のセミナーに、講師として参加するのである。山本センセイなのである。小松空港からバスで金沢駅まで40分、ホテルにチェックインして招聘元の皆様とおちあい、夕食をと言う運びに。あらかじめ事情通が教えてくれたのが、金沢港のすぐ近くにある有名な老舗「宝生寿司」だ。

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宝生寿司
http://www.housyouzushi.co.jp/cos/main.html
■所在地 :金沢市大野町 4-58
■TEL.076-267-0323 (フリーダイヤル :0120-100323)
■営業時間 :11:00~22:00
■定休日 :毎週水曜日
※金沢駅東口からタクシーだと2000円強程度。
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 老舗旅館風の落ち着いた佇まいの引き戸を開けると、天井までの吹き抜けが心地よい、カウンターと座敷席が並んでいる。カウンターに正面腰を落ち着ける。後でわかったのだが、どうやらこの店のマスターの前に座れたようだ。ラッキーである。
 地魚で決めるおまかせコースが、12貫でなんとたったの2500円!東京もんとしては金沢の物価指数を疑わざるを得ない。そうして官能のひとときが始まったのだ。

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nigiri-s.jpg まず出てきた鯖は 「これは生鯖だからネ。」 えー生でっか?口に運ぶと、臭みなどというものは全く無縁の、ただただ綺麗な香りと脂がシャリと合わさって溶けていく。白身はおそらくヒラメだが、申し分ない。しかし、何と言っても旨いのは甘エビだ。
 ご存じだろうが、金沢は海老の宝庫だ。「今日は3種類しかないけど、多い時は8種類くらいの海老があるよ。」というくらいなのだ。東京ではあえて食べたいとも思わない甘エビ、しかし金沢で食べると、本当に濃ゆい甘みがトロケルのだ。
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鯵も旨かった!バイ貝も旨かった!貝類も豊富で、まんじゅう貝という、江戸前では余り見かけないようなネタが多数あった。

そして、クライマックスがやってきた。

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写真の右端にある軍艦巻きにしてある握り。これは、「じゃ海老」という、変な名前の小さな海老を数匹分軍艦に盛ったものだ。

■↓これネ!
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「おそらくこの辺で一番甘い海老がこいつだよ。小さいけどね。」
というそれを、少しだけ醤油を漬けて口に放り込む。途端に、ショッキングなほどに甘く、濃厚でネットリとした香りと食感が襲ってきた。旨い~。眉間にしわを寄せ、3分ほど噛み続ける。マスターがこちらを見て笑っている。

「旨いっしょ?」

旨い! こんなに素晴らしい海老は初めてだ。
ちなみにその隣にあるのはこれまた江戸前ではお目にかかれない「ガス海老」というもの。これも実に濃厚な旨味があり、旨い。けど、ショック度では「じゃ海老」が遙かに上だな。とにかく感動してしまった。

 おまかせ12貫はこれで一回りだが、勿論食べ足りない。大将と相談しながら、白身の王様、クエとマンジュウ貝、そして椎茸の握りをお願いする。

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このクエが実に最高。しっとりふっかりしたペルシャ絨毯のような食感と、のってりとした濃厚な脂分、そして上品なコク。どうしてこんなに旨いのか。マンジュウ貝は名前に反してあまり印象に残っていない。それより印象に残ったのは椎茸115という握りだ。実は日本海側には椎茸の面白い産地がいくつかある。その総本山は鳥取なのだが、金沢にもすごいのがあったのだ。この写真を見て欲しい。

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でかい、分厚い、そしてずしりと重い。これを焼いて、握って貰うわけだ。椎茸の強い香りと、何とも言えない火を通した茸(きのこ)の優しい柔らかさが、実に素晴らしかったのだ。

kuroobi-s.jpg この店、酒も実に素晴らしい品揃えだ。メインは地元の福光屋の「福正宗」だ。この福光屋はものすごい酒造で、2万石という堂々たる生産量にして、しばらく前に全量純米酒へと切り替えた銘酒蔵である。これはものすごいことなのだ。首都圏ではメインの福正宗よりも「黒帯」の酒造と言えば分かり易いかもしれない(「黒龍」や「黒牛」とは別モノです)。

daigin-s.jpg 「黒帯」の燗を頼み、寿司と合わせると、実にベストマッチだ。さらに、この宝生が特別に作ってもらっている、その名も「宝生」という酒がある。つい勢いで頼んでしまって後悔したのが、これは大吟醸であったのだ。酒米を30%以下の歩合に精米し、米の中心部のみで醸したのが大吟醸だ。とはいっても、やたらと香りばかりが強くたつ大吟醸が多く、食中酒としては飲みたくない。
 ところが運ばれてきた「宝生」を一口飲んで唸ってしまった。余分な香りは全くない。いや、香りはとても強い。しかしそれはあくまで米と麹の香りだ。磨き込まれた酒米からしか醸せない、雑味を極限まで排除したストイックにして芳醇な味と香りが、酢飯で痺れた舌をうっすりとリフレッシュしていく。素晴らしい!

kaburasusi2-s.jpg そうそう、書くのを忘れていたが、勿論「かぶら寿司」を頼んだ。この美しい切り口を見て欲しい。惜しいが一口で食べる。かぶらの「クニュ・シャリ」としたどっちつかずの食感の後、ブリが歯の上に認識される。漬け込み時間を経てもなお弾力に富み、噛み込んだ歯を心地よく押し返してくるブリから、パッと凝縮された旨味が弾けるのだ。麹の香りが濃いので、醸造系の味が好きでない人には勧められないが、とにかく一度は食べてみて欲しい一品である。

 もう一つ、大根寿司というのも頼んだ。カブを大根にしただけと思ったら、切り身の魚の食感が違う。少々堅めで癖のある香りは、なんとニシンであるそうだ。これまた実に旨いのであった。


 さて、寿司を都合15貫にかぶら寿司と大根寿司。そしてビール、純米酒、そして大吟醸と食べ・飲んだ。一体いくらになるのだろう、、、と勘定書を覗くと、なんと4人で18900円。ひとり5000円でおつりが来てしまう。何たることなのか?
 しかしそれでもタクシーの運転手さんが、「我々庶民からすると、あれは高い部類だよ」という。うーん 素晴らしい。ビバ!日本文化!ビバ、金沢! 将来引っ越してもいいかなリストに加えてしまおうか。
 ただ、一つだけ気になったこと、、、入店の際も、会計の際も、女将さんかどうかはしらないが、女性の方の対応が非常に覇気が無く、それだけならよいが、客を迎えるという心づもりがみてとれないのが残念だった。板前さんたちが快活なだけに、惜しい。

 本日、食べ終わってホテルに帰り、速攻でこれを書いている。やはり食倒れ日記は冷静に書くなどできないのだ。酔っぱらって気分よく高揚している時が一番勢いがある!
 さて明日は昼飯に何を食べようかなぁ、、、

2004年01月24日

豊饒の大地・北海道帯広編その2 おふくろの味 「かかし」の豚丼とノムさんを味わう

 JAでの仕事は無事終了した。トラブルにも見舞われず、本当によかった。これに向けて徹夜で頑張っていた後輩もホッとした表情だ。
「お疲れ様でした!」
「うん、じゃーどこいこうか。何食いたい?」
そう、これから夜の部開始なのである。

 昼から一緒にいて下さる岡坂さんと、そのご同僚の野村さん(ノムさん)がお相手をしてくださる。ちなみに前回もこのお二人に美味い店に連れて行って頂いたのだ。お二人とも生粋の幕別生まれの幕別育ち。ノムさんは岡坂さんの高校の後輩である。
「いや、俺も岡坂さんと課長には頭が上がらないのよ。」
というノムさんはしかし、初対面の時には「こいつぁヤバイ」と思ってしまうムッツリ触れると切れちゃうヨ系の怖さを醸し出している方なのだ。でも段々とうち解けてきてくださると優しくニコッと笑ってくれるナイス兄ちゃんなのであった。
 そして、金沢編に引き続き、このノムさんこそが帯広に於ける味の先導人となったのである!
■ノムさん
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 さて帯広に来るととにかく豚丼しか食ってないということもあり、普通の居酒屋にいってみたいと所望する。そういえば今回も泊まるホテル「パコ」のそばに「かかし」という店があって、そこの豚丼もナカナカだという噂を聞いた。ということで、今回は「かかし」に行くことになったのである。

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■かかし

住所 : 北海道帯広市西2条南10
電話 : 0155-25-5911
営業時間 : 15:00~24:00
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品書きにはやはり海産物が多い。とはいっても、首都圏でみる居酒屋メニューとそれほど変わるわけではない。問題は、そのありふれたメニューの中身が、首都圏で食べられるそれとは全く違うということだ。

■いも団子
 これは北海道では広く食べられているものだ。じゃがいもをマッシュにし、片栗粉を加えてよく練り、団子状にしてあげたモノだ。これにバターと甘辛醤油タレがかかっている。
「これも豚丼系のタレの味なんだよ。」とノムさん。


■ししゃも
 ししゃも、、、実は東京にいる僕らは、ホンモノのししゃもを食べる機会がそうないのである。いっぱんにホンモノのししゃもが出回ることはごくまれで、よく似た別物の子持ち魚が売られているのが殆どだ。
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「ヤマケン、おめぇ、ししゃものホンモノ食べてケ!」とノムさん。
運ばれてきたししゃもは、なんともふっくらとし、かつ水分が適度に載った、我々が食べているものとは別物の出で立ちである。旅館の朝食とかで出てくるのは銀色だが、なんだかこちらのはオレンジがかった色だ。レモンを軽く搾ってかぶりつく。すると適度な塩の利いたジュースがじゅわっと溢れてくる。そして卵がモロモロと崩れる。まったくパサパサしていない!逆にトロリモロリと水分が絶妙なのだ。

「う、ウマいっす!」

「ヤマケン! これを食わないで出張食い倒れ日記なんて書いてちゃ ダメだ!」

そう、ノムさんはこれを言いたかったのだということが判明!ここから怒濤のノムさん責めが始まるのであった。

■イカの一夜干し
「ヤマケン! あのな、イカってのは北海道が一番旨いんだからナ!俺たちなんか、イカにゴロ(ハラワタ)巻いて凍らせたルイベで酒が何杯でも飲めるんだぞ。ま、とりあえずこの一夜干し食ってみろ。」
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 なんてことはない一夜干し、、、にみえた。しかし、驚くほどにふっくらとしたスルメイカの身は、一夜干されることによって旨味を増し、水分が抜けることによって絶妙に官能的な歯触りとなって、歯にむっちりとした弾力を返してくるのであった。

「おう、ちょっとまちな、今、特製ドレッシングつくってやっから。」
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と言ってノムさん、やおらマヨネーズに細工をし出した。
まず、マヨの小皿に七味を入れる。まあそれは我々もよくやることだ。次に、それに醤油を加える。ふうむなるほど。そしてみていると、なんとそこに、日本酒を加え始めるではないか!そして一気呵成にかき混ぜる!
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「これがポイントなんだぁ。知らなかっただろ?日本酒の性質で、いつまで経ってもマヨが乾いたり色が変わったりしねーんだよ。ほれ、食ってみろ」

この特製ドレッシングにイカをつけて放り込む。旨い!結構日本酒がはいっているのにも関わらず酒の香りは殆どしないが確実に旨味が増している。

「これ、「こまい」にも合うからつけてみろ」

と、丸焼きにしたこまいに漬けて食べる。当然ながら旨い。

「海老にもつけてみろ!これはブラックタイガーだな」

と、海老の丸焼きはかなり大ぶり。皮を剥いて特製ドレッシングで食べると、実に旨いのである。
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この時僕は海老に付いている皮は全部剥いて食べたのだが、そこでノムさんすかさず

「ヤマケン! 海老はね、薄皮は残して食べる方がうめーんだよ!そんなことも知らないで食い倒れ日記じゃねーぞ!」

へええええ そうなのかぁ、、、と思ったが後の祭りである。次回また海老で試してみるとしよう。

■ホッケ
さて北海道といえばほっけである。塩焼きを所望すると、「だいぶ小さいな」というサイズのものが運ばれてくる。我々にとっては十分な大きさなのだが、、、

「さてヤマケン、このホッケ、開いてある骨側と骨なし側、どっち側の身が旨いと思う?」

うーむ それは考えたこと無かったけど、、、太陽光に干して旨味成分が凝縮されるのは骨の周りだよなぁ、と思って骨側を指すと、

「違うよ!骨側はな、骨の厚みで干しの旨さが身まではいっていかねーんだよ。だから骨の周りは確かに旨いんだけど、そこの一枚だけなんだよなぁ。で、骨なしの側は、ブロックされねーから、中身まで旨くなるんだよ。食って確かめてみろ!」

食ってみた。確かにそうだ!骨側は骨を除いてしまうと、あとは白い淡泊な肉があるだけだ。しかし、骨のない側は、干された旨味タップリの部分が中まで浸透している感じだ。

「仰るとおりっす!」
「だろ?ヤマケン! だめだよこれくってから日記書かねーと!」

全くその通りだ。そして、さらにホッケの一番旨いカ所というのを教えて頂く。

「それはな、ここだ!」画像参照↓
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ホッケは背開きで開いている。つまり、開いた状態で頭の下の真ん中の部分が、いわゆる「はらす」の先っちょということになるのだ。

「せっかく俺がほじくってやったんだから食え!」

おお、たしかに歯触りがシコッとしていて、脂の乗りも旨さも他の部分とは段違いだ!
この後もしっかりシッポを持って皮をむけ等、実に含蓄の深い叱咤をいただきまくる。

そしてこの店の豚丼を食べたのである。

■「かかし」の豚丼
ここの豚丼は、フライパン焼きである。そして特徴としては、タマネギの千切りが一緒に炒められているのだ。
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「これはね、家庭でやる豚丼でよくやる方法だね。」
なるほど。食べてみる。昼間に食った「鶴橋」の黒豚丼に比べると全然あっさりしているが、これはホッとする味である。タレは甘め、でも適度にしゃっきりした味だ。飲んだ後をしめるにはちょうどよい程よい豚丼だ。

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いや、ずいぶんにたのしませていただいた。
この間、冷や酒が何本も空いている。僕も後輩もかなり酔っぱらってしまった。岡坂さん・ノムさんも酔っぱらっている。

さてこのかかしを出て、我々はすぐに帰っただろうか、、、?
いや賢明なる読者の皆さんにはわかるはずだ、、、これで終わるわけがない。この日最大のクライマックスとなる必殺ストレートがノムさんから繰り出されるのだ。

「ヤマケン! お前、金沢の寿司くらいであんなに日記かいてんじゃねーぞ!寿司はな、帯広が一番うめーんだ!」

ええええええ? 帯広で寿司っすか?それは違うんじゃねーの?と思いながら歩くこと100メートル。帯広駅からすぐの大通り沿いにある寿司屋に我々は誘われたのである、、、

(つづく)

2004年01月25日

豊饒の大地・北海道帯広編その3 仰天の牛トロ寿司は帯広にあり

 引き続き、岡坂さん、ノムさんが言う。

「ヤマケン! あのな、金沢の寿司食ったくらいで『最高!』とか言ってんじゃないよ!旨い寿司はなぁ、旨い寿司はなぁ、、、帯広にあるんだよ!」

えええ?本当ですかぁ?(半信半疑)
おいら、寿司は結構食ってるよ?いいんすか?そんなこと言って、、、というのが僕の内心の呟きだ。正直、大地の恵みが旨いこの十勝において、寿司が旨いというのはちょっとわからんなぁという気持ちだったのだ。

、、、しかしこの浅薄な推測は、とてつもなく仰天の寿司によって覆されるのである。

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■金ちゃんの店 吟寿司
帯広市西一条10丁目
0155-23-6641
※帯広駅からすぐ、繁華街の大通り沿いにある。
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「かかし」から100メートル程度にある金ちゃんの店 吟寿司の暖簾をくぐる。路面に出ている看板をみて驚いた。「牛トロ寿司」が一番上に誇らしげに書かれているのだ。

「ヤマケン、ここの牛トロを食ったら、もう忘れられねーよ」byノムさん

そうなのか、、、
しかしここで心の中には不安がよぎっている。牛トロかぁ、、、サシが入った牛肉を生で食ったって旨いもんじゃないだろうになぁ、、、
いや、例外はある。以前、北千住にてバードコートの野島さんに連れて行って頂いた焼き肉「京城」では、熟成されまくった肉をそのまま焼かずに食べて、ムチャクチャに旨かった。しかしそれはトロトロになるまで肉の熟成を進めているからだ。寿司屋の感覚で肉を使う場合、そこまで熟成させるだろうか、というのが疑問なのだ。

頭の中に「???」マークを点灯させながら入店する。顔はにこやかだが目つきが異様に鋭い大将(おそらくこの方が金ちゃん)と、よく似た顔の息子さん「ケンちゃん」そして控えめな女将さんが迎えてくださる。

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ちょうど5人程度の先客の分を握っているところで、大きな板に寿司を握っている最中であった。

「ちょっとだけ待っててね、今すぐ握っちゃうから。」

そう言うや、金ちゃん大将が握りを始めた。

速い!
驚速の握り技術である。いろんな寿司職人さんをみてきたが、この吟ずしの金さんの握りに優るスピードはみたことがない!みるみるうちに25貫程度の握りが板を埋め尽くしていく。
その握りが出て、いよいよ僕たちの番である。

「じゃあオヤジさん、今日はね、、、今日はね、、、どうしようかなぁ」

とノムさんがしばし熟考。意を決したごとく怒濤のオーダーを決める。

「サバ、シャコ、タチ、トロ巻き、穴子、そんでトロ寿司。」

そして、快楽のひとときがやってきたのだ。

いい感じにトロトロと〆られたサバをいただくと、金ちゃんの握りは凄まじい速さながら、柔らかくまとめられたモノであることがわかった。
そして出てきたのが、とってもおおぶりのシャコだ。

■シャコ
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以前も書いたが、僕は江戸前のシャコが嫌い。食べるなら瀬戸内のきめ細かいものが好きだ。しかし北海道のシャコは堂々の存在感と、強く濃い濃い旨味がすばらしいものであった!
とにかく身が大きく熱いため、その旨さを存分に味わうことが出来る。塗られたツメも程よく甘く、シャコの甘さと香りと、そしてみずみずしい身の食感と相まって、思わずため息が出る。

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「うー、うー、ウマいっすよこのシャコ!」

「北海道もね、旨いシャコがあるんですよ。特に○○○あたり。」

残念ながら食べるのに夢中で、この○○○がどこだったのか忘れてしまった!うーん岡坂さん、どこでしたっけ?

そして、次にアレが出てきてしまったのだ!

■生タチ(真タラの白子)
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タチの旨いのを食べようと思ったら、残念ながら築地では遠すぎる。北海道で食べなければ、、、北海道での何年かぶりのタチだ。当然ながら臭みもえぐみもない。極めて繊細でトロトロの冷たいポタージュが、むっちりと弾けるのだ。

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さて、そして問題のネタが出てくるのである。

■牛トロ巻
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よく冷やしてある牛を、柳刃包丁で細いスティック状に切っていく。それを軍艦巻に盛りつけたものが「牛トロ巻き」である。サシは入りまくっている。ご覧の通り美しいピンク色だ。

「醤油つけないで、このまま食べてください!」

どうかなぁと思いつつ口に入れる。
冷やしているため、牛のネットリとした脂は最初は溶け出してはいかない。しかし噛んでいるうちに、牛を載せる前に軍艦に仕込んだとおぼしき、濃い旨味を持つタレ成分の味がひょいと顔を出してくる。そしての旨味が牛を包み込んでいく。若干の塩気の強みが、牛のモッチリした脂に包まれ、結果的に絶妙なバランスの味となるのダ!

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これは僕の人生で初めての生牛肉の味だ。「京城」のようなトロトロ感のある熟成肉ではない。どちらかというと熟度はそれほど進めていないフレッシュな感じ。そしてそのこなれ具合をビンビンに加速する謎の調味料があるのだ!

「こ、これ、どういう味付けなんですか?」

「ヤマケン!それが秘密なんだよ!特殊なミソなんだよ!」byノムさん

いやこれは素晴らしい。

「じゃあ、穴子で一息入れるよ。」
「うちの穴子はねぇ、東京には負けないよ。絶対に自信があるんだよ。○本譲二なんて、15貫食べてったんだから!」

そうして出てきた穴子は、実に見事、本当に江戸前でもナカナカ食べられない旨い穴子だった。

■穴子
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僕の好きな「焼き」の強い穴子である。タレは最初から刷毛で塗りつけて焼き目を入れているらしく、非常に香ばしく身にまとわりついている。代々木上原「カストール」の藤野シェフによれば「おそらく今の時期だと、築地から北海道に行ってると思いますよ。旨いのは産地よりきっと職人さんの腕でしょう。」という個人的コメントがあったのだが、実際そうなんだろう。この穴子、好みです。10貫食べたい。

しかし、そうはさせてもらえないのだ。この後、いよいよこの吟寿司の最大の目玉である「牛トロ寿司」が来るのだから、、、

■牛トロ寿司
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見よ!この誇らしげな切り口の立った牛肉片を!秒速の握りの工程をみていると、この牛の裏に瞬時に塗ったのは、ほぼ黒い粘着性のペーストだ。岡坂さんが言うように蟹ミソ系のものだろうか。それを塗り込み素早くシャリと合わせ握る。

「はいよっ これが牛トロ寿司!」

「ヤマケン、これを食ってみろ!ヤマケン!」byノムさん

食べた!
う~ん これは旨~~~い! 先に出てきた、細口切りの牛を軍艦に載せたトロ巻きとは全く違う感覚だ。一体なんだろう、肉の旨味が強く感じられる。生で食べるともっさりするはずの牛脂が、心地よい甘みで、溶けている気がする。ご存じと思うが牛脂は融点が高く、人間の体温では溶けない。マグロは溶ける。従って牛は生で刺身で食べると旨くないはずなのだ。しかしこの牛トロ寿司は、舌にロウがかぶさるような嫌味が全くないどころか、、、いやマジで旨いのだ!あの魅惑的な謎のミソの味が、噛んでいるうちにどんどんと染み出てくる。

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「どうだヤマケン!帯広の寿司は旨いだろ?」byノムさん

「、、、はい、初めてです、こんな旨いの、、、」

岡坂さん、ノムさんは満足げに微笑んででおられる。

「俺たちもここんとここの店ばっかり通ってるもんな!」by岡坂さん

「はい、岡坂さん野村さんは、この店の常連ベスト3に入ってます!」byケンちゃん

そう、そういうことなのだ。今回の組み立ては、店に通い詰めていないととうてい辿り着けない。例えば、牛トロ巻の後にいったん穴子を挟んでリセットしてから牛トロ寿司にいくあたりなんぞ、観光客には絶対にまねできないだろう。
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岡坂さん、ノムさんはご家族の分を包んで貰っている。お二人の心根の優しさがビシビシと伝わってくる。

「ヤマケン!旨かったか?」

「はい、もう最高っす!」
それしか言えない。ここでお二人とお別れ。僕も通常ならもう少し何かを食べに行くだろう。しかし、、、そうする気になれない。今日はこれで心の満足を持って打ち止めにしておきたい。それほどまでに素晴らしい寿司だったのだ!

 お二人とお別れする。本当にありがとうございました。しかしこのお二人を上京時にはどこへお連れすればいいのだろうか。悩みが増える今日この頃であった、、、

明日は帯広を発ち札幌へ向かう。その前にまたもや帯広インデアンカレーを襲撃する予定なのであった。

豊饒の大地・北海道帯広編その4 帯広インデアンカレーにまた新事実発覚だ

jpg 朝、目覚めると空腹である。昨晩あれだけ食べたにも関わらずきっちりと腹が減るのはどういうことだろう。でも、ホテルの朝飯などを食べるつもりは毛頭ない。帯広駅周辺のブランチといえば、インデアンカレーしかない!

 インデアンカレー。前回も述べたとおり、どうやら大阪のインデアン」とは全く関係ないらしいのだが、そのシンボルキャラクタはそっくりである。ただ、似ているのは名前とそのキャラクタだけで、味のほうは全く別物である。別物であるが、実に旨い!一番ベーシックなカレーが380円。日本風トロトロカレーであり、スープ系カレー好きの友人Yには敬遠されそうだが、僕はこの帯広インデアンのカレー、衝撃的に好きになってしまった。

 さて今回も帯広駅前の長崎屋に行く。開店前の5分間、中学生やらオババやらがうわーっと押し寄せる。そうか本日土曜日だもんな。でももしかしてこの人たち、一斉にインデアンカレーの店に向かったりして(笑)
 開店後の奔流にのって店内へ。インデアンカレーの看板が見えてくる。前回職人芸を見せてくれた眼鏡の彼が居る。

「いやーまたきちゃったよぉ!」

「あ、、、いらっしゃいません、、、」

彼の中のおぼろげな記憶が、この図々しく話し掛けてくる人間に見覚えありと囁いている。そしてしばしたって合点がいったらしく、にっこりとしてくれる。

「あんまり旨いんでねぇ、また東京から来ちまったよ。」

「ありがとうございます。」
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彼の名前は吉田君。

「店では下っ端です」

というものの、腰の据わったいい動きを見せるカレー職人だ。

本日食べるものは決まっている。それは、、、お世話になっている農協の、岡坂さんとノムさんのご上司であるI澤さんがいつも食べるという「シーフードカツカレー」だ。これは実はメニューには載っていない。
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I澤さんが頼むってことはそりゃぁ旨いと言うことだろう。

「シーフードカツカレー大盛りね!」

「はい!」

 吉田君がすぐさま調理にかかる。まずフライヤーでカツを揚げる。カツは中々立派なもので、正直、こういったスタンドで出てくることが想像できないようなものだ。そして平行してナス・ピーマン・たまねぎといった野菜類を素揚げする。
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 カツに火が通ると油を切り、素揚げした野菜を大盛りご飯にのせ、そこにシーフードルーをかける。ルーは味別に鍋に蓄えられているのが見えた。
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これで完成だ!大盛りにした分と、カツが載っている分で、てんこもり状態になっている。

■シーフードカツカレーライス 大盛り 950円
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これが一番この店で高いメニューだと言う。
スプーンを入れるとカツの層にぶち当たり進まない。仕方が無いのでカツをすくう。カレーの邪魔をしないよう、衣は微細できめの細かいパン粉で仕上げている。カリッと仕上がったその揚がり口はお見事である。このカツとシーフードのルーが実にベストマッチング!

「やっぱ旨い!東京から食いにくる価値あるよぉ」

「ありがとうございます。」

吉田君ともどうやら二回目で心の交流ができそうな気配だ。僕が自分のWebを見てもらおうと、メモにアドレスを書き始めると、

「それ、インターネットのアドレスですか?聞きたいと思ってたんですよ!」

と言ってくれる。よしよし、見てくれよな。ぜひ社長さんによろしく。

さてシーフード大盛りは中々のボリュームだった。旨かった!本日はこれで打ち止めにするつもりで、「大盛り」にしたのダ。

し、しかーし!

大変なことが発覚してしまった、、、机上にのっているメニューを何気なく持ってみると、裏面にも何かが書いてある。
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なんと!ここのカレー、辛さ調節ができたのだ!
メニューを良く見てなかったから、辛さは一つしかないのかと思ってた!

これはどうしたものか!?そのとき神の啓示のような内なる声が僕に囁いた。

「そこに山があるから登るのだ!」

僕の闘魂は燃え上がった。

「吉田君!大辛ちょうだい!」

もう厨房内のもう一人の女性も大笑いしている。やっぱ食べるんじゃん!
でも実は少々日和っているのだ。一番辛いのは極辛。でも本日は戦闘態勢ではないので、一歩手前の大辛で様子見なのだ。

すぐさま出てきた大辛は、やはりどことなく唐辛子の赤色が指しているような気がした。
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そういえば厨房にはGABAN社のカイエンヌペッパーとカレー粉の大缶が出ている。あれが辛さの源になっているのだろう。一口食べてみる。二口食べてみる。三口食べてみる、、、

「辛い。」

いや、辛い。これは辛い。なんといってもトロトロ系の強いルーなので、したの上に滞留する時間が長い。したがって唐辛子の刺激成分が刺さりまくる感じである。もうすぐさまブワッと噴出す汗。この情けない顔を見よ!↓
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写真では見えないだろうが汗が頬を伝っている。ていうか、すでにTシャツ姿であるところに注意。

だがもちろん食べられない辛さでは全然ない。けど、吉田君はこう言う。

「女性でいつも、極辛の3倍というのをオーダーされる方もいらっしゃいます。みていると、平然と食べていらっしゃるんですよねぇ、、、」

上には上が居るものである。その勝負は放棄したい。
あー辛い。辛かった!
でも旨い。やっぱ大好きだ帯広インデアンカレー。
社長さん、このカレー、東京でも受けると思いますよ。いちど進出考えてみてください。

超満腹になり、勘定。ここのカレーだけで一人1000円を越すのは中々居ないだろう。吉田君で再会を約束し、長崎屋を後にする。

帯広編、ご満足いただけただろうか。引き続き、札幌ススキノ編が始まるのである。

北の都・札幌にて生ラムジンギスカンに驚倒する ススキノ「だるま」

jpg 帯広から札幌へ。前回、夕張から近くの栗山町の生産農家、岩崎氏の家で自家蕎麦を粉に挽いて蕎麦打ちをしたエントリをご記憶だろうか。あの岩崎氏が本日はメロン生産者の会議に出ているということだったので、札幌で合流することにしたのだ。
 北海道のメロンの世界では、如何にして味を向上させビジネスを安定化できるかという技術・経営双方についての生産者レベルでの議論がガンガン行われているらしい。そっちの会議も覗いてみたかったな。

 さて札幌といえば一 大歓楽街であるススキノだ。僕が札幌を訪れるのはこれが二度目。最初のススキノも、やはり5年前に岩崎氏に呼んで貰って北海道の農業者に講演をした際に連れてきて貰ったのだ。 その時も食いまくったものの記憶で忘れられなかったのが、「ジンギスカン」、「手打ちの蕎麦」、「タチの寿司」である。
 で、本日は岩崎亭ではないので蕎麦は無理だが、ジンギスカンとタチの寿司を食べようということなのである。

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 ところでジンギスカンには2種類ある。羊肉をあらかじめタレにつけ込んで焼くものと、生の味付けしていない肉を焼いてタレに漬けて食べるものの2つだ。前回食べた「カネヒロ」は、タレにつけ込んで食べるものだ(ちなみに帯広のノムさんには「あんなんだめだぁ」と言われてしまったが、、、)。僕は実を言うと漬け込みタイプしか食べたことがない。タレにつけ込んで旨~くなった肉のほうがよさそうじゃん、という感じであった。

「じゃあ今日は、生ラムジンギスカンを食べに行こう。」

と、岩崎夫妻は路面凍結しまくりの凍えるススキノをずんずん奥へと進んでいったのであった。小さな横町を入るとまさに雰囲気のある、汚い小さな店ばかり並んでいて興をソソル。そんな並びに、「だるま」があった。

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■ジンギスカン 「だるま」
札幌市中央区南五西四
生ラム 一人前700円
※しかし一人前では絶対に終わらない、、、

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すでに並ぶ人がいる。深夜までこの店は行列が途切れることがないという。うーむ人気店である。看板からは旨そうな雰囲気が漂っている。まどから覗いてみると、カウンターのみの店内は狭く、15~6人くらいで満杯になりそうだ。

「まあこの店の客の回転はラーメン屋並だから、ちょっと待とう。」

jpg そうはいいながらも根の生えた客がいたりして、僕らが入店するまで10分はかかったのであった。
 入店してからも壁に張り付いて待つ。秒速で動くおばちゃん4人で切り盛りされているこの店では、おばちゃんとの語らいとかは全くしている余裕がなさそうである。事実、客は一心不乱に生ラムを焼き、口の周りをタレでべとべとにしながら酒を飲んでいる。しかし女性が非常に多い。男性と半々ではなかろうか。水商売の女性らしき人たちと、一般の人が同等にいる。これは旨いってことだろう。


さてやっと席に着くことが出来る。

jpg 勢いよく燃える炭の入った七輪に、ところどころ穴の空いた鉄鍋がかぶさる。そのてっぺんには羊の脂が乗っている。てっぺんから鍋のふもとまでに数本のスリットが入っていて、それに沿って羊脂が流れて材料に絡まり、旨くなるのだそうだ。

「とりあえず生ラムと野菜。」

「はいよ!」

ときた材料をどーんと盛る。

炭火の威力で次第に肉が焦げ、旨そうな香りがしてくる。

「そんなに焼きすぎないで食べて大丈夫だから。」

という声で、すぐさまタレにつけて食す。
jpg タレは醤油ベースだが爽やかな酸味もある。そして生ラムはというと、、、僕はこんなに旨い羊肉を食べたことはない!!!

 まず、信じられないくらいに柔らかい。特にコッテリと白い脂身の部分はフンワリしており、筋目を全く感じない。

 そして、、、旨いジンギスカンでいつも言われることだが、まったく臭くない。臭くないどころか、程よい羊の香りがするのみで、嫌な成分が全てカットされているような感じ。

「旨いよぉ!!」

ここからはとにかくラムを頼み、食べまくったのであった。総計10皿は行っただろうなぁ。何故かは知らぬが、牛肉と違って嫌になることがないのだ。純粋に胃袋の限界まで突っ走ることが出来る。タップリ盛られたタマネギや長ネギなどの野菜を挟むとますます食欲が増す。
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あ!いかんいかん このあと寿司にも行くのに、大満足になるまで食べてしまった!しかしこれ一軒で打ち止めにしてもいいと思うくらいの美味い店なのであった。

帯広の岡坂さんノムさん、札幌のジンギスカン旨かったっす!(また怒られる、、、)
また連れてってクレー岩崎さん!

2004年01月26日

北の都・札幌の寿司はやはり旨かった ススキノ「みのる」

 さてジンギスカンに舌鼓を打った後は、岩崎氏の手引きで少々アルコールを飲み、満を持して寿司へと向かう。
 先にも書いたとおり、僕は人生においてこのススキノで初めて「タチ」を食べたのだ。タチとは、昨晩までの帯広出張記録にもあるとおり、真鱈(マダラ)の白子だ。これを湯通ししてポン酢と紅葉おろしをかけたものが関東でも並ぶが、生のタチを寿司ネタとして食べられるのは、やはり北海道ならではだ。この季節、札幌の寿司屋でタチがなければ何を食べるのだろうか、という感じだろう。僕にとって「タチ」の最初の一口が、ここススキノの名店「みのる」なのである。

 この「みのる」、残念ながらどこを探してもWeb上に情報が載っていない。しかもまずいことに、住所や電話番号が載っていた箸袋を持って帰ろうとしたのに、落としてしまったらしい。今度訊いておくのでとりあえず場所データは無しとさせていただく。まあ、ススキノであることだけは間違いない。

 雪が凍結した路麺をツルツルと滑りながら店にたどり着く。この写真に写っているのが岩崎氏だ。
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「みのる寿司」は大将と女将さんの二人だけで切り盛りしている。オヤジさんは温厚そう、白髪交じりの頭は年期と風格を感じさせる。このみのる寿司と岩崎氏はいろいろと関係があるそうで、本当に昵懇である。旨い物を作るという双方の共通した目的があるせいだろうか、目に見えない信頼感で結ばれている感じだ。
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 さてここでは大将にお任せである。

「あのタチが忘れられません!」

「いいのがありますよ。」

そうしてまた、至福の時が始まったのだ。

順序は違うのだが、やはりまずこのタチ(真鱈の白子)から見て頂こう。
昨晩帯広で食べたタチも実に旨かった。そして本日のタチも最高!

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このプリンプリンの輝きである。妖艶である。口に入れて歯を当てると、官能的にムッツリとはち切れ、口中にそのトロトロを放出させる。ブワっと拡がる旨味、しかしそこには一片の生臭みもない。

「フウンム、、、」

とフランス人ぽく唸ったまま僕は動けない。その動けない状態の写真がこれ↓だ。

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なんだか歌舞伎役者の決めのポーズみたいだな。アホな顔である。

その後も素晴らしいネタが続く。昨晩の帯広に引き続き、シャコを所望する。北海道のシャコは旨いと言うことを知ったからだ。
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口にするとザラリ、ホッコリとした歯触り。おお、これはメスのシャコだ!いわゆる子持ちシャコである。肉の旨味はあまりないが、卵を抱いた甘みがある。

「本当はオスの方を出したいんですけどね、メスがお好きなお客さんが多いんですよ。」

いや、これはこれで非常に旨いです!

そして北海道の旬、ボタン海老だ。

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海老は金沢で旨いのを食ってきたが、北海道のボタン海老もやはり旨い。どっちがいいと言うことではなく、やっぱり質が違うような気がする。そう、北海道のネタは「大陸的」で男性的な味だと思うのだ。

と、岩崎氏が「おお、出たぁ!」と唸るネタ。生アワビである。
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生のアワビなんて、実はそれほど好きではない。柔らかく煮たアワビの方が旨いと思う。でも、この生アワビは実に素晴らしかった。よく出てくる水貝のように固い歯触りというだけではない。適度に柔らかく適度にコリコリ、そして旨味ジュースがタップリである。うーん やっぱ素晴らしいなぁ。


そして出てきた「ホッキ貝!」。
この堂々の偉容を見よ!美しく角が立っている。
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噛むと貝の甘みがシャッキリとした切り口から滲み出てくる。ホッキって旨いもんだ。貝の鮮度的にはやはり北海道の方が東京より有利だなぁと思う。

実はそれはウニについても同じだった。今回ぼくが一度食べたネタを所望したのは、タチとウニだけだ。

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このウニが、、、このウニが、、、本当に素晴らしいのだ。いつも寿司匠で食べるバフンウニの赤も旨いが、みのる寿司のウニはそれを上回る鮮度とみえる。もう、雑味はどこにも見あたらない。10メートル平方の白い絹布をバッと拡げても、どこにも汚点が見あたらないという感じだ。清廉にして濃密、クリームが舌の上で溶けていくのだ。

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と、程よい頃合いで、タチのみそ汁を女将さんが出してくれる。熱が入ったタチはまたその濃度を増し、味わいがふくらむ。ひたすら旨い。

昨日の帯広の寿司といい、このみのる寿司といい、「どちらが旨い」ということではない。北海道の寿司とはこういうモノだ、という気合と気概をストレートに打ち出してくる、誇り高き職人と、それを受け止める素晴らしい客がいる。そういう真剣勝負の中で、不味い寿司が生き残れようハズがない。

ビバ!北海道!
この1ヶ月で、また寿司に対する見識が拡がったのではないかと自分でも思う。そして以前にも増して、寿司が好きになった自分がいる。

ススキノに行かれる方は、ぜひタクシーの運ちゃんにでも訊いて、「みのる」に行ってみて欲しい。

満腹になった腹を抱え、凍結路面にツルツルと滑りながら、さらに奥深く分け入り、酒を飲みに行くのであった、、、

今回の北海道編はここまで。

2004年01月27日

関西の鍋と言えばハリハリ鍋にとどめを刺す! 大阪「徳屋」

jpg 大阪出張である。またもや講演なのだ。でもそれだけではない。関西で同世代の市場関係者、流通関係者に友人が数人居る。僕が大阪に行く時はほぼ必ず会って飲み、意見を交わすのだ。この友人達に言えるのは、キャラや強みがまったくかぶらないということだ。だから、非常に仲が佳い。その仲間が「やまけん、ハリハリ鍋食ったことがないならぜひ行こうや」と言ってくれた。そんな言葉に乗らぬ僕ではないのであった。

 ハリハリ鍋といえば鯨肉と京菜(水菜)を出汁で煮て食べる、関西圏を代表する鍋の一つだ。現在大ブレイク中の水菜にさっと火が通るか通らないかくらいで引き上げ、鯨肉と共に噛み締めると、「ハリハリ」という歯触りが楽しめるというこから名前が付いたと言うが、本当だろうか。ま、それはともかく僕はどこかの料理屋で、小鍋仕立てのハリハリを食べた記憶はあるが、全くその味については印象がないほどにインパクトがなかった。

 ところで鯨といえば相変わらず「食べちゃダメ」というワガママを押しつけてくる国際的なインチキ団体が多いが、全くもって腹立たしい。今や鯨は増えすぎており、イワシの漁獲量の低下などは実は鯨によるものではないかという推論もある。詳しくはこの本をご参照。保護しすぎてある個体が増えれば、そのしわ寄せがどこかに来るのは当たり前だ。しかもそれが食物連鎖の上の方に位置する動物なのだから、水産資源の圧迫は深刻だ。食い倒ラーとしては捕鯨反対には断固反対である。 ま、その理由の最たるものは「くじら食いたい」なんだけど。小中学生の頃に給食に出たくじらの大和煮が忘れられないのだ。あれは旨かった、、、

 さて今回友人が連れて行ってくれるのは、「大阪では知らぬ者がいない」という老舗の名店だそうだ。その名を「徳屋」という。場所は千日前だそうで、これは東京で言う歌舞伎町のようなところだそうだ。たしかに商店街に足を踏み入れると、風俗店と通常の小売店と飲食店がワイワイがやがやと軒を連ねる猥雑な空間が拡がっている。こういうところには旨い店が多いこともまた事実。非常に楽しみなのである。

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■徳屋
住所:大阪市中央区千日前1-7-11 上方ビル2F
電話:06-6211-4448
ハリハリ鍋 単品だと一人前2000円程度だったと思う
各種鯨肉刺身、ベーコン、竜田揚げ
コロおでん、さえずりおでん等
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 老舗と言うことで、喧噪の中に佇むあばら家を予想していたのだが、店はきれいなビルにあった。それも2階と3階にまたがっているらしく、相当に景気がいいようだ。店にはいると、テーブルや座席で客がつつく鍋の熱で、ムワッと熱い気がする。
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友人が言う。

「俺ここを予約の電話かけた時、おばちゃんが『ああ、はいはい予約ですね、、、あ、チョット待って下さいネ』って言われて それから5分くらい戻ってこんかったわ。もうこんな店いくの辞めよて思ったけどなぁ。」

 どうやらそれほどぞんざいに客を扱っても大丈夫なくらいに流行っているようだ。程なくもう一人の友人も来て、座敷に上がる。

 品書きには鯨の各種料理と鍋料理が並ぶ。まあとりあえずハリハリ鍋を2人前と、鯨肉の刺身とおでんなどを頼む。

 で、結論から言うと、この鯨肉料理がすこぶる旨かった

■さえずりとコロのおでん
 さえずりは鯨の舌。クニュクニュトロリとした食感がじつにかわいらしい。これがトロトロに煮込まれ串に打たれて出てくる。芥子をちょいと塗って食べると実に最高。
 コロは脂身である。皮目もついていて、そこの若干固い食感と柔らかくとろける脂味との食感ギャップが楽しい。
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■百尋(ひゃくひろ)の煮物
 百尋とは鯨の小腸である。ソーセージの輪切りのような見た目だが、食感はまさにソーセージ系。ま、鯨はほ乳類なので当たり前か。歯触りが強く弾力に富み、味も非常に濃い。焼き目を漬けてポン酢に浸して供してくれる。

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■くじらの刺身
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 最上と言われる尾の身と、赤身と脂身を交互に重ねたものを注文。しかしこれは感心しなかった。せっかくの尾の身はまだ十分に解凍しきっていない。刺身は切り身にする前に解凍しておかないと、旨味がドリップと共に流れ出て無惨なことになる。果たしてこの尾の身も、安酒場で頼むマグロの赤身のようなべったりとしたモノに化してしまった。赤身と脂の刺身は、まあ食えた。

■ハリハリ鍋
 刺身のまずさにかなり気分的に冷えてしまったのを温め返してくれたのが、やはり真打ちのハリハリ鍋であった。鯨肉と水菜がてんこ盛りになって運ばれてくる。
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 これを一見すると量が多そうにみえるが、、、水菜なんてのは加熱してしまうととたんに分量が減ってしまう。鯨肉は数片あるのみだから、案外にこの店の利益率は高いのではないかと見た。綺麗なビルにはいることはある。
 ただし味付けはまったくもって見事であった。しっかりした味の出汁には激辛唐辛子のハバネロが入っていて、これが全体の味を締めている。
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そこに鯨肉を入れるのだが、一口大の鯨肉にはあらかじめ片栗粉をまぶし下味を付けて茹でてある。この片栗粉の衣が出汁に溶けてプルプルとろとろの絶妙な加減になるのだ。鯨肉が煮上がってくると鍋の表面に浮いてくる。そこに水菜をざっと投入し、しばし火が通るのを待つ。そしてグラグラと煮立ってくるところに箸を入れて、水菜とくじらをザクリと食べるのである。
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「うーーー 旨い!」

 鯨の癖のある香りと衣のトロ味、そして一緒に食べる水菜の食感が際だち、あっさりとしてはいるが強い味の出汁が実に旨い。ハリハリというのがこんなに風流で旨い鍋だとは思わなかった。しかし、あっという間に水菜が無くなってしまう。

「もう一人前ね!」

 と頼むと、すぐに運ばれてくる。それをよーく見ると、、、???
なんだ?さっき二人前って頼んだのと、大差ない量が盛られている。鯨肉は若干量が少ないが、水菜の分量はさっきと同じくらいだ。水菜、皿に山盛りにすると崩れそうになるから、限界量があるのだろう。てことはつまり、ここでは一人前ずつ頼んで、追加しながら食べていくのが正解ってことだ!と三人ともに得心するのであった。

 3人とも農産物の流通に携わっている人間だけあって、

「この水菜は土耕か水耕か?」

「いや絶対に土耕でしょ。味が濃ゆいし」

 等々のつっこみが入る。そう、水菜は最近水耕栽培品が多いが、風味も食感も、土耕品とは別物。安い水菜はそれなりの味しかしない。だけどもキューピーなどのCMで採り上げられているせいか、流通の世界でも大ブレイク中である。

 ハリハリを3人前食べて、濁り酒を飲み、議論を交わし、いい気分になった。

「やまけん、旨いうどんを食べに行こう!」

と、大阪の町をさらに探索することになったのであった。

大阪のうどんも旨い!つまみも旨い!2杯食っちゃった「川福」

 はりはり鍋の徳家から5分ほど歩いたところにある「川福」にきた。
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「大阪のうどんは、もっちりはんなりしてるのが多いけど、讃岐っぽくコシがあるうどんはあまりないんよ。でも、ここは最高!」

と友人が言う。彼が言うなら旨いはずである。
この店に至る道とかはよくわからない。酔ってたので忘れてしまいました。Googleで検索してみてください。

店内はこんな感じ。一杯飲んできた人たちが〆に入るみせという風情だ。
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お品書きにはうどん以外にもいろいろなメニューが並ぶ。牛筋みそおでんなどひねりの効いたタネだけでも1面を占拠。その他オムレツなど旨そうだ。

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「冷うどんも旨いけど、冬だしあったかいうどんを食わんと!」

と友人は言う。でも俺は冷も温も好きだ!ということで、かき揚げ天ぷら冷うどんときつねうどんのあったかいのを頼む。
ここ、厨房内はきっちりと割烹着を来た料理人が忙しく立ち働いている。非常にしっかりした、好感のもてる厨房であった。
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出てくるものも非常に気が利いている。このエビのオムレツ(卵焼きと書いてたかな)なんぞ、中華か洋食家で出てきても不思議は無いほどの完成度だ。ニンニクがビシっと効いていて、焼きの加減も絶妙。餡ともよくからんで旨いの何の。

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当然ながらうどんも旨い。サクサクのかき揚げにいろいろとのった冷うどん、実に綺麗。僕は型に入れて揚げたかき揚げは嫌いだが、ここのはそんな心配しなくても旨いかき揚げだ。全部よくかき混ぜて食べると、さぬき系のうどんなんだが、やはり大阪、いろんな旨い要素をとりいれたごちゃまぜうどんで最高である。

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そしてきつねうどんがまた最高であった!
友人の言うようにあったかいのが旨い!出汁が実に滋味溢れている。
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讃岐とは別系統の出汁。ほっとする。これで本日打ち止めしていい味だ!
あまりに旨く、秒速で食べる俺をカメラは捕獲できないのであった↓

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大阪の一日目の夜はこうして素晴らしいものになった。

その代わり、体のことを考えてホテルに帰って腕立て伏せ160回、スクワット50回やって寝たのであった。明日もまだ続くのだ、、、

大阪・日本橋 とんかつ丼 「こけし」で憩う

 満を持して大阪で迎える朝。講演が始まるまで少々時間があるので、このblogの読者さんであり、ライターをやっていらっしゃる堺三保さんから教えていただいた、大阪日本橋のカツ丼・カツカレーの店「こけし」に行くことにする。色々とルートを調べると、宿泊した天満橋から地下鉄で日本橋まで行き、カツ丼を食べてから、地下鉄で1駅向こうの長堀橋駅構内に、なんとインデアンカレーの店があるらしい。僕にとって初めての「梅田店以外の」インデアンである。今回をこのコースを採用しようではないか。

それにしても大阪の人たちはフレンドリーである。地下鉄の出口の目の前の大通りで、いったいどっちにいけばいいんだっけ?と思って信号待ちのおっちゃんに「日本橋ってどっちですか?」と訊くと、大きなジェスチャーを交えて、熱の入った説明を3分くらいしてくれる。でも、その内容は「こっち側をまっすぐ行けばいい」という簡単な内容なのだが、懇切丁寧に教えてくれるのだ。しかもおいらのインチキ関西弁ではなく、ホンモノの大阪弁(いや、俺には判別できないが)である。なんだかその人情に感動してしまった。あまりに感動しておっちゃんの姿を遠くから盗撮(?)してしまった。

■この人だ↓
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 さて日本橋(にっぽんばし、と読む)は、東京で言う秋葉原、電気街である。その日本橋駅から地下鉄では一駅向こうの恵美須町近辺に、その「こけし」があった。
 この店は、秋葉原に於ける牛丼「サンボ」のような位置づけなのだろうか、とても愛好者の多い店である。この店独特のの作法とおもしろさはこちらのWebにかなり詳細にまとめられているので見て頂きたい。

 さて堺さんからは「ダブルエッグ ダブルカツ セパレーツがいいですよ!」と教えて頂いた。これは、玉子2倍、かつも2倍、具とご飯は別皿でという意味だ。相当にボリューミーである。これでご飯が大盛り(スーパーという)だと、「フルコース」という符丁になる。しかし、その直後にインデアンカレーも攻めなければならないことを考えると、ここは自重しておきたい。出張が続くので、体調管理には気を遣っているのだ。ということで、すぐに見つかった「こけし」に入店する。

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■こけし
住所:大阪府浪速区日本橋4-5-18
電話番号:06-6633-4956
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 店内はわりと綺麗で広く、明るい雰囲気だ。席の前にはこけしが沢山ならぶショーケースみたいなのがある。
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 この店のメニューが出色のできばえだ。表面はこのようなオーソドックスな品書きだが↓
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 裏面はこのように↓、系統図による分類がなされているのである(笑)!
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「ダブルエッグのセパレーツお願いします。」

「はい!」

 待ち時間の間に、タクワンをぽりぽりと噛む。そう、ここは「たくわんのわんこ蕎麦状態」を味わえる店なのだ。タクワンが減ると、すぐさま店員さんが補充してくれると言うことで有名。これは、皿を伏せるまで続くという。果たして、店内を一定時間で回遊している店員さんが「たくわんいかがですかぁ
と言って、2枚放り込んできた。タクワン自体は蛍光色の強い、みるからにその手のタクワンであるが、妙に美味く食べてしまう。ポリポリポリ。

 そして程なく運ばれてきた「ダブルエッグセパレート」がこれだ!
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 盛りはそれほど多いわけではない。うーむやっぱりダブルカツオプションをつければヨカッタかなぁ などと思うが、ここは次のインデアンにむけて自制心をはたらかせたのであった。

 セパレート(別皿)のカツをご飯にのせる。あれ?と思うほど薄い肉である。ショウガ焼き用に肉に少し厚みが加わったくらいか。しかし、この薄切り加減がきっとこだわりなんだろう。タマネギと玉子が絡まったご飯を一口食べる。関西風にしては濃く甘辛い香りが拡がる。カツ自体にもタレが染み渡っており、柔らかくかき込める。ナカナカに旨いではないか。というか、家でご飯を食べているような感覚だ。
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 店内を見回すと、同じようにホッとした顔をしながら、日本橋の各電気屋情報を交換したりというパーティが多い。そう、この店、やはり電気街のオアシスなのだ。秋葉における喫茶「東洋」(閉店しちゃうんだよなぁ、、、残念)や、牛丼「サンボ」(ここもBSE問題でやばいんじゃないかなぁ、、、心配)と同じ位置づけなのだなあ、と思う。

たくわん攻撃を2回受けたので、皿をひっくり返しておく。甘辛いカツ丼がすっきりと腹に入っていく。

「ごちそうさまでしたぁ」

 ダブルエッグセパレートは820円。それほど割安とは言えないが、みな安心感と満腹感を味わいにやってくるのだろう。

 日本橋の暖かな良心をみた。堺三保さん、情報ありがとうございました!

 さて地下鉄恵美須町から、インデアンカレーのある長堀橋駅へと向かうのであった、、、

大阪インデアンカレー 衝撃の事実が発覚した!

 さて 「こけし」でカツ丼を食べ、すぐさま地下鉄で2駅戻り、長堀橋地下1Fにあるインデアンカレーに向かう。この店に対する僕の入れ込み度合いはすでにご存知と思われるが、大阪を訪れる時にこのカレーを食べないなどということは考えられない。
 これまでは常に、大阪駅から地下道を歩いてすぐの阪急地下街にあるインデアンに食べに行っていた。しかし、どうやら大阪人によれば、店に寄って味が違うらしいのだ。この辺、情報が錯綜していて、「いや、あそこのカレーは一箇所で作っているから、味は同じだ。」という人が居たり、「店によって味が確実に違う。」という人が居るのだ。これは、真偽のほどを確認しなければならないな、と、やまけんが立ち上がることにしたのであった。

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■インデアンカレー 長堀橋店
住所:大阪市中央区南船場2 クリスタ長堀地下街2号8番
電話:06-6282-2040

メニュー:
インデアンカレー 730円
インデアンスパゲティ 680円
ハヤシライス 600円
ミートスパゲティ 600円
ピラフ 600円
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 見てのとおり、梅田店と違ってメニュー数が多い。梅田店ではカレーとハヤシライスだけだが、ここではスパまであるという。ハヤシはこないだ食べて、独特の旨さを感じたが、スパとかピラフと言うのはどうなんだろう。いずれ試してみよう。けど、やっぱまずはカレーだ!

 さっきカツ丼を食べてきたことだし、ここは大人になって普通盛りのカレーに卵の黄身ひとつで我慢しよう、と思っていたのだ。地下道を歩いているときは。でも、、、楕円形のカウンターの、一番奥の席に座った途端に、その大人っぽい決意や諦念は吹き飛んでしまっていた。

「インデアンご飯大盛り ルーも大盛り、 それと目玉!」

注)「目玉」とは黄身二つというオプションである。親友の竹から聴きました。
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いやあカレーの魔力って恐ろしいもんです。
ここでシマッタ!と思うことが。店の一番奥の席に座ってしまったので、飯盛り人の背中しか見えない!これまで書いてきたように、インデアンはカレーを盛る人(私は勝手にチーフと呼んでますが)の美技が素晴らしいのだ。大きなレードルですくったカレールーを、綺麗に盛り上げた白飯の上に肘と手首のスナップをシャコっと返すあの技。美しいとしか言いようが無い。阪急梅田地下街店の山田チーフの美技に惚れた僕としては、あれクラスのカレー盛りを切望するのである。

 ところが、この店に入店した時から感じるのだが、なんだか緊張感がない。飯盛り人は若い男性、その周りで接客をするのは4人のおばちゃんズだが、態度が悪いとか沿う言うことは無いのだが、あのピンと張り詰めた気が、漂っていない。いや、レベルが低いと言うわけではないけど、普通なのだ。ちょっとだけ、嫌な予感がした。

 そして、僕のオーダーが運ばれてきた。
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 すでにこの時点で、全体のフォルムに緊張感が感じられない。スプーンで一口すくう。口に運ぶ。そして驚愕

「味が、ぬるい、、、」

 一言で言えば、脇が甘いということだと思う。店内と同じく緊張感が無い味なのだ。何故だろう?あの特徴的な甘味と、その後に襲ってくる辛さは一緒のような気もするが、やや甘さに傾き、マシンガンのように速射される辛さの粒子が感じられないのだ。
 もう一口食べてみて、その理由がおぼろげにつかめた。ルーの温度だ。味がぬるいと思ったのは正解で、ルーの温度が若干低く感じる。したがって辛さも和らいで感じるのではないだろうか。

 味の世界は第一印象がすべてだ。一度、ぬるい味と思ったものが、しり上がりでよくなるというのはそうないことだ。2つ乗っている黄身を崩して旨味を増してみる。通常の旨さはある。しかし、、、なんだか満足度が低いのであった。

 あの梅田店の山田チーフの盛るカレー、そして店内にピンと張り詰めた「うちは旨いもんを出してる」という誇りが感じられる雰囲気、それが欲しいのだ。こんな風に僕は書いている。

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 これまでも観察していたのだが、この飯櫃前にいるのが店のチーフである。山田と名札に書かれた、20代後半っぽいそのチーフは「いらっしゃいませ」を言うとき、愛想笑いのひとつもない。かといって不快な無愛想感を漂わせているわけでもない。そして飯櫃から適量のご飯を皿に盛り、カレーをレードル一杯分、綺麗にかけて供する手際は、どうみてもプロフェッショナルである。このカレーかけはどんなに店が混んでも彼一人が担当している。
 大阪は、善い。顧客を喜ばせるためのプロフェッショナリティとサービス精神に満ち溢れている。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 この時おぼろげに感じていた印象が、味わいに大きな影響を及ぼしていたんではないかと、思うわけだ。ちなみに大阪在住の友人女性によれば、もう一つあるインデアンの店も、梅田店に比べてぬるい感じがしたそうだ。 うーむ、、、もしかしたらインデアンの中でも、梅田店は特別なのではないか?

 ただし、本日は新しいオプションも発見した。なんだか興が乗らないので、いつもはついてくる分だけしか食べないキャベツの甘酢漬け(これをピクルスというらしい)を、追加で頼んでみようと思うのだ。

「おばちゃん、ピクルス!」

「大にする?小にする?」

「(え?大小があるの?そりゃ当然、、、) 大にして!」

「追加で50円になりますが、いいですか?」

「(おお、50円かぁ安いぞ。) ええよぉ!」

おばちゃん、ピクルスを皿に盛り始める。そこで一発。

「いやぁ ここのピクルス旨いもんねぇ」

おばちゃん、一瞬動作が止まってニマッとする。

「そうやろぉ、、、」

おお、ドンドンとピクルスが盛られていく!ぜったいにこれは規定の分量ではないだろう、キャベツ大盛りである。これは絶妙なタイミングであった。俺もこすくなったもんだ、、、

しかしこのピクルスが絶品の旨さなのだ。この旨さは梅田店と変わらないなぁ。ちなみに下の写真は、カレー皿にピクルスを半分いれてから、写真をとってないことに気づいて撮った。ので、皿の上部に写ってるピクルスと、皿に残ってる分の総量が盛られてきたと思って欲しい。通常は今、皿に残っている分より少ないのだ、、、むちゃくちゃ嬉しい。
picles.jpg

さて本日食べたのは、カレーにほぼすべてのオプションが加わったオーダーだ。
「カレー ルーもご飯も大盛り、目玉(黄身二つ)、ピクルス大追加。」
これを表すのが下の写真のプラ札だ。
nefuda.jpg
おばちゃんにこのプラ札の意味するところを教わったんだが、忘れてしまった。

 このようにちょっとがっかりした、初めての梅田店以外のインデアンだったが、収穫はあった。俺は梅田店ファンなのだ。これで迷うことが無くなった。いや、ほかのまだ行ってない店が旨ければいくけどね、、、

 そんなこんなで、仕事に向かうのであった。お腹は調度よい状態である、、、ウソです。

2004年02月01日

ジビエの快楽に酔いしれる その1 三浦・横須賀の地域密着凄腕フレンチ 「シエラザード」

 出張の合間だが、毎年の儀式を行う。それはこの時期最高に美味しくなるジビエの賞味だ。ジビエでは鴨が一番好きなのだが、鹿も好き。ウズラも癖があると言うけど好き。ウサギ大好き。とにかく冬のジビエと赤ワインは、毎年の儀式だ。野生のパワーをいただくことで、自分の内なる魂に活を入れるという感じなのだ。その際に生じるエネルギーは、なにもジビエ本体だけから発するものではない。そこにシェフの技巧と魂が乗じられることによって、ジビエが「料理」に昇華するのだ。そうして生まれた一皿を味わうためには自分の体調も完全に整えて、真剣に皿と対峙するというのが、客の立場に求められる姿勢だろう。そうしてこそ、ジビエを味わう感動を十二分に堪能できるのだ。

 そんな至福の時を、この冬すでに2回迎えてしまった。今回はその2店を紹介させて頂きたい。



2004年1月18日

 ご存じだろうか。首都圏でも有数の旨い物極楽地帯が三浦半島であることを

 私の友人である山口さんがやっている三浦半島まるかじり クック&ダインというインターネットショップを覗いてみればお分かりの通り、通が唸る、マニアが喜ぶ旨いアイテムがぞろりと並んでいるのだ。農産物について言えば、キャベツと大根の大産地であることが有名だ。極めて豊穣な三浦の台地の土壌で育てられた三浦大根は、煮物に最高の一品である。この三浦・横須賀地域において何か食べたいと思うのであれば、先のクック&ダインにも登場する長島農園の野菜をお薦めする。元々クック&ダインに長島農園を紹介したのは僕だったりするのダ!
けどその辺の話は、このエントリでは長くなるのでまたいつか紹介することにしよう。

 で、三浦から山一つ超えた横須賀に居るわけだ。横須賀といえば港町というイメージだろうが、内側に入れば山と農地が街道沿いに点在している。YRP野比という駅からYRP(横須賀リサーチパーク)に向かう途中に、長島農園がある。現在跡取りとしてメインに働く勝美君は僕の1つ下の31才。見た目はおとなしそうだが、実はドイツ人の美人嫁さんをぶんどったどう猛な豪傑だ。

 本日は、この長島農園に、雑誌「農耕と園芸」の連載企画の一環として気象ロボットを設置しにきたのだ。気象ロボットは、北海道の素晴らしき気象情報企業であるアグリウェザー社の横山社長さんが進呈して下さったのだ。この会社が本当に素晴らしくて、通常は250万円くらいする気象ロボットを、同等の精度で40万円以下で販売できるような商品を開発したのだ。それを一台長島農園に設置して下さるという。なんともありがたい。下の画像がその設置風景だ。
baket.jpg
 この気象ロボット関連の顛末については連載でも書くし、紙面に書けないことはblogでも書いていこうと思うので、興味のある方は連絡して下さい。

 さて、アグリウェザー社の横山社長さんには、せっかく北海道から出てきて頂いたので、地元の美味しいものをご馳走したい。実は長島農園のある「長沢」という地区からすぐのところに絶品のフレンチを出すレストランがある。店は小さいが、これは本当にビックリするくらいの凄腕シェフの料理が楽しめるのだ。

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■シエラザード
http://www.sceherazade.com/
(↑今このWeb見たけど、なんとぶっきらぼうなページなんだろう。店の外観や地図さえ載っていないゾ。もったいない。)

神奈川県横須賀市長沢6-29-1
046-849-6649
月曜日定休

ランチ:1800円~
ディナー:4000円~

cierazard.jpg

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 道路沿いに畑や住宅、学校などが点在する中、ひょっこりと欧風の店構えのシエラザードがある。欧風なのは当たり前で、実はマダムの森川さんは、国籍をオーストリアに移している。つまりヨーロッパの人なんである。このマダムと、新進気鋭の伊崎 至シェフがタッグを組んで営んでいるのが、この店である。

madamshef.jpg

 テーブル4客に広めのカウンターの店内は、調度も美しく落ち着いた雰囲気だ。マダムのセンスだろうが、落ち着いたゴージャスさを気持ちよく味わえる。今日はもちろんかぶりつきでカウンターに座らせて頂く。長島君を通じて、我々仕様にスペシャルランチをオーダーして頂いているので、楽しみだ、、、
 ただし、僕から長島君経由で鴨を所望していたのだが、一連の鳥インフルエンザの騒ぎで鴨が出荷できない状態になっているらしく「どうしても手に入らない」ということだった。今回はやっとの思いで入手できた鹿を食べさせてくれるという。鹿も勿論大好きだから全く問題はないのであった。

 ボディのずっしりした赤ワインをとり、ブーケを楽しんでいると、一皿目が運ばれてきた。
hotate-siera.jpg

 北海道のホタテと長島農園の野菜を合わせた一皿。と言えば簡単だが、、、ホタテの鮮度は最高。シェフがさっき、オーブンに入れる寸前に殻から身を外しているのが見えたのだ。野菜は二種のカリフラワーと菜花だ。ホタテからのスープだけではなく、おそらくフィメ・ド・ポワソンだろうか、滋味溢れるスープで汁気の多い一皿に仕立てている。そしてこれを、北海道から来た(笑)横山さんが食べて唸っている。
「うーむ、、、美味しいですねぇ、、、北海道でもこんなに美味しい料理はそうそう、、、」
この一品、見事なホタテの分厚い貝柱も素晴らしいが、それ以上に肝やヒモといった、付き物が実に旨い。肝のほくほくとした食感と深く濃い味わい、そして柱以上に旨味の濃いヒモを、長島農園の野菜と堪能。とくにあまり出回っていないグリーンのカリフラワーを、絶妙のトロトロ加減に火を通してソースに仕立てているのが憎いのである。

そして、三浦・横須賀地域ならではの一皿が運ばれてくる。

daikonkani.jpg

 神奈川が世界に誇る大根品種である「三浦大根」をコンソメで煮、中をくり抜いて蟹のフィリングを詰め、上にオランデーズ系のソースをかけてグリルし焦げ目をつけたものだ。まずその美しいフォルムにため息が出る。
 三浦大根は、一般的な青首とは違って、大根の真ん中が太くなっている品種。従って、引っ張って抜こうとするとその真ん中部分がつかえて抜きにくいので、この三浦以外では生産されていない。しかし、年末から2月にかけて旨くなるこの大根は煮物にした時に最高のパフォーマンスを発揮する。みっちりと密に詰まった果肉と細胞組織は、スープを吸ってもまったく崩れず、絶妙の柔らかさとホッコリシャックリとした食感を抱き合わせで魅せてくれるのだ。
 その三浦大根の絶妙な旨さを味わうにピッタリな料理だ。この大根を割ると、こうなる↓
daikonkani2.jpg

どうダ!?

 もう、最高のプレゼンテーションである。コンソメを十分に吸った大根に甘い蟹のフィリングを載せ、カスタード然としたソースを塗っていただく。これこそ「滋味」というべき味なのだ。噛んだ瞬間にトロリと崩れる、その絶妙な食感と、蟹の香り。そこに濃厚さを与えるソースのコンビネーションは、本当に素晴らしい。
 ただ、僕はこの土台となる大根にもう少しコクのあるスープを合わせた方が好きかも知れない。フォンドボーだとおごり過ぎかも知れないが。大根は、素直にスープの特性を反映する。コンソメだとお澄まし風の上品な大根が味わえるが、イノシン酸中心の旨味だけでは少し平板かとも思った。何らかの形でグルタミン酸系の旨味や油分を合わせると、また違う味空間になるだろうと思った。いや、これは単に好みの問題なんだが。うん、また食ってみたい。

 さて
 この時点で大技が出てくる。ウサギとフォアグラである。

usagi.jpg

 ウサギの部位はなんて言うかわからないが、筋繊維のまっただ中と思われる切り身と、長島農園の蕪(カブ)、その下にソテーされたフォアグラが敷いてあり、最後にほうれん草のソテーが全体の土台となっている。これに濃いめの赤ワインソースがかけて供されている。ソースの濃度、味と香りの立ち方、共に最高である。シェフのお若さからか、強い前進力を感じるソースなのである。ウサギの淡泊にしてきめ細かい味わいと、対照的に濃厚なフォアグラ。爽やかなカブの甘さと香り、そしてほうれん草のトロ味が素晴らしい。一点、ウサギ肉が少し冷めていたことだけが気になったが総体として実に素晴らしい!実に冬の恵みと言える一皿だ。一同、しばし無言で咀嚼し続ける。

 そう、このシエラザード、農産物流通を生業としている僕がみても、実に皿から感じ取れる季節感が自然だ。それは、極めて単純にして恵まれた理由で、その時期その場所で獲れるものを使って料理をしているからだと思う。年間に120品目を作付けする長島農園が近くにあるので、シェフも農園に通い、その時期に収穫できる野菜を受け取ってメニューを組み立てている。また三浦横須賀が漁港町であることは言うまでもない。長井漁港までひとっ走りの立地であり、最高のものが手に入りやすいわけだ。これ以上に自然を表現できる方法はない。さっきから、今一番旨いと思う食材が出てきている。この店がこの立地にあるから出来ることの一つではないだろうか。

 さて、皿は進む。この段階でウサギとフォアグラが出てきて、次はどうなるのかと思ったら、ビックリしたことに大技が出てきた。
awabiburblan.jpg

 黒アワビである。この美しさにしばし圧倒される。僕はアワビについては生ではなく蒸しか煮たものが好きだ。そしてここのアワビは、どうやら蒸してある。カウンターからつぶさに観察できる調理場には、中華に使われる蒸籠(せいろ)が積んであるのだ。旨味を素材から逃さず柔らかな火を入れていく最高の技術である蒸しで供されたアワビに、ネットリと絡まる濃厚なブールブランソースが素晴らしい合わせ技である。モッチリムッチリとしたアワビの食感は絶妙だ。どれくらい火を通したらこんな魅惑的な食感になるんだろうか。本当に素晴らしい。これがメインと言い切ってしまっても十分に満足してしまう一皿だ。

 しかし、メインは別にあるのだった。そう、鹿である。この美しいプレゼンテーションを見て欲しい。僕はこの凝縮された世界観を崩したくなく、見ほれてしまった。デジカメの枚数もこの皿が一番多い。
shikastaek.jpg

「業者が、鴨がどうしても手に入らないから鹿で、というのでそうしたけど、なかなかいい肉でした。」

という通り、すばらしい熟成加減の鹿だった。蝦夷鹿は何回もいただいているが、今回の鹿は深いワイン色のレア部に、芳醇旨口なトロリとした味わいが乗っている。ソースサルミには、

「もう昨日から鹿の骨をローストして、フォンにとっていたものを使ってます。本当はもっと時間をかけて煮出したかったんだけど、入手自体が遅かったから、時間切れ。」

というが、実に旨かったですよ!いやビックリである。本当にこのシェフのソースの尖り加減は僕好みだ。そして、付け合わせを見て欲しい。スペイン風オムレツときんぴらゴボウである。醤油は使っていないだろうけど、、、これは実に正解。この時期最も旨い食材はゴボウとニンジンと大根とほうれん草。ここではゴボウとニンジン、それを鹿肉に合わせるとは最高な相性だ。油によって香りと味わいが引き出され、素材の色が滲み出ている。これとソースサルミ、肉のコンビネーションが全く持って素晴らしい。今度はきちんと時間をかけて準備できる時に、また食べさせて欲しいと強く願う。
shef.jpg
 デザートをいただきながらマダムとシェフとお話。マダムが実に面白い人生を送ってこられた方で、思わず欧州話に聞き入ってしまう。
 デザートも二品。プリンとアイスクリームとパイだ。もう、満腹の一言である。

prin-siera.jpg

pie.jpg

 このような凄まじいコースをいただき(しかも昼から!)、ワインも一本空けて、勘定書はビックリするほどの安さだった。けど、おそらくは長島農園を意識して頂いた特別価格だろうと思うので、ここでは控えさせて頂こう。でも、おそらく確実に都心で食べるよりは安いと思うゾ。

 最後にシェフが言っていた。

「本当はねぇ、やっぱり東京で勝負したくなってきましたよ。もうちょっと力をつけて、出てみようかなって感じです。」

マダムも言う。

「そうよぉ だってそうじゃなきゃつまらないもの。」

でも!

 この三浦・横須賀という地域に店があるということは、素晴らしい重要なポイントになっていると思う。東京進出の際にも、ぜひこの地物の仕入ルートは手放さずにやって言って頂きたいと切に願うのであった。

 こうして今年初めてのジビエの楽しみが過ぎていったのである。

(更にこの項、続く、、、)

2004年02月07日

山形蕎麦の時代がきっとやってくる! 山形遊行編その1 山形スタンダード「庄司屋」

shoujiya.jpg ずーっと心待ちにしつづけてきた山形出張の日である。しかも2日連続講演、従って宿泊である。仕組んだわけではない。農業改良普及所の講演を受託した翌日に、こんどは県の方から農業者向けの講演依頼をいただいたのだ。どうせなら日程を連日にしてしまおうということなのである。
 しかも今回、改良普及所も県の方も、どちらの担当者さんも僕が食倒れにしか関心がないことを よーーーーーく 知っている。 なもんで、綿密にコースをたてて頂いているのであった。

 山形といえば僕にとっては蕎麦の一言に尽きる。東京で一番旨いと思う蕎麦屋は、虎ノ門「ゆとり都山形」というアンテナショップに入っている「出羽香庵」であり、ここは山形の名店「庄司屋」が出店しているのだ。そう、今僕が一番好きなのは山形蕎麦だったりするのだ!北海道の栗山町で、粉を挽くところから初めて自分で打たせて貰って食べた蕎麦が、これまで最高の体験ではあるが、店で食べるという場合にはやはり出羽香庵が最高だ。
 そして本日、山形に足を踏み入れてすぐさま連れて行って頂くのは、この出羽香庵の本店である「庄司屋」なのだ!

 庄司屋は蕎麦好きばかりの山形市内の中でも、まず最初に名前が出てくる老舗だという。老舗といっても、山形市内だけで10件は老舗と呼ばれる店があり、それぞれに麺やつゆの個性が違うらしい。通になると「あの店の蕎麦をこの店のつゆで食べたい」などという高度な談義をするらしい。店によっては箸を刺すとそのまま直立するくらいに盛りが深い(盛りがいいということだ)蕎麦だったり、本当にいろいろらしい。そう、山形蕎麦といっても、一口には語れない、個性に富んだ食文化なのだ。
 しかし、そんな個性溢れる老舗群の中で、やはり筆頭に名が上がるのは間違いなく「庄司屋」なのだそうだ。その秘密はどこにあるのだろうか。東京の支店しかしらない僕としては、なんとしても本場のそれを味わってみたいと思っていたのだ。

 僕を庄司屋に誘ってくださったのは、県の担当者のK氏とO氏だ。どちらも勿論蕎麦好き、そしてO氏は枝豆を自分で栽培している方だ。山形駅の改札で僕を迎えてくださり、駅ビルの上にある講演会場でPCのセッティングのみ行い、すぐにタクシーで庄司屋へ。1メーターで行けてしまう距離ではあった。ちなみに山形は雪である。先週まで北海道に行っていたから、雪ナンざぁびっくりもしないやと思っていた。しかし、、、東北の雪と北海道の雪は違うんだなぁ、、、なんというか、山形の雪は「重さがある」という感じだ。北海道は横にだだっ広いが、山形は世界がタテなのだ。勢い、雪の質もタテにつもり、重さを感じるのだ。

 さて庄司屋は立派な一軒家ではあるが、老舗にありがちな観光対応ではまったくない。近在の勤め人が三々五々食べに集うという感じの、無理のない構えである。入店して板場近くの座敷に座る。
 出羽香庵ではいつも板蕎麦のみだが、ここでは相盛りがある。相盛りとは、通常のせいろと更科蕎麦のあわせ盛りだ。僕はこれに天ぷらをつけたものを頼んだ。それがこれだ。
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 ふうむ、出羽香庵のせいろ蕎麦とまた少し違う。こちらの方が細め泣きがする麺である。海苔はいらないんだけどなぁ、、、と思いながらチョンチョンとつゆにつけ、たぐりすする。文句なしに旨い!やはりこれは出羽香庵で親しんだ蕎麦である。二八くらいの割合なのだろうなぁ。のど越しよく、外見よりストロングな噛み応えを持つ蕎麦である。

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そして東京の出羽香庵には置いていない更科蕎麦をすする。これはとにかく抜けるような透き通った白色である。蕎麦の香りは当然ながら薄いが、ぷつりと潔く切れる感触が心地よい。
sarashina.jpg

さてこの時点で僕にはこの相盛り天ぷら蕎麦ではまったく「足りない」ことがわかったので、即座に「鴨汁せいろ大盛」を頼んだのであった。要するに旨いので食欲に火がついたわけである。
鴨を使った蕎麦は、生来たんぱくな蕎麦に奥行きのあるコクを与えてくれる、ベストマッチな一品であるといえる。
kamotsuke.jpg

鴨汁の濃さと鴨肉の厚み、ともにばっちりである。柚(ゆず)の皮が強く効き過ぎだったかもしれないが、それもまた風味があって旨い。蕎麦の盛りは僕にも満足モノであった。思い切り蕎麦をすすりこみ、噛み締める。

 そう、山形の蕎麦は、つゆにちょんとつけてすすり、噛まずに飲むという体のものではない!

 山形のそばつゆは、江戸前とは違って辛つゆではないのだ。そのまま食べて美味しい加減になっている。だから、存分につゆに浸してそばをすするのがよい。江戸前は、蕎麦を食べ進むにつれてちょうどよくなっていくくらいにチューニングされている。だから、蕎麦につゆを漬けすぎると辛くて食べられたもんじゃない(最近はそうでもないといわれているが)。噛むということについてもそうだ。山形蕎麦は、江戸前に比べると若干太めに打たれているケースをよく見かける。これは噛み締める食感を大切にしているからではないか(←思いっきり私見。)。

 だから僕は、板ソバをたべるときはもう時間をかけてもぐもぐもぐもぐもぐもぐ噛んで食べるのである。だってその方が旨いんだもーん。

yamaken-shoujiya.jpg

庄司屋は、やはり山形市周辺の蕎麦のスタンダードと言える店であった。安定した火力をいつでも発揮できる店だ。タクシーで1メーターだし、山形に立ち寄る方はぜひ寄って頂きたい。

このようにご満悦の表情で会場入りし、講演を務めたのであった。
そういえばますます僕の出張が「メシ食ってるだけじゃん」と疑う人がいるんだけど、ほんとに仕事してるんだよ!一応仕事場面をお見せしよう。

■ほら!僕の名前が書かれてるでしょ?
kanban.jpg

■お客さんも160人観に来てくれてるんだよ!
okyakusan.jpg

1日目はまだ終わらない。この後に続く、、、

2004年02月08日

山形遊行編その2 幻の蕎麦を幻の達人の手で打っていただいた!「蕎麦打ち虎の穴」の巻

2月11日改定:「でわかおり」→ひらがなで「でわかおり」が正解でした。

jpg 出張二日目のメインイベントは何かというと、なんと蕎麦打ち体験である!これは、この2日目に講演で僕を招聘してくれた農業改良普及員である芳賀さん、一戸さんが企画してくださったものだ。お二人とも、上京時に僕の行きつけの焼き鳥&釜飯屋にて痛飲し、意気投合したのだ。その際、蕎麦打ち名人である芳賀さんが、
「いずれやまけんさんを山形に呼びます!」
と言って下さった。その約束が果たされたのが今回なのだ!

 ちなみに農業改良普及員という職業について解説すると、県の職員として農業者に様々な支援・指導をする人たちである。その細かい中身は解説すると長くなるので略すけど、おそらくその土地の旨いものについてもっともよく知ることが出来る立場の人たちである。考えてみて欲しい。一人で500人くらいの農家の担当になって、常にコミュニケートしているのだ。だから、ピンポイントで「あそこの○○さんとこの何番目の畑で獲れた枝豆が一番旨い」ということがわかる人たちなのだ。そしてなぜか、僕の仕事はこの普及員さん達にお話することが多いんである。むふふ。役得とはこういうことを言うのだ。

さて
 蕎麦打ち名人の芳賀さんが言う.

「やまけんさん、山形の蕎麦関係者で知らぬものの居ない、すごい人にお引き合わせしますよ。実は、蕎麦屋さんが蕎麦うちを習いにくる方です。」

 そう、山形蕎麦に欠かせない伝説の仙人がいらっしゃるのだ。この方は鈴木製粉所という、そば粉を石臼で挽いて販売をする製粉業の社長さんで、鈴木彦市さんという。地元ではむちゃくちゃ有名らしいのだが、この方が、市中の蕎麦屋さんに蕎麦粉を販売しながら、打ち方指南をしているというのだ。
 そして、

「この鈴木社長の打った蕎麦は絶品で、私(芳賀さん)にとっても一つのベースとなっています。でも、社長さんは粉屋さんですから、商売として打つことは一切ありません。なぜならお客さんである蕎麦屋さんに失礼だからです。ですから鈴木社長にそば打ちを教えていただいて、かつ食べることができるというのは、すごいことなんです。」

 なんとまあ、すごい話ではないか!
そして、山形駅前のホテルから車で数十分、高速を降りて山間部に入ったところに、石臼挽きの粉の工場である「石臼館」がある。石臼以外の工場も近隣にあるらしいが、この立地にも分けがある。それは、この辺が以前、蕎麦畑であったこと。いい蕎麦ができる条件である霧がけぶる冷涼な気候の土地であることなどが、蕎麦を製粉し保存する工場としての立地によいということだそうだ。
 なんだかわくわくしてきた。何かを無心に追求し専心している人に会うことが出来る、しかもその蕎麦工場の立地の話だけでも素晴らしい含蓄である。

jpg ←その鈴木社長がこのお方だ。

 なんと鈴木社長、昨日の僕の講演をわざわざ観に来て下さったそうだ。

「わかりやすくていい話だった。」

と仰っていただいて、恐縮至極である。そして
のっけの一言目から、とんでもない謎かけが発せられる。

「あのね、10割蕎麦が一番簡単なんだ!難しいのは5・5だ。」

5・5とは、蕎麦粉が5割、小麦粉が5割という意味だ。いったいどういうことか。鈴木師匠の言うところ、

「10割なら蕎麦粉の茹で時間だけ気にすればいいけど、小麦粉と蕎麦粉ではゆだる時間が違うんだよ。」

ということらしい。 むうー 蕎麦打ちではなく茹でにもそんな話があったか!

「じゃあ、打ちましょうか!」

おお!とうとう始まるぞ!ちなみに場所は、この石臼館の中にある蕎麦打ち道場である。同時に8人くらいが蕎麦をこね、打つことが出来るくらいの設備がある、まさに「蕎麦打ち虎の穴」である。


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「蕎麦碾處石臼館」
http://www.suzukiseifun.co.jp/ishiusukan/index.htm
〒990-0014 山形市大字滑川字谷地411
開館時間 9:00~ 17:00
休館日  原則として土、日 、祝日定休

isiusukan.jpg
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dewakaori.jpg ちなみに今回使わせていただいたのは、山形県が育種した蕎麦に最適な品種である「でわかおり(でわかおり)」だ。これも現時点ではまだ生産量が多くないため幻と言える。昨年度は天候のせいで収量も上がらなかったそうだが、今年からは大増産態勢に入るとのことで、来年度以降、でわかおりを使った旨い蕎麦が食べられるようになるだろう。

 でも、現時点では幻なんだよーん!!

さて計量した粉をこね鉢に入れ、水を加えていく。蕎麦うちはこの時点でほぼ決まると言われるくらい重要な「みずまわし」である。
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 ちなみに僕は蕎麦打ちを10回くらいしたことがある。そのうち4度は人から教わりながら。あとは自宅のボウルとテーブルでやったものだ。そして成功率(まともな蕎麦になった)のは3回程度というお粗末さ。なので、素人である。

 しかし!なんだかこの回数だけを聞いて、普及員の芳賀さん、一戸さんは僕を「できる」と勘違いしてしまったらしい。すっげープレッシャーなのであった。でも、水回しをしながら、大師匠が
「おお、10年くらい水回ししてる手つきじゃ」と言って下さった!素直に感動である。

水が蕎麦粉に浸透していくと、だんだんと粉が粒になり、粒が塊になり、と言う風にまとまってくる。そうなったら捏ね(こね)にはいるわけである。
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さて僕がこれまで失敗を重ねていたわけがここでわかるようになる。捏ねの意味を取り違えていたのだ。うどんやパンと同じように、強く揉み込んでコシを出すように刷ればいいのかと思っていた。  全然違うらしい。  蕎麦の場合は、蕎麦粉の粒子たちを「つなげる」ために捏ねるのだ。だから、手のひらで強く押し込みながら練ると、逆に粒子が離れてしまう。僕は一心不乱に練りつづけてしまった、、、

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さて捏ねてまとまった生地を台にとり、「のし」の工程に入っていく。
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最初は手で優しく伸ばし、それを麺棒で均等にひろげる。
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伸びてきたら麺棒に巻きつけ、5・4・4・3(←長くなるので説明は略します)の割合で伸していく。
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そうするとなぜかこのように真四角の美しい生地が出来上がるのである!

さて
この辺で、僕の生地はどうにもうまく伸せない! うがーーなんでだぁーーー
と悶絶する僕を尻目に、初めての蕎麦打ちにも関わらず一発で乗せてしまった一戸女子が笑っているのが下の写真である。くっそぉ~
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で、結局僕の生地はダメだった。どうしてもまとまらないのである。 うーん 大師匠すみません! しかし本日メインゲストはこの僕であるため、参集した皆さん(この時点で10人くらいいらっしゃっていた(汗))の目が僕につきささる!

絶対になんとかせねば!

「まあもう一回やってみっか。小麦粉を1割入れて、トイチ(10:1)にしよう。」

トイチとは、10割の蕎麦粉に1割の小麦粉である。大師匠いわく、

「食べてみて旨いと思うのはトイチだよ」

とのことだ。もうヤマケン、必死である。芳賀師匠(鈴木大師匠→芳賀師匠→ヤマケンという序列だ)にも教わりながらなんとか生地をまとめることができた。ふううう
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なんとか伸せた後はコマ板を使っての麺切りだ。実は麺切りは結構得意である。師匠、大師匠からもなんとか及第点をいただいた。
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しかし、師匠の切り(↓)から比べると、肩に力が入りすぎである。うーむ 蕎麦包丁買って修行しようかなぁ
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さて、完成である。あとは茹でるだけだ。うーんこんなに緊張したのは初めてです。
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さて、大師匠の奥様が茹でてくださった蕎麦が運ばれてくる。まずは僕や一戸さん、芳賀師匠が打った蕎麦から試食する。
僕のような素人が打った蕎麦でもやはり、旨い!コシが効いていて、ダシの乗りが良い、美しい味だ。
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しかし、、、
大師匠の蕎麦が運ばれてきた瞬間に、北海道の栗山町の岩崎農場にて味わった至福の蕎麦以来の衝撃が、僕を襲ったのだ。
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大師匠の蕎麦は非常に細い。山形では太めの麺を良く見かけるのだが、師匠のは江戸前でもあまり見られないほどに細い。それを何もつけずに一口すすってみる。

「ガツン」と衝撃を受けた。
蕎麦のあの香りがする! 香がするというレベルではなく、口から鼻にかけて強く蕎麦の香りが突き抜けていく!
強いコシと、角のびしっと立った切りによる口当たりは極めてシャープだ!

「これはトイチ(10:1)だよ。」

そう、師匠はこの味を10割ではなく10:1で出したのだ!正直言って10割蕎麦より旨い。ていうか、腕前はともかく、同じ作り方をしているのになんでこんなに差が出るの??

もう、びっくりなのである。

さてこの蕎麦のおかげで、やまけん人生史上の最高記録が出た!

山形が誇るでわかおりの蕎麦を9.5枚食べました

1枚100g前後だと思うので、950gだなぁ、、、
いやほんと、旨かったんです。だって幻だよ?これを逃すと食べられないんだよ?
でも、さすがの僕もしばらくは喉に蕎麦が滞留していました。
15時からの講演でこれを話したらみんな笑っていました。

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大師匠にお礼を言う。この気さくなお師匠さん、俺は大好きだ!ぜひ、腕を磨いてから、またお会いしたい。そして、今度は1日かけて、石臼で挽いた粉を蕎麦に打ち、師匠のお話を伺ってみたい、と強く思うのであった。

鈴木大師匠、ありがとうございました!
そして連れて行ってくださった山形県農業改良普及員の皆さん、ありがとうございました!
でもまだまだ山形紀行は終らないのであった、、、

2004年02月11日

越前の国探訪その1 ~福井市フレンチ「サレポア」

 和歌山から福井へ移動する。和歌山駅構内の立ち食いそば屋にて朝食をとる。関西のうどんに不味いモノ無しと思っていたのだが、薄いプラスチック製のドンブリに伸びたゆで麺、冷たいエビ天で温度は低く、絶好の不味さだった。おまけにおばはんの髪の毛が一本入っていたが、面倒で文句も言わずにおいた。
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 サンダーバード11号で新大阪を出て近江あたりにさしかかる。琵琶湖と山脈、そして湖畔ののどやかな風景を楽しんだ。そのまま読書を続け、ふと気づくといきなり雪国の風景へと変異していた。通過した駅をみると敦賀である。
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ああ、俺は太平洋側から日本海側へと移動しているんだなぁ、、、という感慨が少しこみ上げてくる。やはり人間は視覚的な刺激を最も直接的に感じるのだろうか。意識のありようが全く代わってしまうのである。

さて和歌山から3時間少しで福井駅に着く。すでに農業改良普及員の土屋さんと前川さんがお迎えに来てくださっていた。車中、僕が食べることだけが好きな男だと言うことを話すと、

「はい、そういうことだったんで、店はいろいろ検討しました。せっかくですから、福井にもフレンチのいい店があるので、昼はそこにそこにお連れします。」

ということだった。福井でフレンチ!といえば、魚介が旨いだろうな!

 でも僕には一つ攻めておきたいテーマがあった。それは「ソースカツ丼」だ。ご存知だろうか、福井県はソースカツ丼のルーツの一つなのである。ソースカツ丼といえば、群馬県桐生市や長野県駒ヶ根市が有名だ。そしてもう一つの雄と言えるのがこの福井県福井市なのである!

 そもそもソースカツ丼をご存知だろうか? 揚げたての豚カツを、別鍋でグラグラ煮たソースにドボンと浸し、これをご飯に乗せたものだ。至極美味である。これにキャベツが加わったりする場合もあるが、基本形はソースまみれのカツが飯に乗っかっているものだ。通常、このようなソースカツ丼が隆盛を誇る地域では、醤油と出しで煮て卵でとじたカツ丼を「玉子かつどん」とか「煮カツ丼」というように別名で呼ぶことが多い。つまり、その地に住む人たちにとって通常のカツ丼とはソースカツ丼を指すのである。なんとも痛快だ。

 ということで、なんとしてもソースカツ丼の有名店に行って見たい。昼はせっかく予約までしていただいているので、帰りの飛行機に乗るまでの時間でささっと食べる、ということで行こうと思い声をかけると、

「先生、ソースカツ丼食べたいですか? 先生さえよろしければフレンチを食べた後にご案内しますが、、、」

な、なんとぉ! 僕のことをよくわかっていらっしゃる! 後で聞けば、実はすでに僕のこのWebを観てくださっていたのだそうだ。うーむ

ということで、本日の昼飯はフレンチそののちソースカツ丼なのであった。


 福井駅から車で5分程度、繁華街の片町近辺にその店がある。
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salez et poivrez (サレポア)
福井市二の宮二丁目28-21 セトラルヴィレッジ1F
0776-28-6288

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 店にはいるとすぐに清潔で綺麗なオープンキッチンがある。コックコート姿の職人達が忙しく立ち働いている風景は、非常に清潔感が溢れており、いい店であることを予感させる。
 実はこの店のオーナーシェフである八木氏は、農業生産に従事していた経歴がある。もともと福井出身のシェフは、フレンチの修行を積み、東京でシェフをしていたそうだ。しかし、福井に戻って農業をやりたいというたっての願いがあり、しばらく前に戻ってきたそうだ。その時相談したのが、農業改良普及員をはじめとする農業関係者で、本日ぼくを読んでくださった土屋さんも、就農の検討の席に居たそうだ。ハウスを建てるなどしてかなりきちんとした農業をしていたそうだが、やはりフレンチへの情熱は忘れがたく、店を福井に出したということだ。最近では農業生産をやる暇がとれないようだが、一度でも農業生産に従事したのであれば、農産物の特性については熟知しておられるはずである。これは楽しみだ。
 前菜とメイン、デザートのコース(1800円)を頼むことにする。

■カリフラワーのムースと魚貝のサラダ仕立て
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 カリフラワーのムースは丹念にミキシングされており、滑らかなクリーム状になっている。この状態からカリフラワーを連想できる人はいるまい。甘くうっすらと香る独特のキャベツ香がよい。強めに火を通したカリフラワーとサワークリーム、フィメ・ド・ポワソンを加えてミキシングしているのだろう。鯛とホタテ、水タコ等の切り身が載せられているが、ベースのムースが淡い味付けのため、あまり映えてこない。これらの魚は思い切って昆布締めにしておけばコクが乗り、よかったのではないかと思う。

■ハタのフライパンソテーバターソース
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 目鯛のソテーや牛フィレステーキ等が並ぶメインから選んだのは、ハタのフライパンソテーバターソースである。ハタは旨い。福井のハタはもっと旨いだろう、と思って土屋さんに訊いたら「いやぁこの辺じゃあまり食べないですねぇ、、、」とのことであった、、、
 しかしいい皿であった。レモンを絞り込んであると思われるバターソースの微かな酸味が、焦げ目をつけた、旨味の強いハタの身をグッと引き締めた味にしている。いや、なかなかである。

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 この通り誠実そうなシェフによる店であった。客席には、首都圏と同じく主婦のグループばかりがいるのと、奥にビジネスランチらしいスーツ姿の一団がいた。福井のフレンチのレベルも、なかなかのものでした。

さてそしてすぐさまソースカツ丼を目指したのであった。

「先生、3時から講演ですから、早めに行きましょう」

もちろんです。時間がなくてもすぐ食べます。そして一行、福井ソースカツ丼の有名店「ヨーロッパ軒」へと向かうのであった。

2004年02月12日

越前の国はソースカツ丼の聖地であった!

 フレンチで程よいお腹になったところで、福井名物ソースカツ丼を食べに行くのであった。さて福井県のソースカツ丼を語る上で欠かせない存在があるという。その名を「ヨーロッパ軒」というらしい。正体は洋食屋で、福井県内に10店舗前後の支店を出している。普及員の前川さん曰く

「もう小さい頃から食べ慣れているカツ丼の味といえば、ここです。」

とのことだ。まさしく福井県流ソースカツ丼の正調と言えよう。

 ヨーロッパ軒についてはこの店のWebに詳しい。そこにはソースカツ丼の来歴というか、出生秘話も掲載されているので、研究者には必読である。

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ヨーロッパ軒
http://homepage2.nifty.com/yo-roppaken/
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 前川さんがしきりに「本店にお連れしたい」と仰るのだが、あいにく本店は火曜日定休であった。本店以外の店もだいたいは火曜日定休、しかし県庁近くにある「城山店」一店のみが火曜日もやっていた。

「残念です。本店だとソースの量を自分で調節できるなど、県外の方に対する気配りがあるのですが」

それはソース大好き人間の僕には素晴らしい話ではあったが、でもまあ美味しければいいやと思うのであった。そして連れて行って頂いた城山店の外観がまた!実に食い倒ラーの心をくすぐるものだったのだ。

 みよ!この洋食屋らしからぬ店構えを!↓まるでそば屋である。
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 雪よけだろうか、店の入り口は更に奥まっているのだ。のれんの自体は流行のレトロ風だが、まあこれは創業以来これなんだろう。つまりレトロどころかホンモノなのだ。何と味があることか!
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店内は思った通りひなびた市井のそば屋といった佇まいである。しかし、壁のメニューをみるとチキンカツやポークチャップ等がならんでおり、間違いなく洋食屋のものであった。
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「ここはほぼ全員がソースカツ丼を頼みますが、夜でも頼めるAランチ(笑)とかもメンチ・海老フライなどがのっていて壮観です。」by前川氏

 席に着き、注文をとる。割烹着を着たおばちゃんにソースカツ丼大盛りを頼む。どのくらい大盛り何だかわからないので、とりあえず大盛りを頼むのである。もうこの辺は僕の習慣なのでどうしようもない。土屋さん前川さんは苦笑されながら普通盛りを頼んでいらっしゃった。
 トイレに行くついでに厨房を覗いてみると、おばちゃん2人による調理場であった。通路にドカンドカンと西日本のナショナルブランドである「イカリソース」の一斗缶サイズが並んでいる(ちなみにウスターソースであった)。このイカリをベースに、いろいろと秘密の材料と配合でソースを創っているのだろう。特製ソースがなみなみとはいったステンレスのストッカーが厨房に鎮座しており、ここにざぶりとつけられるのだろうという気配が濃厚に漂っていた。

 さて席にてしばし待ったのち、ソースカツ丼が運ばれてきた!お約束通り、ドンブリからはみ出ている!
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これがソースカツ丼の全貌だ!
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 大盛りだとご飯の上にカツが4枚。もう完全にご飯は見えない。ちなみに普通盛りだとカツは2枚である。
 さてここで前川さんが仰る。

「やまけんさん、福井ではソースカツ丼を食べる時、ドンブリのふたにカツをよけて、一枚だけご飯の上にに残るようにして食べるのが標準です。カツが全部のったままだとご飯に辿り着けません。」

ほれこの通り↓
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おおお なんと! すばらしい智恵ではないか!

 数十年に渡るソースカツ丼食いの歴史の中で、数知れぬ先人達が試行錯誤したに違いない。カツをのせたまま飯をすくおうとするとカツが転げ落ちてしまったり、逆に飯がぽろりと落ちてしまったり、、、そのたびに先人達は「何かいい方法はないものか」と様々な方法を試したのだ。そう、ソースカツ丼方法論序説である。そしてソースカツ丼食い中興の祖たる御仁が、この「ドンブリ蓋にまだ食べないカツを待避させるの法」を編み出したのだ!そうだそうに違いないっ!

 、、、というのはちと大袈裟だが、このような地元の人が知らず知らずのうちにしてしまっているTipsを知ると、初めてきたのになんだか無性に嬉しいのである。

 さてカツをいただく。
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 カツはそれほど分厚くない。8ミリくらいの厚さだろうか。それが10センチ大の大きさにカットされ、中挽きのパン粉にとじられ揚がっている。がぶりつくと、とってもジューシー!ロースである。肉の断面から中を観ると、タテに数本、包丁の切り込みが入っているのが認められる。箸を使わずとも柔らかく噛み切れるための工夫であろう。筋も完璧に切られており、口に不快が残ることは皆無である。ソースに浸されているにもかかわらずパン粉のカリっ感は完璧に残っており秀逸だ。もう一つの主役であるソースの風味は、どちらかといえば辛口のウスターを、独自配合だろう野菜等の甘みで柔らかくしているように感ずる。このカツと共に、ソースがいい塩梅にまぶされた飯を一口掻き込む。

「うーむ これは旨い!」

もう絶品の取り合わせである。特にソースご飯が佳い。その昔、我が家でご飯に醤油やソースをかけて食べようとすると、母に怒られたものである。「塩分がつよいんだから毒なのよ!」と言っていたように思う。そう言われるともっと食べたくなるのが子供というものだ。以来、醤油かけご飯とソースかけご飯は、背徳の美味を味わせてくれる究極の一皿になっている。
でも!
この福井では、このソースかけご飯が一つの紛れもない正統なのである!何と素晴らしいことか。ソースとカツの揚げ油がほどよくまとわりついた飯はキラキラネタネタと輝いている。旨いカツと飯とソース。この蜜月といえるトリプル関係性の中に、卵や醤油、ダシが介在してくる余地は全くないと言えよう。

4枚のカツと大盛り飯を食べると、さすがに腹が苦しくなった。これから講演なのに、、、
前にいらっしゃる土屋さん前川さんも苦しそうだ。でも、カツを食べるというのは、ある種ジビエ喰いにも似た興奮がある。内なる野生をたたき起こすような感覚。それはしかしタフでハードなソース味でなければ生まれてこないものだ。

ふと壁を観ると、五木ひろしの色紙が飾ってある。しかも二枚!一枚目の下には、福井公演の際に2日連続で来店したとのこと、2枚目は再度の公演のさいにまた来たとのことであった。その気持ち、わかるよ。

大変に美味しいものをいただいた。

 福井でグルメといえば反応的に越前ガニばかりがとり上げられることが多い。そりゃぁ旨いに決まっていよう。でも庶民は毎日蟹食ってるわけじゃぁないのだ。そう言う意味では福井の味の正統を貫いている一つがソースカツ丼であるといっても過言ではないはずだ。

 心に念じていただきたい。福井県に行ったら、ヨーロッパ軒にてソースカツ丼を食べること!これなくして福井の文化は語れない。

2004年02月18日

山形のおばちゃんが作った旨いもんみつけた

 山形出張の際に、農家グループによる加工食品の直売イベントが面白いと、山形が誇る美人農業改良普及員である高橋さんと一戸さんに連れて行ってもらった。これが本当に面白かった!観たことも聴いたことも無いような名前の山菜の乾物などが、ところ狭しと並んでいる。そしてそれを売るおばちゃんたちが、またパワフルでよい!
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こんなおばちゃん達が、いろんなものを売っているのだ。「イワダラ」とか「ギボシ」だとか、スベリヒユの干したものとか、おそらく首都圏の人間には奇怪なものが並んでいる。うーむ全部買って帰りたい。
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この写真↓は、山形名物「雪菜」だ。雪の下で育つので遮光され、うどやもやしのように軟白され、辛味がでてくる。風雅な味わいの菜っ葉なのだ。
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さてそんな中で、いくつか買い物をした際に、おばちゃんにこの「なんばんの粕漬け」を薦められたのだ。「なんばん」とは唐辛子のことだ。青唐辛子を粕漬けにしたものらしいが、見た目は味噌である。
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「これを一口食べると、口の中が退屈しないよぉ」

という意のことを山形弁でいわれ、菜ばしにちょこっと味噌をつけて差し出してくれる。人差し指ですくって舐めてみると、、、

「おおおおおおおおおお 辛~~~い! むちゃくちゃ 辛いぃ!」

もう、爆発的な辛さである。日本の唐辛子もこんなに瞬間的爆発力があったか!しかし辛味の嵐の後には、粕の甘い香りが残り、非常に旨い!

「買った!」

ということで買ってしまったのだ。

帰宅後、改めて食べてみる。
これだけ入っているから、食べ尽くすに時間がかかるだろうなぁ。
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炊き立てご飯に乗せてたべてみる。
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涙が出るほど辛い!
けど旨い! もう一口
けど辛い!
けど旨い! もう一口
けど (以下略)

絶品に旨いのであった!
辛みそは結構あるけど、粕との組み合わせはあまりみたことがない。粕の麹香と甘味、塩の旨味、そしてなんばんの辛さが絶妙の塩梅なのだ。
これはまた買おう!と決意。
シールを見ると、生産者は「まあどんな会」 、、、人を食った名前である。
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宅配代金がもったいないので10瓶くらい取り寄せようと思うが、欲しい人はいるだろうか?

2004年02月20日

一番好きな和歌山ラーメン「丸三」が改築しておった。

 和歌山ラーメン(地元の人はラーメンといわず「中華」と言うが)で、今のところ一番好きなのは「丸三」である。以前にもこの日記で記事化したが、出張の際にしばらくぶりに連れて行って貰ったら、いつのまにか改築されていてビックリ。
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店の人には悪いが、はっきり言って不味そうなドライブインという風情である。でもまあ、もうすでに超有名店だし、店構えのセンスなんぞ、どうでもいいのだろう。

店内は明るく広くなっている。
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前の店と大きく変わったのは、厨房が広くなったことだろう。みなさん働きやすそうなのであった。
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さて 和歌山のラーメン屋には必ずといっていいほど置いてある早寿司だが、僕はこれが大好きなのであった。今回も待っている間に1本食べた。
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食べ終わったけどまだラーメンが出てこない。なので、巻きずしも食った。
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正直、巻きずしは大したこと無い。やっぱり早寿司ナンバーワンである。

さてラーメンが出てくる。相変わらず見事な小宇宙を、丼内に構成している。完成度の高いラーメンもとい中華であると思う。
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ラーメンを黙々と啜るのもいいのだが、、、僕はいつもこうしてしまう。早寿司をラーメンスープに浸けて食べるのダ! これが劇旨! 早寿司の酸味とスープのコクと脂のマッチングが実に佳いのだ。
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新しい店になっても、丸三は最高に旨いので安心したのであった。

さてこの後日また丸三に行ったのだが、「店主急病のためお休み」となっていた。僕ら以外にも数台の車が駐車場をうろうろしていて、中には店をのぞき込む親父まで居た。
はやく病気直して再開できるようになることを、切に祈っています。

2004年02月22日

名古屋の駅弁 「ひつまぶし弁当」はなかなかのものである。

 岐阜出張である。11時過ぎに新幹線で出たため、昼飯の時間を車中で過ごし、1時過ぎに名古屋駅に着く。乗り換え時間が10分しかないので、矢場とんのみそカツを食べに行くわけにも行かない。喫茶コンパルの海老フライサンドも時間がかかるので無理だなぁ 断腸の思いである。
 仕方なく駅弁売り場をみる。みそカツ弁当などがある中で、ひつまぶし弁当に目がいった。ちょうど昨日、友人が名古屋にいるので旨いひつまぶし屋を教えてくれと言われたので、栄の松坂屋に入っている熱田蓬莱軒の支店を教えておいた。そのせいか、鰻が食いたいと僕の胃袋が言っているのだ。

 僕は鰻は、関西風のものが断然好きだ。東京にいてあまり鰻を食いに行かないのは、江戸前の鰻に飽き足らないからだ。釈迦に説法かもしれないが、関東風は白焼きにした後に蒸して、脂を落としてトロトロにする。この柔らかく脂の落ちた上品なのを好きな人もいるわけだが、僕には物足りない。ひるがえって関西では蒸さずに皮目をバリッと焼くため、脂ののりが極めてしつこく(笑)、これが俺様好みなのである。それに、タレも心持ち関西の方が濃く感じられる。ギトギトしている。その中でも一番好きなのは、宮崎県にある名店「入船」だ。知ってる人は知ってるだろうが、国内のウナギの養殖の多くは、宮崎や鹿児島の河川で行われている。だから南方のウナギもおかしい話ではない。事実、鹿児島の寿司屋ではウナギをネタに使うのをよくみかける。

 と、弁当をみながらそこまで考えたところで時間が来たので、とりあえず買うことにする。ひつまぶし弁当1100円也。メーカーは「だるま屋」というところだ。パッケージには「日本一弁当」と書かれている。よくよくみると、パッケージが面白い。

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日本一のうなぎ生産地三河一式の蒲焼、、、日本一の抹茶生産地、西尾のてん茶、、、日本一長い守口大根を添えた、、、日本一、名古屋の抹茶ひつまぶし

 巧妙に「日本一」が誇大表示にならないような手を使っているわけだ(笑)
 何が何でも日本一って言葉を使ったるぞぉ!という気概に満ちたネーミングなのだ。ていうか、上記説明が箱の上部に書いてあるのだよ。この箱もなんだかいい紙使ってるし、意味もなく中身が2重になってるし、豪華すぎる。

 箱を開けてみると、膨大なつき物群が。お手ふきに箸、うなぎのタレと山椒、そしてワサビの小袋ともみ海苔。そう、ひつまぶしにはワサビだもんね。これらのギミック類を除いた後をみると、結構にウナギの分量が多く、豪勢な見た目である。
 ひつまぶしのご飯にはあらかじめタレが絡められているので、すでに味が付いているのだけど、そこから更にタレをかけるというところが名古屋だな。

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 山椒、タレ、ワサビ、もみ海苔を載せて、いただきます。これが、予想外に旨い!ウナギの皮は期待を裏切らずにストロングもっちんもっちんで噛み切れないくらいだ。やっぱり味も濃い!量的にも、おやつにはちょうどよい(笑)というのは冗談だが、まずまずの満足度なのだ。

 食べていてはっと気づいた。包装の豪華さ、日本一にこだわるネーミング、そして中身のギミックの多さは、すべて名古屋人気質といえば説明が付く。嫁入りの豪華さのみならず、名古屋を通過する全国の旅人に対して、

「日本一やゾぉ」

とにたりとしながら微笑む名古屋人。そう思えば、1100円という価格帯でここまで豪華にするのも気質から無理を通した結果と思える。うーむ 素晴らしいではないか!

と堪能しているうちに、大垣に着いたのであった。望外の満足度なのであった。

宇都宮餃子の正道を観た! 「正嗣(まさし)」

jpg 朝九時の山形新幹線で、宇都宮に向かう。と言っても、東京から40分くらいで着いてしまうので、居眠りをする間もない。このように首都圏に近いところに出張というのは、本来的には避けるところなのだが、実は僕は宇都宮には降り立ったことがないのだ。今回は、栃木県の生産者団体さんが僕を講演で呼んでくださったので、初の宇都宮詣でとなる。

 宇都宮といえば餃子である。僕の敬愛するライターというより作家さんであるイタバシ師匠が昔、雑誌の取材で宇都宮餃子を10店以上回ることになり、餃子を100個以上食べることになって、その時初めて

「満腹によって失神する」

という事態を経験したそうだ。あまりに満腹になりフラフラと歩いているうちに意識を失い、気づいた時は全く知らない道をとぼとぼと歩く自分がいたそうである。それほどに宇都宮餃子はオソロシイものなのであった。

 冗談はともかく、最近では首都圏でも「眠眠」など、宇都宮に本店をもつ餃子屋が店を出している。しかし、そういうのはあまり好きでないのだ。やはりその土地で食べてこそ意味があるのではないか。ということで、講演終了後に出荷団体の方に、地元の人が旨いと思う店と訊いたのである。

 野口さんは瞬間的に目をぎらっとさせた!

「先生、そんなことでしたら先に言って頂ければご案内したものを、、、そうですね、有名なのは眠眠ですが、「まさし」という店も同じくらい有名で、私はそちらの方によく行きますね

と言うわけでその近くまで連れて行って頂いた。ちなみに午後1時半。昼食はもう弁当を食っているのだが、それに上乗せして食べるのであった。泉町という繁華街に入ると、すでに行列ができている店がある。

「あれが眠眠です。その先の小路を曲がると、小さい店が、、、あ、あそこです。まだ店が開いてないのに並んでますね」
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本当だ。まだ店は準備中なのにならんでいるのだ。急いで野口氏に別れを告げ、店に走る。ラッキーなことに、すぐに店が開いて、最初から3番目の客として入店できた。
ちなみに「まさし」というのは写真にあるとおり「正嗣」という難しい漢字で書くのであった。

これが店内である。
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びっくりしたことがある。何かというと、、、この店には「餃子」以外のメニューがないのだ! 「焼き餃子」と「水餃子」があるのだが、それだけだ。ビールもない。ご飯もない。ラーメンもないのである!そして価格がまた笑ってしまう。焼き餃子も水餃子も、一人前がなんと170円である!今どきファミレスでもこれはないだろう。
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とりあえず「焼き2人前と水餃子1人前」と頼む。親父さんと奥さんの2名体制である。親父さんは、ほとんど愛想のない無表情さでもくもくと仕事をする。「何人前?」としか訊かないでいいメニュー体系だからだ。無造作に餃子を鉄鍋に放り込み、焼けた端から皿に盛って出してくれる。
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 薬味は醤油と酢、そして自家製のラー油だ。このラー油が実に辛くて旨かった。自家製ラー油はかなりのポイントだが、ここのは陳皮などの香り素材よりも、ストレートに唐辛子を多量につかって辛みをだしているようだ。適度に調整をして待つこと4分、焼き餃子が運ばれてくる。
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思ったより一つ一つが大きい。3人前頼んで大丈夫だったろうかと、俺らしくない不安。一口、タレにつけてほおばる。熱い! そして味だが、以外にもさっぱりあっさり、淡泊な味わいだ。ここを紹介してくださった野口さんも、

「眠眠はギットリしていて、私なんかはまさしの淡泊さが好きです。」

と仰っていた。しかし、2つ、3つと食べ進めるうちに物足りなさが消えていった。なぜか、旨さ、味が積算されていく感じなのだ。野菜がタップリ入った餡(キャベツが多い)はまったくくどくない。皮は薄くもなく厚くもない、食べやすく上品な厚みだ。そして底面の見事なパリッと焼きの入り方。素晴らしいではないか。
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 黙々食べていると、水餃子が丼に入ってやってきた。ここの水餃子は、焼きと同じ餃子を鍋で茹でたものだ。
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 おやじさんが無造作に生餃子をつかんで、沸き立つ鍋に投入、その後茹でをしていたものだ。タイミングをみはからって丼に湯を少量入れて暖め、茹であがった餃子と湯をいれて出してくれた。最初これを、焼き餃子と同じ、ラー油と醤油と酢のタレにつけて食べてみる。水餃子はこれはこれでホックリとした味わいとなり、よい。と思ったらなんと!おやじさんがボソッと声をかけてくれたのだ

水餃子はね、丼の中に醤油と酢とラー油をいれちゃって、スープごと飲んじゃうといいよ。身体があったまるよ。醤油は入れすぎると塩辛いからね。」

これを、とにかく無表情でぼそっと仰るのだ。僕はちょっと感動してしまった。大阪インデアンカレー梅田店の山田チーフのような、にっこり愛想笑いも無駄な世間話もしない、しかし客に対して最高のものを提供しようとしている崇高なプライドが、そこに見えたのだ!

 おやじさんの言うとおり、丼に直接、醤油と酢、ラー油を投入してみた。
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 汁ごと餃子を食べてみると、実に最高! 湯から引き上げて小皿のタレにつけるよりはるかに味わい深い!湯は本当にただの湯のはずで、餃子から少々旨味が染み出ているのかもしれないが、それでも白湯に近い。なのに、醤油と酢とラー油のみで、とても深みのある味が出ているのだ。いったいどういうことなんだろう?

 とにかく偉大なおやじだ。この店、メニュー構成をみても(焼き餃子と水餃子しかないんだぞ!)、価格を見ても(1人前170円だぞ!)わかるとおり、とにかく質実剛健、実直な仕事しかしないと宣言しているような店だ。ビールもない。ご飯もない。あるのはただただ餃子だけだ。客は黙々と餃子を平らげて出て行くのみなのだ。ある種の感動を覚えてしまった。

 ちなみに店内の壁に、計算表が貼ってある。何人前だと幾ら、という価格表だ。これをみると、なんと25人前でもたったの4250円だ。しかし過去、この25人前を頼んだ人が居るのだろうか?できれば僕が頼んでみたい、、、
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 いや、本物のプロを見た。素晴らしい。今後、栃木とは関係ができそうなので、またこの素晴らしき郷土色「宇都宮餃子」を攻めてみたい。きっと、もっとディープな世界が広がっているはずだ。わくわくしながら、帰途に着いたのであった。

2004年02月26日

魚が旨い! ビバ和歌山の活魚料理 「たか屋」

jpg 和歌山は山海の幸すべてが旨いのだが、やはり魚とくに白身の魚は絶品の旨さである。味が全体的に上品でほの甘く、風味が濃い。香を楽しめる魚なんてそうないだろう。その代表格として思うのは実は太刀魚だ。僕のお袋は愛媛出身なので、よく埼玉の実家では太刀魚の塩焼きが食卓に上がったが、実は関東では最近まではマイナーな魚であった。だから、太刀魚を刺身で食べるなんていうと、びっくりされていたものだ。しかし関西では、太刀魚の刺身なんてけっこう当たり前。だって旨いもんね!

 その心の味に久しぶりに会えたのであった。和歌山にきて魚が食べたければぜひここに足を運んで欲しい。

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■活魚料理「たか屋」
和歌山市東長町5-75
073-433-6388
※和歌山県庁のそばです
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 ここは漁船から直接仕入れているような店で、店主のたかやさんがお若いのに非常に研究熱心で、むちゃくちゃ質の良い魚介を食べさせる店だ。実は僕の和歌山案内人であるT氏の高校での同級生でもあるらしい。
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 まず何は無くとも刺身だ。
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この中にくだんの太刀魚の刺身があるのだ。どうだこの美しさ!↓
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 薄ピンクの柔らかな身は、繊細に迅速に包丁で引かないと、崩れてしまう。これを角を立てて引き、銀色の皮であしらいをつける。実に芸術的ではないか! これを若干甘めの仕事をした醤油に浸しいただく。限りなく甘くトロリととろけるのが、太刀魚の身上だ。素晴らしい。この太刀魚の刺身で丼をつくってくれないだろうか、、、

太刀魚だけではない、イカも旨かった。北海道のウニとイカのお造りは、独り占めしたいのが叶わぬのがまたよいのであった。
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さてこの店、一品料理も非常に気が利いている。たか屋の品書きも、あの煌く(きらめく)品書きである。つまりどれも旨そうなのだ。
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一品料理で際立って面白かったのが「お好み揚げ」。どういうもんかと思ってたら、本当にお好み焼き風の天ぷら料理だった!
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海老などをフンワリカリっと揚げたものにソースとマヨネーズ、青海苔で食べるのだが、これがサクサクと楽しい食感にマヨソースがからまり、旨いのだ。こういう遊び心は、好い。

いろいろ食いながら、やはり冬ということで鍋が出てくるのである。はじめて行った時にはフグ鍋、二回目には真鱈の白子、真たこ、穴子のしゃぶしゃぶ であった。もう死んでもいいというラインナップである。
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この豪華狂乱鍋のあとにウドンをぶちこんでもいいのだが、、、実はこの店の最大の旨い飯がある。それは、、、季節の魚を土鍋で炊き込んだ魚飯だ。これが絶品なのである。
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若干柔らかくなりすぎのきらいがあるのだが、もう本当に滋味あふれる一品だ。
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どのくらい旨いかというと、土鍋にこびりついたご飯粒を一粒たりとも残さないようにむしゃぶる俺が居るほどに旨いのである!
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これでも足りないと言うと、なんと真鱈の白子寿司を作ってくれた!この冬何度目かわからないが、この壮観な軍艦たちを見よ!
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ちなみにこの店では時々忙しいときに手伝いに現れるママ(たかやさんの実母)の存在もまた嬉しい。飲みだすともうブレーキが利かない最高なおかあちゃんなのである。
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ああ、魚が旨い。残念ながらこの店でまだ会計を持たせていただいたことが無いので、いったいご予算いくらかはわからん!のだけど、ぜひ県外の方で和歌山の魚を堪能したい方は、電話を入れて足を運んで欲しい。土鍋ご飯はぜったいにリクエストするように、、、

2004年03月08日

広島・竹原に名門酒造あり~ 竹鶴酒造 極秘潜入酒池肉林ルポ的私信 その1

 広島からぐぐっと岡山寄りに戻った海辺に、「小京都」と呼ばれる竹原市がある。僕と同じ世代かそれ以上であれば懐かしく思い出せる映画「転校生」にて、主人公が石段を転げ落ちるシーンが撮影されたのはその竹原の小京都と呼ばれる、文化財指定された町並みである。

 その文化財指定の一帯に名門酒造が在る。その名を「竹鶴酒造」という。
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竹鶴といえば、ニッカウヰスキーの社長さんが竹鶴という名字だったり、同名を冠したウイスキーがあったりとして知られているが、実はこの竹原の竹鶴酒蔵こそが本家筋である。
 そして最近のdancyuなどの料理誌・グルメ誌の日本酒特集を見れば確実に出てくる「小笹屋竹鶴」という名酒を送り出しているのはこの酒造である。
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「端麗辛口」などという野暮天な言葉を蹴散らかすように野太い、骨格のがっしりとした味。純米酒にこだわり、さらに吟醸香中心の食前酒っぽい酒ではなく、魚・肉などどんな料理にも比肩しうる強さを持った究極の食中酒を世に問うているのが、この酒造なのである。

 まずはこの竹鶴と僕との出会いから少し書かねばならないだろう。簡単に言ってしまうと、この竹鶴の次女が、僕の大学時代の同期であり親友なのだ
 学生時代の僕はキャンパスの中に畑を創っていたのだが、その同輩後輩を夏合宿と称し、熊本は阿蘇の農園に通っていた。金はないが時間はたっぷりある貧乏学生達である。青春18切符を使って鈍行で熊本に行くのだが、1日ではどうやっても着かない。そこで広島の竹鶴酒蔵に一泊させていただくという、とんでもない暴挙に出たわけである。今から思うと額に汗がにじむが、10人からの学生どもがずかずかと文化財指定の屋敷に上がりこみ、文化財がずらりと並ぶ座敷にてごろ寝をしていたのだ。しかし、現在 広島県議でもある社長の竹鶴寿夫氏は、豪快にがはははと笑いながら僕らを暖かく迎えてくださったのである。この方が竹鶴寿夫社長であられる。
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稀代の食通として知られる同氏により歓待攻めを受け、この僕も超満腹絶品攻めに陥落したのを、昨日のことのように思い出す。

 そして当時(12、3年前だ)、早稲田大学を卒業していきなり酒造に入門したという若手の蔵人、石川さんを紹介されたのだ。でかくて顔がゴツゴツしたその人が、なにを隠そう現在の竹鶴酒蔵を背負って立つ若き名杜氏、石川達也氏だ。すでに僕のblogでも数度お目見えしているので、この顔をご存知の方も多いだろう。
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 学生軍団の竹鶴巡礼は数回を重ね、僕や親友の卒業とともに終わった。その後は時候の挨拶にとどまってはいたが、僕にとって長く、酒造といえば竹鶴酒造であったのだ。

 その竹鶴酒蔵に再会したのは、実に卒業後10年経ってのことだ。この再会を仕組んでくれたのは、当時、飛ぶ鳥を落とす勢いで日本酒業界に登場した、居酒屋「五穀家 日本橋店」の店長をしていた工藤卓也氏だ(現在彼は、同店を辞して別のところにいる)。かの店が主催する日本酒の会に、僕の親友である竹鶴の次女が「やまけんもおいで」と呼んでくれたわけである。その五穀家 日本橋店は、すさまじいばかりの純米酒の品揃えを誇り、かつそれらを燗にして飲ませてくれた。それもそのはずで、日本酒業界とくに純米酒の世界の方ならよくご存じの

「酒は純米、燗ならなおよし」

の名言で知られる、酒の鑑定士 上原先生(あの名作「夏子の酒」にも登場しておられる)を顧問に据えていたのだ。だから、専用の燗付け機があり、すべての酒をを湯煎で最適温度に燗することができたのである。
 あまりの旨さとサービスのきめ細やかさに感動した僕は工藤氏に、自信を持てる商品であるフルーツトマトを10箱送った。彼はそれを様々な料理に試してくれて、感想をきちんと述べてくれた。以来、僕と彼は兄弟分としての契りを交わすようになり、今に至るのである。このblogでもハム創りを一緒に習いに行ったりしている画像があるので、お分かりと思う。下の画像で僕の横で舌を出しているのが工藤ちゃんである。
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 この工藤ちゃん、日本酒蔵元からも愛されている。僕も彼に誘われ多数の酒造見学に活かせて頂いた。そして今回は2度目の竹鶴酒造訪問なのだ! まあ、僕にとっては竹鶴を10数年前から知っていたので6回目位なのだが、、、酒造りの工程をきっちりと見学させて頂くのは今回が初めてと言ってよい。昨年7月にお邪魔した時はすでに酒造りは終了していたので、仕込みの最中である今回は実にラッキーなタイミングだったのだ。

 おそらくどんなグルメ雑誌でも、寒仕込み最中の竹鶴酒造の造りをこのように速報紹介できるものはないだろう。これがblogの最大の強みである。今日から数回にわたり竹鶴酒造をきっちりと紹介させて頂きたくので、ぜひぜひ刮目してご覧あれ。

2004年03月11日

広島・竹原に名門酒造あり~ 竹鶴酒造 極秘潜入酒池肉林ルポ的私信 その2

 さて竹鶴酒造の第一日目だ。

 ANAの超割で広島行きチケットをゲットしていた我々一行、朝9時55分の便で広島に向かう。一行とは、僕と工藤ちゃん、工藤ちゃんが五穀家店長をしていたときからずっと一緒に仕事をしている浅見君と大場るみちゃん、そしてこのblogで数回書かせていただいているイタバシ師匠(少年マガジンに長期連載されていたBoys be... の原作者だ!)と、その妻君である神澤ゆみこさん夫妻である。神澤さんは居酒屋ライターとして成功している(最近danchyuにも書いていらっしゃった!)方なので、本屋で手に取られた方もいるだろう。

 このような豪華布陣(?)で、基本的には神澤夫妻による竹鶴酒造取材というのがメインで、俺たちはそれを口実に遊びに行くという感じなのであった。

 広島空港に着くと、なんと竹鶴の社長と専務が車でお迎えに来てくださっていた!社長はがはははと笑いながら、板橋夫妻を乗せてすっ飛ばしていった。僕らは敏夫専務に乗せてもらい、竹原へと向かう。
 敏夫専務、といっても僕にとってはなんとなく弟的な人である(むこうはそう思ってないだろうが)。なんと言っても、僕が大学時代に遊びに行ったときにはまだ高校生だったのだから、そのころの印象をずっと引きずってしまうのは致し方ない。しかし、彼はいまや立派な専務であり、竹鶴酒造の次代を担う顔として精進をしているのであった。 でも飲み過ぎには気をつけろよな敏夫君。

 竹鶴酒造は変わりなくその文化財としての落ち着いた姿でどっしり構えていた。
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なんといっても250年以上続く家である。もうその存在自体が説得力のカタマリなのだ。
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 無茶ウマのバターケーキを濃いめの紅茶でいただき、まずはぶらぶらと竹原散策をする。これが有名な、映画「転校生」で転げ落ちるシーンの石段である。

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 そうこういいながら実はまだ昼飯を食っていなかったのであった。この竹原の小京都一帯では知られるお好み焼き「ほり川」になんとも10年ぶりくらいに入るのであった。そう、当時このほり川で現専務の敏夫君をお好み焼きを食べたのであった。とつとつと、いろんなコトを話してくれた敏夫君だったが、実は俺はお好み焼きを焼いてくれている店のおねーちゃんに視線釘付けであったのだ! わははは知らなかっただろう敏夫君! ということで密かにそのおねーちゃんに再会したかったのだが、、、

 久しぶりにくぐった「ほり川」は、やたら流行っているらしく店舗が増築されており、厨房には5人のおねーちゃんズが立ち働いているのであった。ちょっとびっくりしたが、やはり!おねーちゃんズは美女揃いなのであった。ここの店主は絶対に顔で選んでるぞ。ちょっぴりウラヤマシイのであった。
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ちなみに広島のお好み焼きなので、クレープ上に薄く鉄板に敷いた生地の上にキャベツをたっぷり乗せ、それをギュウギュウと押しつぶして水分を抜いていくスタイルだ。関東では広島焼きというが、ここは広島なのでそんな呼び方はしない。これを「お好み焼き」というのである。
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まあとりあえず10年ぶりだし、おねーちゃんはみなキレイだったので、加速度がついて俺はお好み焼きを2枚(イカ豚そば玉と、ホタテチーズうどん玉)食べたのであった。
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 腹もくちくなったし、散歩もしたということで戻ってきたら、早速竹鶴フルコースが始まろうとしていた。

「石川杜氏がお待ちですよ。」

 履き物を変えて蔵の敷居をくぐると、ひんやり冷えた酒蔵独特の空気に包まれる。先回来たときは造りが終わっていたが、今回はまっただなかである。
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 と、蔵の中に突如、12本の酒瓶が現れる!そう、現在仕込み中の桶から汲み取ったばかりの、正真正銘の新酒たちである。この竹鶴酒造の門をくぐる日本酒関係者は、このように利き酒をするならわしとなっているのである。それも、それぞれの酒についてコメントや評点をきちんとつける紙を渡され、コピーをとられてしまうという徹底ぶりなのであった。この時点で日本酒関係者には緊張が走る。「下手なことはかけない、、、」という感じだろうな。でも俺はまったく日本酒業界人じゃないから気楽なのであった。

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あ~ 、 どうも、石川です。 え~ いやいや、 まずは飲んでいただこうと思いまして」

 と、石川達也杜氏が登場する。相変わらずでかい。180数センチ、学生時代はボクシングをしていたという猛者である。しかも顔は、NYでメジャーリーグの選手としてがんばっている背番号55番に雰囲気そっくり(年齢からいえば石川さんの方が早いのだが)の強面なのである。
 しかしながら性格気質は温和でありすばらしき思慮深さを持つ御仁である。理論肌の読書家であり、酒についての古書は膨大なコレクションを蔵しており、研究を怠らないのである。でも彼のすごいところは、理論肌でありながら、そのすさまじい体力でバリバリと働きまくることであろう。
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 さて石川さんに薦められ、みな利き酒を始める。利き酒とは言っても何かを当てるというのではなく、酒質をみせていただくという趣向である。

 竹鶴酒造の酒の特徴は、協会6号や7号といった、香りよりも味がよくでる酵母を使っているということだろう。石川杜氏いわく

竹鶴の人間は、数字は9までしか数えられないんですよ(笑)

 とのことだ。原料米は山田錦も使うし八反錦も使うが、力を入れているのは雄町(おまち)である。近在の農家さん数軒にお願いして、合鴨農法で栽培した雄町米を契約栽培している。昨年に竹鶴に訪れた際、そのうちの一名の田をみせていただいたが立派なものであった。何より、生産者ご夫婦と竹鶴酒造の関係者との距離感がすばらしい。顔が見える関係性の中で酒を醸すという、もっとも重要なことをさらりとやってのけているのだ。

 当然といえば当然だが、生産者が違えば酒の味も違う。竹鶴ではできるだけ米を混ぜないようにして生産者別に仕込んでいるので、もし購入の機会があるならばラベルをじっくりみていただきたい。
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 今回の12種類の中では、藤浪さんという生産者さんの合鴨農法雄町米を使った純米が気に入った。力強さと味のバランスがいい。飲んだことがない人にはわからないだろうが、竹鶴の酒というのは、有無を言わせず相手をねじ伏せるような、アタリの強さが持ち味だ。だから、ほかのメーカの酒を持ってきて一緒に飲むと「なんだこりゃ」と声を出してしまうような違いがある。けど、この日は竹鶴ばかり12本飲んだので、その中では「これは比較的落ち着いている、こちらはマイルド」などという評価になった。

 しかし一番びっくりしたのはここでは明かせない秘密の酵母を使った酒である。なんと酸度が3.9度もあるのだ!通常こんなに高い酸度はあり得ない(らしい)。飲み口は強烈の一言だが、一口びっくりして慣れると、口中の感度が上がり、ほかの酒が物足りなくなる。これはしばらくの熟成期間をおいた後、家畜ではない獣肉のローストとともにいただくのがよいのではないか、と今から楽しみ千万なのであった。

 一通り飲んで、顔だけ酔っぱらい気味になったところでいったんお開き。近くのビジネスホテルにチェックインする。

 そして、、、すでに伝説となっている夜の部 「居酒屋 竹鶴」 の時間がやってくるのである。

(つづく)

2004年03月24日

広島名物 激辛冷麺の元祖を食べにいった。ノックアウトされた! 河原町「新華園」

shinkaen.jpg 広島の農業団体に招かれて講演をすることになった。3月9日にお世話になった竹鶴酒造にそう伝えると、、、

「おおぉ そうか、それなら観にいくぞ!」

と、社長の竹鶴寿夫氏がおっしゃる。まさか冗談だろうと思っていたら、蔵の仕事を蔵人に任せて、社長に専務、そして杜氏までもが観に来るという異例の事態になってしまった!うーん おもしろいではないか!

それはともかく、以前から社長や石川杜氏からきいていた激烈旨いもの情報があったのだ。それは、最近広島の名物料理として知られてきた「広島つけ麺」だ。しかし、それを言うと社長も杜氏もこういうのだ。

「広島つけ麺ってのは新しくできた店がつけた名前でねぇ、本当の元祖の店では『冷麺』いうんよ。」

その元祖の店がものすごいらしい。何がすごいかというと、竹鶴敏夫専務いわく、

・暴力的に辛いタレで食べるつけ麺なのだが、ムチャクチャ旨い!
・味付けも暴力的だが、店の大将が輪をかけて暴力的!店のルールに従わないものならば途端に罵声が飛んできます。

ルールとは例えば、
★親父に無断で着席する
★雑誌など見ながら食べる
★席をつめずに座る
★麺を残す  等々、、、

 そして当然ながら取材は絶対拒否!広島つけ麺(本当は冷麺)発祥の店でありながら、この店の取材に成功したマスコミはないのだそうだ。 うーむ おもしろすぎる!

 この店には、竹鶴寿夫社長も石川杜氏も20年以上前から通っているのだそうだが、それぞれが出会うまえから別々に行っていたというのだ(それはそうだ、石川杜氏は高校生だったという)。ご両名、どちらも美食家である。同じ店に20年以上前から通っていたわけだ。

 さてこの店に連れて行ってもらうことをお願いしたところご快諾をいただいた。講演は1時から。新華園が店を開くのが11時なので、広島駅に10時半につくように新幹線に乗るのであった。
 広島駅に着き、車で迎えに来てくれた専務と石川杜氏と落ち合う。社長は用事を済ませてから来るので、もしかすると冷麺は一緒に食べられないかもしれないということであった。

 今回問題になるのはなんといっても取材拒否の店だから、デジカメ写真をとらせていただけないのではないかということだった。

「まず無理でしょうねぇ、、、とりあえず正攻法でお願いしてみましょう。隠し撮りなんかしてバレたら間違いなく殺されます。」

それはイカン、、、テロより怖い。ということで一応最初に聴いてみるということになった。この時点で店の作法についてレクチャーを受ける。

「まず、店に入っても勝手に席に座ってはイケマセン。最初に注文をします。

 注文の仕方ですが、麺の盛りを「普通・中・大」で表し、具の盛りを多くしたい場合は「特(とく)」と言います。ヤマケンの場合はとりあえず「大特(だいとく)」でいいでしょう。ちなみに「特」にすると野菜の盛りだけではなく、チャーシューの大きさや部位もよくなります。結構細かいんですよ。

 そして店を入ったところにあるベンチに座って、店の人から「どうぞ」と言われるまではそこで待ちます。あとはひたすら食べないとイケマセン。麺を残したりしたら本当に怒られますから気をつけてください。ま、ヤマケンなら心配はいらないでしょうが、、、、」

う~む 実におもしろい! この手のウルサイ店は僕は好きではないのだが、なんといっても竹鶴社長と石川杜氏がこよなく愛している店なのだから、絶対に旨いはずなのだ。旨さと待遇のどちらをとるかという究極の選択になるわけだ。ま、食ってから決めよう。

 広島駅から車を18分ほど走らせ、小さな通りにはいったところに赤い張り出しテント屋根の店を発見する。店の前に車を停めて、もしかしたらこれが最初で最後の一枚になるかもしれない写真を撮影する。
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ニヤっと笑って立っているのが石川杜氏である。仕込みもだいたい終了し、今は絞った酒を瓶詰めしたり濾過したりという後処理に入っているため、表情にも余裕が観られるようになってきたのであった。
 店ののれんが裏返しになっていることに注目。理由はわからんが、「これが特徴」ということだ。ワケワカラン、、、

 さて店に入る。計ったように11時に着いたので、僕らが最初の客だ。

「おおぉ 竹鶴さんご一行。社長はおらんの?」

と大将からお声がかかる。60歳くらいだろうか、タオルを頭に巻いた、いかにもやんちゃそうな親爺である。その妻君であろう人の良さそうなおばちゃんと、30前後だろうかの精悍な女性がいる。竹鶴一族は常連なので、最初からの人当たりがよい。それでも3人、入り口のベンチに座る。ちなみに注文は「大特2つに普通1つ」である。

店内はわりと広く、カウンターが20席程度。6人座れるテーブルもあるが、これが席として使用されるのかどうかは未明だ。

 しばらく世間話をしているうちに「どうぞ」とお声がかかり、カウンターの席に通される。大将が、冷麺用のタレを調合している。ガラスの小鉢にまずは唐辛子ベースの辛いタレを注ぐ。この量は常連客それぞれの好みを判断しながら調整されているそうだが、辛さを足してもらうこともできる。そこに透明の酢のような液体と、ホーロー製の容器に入ったスープストックを合わせ、ゴマをたっぷり入れてスープのできあがりである。

 石川杜氏は相当に気に入られているらしく、兄弟のこととかが話題にあがっている。折を見て僕のことを東京からきた農業関連のセンセイであると紹介してくれた。

「農業かい、農業はこんなに生産者をいじめてると、何も食べられなくなるよ!って、政府にいっといて!」

僕が政府に言えるかどうかはわからんが、その後、非常に筋の通った農業保護論をここのおばはんと娘さんが、とてつもなくドメスティックな広島弁で展開していた。方言がすごいので少しわからないのだが、痛快かつムチャクチャにおもしろい話である。親子掛け合い漫才なのだ。広島弁に造詣がないため、ここに再現できないのが本当に惜しい!

 同時進行で麺が茹でられている。なんと麺は羽釜で炊かれている!そのせいか割と早くに茹であがるようで、ほとんど待たない。この麺を水でゆすいで、ざるにあけてどんどんと水切りをする。この麺の洗いと水切りの担当は娘さんである。麺がざるにあがると、どんぶりに無造作かつ丁寧にとりわけられ、そこに具を盛りつけていく。この具がスゴイ!茹でキャベツ山盛り、ネギの小口切りたっぷり、キュウリとネギの細切り、そしてなんと紅タデ(刺身のツマについてくる、赤紫のやつ)が乗る。これにチャーシューをのせるのだが、本当に山盛りである。

「さあ どうぞ」

とカウンターにドンドンとのせられたそのどんぶりは、超弩級の迫力でせまってくる。この時点ですでに激烈に旨そうなんである。

 さてここで大将に正面切ってお願いをしてみる。

「大将! 写真とっていいですか?」

「写真?だめだよぉ。」

怒っているいる口調ではないが、断固とした拒否の姿勢が垣間見えた。ので、即座にあきらめました。残念ながら読者の皆さんは、この最高な冷麺の盛り付けをみることができない!

食べよう!と思うが、まず丼の上部全面を茹でキャベツが覆っている。入り口に無造作に積まれたキャベツのダンボールをみると、愛知県JAとよはしのものである。この時期からして春玉ではないかと推測。春玉(ハルダマ)とは、読んで字のごとく春キャベツである。これに対応するのが冬の品種で寒玉(カンダマ)という。通常、寒玉のほうが主流。春先から夏にかけての暖かい陽気でできるのは春玉が多いのだが、味はかなり違う。春玉は柔らかくトロミが強い。その代わり糖度はそれほど載らない。寒玉はパリパリした食感と、寒さにより軸に蓄えられる甘味が特徴だ。僕は圧倒的に寒玉が好き。でも、時期的にそろそろ春ものが出回っているだろうと思ったのだ。

しかし!口に運ぶと、パリンパリンと心地よい歯ざわりと、軸からにじみ出てくる甘味が!

「おお!このキャベツ、冬モノだ!」

大将が

「ああ、来週までくらいは冬キャベツだねぇ。春ものだと、柔らかすぎたり、茹ですぎると味がボケるから手がかかるんだけど、、、いいタイミングできたね。」

と仰る。なんか別に暴力的でないのは、竹鶴ファミリーと来たからだろうか。と思いつつキャベツの層の下から麺を引っ張り出す。麺は実にストレートな中太麺で、色は白い。これを辛味タレに付けて食べようとすると、、、

「あ、ヤマケンさん、タレの辛味の部分はよく混ぜてください。辛味の部分はタレと分離しやすくて浮いてしまうので、端で混ぜてから食べるのがお薦めです。」

という専務からの鋭いアドバイスが。そのとおりにして麺をまんべんなく混ざったタレに浸し、すする。辛さよりも先に、あまりにも爽やかな柑橘系の酸味が鼻腔に抜ける。そしてジワっジワっと辛味が上ってくるのだが、刺すような刺激的な辛味ではない。どちらかというと、鈍い辛味が粘膜にじんわり染み込んでいって抜けない、という辛さだ。そして、サッパリとしているが味わい深い旨味、これは鶏がらベースのスープだろうけど、油分が少しも浮いていないのはどういうことだろう?山形県の、冷たい鶏スープを使った「肉蕎麦」のようである。で、とにかく間違いなく旨~い!

「旨い! ウマいっすよこれ!」

あとは怒涛のようにすするだけである。チャーシューもかなりオリジナルで、脂身がほとんど無い。これを薄切りにしたものが載ってくるのだが、全体にギトギトせずに食べられるようになっているのだ。しかし、辛味タレがじんわり効くので、だんだん身体が熱くなってくる。ふと左となりの石川タツヤンをみると、顔全体からブワワっと汗が噴出している。それをティッシュとかではなく、タオルで拭いている。

「これはね、マイタオル。これじゃないとおっつかないの。」

「そうそう、石川君はいっつもそれやねぇ~」

 そう、この親父さんは、相手の力量をみながら辛味を加減しているのだ。もしはじめていった人で物足りなかったら、申し出れば辛味タレを足してくれる。すかさず僕もお願いしたが、実にいい感じ!激辛料理というようなイロモノではない、渋い必然的な旨さがあるのダ!

 それにしても野菜の量は半端でない。きゅうりやネギなどの細切りがヤマと載っている。これらは「すべて機械を使わず手で切っている」(石川タツヤン談)ので、とにかく仕込みにはものすごい時間がかかっているんだそうだ。そのせいもあってか、なんとこの店、回転時間がすごい。

「朝の11時から午後2時までで閉まってしまう」

えええええええええええ
気が狂っているとしか思えない。夜の営業なしでなんでやってけるのお?

でも観ていると納得。店に入ってくるのはほぼ常連客。店の親父さんとの会話を聴いていると

「皆勤賞やね、4連続か」

などと言っている、、、そう、この味、すごくサッパリしているので毎日たべてももたれないのだ。これはラーメンという範疇には入らないな。親父さんがいうように「冷麺」なのだ。

甘いキャベツ、きゅうりとネギ、紅たで、そしてストレート麺を辛タレで食し、「大特」を平らげた。

「ご馳走さまでした!いやぁ旨かった、、、」

「日本の農業をよくしろっていっといて!」(←お母ちゃん)

そうですはい頑張ります。と思いながら店を出る。車に乗ると、敏男専務がいぶかしげに

「あれ?あの後ろからくる車、、、社長がきましたよ!」

おおなんということだ、我々先発隊が食べ終わったタイミングで竹鶴寿夫社長の到着である。

「おお、なんだなんだもう食べちゃったのか!ヤマケンもう一杯付き合え!」

やった!!!!!
実はもう一杯食えると思っていたところだったのだ!

店の中からも親父さんとお母ちゃんがこちらを笑いながら見ている。社長とともに入店。今度は即座にカウンターに腰掛ける。これは社長のおかげだろう。

「普通2つ!」

「あんたもう一杯食べられるの?」

「もちろん!」

こうして僕は、初めての新華園にて「大特」と食べた後「普通」を連続して食べたのであった。
しかし残念なことに、、、

「残念!歴史に残る人かと思ったけど、去年はじめてきて大特と普通を食べた人がおるんよぉ、、、」

むちゃくちゃ残念である、、、歴史に名を残せなかった。
今度は絶対に大特と中特を喰うぞときもに命じ、名店を後にし、講演に向かったのであった、、、

2004年03月26日

竹鶴酒造杜氏・石川達也家にて、郷土料理「びしゅ鍋」をいただく至福のひととき、、、

 冷麺を腹一杯食べて、講演の最中は寝てしまいそうになったが、なんとか1時間40分くらい話しまくった。竹鶴社長&専務&杜氏ご一行に 「おおお 山本センセイセンセイ!」 ともてはやされ、気恥ずかしい。

 さてこの日夜は、なんと石川達也杜氏のご自宅に泊めて頂くことになっている。今をときめく地酒界の超注目杜氏であるタツヤンと、こんなに仲良くさせて頂いていいのだろうか?いいんだな、きっと。だってオイラは日本酒業界の人間ではないから。きっと、業界関係者だったら色々と商売上の思惑や遠慮も出てくるから、こんなに仲良くさせて頂いてないと思うのだ。もちろん日本酒は米からできる、農産加工品といってもよいものだ。だから農産物の世界にいる僕とは、周辺領域で繋がっている。そのつながり方がよいのだろうな。

 さて石川家は広島県西条にある。西条といえば、広島の名門酒蔵が集まる酒蔵の町である。賀茂鶴、賀茂泉など、有名な酒蔵にことかかない。石川杜氏も、実はこの酒蔵の血筋を引いているのだ。というのも、親父さんは賀茂鶴酒蔵に勤めておられ、石川杜氏の幼少の頃は賀茂鶴の蔵内にある社宅に起居していたということなのだ。子供の頃から蔵人の働く背を見て育ってきた。だから、彼が酒造りの道に進んだのは極く自然の成り行きであると言っていい。

 この日は、もう一人ゲストがいたのだ。僕が連載を持っている「やさい畑」の編集者である神吉さんも、なんとお爺さまが賀茂鶴酒造にお勤めだったのだ!石川杜氏のお父さんとは、無二の盟友であったときく。ということで神吉さんも急遽参加しての、にぎやかな会となったのだ。人の縁って不思議だ。

 石川家にあがらせて頂いてまず最初に目に飛び込んできたのは、、、食卓わきにドデンと据えられた、業務用の”酒専用”冷蔵庫だ!こんなのが普通の一般家庭にあっていいんだろうか?

「あ~ いや、 学生時代もこれよりは小さかったけど、下宿に冷蔵庫持っとったよ。」

そんなのは日本中探してもアンタだけなのである。この冷蔵庫の中には、彼が全国の名酒造から収集した、とてつもなく貴重な酒が、新聞紙で密封されて熟成されている。宝の山なのである。もし石川家に泥棒が入ったら、それはきっと日本酒関係者であろう。

 そうそう、この日はタツヤンがこういうのだ。

「ヤマケン、今日はね、君を驚かす食材を用意しているんだよ、、、(ニヤニヤ)」

一体なんだろう?ずっとわからなくて楽しみだったんだが、ひょんなことからそれがわかってしまった!僕が今最も好きな地鶏である「駿河若シャモ」の生産農家である鈴木恵美子さんから、僕の携帯に電話が。

「広島に送っといたけど、どうぉ??」

「え?俺、頼んでないよ??」

ここでぴんと来た!サプライズ食材は若シャモだったのだ!そう、石川タツヤンはこの若シャモを食べているのだ!それは、僕の静岡の導師である岩澤さんからのプレゼントで、タツヤンもこの若シャモの旨さに参ってくれたのだ。ああ、そういうことかぁ!!隣でタツヤンが「しまったぁ、、、」という顔をしている。

 でも、若シャモを何に使うのだろう?これが、この日いただいた、スバラシイ郷土料理に変化するのである!その料理を「びしゅ鍋」という。鶏肉と野菜を、鉄板の上で酒をふりかけて炒りつけ、塩・こしょうのみのシンプルな味付けでいただくという料理だ。これは元々はこの辺の酒蔵で生まれたらしく、その際には「びしょ鍋」といっていたようだ。びしょとは、蔵人が汗だくになって「びしょびしょ」な状態のこと。蔵人が精をつけるために食べたから、この名前がついたのだという。それが今は「美酒鍋」ともいうように変化したそうだ。

 鈴木さんから届いた若シャモは実にすばらしい仕上がりだった。これをさばくタツヤン。彼は、銀座では知らぬ人のいない鶏料理の名店「バードランド」が阿佐ヶ谷にあった、いわば無名時代にアルバイトしていたこともあり、鶏をさばくのもお手の物なのだ。

 静岡が誇る駿河若シャモの最高峰の生産農家、鈴木恵美子さんが育てた若シャモの、輝やかんばかりの色を観て欲しい。肝(レバー)がオレンジ色なのだ!鈴木さんはほぼ無投薬で鶏を育てている。通常のブロイラーには薬を大量に投与している。本物はこんな色になるのだ。これが正常、健康な鶏なんですぞ。こんなに健全な鶏は免疫が強いため、鳥インフルエンザなんぞとは一切無縁である。まあそんなことよりもバツグンに旨いというのが駿河若シャモなんだが。

このスバラシイ鶏肉を、熱した浅い鉄板に投入し、ニンニク片を少々入れる。長ネギ、タマネギ、もやし、こんにゃく、厚揚げなども追加し、日本酒をザバリとかける!しかし「煮る」ではなく「炒りつける」なので、日本酒は材料が湿る程度に留める。これに塩と胡椒を振って、あとは食べるだけである。

これがしみじみ旨い!日本酒のアルコール分は飛んで、その風味と野菜の甘み、そして鶏肉からにじむ旨みでイイ味がでている。鶏肉がメインだけど、この旨みを存分に吸った野菜が実に最高!最初に少しだけ投入するにんにくが実に味のキーになっていて、スバラシイ。これぞ、酒造りの蔵人たちが愛した鍋か!

このびしゅ鍋に合わせるのは、もちろん竹鶴の酒だ。にごり酒のお燗は実に最高!そして写真は、たしか14BYの山田錦の大吟醸である。よくあるフルーティーなだけの大吟ではなく、料理と一緒に飲める大吟醸だ。

飲みながら、神吉さんと石川さんのお母さんの間で、昔話が繰り広げられる。神吉さんもお母さんも
「おじいちゃんが呼んでくれたんだ!」
と大喜びで、スバラシイ会になったのだった。

びしゅ鍋はいよいよクライマックスに。若シャモのモツである。鮮やかなオレンジ色はキンカン卵。つまり腹の中にある黄身ですな。そして腸管、砂肝、、、そしてレバーが半生のうちに口に運ぶ。瞬間、全員がのけぞる!

「ふぉ、フォアグラより旨い~!!!」

これはマジである。いっぺんの臭み・嫌みもなく、ただ濃厚かつ芳醇な旨みだけが溶け染み入る。一瞬で舌の上を去っていくのが残念だ。こればかりは食べてみないとわからないだろうなぁ

ちなみに、一部の日本酒業界では有名なんだが、タツヤンの奥さんは超美人である。奥方の良枝さんも酒造で蔵人修行をしていたことのある熱い人なのだが、タツヤンに惚れ込み一緒になったと言うことだ。いつもは強面で硬派なイメージのタツヤンなのだが、、、家ではなんとこの良枝さんとデレデレである。いいなあ夫婦って。おそらく日本酒業界の人が見たら卒倒しそうなカットを下記に公開しよう↓

デレデレ加減がわかるだろう!そして私もありがたく記念撮影させていだきました。

この後、鶏を手配してくれた静岡の岩澤さんからこういわれた。

「山ちゃん、幸せもんだな! 石川さんが電話をくれて、山ちゃんを喜ばせたいから鶏を送ってくれというんだよ!愛されてるねぇ、、、」

幸せもんです!でもおいらもタツヤンと竹鶴酒造を愛してるもん。
石川家の皆様、本当にご馳走さまでした。大変に楽しく暖かいひとときを過ごしました。また遊んでくださいね、、、

というスバラシイひとときとともに、延び延びになっている竹鶴酒造の仕込み風景を次のエントリで公開する決意を固めるのであった!

2004年03月29日

高松は瀬戸内だから魚も旨いのダ! 活魚料理「天勝」

tenkatsutai.jpg 瀬戸内の生まれ(生まれただけなんだけどね)の僕としては、魚の味は瀬戸内ものが最高!とチューニングされてしまっている。広島から高松に飛び、明日は讃岐うどんめぐりであるが、前夜祭ということで魚を食べたくなったわけだ。しかし今日は日曜日。ご存知のとおり魚河岸は日曜日は休みだ。なのでいいすし屋や和食店は大概日曜日が休みである。ガイドブックをみても日曜休ばかりでちょっとげんなりした。
 もうどうでもよくなって、安ホテルのフロントに「いい店ないですか?」と訊くと教えてくれたのがこの「天勝」だ。ホテルから3分のところにあるという。これに少し引っかかった。

「ホテルから3分? うーん 客を紹介したらフィーが入ってくるようにでもなってるんかいな?」

と、ちょっと疑心暗鬼。でも、繁華街までは歩いて15分ほどかかる。こういうときにタクシーをつかう僕ではない。今日はもう疲れたし、いいか、だまされても、、、と思って天勝に足を運ぶ。

 これが、嬉しい誤算だった。

 天勝は自社ビルの豪華な店構えで、ちょっと入るのをためらう造りだった。

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■活魚料理 天勝
住所 : 香川県高松市兵庫町7-5
電話 : 087-821-5380

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 店内に入ると、活け魚を売り物にする店らしく、大きな生け簀を囲んでカウンターとなっている店のつくりだ。その周縁に座敷が配されている。どうやら2階に60人くらいの予約客が来ているとのことで、1Fのサービスまで手が回らないようだったが、仲居さんにいろいろ訊きながら飲み食いの算段を決める。

 品書きを見ると、魚の一品料理が予想外に安い。つまみをとりながら地酒のあつ燗をいただき、軽く飯を食うことにする。品書きをみてすぐに目に入ったのが「いいだこの甘辛煮」だ。いいだこってご存知だろうか?小ぶりのたこなんだが、頭の部分に米みたいなのが詰まっていて、そこが旨い。ご飯のことを昔言葉で「いい=飯」と読んだので、いいだこというのだ。これも瀬戸内の味である。まずこれだ。
 それと「べいかの酢味噌和え」。べいかってなんだ?仲居さんが「この辺でとれる小さいイカです。」という。小さいってのはいいことだ。瀬戸内の魚は小さくてこまやかで旨い。すかさずそれも頼む。
 あと刺身も食べないといかんだろう。仲居さんと相談し、地物ばかり盛り込んでもらうことにする。酒はなにがおすすめかと訊けば金稜だという。その本醸造を熱燗にしてもらう。

さて金稜の熱燗は移動疲れの身体に沁みた!そして運ばれてきた魚介の美味で、即座に天国に飛んでしまった。

■いいだこ
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 この「いい」の部分が本当にこっくりとしていて、最高なのだ!味付けは瀬戸内風で若干甘いが、もちろんのこと旨い甘さである。いいの部分だけではなく足先の程よい弾力感を味わいながら、やっぱりこれだよなぁ、瀬戸内は、と実感する。たしかこれで480円くらいだったと思うが、、、安いよなぁ、東京に暮らす人間からすると。

■べいかの酢味噌和え
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 べいかとは今まで観たことが無いイカであったが、酢味噌との相性は抜群だった。これで500円程度とは、安い肴だ。

■刺身盛り
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 地魚だけにしてくれと頼んだ刺身がまたすばらしかった! 鯛(瀬戸内の鯛は旨いのダ)、平目、マグロ(これは瀬戸内モノではないけどね)、そしてウニ。圧巻だったのは平目だ。本当に官能的なムッチンむちむちの歯ざわりと、ねっとりとまとわりついてくる旨味。この旨味は捌きたてだと出ないはずだ。おそらく2Fの予約客のために〆てから若干のベンチタイムを置いているのではないかな。それは大歓迎である!〆たての魚は味が乗り難いからね、、、
 あと、地物かどうかはわからないがウニがまた旨かった。寿司処 匠で鍛えられているからウニにはうるさくなったと思うけど、甘くて旨くて香のよい、佳いうにであった。

 さてこうなると煮魚が喰いたくなる。めばるの煮付けを頼んだ。

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煮付けの味付けはそれほど甘くない。ご飯としてではなく一品料理として出しているからだろう。程よい醤油の塩梅がしみじみと旨い。ぼくはこの瀬戸内の食文化をおふくろからいただいているので、小骨までしゃぶって身は絶対に残さない。かくしてこのめばるも5分後には残骸と化した。

 最後に寿司で〆た。ただし、この頃にはほとんどのネタが品切れと言うことで、あまっているもので3つ握ってもらった。

■鯛、穴子、鯵
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 最初に断っておくが、寿司の技術で考えると、僕にとっては門前仲町の寿司処 匠がナンバーワンだ。しかし、地物の魚を、東京への出荷とかそういうことを抜きで食べさせる店があれば、ネタに関して言えばそれを上回ることはある。金沢の宝生寿司もそうだった。そしてこの店でもねたの旨さを存分に味わうことになったのダ。

 穴子は当然「焼き」である。瀬戸内ではあまり煮穴子をやらない。瀬戸内モノの穴子は焼きにしたときに真価を発揮する。それは香りだ。美しい香りが立つのだ。これを握りにするなんて最高ではないか。ありがたく押し頂くと、やはりあの優しく綺麗な香りに包まれた。
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 びっくりしたのは鯵ダ。アジですよ、たかが鯵。でも、今まで鯵ですごいのを食べたことが2回。一回は鹿児島の「うおしょう魚ちゃん」で、これも活け魚料理でした。もうひとつは寿司処 匠で出してくれる兵庫県淡路島沖で獲れた「釣りアジ」だ。網で獲ると身がぐしゃぐしゃになるので、一本釣りした鯵が最高なのだ。その分高いけどネ。
 で、今回めでたく3回目の感動的鯵に出会ってしまった。みよこの遠慮なく分厚い身を。
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第一、鯵っぽくない見た目である。間髪いれずに口に放り込むと、そこには至福しかなかった。これはどう考えても捌き立てだ。だからこそ、鯵とは思えない上品な旨味と香りがある。いや、これが鯵なんだな、、、今まで私の目が節穴でした。ゴメンナサイ。


 これだけ喰ってお銚子を2本とり、7000円程度だったと思う。高級割烹で飯をくってこれなら安い部類だろう。と思って翌日会った友人に報告すると、「あそこは高松じゃ高いほうだよ」と言われた。 でも、うまかったんだもーん!!

 高松駅から歩いて5分の好立地なので、うどんに食い飽きたら(そんなことはないだろうが)足を運んでみて欲しい。

2004年03月31日

さぬきうどんの名店といえば「がもう」である

01gamou.bmp 高松二日目は友人に車を出してもらってうどん詣でである。しかしさぬきうどんも本当にメジャーになってしまったものだ、、、
 僕のさぬきうどん歴はそれほど長いものではない。しかし自分の歴史に燦然と残る大記録がある。それは、「うどんを1時間半で13玉食べた」というものだ。大学院を卒業する前に、僕の農業関連の盟友である「のざけん」(現・愛媛大学講師)が興奮して一冊の本を貸してくれた。それが、さぬきうどんブームの火付け役となった「恐るべきさぬきうどん」だ。当時隆盛を誇っていたタウン誌かがわに連載されていた麺通団の連載を単行本にしたもので、すでに文庫版が出ているので、目にした方も多いだろう。

「やまけん、今、うどんが熱いで!」

「よし、俺たちも行くぞ!」

ということで、高知に実家があるのざけんが車を出し、名店を回ったのである。そのとき回ったのは、「山内」、「長田」、「緒形」(←漢字がでない)である。それぞれの店で大体あったかいの大盛りと、つめたいの大盛りを食べた。通常、大盛りは2玉である。そして長田ではあまりに旨かったんでもう一杯追加した。ということで全部数えると13玉になったのである。
 ちなみにこの時一緒に食べたのざけんは、11玉。彼は元・京大アメフト部のレギュラーである。この時はさすがに、醤油うどんで有名な緒形の駐車場で二人でぶっ倒れ、40分くらいウンウン唸っていたのであった、、、

 あんなコトはもう出来ないだろう。僕も年をとった。先日山形で9.5枚の蕎麦を食べたが、10枚に届かなかったところが限界を示している。悩ましいことである。

 その後もちょくちょく足を運んでいたのだけれども、一昨年は農業改良普及所関係で講演に呼んでもらった。その時、地元香川県の威信をかけて育種・生産されている「さぬき夢2000」という小麦の粉をいただいてしまったのが印象に残っている。これは当時プレミア粉で、製粉会社勤務の友人から「マジで分けて」と頼まれたほどだ。ご存じの方も多いと思うが、さぬきうどんの原料である小麦は、ほぼ全てがオーストラリア産である。ASWという規格にのっとった、うどんに最適チューニングされた粉が大量に安価に輸入されてくるのだ。それに対抗すべく育種されたさぬき夢2000である。これで自分でもうどんを打ってみたが、あまりに僕の技術が稚拙なので、差異までわかるもんじゃなかった。スミマセン、、、

 さてそんな感じで、行くごとに名店巡りをしていたのだが、実は一番有名店といえる店にまだ足を運んでないのだった。それが「がもう」だ。でも、がもうについてはもうここでくどくど述べるのはやめておこう。今や大ブームで、ちまたに溢れているうどん本にがもうが載らないことはないからだ。

 当日案内してくれた友人曰く「最近は観光客の方が多くて、もう地元の人がびっくりしよるわ」とのことである。そうだろうなぁ、、、
実際、うどん屋が流す排水に含まれている小麦粉が、河川の富栄養化に繋がり、汚染問題になったりと結構大変らしい。報道されない裏事情がかなりあるようだ。

 まあしかしともかくその友人も「がもうが一番美味しいよ」と言う。がもうは、完全に足踏み、手打ちの店である。最近はローラーを使ってコシをビシッと出し、機械で均一に打つ店も多い。僕はどちらでも旨ければイイと思うが、なんとなく屋号の「がもう」を耳にした時、ふんわり柔らかい手打ちイメージがあるなぁ。

 高松市内から30分ほど走り、がもうの駐車場に着く。、、、10時30分なのにすでに駐車場満杯である。店の外まで人が溢れ、ベンチなどでうどんをすする人が多い。
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「でも、回転がムチャクチャ速いから大丈夫。」

と友人が言うように、スイスイと列が進む。店内にはいるとおっちゃんが大きな羽釜でうどんを茹で上げている。このおっちゃんの生き生きとした顔を見よ!とてもいい顔、陽のパワーに満ちた勢いを感じる。この気がうどんにのりうつるのであろー。

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おっちゃんに「あったかいの大!」とどなり、うどん玉を入れた丼を受け取る。
 次に天ぷらがどーんと並んでいる中から、好きなものを乗せる。

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全部乗せたいのをやっと我慢して、げそ、ナス、ちくわ天を乗せる。そして奥のコンロに無造作に乗せられた鍋から、あったかいダシを丼にかけ、ネギを盛る。典型的な半セルフ形態である。もちろん支払いはおばちゃんにうどん玉数と天ぷらの数を申告して支払うのである。

これが僕の製作いたしましたるうどんである!

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ダシを一口すする。
ぶわっと拡がるイリコの旨み。これだ、、、瀬戸内で産湯をつかった僕には、うどんのダシといえばイリコ(煮干し)し滋味深い味なのだ。それも、ほどよい。ほっとする味だ。
うどんをすする。ほどよい角が立って、コシがあり、そしてもっちりとかみ切れる官能的なうどんがそこにあった。ここでイカげそ天をかじる。イカげそ天はたいがいの店で食べられるのだが、全国的にみても、こんなにでかいイカげそ天ぷらはさぬきにしかないだろう。これがうどんにビシッと合う!イカの風味と醤油味、そして油のコクが、淡泊なうどんの旨さを567倍に昇華せしめるのであったぁ!

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同様のことがちくわ天にも言える。関東では完全に規格外になるであろうでかさのちくわ天、これをつけないでさぬきうどんではないのであった。
 わしわしと食い進み、すぐに食べ終わってしまう。うーん もう一杯、いやもう二杯くらい食べたいよぉ できれば冷たいのと、生醤油うどんで食いたいよぉ。


 でも、ここはぐっと我慢なのだ。なぜなら、もう一軒回るからである。

2004年04月21日

大阪梅田地下街・カレー「インデアン」の謎が一つ解けた

僕のblogも、かなりいろんな人が見てくれるようになっているようだ。コメントへの書き込みも多くなり(返事できてなくてごめん)、またメールでいろんな情報を下さるかたも多くなってきた。先日も「仏太のカレー修行」というWebで、カレーを食することを修行と銘打つ方からリンクしていただいた旨のメールをいただいた。僕の大阪でのピッコロカレーvsインデアンカレー対決を見て、ご自分でも回られたそうだ(Webを見ると、その1日で5皿のカレーを食べたそうである。同類であった、、、)なんと彼はピッコロの方が好みということだ。うーむやはり人の好みは千差万別なのであった、、、

 さて僕の好みはインデアン。食い倒れの殿堂でもトップの座を保持しているといってよい。実は先日、広島にて竹鶴酒造の石川杜氏宅に泊めて頂いた帰りに、新幹線できっちり大阪途中下車してインデアンカレーを食ってきた! そりゃぁそうだ。今後、大阪を通ることがあったら何があっても万難を排して寄るんだもんね。

 そして、、、今回、とうとうインデアンの「ある秘密」を発見したのだ! というか発見した気になって興奮でしばらく何も手につかなかった。以下はあくまで僕の推察に基づく勝手な話である。インデアンにお勤めの方、もし間違ってたら指摘してくださいね。

 大阪駅に到着後、速やかに阪急梅田方面に進み、地下2Fグルメ街に降りてインデアンに直行する。もはやこの間4分弱。最短ルートはすでに叩き込まれている。

「いらっしゃいませ!」

「カレールー大盛りご飯大盛り、目玉、ピクルス大!」

「1050円になります!」

流れるような注文。食券代わりの赤、黄、緑のプラスチック札を受け取りカウンターへ座る。なぜか僕がこの店に行くと、飯びつの前に座することが多い。何度も書いているように、このインデアンカレーでは飯盛り&カレーかけ担当者がエースの位置づけだ。店はこの飯びつを中心に回っているといっても過言ではないだろう。そうした意味ではこの席がスペシャルリングサイドであるといえよう。

 残念なことに本日は僕が敬愛する「山田チーフ」がいらっしゃらない。どうやらインデアンカレーではユニフォームで階層分けがされているようで、山田チーフなど、ある程度上のキャリアになると白衣というかコックコートの上だけを羽織る形になるようだ。薄いイエローのユニフォームはその他一般見習いマイナーリーグ的な扱いにみえる。それでもイエローのトリプルAが昇格を狙い飯びつ前にいる時もある。しかし何となく彼に盛ってもらうと損をした気になるのは何故だろう?白いコックコートのメジャー盛りラー達(←造語)は、一様に少し暗いうつむき加減の表情で淡々と飯を盛る。「いらっしゃいませ」も繁忙期には言わず飯盛りカレーかけに集中している。彼らの鋭いプロ視線を浴びたカレーを食べる方がやはり嬉しいし旨いのである。
 今回は残念なことにトリプルAの青年が僕のカレーを盛ってくれた。しかし悪くない。シャコっというカレーかけの手首の返しはナカナカのものだった。

 ご飯を大盛りにすると、ルーが足りない。ご飯とルーを大盛りにすると、卵の黄身も足したくなる。そこで目玉(卵の黄身二つ)にするが、そうするとキャベツのピクルスが足りなくなる。ということで、この全部載せ的注文を入れてしまうのである。嗚呼、、、きっと計算尽くなのだろうなぁ、この価格設定。

 甘めのピクルスは、カレーのマシンガン乱射的辛さを和らげる最良の薬なので、これも「大」で頼むのが吉である。

 テラテラのカレーとご飯表面。カレーの粘度はかなり薄めだ。卵の黄身を割ってまぶしながら、ピクルスのキャベツ片とともに口に運ぶと、最初は甘く、そして一呼吸おいてタタタタン!と畳みかける辛さが口中に火を点ける。あとは一気呵成に食べるのみだ。

 さて、このカレーをいつものように美味しくいただきながら、その秘密をみてしまったのダ!
 僕のオーダーでトリプルA君がカレーを出した直後、白衣のメジャー盛りラーが出てきた(山田チーフではない)。なんだよ、おいらもこの人に盛ってもらいたかった、と思いながら、見つめるでもなくボンヤリとそのしゃもじを持つ手を見ていた。そこでまず一つ。

「インデアンのしゃもじは長い。」

そして、

「その長さは、大盛りにした時のご飯の分量に合わせて作られている。」

 これを発見した時、あまりのことに興奮し、思わず腰が浮いてしまった!思い切ってド下手な手書き色鉛筆図解でみていただくと、こんな感じ↓なのである!
 

 この長いしゃもじにご飯がフルに乗っている状況でさらにサクッと返すように盛りつける。よって、しゃもじからの盛りつけはワンアクションである。レギュラー盛りの場合は、これが若干減るのであろう。なるほど!と思った次の瞬間、彼らの仕草が気になった。
 トリプルA君、そしてメジャー盛りラーさんの双方に共通しているのは、オーダーが入ると、しゃもじを「カッカッカッカッ」と軽く突き立てている。最初は固まったご飯をほぐしているのかな、と思っていた。しかし注意深く観察していると、2004年最大の発見をしてしまったのだ!

「インデアンでは、ご飯を盛る時、しゃもじに数回ご飯片を載せこむことでフンワリとした飯盛りを実現している。」

 おそらくこれは限りなく真実に近いはずだ。言葉だけではわからないと思うので、これも下手くそ図解で示そう↓

 おわかりだろうか?数回に分けてご飯をしゃもじにとることで、ご飯の塊がほぐれて、空気も微妙に入って理想的な状態になるのであろう!

 おお なんと深いことか、インデアンの道よ!

 本当に感動してしまった。食べ終わってしばらくお冷やを飲んでじっと動けなかったほどだ。本当は、この推理をインデアンのお店の人に訊いて確認したい。いやそれどころか、インデアン礼賛の声を強くお伝えしたい!

 このblogを読んで頂いている方にインデアンカレーの関係者さんがいらっしゃったら、ぜひ私に連絡を下さい!ホントは訊きたいこと、いっぱいあるんです!
 例えばいま一番知りたいのは下記だ。

・ハヤシライスを頼むと、厨房の奥の部屋にご飯を持っていって、しばらくしてからハヤシが出てくる。一体あの中ではどんな作業がなされているのだろうか?

 うわーん インデアンの人と友達になりたいよぉ~ 阪急梅田地下街の山田チーフと話ができたらそれだけで超満足っす!どうでしょうか、私の推理?
 ま、あたっててもあたって無くてもいいんだけど、そういうことばかり考えて、新大阪~東京間はあっという間に過ぎ去ったのであった、、、

2004年05月13日

芋焼酎は宮崎ものが旨い!と思う! 日南の銘酒 京屋酒造「かんろ」

 会社設立のお祝いということで、花などを数人から送って頂いてしまった。大変に恐縮です。嬉しかった。この場をかりて御礼申し上げます。

 しかし、設立関連の手続きが面倒極まりない、、、全部お金を払って人に任せてしまえば楽なのだろうけど、、、もし読者さんに社会保険労務士さんがいらっしゃったら、お伺いしたいことがありますので連絡くださいませ(笑)

 さて、そんな中、宮崎県から素晴らしいものが届いた。

「ヤマちゃんの門出を祝って、焼酎を送ります。」

なんと、いま注文をしても3ヶ月待ちになってしまうプレミア芋焼酎「甕雫(かめしづく)」を3本もいただいてしまったのだ! 恐縮しまくりである。

 昨年は芋焼酎が大ブームになり、いろんなところに焼酎を飲ませる店ができた。芋焼酎の売り上げも飛躍的に増大し、鹿児島を中心とする産地のメーカでも、原料芋の確保ができなくなってしまうくらいの操業になって今に至っている。しかしこれはあまりイイ傾向とはいえない。だってブームだもの、、、ブームが去った後に、増設した設備の回収ができなくなっちまって廃業とか、よく聞く話である。だから、いい酒を造るメーカは生産量を変えず、品質も変えずに頑張っている。また、本格焼酎は熟成が命だから、旨くなるまでに時間がかかる。このブーム下ではその時間を十分にとれないではないか。とはいっても逆に、これまで在庫になってしまっていた焼酎を熟成ものとして売れるといういい側面もあるわけだが。
 とまあ、いろいろ言いたくもなるのだが、まあいい。芋焼酎は旨いんだから、それが広まるのはいいことだ。

 しかし!

どうしても我慢できないことがある。なぜか芋焼酎を語る時、鹿児島の蔵が中心となることが多い。というかほぼそうである。鹿児島といえば芋!町中でも酒と言えば芋焼酎が普通!だから鹿児島が本場だということに文句をつけるつもりはない。
 しかし、おとなりの宮崎にも素晴らしい焼酎がある。というか、宮崎の芋焼酎はちょっと鹿児島とはジャンルが違うもので、これはめちゃくちゃに旨いもんである。なのに、ちょっと気取った居酒屋にいくと、鹿児島ものばかりで、腹が立つのであった。

 僕が好きな宮崎の焼酎は、アルコール分がぶわっと薫るようなことはなく、飲みやすく風味を判別しやすい。鹿児島の焼酎だと風味がわからないといっているのではない。先ほど言ったようにすこーしジャンルが違うと思うのだ。

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 芋焼酎好きになったのは、忘れもしない1995年のことだ。農業情報ネットワーク大会というイベントの手伝いで、宮崎県の都城(みやこのじょう)に3泊したのだ。その時、駅前にある小料理居酒屋にふらっと入ったのだが、これがラッキー。その近辺で最高の居酒屋で、名前を「炉端焼き 明石」という。料理が最高なのだが、ここで勧められて飲んだ焼酎にノックアウトされたのだ。宮崎にはその後もかなり訪れ、県内の芋焼酎をかなり飲ませられた。

 そして極めつけの出会いが、この「京屋酒造」さんである。1999年の話になるが、人を介して、インターネットで焼酎を売りたいという話が僕に届いた。面白そうだ、ということで京屋酒造の渡邊社長に連絡を取り、お会いしたのだ。

「芋焼酎はね、今のままだと、宮崎や鹿児島の、閉じた世界でしか売れないです。そうではなくて、こんなに美味しいっていうのを、今まで飲んだことない人たちに販売していきたいんですよ。」

 全くその通りだ! ちゅうことで立ち上がることにした。僕が頼りにしているインターネット関連ビジネスの大仕掛け人である永友さん(宮崎出身である)が中心となり、当時できたてほやほやの楽天オークションで、「あなたがつくるオリジナル焼酎キャンペーン」というのをやったのだ。この元ネタは、

「うちにはね、40年ものの貯蔵焼酎(米)があるんですよ。これをプレミア商品として販売したいな、と」

という渡邊社長の一言だ。この頃はまだ10年もの以上の熟成焼酎が販売されているのをみることは少なかった。なのにいきなり40年である。我々は興奮した!ただ、普通に名前を付けて適当なラベルを付けて売っても意味がない。どうせなら、消費者が「こういうのが欲しいな」と思っているような荷姿を、一から作ってしまえばいいではないか、ということだ。
 なので、まずサイトにアクセスすると、瓶の材質、形状、内容量、ラベルのデザイン、そして商品名などについて、いくつか用意されたパターンから選んでもらい、選択率が高かったものを採用するという、完全マーケティング型の商品キャンペーンをしたのだ。これは、先の永友氏が企画・実行したもので、彼はその後もいろんなマーケティング型商品企画を打ち出し、成功を収めている。

 で、これが前代未聞の大当たりとなった。当初、オークションだから4000円くらいの値段がつけばいいだろうと思っていたのが、最高値が23000円となり、参加率、Web視聴率ともに酒商品とは思えない数値をたたき出した。
 そして、その結果でてきたデザインを付した商品「悠久の刻」を改めて300本売り出すと、3日間で売り切れてしまった。これがその悠久の刻だ↓

この瓶、磁器のもので、口を栓できるようになっているもので、最近こうしたかっこいい瓶を焼酎や日本酒に使う例をよくみかけるが、こと焼酎についてはこの商品が初めてこの形式を採用したはずだ(違ったらゴメン)。
 その後、年間200本程度ずつの限定発売をしているが、いずれにしてもすぐに売り切れてしまう。
 また、京屋酒造のBtoCサイトがあるのだが、ここでは何もしなくても焼酎が月間数百万円分も売れてしまう。その人気を引っ張っているのが、今回いただいた「瓶雫」なのだ。

京屋酒造のWebサイト
これが甕雫(かめしずく)だ!

 この甕雫、1升はいる陶器の甕(かめ)になみなみと入って送られてくる。専用の箱にいれられ、アカシアで削り出された特製のひしゃくもついてくるので、パーティなどで人気を集めること間違いない。味はといえば、飲んだことがある人は必ず 「芋焼酎とは思えないほど飲みやすい」という。 この甕雫、アルコール度数が20度なのだ。鹿児島では主流は25度だが、宮崎では20度の焼酎が結構多い。僕はどっちかといえば20度のものが好きだ。風味を中心に味わえるからだ。甕雫はどちらかといえば女性にかなり好まれやすい特質をもっている。芋が芋っぽくないデリケートな香り、そしてほのかな甘みがあるのに、辛口と感じる残り味。これをロックで出すと、芋焼酎とわからないで飲む人も多い。

 で、Webで確認していただけるとおわかりのように、甕雫の在庫がほとんどなく、予約が一杯のため、今から購入予約をしてもお届けが8月になってしまうという。そんな中、おいらは3本もいただいてしまった。俺のために飲めなくなった3名様、モウシワケアリマセン。
 でも、甕雫だけではなく、むしろ飲んで頂きたいのは「かんろ」という、京屋のメイン商品である。中でも「特撰かんろ」は、宮崎市内の料理屋の大将が「はっきり言ってこれが、宮崎焼酎のスタンダートと言える味です。」と断言していた、素晴らしい酒である。最近鹿児島の芋焼酎に飽きたという人は、ぜひ試して頂きたい。その繊細な味わいに驚倒されるはずだ。オンラインショッピングで買えるのでぜひ試して頂きたい。

 この京屋の酒は、味がいいのは当たり前で、できるかぎり自前の農場で原料芋を栽培している。僕も畑には足を運ばせて頂いているので間違いない。むろん、全量まではいかないが、相当量をまかなっているのだ。すごいことである。

 さて、この「かんろ」であるが、実はみなさんもすぐお近くで、しかも安く買い求めることができるのダ!なんと、コンビニのローソンで、酒販免許をもっている店舗だけになるが、オリジナル商品を売っているのである! それも、「かんろ 仕込み水割り」 つまり、京屋酒造が仕込みに使っている水をつかって割り水し、飲みやすくしたスペシャルな一品だ!しかもたった300円といくらかで買えるのダ!

ご存じかも知れないが、焼酎を水で割ることを「割り水」という。この割り水にもかなりいろんなテクニックがあるのだが、基本中の基本は、割り水してしばらく置いておく方が旨い、ということである。酒と水の分子構造は違うので、混ぜたすぐに飲むと、舌触りというか、喉ごしが悪く、味もトゲがあるように旨くない。これをPETなどでもいいので1週間寝かせると、すぐにわかるほど味がまろやかになり旨くなる。気の利いた居酒屋だと、割り水をしておいて、客の求めに応じて燗につけたりするのである。しかし!この「かんろ 仕込み水割り」だと、最初から割り水をして瓶詰めされている。もう旨く飲める条件が揃っているではないか!

 この商品、実はつい先日のプロレスイベント「ハッスル」を観に行った時に飲んだ。加賀谷などいつものメンバで回しのみすると、みな「おお、これ焼酎なの?飲みやすいねぇ」と驚いていた。こんなのがローソンで買えるようになったなんて、世の中もよくなったんだが、悪くなったんだか、、、
 ぜひ試して頂きたい。


 さて、冒頭に書いたように、甕雫を3セットいただいてしまった。合計3升である。とても飲みきれない。ということで、21日にムニロで行う食い倒れオフ会に1本、持っていくことにしよう。皆さんにぜひ味わって頂きたい。

 ということで、酒販店でもし「かんろ」という名前を見つけたら、即買いして損はないと、僕が保証しておこう。

2004年06月04日

予告 カクテルコンクールin神戸に行ってくるぜ

 明日の6月6日(日)、神戸オリエンタルホテルにて、全国バーテンダーコンクールがある。そう、以前告知したように、門前中町のBarオーパのトップバーテンダーである水澤君が、関東ブロック代表として出場するのである。俺は当然、応援に行くのであった。

 競技会は15時から。オーパの従業員がとってくれている最前列で見守る。この様子はもちろんレポートさせていただくので、楽しみにして欲しい。

 とりあえず食い倒れ日記読者の皆さんは、ミズリンを応援してあげて欲しい。精一杯生きて、自分を全うしてくれ、ミズリン!その姿をしかと見届けよう。

2004年06月07日

記事アップを待て! すごいことになったんだ。

 バーテンダー技能競技会、すごかったんです。
昼までになんとか書きますので、ちょっと待ってて下さいね。ちなみに本日は和歌山にいます。

真のドラマを観た!第31回全国バーテンダー技能競技会で、門前仲町「オーパ」水澤君はどう戦ったか!?(その1)

 予報に反して晴れ渡った神戸の青い空のもと、全国から集まったバーテンダーの精鋭達による技能競技会は、僕などが予想もし得ない厳しさと誇りを持って開催された。この戦いの顛末をこうして送り届けることができることを僕は誇りに思う。今回は長くなる。でもぜひ最後までお読みいただきたい。その代わり、これを読んだ後、必ずカクテルが飲みたくなるはずだ。

 のぞみの車中では、一冊の本も読まず、考え事をしているうちに新神戸駅に着いた。空は晴れている。東京で降っていた雨はどこへ消えたのか。お世話になっている熊本の農家さんからは朝、記録的な土砂降りだと連絡があったのに、なぜだろうなぁ。予報に反し晴れたのは、第二回食い倒れオフ会と同じダ!幸先がいいナと思いながら、駅に隣接する新神戸オリエンタルホテルへの渡り廊下を歩く。と、和歌山から来た津田ちゃん、そして地元神戸の人間であるニシガイチと落ち合う。二人ともよく上京する人間であり、そしてそのたびに僕は門前仲町のオーパに連れて行き、カクテルを飲んでいる。協議会の観戦とパーティへの出席で12,000円のチケットも「おう、そんなもん観られるのも最初で最後やろ、高くないわ」と言ってくれたので、一緒に観戦することにしたのだ。

 バーテンダー競技会というイベントにいったいどれくらいの人が集まるのかと思っていたが、新神戸オリエンタルホテルの9Fに上がると、もう人いきれで一杯だ。酒販メーカの試飲ブースが並び、ドレスアップした人々が行き交う。いつもの黒Tシャツ&ジーンズの僕は急いでザックからジャケットを取り出した。

「以前は内輪の大会だったんですけどねぇ、、、一昨年くらいだったか、横浜のパシフィコで開催した時、2000人くらいお客様が来てしまって、大変だったんですよ。」

とは水澤ちゃんの言葉だったが、僕のような一般でも観戦できるようになった今年、本当に沢山の人がこの競技会を観ていた。

 開場に入るすでに、ジュニアカクテルコンペティションが行われていた。ジュニアとは、26歳までのバーテンダーのコンクールだ。ステージの上にバーカウンターを模した演台が設置され、そこで大会が用意した道具を用いてカクテルを作り、技術を競い合うのである。彼らの対面には厳正な審査を行う審査団がいて、一挙手一投足を観、できあがったカクテルを一口すすってジャッジをしているのであった。

 braオーパ銀座本店と門前仲町店のスタッフが、ありがたいことに僕らの席を最前列から3番目に取り置いてくれていた。最前列にはおびただしいビデオカメラの群れ。若きバーテンダーがシェイカーを降り始めると、一斉にカメラのシャッターが切られている。ものスゴイ雰囲気である。

 のっけからこの風景にびっくりしたのであった。なんと立派な大会なのだろう!僕はこんなに厳正に厳かに整然と進行される会だとは思っていなかった。バーテンダーはこの舞台で戦うことを夢見ながら毎日、シェイカーを振っているのだ。まさに晴れ舞台である。

 さてこの競技会の厳正さは、手渡されたブックレットを開くとかいま見ることができた。「大会マニュアル」と称して、進行と規則が記載されているのだ。この厳正さスゴイ。「服装は白コート、黒酢本、黒靴、黒蝶タイ、白ワイシャツ。」から始まり、4ページに渡り競技の内容が記されているのだ。

 どのような競技なのか、かいつまんで説明しよう。参加するバーテンダーは20名。この全国の各ブロックで開催される予選大会を突破してきた精鋭たちである。競技は学科部門、フルーツカッティング部門、創作カクテル部門と課題カクテル部門の4つで構成される。これらを総合して高得点を勝ち得たものが、優勝することができる。
 課題カクテルは協会が決めたカクテルを作り競うものだ。今年はなんとマティーニだ!水澤君が作るカクテルの中でも僕が大好きなマティーニなのだ。これは吉兆と思っていいのではないだろうか。使用する機器、酒の銘柄等はあらかじめ決められている。例えばマティーニの材料は、

・ウィルキンソン・ドライ・ジン47.5°…45ml
・チンザノドライ・ベルモット …15ml
・レモンピール

と、銘柄までか使用量まで定められているのだ。この分量が非常に重要になってくるのだが、それは後述する。

 創作カクテル部門は、各々が生み出した創作カクテルを競う。こちらは材料に制限はないようだが、時間は6分。課題部門のマティーニは5分で仕上げなければならない。これらは、デコレーションの美しさ、味覚・香りの評価、シェイキングまたはステアの技術をみるテクニカル評価、そして総合的な態度をみる主観評価という内容でジャッジされる。

 このように、ルール、会の進行、審査の厳正さ、全てが一流のコンクールであったことに圧倒される。まさに檜舞台なのだ。

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さて、ジュニアのコンクールが終わり、いよいよ本番である競技会が始まった。照明が落とされ、入場曲が鳴り響く中、白いジャケットを着た一軍が入場してきた。オーパのスタッフによると「水澤はエントリナンバー2番で、一番最初のクールです」という。この順番にもかなり運があるようで、barオーパのオーナーである大月さんは「もうこのくじ運引いた時にヤバイって思ったよ!」と言っていた。
 しかし水澤君は堂々と入場してきた。出場者の中では背も高い方で、何より自信に満ちあふれている。壇上にあがり、歩を進める。

 と!
 ここでハプニングが起こった!水澤君の手が、出場者のナンバープレートを載せた置き台にあたってしまい、プレートが落ちる!慌てる水澤君。かけよる職員。大笑いである!
貴重なショットを掲載しておこう↓

 いきなりのこの事態に、大月さんの心中幾ばくか。水澤君、治してから列に並び直したが、超微妙な顔である。でも、この一事をみて僕は確信した。
「これで彼は緊張しない!」
最初ででっかいことをしてしまって、今は頭の中が空っぽの真っ白になっているだろう。けど、この興奮状態が過ぎると、軽い躁状態になり、自信が出て落ち着くはずだ。そして、善し悪しにかかわらず、審査員に印象づけているはずだ。吉兆である。

 競技は、ステージ上に4台の演台が設けられる。課題部門が右、創作部門が左側で2名ずつ同時進行で行われる。審査員団は課題部門と創作部門で違うので、ステージの双方で同時進行しながら競技が進行するのだ。
 水澤君はエントリナンバー2番なので、いきなり創作部門の第一組で登場だ。名前が呼ばれ今度は何も倒さず(笑)入場。各々、台上の道具、グラス類を自分ように位置調整し、後ろに下がって合図を待つ。

「それでは、始めて下さい。」

 戦いが始まった。創作部門、課題部門共に、開始直後に行う動作が、審判用に5客用意されたグラスを冷やすための氷の投入だ。一つ一つの動作が非常に競技会向けにセッティングされている。つまり、店では通常みない、軽くデフォルメされた美しい所作である。自動車の免許を取る際の試験で、指さし確認とかしなければならないようなものなんだろう。

 水澤君の創作カクテルは、ご存じの「スプリング・ヒル」である。まさしく春の丘に暖かなな風がそよいでいくような、桜の香りのするカクテルである。
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■スプリング・ヒル
ホワイトラム・バカルディ 30ml
桜リキュール・ヘルメス サクラ 10ml
洋梨シロップ・モナンボワールシロップ 10ml
フレッシュレモンジュース 10ml
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 水澤君の動作にはよどみが全くない。かなり落ち着いて作っているようだ。あたかも門前仲町のカウンター内にいるような、堂々とした所作だった。

 シェイキングの瞬間になると、カメラマンが立ち上がりシャッターを切り出した。

ちなみに、関東ブロックから出場する選手は、やはり全国的にみてもレベルが高いのだそうだ。バーの店舗数などが関係しているのであろう。やはり競合が多い環境であればあるほど、レベルも高くなるのであろうか。その代わり、関東からは4人出場している。ライバルは数多いのだ。

 そんな調合中の水澤君の動画を撮影している。回線に余裕のある方はぜひ観て欲しい。
■スプリング・ヒル調合中の水澤君(16MB)

 優雅に、堂々と、水澤君の創作部門が終了した。時間にして6分。最後に瓶や器具の見栄えを整え、台を拭いて一礼する。ここであることに気づいた。水澤君の演技からは、器具がグラスやシェイカーに触れる「カチャリ」という音が目立って聞こえてこなかった。それが彼の印象的な優雅さに大きくつながっていることは明らかで、他の出場者からはしきりにカチャリという音が聞こえていたのだ。このことは、競技が進むにつれ確信的にそう思うようになった。
 ともあれ、創作部門は、とても安心して観ていることができた。彼の退場後(何も倒さなくてヨカッタ、、、)、9組の演技を経て、次は課題部門。僕のフェイバリットであるマティーニだ。

(続く、、、本日中にアップするゾ!)

真のドラマを観た!第31回全国バーテンダー技能競技会で、門前仲町「オーパ」水澤君はどう戦ったか!? 完結編

(23時45分 とうとう完結まで書きました!)

(その1から続きます。読んでない人はこちらからGo!)

 水澤君の課題部門の時間だ。ステージ向かって右側で演技が始まる。マティーニは、以前にも書いたとおり彼の得意中の得意種目だ。カクテルの基本といえるこのマティーニ、おそらく他の出場者も拮抗した実力だろう。

 この審査で重要なのが、「適正な分量」だ。商売としてカクテルを出すのだから、人数分のグラスに注ぎ終わった段階で、飲み物が余っているようでは無駄になる。かといって必要な分量が調合されていなかったら、それは「お出しする商品にならない」ということだ。だから、マティーニについては、5客のグラスの他に一つ小さなグラスがあり、余り分を注ぎ黙視できるようになっているのだ。これが実にわかりやすくて、みんな足りないと言うことはおおむね無いのだが、大きく余す人がたまにいる。

 が、しかし!われらが水リンは驚いたことに一滴の余りもなくフィニッシュした!観ていてこれほど誇らしく思ったことはない。ここでも回線余力がある人には、マティーニ調合の様を観ていただこう。

■マティーニ調合の動画(36MB)

 観客も食い入るように一人一人の演技を見つめている。10組が2部門を行うので、タップリ2時間かかる。その間、ずぶの素人が観ていても、だんだんと傾向がつかめるようになってくる。まず、味はともかく審査員の主観評価というのが重要らしい。これは、いわゆるバーテンダーとしての所作、雰囲気だ。傾向としては皆、一つ一つの動作をきっちりキメる。中には力が入りすぎていると思うような人もいる。動作ごとにビシッと力を込めているのだが、まるでボディビルコンテストを観ているような気になってしまう。その点、水澤君の動作はとても自然だ。動作を停めずに決めているのだ。まるで流れるようなフォームだ。これは、動画を観ていただければおわかりの通り。どうひいき目を抜いても、他の出場者たちの中で、これほどスムースで大きく優雅な動きは皆無だった。

 オーパの若手、内藤君が言う。

「ぼくらは、水澤が、この日本で一番と言っていいくらい練習していることを知ってますから。」

そう、営業時間が終了して夜の2時や3時から、練習を行うのだ。どれくらい練習をするのだろうか。開催一週間前に僕が飲みに言った時に水澤君は言っていた。

「久しぶりに整体に行ってきたんですが、先生からもうボロボロ、酷使しすぎだと言われました。」

 彼は間違いなく命をすり減らしながら、一つの競技に向けて自分を高めている。それを門仲に集う面々は間近で観てきた。そして、僕たちの目にはどう見ても、20名の中で水澤君の動きが最も美しい。それは、彼の高い精神性とプロフェッショナリティが醸し出しているものであるはずだ。

 2時間かけて20名のバーテンダーの創作・課題部門の実技が全て終了した。これから審議の時間に入り、会場はパーティ用に模様替えとなる。ぼくらはテラスで神戸の青空と風に吹かれながら、ぶらぶらと過ごした。

 会場の横には、午前中に観客無しで行われていたフルーツカット部門の作品が並んでいる。これは、当日に使用するフルーツが提示され、それを使ってフリーテーマでカッティング・デコレーションを行うものだ。これがまたスゴイ。スーパー向け青果物の仕事をしている津田ちゃんは、「すっげぇ参考になる!」と、全てのカットを写真に収めていた。

 その隣には、ジュニア・カクテル・コンペティションの出品作品が並べられている。これが圧巻だ!バーテンダーの卵らしい若い人たちが、真剣なまなざしで気になるカクテルをチェックしている。推測だが、このコンクールの観戦者の5割程度がバーテンダー業界、3割が酒造メーカ・輸関連業者、2割が一般という感じだろう。一般の目にさらされながら、バーテンダーとしての技能を磨く登竜門。実に素晴らしい大会だ!
 臨席していても、ピンと張りつめた緊張感、トレーニングをしてきたということが、所作からわかる出場者達の態度が伝わってくる。

「ああ、こんなにすごい大会やとは思ってなかったけど、これは来て良かったわ、、、」

そう言いながら、パーティの開始を待つ僕らだった。。

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 午後6時、パーティが、ジャズバンドの演奏で幕を開けた。しかし我々はきもそぞろである。すぐに発表してくれればいいのに、延々とアトラクションが続く。アトラクションの前に来賓や後援の紹介があったが、ご多分にもれず、長々とつまらない話をする、場を読めない輩がいて、遅々として進まない。乾杯になったとたん、会場は弾けた。
 ジャズバンドの演奏を聴きながら、料理に群がる。オーパ一団が占拠したテーブルには、オーナーでありトップバーテンダーである大月さんがいる。全国のバーテンダー業界で知らぬとはいないほどの有名人であり、この大会のやはり過去優勝者である。それに加えて、昨年度の大会でも、オーパ銀座店のカツマタさんが優勝している。つまり、もしかして今回水澤君が優勝したら、オーパ史上3人目、2年連続の受賞ということになるのだ。オーパ、恐るべしである。
 とはいえ、大月さんは明らかにそわそわしている。時折「胃が痛いっすよぉ」と言いながら、過剰なトークを繰り広げる。
 こんな写真↓もその発露だ。(頭に乗っけてるのは伊勢エビの殻)

そこから、本当に緊張しまくっているんだということが伝わってくる。僕ら観戦者はそれを見守るしかない。

 水澤君がやってきた。やるだけのことはやったという顔だ。


 これから、出場者全員のカクテルが振る舞われるという。一つ一つをまともに作って分けてたら、数百人分になって大変なので、小さなプラカップに分けて供される。プラカップにいれたとたん、駄菓子のような色になってしまってチープにみえるが、、、

 他の出場者の作品を飲んでみて、正直「水澤君のスプリング・ヒルが一番旨い」と思う。何だろうか、他の作品は何か強く突出しているものがあったり、いがらっぽかったり、もしくは脆弱だったりする。

 ある均等な空間を創りだしているのは、スプリング・ヒルだけだった。ただし、その「尖りのなさ」が、もしかしたらおとなしめと映ってしまったら、、、と思うと、非常に不安になる。審査員の先生方の傾向や如何に。


ダダダダダダダダダダーーーーン!

さて
成績発表と表彰が始まる。全員が息を呑んで見守る。とはいっても最初は、ジュニアの式だ。ジュニアは出場者も数十人と多く、どちらかというと今後を励ますような意図なのだろう。ブロンズ賞10人、シルバー賞5人、ゴールド賞3人というように多数の人間に賞が授与されていた。優勝したのは、たしか宮城県の仙台にあるバーの人だったと思う。地方からの出場者が勝った。いざ勝負の場では、東京も地方もないのだ。

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 さあ、いよいよバーテンダー技能競技会の結果発表が始まった。さすがにジュニア大会と違い、賞は何人にも与えられるものではなく簡潔にまとめられている。


・ベストテクニカル部門…シェイキング等の技術
・ベストフルーツカット賞部門…フルーツカット技能
・課題部門…マティーニの課題実技
・創作部門…創作カクテルの課題実技
・総合得点…全て通じての賞


20人がステージ上に出てくる。水澤君の顔は緊張のあまりか、こわばっている。そして、それまで談笑していたbarオーパの面々も口数が少なくなる。大月さんは「のどが、、、胃が、、、」とつぶやき、ビールでしきりに喉を潤している。

もう、とにかく一番最初に総合優勝者を言ってしまってくれぇえええという気分である。

「それでは、最初にベストテクニカル部門の受賞者を発表します!」

これは一人だけの受賞だ。テクニカル、、、これがナンバーワンということは、「技能」という意味においては国内随一ということになるのだ!果たして、、、

 ダラララララララ(ティンパニの音)ララララララ ダーン!


「エントリーナンバー2番! 東京都新宿支部の水澤さんです!」


うおおおおおおおおおお
 やったぁあああああああああ
  オーパの面々が拳を突き上げる!
  とりあえずベストなテクニックを持っていることは立証されたぁああああ!

沸き返るオーパの面々。しかしここで僕は少し不吉な気がしていた。早い内に入賞するというのは、よくない傾向、、、その後、最高の優勝をどっかに持ってかれちゃうんじゃないの?と下世話な勘ぐりが。

そう思う暇もなく、次の部門だ。

「次に、フルーツカット部門の発表です!」

実はこのフルーツカットについては、津田ちゃん曰く「水澤さんのはとっても綺麗で細やかなんだけど、少しこじんまりとしてるわ。それがマイナスにならないといいんだけど、、、」とのことだったので、ちょっと心配なのダ!

これは三人の受賞。まず三位には愛媛県からの女性バーテンダーが受賞。そして、、、

 ダララララララララララララララララララララララ ダーン!

「二位、エントリーナンバー2番! 東京都新宿支部の水澤さんです!」

うわああああああぉおおおおおおおお
 フルーツカットも二位入賞! やったぁ!!!!!
  あまり期待してなかっただけに、これはかなり好予感がする!
   二つの賞に入選したのである。これで、かなり上位を狙えることは間違いない!


そして、、、次に、課題部門の発表だ。僕の大好きなカクテル、マティーニを一番美味しく創ることができるのは、20名のうち、誰なのか!?

これも三人の受賞。
 ダララララララララララララララララララララララ ダーン!


「二位、エントリーナンバー2番! 東京都新宿支部の水澤さんです!」

おおおおおおおおおおおおおお
 マティーニも2位だ! ほ、本当か? これで全ての賞に入賞しているのは彼だけだ。ということは、、、

 そう、水りんが2位に入った時に1位だった人も、他の賞は取っていないことが多い。そう、コンスタントにこれまで全ての入賞しているのは、水リンしかいないのだ。


「次に、創作部門の発表です!」

 これは、水リンにとっては一番欲しい部門だろう。なんと言っても創作カクテルが評価されるかどうかが、メインイベントだ。

これも三人の受賞だ。
 ダララララララララララララララララララララララ ダーン!

一位、エントリーナンバー2番! 東京都新宿支部の水澤さんです!」

だぁああああああああああああああ
 創作部門は、全国でトップということだ!!!
   やった!ベストテクニカルと、ベスト創作を獲った!それ以上にどんな評価があるというのか!

もう、僕らのいるオーパの面々が集うテーブルでは、お祭り騒ぎだ。対照的に、水リンの顔はドンドンとこわばっている。あまりのことに、もう制御できないのであろう。


さて、、、
ここまできたら、あとは総合得点しかない。どうなったのか。
お願いだ。ブロードバンド回線を持っている方は、この動画、40MBくらいあるけど、絶対に観て欲しい。歴史的な瞬間の動画なのだから、、、


「それでは、第31回バーテンダー技能競技会、優勝者の発表です。」

 ダララララララララララララララララララララララ、、、

「総合優勝は、、、エントリーナンバー  2番! 水澤さんです!」

やったぁああああああああああああああああああああああああ!!

両の拳を突き上げる面々。対照的に、一言声をあげた後、無言で水澤君をみる大月さん。そこへ、周りの関係者が握手を求めに来る。
 画面に映った水澤君の顔は堅くこわばっている。自分が今いる状況がつかめないような顔である。

 会場では爆発が続く。関西地区での大会のため、関西出身者への応援が一番多いのはいたしかたのないことだが、それでも関東代表の水澤君に温かい拍手が送られる。

 僕は、歴史的な場面に立ち会うことができた。本当に感無量だ。友人に連れられていったバーで旨いマティーニを飲んだ。以後、少しずつ調合を換え、自分好みのマティーニを作り出すのに水澤君はずっと付き合ってくれた。その彼が、、、なんと日本一になってしまったのだ

 それも、ぶっちぎりの優勝である。総合的に観て、全ての部門でベスト3に入っている(というかほぼ1位と2位)ということは、歴然とした実力差があるということだ。

 水澤君へのインタビューが始まるが、彼は固まっており、ろくなことが話せない。ただし、次の言葉をはっきりと会場に伝えた。

「自分一人ではこの舞台に立てなかった、、、多くの人に助けられてココにいることができるんだということを実感しています、、、」

 チームbarオーパは、最強だ、、、本当に素晴らしいではないか。若手バーテンダー2人が、水澤君が沢山もらいすぎて持ちきれなくなった賞状や盾を持つため、助っ人に走る。口々に「来年からどうしましょう、、、やりにくいですよ、、、」と言いながら、その目は引き締まっている。

 と、受賞インタビュアーが美しい女性を壇上に招く。
「実は、水澤さんの奥様も、日本バーテンダー協会の会員で、レディース大会の優勝経験者です!」

 なんとそうなのだ!美男美女カップルは、実力もまた持ち合わせた大変な二人だったのである。
 奥様にマイクが渡される。
「、、、嬉しいです。彼が本当に苦しみながら練習をしているのを間近で観ていましたので、、、本当に良かった、、、」
この時、水リンのこわばった顔が一層歪み、少し涙が伝ったようにみえたのは僕だけではないだろう。世界一いい男だよ、水リン!

 テレビインタビューを受ける水リンを激撮する。これが日本一のメダルだ!

 そろそろ緊張も解けたらしく、水リンの顔にも笑顔が戻ってくる。もう、彼は雲の上の人である。今を逃してツーショットのチャンスはないだろう!ということで、しっかり撮らせてもらった。まごうことなき、日本一のバーテンダーとのショットである。僕はこれを宝物にしたいと思う。

 若手ちゃん達から、「やまけんさん、二次会もぜひ」というお声がけをいただくが、これは内部の人たちだけでやった方がいいのではないかと、僕ら三人は先に出る。もう、夢遊病者のような気分だ。すでに21時。3時からずっと観ているのだ。足はむくれ、腰が痛い。けど、しかし、興奮しすぎていて、このままでは眠れないだろう。繁華街に出て、韓国料理屋で餃子と冷麺をつつき、ジンロを飲む。
 そうこうするうちにまたもやオーパ若手から連絡があり、僕らも二次会に参加させていただくことに。ありがたい。

 二次会席上には、東京の新宿ブロックの面々が。みな、水澤君を囲み、しみじみと語らっている。しみじみとしていないのはオーナーの大月さんで、冗談ばかり言って笑っている。でも、この人がこの日、周りで一番気を揉んでいたことだろう。

 僕はなんと水リンの奥さんの隣に座らせていただいた。ヨーコと呼ばれる美しい奥さんは、日本酒ぬる燗を頼み、ぐびぐびとコップに手酌で飲んでいた。
 オーパはおそらく現時点で最強のバーテンダー軍団である。実は、前大会のチャンピオンのカツマタさんも、オーパ銀座店のバーテンダーなのだ。これが、その貴重なツーショットだ(いや、別に貴重ではないか、同じ店だもんね)。

カツマタさんは今年、ラスベガスで開催される世界大会に出場する!
そして、、、来年は、フィンランドのヘルシンキで開催される世界大会に、水リンが出場するのだ!

 ああ、、、
 今度はヘルシンキか、、、応援旅費、かかりそうだなぁ、、、

まさに望外の慶びを味わいながら外に出る。断続的に降っていた雨がいつのまにか上がり、彼を祝福している。日本一のバーテンダーと握手をすると、いつものスマイルが戻っていた。

「明日はやすむんでしょ?」

「いえいえ、月曜日から出ますよ!」

 このblogを読んだ貴方、ぜひ門前仲町に足を運んで欲しい。そして、カウンターに陣取ったら、一言こういうことをお奨めする。

「日本一を獲った創作カクテルを。」


 おそらくこのように動画や画像を沢山使って、翌日に情報を配信できたのはこのblogが一番最初ではないだろうか。blogをやっていて本当に良かった。歴史的な一夜の末席に、座ることができた。長い生涯、こんなに感動できる夜をあと、何回体験することができるだろうか。楽しみになってきた。

2004年06月23日

宇都宮餃子のコアでディープな深部へと降り立った。 「香蘭」

 今年度の出張第一弾、栃木県の農協組織に行って来た。今回は先方も、

「山本さん、ホームページみましたよ、、、打ち合わせ終わったらご飯食べにいきましょう」

とお誘い頂く。先回感動した「正嗣(まさし)」を超えるディープな店があるというのだ。これは楽しみだ、、、

 JAのビルにて打ち合わせご、そそくさと書類をたたみ、ビルを出る一行。先ほどまでの打ち合わせよりもかなりテンションが上がってきていることがわかる。大通りから一本裏に入ったところに、なんとも怪しげなピンクの看板がみえてきた。

「山本さん、ここが地元民の私らとしては一番お奨めの餃子屋さんなんですよ。」


■餃子の店「香蘭」
住所:栃木県宇都宮市本町2-5
電話:028-622-4024
営業時間:16:00~21:00
定 休 日:日曜日、祝日、水曜日


 運の良いことに、僕らが一番最初の客となった。店は本当に小さい。カウンターが10席程度、その先が土間になってはいるが、テーブルは置いていないらしい。その土間に餃子の餡を皮に包む台があり、お母ちゃんがひたすら包みをやっている。

 品書きをみると、「焼き」と「揚げ」の二種類である。正嗣では焼きと水餃子だったが、ここでは揚げというのがあるんだな。それは、食べたこと無いなぁ、、、

 カウンターの向こうに白髪のオヤジが立つ。今回連れきてくださったT氏がオヤジと親しくお話をしている。

「このヤマモトさんは沢山食べるから、焼きダブルに揚げダブルでお願いします。僕たちは焼きと揚げを一人前ずつね。」

と、T氏がニッと濃い笑みを浮かべる。望むところだ!けどこの後、郷土料理も食いに行くって言ってたんだけどなぁ、、、

 さてオヤジが行動に出る。白木の板の上に整然と並んでいた生餃子をフライパンに置いていく。

火はかなり強火らしく、バリバリと焼き音が鳴っている。しばらくするとアルミポットの水をフライパンに投入。ものすごいバリバリ音が炸裂するところを、すかさず蓋をして蒸しに入る。

「ここは全部手作りですよぉ。」

どうやら自動餃子包み機とかもあるらしいのだが、香蘭では断固として使わないらしい。

焼きの間に酢、醤油、ラー油を調合。宇都宮ではラー油は自家製が普通らしい。この店のはややあっさりめのラー油だ。

 しばらく間をおいて、オヤジは二度目の注水をする。またもやバリバリと凄まじい音がする。チラッと覗いたのだが、テフロン加工の深めのフライパンに、厚手のアルミ蓋を数台コンロに仕掛けているようだ。注水すると油が飛び、引火して炎がブワッと立つ。相当な火力で火を入れていると思う。

「はい、焼きダブルね!」

これが香蘭の焼き餃子である。そのたたずまいは惚れ惚れするほどに美しく背筋が伸びている。

 表面の焼き色の見事さと、側面の皮が油で極く薄い黄色になりかけている。すかさず醤油をつけずに食べてみる。底面の芸術的な焦げ目がバリっと強い食感を残す中、野菜たっぷりの餡からフンワリとした香りが上る。餡は極めて上品。強い香りや味はせず、あくまで優しい味である。

 タレに浸して食べる。今度は控えめの餡に色が付き、餃子としての存在感が全面に出てくる。皮は厚手というわけではないのに、しっかり感が強い。いわゆる「主食としての餃子」の王道はこれであろう。

「旨い!」

旨いのである。他に言うことはない。

「でしょー、やっぱりココが一番ですよ。JAグループの利用率、高いですよぉ」

とT氏が嬉しそうに仰る。

さて
焼き餃子がオヤジに仕込まれている間に、奥の方で盛大なジュワジュワという揚げ音がしていた。揚げ餃子である。焼きを1人前食べ終わるタイミングで、ものすごい外観のそいつが出てきたのである。

「はい、揚げダブルね~」

みよ、このスパルタンな外観を!

昔、小学校の給食で出てきた揚げ餃子とは一線を画す、ハードコア系餃子がそこにある!箸でつまむと、協力に脱水されており、しっとりした焼き餃子とは正反対の硬質な感触が伝わってくる。

と、オヤジが、新参者の僕に声をかけてくれる。

「塩で食べてみるか?」

おお!それはぜひ試してみたい! オヤジさんが厨房奥の奥さんらしい方に声をかけると、こだわりっぽい塩の瓶が出てくる。それを小皿に入れ、つけて食べてみる。

まず、盛大なカリっという歯触り。低温で火を通した後、一気に高温で脱水をしているのだろうか。そして、外側にまぶされた塩味が効き始めると同時に中の餡の香りが流出してくる。醤油ダレとは違い、皮のカリっ感が最大限に引き出される塩の選択はベストと言える。

「う、旨いっすよ!こんなの初めて!」

と叫ぶと、

「若い人には塩が人気なんだよ。タレにつけると皮が柔らかくなっちゃうからね。」

と優しく教えてくれる。オヤジ、超人気名店で30年以上の歴史があるのに、余裕の優しさである。奥様も非常に上品。いい店とはこのように、謙虚なにこやかさを持つ店のことだ。暖かい。
 ちなみに店は僕らが入ると同時にドンドンと人が入ってきて、満員に。裏からも人が立ち並び行列が出来ている。子連れの主婦が土間で座りながら待っていたり、非常ににぎやかだ。

 と、JAのT氏が「あっどうもぉ!」とお辞儀をしている。後で訊くと、「栃木県のJAグループの本部長です、、、」とのこと。その本部長さんはお土産で数人分を焼いてもらっていた。これから飲み屋に餃子を持ち込んでつまみにして食べるのだそうだ。そんな技があったのか、、、

「餃子1人前250円で安いからねぇ、そういう飲み方する人は利口なんだよ!」
とオヤジが笑う。

いや、またもや感動した! 宇都宮の餃子は本当に郷土食である。
しかし、店を出た後にT氏がしみじみと語ってくれた。

「ウチでは、親爺が水餃子しか好まなかったんですが、冬の白菜を使った水餃子は最高ですよ!餃子をやる時はご飯も出さず、餃子だけ!山本さんにも食べさせてあげたいなぁ、、、」

ぜひ!ぜひ!ぜひ食べさせてください! 宇都宮餃子、お店とは違う世界が、家庭に拡がっていそうである。4人前の餃子を平らげて1000円ナリ。(T氏にご馳走になってしまいました。ありがとうございました)

 まだまだ知らない食文化があるんだなぁ、、、素晴らしいことだ。

2004年06月25日

豚丼王国帯広の奥深さは底知れない 炭火焼き豚丼「とかちっこ」

 最近、豚丼の知名度が向上してきていると感じる。が、その多くは残念ながら牛丼の吉野屋が出している豚丼(ぶたどん)のせいである。北海道とくに十勝の人間にとっては、あれは「豚すき焼き風煮丼」だ。豚丼という料理は、フライパンか網で、タレを絡めて焼いた豚肉を熱々ご飯に乗せたものを言うのだ。それ以外のものは豚丼ではない。

 さて過去このblogにも数々掲載している帯広の豚丼だが、今回また素晴らしい店に連れて行って頂いた。そして今回も懲りずに豚丼屋二軒をはしごした。おそらく今回の物量的には、たった2軒で、これまでの食い倒れ人生史上最も困難な道だったかも知れないので報告しよう。


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「こないだヤマちゃんが来たのは3月だから、この景色はびっくりでしょ?」

と岡坂さんが言うように、帯広の初夏は一面の濃い緑だった。ビート(砂糖大根)、大根、じゃがいもが収穫の時を待っており、その傍らで今年は大豊作になりそうな小麦畑が拡がっている。幕別町は国内有数の大型産地なのだ。

 昨年、農林水産省の実証実験で長いもを実験的に出荷してもらった。その長いもだが、こんな畑で栽培しているとは、読者のみなさんもしらないだろう。鉄の支柱にネットがかけられ、それに長いものツルがからんで葉を茂らせ、太陽光と積算温度によって根部が肥大していくのである(専門用語でした)。これが長いも畑だ。

 畑を視察し、事務所で販売関連の戦略の打ち合わせをする。飛行機の中まで持ち込んで作った資料は概ね方向性として受け入れられたようだ。

「じゃあ、ヤマちゃん、混まない時間のうちに行くかい!」

「よしゃ!今日は連れてってくれるんですよね、『とかちっこ』!」

そう、岡坂さんとノムさんから、耳にたこができるほど訊いていたのだ。新しく店を出した「とかちっこ」というチェーンの厳選豚丼というのが、やたらめっぽうに旨いのだと。分厚い肉が炭火で焼かれ、ドドンと乗ってくるという。俺の食欲は瞬間的にたぎり立ったのだ!

 幕別町から30分ほど車を飛ばし、帯広の西側にある新興住宅街のあたりへ。

「このへんはさぁ、ほら、あの黒い豚丼の鶴橋があるところだよ。」

おお!そうか、あの真っ黒ド迫力豚丼の鶴橋の近くか!それならばとかちっこで食べた後に鶴橋にはしごするか?と思ったが、さすがにとかちっこの大盛りを食べたらそれは無理だろう。

 と、大通り沿いに、新築ログハウス風のイマドキな外観に目立つ看板の店が。

「ああ、あった、あれだよとかちっこ。」

なんだか予想とは違って、かなり商業的なチェーン展開をしそうな店構えである。というか、実はすでにチェーン展開をしているのであった。帯広でガソリンスタンドなどを展開する燃料会社がこのとかちっこチェーンのオーナーなのだそうだ。なるほどなぁ。

店内に入ると、過剰なまでに愛想の良い「いらっしゃいませぇ~!」がこだまする。ホールに3人、厨房に3人程度で、店員はみな若い。そして、お客様への対応は非常にしっかりとしており、好感が持てる。こういう社員教育の行き届き方に、さすがにSSを展開している企業が出社しただけはあるなと感心。

 しかし!残念なことが判明した。なんとこの日からとかちっこは、開店1周年記念キャンペーンに入り、メニューが限られてしまうのだ。

「普通の豚丼と厳選豚丼の二つのみで、肉増しとかはできないんですよ、大変申し訳ありません。」

うーむ、、、口には出さなかったが、岡坂さんも俺も、ここですでに「次は鶴橋だ」と思っていたのだった。ま、それはともかくとかちっこの豚丼である。

「じゃあ、厳選2つ。」

「はい!」

さて豚丼には大きく分けて、炭火で網焼きするか、それともフライパンで焼くかの2派がある。前者だと、網焼きの過程で油が落ちるし、タレは焼きながらつけるのと、ご飯に乗せた後にタレをかける方式になるので、見た目はゴージャスだが以外にあっさりしているのが特徴だ。一方フライパンだと、肉を焼きながらタレを煮詰め、肉に浸透させるので、コッテリした味になる。ここの豚丼は炭火焼き、しかもオープンキッチンで客前でジュウジュウと焼くのであった。

若手の店員君が豚肉をドカッと出してくる。実にきめ細かいサシの入った肩ロースで、みているだけで旨そうだ。厚みも十分で、1cm程度ある。

これを、タレの入った雪平鍋に一回つける。肉のまわりにタレを絡めて、炭火網の上に載せた。瞬間ジュワッといい音がする。

炭火コンロにはふんだんに炭が熾っており、幅も広い。この方式だと、一度に時間差で数人分が焼けるので効率がいいと言うことに気づいた。フライパンだと、一回作っているロット分以上は、中身を空けないと焼くことが出来ない。網だと、端っこで次のロットが焼けるのである。うーん 効率優先するなら網焼きがよいのだな

 さて焼き網の上で一回ひっくり返し、ほどよく火が通ったら再度タレの鍋に絡ませ、さらに焼く。この辺、ノウハウがありそうである。焼きながら、眼鏡の店員君がぼくらにフランクに話しかけてきてくれる。

「東京からいらっしゃったんですか、ぜひご感想を書いていってくださいね。」

かなりフレンドリー度が高い。店員には、あきらかに商売上のテクニックとしてではなく、本当に真摯な態度を感じる。これは帯広の他の店でも感じることだ。総じて十勝の飲食店の店員さんの態度は佳い

「でしょぉ。僕らは十勝から出たくないもんね。大抵のお店で、肉だけもう一枚乗せろとかワガママ言っても、やってくれるもん。その分いくらとられても文句言えないけどサ。」

とは岡坂さんの言だ。

 さて豚丼は最終局面に入った。肉が焼き上がり、鉄板で厨房に運ばれた。中ではほどよい大きさに切り分けられ、どんぶりご飯に乗せられている。そして最後にタレをかけて、運ばれてきた。

これがとかちっこの厳選豚丼(通常価格1200円)だ!


実に旨そう。肉の圧倒的迫力が素晴らしい。もうすでに極限状態で待っていたので、何はともあれ肉にかぶりつく。

「!」

この豚は旨い! すんごい豚肉である。むっちりと柔らかく油が甘く溶ける。そして素晴らしくジューシーだ。タレはあっさり味で、豚の風味を殺さない。しかし、炭火焼きで焦げた部分はタレの濃さが出ており、食べながら食欲が増進されてしまう。

「岡坂さん、これ旨いっすよ!」

「でっしょお。山椒かけるとまた旨いよ。」

山椒をかけてみる。これまた甘いタレに渋い「麻」の痺れ感と香りが絡んで旨い!ご飯の盛りは少なめ(ヤマケン比です)なので、瞬く間に食べ進んでしまう。これは本当に旨いなぁ、しかしお腹一杯になろうとすると厳しいな。肉増しにして、ご飯も大盛りにして1500円くらいかなぁ。

「肉をもう一枚載せると、がつーんと来るんだけどねぇ。あと、この店はやっぱり普通の十勝の人間の感覚からすると高いよ。高いけど旨い。だから、お金じゃなくウマイの食いたいという人は来るね。ま、ヤマちゃんには足りないでしょ。もう一軒行こう。」

よっしゃ!
店のアンケート用紙にはぼくのwebアドレスを書いておいた。次にいったら一番大盛り食べますよ。

そして、焼き手の店員君に礼を言って店を出る。最後まで店員一同、ナイス笑顔だった。佳い店でした。


 そして、、、驚愕の後編へと続くのであった。この後、僕は人生最大の豚丼に出会うのである。

2004年06月26日

豚丼王国帯広にて、超特大豚丼と対峙した。 帯広「鶴橋」再訪


 「とかちっこ」の豚丼は期待通り旨かった。あの豚肉は素晴らしい。仕入れの良さとオペレーションの組み立ての勝利であろう。店員の教育も行き届いており、今後も伸びるに違いない。

が、しかし!
一周年記念キャンペーンのため、肉大盛りができなかったため、我々(俺だけか)の腹は満たされていないのであった。

「じゃあヤマちゃん、鶴橋で黒い豚丼食べるかぁ?」

「モチロンですよ岡坂さん。俺を誰だと思ってるんすか!」

というわけで、場所的には近くにある鶴橋に向かう。鶴橋は、以前のこのエントリで紹介した、驚愕の黒い豚丼を供する名店だ。運ばれてくると、初めての人は誰もがびっくりするような漆黒の闇が、ドンブリ上にブラックホールのごとく展開している。恐る恐る黒い塊を口に運ぶと、意外や意外、焦げ臭さはほとんど無く、濃いカラメル味に甘い醤油ダレの煮詰まった旨味、そしてタレに煮詰められた薄切りの豚肉の食感が相まって、素晴らしい濃厚濃口旨味世界が全面に拡がるのである。ちなみにここの豚丼はフライパン煮詰め系だ。

 外見上はなんてことのない定食屋風の店に車を止めると、厨房の網戸から一重まぶたの親父がぬっと顔を出し、「もうちょっと白線に沿って停めてくれるかい、後からの人が入りにくいから」と親父が言う。皆さんも鶴橋に行く際には、白線に沿って駐車をお願いします。

 この店は超人気店なのに、親父とお母さん、そして息子さんとその奥さんくらいしか労働力がない。だから、着席してから出てくるまで15分は待たされるので、できるだけピークタイムをずらして行くのがよい。今回は12時前に入店できたが、それでも店内には数組の客が豚丼を待っていた。

「まあ、ここで大盛り食えばヤマちゃんも収まるでしょ。」

そうですね、、、と品書きを観る。

何か、違和感がある。

なんだろう、、、 はて、なんだろう、、、

あ!

こないだきた時には無かったメニューがある!

「岡坂さん、なんか、大盛りの上に『超特大』ってのが新設されてますよ!」

「ええっ?  、、、ホントだ、、、1600円の超特大か、、、観たこと無いぞぉ。」

そう、前回来たのが2月の終わりだが、この4ヶ月の不在中に、「超特大」がメニュー化されたのである。お母さんが注文を取りに来た時に訊いてみた。

「あー、あのね、実は知る人ゾ知る裏メニューだったのよ。それを表メニューにしようかってことで始めたの。一日一人は必ず食べていくわねぇ。」

そうか、そうだったのか!やはり限定されたハイソサエティ向け裏メニューがあったのだ、、、これは是が非でも食べなければならないだろう!

「じゃあ、俺行きますよその特大!」

「ほんと?じゃあ、頑張って、、、」(ニヤッ)

と怖い微笑を浮かべてお母さんが厨房に戻った。もう後戻りはできない。岡坂さんは当然普通盛りだ。

「俺、豚丼をハシゴするなんて初めてだよヤマちゃん。」

地元民でそれはいかんでしょう!私がやります。ちなみに豚丼のハシゴは、これまでの帯広滞在でもよくやっている。ただ、1時間程度は空けてのハシゴが多いので、こんなに短いスパンでやるのは初めてだ。

 しかしここからの待ちが長いのであった。フライパンの面積は限られているし、一つのフライパンで火加減が違う2つの炒めを同時に行うなんてことはできない。まだ僕らの前のお客さんにも豚丼が出ていないのである。この日も15分以上待つわけだが、今回はやけにドキドキしている。期待通りの内容だったらいいけど、それより少なくても多くても怖いなぁ、、、
 厨房を観ると、棚にドンブリが並んでいるが、大盛り用の大きなドンブリがあるかと思いきや、同じ大きさのものしかみえない。うーんどういう盛りつけなのだろうか。もしかして限りなく縦に積み上げているのだろうかと、あれこれ思いながら出てくる時を待つ。

 そして、、、

「はいおまちどおさま。       頑張ってね!


これが、超特大である(右側のが、岡坂さんが頼んだ普通盛りだ)。ドンブリは、この店のスタンダード丼の2倍あると思って良い。そうか、大盛りは1.5倍、そして超特大は2倍なのだな。漆黒の、テラテラと輝きを放つ闇が丼空間に拡がっている、、、そして、普通盛りの上に乗っているグリーンピースは2粒だが、超特大は4粒である!ここもきっちりと2倍だったか。

おばちゃんがドンブリをテーブルに置いた瞬間、店内の他のお客達の視線が一気にこちらに集中し、ザワっとする。↓みんなこっちを観てる画像。

「なんだあれ?」「あんなでかいのあったのか?」ちょっとだけ優越感の瞬間である。しかし、これを維持するためには食いきらないといけない。もし残してしまったら、「ケッ」「やっぱり関東のヤツはサ」などと言われるのであろう。それは食い倒ラーとしては絶対的に避けねばならないことである。

観念して、あまりに変色している肉口と飯をグワッと箸でつかみ、口に放り込む。瞬間、あの濃厚なカラメル味と醤油の芳香がドワッと拡がる。

「旨いがなぁ~」

旨い!やはり鶴橋の漆黒の豚丼は最高だ!黒いタレが飯に絡んでいる部分を口に入れるだけで、暴力的に濃厚なカラメル醤油香が俺の油断した鼻孔をつんざくのである。間違いなくタレご飯だけで丼が一杯食べられる!

ましてや肉の味の濃さはグレイトフル・デッドである。やや薄切りの黒く染まった肉は、豚肉の風味というよりはタレの風味に強制変換された上で、なおかつ肉としての存在を誇示している。しかしこれ、肉だけで何枚乗っているのだろうか。まさしくこれはいつまで食べても終わらない物語~ネバーエンディングストーリー~ミヒャエル・エンデが書いた「虚無」とはこの漆黒のドンブリ空間内にあるのではないか!(←言い過ぎです)

「旨い!どんどん喰えるなぁ、俺、完食宣言を出しときますよ!」

と、ふと岡坂さんをみる。額に汗がにじみ、呼吸が荒くなっている。うーむ この世界に引きずり込んでスミマセン。

旨い、旨いと快調に喰い進む。しかしあと1/3という地点に到達し、いきなりズズーンと来た。俺は悟った。満腹中枢とは量のみに反応するわけではないな。味の濃さにも刺激されてしまうのではないか。 これだけ濃い味のタレを、このドンブリ一杯で何デシリットル摂取していることになるのか。そして1合半はあろうかという大量の白飯。味の濃さと分量のダブルパンチが、これまでにない強烈な満腹感を感じさせる。ヤバイ!

 そう思った瞬間、人間の心とは不思議なもので、絶望感がサーッとホルモン分泌のように身体中を駆けめぐる。軽くゲップが出るが、100%タレの香りである。食道のかなり上の方まで、タレご飯と肉片が胃袋への順番待ちをしているのが感覚的に分かってしまう。

「俺も、ここまでか、、、」

そう思い下腹に手をやった時、ベルトとジーンズのボタンを緩めていないことに気づく。そう、デジカメや携帯をジーンズのポケットに入れているため、いつもよりきつく締めていたのであった。あれっと思いベルトを緩める。途端に胃が蠕動(ぜんどう)し、詰まっていた管が開通したかのごとく、タレご飯と肉片が下方に大移動を始めた。

これで、また喰える、、、

30秒で、さっきの半分喰った時くらいのキャパシティに戻った。人生、なんとかなるものだなぁと、この時はしみじみと実感してしまった。食い倒れ人生に汚点を残さずに済みそうだ、、、

 あとは一気呵成である。あくまで綺麗に、最後の米一粒まで噛みしめていただいた。

 完食である。この、タレのカラメルまみれのドンブリと、割り箸の長さの比で、容積が想像できるだろう。人生33年やってきたが、まさしく最大の敵であった。しかし、週刊少年チャンピオンの学ラン暴力漫画風にいえば、

「タイマン張ったらダチ」

である。食べ終わった今、この超特大には愛情すら覚えた。僕好みの白みそのなめこ汁を美味しく飲み干し、茶をすする。岡坂さんはもう汗びっちょりである。

「ヤマちゃんやったなぁ、、、農協のみんなにも言っておくよ、、、」

「あらぁ、全部食べた?やったわねぇ。」(店のお母さん)

「じゃあ、次はサラダボールに入れて出そうかねぇ!」(同・親父さん)

このお二人も、まさか僕がここに来る15分前にとかちっこの豚丼を食べてきているということは想像もするまい。ここまでする十勝人はいらっしゃるであろうか。ふっふっふ。

 今回ばかりは、自分を褒めてあげたい。よく食った! しかし、また一つ勉強になったことがある。

「人は、極限状態まで満腹になると、昏倒してしまう。」

長いも畑への視察に向かう車の中で、僕は岡坂さんに運転してもらいながら、ほとんど記憶がない。胃に身体中の血液が総動員されてしまうに違いない。本当に、ぐっすりと眠ってしまった。

鶴橋超特大豚丼で、すっかり胃袋が拡張されてしまった。これ以降、帯広滞在では僕は未曾有の快進撃を行うことになる。さらに続く帯広編を待て。

帯広の夜はまだまだ続くよ 牛トロ寿司 吟寿司再訪、そしてそれは起こった。

 さすがの僕もとかちっこと鶴橋の豚丼(しかも鶴橋は超特大)を食べた後は、抜け殻である。身体の全ての機能は胃袋に集中し、意識朦朧であった。JA御用達のホテル「パコ帯広」(←こんな名前だが決してラブホではない)で腕立てをなんとか100回するが、どうも集中できない。シャワーを浴びて一睡し、夜の部に備えた。

 夜は一次会はJAの皆さんと、そして二次会からは明日の午前中に視察を行う気象情報ロボット「ウェザーバケット」を開発した、アグリウェザー社のご一行と一緒になる。さらに、嬉しいことに、この食い倒れ日記の読者である「十勝やっち」君が、ジョインしたいと申し出てくれ、二次会から合流することにしたのであった。十勝やっち君は、姉妹blog「俺と畑とインターネット」に数回コメントを残してくれている。

 さて、一次会はJAとあるスーパーのバイヤー様ご一行に混ぜて頂いて、居酒屋「たけとんぼ」で飲みである。

帯広極悪コンビである「岡坂&ノム」が復活。しかしこの日はノムさんの毒舌はあまり聴けず。
 帯広だけでなく、十勝の飲食店のレベルは高い。地元の人にとっては居酒屋の普通のつまみだというが、かなり旨いものが揃っている。

■北海シマエビの塩ゆで

「これがさ、安くてウマイのさぁ。気づいたらドンブリ一杯食べちまうよ。」

というのがこの北海シマエビだそうだ。確かに味が濃く、旨味タップリだ。

■時しらず鮭の刺身&ルイベ

本土ではあまりありつけない時しらず鮭も普通に出てくる。サシが入り旨い。でも岡坂さんは「そんなん旨いかぁ?だまされてっぞ」と言うんだが、、、

■アイヌネギ(行者ニンニク)酢みそ和え

行者ニンニクはアイヌネギという。山菜なのだが、こういった店で出てくるのは栽培種だろう。しかも「これは冷凍物だ。香りが抜けてる。」とのことであった。しかし俺にはこれでも十分旨かったりするのだが、、、

■ラーメンサラダ

このラーメンサラダ、ラーメンがゴマ風味のドレッシングというかタレに野菜と一緒にまぶされてくる。冷やしラーメンみたいなもんだが、旨い。十勝の居酒屋ではそうめんサラダなどこうした麺を使ったサラダがよく出てくるらしい。そして旨い!

■芋だんご

つぶしたジャガイモに小麦粉か片栗粉を混ぜて円くだんごにし、揚げたものだ。芋餅などという名前で他でも食べられるが、さすがは十勝のじゃがいも、旨い。中にチーズが仕込まれており、かつバターが載ってくる。

「ヤマケン、だんごを割ってさ、そのバターを中に入れて溶かすんだよ!」

とノムさんから激が飛ぶ。これがまた旨いのだ。

■目抜(メヌケ)刺身

このメヌケの刺身が最高にグンバツであった!歯触りがシコッシコッとしており鮮度は抜群。独特の溶けるような風味と粒状感のある身。これで500円程度とは、どうなっているんだろう。やっぱり移住するか?

■時しらずハラスの塩焼き

もう言うことはない。

一次会はこんな感じで料理が出てきたが、おればかりがバクバク食べていたような気がしないでもない。一期一会だからなぁ 食べ物は。

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さて
岡坂さん&ノムさんコンビと、バイヤー軍団ご一行と別れ、二次会へ。ウェザーバケット社長の横山さんが連れて行ってくださったのは「番々亭」だ。

ここではまたもや豚丼を食った!もうこの頃になると胃袋もリフレッシュされておりばっちりだ。

「ここの豚丼はねぇ、結構美味しいと思うんですよ、ヤマケン。」

横山社長が仰るとおり、実に滋味深い、柔らかい味の豚丼であった。甘めのタレがふっくらと厚めの柔らかい豚肉に絡んで非常にナイス。いや、帯広の居酒屋はどうなっているのだろうか。本当にはずれがないじゃないか。

この店では、ガーリックラーメンという、ニンニクチップがバカスカ入ったラーメンがまた旨かった。脱帽である。東京の居酒屋は帯広のサービスレベルを見習って欲しいと思う。

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 さて、ここからが本題だ。
番々亭を出た後、横山社長が「さあ、ヤマケン、行きますよぉ~」と言う。そう、帯広にきたらここに行かねばならない! 牛トロ寿司の吟寿司である。牛肉を寿司にするという趣旨はいろんなところでみかけるが、旨いと思うものは少ない。しかしここの吟寿司の牛トロ寿司は、間違いなく旨い!しかも牛トロ以外のネタも実に最高。中でも穴子とシャコは絶品中の絶品である。それは過去のエントリにも書いた通りだ。陸の国というイメージの強い帯広にあって、最高の寿司がリーズナブルに満喫できる、素晴らしい店なのだ。

十勝やっちも含め5人で入店。カウンターに座ることができた。店に入り、「どうも!」と声をかける。僕は気に入った店があると、2回目から厨房に声をかけることにしている。向こうが僕を覚えていようといまいと関係ない、僕から愛を投げかけたいからだ。今回もその通り。

しかし!

大将以下、店の人達の僕に対する目が優しい。なんだろう?まだこの店に来るの4回目くらいなんだけどな。

と、大将が口を開く。

「インターネット、観ましたよ!」

おおおおおおお
大将がカウンターの下から、僕の食い倒れ日記の、吟寿司の項をプリントアウトしたものを出してくれる。

「息子が見つけてね。プリントしてもらったんだよ。書いてくれてどうもありがとう!」

厨房の奥さんらしき女性も御礼を言ってくださる。嬉しいなぁ、、、こういう時が、「書いててよかった」と思う瞬間である。この日本という国、恥ずかしがり屋が多いためか、お店の人に「美味しかった!」と伝えることをする人が意外に少ない。思ったことを伝えるというシンプルな行為が、店をハッピーにさせ、もっと旨いものを食べさせたいという動機につながるはずなのだ。食い倒れ日記の読者は、積極的にお店の人に「美味しかった!」を伝えるようにして欲しい。もし美味しくなかった時は黙って立ち去ろう。

いやしかし吟寿司の大将が観てくれたのは嬉しい。大将も喜んでくれ、いつもの超光速握りテクニックが炸裂しまくりだった。

「1分間で12貫握ったことがあるからねぇ!」

と、いつもよりも饒舌に握りまくりである。

■穴子

この穴子が僕は大好きだ。北海道産の穴子ではないだろうが、焼きの技術とタレが絶品だ。僕の名前(山本謙治)と一字違いの大物演歌歌手がこれを18貫食べていったのもわかる気がする。

■シャコ

ふっふっふ、、、観てしまった。ネタケース内にある大ぶりの殻付きシャコをさばくのかと思いきや、冷蔵庫からシャコッと違うシャコを出してきた。ネタが違う瞬間。密かに心の中で微笑む時である。

この芸術的なシャコとタレのコンビネーション。実はどんな茹で海老よりも旨いと思うのは僕だけではあるまい。

「う、旨いっす、、、」

地元民十勝やっちも感動している。

さあそして牛トロだ。牛トロは、握りと巻きがある。どちらも風味が変わって旨いので、双方食べるのが吉である。ビニールシートに丁寧にラップしてある薄切り肉を切り分け、秘伝の味噌をシャリに塗り込み、そして牛肉を握り合わせる。

■牛トロ寿司&巻き

帯広に来てこれを食べなかったら後悔すること間違いなしだ。勝手ながら、食い倒ラー御用達の帯広三大名物の一つに数えさせて頂きたい。三大名物とは何かって?食い倒れ日記読者の皆様ならおわかりであろう、「豚丼・インデアンカレー・牛トロ寿司」である。


 そう言えば店の奥に、こんな画伯っぽい人との写真が飾ってある。眼鏡かけているのは大将だ。

「これは18歳頃だねぇ。その頃から店やってたんだよ。有名な美人画の○○○○センセイが来店してね。その時、ベレー帽かぶって寿司を食べてるから、俺が『センセイ、寿司食う時くらい帽子脱いだらどうなのよ』って言ったんだ。そうしたらセンセイ怒ったのか、なんなのか。絵を描いてくれたんだよね。若いヤツに説教されて、いまいましいのと快いのと、一緒になっちゃったんだろうな。」

そう言ってみせてくれたのが、この店のお土産寿司をつつむ紙などに使われるこの絵だ。なるほどすごく風情がある。そんなストーリーが、心地よい。

気持ちよく食べて、気持ちよく飲んだ。大将とガッツリ握手もした!

それと駆けつけてくれた十勝やっち、ありがとう!

横山社長様、ご馳走になりました!

本日はこれにてバタンキューだったのであった。明日もまた帯広なんである。

2004年06月29日

帯広にも生ラムジンギスカンの名店があるのだ! 「白樺」で7人前食べた。

 さて 帯広二日目は、午前から午後にかけて、気象情報ロボットである「ウェザーバケット」の現地視察だ。

 このバケットは、通常なら200万円くらいする精密な気象情報ロボットを30万円にダウンサイジングした優れもので、太陽電池で自家発電して動作し、情報を無線で200m飛ばせるという凄まじいものだ。また、リアルタイムの気象データをネットワーク上に配信することで、日本中のバケットのデータを基にした気象予測などが可能になるという、Linux的な非常に面白い気象情報システムなのだ。すでに、三浦の長島農園に配備されているのは、2月頃の過去ログにあるとおりだ。

 バケットを販売しているのはアグリウェザーという、北海道の江別にある会社だその社長である横山さんは、北海道の開拓心と良心を双方持ち合わせた尊敬すべき方だ。大手の気象情報サービス企業の支部長をやっておられたが、自分の信念に反する仕事はできないと、独立をして作ったのがこのウェザーバケットなのだ。この詳細については近いうちに兄弟blogである「俺と畑とインターネット」に書いていくつもりである。

 で、それらの視察をしながら、昼食。帯広から芽室に向かう道すがら、あちこちに「ジンギスカン」の看板がみえる。実はこの時点で、「今日はジンギスカンだな、絶対」とヤマを張っていた。もう腹はジンギスカン待望状態である。

 しかし! 違ったのだ。車は芽室と帯広の間くらいにあると思われる国民宿舎に入っていった。

「ここのレストランが美味しいんですよぉ、、、どこかの一流ホテルのコックがいるんです。」

そうか、早急にお腹のモードを変えねば!と努力。「コロボックル」というそのレストランはたしかに国民宿舎とは思えないクオリティの高さであった。

■豚のコートレット(カツレツ)

ランチとは思えぬ造りだった、、、タップリのオイルでパン粉焼きしたコートレットは、断じてカツではない!ホテルのフレンチの王道を行くような料理であった。

こういう料理に油控えめはいけない。主婦と料理屋の違いは、油や砂糖を思い切り使うか否かだけなのだ。

■デザート
それと、ランチなのにデザートも出色のできばえであった。

アップルパイはきっちりと焼かれているのである。コーヒーと共に、これだけで500円取っていいぞ。


という感じではあったのだが、何かやはり物足りなさが残る。柔らかく談笑するみんな。しかし、前日に鶴橋の超特大豚丼で拡張された胃袋にはあまりにも少ない。

車に乗り、移動する。津田ちゃんが急遽、早めに帰らねばならないということで、帯広空港に向かう。

と、そこで横山社長がニヤリとした声で僕に声をかけたのダ!

「やまけんさん、白樺がありますよ、し・ら・か・ば。寄ってきます?どうします?」

おおおおおおおおおおおおお
生ラムジンギスカン「白樺」である!
この白樺は、帯広空港の食堂「白樺」ではないのでご注意! 帯広近辺に住む者であれば誰でも知っている、ジンギスカンの名店である!
僕はJA幕別の人に連れてきてもらったのだが、あの札幌の名店「だるまや」と同等の旨さでびっくりしたものだ。以来、再訪のチャンスをうかがっていたのだ。

しかーし! 寄ってる時間あるのだろうか?

「空港への道のりを考えてもまだ間に合いますよぉ。どうします?」

車内の視線が僕へ集中しているのがわかる。オトナとしての対応は、

「はは、何言っちゃってんですか、もうお腹一杯ですよ。空港に急ぎましょう!」

ということであろう。
でも俺には無理! 無理ムリムリムリムリ無理!

「じゃあ、二人前くらいつついていきましょうかぁ!」

ええええ まだ食べるのぉ という車内のざわめきをヨソに、車は駐車場へと吸い込まれた。

■じんぎすかん 白樺
北海道十勝郡帯広市清川町西2線126番地
0155-60-2058
11時~17時
定休日:月曜日

着座するとあの白樺ジンギスカン鍋が鎮座ましましている。

このプレート、盛り上がった筋のところに穴があいているのに、なぜか油がテーブルに落ちたりしない、不思議な鍋だ。そしてしっかりと白樺の刻印顔されている↓

品書きはシンプルだ。基本的にジンギスカンと飯、野菜しかない。ジンギスカンを頼むとタマネギがついてくるので、それで十分だ。ここではとにかく肉を食べよう。

「じゃあ、とりあえず6人前持ってきて!それとご飯、ご飯食べる人いる??? 俺だけか!じゃあ一つご飯!」

皆の顔に、6人前って誰が食べるんだ、、、?という疑問マークが点灯している。いや、この○人前ってのは実はフェイクだ。一人前がそんなに多くないから、6人前くらいでちょうどいいはず、、、と思ったらこんなに出てきた。

「多いじゃないですかヤマケン!」

う~ん確かに計算違い。けど、観てくださいこのラムと思えないピンクの美しき肉肌を!旨そうでしょう、、、

ここのラム肉は本当に臭みなど全くないのだ。本州では喰えない羊である。これで食べられない人はどこへ行っても羊を食べられないのではないだろうかと思うくらいだ。

鍋を熱く焼き、肉をガンガン載せていく。

ジュワワワと瞬間的に肉が焦げる。紅一点の鈴木女史が「焦げちゃうわよ」と仰るが、僕は少々は焦げ目を付けた方が好きなのだ。肉のタンパク質が焦げることで変化し、旨味成分が多量に感じられるようになる。

生ラムジンギスカンは、モミダレに肉を漬け込まないので、焼いた肉をタレに付けて頂くのが基本になる。このタレが店の味を決めている。

白樺のそれは、フルーツタップリの甘いまろやかなタレだが、若干の酸味とニンニクが効いており、最後まで飽きさせない。このタレだけご飯にかけて食べてもいいと思うくらいだ。ああ、書いているうちによだれが出てきた。


とりあえずみんな食べないから僕がガンガン食べる。この食べっぷりについて、同行者(僕の対面で、最後まで箸も握らずじーっと僕の食う姿を見ていた)の津田君が、彼のblogでこう評してくれているちなみに彼のblog「父親的生活」は非常に面白い。僕はまだ結婚すらしていないのだが、将来参考にしようと思っている。

ガンガンガンガンガン食べる。いつの間にか肉が無くなったので、2人前追加し、ご飯ももう一杯たべる。同行のヤナさんとDさんが一口ずつ食べていたので、全部で8人前中の7人前を僕が食べた計算になるだろうか。

「ごちそうさまでした!」

皆さん拍手をしてくださる。鶴橋豚丼効果てきめんである。胃袋が巨大化しているのであろう。いや実に旨かった。この後、帯広空港で津田ちゃんを送り、その後、六花亭の美術館を見物。アグリウェザー一行と別れを告げて、次なる地、富良野に向かう。

 富良野でもとても素晴らしい最強の出会いが待っていたのだった!続きはまた。

12:02 | Comments (14)

2004年07月01日

富良野はスゴイところだった! カレーファンよ「唯我独尊」のソーセージカレーを食べに行こう!

 いや、びっくりした。浅薄であった。富良野というところは、ドラマのロケ地になっているだけの上っ面ばかりな場所かと思っていた。謹んで取り消そう。富良野には素晴らしき食の守人達が居る。


 帯広で白樺の生ラムジンギスカンを7人前食べて腹が落ち着いた(?)ところでアグリウェザー社ご一行とお別れし、レンタカーで一路、富良野へと向かう。

 そもそもこの出張は、富良野にカレーを食べに行くというところから始まったのだ。覚えているだろうか、「唯我独尊」のカレールーのエントリを。ある日、仕事関係で訪れてくれた某社のD黒さんが、「山本さん、カレーがお好きなら、富良野の「唯我独尊」が一番ですよ」と初対面の僕に言うのだ。その名前は知っていた。僕の人生最高といえる蕎麦と、素晴らしい夕張キングメロンを生産する、農家として僕が信頼する岩崎さんの奥さんが、札幌の大丸で開催されていた物産展で唯我独尊のカレールーを見つけて、僕に強烈に勧めてくれたのだ。しかし、僕はその時カレー腹になっていなかったので、「ふうん」と思って通り過ぎた。そのエピソードを伝えると、なんとD黒さんは、数時間後にカレールーを持ってきてくれたのだ!

「銀座に、富良野市のアンテナショップ『富良野彩館』があります。そこで買えるんですよ!食べていただきたくて、持ってきました。」

その日の夜に早速カレーを作り、いたく感心したのであった。素晴らしく旨いのだ。非常に複雑な香りと旨味。固形ルーでここまでやるか!という味だった。虚飾を廃したパッケージ(というかラップフィルムで包んでいるだけ)がまたよい。
 その際に、D黒さんと「ぜひ、富良野に行こう!」ということになったのだ。なぜかというと、D黒さんは、この唯我独尊というカレー屋にかれこれ20年前から深く関わっているという。名物マスターともずっと家族ぐるみの付き合いだそうだ。

「ぜひ、山本さんを紹介したい!」

「俺もぜひ食いに行きたいですよ!ルーでこんなに旨いなら、そこが作るカレーを直に食べてみたい!」

ということで、スケジュールを取り始めたのだ。無論、遊びだけで行くわけにはいかない。帯広の出張と兼ね合わせて、日程を捻出した。ようやくカレーにありつけるわけだ。


 帯広から富良野へは、鉄道で行くよりも車の方が効率的かもしれない。予定していた時間よりも早く出たので、景色を楽しみながら揺られて2時間半程度の旅路だ。北海道といえば札幌・夕張・帯広しかしらない僕には初めての風景が拡がっている。美瑛の丘も綺麗だったが、富良野に入ってからのなだらかな丘陵風景は、初めてなのにノスタルジックになれる景観だった。

「僕が学生時代、まだそれほど富良野がメジャーでなかった頃に北海道を旅行したんです。まだこんなに道路も整備されてなかったので、レンタル自転車での移動は大変でした。唯我独尊はその頃から知る人ぞ知る店で、僕はバイトさせていただいたんです。その時から、マスターの宮田さんの強烈なパワーと人柄に魅せられて、気づいたら20年経っていたんですよ。」

 まだ僕はその宮田マスターにお会いしていないから実感がわかないのだが、どうやら凄まじいパワーを持つ人らしいのだ。

「地元でも非常に有名人で、実はしばらく前に市議になりました。なので今は市議会の仕事をしながらカレー屋もやっているので、若いスタッフを育成するほうで頑張っています。カレーの唯我独尊だけではなく、もう一店舗、地ビール館というのもやっていて、ビール醸造をしているんですよ。だから凄まじく忙しくしているんです。」

 有名カレー店に地ビール醸造&販売、そして市議。凄まじいバイタリティである。こういうのは話を訊いていてもよくわからないもので、実物にお会いすると一気に「おおお この人かぁ」と得心に至るものだ。もうすぐ会える。
 富良野市街に入り、商店街の一角にいきなり、ボロボロの小屋のように見せた戦略的空間があった。

「ここが唯我独尊ですよ!マスターは夜にならないと来られないと言っていましたが、先にカレーを食べていましょう。」

車を降り、入り口に至るまでの間にすでにタダモノではない感が漂っている。扉を開け、中に入ると、フランクな格好の若いスタッフに混じって、口ひげを蓄えた壮年のかっこいいオヤジが居た。

「おおお D黒ちゃん、早いじゃないのぉ!」

「マスター、もういらっしゃっていたんですか!」

その人が、強烈無比なパワーを内包する宮田さんだったのだ。

(続く  秋田からの帰り便内で書きます)

2004年07月06日

富良野はスゴイところだった! 唯我独尊の燻製と地ビールは実に旨いのダ!

 唯我独尊のカレー大盛り&普通盛りを食べて大いに感激したが、この後また地ビールが待ち受けている。宮田マスターが展開する地ビール館「富良野地麦酒館」に行くのだ。マスターも「後から行くよ!」と仰るので、D黒さんと二人で先に出て、ビールをいただきながら待つことにした。

「いや、すごいパワーですね宮田マスター!」

「あの人柄だから、味方が全国に一杯いるんです。ま、その分、敵も多いと思いますけど、憎めないひとですから、大体はだれでも味方にしてしまうんですよ。」

まったくその通りである。

富良野市街から車で5分とかからない場所に到着。

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■富良野地麦酒館
http://www.yuigadoxon.com/page004.html

〒076-0034 北海道富良野市北ノ峰町20-29
電話: 0167-22-5599
Fax:0167-22-1630

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ここは大型ペンションか?というくらいの大きな作りの店にはいると、エントランスに唯我独尊マークのビール瓶が並んでいる。

地ビールは、一時ブームになって雨後の竹の子のように醸造業者が現れたが、だんだんと落ち着き淘汰され、本当に旨い地ビールだけが残るようになってきた。唯我独尊の宮田マスター級のひとであれば、絶対に旨いビールを飲ませてくれるに違いないと思う。

 二階に上がり、ログハウス調のテーブルに通される。奥の方にはなんと座敷もあり、地元客がひっきりなしに訪れている。人気店である。

「ここは、カレー屋と違って燻製をメインにした料理が人気なんですよ!」

とD黒さんが言う。メニュを観ると非常に安い。燻製の盛り合わせが1500円、各種サラダなどが600円。

「これで、一人では食べきれないほどドーンと盛られてくるんですよ!」

もうすでにカレー大盛り&普通盛りを食べてきているので、軽めにしておこう。燻製の盛り合わせと豆のマリネ、そして豆腐とジャコサラダをオーダーした。

ビールは3種、「輝(Ki)」、「濁(nigori)」、「闇(yummy)」とある。それぞれの漢字で分かるとおり、濁りは酵母が残った白濁系ビール、闇は黒ビールだ。当然、それぞれを飲むことにする。


「輝」は通常のピルスナータイプだ。クリアですっきり、辛口の喉ごしなので、スターターによい。

「あ~旨い! 僕はここのビールは、東京のレストランにも通用すると思ってます!」

いや、全然通用するでしょ! ちなみに業務用販売もしているので、飲食店の方はまず通販で買うなりして味をチェックして欲しい。銀座の富良野彩館でも買えるはずだ。

さて、豆のマリネが運ばれてくる。こいつが実に旨い!

マスターは大阪で料理を勉強していた後、富良野に戻ってカレー店を旗揚げしているのだが、実に腕前のスゴイ料理人である。市議もやったり、人的ネットワークの中心にいたりというのもスゴイと思うが、何よりまず料理人として一流だ。ビシッと味が決まっている。タマネギとワインビネガー、オイルのシンプルなドレッシングなのに、玄妙な甘みを感ずる。翌日マスターに訊いたら、「いや、砂糖とかは使ってないよ!」とのこと。うーん これ、旨い。

そして、燻製盛り合わせが出てくる。1500円でこれは安いだろう!

数えてみると10種類の燻製が乗っている。ソーセージ、チョリソ、白いウインナー、レバー、ロース、ベーコン、、、どれもこれも一つとして同じ味がないのだ!これらに自家製味噌マスタードをつけながら食べると、これは死ぬかと思うほどに旨い。

これら燻製に合わせたのは「濁」だ。

酵母の香りがプンとするこのタイプが僕は一番好きだ。酵母の癖と燻製の強い個性が重なり合って、至極絶妙になる。

唐辛子とニンニクの効いたチョリソは、パキッとした食感で、強めの燻製と中身の味の濃さがたまらない。

サラミには丸のままの粒胡椒が仕込まれていて、その断面がビビッドだ。サラミ自体の濃厚な味わいは、口の中に滞留させるとジワジワと燻製味を染み出させる。

そして出色のできばえと思ったのが、このロース部の燻製。柔らかく、滋味タップリ。部位によって燻製の温度・煙の強さを細かく替えて、それぞれの持ち味が最大限に引き立つようにしているのである。うーむ 最高である。

そんな調子でついつい飲み過ぎたが、11時になってもマスターがやってこない。きっとカレーの仕込み指導をしているのだろう。

「先にマスターの家にいって、奥さんとお茶でも飲みながら話してましょうか。」

店を出て、車に乗ると、偶然マスターが後ろから到着。

「先に帰るかい?あとで追うからさ!」

D黒さんの運転で宮田家へ。市街地からそう遠くはないが、ずいぶんと森の中に分け入ったところに、本当にペンションぽい一軒家が建っていた。数匹の犬たちと、フレンドリーな奥様が我々を迎えてくれる。

「まあD黒さんいらっしゃい! 山本さん初めまして!」

心地よいもてなしを受け、風呂に入り、そして僕は簡単に眠りに落ちてしまったのだ、、、

(まだ続く)

2004年07月09日

こんなに旨い納豆があったのか! 富良野編完結 「富士食品」

 よく「やまけんさんは何が一番好きなんですか?」と訊かれるのだが、その質問に答えるのは難しい。だってその時々で食べたいものが違うのだもの。けれど、「無くなっては困る食べ物」なら即座に回答可能だ。それは納豆。この世に納豆ご飯が無くなったら生きていけない。

 納豆にはいささかこだわりがある。一番好きなのは、水戸のとあるメーカが製造している「水戸黄門納豆」という商品だ。50円アイスクリームのようなカップに入った納豆で、ほどよい小粒で口当たりの良い滑らかな熟成加減、旨味が強く、糸の引きもよい。ただし売っているところが少なく、水戸周辺のJR駅の大きめのキオスクでたまに見かけると、まとめ買いをして冷凍しておくのが常だ。それが切れると、仕方がないのでスーパーで安売り納豆を買うことになる。大手量販店に行くと、おかめ納豆などの大手商品があるが、地方の食品スーパーに行くと、地元メーカで製造している納豆が並んでいる。そういうのを片っ端から買って試してみたいと思うのだが、さすがに出張先のビジネスホテルで納豆を大量に処理できるはずもなく、残念な思いをしているのだ。

 前置きが長くなったが、今回、素晴らしい納豆に出会ったのだ!間違いなく今まで食べた納豆の中でベストと言える味である。しかも富良野で。いったい富良野ってのはどういう処なんだろう、、、

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 とみ川の山麓中華そばを堪能した後、麓郷のスイカとホワイトアスパラを買い求め、また富良野の町中へと車を進める。そう、朝飯に食べた富士食品の納豆を、本社まで買いに行くのだ。

 途中のスーパーに寄って棚をみると、豆腐商品コーナーには富士食品の納豆がこれでもかといわんばかりに並んでいる。商品ラインナップは多様だ。ファミリー向け小分けカップから50g入りスチロール4パックなど、一体どう違うのか分からない商品群だ。

「でも、どうせなら本社工場で買った方がいいですよネ!」

と、我々は車を走らせたのだ。

「この辺だと思うんですけどねぇ、、、宮田マスターが『本社で買えるヨ!』って言ってたから、直売所みたいなのがあると思うんですけどね。」

少しさまよった後、D黒さんが富士食品の看板を発見した。

「あった!あそこですね、、、でも、直売所みたいなのはなさそうですねぇ。どこに停めればいいのかな、、、」

そこにあったのは、ぶっきらぼうな事務所然とした建物群であった。富士食品の冠を描いた配送用トラックが駐車場に数台並んでいるためそれと分かったが、一般消費者に開かれた感じの事務所ではないようにみえる。

 うーむと思いながら車を降りると、前方の事務所から白髪のご老人と中年の男性が出てきて、こちらをジーッと見つめている。不審に思われているのだろうか。

「なんか、直売やってるような雰囲気じゃありませんね、、、」

でも、ここまで来たんだ。声くらいかけていこうではないか。

「あの、納豆を買いたくて来たんですが、、、」

と白髪のご老人に声をかけると、小刻みにうなずき、「いいよ。入りなさい」と事務所の中へと誘ってくださった。


事務所に入った途端に了解した。ここには直売所はない。工場に併設された事務所で、各スーパー等の注文に応じて卸売販売をするための施設だ。つまり、小売りはしていないのだ。


「すみません、『唯我独尊』のマスターに納豆食べさせてもらって、あんまり旨かったんで欲しいと思ってきてしまいました。ご迷惑かも知れませんが、買わせていただけませんか?」

と、マスターの名前を出してみる。中年の男性はほぼ無反応だったので、もしかしたら空振りか?と思われたのだが、一瞬後に「宮田さん、元気なのかな」とポツリと漏らしてくれた。この方はおそらく白髪のご老人の息子さんだろうか。

「最近はもうセンセイって呼ばなきゃならないもんな。」

とニカっとしてくれる。

「で、どの納豆をどれくらい欲しいの?」

「えええっと、、、そうですね、家に持って帰りますので多すぎても無理だな、4パックセットを3つくらいいただければ、、、」

と言うと、「うーん」と唸りながら、男性とご老人がごにょごにょと話している。

「初めて食べるんだから○○○とか、、、」「いや、アレじゃダメだ、△△△とか、、、」などと、色んな商品名が出ては消える。そんなにチョイスがあるのか!

「まあ、一番オーソドックスなやつにしておこうかね、「味ごのみ」っていう商品。ちょっと工場にあるかどうか訊いてみるから。」

と、たかだか3パックの納豆のために工場に連絡確認をしてくれる。在庫がちょうどあったようで、こちらに持ってきてくれるとのことだ。その間、さきほどのご老人が、何やら真空パックしたものを持ってきてくれる。

「これ、面白いから持って行きなさい」

「な、なんですかこれは?」

「インドネシアの納豆みたいな加工食品で、テンペっていうんだよ。」

おおおおお
これがテンペか!話にはきいていたが、手にするのは初めてだ。水分は抜けているようで、持つと軽い。

「ここではね、結構いろんな納豆食品作ってるんだよ。テンペは体にいいからね、持ってきな。」

なんだかモウシワケナイなぁ。納豆買いに来ただけなのに。

そうこうしているうちに工場から女性が納豆を届けて下さった。富士食品の段ボールにいれてくださっている。

「これが、うちの一番基本の味の納豆。」

「で、どこまで帰んの?」

東京だ、と答えると、ご老人が顔をしかめて「それじゃ梱包しないとな」と仰る。恐縮してお断りしようとしてもききいれられない。結局、工場から保冷剤を大量に取り寄せ、新聞紙に1パックずつ、保冷剤付きの厳重な梱包を、、、しかもこのご老人手ずからしていただいたのダ!たった3パックの納豆に、、、


「これ、冷凍のテンペも入れとくからサ」

と、ご老人、生冷凍テンペをまた2つ入れてくれる。ちょっと待て、納豆3パックよりも高く付いてるんじゃないか?と勘定をしようとすると、

「じゃあ納豆3パックで、、、315円になります。」

315円の商品のために、おそらく会社の社長さんと会長さん(推測)がしばし、かかりっきりである。申し訳なくて仕方がない。お支払いして、納品書をいただく。

「すみませんねこんな小さな単位で、、、通常はやってないんですよね?」

「うんまあ、うちは製造卸だからネ。」

いや ほんとに恐縮である。スミマセン!卸元に直接行ってしかもたった3パック! はた迷惑なお客である。読者の皆さんはくれぐれも真似をされぬよう。

 しかしここの納豆、とにかくこだわられているようだ。こんなチラシもあるが、専門用語ばかりで、僕にも全く分からないのだが、納豆製造における凄まじい技術を導入しているようである。

「いや ホントにどうもお手数おかけしました!どうもありがとうございました!」

御礼を述べ、退出。ご老人はわざわざ見送りに出てきてくださり、D黒さんに色々話しかけている。

「うちはね、厚生省から特殊な指定を受けた2つのうちの1つの製造業者なんだよ。」

ナニナニ?なんだかスゴイ話になっている。とにかくこのタダモノではない感を漂わせる仙人のようなご老人のことを忘れることはできない。手を振られ、富士食品を後にしたのであった。


 さてこの富士食品の納豆であるが、家に帰って早速ご飯と食べてみた。

とにかく、3回くらい掻き混ぜただけで、おびただしい糸が発生し、ネトネトヌチャヌチャになる。ネギを混ぜ込み、通常ならここでダシ醤油をかけるところだが、通常の醤油を垂らす。ダシ醤油を使うのは、旨味の少ない納豆だと僕は満足しないからだが、富士食品はそうしなくていいはずだからだ。

 中粒の豆を使っているということは、輸入の小粒ではなく地元の大豆をつかっているからであろう。これをひたむきに25回程度掻き混ぜた後、反対方向に同回数掻き混ぜるという、バイオダイナミック農法におけるダイナミゼーションを実践した後、ご飯の上にネトネト弾を投下する。

 白飯とともに喰らう。中粒の納豆が歯にあたり、心地よい潰れ感を感じる。そしてダシ成分はまったく添加していないにも関わらず、強い旨味を認知する。ネトネト糸が多量に発生しているため、その旨味含有量も極めて多い。舌の上に納豆デロデロペーストが旨味協奏曲を奏でている。

 正直、これほどの納豆を食べたことがない。ここに、富士食品の納豆が、水戸黄門納豆をナンバーワンの座から引きずりおろしたことを宣言しよう。

宮田マスターが

「俺なんかさ、物産展があるとき、この納豆を持参しちゃうもんね。食えないんだもん、こんなに旨い納豆。」

というのが分かる。よく分かる!

「でも関東じゃ買えないだろ?」とお嘆きの皆さん。ご安心あれ。僕自身は未確認だが、銀座のアンテナショップ「富良野彩館」にて、富士食品の納豆も扱っているらしい! うわぁ これは買いに行かないとイカンだろう!

 さて後日談。D黒さんより下記連絡がきた。

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納豆の達人について:
宮田マスターからお聞きしましたが、
やはり、あの素敵なおじさんは・・・
現会長、もと社長さん。研究者でも
あり、厚生省に認められた菌を培養された
のも会長さんで、マスターも大変可愛がって
いただいているそうで、早速、今日にでも
お礼の電話をされるとのこと。
また、いただいた製品(テンペ)は
25年以上も前から開発していたそうです。
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やはりスゴイ人だった!

富士食品のWebはここにある。

■富士食品
http://www.furano.ne.jp/fuji/

納豆製造に関する技術的な話も載っているので、ぜひご一読していただきたい。いや こういう行きずりの出会いが非常に嬉しい。また買いに行こうっと。銀座に納豆を買いに行くやつ、しかもその他の店には目もくれないってのは、かっこよくないか?

(次回、北海道編最終回)

2004年07月13日

夏真っ盛り! 宮崎出張編 チキン南蛮と日南海岸の魚料理を堪能しまくり

 この度、僕向きの面白い仕事を引き受けることになった。先日このblogでも紹介した宮崎の絶品芋焼酎の「かんろ」と「かめしづく」を販売している京屋酒造(http://www.kyo-ya.com/)のオフィシャルサイトにて、焼酎文化を拡げていくための企画blogを運営するというものだ。詳細はまだこれからの煮詰めだが、素晴らしい芋焼酎を、例えばイタリアンに合わせてみる!とか、フレンチに!とか、そういうベストマッチを探してみたり、海外に焼酎を持っていって現地の人に呑ませたり、というような、まさしく食い倒れ道にはずれない試みをしていきたいと思っている。その際にはぜひ読んでいただきたい。

 で、その京屋酒造の取材に訪れているワケだ。宮崎に来るのは1年半ぶりだ、、、定番メニューであるチキン南蛮や地鶏モモ焼きなどを食いまくってやるのダ!

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 宮崎空港についたら、とにもかくにも3Fの魚三亭(http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000114.html)に直行である。すでに過去のエントリで書いているとおり、僕はチキン南蛮はこの店のが一番好きだ。チキン南蛮の元祖「おぐらチェーン」など色々あるのだが、この魚山亭のタルタルは少し赤みがかっていて、味も非常によろしい。しかも、この店のちきん南蛮定食はご飯のお代わりがし放題なのだ!これが一番すばらしい。

 今回、これに冷や汁を追加して、ちきん南蛮&冷や汁定食にした。冷や汁については先述の過去ログに記載している。また、チキン南蛮のレシピもこちら(http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000115.html)に書いているので、興味のある人はぜひ試してみて欲しい。

 魚山亭は基本的には料亭的な店なので、どの料理も作りが非常に綺麗でしっかりした味付
けだ。

チキンは2口サイズくらいに切り分けて揚げられ、南蛮酢にくぐらせている。これにタルタルをタップリと絡めて食べると、口に福、すなわち口福がやってくる。

「旨いよぉ~」

やはりいつも通り、ご飯は3杯お代わりをする。1杯目はチキン南蛮だけで。

2杯目は冷や汁。3杯目は冷や汁をかけたご飯にチキン南蛮とタルタルをのっけて掻っ込む。ウマイ。


 満腹になり、日南に向かう車中ではまたぐっすりである。食い倒ラーには、3度の飯の後の睡眠が必須である。肉体労働だもんなぁ。

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 日南での打ち合わせと、蔵の中の見学についてはいずれ公開する京屋酒造のblogで詳説しよう。2時間程度の打ち合わせ後、京屋酒造の渡邊社長さんが、

「じゃあ、隣町の旅館で飯を準備してますから、行きましょう」

と、送迎のマイクロバスへご案内くださる。

「ここはねぇ、旅館の大将が釣りとか、珍しい魚が大好きでね。地元の人しか知らないような魚を出してくれるんですよ。これが旨くてねぇ、、、」

とおっしゃる。うーむソソル。


日南市街から10分ほどで目的の魚料理旅館に到着した。この旅館の詳細についてメモを忘れたので、また後に告知したい。
 それほど新しくはない外観だが、こういう観光地では、みかけと料理の内容はまったく関連性がない。ウマイ店は地元の人のみが知っている。渡邊社長さんは女将さんや仲居さん達と談笑しながら上に案内されている。座敷に座ると、目の前は海だった。でも僕は海なんざ観ないのである。7人が囲む円卓上にはすでに色んな皿が準備されている。

まず真っ先に目を引いたのがこれ!

この三葉虫的気味悪系の甲殻類は、何を隠そうエビ海老えびちゃんなのである。知ってる人は「あ、瀬戸内海とかによくいるうちわエビですね」と仰るだろう。しかし違うのだ!

「これはね、ゾウリエビ。うちわエビよりも大きいんだよ。味も濃いねぇ」

ゾウリエビはきいたことがないゾ!ビールの乾杯もそこそこにかぶりつくと、みっしりと詰まった身から、甘くて濃いエビの香りが立ち上る。ゆで汁に旨スープが凝縮されて、噛みしめるごとにエビ味が芳香と共に味蕾に浸透する。

このエビ味噌がまた超濃厚でウマイ。

そこへ仲居さんが、舟盛りを持ってきた!これが度肝を抜く逸品だったのだ。

「はい~ アカジュウの舟盛りですぅ~」

で、でかい!そしてこの面構えを観よ!食えるのか本当に、、、という色であり柄である。ま、しかしこれはおそらくハタの仲間だろう。こうした面の魚は旨いことが多い。

刺し身は実に美しい切り身になっているし、濃い白身はかなり濃厚な旨味を湛えているようにみえる。これを宮崎スタンダードの甘醤油につけて食べる。
「え、やまけんちゃんは甘い醤油でも大丈夫なの?おれはこっち(日南)の出身だけど、甘すぎて好きじゃないよ」

いや、おいらは好きです。九州南部の醤油は、甘草(カンゾウ)という草からの抽出成分を使って甘く仕上げている。単身赴任で彼の地に赴いた関東人は大抵、トロリとしたこの醤油がどうしても嫌だという。けど僕はすきだな。九州で食べると、実に佳い。

そしてこのアカジュウの淡泊かつ旨味の濃い身と醤油の相性が実にウマイ!

そしてこれは、ハモの叩きだ。

「こちらでもハモは捕れますからね。こうやって叩きにしてポン酢で食べるんですよ、そんなに上品に食べるんじゃなくてガシガシ食べてください」

ハモ好きにはこたえられん風景であろう!少なくとも大きめの2匹分はあるだろうこのボリュームに僕の胃袋はいきり立つ。ポン酢に身を落とすと、油が滲み出る。

骨切りは完璧で口にあたるところはない。

「はい~、刺身盛りです。シブ鯛、ハマチ、伊勢エビ、鰹、イカです。」

おお、またもや刺身攻撃!しかも一筋縄では行かないものばかりだ。

 シブ鯛というのは初めてだが、実に脂ののった、トロリと溶ける一品であった。

本日ナンバーワンがこのシブ鯛だな。厳密には鯛ではないのではないかと思うが、イシダイのようなコシの強さに、脂の乗った甘い旨味が感じられる。これには、甘醤油ではなくキレのよい辛口醤油が合う。

 そして伊勢エビ。

実は日南の伊勢エビはウマイ。このプリンプリンした肉塊をみよ!こいつを口に放り込むと、もうその甘い甘いエビ味と官能的なセクシー食感にやられまくりである。

 なんてことはないハマチでさえもウマイ、この写真だけでも伝わるだろう。

 これは鰹の心臓の味噌煮である。

鰹の心臓はガツっとした歯触りで、回遊魚らしく肉のような濃い旨味だ。味噌煮にして正解である。

 ここで、旅館の大将がやってくる。

「いやぁ 魚ウマイ? 旨いでしょうぉ~ あのね、これからこのドラゴンフルーツを出すから。これね、赤と白があるのよ。ワインみたいでしょ?ヨーグルトと混ぜてデザートにするから!」

おお、面白い、宮崎ではドラゴンフルーツのようなトロピカルフルーツを専門的につくる農場があるのだ。そこから仕入れているという。赤いのは初めてなのでこれは楽しみ。

その間にも料理は続く。マグロの胃袋の唐揚げが出てきた。個人的にはこいつが本日最高の一品。まるで肉のような分厚い食感、ブリッとした食感。唐揚げタレの醤油味の濃厚さ。レモンをかけて囓ると、これぞ本当に海の肉という感じである。

これに、定番であるマグロの内臓の煮物。濃い口でこっくり煮含めてあって、これもご飯のオカズに旨い。

「〆は普通のごはんか、カツオ飯にできますよぉ」

そりゃもうカツオ飯である。てっきり炊き込みご飯かと思ったら、違った。

カツオの切り身をほっかりご飯の上に並べ、タマネギやショウガがまぜられた特製ダレとたっぷりのもみ海苔を載せてある。

このタマネギダレが旨い!実にカツオの身の癖に寄り添ってくれるのである。

「これにお茶をかけてお茶漬けも美味しいですよ!」

そりゃやるしかないでしょう!熱い緑茶をかけてカツオの身の色が変わりばなのところを一気にすすり混む。旨い!


「はい、デザートです。」

出た!これがドラゴンフルーツの赤・白だ。ドラゴンフルーツはサボテンの一種の実だ。だから味は淡泊なのだが、この赤いやつは色素も濃くて食欲をソソル。かなりビビッドな色で、日本には存在し得ないような南国系の色だ。

これをヨーグルトに載せて混ぜ込む。いい感じでとろとろに熟していて、スプーンでモロリと崩れる。赤のドラゴンフルーツは、色素が果汁とともに流出しまくり。赤いのはアントシアンだろうが、甘みが強い。ヨーグルトに混ぜ込むと、合成着色料ではないかと疑ってしまうような綺麗な色だ。


十分に堪能しまくってしまった。うーむ 感動である。
渡邊社長様がご馳走してくださったので勘定はわからないが、社長いわく

「こっちの物価は、東京の約2分の1くらいだよ」

ということだ。うーむ
日南に住もうかなぁ、、、

ということで一夜が過ぎていった。明日はまたもや素晴らしい食紀行が続くのである。

2004年07月15日

日南には激旨焼き肉ダレがある! 堀川焼き肉「とむら」

 日南海岸でのザ・魚食いまくりの一夜が明けたら、無性に肉が食べたくなった。大丈夫、きっと京屋酒造の渡邊社長は僕の性分を理解してくれているはずだ。きっと昼はあの店へ、、、

 宿泊のシーガイア内のコテージから一路日南へ。そうそう、今回は人数が多いので、シーガイアのコテージヒムカというところに宿泊した。シーガイアといえば現在はシェラトングループが運営しているリゾートだが、ANAやJALなどのツアーパックで行くと、凄まじく安い。それで完璧リゾート気分が味わえるので、最高だ。仕事なんだろうか、ホント?という気がした。

 さてこの日は京屋の芋焼酎の蔵見学だ。残念ながら瓶(かめ)での仕込みはしていなかったが、もろみを蒸留する工程は稼働していたので、ざっと見せていただく。そして、真っ昼間から京屋酒造の「かんろ」ブランドのテイスティング。
この辺は、今後京屋酒造のblogにて書いていくので、ぜひ楽しみにして欲しい。

 蔵内の見学の後、サツマイモ畑へ。

そう、京屋酒造は、自ら使う原料芋を生産している。9町歩という大きな面積で、農業生産法人を自前で立てて生産をしているのである。極めてまじめな取り組みである。

加熱気味の焼酎ブームだが、2年先にはこういうメーカしか生き残っていけないだろう。芋の生産方式についても色んなやりかたにチャレンジしていて、かなり面白い畑訪問となった。

とまあそんな話をしながら腹が減る。

「じゃあ、メシに行こうか。」

ん?社長、どこに食いに行きますか?ときく間もなく、車に乗り込み移動。畑から15分ほど走らせ日南郊外へ。ドキドキする心臓。そして直線上にあの大きな立派な建物がみえてきた!

「やった! 焼き肉とむらだ

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■堀川焼き肉 とむら
宮崎県日南市園田3-1-11
0987-23-8989


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 この「とむら」、地元では有名な企業だ。和牛の生産農場を直営する肉屋であり、食品スーパーも展開している。非常に旨いのは当然なのだが、とにかくここの焼き肉タレが最高に旨いのである。
 地元のコンビニで、ナショナルブランドのエバラとかのタレではなくて、この「とむら」のタレを置くところがあるくらいなのだ!僕は数年前にここに連れてきてもらって一発で虜になってしまった。宮崎に住む弟分にタレだけ送ってもらっていたほどだ。

座敷に上がる。そこにはタレ入りの容器が鎮座ましましている。

このタレこそが、日本有数の旨い焼き肉ダレなのだ!うーんこれごと持って帰りたい。

「はい お肉ですよ~」


来た! さてこの肉の皿を凝視して欲しい。左側はタンだが、右側の肉は何にみえますか? カルビだと思うでしょ?

なんとこれ、実は牛バラ。凄まじくサシが入っているため、そうとは思えない。

そしてこのメニューをみて欲しい。

なんと牛バラ、1人前が577円なのである。モチロンこいつが極めつけに旨いのダ! うーむ 恐るべし日南焼き肉。

「いただきまぁ~す!」

はしたなく一番真っ先に割り箸をとって焼きにかかる。片面は焦げ目が付くまでじっくり焼き、裏面はさっと炙る程度にして仕上げる。そして誰がなんといおうが、この焼き肉にはタレをべっとりと付けよう。

肉をほおばると、僕を待っていたかのごとくジュワッと肉汁が溢れる。そして、タレの甘みとニンニク・ゴマの香り、旨味が拡がる。ん~ こいつが食いたかったんだ! ご飯にもタレをかけてガツガツと掻っ込む。もう止まらない。

「こっちの地蟹の汁も食べてごらん。殻ごとよくすりつぶしてフワフワにしてあるんだ。旨いよ。」

これがまた絶品。フワフワの卵のように仕上げてある浮き実は、殻がプチプチと口の中で爆ぜて楽しい。

「いやぁ~ 旨かった!」

そして一階の肉売り場にダッシュ。買ったのはもちろん「タレ」である。

今回は一本680円の大瓶を買う。これで家でも楽しめる、、、原材料をみるとここにも「甘草(カンゾウ)」が。

カンゾウエキスは宮崎南部の基礎調味料なのであった。

 日南は素晴らしい!魚も最高に旨いし、肉も旨い! そしてこの旅はまだ続くのである、、、

2004年07月16日

レタス巻きの元祖は宮崎にあるのを知ってますか!? 宮崎市「一平」

 コンビニや持ち帰り寿司で必ずみかける「サラダ巻き」とか「レタス巻き」。海苔巻き寿司の中身に、エビやレタス、そしてマヨネーズという組み合わせで食べさせるものだ。子供でも食べられるので、かなり昔からスタンダード化している。しかしこの原型・ルーツが宮崎にあるというのをご存じだろうか?宮崎市内にある寿司「一平」が、その元祖を名乗っているのである。

 その話はずいぶん昔からきいてはいたのだが、足を運ぶチャンスは無かった。出張で行った際に店の前まで行って、定休日で地団駄を踏んだこともある。そして4年ほど前、宮崎の農協への出張の折、初めて一平に足を踏み入れた時の衝撃は忘れられない。

「これが元祖レタス巻きかぁ、、、」

レタス巻き用に最適なチューニングをされた自家製マヨネーズは、酸味が抑えられ非常にクリーミー、そして和のテイスト。念入りに下処理された茹でエビ、そしてレタスを酢飯できっちりと巻き込んである。軽く醤油を漬けていただくと、酢飯の酸味と特製マヨネーズ、そしてエビの香り甘みが渾然一体となる。レタスのパリ感とエビのホックリ感も楽しく、5人前くらい食べたくなってしまって困ったものである。以来、宮崎に足を運ぶ際は、できるだけ「一平」のある宮崎観光ホテル近辺に足を運ぶのだ。


 そんなわけで今回の宮崎滞在の夜。

「アニキ、宮崎市内で飯を食べましょう!」

僕の九州の弟分、沼ちゃんが車を走らせシーガイアに迎えに来てくれる。彼はとある農協の職員で、残留農薬などの成分分析のエキスパートだ。仕事上の相談にも多々乗ってもらっていて、頼りがいのあるヤツなのだが、なぜか僕のことをアニキと呼んでくれる。身長190センチの体躯で極真空手をやっていた猛者だが、性格温厚、情に厚く農家からの信用も厚い、ナイスな野郎なのである。ちなみに彼が農薬残留分析の修行先からぶんどってしまった奥方はこれまた美人である。

「沼!やっぱ一平だよな」

「そうでしょアニキ、一平でレタス巻き食べましょう!」

シーガイアから車で20分程度走らせ宮崎市街へ。メインストリートである橘通りの一番街を横目に、大淀川沿いの名スポットである宮崎観光ホテル近くに、一平はある。

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■元祖 レタス巻き 「一平寿司」
宮崎市松山1-8-8
0985-25-2215

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このちょっとチープな風情の看板が溜まらないのだが、、、のれんをくぐるとカウンター、テーブル、座敷とかなり客席数は多い。

「いらっしゃいませぇ!」

テーブルに着席しとにかくすぐに

「レタス巻き2人前とサバ寿司!」

と注文を入れる。そう、実はここのサバの握り寿司も絶品なのだ。青魚マニアの僕としてははずせないチョイスである。

一平の品書きに、レタス巻きの誕生秘話が掲載されている。こんな感じだ。

友人の作曲家の野菜嫌いを治すために考案されたのがこのレタス巻きだという。なんだか僕は違うエピソード(野球選手が野菜を寿司で食べたいと言ったので考案した)で覚えていたので「あれ、そうだったっけ」と思ってしまったのだが、店が書いているんだからこちらが真実なのだろう。

ちなみにレタス巻きは950円。宮崎の物価指数からすれば高い方かも知れないが、絶対的確実に旨い!のだから迷ってはいけない。

ほどなく

「はい、おまちどおさま」

と、運ばれてきた これが元祖レタス巻きである!

均等の圧力でスパッと米が割れている切り口。エビの美しい断面とレタスの巻き。レタスの細胞組織を崩さないように全体を巻いているはずだが、ご飯はしっかりと圧力がかかった巻き加減となっている。この辺、かなり奥深い技術が隠されているはずだ。

片面を醤油につけていただく。醤油はやはり若干の甘みがある。その甘みの後、しっかりと巻かれたご飯の中心からプチというレタスとエビの歯触りがする。そして一気に海苔巻きの世界に凝縮されたマヨネーズ香りとエビの旨味が解き放たれ鼻孔に抜ける!

「うおぉおおお 旨いぃ! やっぱ他の店じゃこの味が出ないんだよなぁ、、、」

過去、一平の定休日に他の寿司屋にてレタス巻きを作ってもらったことがあるのだが、やはり非なるものなのだ。この絶妙のバランス感覚は一平にしかない味わいだ。

レタス巻きをほどいてみる。レタスは一枚の大葉を巻き込んで成形している。こうすることで細胞の断面を少なくして、歯触り確保しているのだろう。

「やっぱ旨いですねぇ」

宮崎に住む沼も和歌山出身の奥さんも、旨い旨いと手を伸ばす。

同行の木島ちゃんも「初めて食べましたけど、美味しいですね」と止まらない。思わずもう一人前追加してしまう。

そう、もう一つこのの店ではサバのにぎり寿司が欠かせない。

適度に酢じめしたサバの切り身を握っていて、こういう形の寿司は宮崎は結構あるのだが、特筆すべきはこのサバの分厚さである。

どうだこのド迫力!渋く鋼のように光るサバの背部が実にソソる。青身好きにはこたえられない醍醐味がここにある!こいつを甘い醤油に少し浸して口に放り込むと、〆酢の酸とサバの香り、酢飯の甘みが口を満たす!

いやもう、お手上げである。

本日はこの後、一番街に行き地鶏の腿焼きを食べ、帰りにチキン南蛮を食べる予定なのでこの辺で「一平」を出る。しかしいずれ、ここで5人前くらい食べに来たいなぁ。

宮崎観光ホテル周辺には、昔書いた釜揚げうどん「しげのい」もあり、名スポットであることに間違いない。今後出張で宮崎に行かれる際は、少しフンパツして宮観ホテルにいくことをお奨めする。 絶対に後悔はしないはずだ、、、

2004年07月23日

秋田県大田町の特別栽培米の田圃を巡る

 今年二回目の秋田出張である。二週間ほど前に、「これから秋田です」と宣言したにもかかわらず、秋田特集が出ていないことに不審な思いを持っている人も多いだろう。

なぜだと思う?

 食い倒ラーはおわかりであろう。残念ながらあまり旨いものに出会えなかったのダ。なので今回はその雪辱に来たのだが、それよりも今回は重要な視察があった。

 仕事として請け負っている調査で、太田町という米どころの特別栽培米の販売に向けたお手伝いをしている。その田圃を観に来たのだ。ご存じの通り、今年は新潟、そして福井で相次いで凄まじい規模の災害が起こっている。新潟では、農産物と農機具をあわせて60億円以上の損害と言われている。恐ろしいことだ。農業が背負っているリスクは果てしなく重い。そしてそれに見合う価格は保証されていない。 ま、その辺の話は姉妹blogの方でやろうと思うが、とにかく連続して起こる災害ネタで「秋田もやばいんじゃ、、、」とびびっていた。しかし、秋田空港に着くと、灼熱地獄の東京とは一変してかなり涼やか、周りに拡がる田圃は美しく、青空が拡がっていたのであった。


「山本さん、今日は、現場を観に行きたいと思うんです。」

秋田県のNさんが車を運転しながら仰る。いつもは打ち合わせに終始してしまいがちなので、現場を観る時間を創ってくれたのだ。秋田空港から車で1時間程度のところに太田町はある。
 しかしなんと、面白いハプニングが。近道をしようとしてNさんが路を間違え、どんどんと田舎道の方にさまよってしまう。

「あれっこんな道じゃなかったはずだけど、、、あ!間違えて大内町まで来てしまった!」

大内町というのは、まったく違う方面にある、これも米が有名な産地である。そして、最近僕が食べているミルキークイーンを生産している伊藤裕樹君、あだ名「ひろっきー」の田圃がある町ではないか!彼は日頃は東京で経営コンサルタントをし、数日間秋田に戻ってくるというライフスタイルなので、この日は秋田にはいない。けれどもこれはぜひ報告しなければ、と思い、お茶を買ったたばこ屋からメールをする。するとすぐに電話がかかってきた。

「やまけん、そのたばこ屋からたった2kmで僕の田圃があるんだよ!わっはっは!」

訊けばなんと明日朝一便(つまり本日だ)に秋田に来るというので、僕が帰る便と合わせ、空港でお茶をすることにした。いや本当にこういう巡り合わせには笑ってしまう。

 嬉しいハプニングの後、気を取り直したN氏が車をぶっ飛ばして太田町に向かう。周りは田園風景が拡がっている。まぶしい緑が美しい。途中、太田町の農協に寄り、田圃を案内してくださる職員のTさんとお会いする。車を乗り換え田圃に向かう。5分足らずで、標高差100m、山際にある田園の集落に着いた。そこは、綺麗な綺麗な、稲の国であった。

 今回の僕の仕事の対象品目は、特別栽培米という。特別栽培とは、いわゆる「減農薬」や「減化学肥料」もしくは「無農薬」「無化学肥料」などを言う。先般、農水ガイドラインの変更があり、これらを総称して「特別栽培」と言うことにしたのである。消費者にはまたわかりにくくなるだろうなぁ。

 太田町の米は、県を代表する銘柄「あきたこまち」が主流だが、これを減農薬・減化学肥料でやっていくということだ。常々言っているように、化学肥料を有機肥料に変えることで、食味が向上するというのが僕の実感だ。太田町では、米ぬかを主原料とした「米の精」という有機質肥料をメインに使おうとしている。下の写真は、米の精を使って3年目を迎えた実験圃場だ。

「ちょっと葉の色が濃いですね、、、窒素過多になってるんですかね?」

「ええ、この栽培方法では、この時期若干葉色が濃くなって大丈夫です。分けつ数が少ないのですが、幹が太くなり、穂の重量は増加します。」

という会話をしつつ圃場を巡る。

 日頃、東京駅から15分の場所に住んでいるせいか、やはり産地に行って田畑に出ると、ホッとする。そこには本当に癒しの空間が拡がっているからだ。(農薬散布の季節にはホッとできないのだが、、、)
 流れる空気、マイナスイオンの波、鳥の声と川の流れる音、微細に振動する空間があるのだ。

ということで秋田編第一発目はメシの食い倒れではなく風景を食い倒れたのであった。この後、昼飯を食べたのだが、その店自慢という10割手打ち蕎麦と稲庭うどんは、まったくもって大したことの無い内容だったので書かない。

 そして怒濤の夜、「夏なのに比内地鶏のきりたんぽ鍋」編へと進むのであった、、、

2004年07月25日

比内地鶏のスープは秋田県人の気高さの象徴か! きりたんぽ鍋とミズのガッコ 秋田市山王 「海味」

「東京がら来た人が食べるんでね、地元のめずらすぃ料理をお願いします。」

 仕事を終え、秋田市内に向かう車中、Nさんが店に電話を入れてくださる。このNさんの秋田弁は掛け値なしに最高だ。空港を降り立ち一言挨拶を交わしただけで、身も心もすっかり東北・秋田に来たのだ!という実感が沸いてくる。
 言葉は文化。そして方言は国の宝だ。東京で起居する僕には、空港に降り立った後に感じるこの絶妙な言語的差異が本当に心地よい。からかう訳では全く無く、真似してしまう。

「いやこっちは普通に(標準語で)しゃべってるつもりなんだけども」
というその口調がすでに秋田なのである。そうそう、車中でこんな会話があった。

「山本さんは、彼女なんにん?」

え? 何人の彼女がいるかって? かなり汗をふきだしながら、

「え、え~と、、、うーん 10人とか答えればいいんですかねぇ」

「ん? 何年って訊いてるんだけども」

「ああああ なんにんじゃなくてなんねんかぁ!」

このように車中は爆笑の連続なのであった。

僕が発見したのは、語尾に「にゃぁ~」というような音が付くケースである。相手の発言に同意の相づちを打つ時に、短く「ですね」ということがあるが、これが秋田では「ですねゃ」と聞こえることが多い。昔、友人にそれを指摘すると「いや、『ですね』って言ってるよ?」という。その時は聞き違いかと思ったがやっぱり違うぞ!N氏も同じ発音である。

「まあ、一般的秋田人は全く意識してないでしょうねぇ、、、」

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さて 車は秋田県庁がある山王(さんのう)地区周辺へと向かう。秋田市内の繁華街といえば「川端(かわばた)」なのだが、本日は僕の止まっているホテルが県庁近くなので、県庁があるもう一つのおとなしめ繁華街の山王地区で店を探してくださったのである。

「前に子供のクラス会で使ったことがあるんですが、、、旨かったんですよ!」

ようやく旨いものが食べられるのか!期待に胃袋が拡がる。いったんホテルにチェックインする。今夜泊まるパークホテルは、なんと一泊4100円の安さである。その分、風呂が共用の大浴場しかないが、全然Okである。その1Fレストランでカレーフェアというのをやっていて、インドネシアのナシゴレンやタイのカレーなどがメニューに並んでいた。キーマカレーが500円!のけぞる価格に食べたくなるのを必死に押さえる。帰ってから食べようかなぁ ラストオーダーは9時か、じゃあ2時間で帰ってこよう、と、この時点では思いながら出発。

県庁の庭先では、秋田市の竿灯祭りに向けた練習が行われていた。

昔、和太鼓を打っていた僕には懐かしい響きがしていたのであった。

その横を通り過ぎ、山王の繁華街へと入る。程なく、青い看板がみえてきた。

「ここですここです。」

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■海味(うみ)
秋田市山王2-7-19 ロイヤル山王ビル2F
018-863-6723

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「はい、いらっしゃーい」

美人女性2人の仲居さんと女将に迎えられ、座する。

店名のとおり魚が有名らしいのだが、鍋や肉料理も旨いという。

「ここの塩くじら鍋ってのが本当に旨いんですよ! 鯨のコロ(皮と脂身)を塩蔵したものの鍋に、山菜のミズの叩いたのをどさっと入れて、トロトロになったのを食べるんですヨ!」

うおおおおおおおお
旨そぉおおおおおおおお!

次回は絶対にそれなのである。この店には食べる前から旨そうな雰囲気が漂っている。かなり期待していたその矢先、突き出しが運ばれてきた。

「はい、ミズのぼんぼんのガッコ」

おお?なんだこれは!

「これはね、ミズの先に着く円い部分を一つ一つとって、漬け物にしました」

これもミズなのか!一つ口に運ぶ。

円い部分を噛みしめると、中からトロリ爆弾が炸裂し、あのトロトロのしぶきがプチッとほとばしる!その後に塩味が跳ね、一気に山の味を現出させるのだ!

「旨いっ 文句なしに旨い!」

これだけでもう大当たりである。同じく運ばれてきた白魚も鮮度がいい。

そして、期待の一品が早くも並べられる。

「はい、ミズと野菜のがっこ。」

キャベツ、キュウリ、そして赤ミズをふんだんに使ったがっこ(漬け物)だ。ほどよい塩加減に旨味がついた漬け汁に浸されたミズは、一瞬表面の歯応えを感じるが、カリッと噛みしめた途端に甘い汁とトロトロを染み出させる。

「おおおお これも旨いぃいいいい これがホントのミズのガッコかぁ、、、」

感動である。これまでこの店に行き着くまでに討ち死にしてきた秋田の飲食店の不満を一掃する旨さである。この店、佳い!

「やまけんさん、これがきりたんぽ鍋ですよ!」

N氏がまだ火のついていない鍋を開けて見せてくれる。美しい、、、きりたんぽは、米を練り、ちくわのように棒にくっつけ、囲炉裏端で焼き目をつけた郷土食だ。

「ここでは普通、出し汁は比内地鶏でとって、実として食べるのは赤鶏という地鶏なんですが、今日は比内地鶏をそのまま実として使ってくれと言ってあります。」

おお! いうまでもなく比内地鶏は国内有数の地鶏に数えられる名鶏である。ただし単価が高すぎて、飲食店で使うのには相当に苦労する。それをきりたんぽ鍋にダシ&実で使ってしまうのだから贅沢だ。 うーむ
「さて そうすれば、鍋も始めましょう。」

上で出てくる「そうすれば」というのも秋田言葉で、「それじゃあ」という意味でよく使われるようだ。とにかく、N氏により点火がされた。真夏の鍋の始まりである。

(続く)

※これから所用で長野のネット環境の無いところに行くので、火曜日更新となります。

比内地鶏のスープは秋田県人の気高さの象徴か! きりたんぽ鍋とミズのガッコ 秋田市山王 「海味」 その2

(その1より続く)

 続いて運ばれてきたのは、店名にもあるように本来この店が得意とする魚料理だ。

■スズキのソテー
 タルタルソースの添えられたスズキは、夏の白身の代表格にふさわしいコッテリ感を演出していた。こういう洋風のものが出てくると意表をつかれて、佳い。

■お造り
 特筆すべきはウニだった。最近、寿司処 匠の、ミョウバンを使っていないウニの香り高さに慣れているのでうるさくなっていると思うのだが、ここで食べたウニはまさに一片の臭みもない絶品だった。

 そして、刺身も旨かったが、添え物にあった菊が嬉しい。そういえばこの日の午前中に寄った農家さんの直売所でも、食用菊をみかけた。秋田でも広い範囲で食べられているようだ。刺身醤油にチョンとつけていただくと、柔らかにシャクっとした食感と、華やかな香りが立ち上がった。

 ここで、僕に自家製のいぶりガッコや山菜のミズを送って下さっている、県のI氏が登場する。この方が理論的・体系的にに秋田の食を教授してくださるので、僕も半可通になっているのである。

「やまけんさん、岩ガキを食べましょう!鳥海山の沸き水が海に流れ込み、それを栄養源としって育つ岩ガキです。本来は少し後が旬なので、いつもと違う地域の岩ガキですけど、美味しいと思います。」

■岩ガキ
 ぷっくりと掌より大きい岩ガキを想像していたが、運ばれてきたのは一回り小さなサイズの、ミルクを湛えたようなプルプル体であった。

あまりのセクシーさに寄ってみた。

殻からはずしレモンを搾り、三杯酢に浸けて一口に啜り込む。歯を一番太った部分に立てると、ヌプヌプとした感触が決壊し、ジュワリと旨味ジュースがほとばしった。旨い。

「岩ガキというと色んな産地が有名ですが、案外秋田のことは知られていません。地元の人たちは食べて居るんですけど、口べたで、、、」

 秋田県人が口を揃えて言うのが、この「口べたで、、、」である。そういえば隣県の山形でも同じことを言っていた。ならば! オレが言います声高に言いますから、旨いものを教えてください! と思ったヤマケンであった。


さて
その時間がやってきた。

「山本さん、きりたんぽがそろそろいいようです。」

中田さんが、蓋を取り払った。真夏の夜の鍋大会。ブワッと水蒸気が上がる後、上品な、しかし芯のある香りがたちのぼった。

■比内地鶏のきりたんぽ鍋

「きりたんぽには、セリとネギが欠かせません。それと、一般家庭ではきりたんぽを作るのが面倒なので、単に米をつぶして丸めて作るダマコモチというのが普及してます。今日はそれも入れてくれてますね。」

 なるほど、鍋の内容は、主役のきりたんぽとセリ、ネギ、ゴボウ、糸こんにゃく、ダマコモチ、そして比内地鶏である。

「この店では通常は、比内地鶏はスープだけを取って、赤鶏という地鶏を食用には入れます。けど、今日は山本さんに比内地鶏の実力を知って欲しいと思って、肉にも地鶏を使って欲しいと言っておいたんです。」

まず、そのダシを一口啜ってみた。濃い色、こっくりとした醤油ベースの味付けのスープに比内地鶏から染み出た脂の玉が浮いている。一口啜ってみた。醤油の香りの一瞬後、とてつもなく濃い旨味成分が舌を襲う、、、しかし、その旨味はあくまで上品である!そして鶏の香りがあまりにも高貴だ。

「おおおお こいつぁ 旨い!」

I氏も「美味しいですか」と僕の表情をうかがいつつ、ダシを一口啜る。やや間をおいて匙を置き、

「山本さん。Nさんの店のセレクトは完璧です。僕はこの店には始めてきましたが、このきりたんぽのダシはとても旨い!」

「いやそうかね、よがったぁ~」

県職員N氏の面目躍如の瞬間である。実に最高である!

いやしかしマジで旨い!ダシだけではなくきりたんぽを食べてみた。餅米の餅とは違い、口の中でホロリと崩れる食感。それにモロモロに染みこんだダシの味。きりたんぽを食べながらセリやゴボウ、ネギを口に入れると、尖った香りがきりたんぽに七色の表情を現出させる。

「このきりたんぽが、火が通るにつれて柔らかくグズグズになっていくと、これまたウマイんですよ!」

「ほんとだウマイ!」

もうヤマケン、満面の笑みである。自分で言うのもなんだが、ナカナカこれだけの旨いゾ顔に出会うことは少ない。3人分の鍋を、ほとんど一人で食べてしまった。「いいんです、最初からそのつもりですから存分に食べて下さい!」とおっしゃるN氏とI氏。俺は再度、秋田ファンになったぞ!

「やまけんさん、比内地鶏の塩焼きも食べてみましょう。」

おお、望むところである。残念ながらモモ肉が売り切れているようなので、手羽先の唐揚げと胸肉の塩焼きを所望する。

■手羽の唐揚げ

■胸肉の塩焼きタルタルソース添え

これらを食べて思ったのは、比内地鶏は魚で言えば鯛である、ということだ。強力無比な旨味を発しつつ、極めて上品で高貴な味と香り。どんな料理でもその存在感を輝かせる。塩焼きは繊維感がはっきりと感じられ、胸肉とは思えない旨さだった。これは、北千住のバードコートで使っている奥久慈地鶏の資質と少し似ているかな、と感じたが、どうだろうか。僕の個人的好みからすれば静岡の駿河若シャモの濃厚な旨味の方が好きだが、味と食感のベクトルが全く違う。比内地鶏、さすがの風格であると感じ入った。でもやっぱり、きりたんぽ鍋のダシ汁が、一番その能力を発揮するかも、と思ったのであった。あの、濃厚な旨味は忘れがたい。

「やまけんさん、じゃあしめのご飯は大好きなミズの叩きでいきましょう!」

おお!自分でもまねてみたミズの叩き! 秋田の隠れた代表的山菜である「ミズ」を、包丁でたたいてネットリさせたものだという。それを訊いて自分でもやってみたことがあり、それなりに旨かったのだが、運ばれてきたものをみて絶句した。

「えええ? ここまでたたくのぉ?」

 それは出刃で完膚無きまでたたき込まれ、たとえて言えば鰯をたたきまくって味噌と合わせる「なめろう」レベルまでヌタヌタにされたねばねば物体であった。この物体、当然、糸を引く!

「これをご飯にかけて食べると、最高なんですよぉ」

それをやりたくてここまで来たんだ!さっそくご飯を所望する。

暖かいご飯にミズの叩きをかけ、食べる。ねばねば物体に隠し味に刻み込まれたエシャレットの香りが効いて、「この取り合わせもまた、旨いですね」とI氏に言わしめる。ひたすら、旨い。

久しぶりに言おう。

ビバ!秋田県!

これまでの不調・不振は完全に払拭された。秋田には旨いものが一杯あるゾ!
、、、ただし店は選ぶべし。

I氏と握手。もう僕の笑顔は崩れすぎている。覚えておいて欲しい、この顔は最上級の旨かった顔である。

I氏とホテルに戻る途中、繁華街の川端地区を歩く。

「お連れしたい珈琲店があったんですけど、、、潰れちゃったかなぁ」

幻惑的な川端のネオン街は、やはり最盛期を過ぎた閑散とした雰囲気が漂っていた。珈琲店は閉店しているようであった。しかし、地方は死なない。旨いものがあるうちは、その文化が死に絶えることはないのである。

2004年08月05日

秋田・竿灯祭りの夜! 塩鯨鍋も旨かった! 川反「ふきのとう」

 いやぁー 久しぶりに血のたぎるいい夜だった!

 まだ六本木3段活用を書き終わってないけど、酔いに任せて書いてしまおう。酔っぱらい食い倒れは久しぶりだ。今、秋田に来ているのだ。明後日からタイ出張だというのに、秋田で飲みつぶれているのである。しかも今日は、ご存じ秋田を代表する祭事である竿灯祭りの真っ最中である!竿灯って最高だ!今までは「提灯あげるだけだろ?」と思っていたが、全然違った!あの玄妙な竹竿のしなりが、心をしなやかに惹きつける、極めて魅惑的な祭りだったのであった。

 秋田県は、先日書いた太田町という米作地帯の仕事と、もう一つ別件で、大潟村の仕事をしている。大潟村は、八郎潟という湖を干拓して出来た、日本でも有数の大規模田園地帯である。日本の田園といえば、非常に小さな田のクラスターの集まりであるが、ここでは新規の土地に入植者を募ったため、最初から大きな面積を一生産者が保有できるという好条件だったのだ。
 この大潟村には奇縁がある。僕が大学院時代、農業とインターネットに関するセミナーの講師として招かれたのだ。その際には、講演料と別に稲庭うどん10Kgといぶりがっこ3Kgをいただいた。それが秋田との初めての出会いだった。そして今年、この大潟村でのある検討委員会の村外委員として、就任する運びとなったのである。

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 秋田市内のアルバートホテルまで車で送っていただき、一息いれてから竿灯を観に行くということになっている。

「いや、まんずお疲れ様でした。竿灯祭りを観てから一杯やりましょう。1時間後にお迎えに挙がりますので、チェックインして風呂でも浴びて下さい。」
しかし、一息つくどころか、山積している別件をリモートで片づけなければ何もできない。ホテルのインターネット回線とFAXを駆使して企画書と見積書を作成し、東京の企業に送付しているうちに、ホテルを出る時間となった。

 竿灯祭りといえば、東北を代表する祭りの一つだ。しかし僕は実際には観たことがなかった。僕は高校の時から7年間、和太鼓をやっていた。全国のとんがった郷土太鼓を見て回ってはいたが、竿灯は太鼓芸ではないので、ノーマークだったのだ。正直、「それほど惹かれないなぁ」と思っていた。
 しかし!予想をはるかに上回る素晴らしい祭りであった!

「長い竿に提灯が連なっているのは、稲穂を表しているんですョ。」

そうか、これは稲穂なのか!この、総重量にして60Kgくらいはある稲穂提灯をぐぐっと揚げ、片手で掲げ持った後に額だけで支えたり、手を離して腰だけで竿を支えたりという荒技を競い合う、まことに男っぽい芸能なのであった!
 上空を吹く風に竿はぐぐっとしなり、持ち手はそれを手元の角度を微妙に調整しながら支え、片方の手で扇子を扇いだりして余裕をみせる。なんともいなせだ!
 見物客も、ぐわっと倒れそうになる竿を観て「おおおおおおお」と声をあげながら熱狂している。「どっこいしょぉおおおどっこいしょぉお」というかけ声を上げながら、持ち手を鼓舞している。桶胴太鼓で打ち込まれる囃子の直線的なリズムで、腹の中がグワングワンと沸いてくるのである。

 しばし観覧した後、余韻にひたりながら秋田市内一番の繁華街である川反(かわばた)の奥へと足を運ぶ。

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■食酒や ふきのとう
http://www.f8.dion.ne.jp/~yama_bk/fukinotou.htm
秋田市南通亀の町5-27 山蕗1F
018-833-9750

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「ここは、山蕗という割烹に併設している、気楽に入れる店なんですよ。で、若女将は僕の同級生です。」

座敷にはすでに酒肴が並んでいる。これがまた、秋田ならではの皿ばかりだ。

「これは『カスベ』ですねゃ。エイを煮込んだものです。軟骨の部分まで柔らかくなってるんですよ。」

 噛みしめてみると、エイ特有のアンモニア臭はほとんどせず、ゼラチン質を多量に含んだ、こっくりと旨味の濃い魚肉だった。


もずくは、「これがもずく?」と言うほどに「ザキッ」という歯応えのあるものだ。乾物ではなく生であることは間違いない。

「これは鰰(ハタハタ)の寿司ですねゃ。私たちが子供の頃はトロ箱一つで100円程度でしたから、おやつと言えばハタハタを食べてました。」

今や高級魚のハタハタがおやつ代わりである。うーん
ハタハタ寿司は、和歌山のサバなれ鮨や琵琶湖の鮒寿司と同じような飯寿司である。しかしその個性は非常に上品で高貴な香りだ。これだけで酒がどんどん進んでしまう。

「はい、日本海のウニ!」


と運ばれてきた殻付きのウニは、何も言うことのない、ひたすらにクリーミーに甘い品だった。

「いや、秋田県の人間は総じて口下手なんですよ。でもそれではこれから何ともいかなくなる。山本さん応援して下さい!」

モチロンですよぉ
私は旨いもんがあるところは完全に応援します。この他、助役とはじっくり様々な話をした。県庁から出向で村の助役に任じられている彼は、秋田県の産業振興に情熱をかける素晴らしい方である。僕がこの仕事を引き受けたのも、彼の熱意と、ある意味、行政らしくない現実感とバランス感を持った態度に惹かれたからだ。大潟村は、外部の民間の力を導入していこうと志向している。安易に合併をせず独自に前進しようとするその態度は、多くの市町村が学ぶべきだろう。


酒は徹頭徹尾、地酒「飛良泉」の山廃純米である。きりりと締めあげられた酒質で、食中の口を程度よくほどけさせる美酒である。この他、別の純米吟醸を頼んだが、上立香ばかりが鼻につく、よくあるつまらない吟醸だったので、以後脇目もふらずに飛良泉を飲み続けた。

「山本さん、くじらは食べられますか?」

モチロンである!そう、前回も太田町の仕事で県の人に連れて行ってもらった「海味」にて、塩鯨鍋が旨いと聞いていたのだ。一も二もなく所望する。

濃厚な味噌ベースのスープの表面は、鯨のコロ(皮つきの脂身を干したもの)から滲み出た脂でギトッとしている。コロの刻んだのと茄子、豆腐とネギが鍋の具だ。

「この茄子が入ってるのが、味のポイントなんですよ。」

と助役が仰る。はたして口に運んでみると、コロのねっとりしつつあっさりとした食感が、茄子の香りとマッチして旨い!出汁の風味も美味しく、この鍋は実に風流である。
 先日食べた比内地鶏のきりたんぽといい、こんなにこってりした味の鍋があるのは、秋田の厳しい冬の寒さに耐えるため、脂肪を蓄積する意味合いもあるのだろう。その環境下では、塩分を強くして血圧を上げ、寒空に立ち向かう必要があったはずだ。かように食文化には意味がある。近代栄養学の割り切り方ではつまらないのだ。

この他、岩ガキやガッコも食べ、実に満悦。そして〆はやはり稲庭うどんである。

冷えた稲庭うどんを啜る。やはり東を代表するうどんといえばこれである。

「実は、商業ベースに乗らない稲庭うどんがあって、これはその名字が「稲庭」というんですが、その店を訪れる人にしか出さないうどんなんです。マスコミや代理店や小売店には出さない。料亭にも出さない。そう言うところのが最高です。今度入手できたら送りますよ!」

ぜひ!
楽しみである。

いやー 食った食った。竿灯で感動し、先日食べられなかった塩鯨の鍋をたべることができ、満足だ!

しかし、本日の最高のご馳走は助役の人となりである。なんといっても竿灯で高く高く持ち上げられた提灯を見上げる助役の顔は、口を軽く開けて子供のようにニンマリしていた。一瞬、僕を連れているのを忘れて魅入っていたに違いない。その表情を僕は忘れることがないだろう。しばし、その笑顔に魅入ってしまったくらいなのである。男というのは、笑顔で人生を語るものなのだな、と思った。

2004年08月06日

今日からタイ国出張行ってきます。タイからの更新にトライしてみます。

 本日から10日までの4泊5日、タイのバンコクに行ってきます。とはいっても遊びにいく訳じゃないよ!農業情報学会のアジア大会に参加してくるのです。

■AFITA WCCA2004

http://www.afitaandwcca2004.net/

とはいえ、そりゃあまあ、食い倒れて来ますよ。宿泊はなんとバンコクでも一流のフォーシーズンホテル!立地もいいし、楽しみだ、、、

タイに行くのは2年ぶり。それも、バンコクには足を踏み入れないで南の島ばかり行っていたので、バンコク体験は久しぶりだ。結構変わっているのだろうな。

ホテルはツインで、相部屋は長島農園の勝美君だ。二人でバンコク周辺の農村を周り、沢山の飯を食ってきたいと思う。

タイ国の最近のインターネット事情はよくわからない。日本語が使えるインターネットカフェがあるのか、ホテルには無線LANサービスとか無いのか等、全く未明。なので、タイからのリアルタイム投稿ができればいいのだが、みなさん祈っててください。

実現すれば、初の海外発・食い倒れ日記です。
今日の17時発の飛行機で行ってきまーす! 更新が途絶えたら、無理だった!と思ってください。

2004年08月07日

バンコク到着。フォーシーズンホテルは最高級ゴージャスリッチホテルであった。

 タイに着いた。2年ぶりのドン・ムアン空港はエアコンが効きすぎて寒かった。

 すぐに円をバーツに換える。1万円が3630バーツになるレートだった。2年前とあまり変わらないな。今回初めて観たのは、自動エクスチェンジャーだ。窓口で人が換金するのではなく、ATMみたいなので換金できる。レートも同じなので、こちらの方が楽かもしれない。

タクシーでかっ飛ばして20分、宿泊するフォーシーズンホテルに到着。ここはバンコクで最もステイタスが高いと言われているホテルだ。僕らは、農業情報学会の関係で安く(8000円程度/日)泊まることが出来る。

部屋はこんな感じだ。超ゴージャスリッチ!


ま、とりあえず男と泊まる部屋じゃないわな。しかし残念ながら今回の相部屋は、いつもどおりの長島農園の勝美君だ。腐れ縁だからなぁ。

嬉しいことにインターネットは高速回線が使える。卓上にUFOみたいなコネクタがあり、そこにLANケーブルをつなぐだけだ。

あとはブラウザに使用料の画面が出てくるので、OKを押せばよい。ちなみに接続料金は高い。24時間で620バーツ。レストランで楽に夕飯が食べられる金額だ。うーん

タイのホテルにはウェルカムフルーツが置いてあることが多い。ここではランブータン(タイ語で「ンゴッ」という)、リンゴ、ミカンだ。

このランブータンが最高に旨い。マンゴスチンとランブータン、そしてマンゴー(マムアン)があれば、タイではハッピーになれる。

夜1時だが、早速ルームサービスを頼む。タイの一流ホテルは初めてなので興味津々。3品くらい頼んでしまう。しかし、一流ホテルだけあってどれも高いな。街にでれば10分の1で食べられるくらいの金額だが、初日の夜食だし、まあよしとしよう。

■スパゲッティー・パット・キーマオ

 意外かもしれないが、タイのパスタは旨い。国民全体的に麺が好きだし、バリエーションも日本より豊富だけあって、研究しつくされている感がある。中でも、タイ風の味付けを施したスパゲッティは最高。日本の和風パスタみたいなもんで、ご当地スパとでもいおうか。
 このパット・キーマオも、未成熟の青い唐辛子がぶち込まれていてかなり辛いが、実に旨かった。

「お腹がびっくりしてますよ」

とは長島勝美君の弁だ。

■パット・パイカップ・ラオ(豚肉のバジル炒め)

おなじみ、挽肉とバジル炒めご飯がけだが、ルームサービスにしては味がビシッと決まっている。と思ったけど、よく考えたら帝国ホテルとかと同じようなホテルなんだから当たり前か。

■クイッティオ・パット・シーユ(タイ風豚肉と中国菜入り太焼麺)

 クイッティオは幅広のきしめん風ビーフンだと思えばいい。これをこっくりとした味付けで炒めたものだ。これもきちんとした味付け。屋台より旨いなぁ。


しかも3皿とも、かなり盛りがよく、もう腹一杯である。

バンコク着早々に、高い飯を食ってしまったが、それなり以上の満足感であった!
さて、寝るぞ。明日は農場視察。そして食い倒れ。

2004年08月08日

朝から4回転!タイ一流ホテルの朝食は最高だ フォーシーズンズホテル「ビスコッティ」

 初めてタイに訪れた時は、大学院の卒業時だったので貧乏旅行だった。バンコクでは、バックパッカー御用達のカオサンストリート(最近は綺麗になってしまったらしい)の安宿、その後に飛んだサムイ島でも一日150バーツくらいの安い部屋に泊まっていた。それはそれで面白く、ゴージャスリッチな感じのするリゾートホテルなどは横目で「ケッ、あんなの面白くねーよ」と思っていた。
 それは間違いであった。社会人になってからパッケージツアーでサムイに行き、リゾートホテルに泊まった瞬間、「なんでここに早く来なかったんだろう、、、」と思ったものだ。空調の効いたゆったりとした部屋、欧米流のホテルサービスにタイの微笑みがプラスされた手厚いもてなし。ああ、お金はこうやって遣うものであったか、と思い知ったのである。

 そして、そういったホテルの朝食が、例外なく最高なのである。ビュッフェスタイルで、コンチネンタル、サラダ&フルーツバー、タイフードなどがわんさかと用意されている。僕なぞ朝からすごい量を摂取してしまうのである。そういうところの朝飯は、まあ外で食べるよりは落ちるのが相場なのだが、、、
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 楽しみにしていたフォーシーズンズホテルの朝食。朝7時に勝美君と1階のダイニング「ビスコッティ」に降りる。緑が絶妙に優雅に配置されている中庭に面した、瀟洒なダイニングだ。窓際に座るとウェイターが「Tea or Coffee?」と訊いてくる。そして大振りなグラスにオレンジジュースをたっぷりと注いでくれるのだが、このジュースが旨い!何か入っているのかと思うくらいに甘いのだが、オレンジのフレッシュスクイーズだという。

 ビュッフェを周り、まずはコンチネンタル風にトースト2種(ホールホイート、ホワイト)にクロワッサン、クリスピーベーコン、ウインナーをいただく。

嬉しかったのは、備え付けのバターが発酵バターなのだ!発酵バターは、その名の通り発酵乳のバターで少々の酸味と素晴らしいキレのある風味で実に旨いのだが、タイの発酵バターはこれがまた素晴らしい!

生乳の質が全く違うのだろう、味の濃く、それでいてさらっとした脂のバターだった。
 この道中、日本から同行の農業者のみんなと話していたのだが、タイの土壌はカルシウムを豊富に含んでいるようなのだ。それが草に移り、牛が食べる。そうした土壌ミネラルが、肉や乳製品にも影響しているはずだ。
 そうそう、タイでは僕はパンも美味しいと思っている。それは、安いところのパンではなくて、それなりにステイタスのあるホテルかベーカリーでということだが。

 さて、1皿目を平らげて2周目に入る。タイ料理コーナーでは、カオパッ・ムー(豚肉の焼きめし)、ビーフンの炒め物、野菜のオイスターソース炒めがある。

これらをガバッと取り、マナーオと呼ばれるライムをタップリとかけて食べる。やはりフォーシーズンのダイニングだけあって、手抜きがなく美味しい。

 タイでの朝食に欠かせないおかゆというか雑炊がある。カオトムプラーという、魚の雑炊が旨いのだが、ここのはチキンだ。

これに香菜をタップリ載せてナンプラーを少量かけて食べるのが旨い。


 お次はフルーツ。

パパイヤ、マンゴスチン、パイン、ランブータンが取り放題である。ここぞとばかりにマンゴスチンを食べまくる。

マンゴスチンの実の割り方もだいぶサマになってきた。

ああ、毎日こんな朝食を食べていたら、僕はきっとすぐに体重が70Kgを超えるな。でもいいや。3日間だけだから、、、と思い、もうひと皿、ビーフンとカオパッを獲りに行く。

合計で4皿回転した朝食であった。
本日はタイの畜産加工メーカの視察である。

タイ北部名物「ソムタム」は路傍のファーストフードである。

 タイの畜産物加工メーカであるベタグロ社に向かう途中、バスがガソリンスタンドに泊まった。トイレ休憩の一時、併設された売店に行くと、ソムタムを作ってくれるコーナーがあった。

いい感じに渋いおばちゃんが作ってくれるらしい。「ソムタム、タオライ」と値段を聞くと、20バーツ(65円程度)だというので、つくってもらうことにした。

ソムタムのソムとは青い未成熟パパイヤのことだ。これを切り干し大根状にしたものを辛い和え物にするのだ。タイ北部のイサーン地方の名物料理だが、基本的にタイのどこでも食べられるようだ。このソムタム、路上で売られていることが多い。材料は多いが火を使わないので、簡単に店を出せるからだろう。

ソムの他に唐辛子、小さなニンニク、ライムトマト、長いインゲン豆、その他多種のスパイスを使う。まず、ピッキーヌーより大きめの唐辛子をクロックという鉢に投入。

「何本?」と訊かれたので、「すこーし」とゼスチャーする。ソムタムは辛くすると本当に辛い!自信のある人でも注意した方がいい。

その他にんにく等を入れると、木の棒で叩き始める。これがクロックですりつぶしたり叩いたりというのがタイの料理のベーススタイルだ。


ここにナンプラや化学調味料(←タイでこれが入らないのを観たことがない)などを入れ込んでいく。干しえびも入り、味が作られていく。


いんげん(ささげ)も生で投入。日本では豆を生で食べる習慣がないが、アジアやヨーロッパでは結構生で食べている。これがまた美味しい。


このあたりでようやくベースとなる味ができ、ここにソムの千切りを投入。そしてひたすら木の棒で叩いていく。この叩き加減が強いとパパイアの組織が壊れてしまうし、弱いと味が染みない。絶妙な加減が必要らしい。
 しばし叩くと、完成。


 完成したソムタムはビニール袋に入れて輪ゴムで留められる。これにパップン(空心菜)とキャベツの生のぶつ切りが一緒にいれられる。あとで混ぜながら食べるのかな。ここまで所要時間が3分程度か。実に熟練の手際であった。

 バスに戻り、道を揺られながらソムタムを食べる。甘辛い香りと、微細にニンニクが効いていて旨い!本場イサーンでは川蟹の塩からなどを入れてもっと旨味を出すようだが(蟹に寄生虫が居るとヤバイらしい)、そういうのがない簡易版のソムタムでも十分に旨い。

 タイに来たらやはり屋台だな、、、20バーツでこれだけの者を作ってもらえるのだから。
 実はこの直前に、ガソリンスタンドに併設された綺麗なコーヒーショップで、練乳がどっぷり入った甘~いミルクコーヒーを買った。


これがなんと80バーツ。タイ人の日給の半分以上である。やってられん。観光客相手とそうでないところの差が出ている。食い倒ラーは迷わず屋台なんである。

2004年08月10日

絶品プーパッポンカリーと地元民御用達旨口パッタイを堪能した夜

 僕の大学同期の友人がバンコクに数人いる。つい先日まで学校で一緒だったような気がするのに、タイで仕事をしているなんて、なんだか不思議な気分だ。しかも一人はITではタイ国内有数の大学であるAITで教鞭を執っており、もう一人は国連の正職員である。うーむ みな優秀極まりないのであった。

 さて夜飯は「なんでもやまけんの好きなのでいいよ。」ということなので、シーフードの旨いという評判の「ソンブーン」にする。この店を教えてくれたのが、第二回オフ会(in無二路)に参加してくれた驚異の世直しクレーマー、荒浜さんである。彼は以前、タイで広告代理店の仕事をしていたことがあるのだ!その彼が駐在時代の行きつけを教えてくれたのである。

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荒浜です。バンコク食い倒れの店、2軒紹介します。

「カオマンガイ屋」
「ソンブーン」

以下のHPにも記載ありました。場所はこれ参考にしてください。

http://thaigogo.fc2web.com/ayutthaya-3.html

特にカオマンガイ屋は感動必至!加賀谷君がタイに行った時にも教えて、気に入ってくれたみたいです。なぜかこのHPでは評価イマイチですが。カオマンガイだけでなく、スープも絶品!深夜までやっているので、仕事の後、よくタイ人スタッフと行ったものです。しかし有名になったんだなあ。。。ワールドトレードセンター近く。

「ソンブーン」は、僕はこのHPに出ている店ではなく、ラチャダー店によく行っていたのですが、どこでもハズレはないと思います。

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今回、スケジュールの都合でカオマンガイ屋には行けなかった。しかしソンブーンは行った!のでここにレポートしよう。

ソンブーンは二店あって、今回行ったのは本店ではなくスリウォンという通りにある店だ。フォーシーズンホテルのあるラーチャダムリ地区からタクシーで7分くらい。

店の入口にはすでに氷の上にカニがどわっと並んでいるディスプレイがあるので、すぐわかるはずだ。店にはいると、タイ人も外国人も一杯だ。ここは地元の人もよく来る店らしいので、味は確かだろう。

満杯の客の中、僕らは3階まで通された。今回ぼくを導いてくれたのは、大学AITで働く”つっちー”である。インターネットの世界では知らぬ者の居ない、かの村井純先生の愛弟子で、今回タイに「20年くらい行っておいで」と送り出されてしまった、幸せなのか不幸なのかわからないヤツである。

もう一人の国連に勤める友人Sが後から来るというので、待っている間に数皿突くことにする。

プーパッポンカレーが名物なので、これは全員揃ってからにしよう。とメニューを観ていると、日本でタイ料理と言えばここに行く、の六本木バンコクレストランでは食べられない「トートマンクン(エビのすり身だんご)」がある!速攻で頼んだ!そして春雨サラダのヤムウンセン、パッカナー菜のオイスターソース炒めで、クロウスタービールを飲み始めた。

■トートマンクン

 これがトートマンクンである。外側のカリッという皮と、すり身にしたエビの香りがふわりと香る一品だ。

■ヤム・ウンセン

 有名なので解説はいらないだろう。ヤムとは和えたサラダのことで、ウンセンは春雨だ。ここのは結構辛い!美味しかった。

■パッカナー菜の炒め物

 どこに行っても必ず頼むひと品。

このパッカナーという菜っぱは、ぜひ日本でも作りたいのだが、、、無理かなあ。茎のパリシャク感と味の濃さが絶妙で、モノにしたいのだが、、、

 そうこうしているうちにメンバーが揃った。国連のSに、もう一人国連で働く才女、アラゴンがジョインした。そこで出てきたのが、本日の主役である。
■プーパッポンカレー

 大ぶりの蟹をカレーペーストで炒め、卵で閉じたものだ。これが最っ高に旨い!蟹の旨味が出たカレーに卵が絶妙に絡むのだ。

 このプーパッポン、日本で食べるどのカレーよりもこってりしている。更に真っ赤な油がにじんでいるが、これは自家製で手を入れた油だろう。ご飯を所望し皿に空け、カレーの卵とネギの部分をかけて食べる。と、ごま油のような、豆っぽい旨味を含む香りが鼻孔を抜ける。

「これ、ピーナッツ油だね。」

とS女史。なるほど、そうだな、ピーナツ油だ。これのおかげで、蟹の旨味とカレーの魅惑的な味、そしてそれをまとめる卵という全体に、コクがプラスされているのだ。蟹の実ではなく卵に旨さが移っているのが面白いところである
■この語、春雨とエビの土鍋煮、魚の丸揚げなどを食べるが、どれも水準を遙かにクリアしている。

「うーん 腹一杯。」

「うそ!やまけんらしくない!美味しいパッタイ屋さんあるからいこうよ!」
おおおおおおおおおおおおお
 パッタイには目がない俺である。一も二もない。すでに10時過ぎだが、早速にパッタイ屋をめがけ、タクシーを停めるのであった。

パッタイの名店探訪~屋台もいいが店のパッタイはやはり複雑に旨い!

 ソンブーンのあるスリウォンからタクシーで10分ほど走る。S女史とアラゴン女史の職場である国連の建物の近くにあるのだそうだ。国連の事務所は、なんとムエタイの殿堂の一つ、ラジャダムナン・スタジアムのすぐ前にあるらしい。過去、ラジャダムナンには観に行ったことがあるのを思い出す。今回はムエタイを観られなかったなぁ。

 そういえば、食い倒れとはまったくの余談になるが、先日行われたK1-MAXという中量級のキックボクシング大会で気になることがあった。ムエタイの勇士が圧倒的な地力の差を魅せて優勝をもぎ取った。しかし、テレビの解説は対戦相手を応援するばかりで、勝敗が決した後も、このムエタイ戦士を褒めるようなことを全くしていなかった。なんと狭量な態度だろうか。全くのアウェーで見事な勝ちをもぎ取った彼に対する態度ではない。きっと対戦相手のマサトも、あとからテレビを観たら恥に感じるはずだ。いや要するに、つまらないテレビ特有の文脈から脱した価値観で生きていくことが必要だなぁ、ということだ。これは食べることについても同じだと思う。

閑話休題。
タイのタクシーは荒っぽくバカっ速い飛ばしっぷりでナショナル・スタジアムを駆け抜けていった。

「ここ、ここ!」

アラゴンが嬉々として降り立つ。どうやら僕が本当に大食いなのかどうかを観てみたいらしい。いや、僕はそれほど大食いではないのだが、、、


 パッタイは屋台で供されることが多いのだが、当然専門店もある。で、僕の思うところなのだが、屋台で出されるものよりは、確実に店舗の方が旨いと思う。福岡の博多ラーメンも、最初は屋台の珍しさに惹かれるが、やはり店舗で営業している店の方が最終的には旨いと思う。無論、例外はあると思うのだが、厨房設備の充実度合いなどを考えれば、どうしてもそうなってしまうだろう。格闘技の世界でよく「同じ技量ならば、体重が重い方が強い」と言われることと似ている。

 この店では店先に調理器具一式があり、特大の中華鍋をブワンブワンと繰って、オレンジ色に染まったパッタイを作っていた。それを薄焼き卵で包んだものがこの店のウリらしく、卵包み専門の女性が2名も配されている。

 メニューには当然のごとくパッタイしかない!それも、卵に包むか包まないかくらいの差しか無いようである。従って着席後には、どこに行ってもパッタイに共通して添えられる生モヤシと生ニラ、そしてマナーオ(ライム)が出てきた。

この生モヤシをできあがったパッタイに混ぜ、生ニラを囓りながら食べるのである。日本人は「えっ??」と思うだろうが、これが実に合う。もやしは日本のモノよりおおざっぱに作られているようだが、総じて日本のより少し短くて太め、シャクシャク感が出るように作られている。ニラは明らかに日本のそれよりも茎が太く、旨味があり、そして刺激成分が少ない。だからポリポリ食べられるのである。日本のニラは規格上、カセットテープのように薄く仕上げられているが、タイのふっくらしたニラの方が旨いと思うのだが、、、これも土壌特性の違いだろう。

「お薦めは、やっぱり卵包みだねぇ~」

というアラゴンの言に従い、卵包みパッタイを4人で2つ所望した。

「やまけんだったら1つ食べられるでしょぉ~」

とはS女史だが、俺はバケモノじゃないんだよ!もう喰えんわぁ。

さてパッタイだが、ひっきりなしに来る客のため、2人がかりで中華鍋を振っている。

 鍋を覗くと、やはりその鮮やかなオレンジ色が際だってみえる。パッタイの造り方自体は、それほど難しいもんではない。あらかじめ8分くらいぬるま湯で戻しておいたセンレックという中太の米麺を油で炒め、具を投入し、ソースを加えるのが基本だと思う。

 具材には干しえび、もやしとニラ、赤タマネギなどに豆腐を発酵させたようなもの(厚揚げの時もあり)、その他という感じだろう。

しかし、調理法自体には秘密があるわけではなく、肝心要なのはその調味ソースである。これがあまりにも独特なのだ。僕はタイ食材屋でパッタイペーストという瓶入りソースを見つけて買ったことがあるが、そのソース自体はやたらと甘い、ジャムのようなものだった。一体これがパッタイになるの?と心配になったのだが、ナンプラと共に炒めると、ちゃんとパッタイの味になった。かなり複雑な味の組成だとみた。

「あ、なんかタレっぽいの運んでるよ!オレンジ色だね!」

とアラゴンが言うのをみると、男がなみなみとオレンジの液体で満たされた鍋を運んでいる。うーむ PETボトルに入れて持ち帰りたい、、、

そうこう言っている内に、パッタイが運ばれてきた!これが卵包みパッタイである。

東銀座の歌舞伎座横にある「喫茶YOU」の官能的オムレツのような、踏みにじってやりたいハカなさを感じさせるではないか。この一枚の着衣を乱暴にも切り裂くと、中からしっとり濡れたオレンジ色の花弁、、、ではなかった麺が顔を覗かせる。

 さて、ここからが勝負だ。ご存じの通りタイ料理は、自分好みの味に仕上げて完成だ。僕は砂糖をタップリかけ、強めにナンプラを効かせ、酢は少々。砕きピーナツはドンドンかけ、マナーオを2つ分絞る。唐辛子はあまりかけないというスタイルだ。このかけっぷりに一同から非難の声が挙がる。「一口食べて味を見てからかけなよ~」もっともな話だがヤダ。パッタイはこれが一番旨いって信じてるんだモン。

このパッタイ、実に旨かった。腹一杯だったので食味感が鈍っていたかも知れないが、非常にテイスティだった。確かにダテに店舗を張っていないな、というレベルだ。少しベースが甘めで、しっとりとした作りだ。砕きピーナツと合わせると、水分をうまく吸ってくれるので、味の濃さが前面に出てくる。

「美味しゅうございました!」

残念なことに店の名前とかはまったくわからん。アラゴン、申し訳ないけどコメントに店の名前と場所を書いておいてください。よろしくね。

 この後、トーストとミルクコーヒーを出すという面白い店に連れて行ってもらったが、12時で閉まるようで目の前で片づけをしている。しかしもう、腹一杯なのと眠いので意識朦朧としており、ちょうどよかったかも。

 最後に花市場を歩く。市場のエネルギーとカラフルな花々の色彩に圧倒されながら、しかし今宵のパッタイのオレンジに勝る鮮やかなカラーはないな、と思うのであった。

バイカバオご飯は超ファーストフードなのであった。

 先日、すでにクローズした六本木バンコクに顔を出したら、店長のノート君が「みんなヤマケンのホームぺージみて来るヨ。みんなバイカバオご飯頼むからすぐわかるヨ!」と言っていた。旨いだろ、バイカバオ。
 タイではあの料理は超定番メニューだ。ご飯ものの屋台で周りを見回すと、必ず2~3人はこれを食べている。ただし、鶏肉を使ったものと、豚肉と使ったものがある。基本的には同じだと思うが、、、

 路肩で小さな店を営むおばちゃんに豚肉バジル炒めかけご飯、目玉焼き付きを頼む。

にこやかなおばちゃんは早速に中華鍋に火を入れる。その横で細かく刻んだ豚肉をお玉一杯分用意。

油を鍋にひいて豚肉を投入する。すぐに火が通るところに、ニンニクとタマネギのみじん切り、そしてホーリーバジルを投入。このバジル、日本で一般的なスイートバジルではないので注意。使うのは香りが刺激的なホーリーバジルである。

これに調味料を入れるが、フライ返しにナンプラ、オイスターソース、味の素(必ず入る)、パームシュガーなどを少しずつ取り、一気に鍋に注ぐ。ジュワっと煙が立つのをあおり返し、これで具が完成。この間2分足らずである。

 これに、油を多めにいれて目玉焼きを作る。ご飯にからむよう、黄身はトロトロのままである。これを載せ、きゅうりのスライスを添えて完成である。所要時間3分半程度の早業であった。

早速ナンプラーと唐辛子粉をかけ、ぐちゃぐちゃに混ぜて食べる。ホーリーバジルと刻んだ唐辛子のつんと来る香りとオイスターの風味が、火が通るかとおらないかの際にあった溶岩様の黄身と絡んで抜群に旨い!

ちなみにこれも30バーツである。タイのファーストフードは、実に早くて安くて旨い!しかも若者から高年齢層まですべてをフォローする内容である。

 ああ、毎日喰いたいなぁ、、、と思いながら、この後の旅程で2回この料理を食べたのであった。

2004年08月11日

旅先での市場巡りはワンダーランドだ! バンコク・オートーコー市場

 最終日は終日フリーだ。食材をたんまり買いこみたいので、昨晩のS女史に教えてもらったオートーコー市場まで行ってみることにした。

 この市場は有名なウィークエンドマーケットの側にあるが、残念ながら週末ではないのでこちらは開催されていない。なので、その奥にあるオートーコーに行くのである。
 市場があるモーチット駅までは、BTSというモノレールみたいな電車で行く。これが極めてわかりやすく、渋滞もなく、明朗会計で、バンコクで最高の乗り物かも知れない。

 モーチット駅から歩いて20分くらいだろうか。車通りが激しい中を信号もないままになんとか渡りながら歩く。「ほんとにあるのかよぉ」と思いだしたあたりでようやく市場らしきモノが見えてきた。ふ~。

 ここは市場とは言うものの、日本における卸売市場のような形態ではないみたいだなぁ。卸売をするセリ場みたいなのはなさそうである。小さな販売業者が集まった市場のように見えるのだが、どうだろうか。料理名以外のタイ語が出来ないのできけなかった。

 買いに来ているのはどうも主婦が多そうだ。あ、でも時々、業務用と思われるような買い付け方をしているおばさんも居る。しかし、すごい商品数で圧倒された。

 青果物の店は、それこそ50カ所以上は出ているだろう。果物屋と野菜屋では、なんと果物やの方が圧倒的に多い。日本と同じく、野菜よりも単価を取れるからだろう。果物屋でマンゴスチンを買うと、2Kgで40(150円くらい)バーツだ。重いからもっと少なくていい、と言っても2Kgが単位だから、みたいに言われて持たされてしまった。
 その隣でランブータンも買う。ランブータンはこちらの言葉で「ンゴッ」という。なんだか笑ってしまうが、比較的簡単に発音できる。ちなみにマンゴスチンは「マンクッ」。カッコイイ響きである。
 僕が気になるのはやっぱり野菜だ!店先を観ると、多種多様で非常に新鮮。これぞマーケットである。日本の卸売市場は消費者向けの小売を普通はやらないから、はっきり言って市場内を流しても面白くない。(築地市場の場外で野菜を販売したりしているが、あれは場外であって市場内ではないのだ)
タイのこのような市場ははっきりと消費者向けというカラーがあり、とてもよいと思う。

 ホムデンという名の小さな赤タマネギを買う。これとタイ独特の小さなにんにく。これに加えて野菜を数種類買った。バイマックルーとカーとレモングラスがセットになったトムヤムクン用スパイスセット、新鮮極まりないパクチー、僕が愛するパッカナー菜、そして世界で何番目かにからい唐辛子、ピッキーヌー。
 これらを併せてなんと60バーツにしかならなかった!びっくりした顔をしたら、オヤジが「どや、安いやろ?」というようなことを笑顔で言っていた。タイ語がわからなくても結構いけるもんだ。でも、おっちゃんは「日本人なのに、こんな現地の人間が買うようなもんばっかり買って、どないするん?」という感じの不思議そうな表情だった。いや、食べるんですよぉ、、、


 これは、味噌を小分け売りする感じでカレーペーストやカピ(エビ味噌)を売っている。そう、グリーンカレーやレッドカレーのペーストは、本来こうしてフレッシュが売られているものなのだ。いや、本来は家庭で作るんだけど。

 美味しそうなのでグリーン、イエロー、レッドの3種を少しずつ買い求める。指を一本立てていたので100バーツかと思ったら10バーツ(30円)だった!うーん さっちんがコメントに書いてあったけど、値切る必要まったくなしだね。ちなみにこの女性は、さっきの八百屋のおっちゃんの奥さんらしい。ひじょーにいい感じである。カメラで撮影してたらまわりのおばちゃん達から、「撮ってるわよ!綺麗に写してもらいなさいよ!」みたいに囃し立てられている。

 さて
こいつを観て欲しい。なんとカブトガニである。びっくりしたぁ、、、長島勝美君が「カブトガニ食べられるらしいよ!」と言っていたのだが、本当に無造作に置いてあった。どうやら今は旬ではないらしく、出盛りの時期には卵を抱いていて、それをボイルして食べるのが旨いらしい。うーむ 一度くらいは食べてみたいかな。どういう味なのだろうか。次回バンコク来訪の折は、ソンブーンで所望してみたいと思う。本当に旨いんだろうか。丸のママ出てくるのは勘弁してほしいな。

 出た!真ん中にあるのは、巨大シャコである。日本の寿司ネタになるようなもんじゃない、ひたすらデカいシャコなのである。こちらでは蒸すか揚げてスパイシーなソースをかけて食べる。割と大味。
 そう言えば昔、僕が行きつけにしていた創作寿司屋でこの巨大シャコの話をしたら、「そんなでかいシャコ、いるわけねぇ」と言われ、必死に説明したが信じてもらえなかった。この写真を見せてやりたい、、、
 これを寿司匠にもってったら、どういうのを握るだろうか。ふ、寿司、タイでも食いてぇ。


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さて
市場をぐるっと周り、小腹が減る。市場だから当然、飯を食べる場所もあり、奥の一角がフードコーナーだ。小さな出店が並び立ち、テーブルに座って好きなものを注文できるようになっている。
 腰を下ろしてみまわす。目当ては、丸の鶏が吊るされているディスプレイだが、、、おお、あった!

 これがカオマンガイ屋である。カオマンガイは、鶏のスープで炊いたご飯に鶏のぶつ切りを載せ、タレをかけて食べるというシンプルなものだが、海南チキンライスのように癖になる旨さなのだ。
 先日書いた食い倒れクレーマーのハマーさんが教えてくれた名店には行けなさそうなので、ここで食べてしまおう。屋台に近づき「カオマンガイ」と言うと、頷いて作りだしてくれた。あとは自分の席に戻って待っていると、出てきた。これがカオマンガイだ。

右側の小さな椀に入っているタレをかけて食す。この料理は辛いものではない。久しぶりの優しい味わいにホッとする。

鶏肉は柔らかく茹でられていて、タレと絶妙にマッチ。非常にアロイ(旨い)!

 食べ終わると、その二軒どなりの屋台で、豚肉のバジル炒めであるパッ・ムー・バイ・ホラーパーをご飯にかけたモノを持っている店おばちゃんが居る。
「それ、作ってよ!」
と言うようなことを身振りで示すと、笑いながらその持ってたのをくれた。なんだ人のではなかったの?

目玉焼きが載っていないのが寂しいが、これにナンプラをかけて食べる。味付けは柔らかく、昨日の水上マーケットちかくの食堂で食べたやつのほうが旨かったかな。

ま、これは日本の定食屋でいう豚のショウガ焼きと同じようなもんで、どこにでもあり、店によって味が違うが、それほど目をつり上げて探求するようなものではないらしい。

 それと一緒に、腸詰めを食べる。こちらの腸詰め類は概して旨い!写真のは肉だけだが、中には酸っぱく発酵した米を一緒にいれていたりするのもあって、極めて複雑絶妙に旨いのだ!これこそ買って日本に持って帰りたいが、検疫法があるので無理なのだ。残念。

2皿食べたけど、まだお腹一杯にならない!ので、もうひと皿パッタイを食べようと思ったら、その隣に麺にカレーをかけているのを発見。おばちゃんに訊くとよくわからない名前を言っていたが、わからないので注文した。

これがワンセット。カレーがけ米麺に野菜と各種調味料を混ぜて食べるらしい。
野菜はホーリーバジルとキャベツだ。このホーリーバジルの登場回数がやたら高いのがタイっぽい。

こいつらを混ぜ込んで食べる。どうってことない味だけど旨い。これで25バーツなり。ミネラルウォーター買うのと同じくらいの値段だ。うーん

 この後、たんまり食材とお土産品を買い込んで帰着。総量で20kg分くらいの荷物で、重くてしょうがなかったのであった。

2004年08月12日

タイからの便り ~カオマンガイ屋台の実相

おととい、タイから帰ってきました。完全に食い過ぎだ!

さて
タイでいろいろと教えてくれたつっちーから、食い倒れ党員ハマーが書いていたカオマンガイ屋台にいったということでレポートが来たのでここに掲載しよう。つくづく行けなかったことが悔やまれる。

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 チットロムで降りて、ビッグCのある通りへ歩いて行くとGAYSON周辺に食べ物ではない路上販売のお店がたくさん列んでおりました。食べ物の匂いを感じつつ、なにかあるだろーとペップリーの方角へあるいていくと、目移りするほどの数の屋台が列びはじめたのです。よっしゃこれでご飯にありつけるぞ~と思い物色をしはじめると、ソムタム屋あり、何でもご飯やあり、デザート屋台ありで、なんか良いところを見つけたな~って感じ。タイ料理を一人で食べるときは、しばらくここで良いや~と思えるぐらいの品揃えでした。

 で、やまけん食い倒れ日記に書いてあったようにこのへんに美味しいカオマンガイ屋があるらしい。目印はピンク色のTシャツ。それだけを探して歩いて行きました。見つけましたよ。カオマンガイ屋。本当にカオマンガイしか売ってない。まわりをぐるっと見渡しても老若男女、みんなカオマンガイを食べてる。

 で、早速、頼みました。アオカマンガイカップ。飲物は? と聞かれたので、なぜかアオナームペプシサイナムケンと応える。別に炭酸が好きなわけじゃないんだけど、こういう飲物か水しか単語を知らんのだからこれ以外頼めない。あ、チャーローンってのも覚えてるなぁ。でも、こういうところで出してくれんのかな?
 閑話休題、ご飯は鳥の味がしっかりついてて、ほかほか、鳥の身も他の店より若干大きいような気がする。皮も付いているから皮ぎらいの人は大変かもね。で、ここの店の売りは、本体よりもソースだった。本来は好みで入れるはずの唐辛子が最初からどっさり入ってる! そんな辛いソースをだだーっとご飯の上にかけ、あっという間に食べきった。だって、お腹がすいてたからね。

 しかし、それを差し引いても美味しかったこともあり、一気に食べ来ちゃったのだ。付いて来たスープも美味しかったかな~。若干、化学調味料の味もするんだけど、まぁタイに住んでる以上しょうがないのかも。なんだが、美味しいスープとともにあっという間に食べ切ったのです。やまけんならもう一皿食べてるだろうなーと思いつつ、お金を払ってお店を後にしたのでした。

 帰りに切り果物屋さんでパイナップルを半身買いし、トゥクトゥクで家に戻ったのでした~。片言ではあるけど全部タイ語で交渉し、家まで戻ったのです。本格的に住みはじめて3週間。自分の成長を少し感じた瞬間でした。

 いやー。結構大変ね。やまけんはこれを毎日やってんのか~。やっぱり僕には
ブロクは無理だ~(^^;)
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 いやぁ~ 食いたかったぁ~!つっちー、今度帰国する時は持って帰ってきてくれ~

2004年08月26日

これは落とし穴 秋田空港にもいい郷土料理があった! 秋田空港2F「杉のや」

 今回は日帰りで秋田である。日帰りというのは実に辛いものだ。大体空港というのは郊外にあるため、空港から目的地まではさらに1時間以上をかけねばならない。往復2時間に会議を加えると、日帰りでは飯を食うのがやっとということになる。こう言う時に、空港に旨い店があると嬉しいものだ。宮崎空港の「魚山亭」が大好きなのはそういう理由である。

 で、秋田だ。ここ数ヶ月、最低でも月に2回は秋田に出張が続いていることは述べた。秋田というのは外食文化よりも内食文化の色が濃い地域で、秋田県のポテンシャルを最大限に発揮した旨い郷土料理にありつくまでにかなり時間がかかった。この辺も読者の皆さんはご存じだろう。ま、店との出会いがあるまでに相当右往左往したのであるが、実は大きな落とし穴があった。秋田空港に、入門編とも言えるよい郷土料理屋があったのである。

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 先回来た時にはまだ真緑の田んぼだったのが、1ヶ月足らずで稲の穂が黄色みがかり、穂が張り充実を始めている。今年は作況指数が105くらいになりそうだというのがよくわかる、豊作年だ。とはいっても、きょうび豊作になると貧乏になる。米の単価が下落してしまうので、産地としては売るに困る状況なのだ。それは悩ましいことだが、でもやはり稲がたわわに稔っていくのを観るのは嬉しいものだ。

「今日は昼に、農家さんがやっているレストランに行きましょう。」

N氏が車を差し向けたのは、空港から車でわずか10分程度のところにある、農家が経営しているというレストランだ。レストランと言っても、外観は普通の家の二階。モロヘイヤうどんなどの麺類を製造していて、それを食べさせるのがメインの店らしい。靴を脱いで(下駄箱があるのだ)店内にはいると、中はこぎれいなログハウス風だった。

■ゆう菜や
秋田県雄和町向野字前開45
018-887-2866
http://www.pref.akita.jp/fpd/nookaminshuku/sanpo-08.htm

モロヘイヤうどん、野菜の天ぷら、本日の一品などが並ぶゆう菜家セット1050円を大盛り(200円)にして頼む。

 モロヘイヤを練り込んだうどんはよくみかけるが、よく考えたらあれはネバネバするので、粉のつなぎになるのだろう。見た目を緑にするだけではないんであった。運ばれてきた膳は完全に野菜と穀類で構成されたものだ。

オーナーが農家さんだから、自家野菜中心であり、どう考えても新鮮。天ぷらもうどんも旨かった。秋田に来たら絶対どうこうというのではなく、地元の人たちが昼食を食べに来るというような感じで、満杯の客を迎えていた。

さて
本日の仕事を終える。田んぼの中にヌボっといきなり近代的建築が建っているというアンバランスな農業試験場に、あきたこまちなどの銘柄米の稲穂が飾られている。この試験場であきたこまちが生まれたらしい。

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 さてそして空港である。秋田空港の2階には数店舗のレストランが入っているが、エスカレータを上がって一番最初に目に付くのが「杉のや」という、民芸風の外観の店だ。ディスプレイや品書きをみると、わっぱめしや稲庭うどんなどの郷土料理が並んでいる。こういう店ってかなり微妙。郷土料理を出す店という位置づけはすぐにわかるのだが、旨いものが出てくる試しがないというのがほとんどではないだろうか。しかし、それ以外のセレクトはなさそうで、あとはなんだかカフェレストラン風の店しかない。秋田の飯を食べる店は、空港ではここしかなさそうなのだ。まあいいか、と思い入ることにした。

 民芸調なのに洋装のウェイターさんがメニューを持ってきてくれる。

「何か秋田を満喫できるようなメニューありますかね?」

「あ、それでしたら、、、 一番お高いメニューなんですが、秋田三味御膳というのがあります。」

『秋田三昧』は2075円だ。確かに安くはないが、内容はかなり充実している。
・鰰(ハタハタ)の麹漬け
・比内地鶏とマイタケ煮物
・とろろとんぶり
・蕗(フキ)の葉ご飯
・がっこ(漬け物)
・稲庭うどん

これだけ付いてきて2000円ならいいかと思い、これをオーダー。

程なくして運ばれてきたのがコレだ!

あまり期待していなかったのだが、なんだか結構充実している。それと、一品一品がしっかり調理されているような感じだ。

■蕗の葉ご飯

メニュー写真をみただけだと、高菜の漬け物みたいなのでご飯を巻いた物かと思ったが、違った。

「フキの葉で山菜ご飯とフキの煮物、ニシンを巻いて、蒸してあります」

手が込んでるなぁ、、、ご開帳したのがこれだ。

なんとまあ美しいたたずまい。ご飯を食べると、ほのかにフキの葉の香りが鼻に抜ける!ご飯もきちんとほどよく蒸されていて、インスタントな出来ではない。

「う、、、旨いじゃん これ、、、」

初っぱなから、いい意味で予想を裏切ってくれる。ニシンの身をほぐし、併せて食べる。どこの料理なのかはわからないが、とても美しいご飯であると感じた。

■鰰の麹漬け

ハタハタは秋田を代表する魚だが、このハタハタの寿司が最高だ。寿司と言っても握りではない。米や麹で発酵させた、いわゆる飯(いい)寿司だ。なれ鮨といってもよい。前に和歌山でサバの深なれ鮨を食べたが、あの部類である。しかしハタハタの寿司は非常に上品で旨い!今回食べたのは麹(こうじ)漬けで、厳密には寿司とはいわないようだが、純米酒の最高のつまみになりそうな味であった。

■チョロギの漬け物

がっこ(秋田弁で漬け物)の中に、あのチョロギがあった!関東、関西にはこれを漬け物にして食べる習慣はほとんど観られないと思う。東北だけですな、コレが観られるのは。コリコリしていて旨い。思わずこの後、空港売店で買ってしまった。


■とんぶり


■比内地鶏とマイタケ煮物

これに稲庭うどんがついてくるので、かなりお腹にも溜まる。

「旨いね、ここの料理」

というと、ウェイターさんが微笑んで

「ありがとうございます。実はこのメニューは、結構お得だとお思います。」
とのことだった。後で秋田県庁のN氏やI氏に訊いたところ、

「空港ですから、ヘタな物は出せないと言うことで、わりといい物を使っているはずです」

と仰っていた。

飯、旨ければ全て佳し。日帰りのあわただしい出張の中、充実した食空間に出会ったのであった。

2004年09月04日

名古屋あんかけスパの世界は奥深く広い! 「パストランテ」

 古巣のN総研から、農業がらみの仕事に同行して欲しいというオファーをいただいた。僕の社会人としての最初のキャリアとなった会社であり、受けた恩は計り知れない。一も二もなくお手伝いをすることにした。愛知県の某市にてJAの出荷担当者さんと桃・梨農家さんのヒアリングをし、市のお偉いさんにブリーフィング。移動を含めるとタップリ一日の仕事を終え、名古屋に移動する。

「山本君、ホームページ観てるよ。今日はどこに行くの?僕はあんまり食べられないけど付き合うよ。」

と言う敏腕コンサル井上氏を、どこに連れて行こうかとしばし思案したが、実は最初から決まっているのである!

名古屋と言えば、あんかけスパゲッティである。

スパゲッティハウス「ヨコイ」に代表されるあんかけスパは圧巻の名古屋料理だ。2.5mm程度の極太スパを茹で上げて水で洗った(!)ものをたっぷりのラードで炒め、その上に赤く着色されたウインナーとタマネギ、ピーマンを炒めたものを載せ、洋風とも和風ともつかぬドロッとしたトマトベースのピリ辛ソースを絡めながら食べる。これがあんかけスパの定番である「ミラネーズカントリー」略して「ミラカン」である。日本の他の地域には絶対にないこのスパ、一度目は旨さがよくわからないのだが、2度目からはきっと誰もが虜になってしまう中毒性を持っている。

このblogでもヨコイやチャオといった有名店を紹介しているが、僕はこれまでヨコイ一辺倒であった。しかし、読者のしうへいさんからこんなメールをいただいたのだ。

今週末に豊田まで出張されるとのこと、ヨコイやチャオもいいですけどあんかけスパはまだまだいい店ありますよー。

一番オススメなのは名古屋駅地下直通で行ける「パストランテ」です。近鉄の駅あたりを地下街に入って、名古屋三井ビル南館まで進みます。
地下街のさらに半地下(わかりにくくてすみません)になってるところにあるこじゃれた店がパストランテです。

辛味と酸味とコクの調和が素晴らしいあんソースで、具もあんかけにしては(正直、酷い店多いです)しっかり。ヨコイ好きな友人を連れて行くと、ほぼ間違いなくパストランテに転向します。モンダイは営業時間で、確か午後4時までしかあんかけスパは出していないはずです。昼時に名古屋駅に寄れるようならゼヒ行ってみてください。

なんと!こういう活きた情報こそが命である!これは是非行ってみなければなるまい!

と、○総研の井上さんをお連れし、急遽名古屋へ。あの辺は地下街が入り組んでいるので、どこか最寄りの地下鉄駅がないかなぁ、と、地下鉄鶴舞線の赤池駅から店に電話を入れる。ていうか、すでに20時になるので、あんかけスパは出してくれないかも知れないと思い、その確認。

「そうですね、ランチタイム限定ですけど、ミラカンならお出しできますよ。最寄り駅はやっぱり名古屋になってしまいます。」

と女性が教えてくれる。ならば行くしかあるまい!
30分ほどで地下鉄名古屋駅着。地下街を歩くが、方向感覚がわからずしばし迷う。かなり無駄足を践んで三井ビルの地下2Fに行くと、、、あった!

店内からウェイトレスさんが外を見て談笑していたので、写真を横の方から撮影。店にはいると、そのおねーさんがニヤニヤしながら、

「お電話くださった方?」

「そうですそうですあんかけスパ食いに来ました!」

「今、一度店の横通りませんでした?」

「いや 撮影させてもらいました!」

「(笑)電話が赤池からだったんで、本当に来るのかなぁって言ってたんですよぉ」

かな~りフレンドリーな対応である。しかも、

「ミラカン以外でもお出しできますよ」

という。この店の名物だというローストビーフスパを食いたいが、オニオンタップリの定番ミラカンも食いたい。

「あ、じゃあミラカンにローストビーフをトッピングしましょう!」

まじ? すっげぇゴージャスじゃないか!ちなみにそれはこれである。

「サイズはどうします?4段階ありますけど、、、」

「いちばんでっかいのください!」

「じゃあダブルですね。」

ダブルとはこいつである。

というやりとりの後、やってきたのがこいつである!

■正面図

これだけだとサイズが分からないだろう、、、レギュラーサイズとの比較を観て欲しい。

■普通盛りとの比較

どうだ!?これ、有楽町ジャポネの盛りに換算すると、横綱よりすこし多いくらいである。しかもジャポネよりもあぶらギッシュである。麺は多量の油分で炒められているのだ。

「いっぱい食べて下さいねぇ~」

とチャーミングなおねーさんに言われるまでもなく、ガンガン食べられる量である!

フォークでスパを一巻き。麺が極太なのに加えてソースがデロッと粘質度が高いので抵抗力が極めて強く、巻くのが重い!そして麺を巻くごとに滲み出てくる油!麺をネットリ感の強いあんソースに絡めて口に運ぶ。

超コッテリとした旨味に、胡椒の香りと辛みがデュワッと静かに炸裂する。この胡椒の効き方があんかけのポイントなのだ。酸味と奥深みが混じった正体不明の味の組成。にわかには「旨い」と言えなさそうな、しかしやみつきになる味なのだ。

「おおっ 確かにコレ、ヨコイやチャオとは旨味の加減が違うゾ!」

なんというか尖っておらず奥行きがあるソースなのである。ヨコイがこのあんかけスパを確立してから、幾多の店がオリジナリティを加え改変してきたこのジャンルの、上品な進化版といった感じであろうか。しうへいさんのリコメンド、非常に的を得ている!

ローストビーフの肉と赤肉ウインナーとタマネギをフォークにぶっ刺し、麺を絡めて大口あけてかぶりつく。

「ローストビーフは本当は一枚だけなんですけと、二枚にサービスしておきましたよ!」

と嬉しい一言が。もう、おねーちゃん2人は厨房脇から、ワシワシ食べている我々を観て大笑いしている。ノートPCで食い倒れ日記を見せると、

「いやーん ここに載せてくれるんですかぁ?」

と喜んでくれた。どうだ載せたぞ、ねーちゃんズ!

「最近はお客さんみたいに東京から来てくれる人も増えてきたんですよ。口コミみたいですけどねぇ。」

おそらくまずヨコイで食べ、衝撃を受けた後、この店を知ってしずかに満足するという感じなんだろう。

ミラカンダブルサイズ・ローストビーフ載せはかなり甚大なボリュームである。麺を炒めるのに使われている油の量はちょっと考えたくない程である。この写真に、テカっている油が見えるだろう。

ただ、ここのはラードではなくサラダ油ではないだろうか。ラード特有の香りとしつこさがない。だからこそダブルでもささっと(?)食べられる。

完食。

「わぁ~食べましたね」

「あとひと皿食べられるけど、これからみそカツ食べたいからやめときますわー」

これだけ食って1200円。感動的である。

厨房に行って若く大柄なシェフに「旨かったですよぉおおお」と言うとニコッと笑い「いや、私の上に大将が居ましてね、そっちの功績ですわ。また東京から食べに来て下さい!」と言ってくれた。恥ずかしがって正面写真は撮らせてくれなかったが、、、

「また来て下さい!」

おねーちゃん立ちとすっかりうちとけて店を出ようとする時に目についたポスターに、「本店は12月まで営業します」と書かれている。

「え?てことは12月以降はないの?」

「ビルを建て替えるんですよぉ~ この店も移転します。お名刺いただければ、移転先のお知らせをしますよ」

と言われたが、名刺が切れてしまっている。また来ることを近い、地下街に出た。

あれだけ食って胃袋はかなり満足しているが、やはりみそカツを食っておきたい。足早に名古屋駅の反対側地下街の矢場とんに向かうが、汗みどろになってたどり着き、観てみるとすでに閉店していた。21時にはのきなみ閉店してしまうらしい。早いゾ名古屋の飲食店!

 しかしながらパストランテには感動である。

「あんかけスパは2回目だけど、確かに旨い。」

と敏腕コンサルも仰っていた。しうへいさん、情報をどうもありがとう!素晴らしい店でした。

本日の夜は、某農業ソフトウェアのトップ営業マンであるK原の家に泊めてもらう。名古屋駅から電話をすると、「名古屋コーチン食べに行こうか!」と言うではないか!

夜はまだまだ終わらないのであった、、、

2004年09月05日

幻惑の錦にて名古屋コーチン料理を堪能 「鳥銀本店」

 名古屋の錦といえば大歓楽街である。夜21時過ぎに歩くと、クラブのおねーちゃんや和服姿のママさんなどがスーツ族を見送りに出たりしていて、非常に晴れやかだ。新宿の歌舞伎町なんかよりも全然ものすごいパワーを感じる。でも、そういう店にいっても美味しい飯はないので、俺は全然関心がないのであった。
(しかしながら、クラブのおねーちゃん連中は旨いものには目がない人たちが多い。情報源としては非常に重宝する場所である。)

 久しぶりにK原に会う。75Kgあった体重が25キロ減ったという彼は、まるでホストとみまがわんばかりの浅黒い肌に茶髪であった。

「すごいだろー、これ、肌が黒いのは薬のせいもあるし、茶髪なのも自然に色が抜けちゃったんだよ。」

彼は今年の前半に肝硬変で倒れ、死線を彷徨ったのである。数億円を稼ぐ営業技術は飲みの能力と言ってもいい。売り上げと引き替えに身体は蝕まれていったのである。そこから復帰してすぐ、名古屋に配属になった裏には、会社から「養生してくれ」という暗黙のメッセージがあったのだろう。奥さんからは「そんな会社辞めてしまえ」と言われながら、しかし気分一新のために名古屋で単身赴任生活を始めたのであった。

「そんなに痩せたお前を観るなんて不思議だよ。」

「やまけんも気をつけた方がいいぜ~食い過ぎにな」

さてヤツが連れて行ってくれたのは、名古屋コーチンを食べさせる有名店「鳥銀」である。

新橋にあるチェーンの「鳥銀」とは別モノなのでご注意。錦に数点支店を出すほどに人気のある店だ。

味噌煮込みなんかに使われているのは食べつけているが、名古屋コーチンを焼き鳥でまともに食うのは初めてかも知れない。カウンターに陣取り、とにかく焼き鳥数種を注文する。

「首肉、ねぎま、レバー、つくね、、、」

ここでは、2串で450円のネタと500円のネタに別れている。つまり1串最低225円で、やはり通常の鶏を食わせる焼き鳥屋からすれば割高だ(バードコートは別だが)。しかし、運ばれてきた串を食べて納得。

「旨いなぁ、、、」

旨い鶏だ。まずジューシーで、置いた串からジュワジュワと肉汁が流れ出ている。


もも肉を、炭火でカリっと焼かれた皮目から囓ると、軽いコゲ味の裏から清い旨味が立ち上ってくる。

ああ、これか、この味か。比内地鶏に感じる上品さが、ここにもある。しかし、この鳥銀の味付けはかなり庶民派でしっかりしている。タレで焼いているネタは濃い目加減で俺好みである。

刺身はあっさりしている。

僕はどちらかというと宮崎の地鶏たたきのような歯応えと濃い旨味を求めているのだが、この上品さもまたカラーである。かなり手を入れてある醤油につけて砂肝刺しを食べると、コリコリとした歯触りに清冽な香りがした。

「まあ、一時は何もやる気がなくなったんだけど、よく考えてみたら一度死にそうになって、でも神様が『まだ死ぬな』って戻してくれたんだよな。で、しばらく家に居て、子供と久しぶりにゆっくりできる時を過ごして、すごく幸せだった。だから、得した気分だよ。もう何も怖くないね。」

淡々と話すK原には全く気負いを感じない。この脱力加減は本当に死線を垣間見た人間にしかできないものなのだろう。安心したと共に、人間34年(彼は僕と同い年である)生きることの重さを感じた。

「はい、釜飯です! しゃもじでよく混ぜてお召し上がり下さい」

コーチンの肉がタップリ入った釜飯は、肉に味が染みていてこっくりと旨い。
釜飯としての軍配は人形町の鳥長に分があるが、これはこれで旨いものだ。

鳥スープを飲み、勘定をしようとすると、ヤツが俺を制して「まあ名古屋ではいいよ」とカードを出してくれた。

20分くらいかけてK原の部屋へ。名古屋城の堀端、中京新聞社の目の前の好立地にあるマンションの一室で、着いたらバタンキューだった。

しかし!
なんとそのマンションから50メートル地点に、大好きなコメダ珈琲店を発見!朝のモーニングはここと決定したのであった、、、

2004年09月06日

名古屋スタンダードの喫茶店文化を味わう コメダ珈琲店「シロノワール」

 名古屋での怒濤の夜が明けた。K原の部屋で目が覚めると、また腹が減っていた。

「朝飯食べに行こうよ。」

「、、、いきなりそれかよ。ほんと尊敬するよ。」

さて 名古屋で朝飯といえば、喫茶店のモーニングである。知っている人も多いだろうが、名古屋の喫茶店は、他所の喫茶店とは明らかに違う。メニューにはカツ丼や定食がずらりと記載されており、その内容は「軽食」どころではない。前々から思っていたのだが、我々にとっての「定食屋」が名古屋では「喫茶店」なのではないだろうか。でも名古屋の喫茶店では、飯を食べた後の「だべり」の場としても当然機能しているというのがミソだ。やはり独自文化だ。

 その名古屋の喫茶店で素晴らしいのがモーニングだ。よくあるモーニングはトースト、卵、珈琲といったものだろうが、名古屋ではウインナー、スパゲティ、サラダ、みそ汁、その他もろもろがついてくるか、バイキングになっているところもあり、ムチャクチャにゴージャスなのだ。名古屋の朝は、喫茶店のモーニングで。これが鉄則である。

名古屋の喫茶店文化については、僕がかなり前から参考にしているページがある。

■名古屋喫茶店物語
http://homepage2.nifty.com/kissaten/index.htm

 ドキュメンタリータッチで非常に良質なホームページだ。文章も抑制が利いていて素晴らしい!と思ったら、ホンモノのライターさんのやっているページであった。


 で、どこの喫茶店に行くのかということなのだが、、、昨晩、錦の繁華街から徒歩でK原宅に戻る道すがら、コメダ珈琲店を見つけたのだ!

 このコメダ、名古屋では知らぬ人の居ない喫茶店である。コメダについて一様に言われるのが「あそこの珈琲は濃い」という一言である。先ほど言ったように、名古屋の喫茶店はほぼ定食屋なので、珈琲よりもメシが充実している感が強い。しかしコメダでは珈琲に比重が置かれている。従って珈琲が旨いと言えるのである。
 しかしながら、コメダファンの間で最も郷愁を誘うメニューは珈琲ではない。ましてやモーニングでもない。コメダのモーニングはトースト・卵・野菜だけというシンプルバージョンだ。

ではなにか?

「シロノワール」 である。

シロノワールとは何か?

こんなんである。

でっかいほかほかのディニッシュパンの上に、ソフトクリームがドコーンと盛られているという代物だ、スケール感がわからないかもしれないが、かなりデカイ!ディニッシュの直径は13センチくらいはあろうか。

「きたきたきたーぁ!」

さっそくディニッシュを切り分け、ソフトをタップリとまぶして口に運ぶ。ディニッシュのきめ細かい肌にソフトが染みる。

パン生地に練り込まれた卵とバターの風味と、ソフトのミルクテイストがマッチして実に最高である!

さすがに食べ進むとちょっと飽きてくるのだが、その刹那、一緒についてきたメイプルシロップをかけるのだ!

これでまた味が変わり、コクが出る! 珈琲との愛称ばっちりである。
いやほんと、旨いなぁ、、、これで580円は安い!通常のケーキなんかより断然パワーが出るのである。だいたい、2名分くらい盛られているのだ。

 コメダのメニューは、通常の喫茶店よりはパン系に偏っているが、それでも充実している。

出張族はぜひ試していただきたい。コメダはチェーン店でかなりの数の出店がある。ホテルの人にでもきいてみて欲しい。

あんかけスパの新店を開拓し、夜の錦でコーチンも食い、朝はコメダのシロノワール。もう言うことはない。久々の名古屋食い倒れは実に充実していたのであった!

、、、実はまだ話は終わらない。強烈なオチがついたのだ。

 朝飯直後、名古屋駅地下街の矢場とん支店に急行したのだが、11時まで明かないそうな。残念!てまだ食うのかヨ! しかたがないので、弁当を買い込んだ。ひつまぶし弁当とびっくりみそカツ弁当だ。

■ひつまぶし弁当

これが存外に旨かった。メシが酢飯だったのがよかったのか。関西風のコッテリ鰻と酢飯がビタリとマッチしていた。

■びっくりみそカツ弁当


こっちはダメ。ミソソースが甘ったるくていやになる。矢場とんのドライ風味が恋しい、、、でもボリュームはそこそこだね。俺には2つ食べないと足りないけど、、、

さて、一路 神奈川の藤沢へ。母校の卒業生会(三田会という)の幹事会があるのだ。小田急線の湘南台駅からバスに乗り、学校まであと400メートルくらいに近づいたというその瞬間!

俺は驚愕した!

コメダ珈琲 湘南台店


なんでーーーーーーー
なんでココにあるのよぉおおおおおおお


びっくりした。最近、首都圏にも出店しているというのは聴いてはいたが、まさか母校の近くにあるとは思わなかった、、、シロノワールはやっぱりあるんだろうな。

もしお近くにコメダがあるという読者さん、ぜひシロノワール食べてください。カツサンドも旨いけどね!

2004年09月19日

沖縄編の同時進行版

いや、ようやくクライマックスの一つを書き終えた、、、でもまだ印象深い旅程が、あと2日分あるのです。もう少しお付き合いのほどを。

さて
沖縄を案内してくれた張本人である川端卓のblogにも、同時進行版が書かれています。沖縄の旅程をセットしてくれた張本人のコメントや如何に?
http://kwbt.jugem.cc/?day=20040908

同行の加賀谷のblogにも、まだ1日目だけですがUPされています。
http://www.kagaya.com/archives/003519.html僕のblogは料理中心なのですが、加賀谷のは人間模様中心ってことで、、、

さて、食い倒れ日記の方ではこの後、沖縄終盤編に向かいます。

2004年10月07日

茨城北部に楽園コースがあるようだ。 奥久慈・大子町散策

「やまけんさーん、今度うちの従業員達とお客さんとでキャンプ行きましょう、キャンプ。うちの鶏を仕入れている奥久慈シャモの組合のそばに、すごくいいオートキャンプ場があるんだって。そこに、途中にある直売所で常陸牛や豚、それに奥久慈シャモ買っていって焼いたら最高でしょ、、、」

というお声が、バードコートの野島さんからかかった。そんなん、一も二も無く行くに決まっているのであった。

「それでね、週末に下見に行こうと思うんだけど。」

「あ、おれその下見から行きますよ!」

ということに相成ったのだ。週末の朝9時、北千住に集合して高速に乗り、一路北関東へ。

バードコートには、竹鶴の石川杜氏に連れて行ってもらったのが縁で、野島さんとすっかり仲良くさせて頂いている。彼は仕事柄もあるが、みたこと無いほど旨い物好きで、旨い店にはほぼすべて訪れているんじゃないだろうか。それもそのはずで、店に訪れるそうそうたる食通の面々(山本益博さん、マッキー牧元さん、、、)が集まるので、その人達から旨い店を訊いて食べに行っているらしいのである。ウラヤマシイ。

「最近、余り人が寄らないちっちゃいサービスエリアに寄って飯を食うのがマイブームなんですよ」

といって小さなサービスエリアに本当に入っていく。ここで朝昼兼用のメシを食う。なるほど、高速道路の食堂にしてはムチャクチャに気合いが入ったメニューが並んでいてそそられるではないか!

思わずカツカレーと天玉そばを食べてしまった。


カツカレーが550円、天玉そばが400円くらいで、その辺の定食屋と同じレベルの金額ではないか。味もまあまあで、最近の高速はいいなぁと思ってしまった。

さて、車は一路、奥久慈シャモ生産組合へ。この車中で野島さんに色んな話を訊いた。

 奥久慈シャモは、茨城名物となりうる食材を作ろうと、ある畜産試験場の人が育種したものなのだそうだ。それも、3元交配という技術を用いて、名古屋コーチンとロードアイランドレッドを掛け合わせたメスと茨城の軍鶏のオスを掛け合わせている。これにより品質が安定するらしい。その特質として、胸肉が旨いコーチンの特性と、モモが旨い軍鶏の双方が出てくるという。

「筋繊維の細かさが他の地鶏と比べてもスゴイ。それに、皮が薄いからカリッと仕上がる。肉汁も適度で、焼き鳥にこれほど向いている地鶏はないと思います。」

と野島さんが言う。この惚れ込みようから、生産組合とは親子関係のようにしょっちゅう訪ねに行っている訳だ。飲食店のみならず、これは本当に大事なことだ。生産者は、ユーザの声を聞くことを心から欲している。足を運んで、お客さんの反応を話し、そして生産現場をみる。この当たり前のことが信頼関係を築くのだ。野菜も果物も、畜産物もみな同じ。

そうした四方山ばなしをしているうちに、組合に到着する。

■奥久慈シャモのページ
http://ibaraki.lin.go.jp/shouhi/001.html

「組合っていっても、小さい所帯だし、たいしたことないですからね」

と野島さんが控えめに言っていたとおり、組合事務所はログハウス風の小さな店で、ここから土手を降りていくと鶏舎が数基ある。残念ながら鶏インフルエンザの流行以来、部外者立ち入りは禁止になっているので鶏舎はみられないのだが。

「おじゃましまーす」

といって引き戸を開けると、注文票を書く後藤さんが出迎えてくださった。

「最近はどうかねー」

と世間話を織りまぜながら、野島さんの師匠である銀座バードランドの和田さんのお話や、シャモの供給体制の話をする。

この組合事務所では、シャモ肉を買うことが出来るのだが、通常店頭に並んでいるのは残念ながら冷凍肉だ。

「うちのシャモみたいに少ない羽数を処理してくれる食鳥処理所がこの辺にないんですよ、、、なので、福島の処理所に持っていっているんです。そこから全国に発送するんですが、距離があるので、この事務所で生のを沢山売るのは出来ない状況なんですね。」

なんとなんと、残念な話である。畜肉は、家畜を屠畜し解体処理するセンターで処理をすることが義務づけられている。センターも商売なので、解体効率があがらないものは扱ってくれない。シャモは通常のブロイラーとは違い、一定以上の温度の湯に通さないと羽がむしれないなどの理由があり、引き受けてくれないのだそうだ。ん~ なるほど。

「でも、冷凍肉をここで買って、キャンプ場にいって流水につけていればすぐに解凍できるし、味にも影響ありません。通常の鶏よりも筋繊維が細かいんで、肉汁がでちゃうこともないんです。」

とのことだ。これを検証するため、キャンプ本番では実際に冷凍と生の双方を焼いてみることにしたのであった。

「東京から2時間でこられるし、これから行くキャンプ場には温泉もあるし、バーベキューも出来る。だから、ここでシャモ肉を買ってキャンプするっている循環が出来るといいな、って思って。最高でしょ?やまけんさんのページに書いてよ!」

なるほど、野島さんは奥久慈の観光振興のこともあって僕に声をかけてくれたのである。そうか、では気合いを入れて下見をせねばならんな。

シャモ肉売り場にいくと、なんとそこにはでかでかと、銀座バードランドのパネルが!

やはりこのバードランドの和田さんこそが、奥久慈シャモを全国的に有名にした立役者だ。実は僕はまだ行ったことがないんだよなぁ。今度いかなくては。
この直売所では、バードランド、バードコート双方で親子丼に使われているシャモの卵も売っているゾ。

「じゃ、当日よろしくお願いしまーす」

雨のなか、後藤さんが見送りに出て下さる。感謝である。

さて一路キャンプ場へ。シャモ組合事務所から30分ほどで大子町のキャンプ場だ。この日は雨だったので残念だったが、この大子広域公園オートキャンプ場グリンヴィラ というところはすんごくいい!

■キャンプ場のWeb
http://www.greenful.jp/camp/daigo05.html
http://www9.ocn.ne.jp/%7Ecamp.day/index.htm

道具やBBQ設備はきっちりと何から何まで揃っていて、究極な話、手ぶらで来ても大丈夫だ。なんとダッチオーブンまでレンタル・販売しているのだ。

ダッチは僕が愛用するロッジ社のではなく、ユニフレームという国産のものだが、この会社のアウトドア製品が所狭しと並んでいる。提携でもしているのかな。しばしアウトドア魂が久々に燃え上がり、ツール群を眺めてしまった。

入念に設備のチェックをし、当日の予想をし、帰途につく。
と、ロードサイドに大きな「舟納豆」という看板が。野島さんがニヤニヤしながら言う。

「やまけんさん、この舟納豆、すごいからみていこうね」

何がすごいんだろう?納豆やさんの佇まいではないのは確かだが、、、こういう大きい店構えのところはイマイチなんだよな、、、と思いながら入店すると、お客さんですごくにぎわっている!

■舟納豆
http://www.h2o-lp.co.jp/~fune/

「はい、試食やってますよぉ~」


という口上に載せられ、おばちゃんの前に座ると、軽妙な語り口でここの製品全部を食べさせてくれる。この納豆が実に旨い!

富良野で出会った富士食品も旨かったが、ここのもハンパじゃない!小粒の大豆原料を選別しぬいている感じだ。いやこれはびっくり。

「ね、うまいでしょ?」

「うまいうまい 旨い~」

思わず大量に買い込んでしまった。納豆は冷凍が利くのである。

納豆の旨いヤツは本当に旨い!感動しながら再び帰途へ。
その後、一つ前のエントリに書いたように、匠に行って寿司をつまんだのである。

このバードコートキャンプの詳細は、11月には速報できると思う。楽しみにしていて欲しい。

2004年10月12日

新米ざんまい 秋田県大内町の大家族の宴は最高だった!

このblogでも数回紹介したけど、今ぼくの家では伊藤裕樹(通称ひろっきい)の作る米をメインに食べている。ミルキークイーンという米の紹介をした時のエントリに詳細は書いてある。

実は彼はバリバリの経営コンサルタントであり、自分の会社を持っている。会社の仕事は東京をポイントにしているが、その一方で秋田県大内町の実家の稲作も続けている。だから一週間に東京と秋田を往復しながらの生活をしているのだ。

彼を紹介してくれたのはしんのすけだ。寿司処 匠で寿司をつまみながら話している時は、同い年であることとナイスガイだということはよーくわかったが、米の味はわからない。だから、典型的週末兼業農家なんだろうなぁと思っていたくらいなのだが、後日届いたミルキークイーンを食べてびっくりした。旨いのだ。農業片足どころか、技術水準が高い優秀な農家ではないか。俄然彼に対する興味が沸き、改めて友人になった次第である。

「稲刈りの時期には友人が東京から来るから、やまけんもおいでよ」

というお誘いを受け、週末を使って参加することにした。おりしも台風22号襲来のタイミングだったが、移動前夜には台風も東京を瞬時に駆け抜け、東北を抜けて太平洋側に消えていった。東京組は、ひろっきいがやっている「コーチング」のお仲間の方々である。コーチングの話もしんのすけからきいて関心を持っていたので、今回はテーマが多い。ただしコーチングとは何かを書くには僕には見識がなさ過ぎるのでここでは控えたい。Googleなどの検索エンジンで「コーチング」と引っ張ってみて欲しい。ひろっきいは、このコーチングの世界ではかなり上位のクラスにはいる人間らしいのである。

さて
秋田空港に着くと、曇天ではあるが、晴れ間が少しだが見えている。一日何もやることがないということはなさそうである。東京組のみなさんと遭遇し、お迎えはひろっきいのおじさんの運転で大内町に向かう。空港から来るまで30分くらいで着くのだが、周りにはコンビニなどない、それどころか街灯もほとんど無い、あるのは田んぼと畑だけの田舎町である。実に最高だ。

それはもう典型的な農家の家に到着し、ひろっきいとご家族と挨拶を交わす。ここんとこ、雨ばかりで稲刈り作業が停滞しているとのことだった。僕の晴れ男ぶりが試されているな。沖縄で台風に遭わなかった運をここでも発揮したいものだ。

作業着に着替えて田に移動する。ひろっきいのお仲間の女性陣も農家ルックに変身し、にわかに農作業スタイルである。

まず最初に直播きをした田に向かう。直播きとは、種籾を苗にせず、直接田に撒いていく方式だ。

稲は通常、苗を育てていわゆる「田植え」をする。この田植え工程を外すことが可能なため、省力化に繋がる可能性がある方式なのだが、まだ実験段階であり、難しい。ひろっきいの田でもカラスに種籾を食われたり、ヒエの害が出ていて収量は通常の田の2分の1程度になっていた。しかし、これは未来に繋がる実験。彼は、現役農業者が減少していく中で、限られた後継者達で広大な面積を切り回していくための実験をしているのである。

しかしそれにしても素晴らしいパノラマ眺望である。時折陽がさす晴れ間はうっとりとするほどに美しい。

「メシにしようや」

声がかかりブルーシートの上に昼餉が並ぶ。大きなおむすびと「がっこ(漬け物)」、みそ汁、塩鯖。


「もちろん新米だからね」

というそのおにぎりは、一粒一粒がしっかりと立った薫り高い米だった!
このおにぎりと、塩の利いたナスとキュウリのがっこと一緒に噛むと米の甘みとがっこの塩味が混ざって、最高の宇宙が現れる。

「う、うめぇーなこれ!」

と、様々な具のおにぎりを都合6つ平らげてしまった。今回、おにぎりを頂くタイミングが3回あったのだが、一番美味しかった料理はこのおにぎりだとなんの躊躇もなく言ってしまう。お米、マジで旨い!

「それはそうだよね、大内町の水でつくった米を、大内町の水で炊いているんだもんね」

とは、ひろっきいのコーチ仲間の塚田さんの言だ。確かにその通りである!究極の食べ合わせだ。秋田県の水は本当に飲みやすく繊細な軟水。だから、米の美質を引き出し香りを際だたせるのだろう。米のモチモチ感と粒状感、そして香りが、東京で食べる飯の数倍強いのだ!

「うーん 初めて東京に行った時に、『俺んちの米って旨いんだぁ』ってわかったよ」

と淡々と言うひろっきいであった。

昼食後、残念なことにかなりの雨が降ってくる。稲穂が濡れるとコンバインで収穫することが出来なくなる。ほぞを噛む様な思いで撤収した。

温泉につかりひろっきいと話す。

「やっぱり一族の後押しがあるからやっていける。僕がいない間に、おばさんやおじさんが草取りやらなにやらしてくれている。『好きだからやるんだよ』といって御礼を受け取ってもくれない。本当に感謝だね、、、」

親父さんを数年前に無くしたひろっきいが、東京で働きながらも秋田の田を絶やすことなく続けていることを、一族みんなが後押ししているのだ。そのあたたかみは実に胸に響く。僕らを迎えに来てくれたおじさんの微笑みは実に実に深く温かいのだ。そして応援に駆けつけてきたおばさんも、軽妙なジョークを飛ばしながら(自分のことを『バックシャンだべ』と言った時にはおにぎりを吹き出すかと思った)皆のムードを限りなく陽性の方向に引っ張ってくれる。ちょっとこの家族環境に瞬殺されてしまった。

家に帰ると宴である。秋田の伝統料理が盛り込まれた重箱と大皿が並び僕らを待っていた!

秋田県は元来、大家族制の中で「内食」文化が長く続いてきた土地だ。だから、外食よりも家のメシの方が旨いということを、秋田出身の誰もが言う。だから一度、秋田の農家さんのメシを食べてみたかったのだ!実はそれが今回の旅の最大の目的。

「やまけん、ガンガンたべろよな!」

「おう、食べろ食べろ!」

食べろ食べろ攻撃の中、僕が気に入ったのはきのこのみそ汁だ。白いきのこで、菌床栽培ではない、天然のきのこである。

「ああ、これはスギモタチだね。このきのこ、出汁が出て旨いンだぁ」

というひろっきいの言通り、実に旨い! 大体関東のふつうの家庭では、天然もののきのこが食卓に並ぶチャンスはあまりないだろう。しかし知っておいて欲しいのだが、スーパーに売っているパック詰めのきのこ類と天然のきのこでは、味も香りも別物なのだ。その代わり買おうとすると値段も10倍くらいするのだが、、、

このチリモタキ、薄く白く淡い見た目なのだが、汁に味がしっかりと出るものであった。実に旨い、、、3杯お代わりする。

そしてガッコと白飯である。

「今日はササニシキだね」

ササニシキはコシヒカリと対局にある、淡く気高い風味のあっさりとした米だ。魚や漬け物にはコシよりもササの方が旨いと思う。これも新米で、腰が強くネットリ感が高く、そして鼻を抜けていく米の香りが最高だ。またもや4杯食べてしまった。

お定まりの日本酒も出て、家族みんなで騒ぎながら飲む。ひろっきいの家族におじさん、おばさん、いとこ一家など、とにかく入り乱れて笑いが拡がる。皆んな驚くほどに仲がよく、そしてよく笑う。

この笑顔のベースは伊藤家のカラーだろう。何もない瞬間、彼らは温かく笑っているのだ。白米の旨さとともにそれら笑顔を噛みしめると、限りなく甘い風味が身体に染み渡ってきた。明日は晴れるだろうか、、、

2004年10月13日

新米ざんまい 秋田県大内町 伊藤家のきりたんぽは絶品であった

朝5時、気配を感じ起きると、ひろっきいが起きだし、作業の準備をしようとしているところだった。そのまま目を閉じ、6時に塚田さんが起き出す気配で目が覚める。塚田さんは電話でコーチングをするためにこの時間に起きると宣言していたのだ。そのまま僕は目を閉じ、7時半頃まで眠った。

で、朝飯である。前夜、飲み過ぎて意識が飛びそうになった僕は、早々に床に就き眠ってしまった。その前にひろっきいのおばさんが、

「明日の朝は、うちの山芋とろろ食べさせてやんべかな」

と言っていたのだ。その約束を果たしにおばさんがスーパーカブにまたがり颯爽と登場した。

「これがとろろ、これがみそ汁。この味噌は粒が残ってるやつで、これをとろろに混ぜて食べると旨いよ。食べてみれ。」

すり鉢のとろろはネットリ感が強く、すりこぎにまとわりついて離れない!

「あと、うちのひとめぼれを炊いてきたよ。あきたこまちよりもあたしは好きだね」

とおばさんは笑いながら炊飯ジャーを置いて帰っていった。なんと朝から2種類の米の食べ比べが出来るのだ!なんと贅沢なことだろう。

「さぁ、食べよう!」

夕顔とミョウガのみそ汁、里芋の茎のゴマ和え、とろろなどで飯を食べる。

おばさんの持ってきてくれたひとめぼれは、沸き立つような香りはない地味な印象だが、その落ち着いた風味は確実に飽きが来ないと約束されているような味だ。これがとろろにビッタリと合う。ご飯の香りが強すぎないため、とろろ芋の少しひねたような青臭い香りが消えないのだ。そして噛みしめると、限りなくふっくらネッチャリした食感が歯にまとわりつき、ご飯の甘みが拡がる。

「うっ うめぇなあ、、、 ひとめぼれってこんなに旨い米だったっけ?」

本当に首都圏で食べる米と全く個性の違いを感じる。粘着性と香りの立ち方があきらかに違うのだ。まぁ 新米ということが一番大きいのかも知れないが、、、

さらにあきたこまちを食べる。こちらはうって変わって特有の香りを持っている。

おばさんは「あきたこまちの香りは食べ続けると飽きる」というのだが、僕には好ましい香りだ。ひとめぼれが落ち着いた地味な女性像だとすれば、少しばかりおきゃんな少女という印象だろうか。ひろっきいのあきたこまちは、コシがやたらと強い。

「水加減が少なすぎたなぁ」

とひろっきいはいうが、それだけではなく米粒の外殻が見事なまでに強靱なのだ。これは美質だと思う。

ちなみにあきたこまちは特有の香りがあるので、とろろ飯には最適マッチとはいかなかった。しかしあきたこまちと塩気の強いがっこの取り合わせは実に最高。米の品種もTPOで選択肢は変わるのである。

こんなに旨い飯とおかずのおかげで、朝から4杯くっちまった!

さて農作業である。
朝方に雨が降り、それが上がって朝飯を食べる前は青空が拡がっていたのに、田に行こうかというタイミングでまた曇天になってきた。ポツポツと雨も降り始めたが、やめるわけにはいかない。強行軍で稲刈り鎌を持ち圃場へと向かう。

コンバインが田んぼに入いり、かつ旋回できるように、あらかじめ田の四隅を手で刈っておく。かつ、稲穂についた朝露を振り払う。これを「露払い」というわけだが、「つゆはらい」という、何気なく口にしている慣用句のルーツがこれだと思うと何やら不思議な気持ちだ。

この露払いは大切な工程で、これをしないと、多量の水分ですぐにコンバインが詰まってしまう。稲穂を少し揺らすだけで露が落ちるのである。

「じゃ山本さん、元気が余っていそうだから」

とおじさんがニコニコしながらロープの片方を僕に寄越す。田の端と端でロープを引っ張り合い、じりじりと横移動してロープで稲穂を揺らすのである。これが、腰を落としロープを思い切り引っ張る作業で、やたらと息が上がる。1反部弱の田を往復するとしばらく喋ることが出来ないほどにゼーハーしてしまうのだ。

露払いをした稲をコンバインが刈っていく。このコンバインという機械は、おそらく日本でしか成立しえない超精密機器だ。筋まきされた稲を吸い込み、先端の穂の部分のみをきちんと脱穀し、藁は排出していく。芸術的な働きをするが、それだけに500万円を超える超高価な機械なのだ。これを農家一軒が一台持っているあたりが、この国のおかしなところなのだが、、、

4枚ほど小さな田の稲を刈っている最中に、また雨が降ってきた。しばらく止みそうにない。

「しょうがない、今日はこれで切り上げましょう!」

とひろっきいがにこやかに宣言する。残念だが、お天道様には適わない。現代人がこの言葉を実感するのは滅多にないコトだと思うが、作物を作ってみればすぐに分かると思う。そう、人間がコントロールできない天気という存在によって右往左往するのが農業なのだ。僕の晴れ男ぶりも上手く効かずモウシワケナイな、ひろっきい。

伊藤家に戻ると、なんとなんとすごいことになっていた。

「きりたんぽの準備さしておいだから」

とお母さんがカンカンの炭火にきりたんぽをかざし、コンガリと焼いている。

これ、車庫に即席で作った囲炉裏端なのだ。これに、太い竹串や菜箸に潰した米を固め、きりたんぽに整形したのをブスッと刺して焼いている。

その脇には薪ストーブがあり、その上にはお釜が載っている。蓋をずらしてみると、醤油色の出汁がグツグツといい香りを漂わせている。

「この中にきりたんぽさ入れて煮て、少し煮くずれた頃がまた旨いんだ」

なんと、この囲炉裏端はひろっきいのお母さんが即席で作ったものだった。


作ろうと思った時に草木灰がこんなにストックしてあるのもスゴイと思うが、我々東京組をもてなすために囲炉裏まで作ってくださる皆さんの思いに、一同じんと来てしまった。

「さ、帰りの飛行機の時間もあるから食べて食べて」

と、今回最後の宴会が始まる。またもや広間に数々の料理が並び、昨日以上の人数が机に着く。この家の長となったひろっきいの音頭で乾杯となった。

「えー 東京から来てくださった皆さん、本当にどうもありがとうございました。うちはナンにももてなしはできませんが、いつもここで米を作ってますので、またいつでも遊びに来て、そして手伝ってください。お疲れ様でした!」
ひろっきいの背負っているものは大きい。しかし、それを大家族が温かく後押ししている。きっと、総合格闘技のPRIDE-GPで小川直也が感じた「後押し」もこうしたものだったのだろう。しかし小川直也にないものがひろっきいにはある。それは凄まじい光を放射する「笑顔」である。

典型的秋田顔二枚目のひろっきいがビカッと笑うのを観たら、どんな女性でも惚れてしまうのではないだろうか、と思う。

きりたんぽ汁は実に滋味溢れるものだった。比内地鶏のスープは濃く深く旨味の強い出汁だった。

「この辺じゃ、芹(せり)は春先だけじゃなくて、今頃も旨いんだよ、特にうちのばあちゃんの作る芹が最高なんだよ」

というとおり、汁に入っている芹の風味は最高にはんなりとしている。それにすこし崩れながら入っているきりたんぽが、こげ目の香りをプンとさせ、ネッチリ感を出しながら噛みきられる。

「これ、きりたんぽに甘味噌を塗ったやつ」

と、みつこおばちゃんが焼いてくれた味噌漬けきりたんぽがまた絶品中の絶品なのだ!甘めの味噌が少しこげて、固めのきりたんぽのカリカリ感と相まって実に最高!


一本一合ちかい米を使っているのを一本半平らげてしまった。その上汁に入ったきりたんぽを一本。そして最後にあきたこまちのご飯を一膳食べ、もう何も入らない。秋田の温かい大家族の味、それはやはり米、稲作をベースとした文化だった。

「ごちそうさまでした!」

御礼を言い、車に乗り込むと、玄関に皆さんが送りに来てくださる。温かい微笑みに見送られながら、ひろっきいの運転で空港へ向かった。

まだ大内町ではひろっきいが稲刈りから籾摺り(もみすり)までの工程をしている。遠く東京から、秋田の空が晴れ間になることを祈っている。それと、ひろっきいの今年の新米が特に旨いことは僕の保証付きだ。今年はまだミルキークイーンを食べていないが、期待できることは間違いない。ひろっきい米の通販ページをここに紹介しておく。

ひろっきい、ご家族の皆様、本当に温かいもてなしをどうもありがとうございました!

2004年10月20日

蓼科・板橋家の宴で「やっと旨い馬肉を見つけたんだよぉ」の桜鍋を堪能した

 板橋夫妻といえば、このblogにも数回登場しておられるが、夫・イタバシマサヒロ氏は名高い漫画原作者(あの「BOYS BE…」の原作者なのだ)、妻・神澤柚実子氏は居酒屋紀行家であり、酒肴研究家(つまり呑み助ということダ!)である。しばらく前にこのお二方の会社であるSHUWATCH(シュワッチと読む)へのリンクを「友人達へのリンク」に足してある。

■SHUWATCH
http://www33.ocn.ne.jp/~boysbe/index.html

イタバシ師匠はビッグコミック増刊の連載「ニッポン元気者列伝」を書いているが、これはプロジェクトX的な、元気に生きてる、身の丈サイズの偉人伝という感じで面白いので、みかけたら立ち読みしないで買うこと!

 さてこのご夫妻とは、一緒に蔵本を廻ったり、ハム作りをしたりしているが、なんといっても信州・蓼科にある彼らの家が最高なのだ。どこからみてもデザイナーハウスで、テレビの「渡辺篤志の建もの探訪」で「ほぉ~広々とした空間。いいですねぇええ~」 とかなんとか言われてしまいそうなシンプル・ゴージャスな家なのだ。

「蓼科はもう寒くなってきたよ。避暑しに行こうよ」

とお誘いを受けたのは実は数ヶ月前なので時間差になるが報告しておこう。

メンツはいつもながら僕の兄弟分の工藤ちゃんとその側近・浅見君。それに今回はスペシャルゲストとして、島根県にある桑原酒造の専務である大畑さんが参加されるのだ!桑原酒造は純米酒「扶桑鶴」を醸す蔵である。純米酒マニアなら知っている、島根の素晴らしいお酒なのである。大畑さんは竹鶴の敏夫専務や石川杜氏とも昵懇にしているので、蔵にもお邪魔し、仲良くさせて頂いている。

板橋家に着く頃にはすでに陽がかげり、いいかんじに黄昏れてきた。

「この辺の地ビール、高いんだけど旨いんだよな」

とイタバシ師匠が注いでくれる。

まずは板橋家の誇る酒肴研究家であるカンちゃんのお手製酒肴が、一斉に立ち並ぶ。この人は、一定以上の酒を呑むと鼻が「ぶひっ」と鳴るという奇癖を持つ女性で、美人であり料理が激ウマ!

特に彼女の作る煮豚のみそ漬けは最高なのである。煮豚を特製の合わせ味噌に漬けておくだけと書いてあるが、この塩梅が最高で、味噌と豚だけで何倍も酒を飲めてしまうスーパーおつまみなのである。

この煮豚味噌のレシピは、先にあるShuwatchのWebの中にある「うちごはんレシピ集」(http://www33.ocn.ne.jp/~boysbe/kondate/kondate.htm)にその内掲載されるであろうと思われる。

さてこの日は料理もスゴイのが控えているのだが、酒もすごい。大畑専務の扶桑鶴はもちろん、酒マニアには垂涎といわれている「大七」の幻の酒ならなにやら。それを、純米居酒屋「五穀家日本橋店」をスターダムにのし上げた張本人である工藤ちゃんが、お燗番として燗をつけてくれるのだ!うーん素晴らしい!

日本酒の燗をつけるということについては、僕のような門外漢が書くようなことではないと思うが、とにかく純米酒は燗をして飲むのが最高に旨い酒だ。少なくともキンキンに冷やして旨い酒というのは、逆に言えば常温では呑みにくい酒とも言える。フルーティな吟醸香ばかりが立ち上る酒は食中にはとても飲めたもんじゃない。米の香りと旨味が立つ、純米ならではの酒が最高だ。その力を最大限に引き出すのが「お燗」という技術である。

工藤ちゃんは徳利(とくり)や金属製の「ちろり」を使いながら、酒質によって最適な温度を計りながら燗をつけていく。

「この酒は強いので、温度高めの熱燗にして、それを少し燗冷ましにして呑むのが旨いですよ」

というように温度を使い分けているのだ。このような提案ができる居酒屋が日本にどれくらいあることか。早く工藤ちゃんには次ぎなる居酒屋を出店して欲しいものだと思う。

まずはその幻の大七の燗でスタート。

たしか20年近く経つ古酒だ。ただしこれは今ひとつ僕の好みには合わなかった。保存方法の問題かも知れないが、古酒然とし過ぎた熟しすぎの感がある。

そして待ってましたの扶桑鶴である!

本日のこの特別純米酒、酒米は佐香錦(さかにしき)という、地域の酒米を復活させたものを使っている。

この酒米を使った酒は、静かに華やかな味と香りになる。山陰・島根のどんよりとした天候の中でも、この扶桑鶴の燗酒を呑めば、へその奥にポッと暖かな灯が灯る、そんな穏やかな酒だ。

これを、イタバシ師匠が「たけーんだぞ、この酒杯!」

というお猪口でいただく。なんでもこれ一客で3万円するそうだ(!)

やはりこの日は扶桑鶴。大畑専務も、最初から最後まで変わらぬピッチで呑みまくる。

大畑さんは島根の男、という感じで、本当に腰が低く控えめな方だが、生み出されるものは本当にスゴイ。桑原酒造にうかがった時、大畑さんの父君(つまり社長)のお話しで、

「まあ、地元向けに醸造アルコールの入った本醸造も造りはしますけどね、やっぱり純米酒が一番旨いですよ!」

と力強く仰っていたのが強く印象に残っている。その系譜がこれからも受け継がれていくだろう。

さてこの日の酒肴は本当にものすごい種類が並んだのだ。山芋ざく切りのイクラのせ、餃子、鯛の酒盗和え、工藤ちゃんの自家製コンビーフ、浅見君のスペアリブ、、、

これでもかとばかりに皿が並んだその後に、メインイベントである。

「いやぁ、、、やっと見つけたんだよ、旨い馬肉を! 信州っていや馬肉がどこにでもあるから、旨いのが買えると思ったんだけど、大して旨い肉はないんだよ。で、ある時、ある場所を通りがかって小さな看板を観て『ん?これは、、、』ってピンと来たんだな。それが正解。無茶苦茶高いんだけど、無茶苦茶旨いんだよ!」

そう、桜肉である!みよこの芸術的な桜肉の肉塊を!こちらが馬刺用。

こちらは桜鍋用だ。

おそらくこれだけで1万円以上しているはずだ!うーんイタバシ師匠、ゴチです!

まずは馬刺を堪能。この霜降り、見事だ。乗馬やってる人で馬肉食べない人が居るが、こんなに旨い肉を食べないなんて勿体ないな。

醤油に浸し口に運ぶと、トロリと溶けていくような感触。しかし肉としての旨味は濃い。牛肉にある独特のクセもなく、実に滋味深い味わいだ。

「でもさ、こんなに料理食った後にホントに鍋やるの?おまえらオカシイよ、、、」

いや、やるのである。桜鍋に向けて、僕の目はギンギンなのであった、、、

神澤さんの桜鍋は実にタレの吟味がされていた。詳細はまた彼女がWebに書かれると思うが、味噌と割り下を配合して、絶妙な甘辛味噌ダレで味を付けるのだ。鍋に馬肉の脂をひいてネギを炒め、肉をじゅっと焼き、すぐにこの味噌ダレを回しがける。

たちまち周囲は鼻孔をくすぐる味噌しょうゆの香りで充満。

「もう食ってイイ?食ってイイかな?」

と逆上気味の僕が真っ先に肉をいただく。溶いた卵にざぶんとくぐらせ、一口にほうりこむと、これはもう悦楽以外の何者でもなかった!

やはりどう感じても牛肉より旨いぞ!肉の味わいや濃さ、そしてくどさのない後味は、いくらでも食べられてしまう。味噌と醤油の甘辛ダレという濃厚な味付けなのにいくらでもいけるというのは、それだけ肉がくどくないということだ。

「ご飯ご飯、ご飯お代わり!」

この日おれはご飯3杯食べた、、、

この後さらに、工藤ちゃん持参のビビン冷麺を食べ、さすがにもう食えん。

しかしマジで旨かった桜肉。あの秘伝の味噌ダレははやくカンちゃんのWebにも公開して欲しいものである。

これから冷え込みがきつくなりそうな蓼科。でもそれに比例して、旨いものに満ちてくるはずだ。次ぎの蓼科行きが、待たれる秋口なのであった、、、

2004年11月02日

旅行関係の仕事をしている方に、やまけんから切なるお願い

読者さんがかなり増えてきているので、きっと旅行代理店の方もいらっしゃるだろう、ということでぜひお願い!

年明けの1月後半に、イタリアのシチリアに無二路の重シェフと、料理を食いまくりに行くツアーを検討しています。行き帰りの航空チケットを購入しようと思っているんですが、10万円台のしか見あたらないらしい。もう少し安くあがると助かる!

どなたか、「イタリアならまかしとけ!」ちゅう代理店の方、いらっしゃいませんか?相談のってください。メールいただけると助かります。

・オトナ4名
・1月25日から1週間の予定(変動可能性あり)
・必要なのは航空チケットのみ(シチリアに行ってしまえば重シェフの修業先などに泊まれるので)

ちなみにこのツアーに参加したいっちゅうのはご勘弁。人数的に限界です。俺もオマケだし。

あと、何人か、シチリア在住の方から「寄ってけ」情報いただいてます。時間に余裕あればぜひ廻りたいと思いますので、別途連絡しますね!

それと、せっかくだから、この紀行を記事にしたいっちゅう雑誌はありませんかね?スポンサーが付いてくれたら旅のお金に回せるので。そういう意向ある編集部さんがいらっしゃったらぜひ!

では、よろしくお願い致します。

2004年11月12日

大阪もカレー天国! 船場カレー「牛すじカレー」とトクマサのカレーをハシゴした。

 僕にとって大阪と言えばカレー「インデアン」がある聖地である。それ以外にも街を歩くとカレー専門店が多く、はっきりいって大阪の方が東京のカレーより文化的に成熟しているように思う。そういえば大阪って、カレー以外にも専門店が多い。串カツとかね。東京では何でも揃えた店が多いが、大阪には専門業態で勝負する一徹者が多いということだろうか。それだけに一点集中型の凄みを感じるのである。

さて大阪のとある市場を歩く。やはり葉物野菜を中心に品不足が続いており、今年度で経営が成り立たなくなる業者がスゴイ数に上りそうだ。

写真は、はっきりとは書かれていないがおそらく輸入の白菜。今まで輸入品を安く叩いて来たのに、食料がなくなるとすぐに外に頼らざるを得ない。あまり殿様商売を続けていると、総スカンを食らってしまう。業界全体で、少量の安定供給を考える時期に来ていると思うが、、、

そんなことを考えながらも腹がへって仕方がない!
本日の昼飯はやはりカレー!大阪きたらカレーなんである。しかも、以前にコメントでタレコミいただいた「船場カレーのスジネギカレー」が気になってしょうがないので、行くことにした。向かうは「本町」である。センタービルという建物の北側にあるというので、それらしき立派なビルを探し当てたが、カレー屋なんぞどこにも無い!電話をすると、

「そっちのセンタービルじゃなくて、もう少し南にある『本町センタービル』ていう建物なのよ~」

という。なんだなんだと歩くと、東京の大手町のような印象の大通りではなく、雑多に店が軒を連ねる、いい感じのストリートが拡がっている。そこに船場カレーがあった。

■船場カリー
http://www.curryhouse.co.jp/

Webは小綺麗にまとまっていたので、よくあるフランチャイズの店かと思ったら、適度に庶民的で食欲をそそる外観である。こういうの好きだ!

階段を登り小さな店内に入る。Webにキャラクタとして登場しているおっちゃんと女将さんの二人で切り盛りしをしているらしい。

メニューを観る。

ビーフカレーなどあるが、コメントに書いてくださった方が「とにかくスジネギカレーを食べるべし。イカ墨が混ぜられていて、辛くて旨いです」と書いていてくれているので、スジネギカレー(950円)大盛り(200円増し)を頼む。

「あ、電話してきてくれた人? 申し訳ないんですけどネギが切れちゃってないんですよぉ~」

おおお残念! それでも仕方がないのでスジカレーの大盛り(1050円)を頼む。

「すぐ隣の建物にアネックスっていう支店があるんですけど、そちらだったらまだネギもあるかも知れませんよ。」

と言ってくれたが、どうせなら本店で味わいたいので、スジカレー大盛りを通すことにした。

「かなり量がありますけどいいですか?」

そんなん俺に訊かないでくれ! 全然OKです! 
、、、ほとんど待たずに出てきたそれは、実に豪快かつ旨そうなカレーであった!


照り照りと艶やかに黒く輝くルーは、粘度が高い。インド系カレーが欲しい人にはまったく向かないと思った方がいいだろう。量的には確かに多いが、大盛りでこれくらいはあって欲しいという量だ。ちなみにインデアンカレーのご飯大盛りは僕には足りない、、、

ご覧いただければおわかりの通り、黒みが強いのはイカ墨の練り込みのせいだろう。これは実に旨そうだ!カレーの香りも強力にビンビンと立っており、ガツガツと食いたくなってしまった!

口に運ぶと、粘度の高さからまったりとした印象があったが、すぐにスパイスの香りと辛み、そして深い旨味がドワッと拡がる。こいつぁ旨い! ジャポニカ米に合うカレールーはこれだ。この粘度とアタックの強い旨味。イカ墨のせいか、辛さがダイレクトではなくまろやかにかつしなやかに身体全体を火照らせていく。

具がよく煮込まれた牛スジ肉なので、ブルンとした食感。けっこう肉がゴロゴロ入っており、満足度高い。これにネギの小口切りがばばんと乗っていたら、確かに旨いだろうなぁ、と思う。スジ肉だけではタンパク質多すぎ感が否めないのだ。でも、スジカレーだけでも標準レベルを遙かに上回っている。文句なしである。

いや、食った。旨かった。いい気分で店を出て空港へ行こうと思うが、さきほどこの船場カレーを探しながら見つけてしまったもう一つの店が気になって仕方がない。それは、こういうカレー屋さんだ。

■得正(とくまさ) 本町店
http://homepage3.nifty.com/tokumasa/

「この味一筋40年」と書かれた看板に引き寄せられどうしても食っておきたいと思ってしまうのであった。スジカレー大盛りを食ってはいるが、胃袋のキャパは全然問題なしである。行くしかあるまい。

入店すると、これまた専門店的簡素なカウンターのみの店である。

メニューを観ると安い!なんとカレーは400円である。

とりあえずカレーとピクルスを頼む。いろんなトッピングがあるようだが、基本で攻めてみるのだ。そしてほどなく盛られてきたカレーを観てびっくりした、、、

インデアンカレーのスタイルそのままではないか! 下記にインデアンカレーの玉子オプション付きの画像を掲載しよう。(ただしこちらは黄身が2つ乗っている「目玉」バージョン」)

どうだろう、楕円の皿の形と言い、スタイルは全く同じである。

まあこういう場合、どれが本家とかそういうことはないはずだ。大阪ではこのスタイルのカレーが広く受け入れられている、ということだろう。ただ、この店、400円のカレーに最初から黄身が乗っているところといい、非常にリーズナブルだ。インデアンよりは確実に安い。

食べてみる。まろやかな一口目から、少したつと辛みがわき上がってくる。これもインデアンスタイルの味の構成だ。しかし、全体的にややぼやけ気味の印象。おそらく船場カレーの強いアタック、濃い味に慣れている舌が、全体的に控えめな得正カレーの印象をより柔らかくしてしまっていると思う。ま、それを引いても、価格が安いだけあって、旨味やインパクトなど総合的にはインデアン、船場カレーには及ばないとは思う。

しかし、この店も僕は好きだな。400円という庶民的な価格で、黄身のせまでやってくれて、非常にハードルが低い。僕みたいに船場カレーみたいな濃いカレーを食べてから入店する人なんてあまりいないだろうから、その場合はきちんと美味しいと感じるはずだ。今度、何も食べていない状態で大盛り辛口を食べに来ようと思った。

ということで図らずも2店探訪。 おお!空港に行かねばならない時間だ!ていうか時間ないじゃん!ということで今回はインデアンには行けず。けど、インデアン以外にもカレー王国大阪の懐を、垣間見ることができたので大満足だ!

伊丹空港は初めてなので行き方に迷う!乗り換え案内で調べたら全然間に合わない!地下鉄を乗り継ぎ走りまくって、空港に20分前に着く。チェックインしたら、まだ余裕で間に合うらしくホッと一安心。

そして帰京し、その足でトルコ料理を食べに行ったのでした。順序が逆になっちゃった。

2004年11月17日

誰もが郷愁に駆られる店 ソースをじゃぼじゃぼかけて楽しむ焼きそば 宇都宮市「やきそば石田屋」

栃木県宇都宮市といえば、もう数回このblogでも出てきたとおり、餃子の都である。とにかく行けばいつも餃子を食べて大満足している。

「ま、でもたまには違うのを食べさせたいと思ってね。」

と、ノグっちゃんが言う。今日は宇都宮の市場業者であるノグっちゃんと話をした。

「あのね、俺とかがよく食べてる旨い焼きそば屋があるんだけど、そこに行こうよ。焼きそばしかない店なんだけどさ。」

ぴくっと僕の食い倒れ魂が揺れ動いた。

食い倒れの法則その1: 「専門店には入っとけ

「カレー屋」とか「餃子屋」とか、とにかく専門店というのはその料理一本で食っている。従ってそれが存在し続けているということは、ある程度以上の水準に達している証拠なのである。

しかも「焼きそば屋」などという業態は、あまりきいたことがない。もちろん、有名な富士宮焼きそばや、秋田の横手焼きそばのような事例はあるが、栃木県で焼きそば屋という業態があるというのはいかなることだろうか。

「いや、別に他にも焼きそば屋があるっつーわけじゃないんだけどね。とりあえず知ってるのはその店だけだよ。」

ズルッ とにかくこの石田屋という店だけは焼きそば屋という業態を成り立たせているのであろう。駅から車で5分程度の距離の路地に入ったところに、いきなりその店があった。

■やきそば石田屋
栃木県宇都宮市中央5-8-9
028-634-6945

車を駐車しようといったん店を通り過ぎると、店のガラス戸の中から手ぬぐいを巻いた品の良さそうなおばあちゃんが、微笑みを湛えながらジッと外をうかがっている。駐車してから引き戸を開けると、バイトらしい若い女の子2人と一緒に「いらっしゃいませ」と明るく迎えてくれた。

店内はいわゆる定食屋っぽい風情で、パイプ椅子に座るようなざっくばらんさだ。すでに昼時なため、どのテーブルにもお客さんがいて、相席で座ることになった。

メニューを観ると、野菜・ハム・肉・玉子という4種の具があり、その組み合わせがメニューになっているという状況であった。

嬉しいのは、並・中・大・特大という4段階制だ。特大ってどんなのだろう??
期待にワクワクしながら「ミックスの特大!」とおばちゃんに伝える。しかし、何か変だ。ミックスとは、4種の具を全部合わせた物で、メニュー最下段に「おすすめ品」と書かれているのだが、それよりも「肉・玉子・野菜」の方が50円高いのだ。ミックスが一番高いのが普通だと思うんだけどなぁ。謎。保存食のハムと生鮮の豚肉の価格差だろうか、、、うーん気になる。


厨房を見やると、おっちゃんがしきりに鉄板上をかき混ぜている。そのまなざしは鋭い。ちょっとゾクゾクっと来てしまった!


さきほどのおばあちゃん、店の中と外を行ったり来たりしている。店内のオペレーションはほとんど黄色いトレーナーを着たおねーちゃん達がやっているので、もっぱらおばあちゃんは来客出迎え担当なのだろうか。それにしても店の雰囲気を形作っているのがこのおばあちゃんであることは間違いがない。

「おまちどうさまぁ~ ソースをかけて召し上がってくださいね。」

と、やきそばが来たぁ!

綺麗に蒸し焼き仕上げされた目玉焼きが載った焼きそばである!

麺は太麺。それほどソースでギトついていない。のぐっちゃん曰く、「ここの焼きそばは蒸し焼きって感じなんだよなぁ」と言っていた。厨房のおっちゃんの手元が見えなかったのでなんともいえないが、、、

一口啜ってみる。意外とあっさりした味に驚く。そうか、持ってきたおねーちゃんも「ソースをかけて」と言っていたな。卓上にあるソース瓶からさらさらとしたソースをかける。ほとんど粘度のないウスター状のソースである。かけすぎると台無しになりそうだなと思いながら一口啜ってみると、確かにイケル!このソース、市販のモノではなく店のオリジナルソースである!

「このソースはね、麺をびちゃびちゃにするくらいにかけても旨い。」

とのぐっちゃんが言う。

彼の手前に映っているのがソース瓶である。そう、ここのソースは塩分濃度がかなり低い。その分、きっと保存期間は長くないのであろう。しかし一般の加工食品としてのソースではなく、毎日営業で使うわけだから、これは生鮮食品としてのソースなのである。塩分が低い分、野菜の溶け出した柔らかいアタリとスパイスの香りが楽しめる。いや、スパイスの香りって言う感じではないな。とてもはんなりとした優しいソースの味がする。

「なんかさ、子供の頃から食べてるって感じの味でしょ?」

本当にそうだ!しかしながら屋台の焼きそばとは確実に一線を画すものが存在している!例えばミックスには肉が多量に入ってくるが、フカフカした豚ロース肉には、何らかの下味が施されているようだ。表面のザラザラ感を観るとそれがわかる。

この柔らかい豚肉一つとっても、太めでモチモチした麺の食感を損なわない配慮だろうと想像できる。

目玉焼きを崩して黄身を麺に絡めると、黄身がノッテリと麺に絡んでいい感じ。そこにまた、ソースをかける。うー、このソース持って帰りてぇ!と思ったら、ソースは持ち帰り用があった。

よーし買ってくか、と思ったが辞めた。ソースがあったとしても、このもっちり感のある太麺がなければ意味がないだろうし、それに店で旨い焼きそばが食べられるのに家で再現してどうなるというのか。ということで買うの辞めた。 (本当は買っておけば佳かったと後悔しています。) 

しみじみ旨かった。特大盛りは有楽町ジャポネのジャンボくらいの量で僕には少し控えめの量で800円(ミックス)と高目だが、暖簾代だとしても納得できる。なにせ肉の量がハンパじゃないし、いいんじゃないだろうか。近所にあったら週に1回は通っていること間違いない。

「ありがとうねぇ」

とおばあちゃんが優しく微笑む。駐車場(2台分だけある)から出すのに店から出てきて見送ってくれる。

「いやぁ、美味しかったですよ!」

と言うと、ニコニコしながら話をしてくれる。

「うちはね、焼きそば一筋で50年経つのよ。」

おお!そんなに歴史の深い店なのか!ちょっとびっくり。焼きそばという単品勝負の業態で50年の重みは計り知れないぞ。

「おばあちゃん、お顔を撮らせてください」

とお願いすると、

「まあ、そんなに小さなカメラで写るの?」

と驚きながらニッコリ。

ちなみに僕はおばあちゃんという存在が大好きだ。今も父方のおばあちゃんが居るが、彼女のことを思うとしんみりしてしまう。この石田屋も、食べて出てきて、印象に残っているのはこのおばあちゃんと、焼き方のおっちゃんの二名である。この二人が店を形作っているのだ。

「ありがとうございました」

とおばあちゃんに見送られて車を出す。いい店に連れてきてもらった。

市場に行くと、台風直後のしばらく前と違い、葉物など品目によっては供給が回復し始めている。それでもキャベツなどの時間がかかる結球野菜はまだ手当ができないでいる状態だ。そういえば、あの店では焼きそばにキャベツは欠かせないはずだ。結球野菜の生育がよくなることを祈りつつ過ごす午後であった。

2004年11月29日

やっぱりハタハタは秋田の郷土の心だ!秋田料理 「ちゃわん屋」(前編)

 僕が初めて秋田に行ったのは大学院修士の頃、農業情報という分野で研究をしていた僕はに、大潟村という先進的な米作地帯のある機関から講演依頼を受けた。その頃、若手で農業とインターネットを結びつけた研究を行っていたのは僕くらいだったから、話が来たのだろう。秋田に飛んだ夜、市内の料亭でメシを食べさせてもらった。

そこで初めて食べたのがハタハタだ。秋田県民の心といっていいこの魚を、関東で育った僕は初めて観た。ウロコが無く、ぬめっとした感じの魚。頭からかぶりつくと、口の中に「ブチブチブチっ」という強い弾力感が走った!それが「ブリコ」と呼ばれる、腹に卵を抱いたハタハタだったのだ。強い食感の割には、魚卵特有のひねた香りがほとんどし無いマイルドな味。

「旨い魚ですねぇ~!」

「これが20センチくらいですから、一匹2000円くらいですかね。今、出漁規制されているので高いんですよ、、、」

そう、秋田では乱獲でハタハタの個体数が激減したため、長いこと禁漁ということになったのである。県民の苦しみやいかばかりであったろうか。居合わせた人たちが口々に、

「昔はトロ箱1パイが500円くらいで買えたのに、、、」

「ハタハタなんて、毎日出てくるおやつだったのに、、、」

という愛惜の念のこもった細い糸のような言葉を繰り返すのだった。その日僕は1匹2000円のおおぶりなハタハタを3本食べた。そのブチブチというブリコの食感と上品な身の味は、今に至るまでよく覚えている。

「いやぁよかったですよ、もうハタハタは獲れるようになりましたから。」

秋田の大潟村助役と県庁のN氏がニコニコとしながら、秋田市の繁華街である川反(かわばた)の路地を歩いていく。

そう、本日は大潟村での仕事だったのだが、夜は別件でお付き合いいただいている県庁のN氏、I氏とも飲み交わそうということで川反に来ているのである。

「ここです!やまけんさんが美味しいと思うかどうかわかりませんが、、、」

と言いながら助役が階段を上がっていった。

■ちゃわん屋(詳細は下記画像ご参照)

階段を登ると、威勢のいいおばちゃんと若旦那が迎えてくれる。民芸調の居酒屋である。特にきらびやかでも嫌らしくもない、本当の居酒屋という内装。ここには地元の人が沢山くるのだろう。まったく飾っていない店内に好感を覚える。

座敷にはすでにI氏が座っていて、僕を迎え入れてくれた。

「今日は秋田の味を堪能していただきますよぉ~」

この店を選んで下さったのは助役である。N氏もI氏もここは初めてだといい、品書きをとっくりと観ている。この品書きがまたイイ!


どうだ? 久しぶりに煌めく品書きを観た!いい店のお品書きからは光が放射されるのである!「ダダミ刺し」ってなんだ???「くろも」?? こういう、地のものをリーズナブルに出す店に来ると、本当に品書きを観るだけで心が豊かになる。

嬉しくなって、皆さんがビールで始めるところを、僕だけ初っぱなから燗酒をいただく。

「はいよ突き出し!自家製の豆腐にとんぶりを混ぜてあります。」

と、いきなり秋田名産「畑のキャビア」とんぶりが仕込まれた豆腐である。

これがしみじみと旨い。豆腐には柔らかく火が通っていて温かい。すでに寒空の呈をなしてきた秋田の夜にこの温かさが心を和らげる。

「今日はね、コースでいきますけど、絶対にこれはたべたいってものありますか?」

と女将が訊くので、「ミズのたたきと塩汁(しょっつる)鍋!」と叫ぶ。ミズは東北の誇る山菜で、これをミソと一緒に形が無くなるまで叩いたのが最高なのだ。

8品くらいのコースでこうやって出すものを訊いてくれるのは嬉しいな。柔らかいアタリの女将さんがメモしてくれた。

そこに出てきた二品が、これまた秋田の名産だ。

■じゅんさい(左)ととんぶり

じゅんさいって秋田名産だったのだが、知ってました?

実はこの初夏、じゅんさい収穫が最も盛んになる時期に地域を周り、収穫風景をみたことがある。沼のようにした田に小さな舟(九州の干潟で使う”ガタ”のようなヤツだ)で入り、じゅんさいを摘んでいく。猛烈にやってみたくなったのだが適わなかった。この時期食べられるとりたてのじゅんさいは、「醤油味の小鍋仕立てにすると美味しいですよ」という。これも食いそびれた!

もう一つのとんぶりだが、これも小鉢に一杯盛られてくる。ウズラの卵黄を割って醤油をかけて混ぜる。一匙口に運ぶと、ひんやりした冷たさと清々しい香り、ごく密やかにプチンと弾ける感触が気持ちいい。

キャビアのような魚卵くささはもちろん皆無なので(植物だもんね)僕は和食の前菜にはこちらのほうが断然いいのだ。

「はい、ミズ玉の漬け物ね。」

■ミズ玉

前回の秋田のエントリにも書いたが、このミズ玉の漬け物がめちゃくちゃ旨い!ミズ本体も旨いのだが、このミズ玉のシャクシャク感と、炸裂したあとの粘りが最高なのだ。

そして僕の大好物が来た!

「みずのタタキでーす」

■みずの味噌たたき

でた!こいつがタタキである。山菜のミズをトロトロに成るまで薬味と味噌を加えて叩いたこの一品、もしかすると秋田料理の中でも一番好きなものかも知れない。

箸で持ち上げるとツーと粘りが糸を引く。食べると、少し残ったミズのしゃりしゃりした食感と、味噌の香り、それをまとめるトロ味が舌になめらかに載り、堪えられない。

「め、メシが食いたい~」

と叫ぶがそれはまだ後だ!

「はい、クロモと生イクラね」

■クロモ

男鹿半島で獲れる天然もずくがクロモだ。南国産のそれとは違って、テラテラと黒く、そして一本のもずくがしなやかに堅い。

歯を立てて噛むときっちりとした食感が返ってくる。二杯酢に咳き込まぬように啜り混むと、ミズに引き続いてのネバネバが口中に拡がるのであった!

■生イクラ

この美しき赤玉をみよ!我ら男子には赤玉はかなり危険な響きだが(笑)、、、イクラの赤玉さ加減は本当に蠱惑的である。
ここのイクラは脱水が効いているのか、ブチ、ブチと極めて強い食感。その後にトロリと旨味成分と新鮮な香りが拡がるのだ。

■キノコ →名前ワスレタ

まったく名前を忘れてしまったが、このキノコの煮付けもプリプリ、ヌメヌメとしており、しみじみと旨いものだった。

スギヒラタケのように急に毒性を強めてしまうキノコもあって怖いけど、キノコの旨さは何者にも代え難い。植物のようで植物ではない。だからその旨味成分や香りは、野菜には出せないものなのだ。

さて、ここまでは前菜。一気にこれからメインディッシュへと進むのである!

(続く)

やっぱりハタハタは秋田の郷土の心だ!秋田料理 「ちゃわん屋」(後編)

さて いよいよこれから魚が出てくる気配が!まずは燗酒で喉を暖めておく。

そういえば、秋田の人は純米酒や吟醸酒を燗では絶対に飲まないようだ。給仕の若旦那も「燗で」というと心外な顔をするし、助役もNさんも「ふううううん、、、」という腑に落ちない顔をされる。郷に入っては郷に従えと言うのだが、冷酒でいくとせっかくの味蕾が縮んでしまうので、なんと言われようと燗にしてくれとお願いした。

呑んだのは飛良泉(ひらいずみ)を中心に、秋田の地酒ばかり、それも純米ばかりにする。やはり飛良泉の上燗を少しおいて冷ますくらいが一番、秋田の味覚に添うような気がする。

「はぁーい、ハタハタの塩焼き!」

■鰰(ハタハタ)塩焼き

おおおおおおおお
いきなりでたぁ! ハタハタの塩焼きだ!

前編にも書いたとおり、このハタハタが僕の秋田でのナツカシ味覚である。中ぶりの、15センチくらいのハタハタだが、ブリコがぎっしりと詰まっている。頭から思い切り腹までかぶりつくと、卵がはちきれてぽろぽろと落ちる。

プリコを噛みしめると、あのブチン・ブチンという感触が弾ける!そして、やはり魚卵臭くない、優しい旨味のエキスが油分とともに舌をなめらかに撫でていくのだ!

「おおおっ旨いよぉおおおお、、、何年ぶりだぁ、、、」

本当に数年ぶりに食べた! ハタハタ自体は数回口にしたが、それはハタハタの麹漬けなど、身を調理したものばかりで、このはち切れたブリコを食す機会は本当に数年ぶりである。感動に視界がかすむほどに旨い!あっという間に平らげると、「やまけんさんこっちも食べてください」ともう一匹差し出される。嬉しい、、、

「塩汁(しょっつる)で最後、またブリコが出てきますから、それまで他のを楽しみましょう」

と出てきたのが、出た!ダダミ刺しである!

■ダダミ刺し

この脳ミソ状の白い物体、鱈の白子である。北海道では「タチ」と呼ぶこの最高な食材が、秋田では「ダダミ」。なんたる言語感覚の隔たりであろうか!底には優劣や美醜はない。ただ、
「なんでそういう名前なの?」 というプリミティブな疑問を呈するばかりだ。まぁ解答はないんだけどね。

このダダミ、北海道で食べるタチよりも柔らかでなめらか。北海道のタチだともうすこし個体としての要素が強く、プチンとしたあとムッチリトロトロとなる。けどこのダダミは最初からトローンとしている。ん?もしかしてこのトロトロドロドロの感じが「だだみ~」っていう言語感覚に繋がってるんだろうか。大変に興味深いぞ。

■あん肝

秋田でもあん肝を食べるんだな。立派なでかさのあん肝はほどよく蒸されていて、コクがあって最高に旨い。

助役とN氏、I氏の会話も弾む。村役場と県庁の立場はちがえど、みな秋田をこよなく愛しなんとか良くしていこうという気概に満ちた人ばかりだからだろう。酒を呑み、旨い郷土料理を前にすれば、ポリシーの違いは簡単に吹っ飛んでしまう。

■男鹿の活タコと活ブリ

そういえばここまで刺身が出なかったが、いやもうこの刺身の鮮度と旨さは何も文句のつけようがない。

みよ!プリップリな活タコを!

みよ!このトロリと脂を一枚まとったブリの刺身を!

濃い口醤油につけ、つつと口に運ぶと、なんとも上品な味とコクが拡がる。そうだ、秋田の海の幸は全て品がある。それがキーワードかな。

■舞茸と豚ホルモンの炒め物

「何か食べたいものは?」

と訊かれたのでこの炒め物を頼んだ。まだ行ったこと無いが、秋田では豚のホルモンを使った料理がかなり有名だ。なのでここでも頼んだのだが、一口食べて驚いた。
いや、味は非常によい。旨い。けど、この夜始まっていままで口にしてきたどの食べ物とも違う世界観だ。

それは、油脂の存在だ。これまで出てきた皿には、人工的に抽出した油脂はまったく介在していなかった。そこにいきなり、かなりの強さをもつ油脂と、動物性タンパク質(ホルモン)の登場である。味覚の地平の違いに、本当にびっくりした。

結論として、この一皿も非常に旨いのだが、こと山菜と海の幸を食べている合間に置くべき皿ではなかった。この辺、僕自身のセレクト眼が上手く機能していなかった。反省。でも、料理としてはすんごく旨いぞ!豚ホルは下処理がいいのだろう、臭みも少なく舞茸の繊細な味わいとマッチしていた。濃いめの味付けにご飯を欲してしまうがここは踏みとどまる。なぜならこれからがメインだからだ。

「はい~っ 塩汁(しょっつる)よ!」

■塩汁鍋

何を隠そう、僕は塩汁を食べるのが初めてである!そりゃそうだ、ハタハタを食べる最もポピュラーな料理がこの塩汁なのだが、ハタハタ自体を口にしてこなかったのだから、、、

ちなみに「しょっつる」というと、ハタハタや雑魚を塩漬け発酵させて魚醤という調味料にしたてたものを言うが、同時にそのしょっつるで味を付けた鍋物のこともしょっつる(塩汁)というらしい。この日の午後、大潟村からホテルに向かう途中、車中で村役場の方とこういうやりとりがあった。

「(調味料としての)しょっつるって、なんの料理に使うのが一番ポピュラーなんですか?」

「ん~ しょっつるですねゃ」 (←秋田弁!)

「いや、そのしょっつるを使った料理って何があるんですかね、ってことなんですけど」

「ですから、しょっつるですねゃ。」

「、、、」

そう、鍋の名前もしょっつるなのである!野菜類とハタハタを、塩汁で味付けしただし汁で煮たのがこの塩汁鍋だ。

「やまけんさん、我々はハタハタはいりませんから、3匹分食べてください。」

えええええええええええええええ
塩焼き分も合わせると都合5匹食ってしまうのか、俺は、、、

塩汁鍋のだし汁を取り皿にとり、一匙すする。濃厚なだし汁に魚の旨味と塩気が溶け込んで、豊かな味だ! しかしこの時気がついた。この味、非常に豊かなのだが、縦軸の線がピンと屹立している旨さだ。そう、明確にさきほどの舞茸と豚ホルの炒め物の味世界と違う。

秋田の郷土の味は、強くしなやかなピアノ線を何本も束ねて縒り、ビンと張った単色・単線の味世界なのだ。引き算の世界で、シンプルにして強い旨味を一本だけ。だからご飯に最適にマッチするものばかりなのだ。水墨画の世界がモノクロームなのに無限に豊かであるのと同じ意味で、秋田の食世界はストイックにして豊かだ!これを発見して僕は小躍りしそうになった。

さきの舞茸豚ホル炒めには、コシヒカリのような、油脂と肉にマッチした米が合う。でも、伝統的な秋田県の郷土食には、もう少し主張の柔らかい、ストイックな線の米品種が合うのではないか、だからあきたこまちが現れ、農家の家ではひとめぼれが食べられ、ササニシキが珍重されているのだ。ここしばらくの秋田詣でで、自分なりの解釈に行き着いた。的はずれかも知れないが感動してしまった。

思わず言ってしまうぞ ビバ、秋田!

ブリコがはみ出したハタハタにかぶりつく。塩汁の強い塩気とブリコのブチブチ感、そしてなめらかな旨味が僕の舌を撫でる。ホロリと引きちぎれる身も旨味が濃く、白菜や葱と合わせると甘みも滲んできた。

もう言うことはない。3匹ハタハタを食べて、もう腹一杯です。

「いや、ご馳走様でした!」

「いやぁ、ぼくら秋田県人でもこの店はあまりきたことがなかった。助役、どうもありがとうございました、、、」

このちゃわん屋、前編に秋田のヤング米農家”ひろっきい”のコメントがあるように、地元の人間もイチオシの店である。僕をそういういい店に導いてくださって、本当にありがとうございます。

急な階段を下り、N氏がカクテルを飲もうと言い出した。川反のバーでマティーニを呑み、助役とお別れ。N氏がいたずらっぽく笑いながら

「そばでも食べに行きますかぁ」

と言う。そりゃあ行くしかないだろう。何せ今日は、秋田の食のイメージを完全に自分の中で視覚化した記念すべき日だ。

ということで、この後に蕎麦一枚と中華そばを食べ、ブリコ以上にはち切れそうな腹をかかえてホテルでバタンキューだったのだ。

2004年12月13日

三浦・久里浜で極上海の幸を堪能した後、世界の至宝・エアーズロック定食を征服した!

三浦半島はいうまでもなく大根・キャベツの大産地である。なーんて、知らない人、居るだろうか?関東地方で最も大きい産地といってもいいだろう。また、海に面した肥沃で暖かい気候・風土の関係から、非常に質のいい作物が獲れる。従ってこの地域は経営的に成功している農家さんが非常に多い。この辺の生産者さん達と話をしていると、非常に優しくおおらかだ。これは気候と、有利な土地条件に負うところ多いはずだ。

そんな三浦市農産課より、農業者・関係機関向けの講演を依頼されたので行ってきた。テーマは、農業を巡る流通・ITの現状と今後の展望である。長島農園の勝美君からの紹介なので、二つ返事で引き受けた。担当者は、先日のダッチオーブン会にも来てくださった瀬戸山さんだ。

「ヤマケン、とにかく打ち上げはすごい旨いっていう店に行きますよ。それだけは確実。」

と勝美君が太鼓判を押してくれたので、2時間めいっぱい気合いをいれて喋った。こんなこと喋ったらまずいんじゃないかということまで話してしまった!このblogを読んでいる人に会うといつも言われるのが「お仕事は何なんですか?」ということなのだが農産物の流通コンサルタントです。ただ、同じ職種の人がこの世にあまり居ないので説明が難しい。たまに、こんな風に講演もしていますので、そういうのに来てもらうとわかりやすいかも知れませんな。

講演は非常にいい反応。数人の農業者さんが口々に良かったと言ってくれる。兄弟blogに書くべき内容だから講演内容には触れないが、これから7年くらいの間に深く静かに日本農業の表向き自然死が続く。そしてその後、パラダイムが変換するはずだ。その方向性についての話をしていたのである。

「やまけんさん、どうもありがとうございました!打ち上げには素晴らしいお店をとってあります!」

よし!ここからが俺の時間である。勝美君の車で20分程走る。横横道路の佐原インター近くにある神子元島(みこもとじま)が本日の一次会会場である。

■神子元島(みこもとじま)
横須賀市佐原1-19-4
046-837-7259
営業時間:
昼11:30~14:30
夜17:00~23:00
定休:木

この店、正直言って、外観からは旨い店だとはあまり思えない。パッとしない居酒屋という感じなのだ。しかし!とてつもなく見事にその第一印象は裏切られた!近年こんなに旨い刺身を食べたことがない!というくらいの素晴らしい魚を食いまくることができたのだ!

店内にはいると、5人がけくらいのカウンターの後ろに座敷という造り。カウンター内に居たバイト(と思う)の女の子のあまりの可愛さに、数秒固まってしまった。写真は載せない(笑)。

さて刺身盛りができあがっていたので、全員は集まっていないが食い始めてしまう。だって魚が乾いちゃったらかわいそうだ!

店内の照明が今ひとつで暗く写ってしまっているが、三浦の海の幸がてんこ盛りに盛られた刺身皿だ。なんとなくこの盛りを観た時、旨い素材が放つ独特のオーラを感じた。

「刺身がイキのいいうちに食べましょう!」

と箸を伸ばし始める。
■ヒラメの薄造り
 中型のヒラメ一匹分、素晴らしく締まった味のヒラメだった!

■カワハギの肝合え
 ただでさえ旨いカワハギの身に肝をまとわせたものだから、これは旨いに決まっている!そしてまさしく旨かった!

■名前わからん、とにかく白身

■タイラ貝

■サザエ

全部うめぇえええええええええ
ビキンビキンに新鮮な歯触りとコクのある刺身ばかりである!

そして実はあまりに旨くて写真を撮るのを忘れてしまった衝撃的なネタがある。金目鯛(キンメ)である!最初これはブリかと思って食べた。旨味の濃いネットリとした感覚でありながら、舌に嫌みが残らない、上品であっさりとした切り身だった。

「これ、旨いな、、、ハマチかぁ?」

「は!?何いってんの?三浦の名物を知らないのかい?これはキンメだよ金目鯛!」

と勝美君に笑われながらも衝撃!こんなに旨いキンメの刺身は食ったことがない!

門仲の寿司処 匠ではキンメの昆布〆が名物だが、どちらかというとキンメを熟成させて、昆布で脱水させると共に旨味を吸わせるという手のかけ方をしている。これこそ江戸前の技というわけだが、こちらのキンメはとにかく獲れたてのさばきたて、切り身のエッジが立ち、脂の目がキラキラするほどに鮮度がいいのだ!同席の皆も「これは旨いな!」とビックリしながら箸を伸ばしている。

いやしかし全部のネタが絶品だ!イカも抜群の鮮度で、福岡のイカの生け簀料理屋でさばきたてのイカを食べているのに近い食感と甘さだ。

それと無造作に最初からおかれている和え物が絶品!なにかの肝を、白身のアッサリ目の刺身と和えている。こ、このコクのある肝を持つ魚と言えば、、、
「はい、あん肝和えです!」

おおおおおおお
そんな、最初から各席に無造作に置いとくもんじゃないでしょ!

カワハギの肝合えも旨いが、あん肝で白身を和えたこいつは半端じゃなく旨い!これをご飯にのせて掻っ込みたいと熱望!

そういえば乾杯終了後くらいにバイトのお姉ちゃんが固形燃料に火をつけていた小鍋がぐらぐらと沸き立っている。蓋を取ってみると、寄せ鍋かと思いきや違って、なんだか練り物が沢山入っている。

実は僕は練り物はあまり食べない。産湯を浸かった愛媛の港街である今治市名産の新鮮なカマボコ以外は好まないのだ。何が入ってるか分からない練り物には手が出ない。
と斜に構えながらよく見てみると、この練り物、ホワホワとした密度の薄さからみると、はんぺんらしい。しかしこんな丸っこいはんぺん、、、?もしかして、、、

なんと、手作りのはんぺん類ではないか!これにはびっくり。種類の違う魚でフワフワのはんぺんというか練り物が作られている。食べ口は柔らかく、味はマイルド。臭みは全くない!こういう練り物なら大歓迎だ!旨いぞ!

そこにまた全く毛色の違う一皿が運ばれてきた!

「はい、ロールキャベツです!

魚が売りの店でロールキャベツとはこれ如何に! しかしこいつがまた旨い。トローリとした特製ソース(ドミグラス系だけどなんだか独特)でこてこてに煮込まれたロールキャベツは、キャベツ部がトロトロになっているが形と筋はきっちりと残っていて、柔らかな歯触りを返してくる。具は肉だけど濃すぎずちょうどいい感じ。

独特なソースがまた得も言われぬ感じだ。これで飯を食いたいと切に思う。隣の生産者の山森さんが食べなさそうなので、手洗いに行っている間に強奪し、食べてしまった。

ちなみにこれ↑が今回呼んでくださった面々。奥にみえるオレンジ色のパーカーを着るのが三浦市の瀬戸山さんで、長島農園のダッチ会にも来てくれた。その右隣、ワイシャツをビシッと着ているのが若手の深瀬君というのだが、なんと彼はマラソンランナーで、先だって開催された横浜マラソンのハーフマラソンで1時間7分58秒という記録を出し優勝してしまったという猛者である!ホノルルマラソンにも出るということで、この日後述する二次会には参加せず帰ってしまったのが残念!僕の隣には、長島農園を上回る、年間300品目作付するという強者である高梨さんが居る。彼には、雑誌「やさい畑」の仕事で大根特集をした時に、数種類出品してもらったことがあるのだ。

と、デカイかき揚げが運ばれてくる。

桜エビなどがふんわりまとめられたかき揚げだ。このかき揚げもとなりの山森さんが食わないので、僕がいただく。ちなみに小鍋仕立てのはんぺんも食べなさそうなので、勝手に箸をだして食べてしまった。

そしてこの店の名物が出た!店の情報を教えてもらった時のWebで、「ヅケ握りが旨い」と書かれていたので、絶対に僕も食べたいと所望していたのだ。そう、各種ネタを煮切り醤油でヅケにした握りである!

この照り照りと輝く表面を観よ!実に最高ではないか!まぐろの赤身はいうまでもなく、先のキンメもヅケになっていて、ますます旨味成分の集積度が限界まで上がりまくっている!

ヤマケンもうご満悦である。このヅケ握りはさすがに皆残らず食べていた。煮切り醤油と魚の切り身、そして酢飯のコンビネーションは憎らしいほどに完璧だ。旨かった!

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「いやぁ~ 旨かったなぁ。今日は最高の魚料理の店に出会えましたよぉ!」
「じゃあ二次会はドカンとハンバーグ食べに行きましょうか?」

「へ?ハンバーグ???」

と勝美君が変なことを言い出した! そう、実はこのエントリ、ここからが本番である。

先日トリュフを採りに来た際に、フレンチのシエラザードに行ったが、実はあのとき長島君は僕に「ハンバーグ食べにいこう」と言っていたのだ。なんでも、400gの大ハンバーグだという。しかし、トリュフを届けに行ったらシェフが飯の準備を始めてしまったので居座ってフルコースしてしまったのである。

「あの店にヤマケンを連れて行きたいんだよなぁ~ さすがにもう400gのハンバーグは食べられないだろうけどね、、、」

この一言が俺の闘魂に火をつけた!

「ヤマケンには食べられないだろうなぁ」というのは絶対君主的タブー文言である!どこかの空港でチケット待ちカウンターで一人前に並ぶ女性に惚れて、その女性を迎えに来た男をみて闘魂を燃えたぎらせ、最後にはその女性をものにしてしまったアントニオ猪木のごとく「私の闘魂は燃え上がった」

「いいじゃん行こうよ。お腹空いてきたよ。」

「えぇ~ ほんとに行く気?まだやってるかな?」

と時計を観ると10時半くらいなのだが、もうこのノリは収まらない。タクシーに乗って京急久里浜駅近くに移動する。

場所を観ると、なんとしばらく前に、これもまた最高の海の幸料理を満喫した「海蔵(みくら)」がある通りではないか!そう、これからいくハンバーグの店はその道を挟んだ向かいにあるのだ。

「お、開いてるよ!行こう行こう」

■店名:味美(みよし)
店のデータ分からず。上記、「海蔵」の道を挟んだ前にある。

洋食屋然とした店がみえてくるかと思いきや、、、なんだ、ひなびた定食屋ではないか!かなーりワクワクしてきた!

こういう店はかなりの曲者が多いのだ。なんと言っても通りに面した定食の蝋細工のサンプルが長い年月を経ているようでくすんで死ぬほど不味そう。わざわざ食欲を失うようなサンプルを飾るこうした店がいっぱいあるけど、気にならないのだろうか。

しかし店内にはいると意外とこざっぱりした、パイプ椅子とテーブルの定食屋である(当たり前か)。どやどやと入る。店内をぐるっと見回す。

この店、メニューに載っている品目数がやたらと多い!しかしこう言う時に僕が愛するのは、壁に貼ってある、紙に手書きされたメニューだ。この場合、品目と品目の間は小さくビッシリと情報が書き込まれているのが望ましい。

そして、、、
本日最高の一品を発見した! もう僕は、このメニュー名を観ただけで討ち死に本望である。

「エアーズロックハンバーグ定食 2Lサイズ 1500円」

なんとエアーズロックである!オーストラリアに鎮座まします世界最大の一枚岩、古代のアボリジニ達の聖地であっただろうあの神秘の岩塊のごときハンバーグが定食になっているのである!!!!!

別のメニューを観るとこれがまた最高だ。

「オムスパサン」(トマト味)
「オムスパクン」(塩味)

という強烈スマッシュの次ぎには「ベリーグー定食(ハンバーグ、卵、チーズ、焼き肉、ニンニク)」という最強布陣の定食1260円。

そしてその下にはまたもや「エアーズロックバーグ定食」こちらには誇らしげに「超デカ」と書かれている!

さらにその直下にある「オムライスプチモンドセット」の豪華な布陣にも心を動かされてしまう。

なんて食い倒ラー嗜好な店なんだ!あまりのすごさとネーミングセンスのツボ加減に衝撃が止まらない。これは料理が出てくる前に大ヒット!

「やまけんさん、本当に食べるんですか?」

「当たり前じゃないですか!こんなのナカナカ出会えないんですから!」

と僕はエアーズロック定食を頼む!他の人はビールだけ呑む人半分、数人が普通サイズのハンバーグやカレースパなどで付き合ってくれる。

厨房のおっちゃんがハンバーグの生地をリズミカルにこね出し、空気を抜いている。はっきりいって、メニューや店の外観というギミックはともかく、その工程をみるとれっきとした技術の入った洋食屋さんである。

じゅわーっと焼く音がひとしきりして、運ばれてきたのがこれだ!

解説の必要ないだろう、手前がエアーズロックで奥にあるのが普通サイズだ。普通サイズは目玉焼きに隠れるくらい。エアーズロックは目玉焼き2.5個分程度のサイズである!

おおおおおおおおおおおおおおおお
旨そうじゃん!

ここまでくると僕の食欲はまた再度活性化され、食道ぜん動力高出力、胃液量最大分泌、の食い倒れモードに入る。

ハンバーグは豚肉中心のアッサリホコホコ目の肉質。肉汁がジュッと出てきて、ケチャップベースのソースとからみ旨い!ご飯が食えるハンバーグである。ドミグラスソースに凝ったハンバーグはなんだかご飯と相性が悪いのが多いので好きではない。この味美のハンバーグ、最高である!ライスが進む!そういえば洋食屋では「ご飯」といわず「ライス」というが、これによってご飯が二段階くらい旨いという錯覚を抱く僕はオカシイだろうか?なんか違うモノになって出てくるような感じなんだよね。

ワシワシと食べて、きっちり完食!

いや、実に旨かった!1500円という障壁があるからリピートするかどうかは微妙だけど、今度来る機会があれば、ベリーグー定食かオムライスプチモンドセットを所望してみたいと思う。

「お疲れ様でしたぁ~」

グロッキー気味の皆さんとお別れして、僕と長島君、瀬戸山さんとでYRP野比駅へ。今日は長島農園に宿泊なのである。であれば先回も小呈な外観ながらバーテンダーの実力に感心したバー、サンライズで一杯飲んで〆たいではないか。

サンライズでは、こないだ味見しかできなかった、軽井沢の地ビール「ヨナヨナエール」を呑む。モルトが濃くて旨い。滑らかだけどかなりズシッと来る喉越しで、これ一杯で十分だ。そういえばこのマスターは先のマラソンランナー深瀬君と同期の陸上選手だったそうだ。不思議だなぁ、陸上王国三浦横須賀!

最後まで付き合ってくれた瀬戸山さんとしみじみと、とつとつと会話をする。どこの市町村も、農産課も、持っている悩みは共通だ。そこに彼はまっすぐな正義感として頭を抱えつつ、コツコツと日々、その壁につるはしを当てている。僕はこういう一本気の男が大好きだ。

一杯飲んでサンライズを出て瀬戸山さんを送る道すがら、ポツリと彼がつぶやく。

「ハンバーグ、きっと食べちゃうんじゃないかと思っていましたけど、、、本当に食べましたねぇ、、、」

静かに唸るフットボールマニアを見送り、こちらも長島亭についた頃には、胃袋活動により猛烈な睡魔が僕を襲っていた。本日完食。

2004年12月18日

秋田の深淵を覗く その1 秋田県の食材はさらに奥が深い。

今日は秋田県太田町の米の仕事で秋田入り。この冬はじめての雪景色に出会った。途中で止んだが、車のフロントガラスにシンシンと当たってくる雪を見ていると、いかに現在の関東で冬を感じにくくなっているかを実感してしまう。

空港から1時間少しの道すがら、産地の直売所に寄って頂くと、また関東ではみない面白いものが沢山あった!
「ヤマモト先生(←と呼ばれている)、秋田では、芹(セリ)は根っこも美味しく食べるんですよ。ほれ、こうやって売っているのも根がきれいに洗ってついたまま売ってるでしょう?」

おおおおおお 本当だ!関東では芹の根はきれいに取られて売り場に並ぶが、秋田ではこの根を賞味するという。そう、千住葱のエントリでも書いたが、植物の根は実にその植物そのものの味がするものなのである。しかし芹の根の部分を好むとは恐れ入った!

「だから秋田県では他県と違って、根が旨い品種を植えているんですよ。」

なんともビックリである!根が旨い品種なんてのがあるのかぁ!

「昔はどの家庭でも田んぼの畦の間に植えていたもんですが、最近では基盤整備とで田んぼをきれいに作り直してしまうので、芹を植えるスペースが無くて。だから芹専用の田んぼがあるんですよ。」

そう、芹なんて実はそこらへんに生えているものだったはずなのだが、、、これはまた、芹の根っこを食べに来ねばなるまい。

太田にあるもう一つの直売所を覗くと、素晴らしいアイテムを発見!なんと秋田県が世界に誇るスモークである「いぶりがっこ」の原料となる、いぶり大根である!

昔のエントリを読んだことがある読者さんならおわかりだろうが、いぶりがっことは、干し大根を燻したものを麹などで沢庵(たくわん)に漬けたものだ。ちなみに「がっこ」とは秋田弁で漬け物のこと。いぶした漬け物という意味なのである。

枯れ木のようなテクスチャーだが、鼻を寄せると確かに燻煙香がする!直売所には複数の農家のお母ちゃんが商品を持ってくるので、このいぶり大根もいくつかある。そのそれぞれの燻煙香がオリジナルなのだ!

考えてみれば、いぶりがっこは家庭によって大根の味、干し具合(脱水の具合)、燻煙の木の種類、塩加減、漬け床の材料によって千変万化の味になるはずだ。文化多様性万歳!秋田を旅行することがあったら、空港のお土産屋に売っているいぶりがっこではなく、郊外にある産直所で買うことが出来る、真空パックされただけの無愛想ないぶりがっこの一本ものを買い求めて頂きたい。大概、生産者の名前が書いてあるから、できれば複数購入して、味を比べてみて欲しい。本当に全部違う味なのだ!

さて太田町の農協事務所に行くと、玄関口に漁協の軽トラが停まっていて、なんとハタハタをトロ箱で販売していた。

「一箱3200円でいいよ!」

と、ブリコの詰まったハタハタを販売している。こんな内陸まで売りに来ているところをみると、おそらく水揚げが多すぎて売れ行きが悪いんだろう、ということだった。

会議が終わった後、生産者さんと話しをしていたら、

「ヤマモトさん、ぜひうちの米を食べてよ!今すぐ持ってくるからさ!」

とわざわざ米をとりに帰って持ってきてくださった!

貴重な、特別栽培米である。ざっくりいうと化学肥料と農薬使用量を通常の半分以下にして育てる農産物を特別栽培と呼べるのだが、栽培方法の大きな変更を余儀なくされるので、通常栽培から転換するのは大変な苦労を伴う。

「やっぱり通常栽培と比べると収穫量が落ちるんだよね。あと、米の粒が大きくならないから、通常米と同じ網目だと落ちる米が多いんだよ。」

米は、粒の大きさが規格化されており、定められた網目(メッシュ)から落ちてしまう小さな米は等級が下がってしまう。で、化学肥料と堆肥などの天然資材では肥料成分が化学肥料とは違うため、作物の大きさが必然的に変わってしまう。端的にいえば化学肥料を使うと作物の図体がでかくなる傾向があると思う。でも、化学肥料の割合を少なくした方が旨いと、僕は思う。

この国の農業技術の世界では化学肥料と有機質肥料の差異について語ることがタブー視されているきらいがあるのだが、流通関係者としての個人的な眼からは、ある程度以上の技術を持つ生産者が栽培したものについては差があるといわざるを得ない。ま、その分、作物の重量が減ってしまうのだ、きっと。

ということで脱線したが、減化学肥料で栽培しているので、米粒の大きさも若干小さくなってしまい、等級が下がってしまう率が高いということなのだ。米穀店やスーパーで特別栽培米をみて欲しいのだが、おそらく通常よりは高い。なんでかな?と思う人も多いだろうが、そういうわけなのだ。では味は絶対に通常栽培米より旨いか?といわれると、それはそうとは言い切れない。生産者の技術、産地に由来する土質・水質による味の差があるだろうから、、、

けれども、農薬と化学肥料の使用量を減らし、苦労して作られている米を応援して欲しい。さらに味の違いがどうか、試してみて欲しい。

「ま、俺たち生産者からみたら、明らかにこっちの方がウマいっす。」

と彼は断言していらっしゃった。それがすべてだろう。そんな苦労をして作られた米だ。これはきっちりと味わせていただくことにする。

秋田にはそんな食材が一杯なのだ。秋田県人は口下手で宣伝もヘタなので、都市部で秋田をアピールするのには無理があるように思う。だから、こちらから秋田に出かけるしかないな、とも思う。

しかし、秋田県の課題は、旅人が秋田の本当の”家”の文化に触れる環境がないということだろう。よく友人から「そんなに美味しいなら私も旅行に行きたいから、いいコースを教えて」といわれるのだが、僕のblogを観て頂ければ分かるとおり、観光ルートではないところに素晴らしい秋田の文化があるのである。一番いいのは、農家に民泊させていただくことだが、つても何もなければ夢物語だ。

グリーンツーリズムという、農家民宿を拡張したような構想・動きがあるのだが、これがもっと簡易にできるように整備して欲しい。秋田、山形という東北の素晴らしい文化では、グリーンツーリズムはすっぽりとはまるはずだ。うーん そういうプロデュース出来たら面白いのになぁ、、、

生活者の皆さんはそういう声を色んなところであげましょうね。というオハナシ。

秋田の深淵を覗く その2 絶品の焼きホルモンにノックアウトの夜だった!

太田町での仕事が終わって秋田市内への帰り道、県庁のN氏がニコニコしながら、「旨いホルモン焼きを食べましょう!」と言ってくださる。そう、しばらく前から聴いていたのだが、秋田ではホルモンを鍋で焼いて食べさせる文化があるらしい。

「秋田全域というわけではないんだけれども、鹿角(かづの)市というところに有名な『幸楽』という店があるんですよ。その店から直送のホルモンを出す支店のようなものがいくつかあるんですが、実は秋田県庁のすぐ近くに一店あるんです。」

なんでも、鹿角市に駐在する県庁職員は必ずそこのファンになり、秋田県庁に戻った後もその店で懐かしい味を楽しむのだそうだ。そういうわけで、秋田市内に住んでいてもこのホルモンを知らない人は全く知らないのだという

県庁から歩いて2分のところに、そのホルモン「伸栄」があった。

■ホルモン 伸栄
018-863-1020
秋田県秋田市山王6丁目2-10


たしかに看板の左の方に、「花輪幸楽より直送」という文字がある。

中にはいると、座敷とカウンターに客がビッシリと入っている。

予約をしないと入れない時もあるということだったが本当にそのようだ。座敷に通されると、そこにはジンギスカン鍋がしつらえてあった。

メニューを観て欲しいのだが、ホルモンが一人前450円と安い!

ここではホルモンとキャベツを頼み、このジンギスカン鍋にこんもりと載せて焼いていくのだそうだ。

さっそく3人分のホルモンとキャベツ2人前、豆腐一丁を頼む。ホルモンはすでに秘伝の調味ダレに漬かっているらしく、すぐに出てきた。これをジンギスカン鍋に全部ぶち込み、さらにキャベツを全体が隠れるようにのせていく。


もとの漬けダレが多めなので、水分がジンギスカン鍋の脇に溜まる。タレにはニンニクが多量にぶち込まれているようで、僕の狂暴性を最大限に引き出す猛烈な香りが辺り一面に漂う。いや、漂うなんてもんじゃなくて充満する!

「赤身が無くなってきたら火が通った証拠ですから。」

と言われるが待ちきれないゾ。でも、内臓系の肉はきちんと火を通した方がいいからね→皆様。しかし、きれいなホルモンだ。余分な脂をきれいに処理している。内蔵がきれいというのは、家畜がいい環境で育っている証拠だ。きっちり火が通るのを待って、さっそく口に放り込んだ。

ムチっと弾力のある歯応えながらプチリと噛み切れる肉質。そしてほとばしるニンニク香と甘めのタレのハーモニーが口中で炸裂する!

旨い! 今まで食べた焼き系のホルモンで一番旨い!

これには本当にビックリした!ホルモンの質は実に最高。どうやら銘柄豚の処理場から直接引っ張っているらしく、新鮮さがわかる。シロといわれる小腸部分以外にも色々な部位が入っているが、どれも新鮮な歯応えに味で、とにかく旨い!

また、一緒に加熱されたキャベツがタレを吸って、爆発的な旨さである!ご、ごはんが食いてぇ~!でもまだ二件目に行く店もあるみたいなので必至に我慢。

ちなみにこれがタレである。その組成はまったくわからん!ニンニクのきかせ肩が半端じゃないのだが、ここまでにんにくの旨味と香りを出しながら上品さをキープしているのはすごいことである。

いや、マジでこの店は旨い!感動してしまった、、、仕上げに焼きうどんというのを試してみたが、焼きうどんというより、漬けダレで炒め煮する感じのうどんだ。

これがまた秘伝ダレを吸って旨いのなんの!いやもう最高である。

この幸楽のホルモン、なんと通販が可能なようだ。今度買うぞ!ジンギスカン鍋じゃないとこの味が出ないらしいから、一緒に買おうと思う。

いや、マジでビックリ!こんなに旨いホルモン食ったら、他でもう食えないよ、、、

「秋田でも、市内の人なんかは知らないのがミソです。」

本当にそうなんだろうか。僕の身の回りの秋田県人、ひろっきい、鈴木元編集長、石田さん、岩谷君、この店、知ってました?

次回秋田来訪時にもぜひここで、こんどはメシといっしょに食いたいものだと思う。ヤマケン絶賛印をつけておこう!

秋田の深淵を覗く その3 こいつぁ 一生に一回は体験したい。目の前でジュワジュワ「日本壱」の超絶石焼き


さてホルモンを堪能した後、すみやかに次なる店に向かった。今度は、秋田の沿岸部、男鹿の料理である「石焼き」を楽しみにいくのだ。

石焼きとは、海の幸を木桶に沢山入れて味噌と湯を足した中に、じっくり焼いた石を放り込み、ぐらぐらと沸かして食べる汁らしい。類似の調理法がいろんなところにあるが、男鹿ではこれを石焼きと称する。これを店で食べさせてくれるのが秋田市内の「日本一」である。

■日本一
秋田市中通6-14-15

居酒屋風の店内に入り、カウンターへ。

燗酒を飲みながら茄子のがっこ(漬け物)とハタハタのい寿司を頼む。ハタハタのい寿司は、実はこれが初めてだ!北海道にもこのハタハタ寿司はあるのだが、寿司と言ってもにぎり寿司ではない。鮒寿司のように、ご飯は発酵促進剤として使われる。ハタハタとご飯、麹、人参を漬け込んで乳酸発酵させたなれ鮨である。

ハタハタ寿司は、、、思った通りの味がした!これはオスの身なのだろう、ブリコは入っていないが、その分、身の上品な旨味と酸味を味わえる。

旨いなぁ、、、と思っていたら、後ろから「ちょっとスミマセン」という声がかかる。石焼きの登場だ!

どさっと置かれたのは、洗面器とタライの中間くらいのどでかい木桶だ!その後ろから、熱気をはらむ焼いた石がお通りになる!

これを木桶に投入!

ジュワっという凄まじい音と、いきなり立ち上る水蒸気。

「熱いっ!!」

と従業員が手を引っ込める。水蒸気にやられたらしい。そしてN氏も「熱いッ」と飛びすさる。こちらは瞬間的に沸騰した飛沫が顔にはねたらしい。

この様子を動画で撮影したので、瞬間的にぐらぐらと沸き立つ石焼きを観たい人はどうぞ!

■石焼き投入の動画(5.66MB)

立ち上る湯気。すさまじいプレゼンテーションだが、何より二人前でこの大きさなのが笑える!

この木桶になみなみとみそ汁と大量の葱、魚がぶち込まれているのだ!

いただきまーす。瞬間的に沸騰するので、魚介の身が締まって旨味がドロドロに溶け出さないのが、石焼きの特徴だそうだ。たしかに魚は旨く感じる!とくにブリコをはらんだハタハタはネットリと糸を引き、実に旨い!

ちなみにこれが石焼き用の石。火山岩だそうだ。

あまりにたっぷりとあるみそ汁を飲み干すことはできず、具だけ頑張って食べて店を出る。いやー 暖まった。

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その後、繁華街の川端近辺では珍しい(?)シックなバーへ。

実にきちんとした佇まいのバーだった。美人バーテンダーにパスティスの水割りを作ってもらい楽しんだ。

「もう一軒、蕎麦を食べていきませんか?」

そう言われて断る僕ではない。呑んだ帰りの客で混み合う「山科」へ。


さすがに寒いので暖かい蕎麦を食いたいが、その一方で酒に火照っているので冷たい蕎麦も食いたい。ということで両方食べてしまう。

■ばかし(卵入り)

ばかしとは、タヌキとキツネ両方いれたものを言う、、、なるほどね!

■ナメコおろし

ヒンヤリとした蕎麦にナメコのぬるぬるが気持ちいい。この辺でもう意識は結構もうろうとしてきている。

食べたぁ~
代行を呼んで頂き、駅前の東横インへ。Nさん、どうもありがとうございました。

この秋田での仕事もあと数回で終了だと思うと、かなり寂しい。次回、心おきなく食いまくろうと思う。

2004年12月27日

大・ベーコン大会in某所 バードコート軍団&堀江君もこれで燻製野郎だ!

ご存じの通り僕にはハム・ベーコン・ソーセージ作りの師匠がいる。それは静岡県で畜産関連の業務に従事しておられる関師匠である。
過去数回このblogでもそのハムソー作りを公開してきたとおりだが、ここにぜひ連れていきたい人たちがいたのだ。それはバードコートの野島さんと、ライブドア堀江君である。

どちらの決断も一瞬であった。

「やまけんさん、それ、連れてってください!シャモを燻製にしたらどうなるんだろうって、ずっと思ってたんですよ。」by野島さん

「えっ、、、俺も行きたいッス、、、」by堀江君

じゃあ行こう!

ちょうど、僕の兄弟分である工藤ちゃんも来られるので、みなで行くことにした。工藤ちゃんは、純米酒を燗して飲ませる居酒屋である「五穀家・日本橋店」の店長を辞めた後、長らく他チェーンの店長をしていたが、とうとう来年度中には自分が100%みることが出来る店をオープンする運びだ。板前は、日本橋の某店で板場にいた五十嵐君だ。いよいよ何かが始まる予感のメンバーばっかりなのであった!

ちなみにベーコン作りのイロハは以前のエントリに書いたとおりだ。僕は淡い味わいのハムよりも濃厚ギトギトなベーコンを好むので、豚バラを2キロ買い込んだ。これまではソミュール液(塩とハーブを溶かし込んだ液だ)に豚肉を漬け込む方式を採っていたが、それだけではつまらない。今回は初めてのチャレンジとして、乾塩法を採用する。乾塩法とは、液に漬け込むのではなく塩とハーブを擦りこんでおくという方法だ。この方式のほうが簡単なので、今回は双方を作り分けてみる。

巨大な豚バラ肉を3等分し、二本をソミュール液(うち一本は贈答用)、一本を乾塩法とする。漬け込み前日に塩を万遍なく擦りこみ、下漬けをする。

ソミュール液の方だが、これまでの経験上、あまりスパイス類を多用すると味がぼやける、くどくなるという傾向がみられた。そこで今回はシンプルに構成してみようと思ったのだが、、、やろうとするとそれじゃつまらないからいろいろ放り込んでしまうのであった!粗塩、胡椒、ベイリーフ、ニンニク、セージ、大分の臼杵から送られてきた完熟カボス、ブーケガルニ、日本酒を沸騰させる。

これを冷まし、ビニール袋に豚肉を入れ、ソミュール液をひたひたになるくらいに入れる。乾塩法は出来るだけ簡素にということで、塩、胡椒、セージのみ擦りこんでビニール袋に包む。

この状態で5日間置いておき、前日に流水に3時間ほどあてて塩を抜く。一旦、細胞すべてに塩分を行き渡らせたうえで、その塩分をほどよいところまで抜くのが燻製の下ごしらえの最重要点なのだ。

塩分が入った豚肉の組織は化学変化を起こしているので、生肉とは全く違う味わいを持つのである。

これを寒空の風にあてて乾燥させる。水分を含みすぎていると燻煙がうまく表面についてくれないので、乾燥は重要な過程なのだ。つるしたほうがいいのだけども、面倒なのでとりあえずザルに乗せて床に就いた。
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さて、朝5時に工藤ちゃんが愛車で僕の家まで迎えに来てくれる。バードコート軍団、堀江君とは高速のサービスエリアで待ち合わせである。どちらも、一週間前から万全に肉を塩漬けにしている。野島さんのところでは合鴨、シャモ、そして豚肉を塩漬けにしてきたとのこと。堀江君も社長日記に書いているように、万全に塩漬けをしてきたようだ。

ちなみに堀江君には、

「フェラーリで来いよな」

と言ってあるのだが、

「フェラーリしかないッス」

ということであった。

某高速の某海がみえる、何も商業施設のないSAで待っていると、大爆音が聞こえてきた。フェラーリ参上である。

僕は車にはほとんど関心がないのでどーでもいいのだが、すごいエンジン音である。しかも堀江君、すごい豚肉を持ってきやがった!

東京エックスっていう豚を漬けてきましたよ!」

なんだよ銘柄豚じゃないか!水を空けられてしまった、、、

気を取り直して、堀江フェラーリを従えて、なんと時速80kmを遵守し一路会場へと向かったのであった。
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さて某所にて師匠や岩澤さんらと再会。早速仕込みに入る。

師匠によるケーシングの模範演技。ハムは形を整えて燻製にし、そののち70度という絶妙な温度で、タンパク質が凝固し過ぎない程度に火を通すのである。

ハム・ベーコンだけではなくソーセージも作る。モクモクファームのスパイスで味付けをして、腸詰めしていく。堀江君とミポリンもほれこの通りご満悦である。

こちらはバードコート軍団が持参した塩漬けシャモと合鴨肉である。

さて仕込み終わった肉どもを燻煙機(スモーカー)に吊していく。1.5キロ見当の肉塊が20本あまりあるので、かなりの運動量だ。けどまぁ、トータルワークアウトで鍛えている堀江君には全然楽勝だろう、、、ほれ、デッドリフトだ!

スモーカー内部には吊るし肉がごっそり。こういう専用のスモーカーでなくとも、段ボールなどでも燻製は可能だ。火事にならないように気をつけないといけないけどネ。

さてしばらくの間、煙を燻さずにコンロの火だけをかけて、水分を飛ばす。温燻といって、肉に熱を通す+煙で燻すということになる。ここからは数時間、待つばかりである。

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さーてそれでは地鶏タイムだ!

静岡県と言えば、僕が大好きな駿河若シャモという地鶏の産地だ。そして、その若シャモ生産組合の長である鈴木恵美子さんが、今回も駆けつけてくれた!バードコートの皆さんと若シャモを出会わせてみたいというのが、今回の一つの趣旨なのだ!バードコート軍団には、奥久慈シャモを持参頂いている。これと恵美子さんの若シャモをいっしょに食べてみようという、おそらくこれまでにない地鶏食べ比べ大会である!

奥久慈シャモと駿河若シャモをさばくのは、当然ながらバードコート軍団の皆様である。

野島さんのサバキの技をとくと拝見させて頂いてしまった。野島さんは技術を隠すことなく、スイスイッと鶏を捌いていく。それをじっとみていた板前の五十嵐君が、「切るんじゃなくて、包丁をあてて骨から剥がすという感じですね」と言っていたが、まさにそうだ!

野島さんは穏やかに手を動かしながら、五十嵐君の質問にも懇切丁寧に答えてくれる。一流の人とは、こういう人を言うのだ。秘密なんて、どこにもありはしない。だって、毎日の鍛錬が必要なんだもの。みるだけで真似ができれば、料理の世界に一流も二流もあるわけがないのだ。

■地鶏をさばく野島さん動画(3MB)

このようにして、まさに地鶏総覧会といわんばかりの状況になったのであった!

これがバードコート軍団によって捌かれた駿河若シャモの刺身だ、、、と言いたいところだが、僕が撮影する前にすでに居合わせたみんなに食べられてしまいこれしか残っとらんかった!

こちらはピッカピカに鮮度のいい、若シャモの内臓群だ!

このレバー、ハツ、砂肝達は、何もつけなくてもうまかった。鶏肉は、熟成しなければ旨くない牛肉とは違って、鮮度がいいほど美味しく食べられる。内臓はその最たるものだ。この日の朝に捌かれた若シャモの地鶏は、これはもう絶品中の絶品である。個人的にはこの内臓でラグーを作り、太いパスタと合わせたいものだ、、、

会場の駐車場にしつらえたドラム缶バーベキューピットに炭を敷き詰め、鶏を焼きに入る。

最高の焼き手によって、若シャモと奥久慈シャモがいい具合に火を通されていく。依然として彼女募集中の菊リンも焼きまくっている!

奥久慈シャモと駿河若シャモの食べ比べと相成ったわけだが、やはり予想通り、まったくベクトルが違う!奥久慈シャモは端麗辛口、筋肉質のストレート純情派だ。若シャモは脂とコクの乗った、芳醇ウマ口フェロモン系なのだ!

バードコートが望む肉質は奥久慈シャモであるわけだが、全く違う食材として若シャモを推したい。おいらはやはり若シャモ派だったりするのであった!


鶏肉は、かなり火が回るのが早い。燻製にかけていた奥久慈シャモができあがってくる。

野島さんが中華包丁で捌く。肉はあっさりめに仕上がっていて、柔らかく絶妙な味わいだ!

「もうすこし強めに塩をして、もうしばらく燻煙をかけておくともっと脱水されるね。」
といいながら味わう。バードコートのメニューに燻製がのるのはいつになるだろうか!?

おっつけ、ベーコンとハムもできあがってきたようだ。師匠が切り分けてくださる。


できたてのハム・ベーコンは、冷えてからのそれとは全く違う!冷えると、肉が締まり脂が固まって落ち着くのだが、熱が通って落ち着いていない段階のハム・ベーコンは、ここのタイミングでしか味わえない乙なものなのだ!ふんわりした食感、塩分はそれほど前面にでてこない、薫り高い肉が味わえる!
関師匠の作るハム・ベーコンはとてもあっさりめの味わいだ。

「昔は女房も『あんたのハムはしょっぱい』と言っていたものだけど、最近は何も文句を言われないよ。僕の好みがだんだんと落ち着いてきたんだなぁ、、、」

うーむ僕も20年後にはそう言っているのだろうか!


この日は県の岩澤さんの人脈でスバラシイ人たちが集まっていた。この女性は、数年前に開催された利き酒大会でチャンピオンとなった石上さんだ。彼女は静岡県下の旨いものを紹介する活動をしていて、この写真で手に持っているのは、自分たちが田んぼで育てた米で仕込んだ米焼酎である!

これがまた実に味わい深い、くどさのないすっきりした飲み口の米焼酎だった。さすがである。

そして堀江モンも食べている浜松のウナギの白焼き。

炭火でカリッと焼き直し、本わさびで食べるとこれはもう絶品であった!

さて
そうした酒宴の中、粛々と煙は燻り続いていた。

肉に色が付き、熱も十分に肉の内部に浸透した状態になったのがこの状態である。

できたぁ、、、

みよ、数ヶ月は楽しめそうな肉塊が燻りあがった。

野島さんも堀江君も大喜びである。

「こうやってできるんだな、、、やり方はそれほど難しくないな、勉強になりました!今度は店でもやってみよう、、、」by野島

「いやぁ、、、家のベランダでやってみようかなぁ、、、」by堀江

しかしこんなに大規模にスバラシイ企画が出来たのも、岩澤さんと関師匠のおかげである。また、竹炭アーティストの金丸さんも、最高に旨い自家製五穀米のおこわを作ってくれた!そういえば堀江君にあげていた竹炭のレリーフは、いまごろ社長室を飾っているのだろうか。利き酒チャンピオンの石上さんもパワフルオンナだった。鈴木恵美子さん、若シャモはやっぱウマいっすよ。その他ご参加頂いた皆様、どうもありがとうございました!来年も燻製やりましょう!

2004年12月28日

秋田県太田町の特別栽培米 タカハシさんの米はグレートフルに旨い!

 先日のエントリで紹介したとおり、仕事で伺っている秋田県太田町の米農家である高橋さんから、特別栽培のあきたこまちをいただいてしまった。

 特別栽培とは、農薬と化学肥料の使用を、慣行農産物(通常の栽培方法で作られたものをこのように表記する)の二分の一以下にしたものを言う。昨年度中にガイドラインの改正があり、これまでは無農薬とか減農薬とか減化学肥料と呼称していたものを、「特別栽培」という呼称に一本化するということになったのだ。詳しくは農水省のQ&A(PDFファイルです)をご参照のこと。

 このガイドラインはあくまでガイドラインであり、法律ではない。しかし、消費者にとってはわかりにくさは解消されない場合がある。減と無の違い、そして農薬と化学肥料がいったい何なのかという認識が消費者には正確に伝わっていないこと、そしてなにより慣行農産物というものの定義である。しかしこの辺は食い倒れ日記的ではないので、いずれ兄弟blogである「俺と畑とインターネット」で書いていきたい。

 で、高橋さんをはじめとする太田町の一部の農家さんが、この特別栽培に取り組んでいる。農薬使用量や化学肥料の使用量を減らすという取組みは、おそらく一般的には

「ああ、安全なのね。」

という受け入れられ方をするだろう。消費者の農産物に対する関心時の中で、依然として農薬使用に関するものがほとんどだというのは、様々な調査からも明らかなのだ。

 しかし、食い倒れ読者にはきちんと理解して頂きたいことがある。それは、『減化学肥料』または『無化学肥料』その上の『有機』というものにおいては、味が違うはずなのだ。

 農産物、そして畜産物、きっと海産物もそうなのだが、味を左右する大きな要因として「それが何を餌としているか」がある。鯛も、天然の海で、海老ばかり食べているものと、養殖環境で人工餌を食べているものとでは味が違うのはおわかりだろう。牛・豚・鶏そして卵の味を左右するのはやはり餌だ。

餌×飼育(栽培)方法×産地×品種 = 味

という方程式が、最低限の要素だ。本当はもっと一杯の要素がある。第一次産業というのは本当に変動要素が多いのダ!だから、最もインテリジェントな産業なのである。

で、農産物においては、化学肥料を使うのと有機質肥料を使うのでは、明らかに差が出る。まず、作物の図体は、あきらかに化学肥料を用いた方が大きくなる。しかし、味もぼやけてしまうことが多い。と断言すると物議を醸し出すこと間違いないので、あらかじめ言っておこう。これは科学的な根拠に基づくものではない主観判断だ。僕は食に関わる人間として主観データを重視する。科学的根拠はないが、化学肥料の施肥量は食味に影響があるというのが僕のベースだ。

 ということで、減農薬であるということ以上に、減化学肥料という側面に、食味の向上という価値を見いだしてしかるべきなのである。

 ただ、残念ながらこれは理論上でしか言えない。化学肥料を多用する農家さんと、有機の農家さんとの産品を食べ比べて、明らかに差が出るわけではない。先に掲げたように、肥料は味を左右する要因の一つでありすべてではないからだ。そこが難しい部分であり、農産物の面白い部分なのだが、、、

というジレンマをまた思いつつ、高橋さんの米を炊いてみた。秋田県のNさんが、玄米でいただいた米を白米、7分づき、5分づきの3種に精米して送って下さったのだ。

この高橋さんの特別栽培米は、減農薬・減化学肥料というだけではなく、米ぬか資材である「米の精」というものを投入している。最近一般化した無洗米を製造する際に出る米ぬかや大豆カスを、農業用資材に加工したものだ。完全植物性だし、環境へのインパクトも押さえられる。ただしこうした資材を有効に使って、成果を出す=美味しい米を育てるということができるかどうかは、ひとえに農家さんの技術による。

どうなんだろうな、、、旨いだろうか。少し不安だった。実はしばらくまえに、同様の農法で栽培された米を食べてみたことがあるのだ。慣行栽培米と、特別栽培米、そして米の精を使った米、、、正直なところ、食感・食味ともに米の精が一番とはいいきれない状態だったのだ、、、

高橋さんの米を軽く研ぎ、吸水させ、いつものように業務用アルミ鍋で強火で炊く。粘りのある汁が鍋フタから溢れる。甘い米の香りがする、、、

旨い具合におこげが出来た。通常の火加減でこうなったということは、甘みの強い米なのだろう。何もおかずナシで一口運ぶ。ふわっと立ち上るあきたこまち特有の甘い薫り。噛みしめると、絶妙なネッチリ感がする!米の命は適度なネッチリ感だ!組織がしっかりとしていて、しかもネッチリと歯にまとわりついてくる。そして染み出てくる旨味、、、

すんげー旨い!

いつもミルキークイーンをお願いしている、同じ秋田県の大内町のひろっきいのところからあきたこまちも送られてきたが、今回の高橋さんの米はそれを少し上回る美味しさだ!

やられたぁ!
ビバ!高橋さん! 賛辞を送りたい。

こんなに旨い米だが、以前も書いたとおり、通常ルートで販売する際には、ある数値に設定した網目を通し、一定以上の大きさの粒でなければ価格が落ちてしまう。そして、減化学肥料栽培は、小さい粒になりやすく、鑑定価格が下がってしまうことが多い。

しかし、どう考えても旨い!

価格側面が上向きにならないと、特別栽培を辞める農家さんも出てくるだろう。そりゃ当然だ、苦労が報われないわけだから。そして消費者は旨いご飯をたべられなくなるのだ。

じゃあ、どうすればいいのか。僕は業者としてサポートしていきたいと思うけど、消費者にとって一番簡単で有効なことは、美味しいものにはきちんと賛歌を送るということだろう

食い倒ラーの皆さん、米に対する審美眼を磨いて、旨いと思った米には、賛歌を送りましょう!その方法は色々あると思うけど、例えば米袋に書いてある販売責任者に、商品名と購入場所を明確にした上で「美味しかった」という連絡をする。そういうデータは、事業者はきちんと記録するはずだ。米屋だったら、きちんと会って口頭で「このお米、美味しい!」と言うこと。

これは米だけの話ではない。日本には賛歌を送るという習慣があまりないから、メーカーはそれだけでかなり奮い立つハズだし、何より「苦労して特別な造り方をして良かった」と思うに違いない。

日本の流通は、メーカが誇りを持てないようなものになってしまっている。逆に言えば、それは「恥」という意識も持たないということだ。きちんと声を伝えていくことが、健全な食を作っていくことに繋がる。

ただし、それにはセンスが必要だ。ごねたり文句いったりクレーマーになるのではなく、相手をいい方向に導くような、そんな賛歌を送ってあげて欲しい。

これ、食い倒ラーの基本だ。

さて残念なことに、高橋さんの絶品な米は、一般には手に入りにくい。太田町の特別栽培米の数量が少ない上に、取引先がある地域に限られているのだ。どこで販売されるかは知っているが、ここで言うわけにも行かない。

なので、とにかくちらしなどで「秋田県太田町の特別栽培米」という文字があったら、注意してみて欲しい。まぁ高橋さんの米だけが来るわけではないから、保証はできないが、、、そういうストーリーを持っている米だということは、言っておこう。

いやしかし
旨い米だった、、、しばらくオカズはいらないや。

2005年01月10日

仙台といえばやっぱ牛タンでしょう! 熟成された分厚い牛タンの旨味を堪能した! 「利久」

さて今年発の出張は久しぶりの仙台だ。岩手、宮城、青森には、あまり仕事上の縁がない。旨いものがたくさんある地域だけに残念な話だ。
仙台の旨いもの、といえばこれはもう色々ある。三陸の海の幸は言うまでもないが、枝豆を磨り潰したねっとり香ばしい香りのずんだ餅などは最高に旨い部類の甘味ではないだろうか。

そしてやはりなんといっても牛タンだ!仙台出身の娘が「あのねぇ、仙台の人はそんなに牛タン食べたりしないよ」と言うが、でも一方で「食べるならあそこだよ!」と口角泡を飛ばして議論が始まることも多い。要するに地元の人にとっては、名物化された状況に対する愛憎の深い食べ物なんだろう。

牛タンの切り身を塩味で炭火焼きし、浅漬けと青トウガラシの味噌漬けを添え、テールスープと麦飯と一緒に供するというスタイルはここ仙台が生み出したゴールデンスタイルだ。やはり先達としての「太助」の存在抜きには語れない。僕も仙台にきたらとにかく太助で「食事」をいただくのが恒例行事だった。しかしそろそろ、また違う店にも行ってみたいものだ。

「うん、それじゃ、俺が一番旨いと思う店に連れてくよ。」

と請け負ってくれたのが、今回の仕事のクライアントである恵ちゃんだ。

東京で商社に務め、タマネギのスペシャリストとして活躍した後、仙台の市場業者としての家業を継いだナイスガイである。学年が僕と一つしか違わないので、言葉に出来ない連帯感がある。

「牛タンも色んな店があるんだけどね、肉に厚みがあるのに柔らかい。包丁で切り込みをそんなに入れなくても歯で千切れる柔らかさは、ここしかないんじゃないかなぁ。」

そう言いながら彼が連れてきてくれたのは、仙台市街にある「利休」である。

■牛タン焼き 利休
http://www.rikyu-gyutan.co.jp/

※支店がいっぱいあるのだが、どこの店に入ったか分からない!こんど恵ちゃんに訊いておきます。

店に入ると席は空いていなかったが、10分ほどで入れるという。恵ちゃんがびっくりしたように「運がいいぞ!」と言う。

「普通の日は、順番待ちの行列がとぐろを巻いてるんだよ!奇跡的だなぁ、列の一番最初だなんて。」

その言葉の通り、僕らが並んだ後、すぐさま数組の集団が並び始める。店の兄ちゃんが出てきて「はいっお次は何名様ですか?」と訊いていく。この兄ちゃんのトークが軽妙で笑える。女性には「空きましたらお電話差し上げますので、個人的に電話番号教えて下さい!」など笑わせている。恵ちゃんいわく「仙台にはこういうノリの人は少ない」そうだ。

さて5分ほどで入店。着席後すぐに牛タン1.5人前をオーダー。単品で1200円くらいだったろうか。1人前頼むよりやはりドカンと1.5人前でしょう!それと僕は浦霞。熱燗にしてくれというと、東北のどこにいっても必ず「この酒は燗にしない方が、、、」と眉をひそめられてしまうのが煩わしくてしょうがない。
さてこの店には、牛タン塩焼きだけではなく色んな料理がある。牛タン刺しや煮込みなどを頼む。

さて牛タンがババッと焼かれて盛られてきた!久しぶりのご対面だ!

手前に見える緑色の細いのが、青トウガラシの味噌漬けだ。オーソドックスな仙台スタイルである。

ブリブリッとした食感が観ているだけで伝わってくる、張りつめた感じのテクスチャーである!もう堪らず一切れを一口で放り込む!ザクリという食感、しかしそのまますぐ歯で噛み切れる絶妙でモッチリともした感触だ。太助などの店の、噛みきるのに格闘が必要な牛タンとは全く違う!

「やまけん、これにはね、七味をバっとかけて、トウガラシの味噌漬けを囓りながら食べるのが一番旨いんだよ!」

と恵ちゃんがいうので試してみた。

 確かに旨い! タンの塩味と、熟成された旨味の深い世界、そして七味の香りとビリッとした辛み。それを口にしつつ、トウガラシ味噌漬けをほんの2ミリ程度囓ると、味噌の甘い香りの縦軸がいきなり口の中に現出されて、全く飽きることがない!


「旨いじゃんかこれぇ~!!」

「そうだね、お客さんが来た時にいろいろな店に連れていくけど、ここが一番旨いなぁ。みんなここに連れてきたいんだけど、凄まじく並ぶから、団体出来ている人たちを連れてくるのは難しいんだよ。ヤマケンは一人で来たし、しかも並んでなかったから運がいいよ!」

そうなのだ俺は食べることについては本当に運に恵まれているのだ。

「はい、牛タン刺しになります。」

恵ちゃんも初めて食べるという牛タン刺し。ご覧の通りタンにはきめの細かいサシが入っている。

ニンニクとショウガを少しだけ落とした醤油につけて食べてみる。

ネットリとした食感。しばらく噛んでいると、脂の甘みと肉の風味が浮かんでくる。なんというか独特の風味が立ち上るが全く臭くはない。どちらかと言えば気品のある香りだ!

「やまけん、せっかく宮城に来たんだから、魚も食べな!」

というので、名物の牡蠣を頼む。

広島のそれに比べると、水温の関係上、ややこぶりなサイズになるらしいが、味と香りはその分上品さがある!

この他にもタンの煮込み、ガーリック焼きなど頼んだが、さらに牛タン焼きが食いたい!

「じゃあ、牛タン定食と、、、牛タンカレーも食べておきなよヤマケン!」

ということで、恵ちゃんが牛タン定食を頼むが、牛タンは俺がほとんど食べ、その上で牛タンカレー定食を食べるという暴挙に。

今度運ばれてきた牛タンは、さっきのより身がブリブリとしていて旨い!店員さんにそれを言うと、

「そうですね、牛によって味がやはり違いますから、皿ごとに違う味と言っていいかもしれません。」

ということだった。ここではやはり塩漬けにした後、独自の温度と期間で熟成させるのだという。そう、大型動物の肉は熟成が命なのだ!


牛タン定食といえばテールスープも付き物だ。これもまた旨い!全体的に、東京で食べる定食よりも分量が多いぞ!

そして、地元の人も「旨い」という牛タンカレー。

大ぶりのタンがホロホロになるまで煮込まれ、それがゴロゴロと入っている!こんなのが不味かろうハズがない!大満足である!

「旨かったかい?牛タンは色々と好みがあるんだけど、俺はこの利久がいちばん好きだよ!」

ええ、美味しゅうございました!太助とはまた違う、非常に熟成の進んだ柔らかく旨味の濃い牛タンを堪能した!

この後、一大繁華街である国分町で痛飲し、代行を拾って駐車場に向かうものの、駐車場が12時までで閉まってしまうことを忘れていたため、荷物なしでホテル泊。ひええええ

そして翌日はいよいよ山形編である!

2005年01月15日

山形・白鷹町に「まあどんな会」を訪ねに行った! その1 山形県の地域興しプロデューサー高橋さんとの邂逅

牛タン腹がこなれてきた頃、目が覚める。風邪からだいぶ回復したが、少しだけ熱っぽく咳は止まらない。遅くまで呑んでいたツケだな。仙台から山形県庁までは、高速バスを使う。

「やまけん、宮城と山形では吹雪のレベルが違うから気をつけてな。山形の奥羽山脈が雪を遮ってくれているから宮城にはあまり降らないけど、山形はスゴイよ!」

と恵ちゃんが言っていたとおり、高速道路で山を登り始めた途端に猛烈に雪が降ってきた。

周りの風景はそれこそ水墨画の世界である。

バス停「県庁前」を降りると、髪を後ろで結わえた高橋さんが、ひょいっと手を挙げて合図をくれた。まったく初めて会う人なのだが、もう10数年来の知己のようだ。この人こそ、白鷹町の「まあどんな会」の生みの親である、山形県庁の職員さんなのだ。

「いやあ、よく来たね。まあ乗って。」

と10年来の知己のように自然な空気で、僕を迎えてくれた。こういう空気を醸し出す、人の心の奥にするりと入ってきてしまう人が、たまにいる。天性の素質と、職能的もしくは趣味的にそれを磨くことによって獲得できる能力だと思う。それが、高橋さんからはプンプンと匂ってきた。

「高橋さんはどんな仕事をされてるんですか?」

と素朴な質問を投げると、へへっと笑いながら「そうだな、地域興し屋かな」と言う。

山形にある2600近い集落のうち、なんと680もの集落に潜入(?)し、その地域の住民(多くは農家さんたち)をまとめ、なんらかの地域興しプロジェクトを実践してしまうのが、彼の活動である。いや、それは県の仕事としてやっているわけではないらしい。そこがミソで、県職員としての彼の仕事は別にあり、そちらも立派に勤め上げた余力で、地域興しをしているということなのだ!
そうかそうかと合点がいった!先述したような高橋さんに漂う空気は、様々な地理・社会的条件の集落に出入りし、その地域の人々を見つめ、そして新しい秩序を迎え入れ、体制を再構築する。これを繰り返すうちに身につけ、磨き抜かれてきたものなのだろう。

その活動の一端はすぐに開かれた。

「ちょっと見せたい集落があるからさ、回り道するよ!」

と言って車を止めたのは、中山間地の集落にある、とある民家だ。よくみると入り口の小屋の壁に小さな看板がかかっており「農家民宿 はたざお」と書かれている。

「ここはよ、風景が綺麗だから登山客が多いんだけど、休む場所がなかったのよ。それで、ここのお母さんらが集まって考えた上で、民宿をやることにしたんだわ。」


車を降りると高橋さんはズンズンと母家の扉を開け、「ただいま~」と奥に声をかけて上がり込んでしまった。民宿のお母ちゃんと、近所(とはいっても一山超えるくらい距離があるらしいが)のお母ちゃんがこたつに入り、漬け物とカップラーメンの昼食をとっていた。

「最近はどうよぉ」

以降、山形弁が炸裂しまくり、僕にはほとんど意味が分からない!それを知ってて高橋さんはニヤニヤしている。

「俺でもわかんねー言葉がいくつかあるからなぁ。ヤマケンちゃんにはわかんねぇべ。」

そりゃそうだわかるわけがない!

「せっかく来たんだから餅、食べてきな。」

というと、お母ちゃんはホットプレートに餅を載せて焼きだした。

うーん困った、、、僕は餅がそんなに好きではない。ネチネチした食感をあまり好まないのである。正月の雑煮にも餅を入れない。でも、こういう場でそんなことを言っていては始まらない。僕はコンニャクは絶対に食べられないのだが、それ以外は「食べられない」わけではないので、いただくことにする。

「これにからめて食べな」

と出された納豆を混ぜ、取り皿へ。そこへお母ちゃんが「ほれ、ほれ」とぷっくりと焼けて膨らんだ餅を放り込んでくる。

そして、、、餅を納豆に絡めて食べてみて、ビックリした。

!!!!!!!!!!!!!!
旨い!!!!!!!!!!!!!!!!!

お餅に特有のモチ米臭さがほとんど無く、食感もモチモチというよりはフカフカ・ネットリした絶妙な快楽的食感だ。それに、山形必殺の納豆と醤油が混ざり合い、本当に至福の味わいだ!!

「う、旨いなぁ、この餅、ここでついたの?」

「あったりまえだろ、この辺じゃ餅は買わないよ、、、」

うーむ 餅も米やつき方により全く味が変わるんだなぁと実感したのであった。そして僕が喜んでいると、お母ちゃんは嬉々として餅をボンボンと放り込んでくる!餅わんこ状態になってきた!

「おいヤマケンちゃん、俺は数えてるんだけど、12個も餅食べてるぞ!次があるんだからさ!」

と言われハッと我に返る!12個も食ってたっけ?しかしスルスルと入ってしまうのだ、、、うーむ山形の民家の餅、恐るべし。

しかし本当にこの辺の風景は美しい!小高い山の白い稜線と、田んぼに降り積もった雪の遠近感が魔法のように視覚を癒してくれる。

さてお母ちゃん達の座を辞すると、いったん里の街道に降りて山形名物「肉そば」を食べに行く。

山形名物「肉そば」をご存じだろうか?関西で肉そばといえば牛肉の甘辛く煮たのを乗せたものだが、山形のそれは全く違う。鶏スープをベースにしたダシをキンキンに冷たく冷やし(その過程で固まった脂は一切を取り除く)、冷たい蕎麦の上にそのダシを張り、鶏肉を甘辛く茹でたものを上に載せるというものだ。山形の人たちは、寒い冬にこの冷たい肉そばを食べるのを好むのである。これがまた絶品なのだ!

■そば処 太郎亭
住所: 山形県朝日町宮宿中郷2370-3
TEL: 0237-67-3789
営業時間: 11:00-19:00
定休日: 火曜
店データ教えてくれたossaさん、どうもありがとう!


店内にはいるとやはり大きく掲げられているのは「肉そば」だ。

「色んなメニューがあるけど、肉そば以外のものを食べてる人をみたことねえな。ここはよ、鶏肉のだしが濃いんだわ。だから鶏臭いって好きじゃない人もいるけどな、俺はここのが旨いと思うんだわ。」

頼んでほどなくして来た肉そばは、見るからに鶏の香りが漂う濃厚なものであった!


蕎麦をすすり込むと、コクのあるダシの香りが口中に拡がる!まるでラーメンスープのような、しかしやはり蕎麦つゆの味。実に絶妙な加減である。

蕎麦は中太、色濃く強い食感だ。山形の蕎麦にも色々あるが、太め・硬めがすきな僕にはビッタリである。以前食べた肉そばよりも濃厚で野趣の溢れる味とかおりであった!

「しっかし良く食うなぁ。じゃあ、白鷹町にいくかよ。」

車で白鷹に向かう道すがら、まあどんな会についての話をいろいろきいた。

「あそこもさ、地域の中に、女性が集まって何かをやるってのがなんもなかったのよ。足を運んで、ワークショップっていう会を開いて、みんなが好き勝手に喋るってのをやったら、加工場を借りて漬け物や美味しいものを作る会をやりたいって言うのが出てきて、佐藤洋子さんがリーダーになって取り組んだわけさ。でもな、加工場を借りたり、スキー場のロッジを夏場に借りるとかなると、行政の壁がいろいろと立ちふさがってきて大変なわけさぁ。」

ここで決めての言葉が、高橋さんから出てきた!

「結局ね、『どれだけ泣くか』、なんだよな。壁が出る毎に悔しくて泣いて、その数が多ければ多いほど、強固なコミュニティができあがっていくんだぁ。俺もその手伝いをしてるけど、最近じゃ壁をどうやって超えるのがいいか、てのを考えるのが面白くなってきたね。」

といってニタリと笑う高橋さんに、底知れぬ凄みを感じた。これは、県職員でないとできない仕事いや活動だろう。

「さて、こっから白鷹だ。」

車は雪道を、音もなく滑っていった。

(続く)

2005年01月17日

山形・白鷹町に「まあどんな会」を訪ねに行った! その2 まあどんな会の加工場に潜入した!

雪深い中をひた走り、「白鷹町」という標識をみてから15分ほどで、高橋さんの車が停まった。

「さあ、ついたよぉ ここが『まあどんな会』の本拠地である加工場だね。」

なんとまあ小さい! この小さな加工場で、数々の名品が生み出されているのだ。

「もちろん漬け物類はここで作った後に、他の建物で貯蔵しているんだけどね。場所のやりくりが効かないから大変なんだよ。大きな一軒家を早く借りなさいよって言ってるんだけどね。」

まあどんな会の活動は、加工場で漬け物やなんばんの粕漬けなどの加工品を作ることと、夏の間に閉鎖しているスキーのロッジを借りて、農家レストランを開くというものだ。つまり夏場まではこの加工場がメインの作業場になるわけである。

フワフワとした雪を踏みしめながら玄関に立ち、「こんにちは~」と声をかけながら戸を開いた。

「あれー やまけんさん。 お会いしたかったですよ!」

と聞き慣れた声がする。まあどんな会代表の佐藤さんである!

すでに何回も電話をしているのだが、顔を見るのは2回目である。お元気そうで何よりだ!そして佐藤さんの他に、4人の女性と、1人の男性が漬け物を作っていた。

おっ 男性が詰めていらっしゃるのは、なんばんの粕漬けではないか!

「そう、こうしてなんばんを瓶詰めにしているんですよ。」


みよこの大きなボウル一杯のなんばんを、、、素晴らしい現場を目の当たりにしてしまった。

実はなんばんを詰めているこのお方が、なんばん粕漬けの元祖であるマサオさんという方なのだが、それは後ほどわかることだ。とにかくここではなみなみと作られたなんばんの量に圧倒された!

「ちょうど今からつぶあぶら入りのなんばんを作るところですよ。」

おおおおおおおおおおお
今回のオリジナル商品「つぶあぶら」入りのなんばんである。つぶあぶらとは、エゴマの実のことだ。言い得て妙のネーミングである。

なんばんの原料類をボウルに開けていく。

「ぜーんぶ私たちが作ったか、どこでとれたかわかっているものだけを集めてるんです。ほら、今から入れるのがつぶあぶらを煎って粉に引いたものですね。」

ざざっとつぶあぶらの粉末がボウルに入った。

これにニンニクと、なんばん(トウガラシ)の塩漬けが投入される。

なんばんの塩漬けは自分たちの畑で作ったトウガラシを秘伝の漬け込みにしたものだ。まったくオリジナルレシピであり、真似のしようがない。

これを、蕎麦打ちの「水回し」のように万遍なく混ぜていく。そう、すべて手作業なのだ!

「全体をよぉーく混ぜて、そこに酒粕をいれるんだわ。酒粕はね、あたし達がいろんなのを試食して、一番美味しかったのを入れてます。」

山形の高級な地酒粕を使っているからこそ、あの強く高貴な味になるんだな!実に納得である。

酒粕の塊が投入されてからは、ひたすら捏ねる!捏ねる!捏ねる!捏ね捏ね捏ね捏ね捏ね捏ね捏ね捏ね捏ね捏ね捏ね捏ね捏ね捏ね捏ね捏ね捏ね捏ね捏ね捏

捏ね捏ね捏ね捏ね捏ね捏ね捏ね捏ね、、、もう本当にひたすらここからコネの作業である。機械なんぞは使わないのである!

「人の手で捏ねた方が美味しいですねぇ」

みたか!このなんばんの粕漬け、どこにも人工的なものが介在しない!原料はほとんどが彼女たちの手作り農産物に地酒の酒粕、それを徹頭徹尾、人力で合わせていくのである。

「あらー 今日来てない人たちにもヤマケンさんってどんなひとだか教えて上げないと行けないから、写真とりましょ!」

と、まあどんな会最年少であるイチコさんが僕を撮ってくれる。

なんばんはひたすらこね回されている。この作業がとにかくずーーーーーっと続くのである!

ひたすら混ぜ合わせられているうちに、それぞれの材料のエキスなどが酒粕に染み出てきて、このような一つの茶褐色のまとまりになっていくのだ!

「味見してみんべか?」

とチョイと小指につけて舐めてみる。

あああ、、、 あのエゴマの濃い風味と油分、そしてなんばんの辛みと酒粕の香りが、たまらない、、、

「本当にこれはヤマケンさんに『オリジナル商品を』っていわれて作ったものだから、オリジナルなんですよぉ。」

それは本当にびっくり!もう昔からずーっとあるものだと思っていた、、、それでも全くおかしくない洗練されたできばえなのである!

ちなみにこの加工場ではなんばん以外にも様々なものを作っている。大豆を揚げて甘辛い味付けをした豆菓子や、染み餅とよばれる、餅を揚げて甘辛いタレに浸したものなど、、、この染み餅が実に最高にうまいんだ!


サクッとした歯触りの後に、ジュワッと甘辛ダレが染み出してくるのだ、、、うーんよだれが出る。

この他、今回販売する「やたら漬け」とよばれる漬け物の製作風景も見ることが出来た。

一端塩漬けにした野菜類を戻し、秘伝の調味液で再度漬け込んでいくのだ。

「これ、『やたら漬け』ではなくて『まあどんな漬け』ていう名前にしようと思うんです!」

おお!
それはいいではないか、、、

入り口に戻ると、マサオさんがなんばんを瓶に詰め続けている。こうして瓶詰めまでが手作業で行われているのであった。機械化されていない旨味はこうして創り出されているのだ!とうとうこれを目の当たりにしてしまった、、、

はい、じゃあ記念写真撮ろうね!」

まあどんな会には30人以上の会員がいるのだが、もちろん都合によって集まる人が変わる。この日集まったメンバはかなりのコアメンバらしい。作業場での仕事はこれでたたんで、次は佐藤さん宅で酒宴である。

いやしかしこのなんばん造りの現場をみることが出来たのはとてもよかった!とにかく手作業である!それと、佐藤さんがずーっと口にしていたのは、

「身体にいいものばかり入れているんです。」

ということだ。そう、身体によいもの、、、当たり前のようでいて、実現するのがこれほど難しいものはない。まあどんな会のなんばんは、化学調味料や着色料、合成保存料も一切使っていない。それは僕がこの眼ではっきりと確かめてきた。

「そんで、元気が出るものばかり使ってますよ。なんていったって私たちが毎日食べるものだからね。」

そう、彼女たちにとっては、これは商品である前に、自分たちの食卓に上るものばかりなのである。それは佐藤家で激しく立証されたのだが、彼女たちが主婦の集団であるということが大きくこの品質ポリシーに影響している。ビジネスベースの企業活動で、このようなものづくりをすることが果たして可能だろうか?

「自分たちで造ったものを原料にする」
「手で造る」
「身体にいいものを入れる」

この基本中の基本といえることを実践できる食品加工業は、この世にそれほど多くない、と思う。その貴重なひとつを、山形は白鷹町に見つけた。

「さあ、それではご飯をたぁっぷり食べて頂きましょうねぇ!」

お声がかかり、いよいよまあどんな会の首領、佐藤洋子さんのご自宅訪問である!ここで、さまざまななんばんを巡る秘密が明らかになったのであった!

(続く)

2005年01月18日

山形・白鷹町に「まあどんな会」を訪ねに行った! その3 白鷹町周辺のすごい食材達を目の当たりにした!

さて佐藤家に行く前に、高橋さんに「面白いところ廻るけど行くかい」と言われ、もちろんついていくことに!

「白鷹町はな、川を挟んで一方が技術的な仕事、一方が農業や食品の仕事をする地域に分かれてるんだ。俺の家も実は白鷹にあるんだけど、技術的な方にあるんだぁ。」

訊いてみると、技術的とはいっても、一般の工業ではない!

「ん~例えば紙漉きだな。白鷹町は和紙の有名な産地なんだわ。」

ここで、ザ・地域興し屋の顔がいきなり覗いた!

「実はよ、紙漉きをやる人間がほとんど居なくなってさ。やばいっていうんで、俺の女房に修行させてやらせているんだよ。だから女房は和紙職人として認定を受けてる。またこれで周りからは『あいつは女房を売った』なんて言われてさぁ(笑)」

な、なんと!
スゴイ話である!
地域の消えゆく伝統工芸を守るために、自分の伴侶をその職に就かせるとは!
「もっとも、女房が職人始めたら、和紙の原料の楮(こうぞ)の生産を俺もやらなきゃいけなくなっちまってね。忙しいったらありゃしないんだ。今は農家さんにお願いしているんだけどね。」

とフッフと笑う高橋氏。この人、極めつけの確信犯である。

「荷物とりにいかないといけねーから、ちょっと寄ろう」

と、その和紙工房に寄らせてもらう。

もう作業は終わっていて、これは和紙を漉く台を掃除しているところだ。
傍らには、漉いた和紙の水分を抜くために重しを載せているものがあった。

高橋さんの奥さんがまた素敵な女性であった!あまり話はしなかったが、パワーと暖かさがある。高橋さんのような陽性タイプの人に、同じく陽のエネルギーを持つ人が一緒になっているというのは、考えただけでもパワフルなことだ。和紙葉書を買わせて頂く。

「さてと、じゃあこの辺の産直場を廻ろうね。」

車でぐるっと町にでて、まずはスーパーに隣接された、野菜の産地直売所へ。

「俺は、ここは好きじゃないんだ。スーパーが客寄せに造った直売所で、利用されてる。直売所は、不便でもいいから独特な場所にないといけない。あと、とにかくそこでしか出来ないものをやらないと意味がないんだ。」

農家の直売所は、5年ほど前から火がついて全国で展開されている。しかし数年経った現在では様々な問題が噴出していることを知っているひとはあまりいないだろう。商圏の食い合いも問題だが、もう現役を退いた高齢農家さんが、趣味でやっている産品をタダ同然の価格で出すことがあり、意欲のある若手農家が自分の販売に見合う価格がつけられないという問題もよく耳にするところだ。

でも、一般の人にとっては直売所はなんとなく楽しいワンダーランドである。僕もこの直売所で不思議なものを見つけた。「岡ノ台ごんぼ」つまりゴボウである。

「実はこれが和種のゴボウの古いそのままの姿なんだよ!一部の農家に眠ってた種を最近、復活させたグループがいるんだ。でもね、ここのごんぼよりもいいのを出す直売所があるから、そっちにいこう!」

と、すぐさま移動。着いたのは田んぼの中建てられたビニールハウス内で営業している直売所だ。

ここでも売り子のおばちゃん達に「やあやあ」といいながら入っていく高橋さん。いったいこの人のネットワークはどこまで、、、

「なりはひどいけど、こっちの方が数倍の活気があって、地元の人も面白いもんを出してくるんだよ!ほら、あったよ、これが岡ノ台ごんぼだ!」

おおおおおおおお
これは初めてみた!お分かりだろうか、長さは通常みかけるゴボウの3分の1くらいと短く、その代わりに中太りの姿形だ。握っても親指と中指が届かないくらいの太さがあるのだ。

「こいつを鍋に入れると旨いンだぁ、、、」

もちろん購入!こういう地域にしかない野菜を見つけたら絶対に買い込むのが僕の習性なのだ!

「やまけんちゃん、そういえばさ、面白いもんがあるんだよ!りんごの漬け物って食べたことある?」

な、なに?????

「りんごをね、塩漬けにしてあるんだよ。こいつがねぇ、、、口じゃぁ旨く説明できねーけど、素晴らしいもんなんだよ。よし、回り道していくかぁ!」

と、やおら携帯を取り出し、生産者さんに「いまから分けてもらいに行っていいかい?」と確認をし、車は大きく回り道をすることになった。

「これから行く生産者さんは、直売所を仲間内でいっしょに立ち上げて成功させた人で、自分で蕎麦も打つし、すごく多才な人なんだぁ。ああ、それとビールの原料のホップ栽培ではこの辺で知らないひとはいねぇ。」

そう、実は白鷹はホップの産地なのである。

さて生産者さんのご自宅に歓待される。

「そうかぁ、食ったことないんかぁ、ちょっと待っとけ。」

と冷蔵庫をごそごそと探って、持ってきて下さったのがこれだ!

うおおおおおおおおおおおおおおおお
間違いなくりんごだ!
リンゴが塩をされ、重しをのせて発酵させたのだろう。色が適度に抜け、しなしなしているが、まさにリンゴである。

ナイフを入れるとこんな感じだ!

「直売所に試食品をおいとくと、パインと間違える人がいるんだよ。」

と言うように、テクスチャーは正体不明の果物という感じだ。
さて口に運ぶと、りんごよりも洋梨のまだ熟していない食感のようにシャリっとする。そして微かな塩気を感じた後に、熟成された果物の香りと酸味、抑制された甘みが噴出する!

「おおおぉおっ、、、これは初めての味覚だ、、、」

美味しい! しかし初めての味覚世界であり、その世界の受容に時間が少しかかる。なんというか、高貴な味だ!決してキワモノ的な味ではない。切り分けてお茶受けに出しておけば違和感なくみないただくだろう。いや、違和感無く、ということはないな、みな驚き、感動するだろう。

「昔はこの辺では当たり前のように漬けてたんだけどなぁ。落ちたリンゴを漬けるんじゃなくて、最初から漬物用に、いい実を選んでたんだぁ」

ということだ!いや実に素晴らしい!文化をみてしまった、、、
確実にこの日、僕の味蕾とシナプスは、味覚のダイナミックレンジが拡がる体験をした。感動である。

御礼を述べて辞する。

「いやどこまで拡がるんですかね高橋さん、、、」

「まだこれからだんべ。」

そう、夜はこれからなのだ。一路、佐藤さんのご自宅に向かうのであった!

(続く)

2005年01月22日

山形・白鷹町に「まあどんな会」を訪ねに行った! その4 佐藤家での山形流酒宴を心ゆくまで堪能した!

「さあ ここが佐藤さんちだぁ」

辺りはもう暗くなり、雪もちらちらと降っていて、何がどうなっているか分からないのだけれど、佐藤家が立派に大きな一軒家であることはわかった。駐車スペースには、凍結しないようにパイプで引っ張った水が絶え間なくチョロチョロと流れている。これはなんと湧き水なのだそうだ!これも雪国の知恵だなぁ、、、しかし、本当に寒い!完全に氷点下である。

「ああ、いらっしゃい!」

佐藤さんやまあどんな会のみんなに迎え入れられ、あたたかな座敷に通して頂く。さっきまで加工場で一緒だった、沼沢かよこさん、沼沢ゆみさん、土谷みちよさん、竹田いちこさん、そして高田まさおさん、そして佐藤さんの夫君だだ。


さて卓上には、山形のいろいろな旨いもんが並んでいる!

色とりどりの漬け物類、煮しめ、白菜の朝鮮漬け、そして山形の味覚である「芋煮」!

「ぜーんぶ、私らが造ったものですよぉ!」


このカラフルな漬け物は、大根ではなくヤーコンという根菜(芋類に分類されることが多い)で、何とも言えぬシャクッとした歯触りと涼やかな甘みが楽しい。漬け物だ。梅酢漬け、奈良漬け、ぬか漬けだ。青菜はその名も「青菜」と書いて「せいさい」と読む、山形特有の漬け菜だ。この青菜漬け(せいさいづけ)が、やたら滅法旨いのだ!

そして今回販売するセットにいれる「やたら漬け」あらため「まあどんな漬け」。これは完全にご飯の友!

もちろん山菜もどどーんと並ぶ!

「やまけんさん、これはね、『こしあぶら』っていう山菜なのよぉ」

というのだが、ワラビやキノコが大量に入っているから、どれがその『こしあぶら』本体なのだかわからない!

「あのね、この緑色の、細いくしゃっとしたのがね、こしあぶらの樹の若芽なのよぉ。」


この画像の手前に写っているのがワラビだけど、その奥、ピントが少しずれているけど、くしゃっとなっている緑色の若芽がそれだ!初めてだこんな山菜は、、、

口にすると、栽培品の野菜ばかりを食べ慣れた口には全く新しい、山菜特有のあの香りが!これは、、、説明しにくいが、杉の木の切り口から漂ってくる香気のような香りがほのかにするのだ。

「旨いなぁ、、、これって、佐藤さんの持ち山で採れるの?」

「そうだよぉ、5月の連休にでも来たら、山菜採りさやらせてあげるのにぃ、、こしあぶらもキノコも、やまけんさんの大好きな「うるい」なんか、もう採りきれないほど出てくるからね。」

うおおおおお それは素晴らしい!
今年、バスツアーでも企画するかぁ!

「そうそう、やまけんさんが好きそうなのがあるのよ。なんばんを麹(こうじ)と醤油漬けにしたものがあるのよ。」

おお、なんばんが出た!しかも、こちらの人たちが普通に食べているという、醤油と麹で漬けた、まさしくご飯の友だ!

なんばんの辛みは適度に醤油の中に溶け出していて、ちょうどいい!そして麹の香りと旨味が慣れて、実に旨い!これは最高に乙な味だ、、、

「来年はなんばんをたくさん作付けして、このなんばんの麹漬けを、一本おおきななんばんのままでつくってみようと思うのよ。」

「あ、それ最高だよ!なんばんの粕漬けにセットにしてなんばんセットだ!」
と、もうすでに商品企画会議が始まってしまった!

今回発売するなんばんの三点セットはこれだ!

元祖なんばんの粕漬け、つぶあぶらなんばん、そして「まあどんな漬け」がセットになっている。いままで彼女達は、このなんばんを細々と造って、直売所に並べたりするだけだったので、箱に入れて送るということは初めてだ。従って箱を特注で造らねばならない。しかし500セットというのは中途半端な数で、型をおこさずに造ると一枚あたりの単価が高くなる。

「今回は500セットだけど、来年はもっと売れると思うから、型を買ってしまいなよ。」

と僕と高橋さんが進言するのだが、佐藤さんはうーんと唸っている。

「そうねぇ、でもなぁ、型を作ると高いからなぁ、、、」

あまりに唸っているので、いろいろ聞き込んでいくと、衝撃の事実が発覚した!

なんと、、、彼女たちはいままで、利益をのせるということをほとんどしてこなかったというのだ!

「いやまあぁ、加工所を借りたりいろいろするのに充てる分はもちろん価格に乗せてはいるけど、わたしだちの手間賃になるようなのはないねぇ、、、」

いやぁ、、、そうだったか、、、

読者さんがどう思われるかわからないが、実は生産農家の女性達がつくる加工食品は、このように自分たちの趣味というか、課外活動的な意味合いのほうが大きいため、利益がまったく乗っていないということが多い。それにしてもまあどんな会の場合はそれも甚だしい。

なんだか聴いてて僕は、自分の母と同じくらいの年代であるまあどんな会の人たちに対して、なんとかしてあげたいという強烈な想いが芽生えてきた。

高橋さんが言う。

「このお母さんがたはねぇ、苦労してきたんだよ。女性達がこういう加工所をやるなんていった当初は、男どもはみんな『なんでそんなことやるんだ』って言っていい顔しないのさぁ。行政も『そんな目的では場所を貸せない』とか『そこの水道は食品に使っちゃダメ』とかいろいろと問題を出してくるしさ、、、」

行政の人が言うくらいだから、本当にまあどんな会の立ち上がりは大変だったのだろう。

「実はそこで助け船を出してくれたのが、このマサオさんなんだよなぁ、、、」

マサオさんとは、加工所でなんばんの粕漬けを瓶詰めしていたこの方だ!

実は僕は彼の存在がすごく気になっていたのだ。なんで一人男性がこの輪に交じって居るのだろうかと、、、

佐藤さんがいう。

「やまけんさん、このマサオさんはまあどんな会の応援団長なんです。この人がまあどんな会の手伝いをするからって地元で立ち上がって下さって、それで周りの男達も『ああ、マサオさんなら仕方ねぇな』って納得して、、、批判や偏見の楯になってくれたんですよ。」

うお、なんと! これが男気ではないか!

「それでね、、、実はなんばんの粕漬けの生みの親は、このマサオさんです。マサオさんも代々教えてもらったものらしいんだけど、マサオさんのレシピが元祖のなんばん粕漬けなんですよぉ」

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
そうだったのかぁああああああああああああ

やまけん認定 ご飯の友の部全国No.1 「なんばんの粕漬け」は、このお方がお作りになったものだったのだ!

「マサオさんがね、『なんばんは俺の趣味だから、儲けはなくて良いんだ』って言ってね、、、そういうわけで、昨年はやまけんさんから大量に欲しいっていわれた時、原価でお譲りしたんですよ。」

うーん、、、 
昨年中になんばん粕漬けを僕と一緒に共同購入してくれた人たちは、お渡しした価格の安さにびっくりしただろう。でも、それはそうだ、あれは原価だったのだから!あの価格は、もう忘れよう。

俺は決めた。
このなんばんの粕漬けセット、安くは売らない!かといって不当に高く売る気もないが、すくなくとも彼女たちが再生産を行うことが可能で、かつ生産活動で彼女達にいくばくかでも収益があがる価格を設定させてもらう。
ここまで読んでくれた読者、特になんばんを味わったことがある人でも、これに不満に思うことはないはずだ。

「佐藤さん、箱の型代が出せるくらいの価格にできるように頑張るから、今後はまあどんな会の人たちに手間賃がとれるようにちゃんとしていこうね。」

「あらぁ、、、それはありがたいねぇ!」

まあどんな会の皆さんが顔をほころばせて喜んでくれている。僕は、この人たちは、自分たちが作っている食品の価値をこの人達自身に気づかせてあげたいと思う。僕もだてに全国を廻ってはいない。行き当たりばったりで言っているのでもない。今までは無名だったこの「まあどんな会」の作る産品は、実に最高なのである!

「じゃあ、お父さんが打った蕎麦を食べようかねぇ!」

さて、お父さん登場だ!

「俺はな、素人だけど蕎麦打ちのキャリアは40年だよ!蕎麦もうちの畑で作って、そば粉100%で打ってるンだぁ」

おおおおおおお 驚き!なんとここにもぜーんぶ自家製蕎麦を打つ人がいたぁ!山形には自分で蕎麦打ちするのがあたりまえという家が一杯あるのだ!

「俺の打ち方は湯ごねなんだ。湯ごねすると香りが飛ぶっていうけど、俺の蕎麦は香りが強いぞぉ!」

湯ごねとは、そば粉を水分を加える時、冷水ではなく湯を使う方法だ。そば粉が澱粉化するのでネットリとし、繋がりやすくなる。ただし湯で熱が通るので、そば粉から香りが消えやすいのだ。

しかし、中太に見事に切り揃えられた蕎麦は、実にそば粉の香り豊かなものだった!

「どうだいやまけんさん!」

「う、う、う、旨いじゃないですか!!」

いやマジで旨い!中太の麺は噛みしめる楽しみがあり、香りもブワッと強い。
「なんばんの麹しょうゆ漬けをすこしつゆにいれると旨いんだよ」

うおおおおおおおお本当だ! これ、最高である!

「やまけんさんよ、東京からお客さん引っ張ってきてくれたら、まあどんな会の料理に俺の蕎麦も食べられる店でも出すからよぉ!」

とニカッと笑うお父さんだった!いや、最高である。このお父さん、佐藤さんの活動をきめ細かくサポートしている。こんかいのなんばんを入れる箱の設計などを考えているのもお父さんだ。現在は、仲間と一緒に興した建築関連の企業に勤めているが、その前は果樹を手がける農家だったのだ。

「この辺じゃもうブドウ生産ではやっていきにくいんだ。農家でくっていけるならまたやりたいけどなぁ、、、だから、まあどんな会のやってることは重要なんだよ」

うーん 白鷹でもそうなんだな。この国の基幹産業がこうして衰退していく現場をみるのはつらいことだが、、、一方で、これまでのような大量生産・大量出荷ではなく、まあどんな会のように、付加価値の高い製品を産み出し、それを世に問うていく。そしてそれに関心を持った人が、今度はこの白鷹を訪れるというサイクルを作っていくという挑戦もある!

そして幸せなことに、僕はその挑戦の一端を担うことが出来るのだ!謹んで、そして本気で取り組んでいきたいと思う。

宴はこの後も続き、三々五々で皆が帰り、そして僕は佐藤家の暖かい布団で、深い眠りについたのだった。

2005年01月23日

シチリアに行ってきます!

やまけんです。24日~2月3日まで、イタリアに行って来ます!

24日カターニャ着→シラクーサ泊
25日シラクーサ→ラグーサ昼夜食→シラクーサ泊
26日シラクーサ
27日シラクーサ→カターニャ泊
28日カターニャ泊
29日カターニャ→パレルモ泊
30日パレルモ→ミラノ
1日ミラノ
2日-3日帰着

今日、ばかでかいスーツケースをオーパの水澤君から借りました。

行きはこれの半分が埋まっているだけ。帰りはもう半分が食い物でギュウギュウになるでしょう。

水リンは、私服で髪を下ろしているとまったく別人である。ちなみに俺と同い年なんだよ。

イタリアではインターネット接続可能なところが限られるハズなので(あまりホテルのようなところに泊まらないので)、更新はあまり期待しないでね。といいつつ、隙あらば更新するかもしれないので、覗いてくださいね。

帰国したら、ようやく「なんばんの粕漬け」の販売についての詳細が確定していると思います。どこのオンライン通販で販売するかは、だいたい皆さん想像つきますよね?楽しみに待っていてくださいね。

しかし、あまりの繁忙にかけていないエントリ多数!

いまから予告しておくと、こんなエントリ群が待っている。

・山形の翌日から北海道・夕張にて蕎麦打ち達人が岩崎農場の蕎麦を打った!
・その夜、巨大真鱈と、洗面器一杯の白子鍋を食ってもうしばらく鱈は観たくないほどだ!

・札幌でスープカレーをハシゴし、2時間後にはラムしゃぶを堪能した!

・帯広で生まれた長いも新品種「和ねんじょ」を、漬物「べにふじ」さんがたまり漬けにしてくれた!

これらは行きの飛行機で書くことにしよう、、、

では行ってきまーす!

2005年01月24日

食い倒れ日記オフ会in静岡 開催決定!

シチリア行きの朝、成田に向かいながら大あわてでこれを書いている。そう、重要なことを告知するのを忘れていた!

静岡県の岩澤さんといえば、ハム・ソーセージ講習会などでお世話になっている、静岡県の食の伝道師だ。彼からこういうお誘いがあったのだ。

「ヤマちゃんがさ、50人くらいバスでまとめてきてくれるんだったら、静岡中の旨いもんを集めてみんなでワーッと交流するイベントをやるけどな!」

おおおおおおおおお それは素晴らしい!

で、彼がラインナップしてくださったのは、駿河若シャモ・静岡で育種された絶品の豚肉・静岡の銘酒(「開運」他)・静岡市本山のお茶・鰻などなど、、、僕もたべたことがあるものなので言うが、絶品選りすぐりである!

静岡の方々が我々を待っている!
東京からバスを仕立てて、日帰りツアーを行おう!

下記は、岩澤さんがたててくださった企画案である。

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「やまけんの出張食い倒れ日記オフ会IN静岡」
<東京もんと田舎もんの食の交流会>

<目 的>
 ヤマケンのHPファンの方々に、「駿河若シャモ」と静岡の銘酒「開運」を味わってもらう。併せて静岡のホンモノの味を楽しんでもらいつつ、食を通じての交流を図る。

<概 要>
日 時:2005年3月13日(日) 9時~17時
場 所:静岡県掛川市「キューイフルーツカントリー」
共 催:(株)グッドテーブルズ(山本謙治)、静岡県駿河若シャモ振興会(鈴木恵美子)
協 賛:静岡県地酒研究会(岩澤敏幸)、工房炭俵(金丸正江)、土井酒造(開運クラブ)、ネクト(花村直人)、味のトンキー、キューイフルーツカントリー 他
募集人数:100名(首都圏50名、地元50名)
 首都圏から、バスツアーで来県を希望。車中にて「ヤマケン節」炸裂の方が盛り上がると考える。ただし露天のため人数は多少の増は可能

募集期間:2月末までに取りまとめ

参加費:5,000円(交通費除く)
    お土産付き(ハム、お茶、その他)

内 容
(1部)ハム・ソーセージ・マヨネーズ作り体験
    指導:関マイスター 他

(2部)大昼食会(飲めや歌えの大宴会)
 「食の集い」 静岡の酒で食す静岡の味

<主な食材>
 日本酒(開運)、駿河若シャモ、浜名湖そだち(豚肉)、静岡茶、豆腐、野菜キューイフルーツ、浜名湖の幸(ウナギ、シラス他) その他

(3部)ヤマケンを囲んで食に関する意見交換会(ハムができるまで)

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どうだ!

あとは高速バスだな、、、んー シチリアから帰ったら考えよう。もし東京から静岡まで行ってくれる、いい貸し切りバスをご存じの方は教えてください!
帰国後、参加希望者を受け付けるCGIかなにかを作成して告知します。50人て集まるのかなぁ。行きたい!ってひとはコメントよろしくお願い致します。

では、では!

2005年01月28日

Yamaken from italy

minasan konbann ha!
Yamaken desu. ima, catania ni imasu.

shizuoka no bus tour no comment sugoina! bikkuri simasita.

areha mada moushikomi deha naidesukarane!

soreto bus no mitsumori nansha ka totte kudasai!
sudeni 2nin ga mitsumori yatte kuremasuga.

ii off kai ni simashou ne.

aa sousou,
italy deno yamaken ga kokode miraremasu.

deha yuu gohan tabete kiamasune!


2005年01月29日

Now I'm in Parelmo.

Yamaken desu.

honjitsu ha Parelmo ni imasu.
5-hosi Hotel nanoni Internet ha dekimasen.

My PC wo Internet connect dekinai node, BLOG no up ga dekinai noga tsurai.
demo, everyday writing shitemasu.

sou, Yamaken ha English ga little bit sika dekimasenu. Sorry.

konkai no tabi de kanjiru noha, Shige shef no human network no sugosa desu.
yahari kareha subarashii!
ironna hotel, Restrante de kare ha kangei sareru no desu.
okage de bokumo oishii omoi wo sasete moratte imasu.

Yesterday night ha, subarashii KUIDAORE Panini wo tabemashita.
nanto Italy nimo KUIDAORE na mise ga arunodesu. mou SAIKO-.

sousou, BUS tour to Shizuoka desuga, Bus no kashikiri ha daitai 12 man yen kurai dasoudesu. sorega Option de tsuku to omottekudasai.
moshikasuruto 2dai de ikukamone. imanochoushi dato,,,

deha,mata asu mo POST simasune.
Ciao!

接続できたぜ!

やった!インターネットに接続できたぁ!

電気屋に行って、プリペイドとかで接続できるサービスがないかと訊いたら、店のあんちゃんが、なんと自分のプロバイダのアカウントを教えてくれた!そんな危険なことしていいんかい、、、?

とにかくホテルの部屋から接続。

しかしなぜかFTPが使えません、プロトコル制限しているのかな。
画像なしだったらアップできるんだけど、、、皆さん、画像つきで最初から読みたい?それとも、まずは文字だけバージョンでも読みたい?コメントみて決めるので教えて。

ではでは!

一枚だけ画像をFTPではなくアップロード。
IMG_8704.jpg

シチリアの飯!

少しずつね、、、

■アランチーニ(ライスコロッケ) 旨い!
IMG_8951.jpg

■これが例の食い倒れ系パニーニだ!
IMG_9512.jpg
日記を楽しみにしてくれ!もう最高なのよぉ!
IMG_9516.jpg

2005年01月30日

陽光の国・シチリア食い倒れ見聞記・導入 アリタリア航空の10時間はひたすら長いのであった。

朝5時に目覚ましが鳴る。色んな仕事の区切りをつけるために2時くらいまで起きていたから眠い、、、荷物のチェックをする気も起きないので、シャワーを浴びて着替え、水リンから借りたスーツケースを玄関に運ぶ。

僕が住む木場からだと、成田に行くにはNEXやバスを使うよりも早く行ける。東西線直通で東葉勝田台まで行き、京成線に乗ると1時間30分で空港なのだ。

10時半の飛行機に乗るのだが、集合は8時半。

「三越があるはずだからそこで集合にしよう。」

と重シェフが言っていたのだが、なんと三越はいつの間にか撤退し、ユニクロに変わってしまっていた!


チェックイン前に一人1万円ずつユーロに両替する。3万円を両替すると、たったの210ユーロで損した気分になってしまった。

アリタリアの機内に搭乗。設備は新しく綺麗だ。しかし誰もが言うことだが、日本国内の航空各社との最大の違いはキャビンアテンダントさんの佇まいである、、、骨太のがっしりとした、大声でまくし立てる妙齢女性ばかりなのであった。ん~ANAやJALが懐かしい。食い倒れオフでメシを喰った仲のANAのMちゃんや、JALのSちゃんに此処にいて欲しい、と切実に願ってしまった!

さてローマまで10時間のフライトである。その後、国内線に乗り換えて一路シチリア島を目指す。もし2月3日までにこの日記を目にしているならば、僕がこの乗り換えの間にインターネットへの接続ができたということだと思って欲しい。←無理でした、、、


「俺、飛行機大嫌いなんだよ。退屈じゃん!もう成田まで来るバスだけで飽きちゃったのに、これから10時間なんて死んじゃうよ!」

というのは重ちゃんだ。イタリア人ぽい濃い顔立ちでシチリア料理「無二路」の看板を守る重シェフは、濃い顔だけど僕と同い年である。

「退屈ですよねー でもいつもあまり寝てないから休みます」

というのは、同じく無二路でセカンドを務めるコバこと小林君である。無二路のパスタは現在、彼が鍋を振っている。彼はイタリアには行ったことがあるけど、シチリアは始めてということだ。
ちなみに僕はヨーロッパに足を踏み入れること自体が初めてである。そのヨーロッパ初体験がシチリアだというのは、なんとも異例のことではないか!

機内での楽しみといったら、眠るか食べるかしかない。離陸後にドリンクが運ばれ、オレンジジュースと赤ワインを頼む。どちらも旨くなかった、、、


食事はイタリアンか和食。まずはイタリアンを選ぶと、割とまともな内容である。

仔牛肉の煮込みはドミグラス系のソースで、なんだ日本の洋食と同じじゃないかという感じ。トマトとブロッコリのソースで和えたフジッリにイタリアを少し感じる。

ただしこんなもんじゃ足りないのである。僕らの席は最後尾なので一番最後に配膳される。カートにはまだたくさんの機内食が残っているのがみえたので、「もう一つ食べていい?」と訊くと、妙齢の日本人女性らしきスッチーさんが凄絶な笑みを浮かべて「残ってるわよぉ~」と重ちゃんに言う。その後、重ちゃんの笑いがしばらく止まらなかった。

しばらくはジャポニカ米の飯も食い納めか。タップリ喰って腹がくっちい。そういえばお腹が一杯になるという意味の「くちい」は方言らしいが、どこの方言なのだろうな。

アリタリアの設備は新しいといったが、健全に機能しているとは言い難い。各座席にディスプレイがついていて、ハリウッド番TAXIなどの映画が観られるようになっているのだが、なぜか僕らの席だけ映画などの表示がされない!しかも途中まで読書灯も灯かないので、活字がないと死んでしまう僕にはとても辛い。5時間経過したところで、ようやく灯が点く。そして、これを書いているわけだ。

ま、アリタリア機内での残る5時間は、食い倒れ読者の方から送って頂いたイタリア旅行本などを読み込むことで、とにかく10時間をやりすごした。

「おお、やまけんあれがローマだぜ!」

おおお!着いた、、、

ローマの上空は緑が綺麗な田園地帯であった。ただ、ローマは単なる乗り継ぎ。1時間程度でシチリアのカターニャ行き便に乗り換えだ。空港内にはインターネットコーナーがあって、1ユーロ5分の接続が可能だった。ブラウザのみの使用だが、行きがけに自分あてのメールをブラウザでみられるWebメールに転送していたので、アクセスしてみる。さすがに他言語対応しているIEだけあって見事に日本語が表示され、僕宛に届いているメールを読むことができた!仕事上での会議日程がまとまらないなどの連絡が来ていて、一応ローマ字での入力になるが、返事を返しておく。あ、ローマ字をローマで打っているということに今、気づいた!

さて国内線でカターニャへ。空港に着くと、早速ここでトラブルがあった。なんと僕とコバの荷物が来ていないのである!重ちゃんのはちゃんと来ていたのだから、これはミスである。アリタリアの女性職員に話すと、「次の便で来ると思うわよ」と事も無げだが、我々は青くなって右往左往するばかり。やっぱり外国というのは全く常識が違うんだな、と実感してしまった。

次の便を待っている間、空港内にあるバールをひやかす。プロシュートのパニーニは、その場でホットサンドしてくれたが、たいしたもんじゃなかった。

もう一つの、出発ロビーにあるバールは非常に充実していた。ピッツァ、カルツォーネ、パニーニ、たくさんのドルチェ類などがところ狭しと並べられている。

実は今回、コバはドルチェの研究という課題を負っている。

「コバ、カンノーラとカッサータを食べておけよ!」

と重ちゃんが激を飛ばす。カンノーラとは、堅いゴーフレット生地でリコッタクリームを巻いたようなおやつで、実に旨そう!ピスタチオをクリームに練り込んで緑色のクリームにしたやつもある。旨そうだ!

こちらはカッサータ。砂糖菓子のような衣は、これもリコッタクリームらしい。こちらを僕が買い、カンノーラをコバが買う。一つ2ユーロ程度だった。

「すっげえ甘いよ!」

というのを食べてみると本当に甘い!

けど、実に旨い。日本のお菓子に比べてとにかく味が過剰に濃いのだが、その過剰さ加減が徹底していてよろしい。肉料理のようなコクをもったお菓子なのだ。カンノーラに詰まったクリームも、リコッタクリームだから実に濃厚かつ風味が最高!

「ここのはあんまし甘くないね。本当はもっとガビガビになるくらい甘いんだよ。」

それじゃぁ食えねえよ、、、

さて次の便が来る時間に到着ロビーに行くと、懐かしい僕とコバのスーツケースが出てきた!水リンよかったよ、、、なくさないで済みました。

カターニャからシラクーサまでバスで一時間。精神的疲労が溜まってか、僕は爆睡してしまった。

「やまけん、着いたよ!」

と重ちゃんに起こされると、そこは地方都市という風情の、重厚な建物がちらほらみえる市街地だった。ここが、シラクーサなのだった、、、

(続く)

陽光の国・シチリア食い倒れ見聞記・シチリアのさらに南の街シラクーサにたどり着いた!

シラクーサのバスターミナルは、噴水を中心にしたただの広場で、人気もほとんど無く寂しいところだ。最も、これは夜だからで、朝は大渋滞になるらしいのだが、、、

「とにかくスリとかにだけは気をつけてくれ、本当にやばいから」

といわれていたので、たまに通りかかる人たちすべてが怪しくみえてしまう、、、

シラクーサでは、重シェフが修行していたレストランの長であるパスクワリーノ氏が世話をしてくれることになっている。パスクワリーノの写真は、無二路の壁にたくさん貼ってあるのでよく見ていたのだが、話し始めたら停まらない、相当に面白い人らしい。彼に電話をして迎えに来てもらう。

15分ほどしてライトを明滅させながら車が停まる。運転席から、意志の強そうな目をした体格のいいおっちゃんが出てくる。両手を拡げ、「アー!!」と叫び、嬉しそうに重シェフと抱擁を交わす!この人がパスクワリーノ氏かあ!

パスクワリーノは現在は自分の店はやっていないそうだが、兄弟がリストランテをしているので、相変わらず料理への情熱は濃い。重ちゃんと車のハンドルをたまに放しながら喋りまくっていると、街道沿いのとある店に到着する。ここが、彼の弟ロベルトが経営している店だ。

■ヨニコ

店にはいると、彼の弟であるロベルト夫妻、その息子のアンジェロ達が迎えてくれた。ロベルト夫妻とアンジェロが重ちゃんを懐かしそうに「よく帰ってきたなぁ」(←想像)と抱擁し歓待する。

ヨニコは、本来的には「イオニコ」と発音すべき店らしいんだが、「シチリア訛りだと『ヨニコ』なんだよね」ということだ。この店はシラクーサ中でも一番か二番に素晴らしい景勝地に建っている店だ。

夜だと分からないけど、店のテラスからは昔の石切場だった断崖絶壁が目の前にみえる。

その断崖と店の間に小さな宝石のような入り江があり、夏にはそこで海水浴ができるようにもするという。

店の屋上からは海がパノラマにみえるのだ!

ちなみにこれが翌日の昼間に来た時に撮影した風景だが、どうだろう?本当に美しい、、、


重ちゃんによれば、ここまでの良い立地を持った店もあまりないらしい。

ヨニコはリストランテなのだが、最近ではピッツェリアも併設し、リストランテ/ピッツェリアというような店になったらしい。

「やっぱりシチリアも景気が悪いんだよね。この店はリストランテだから、値段も高めで、地元の人か来にくかったんだよね。だけどピッツェリアだったら結構、大人数でやってくる客が多いと思うよ。」(重シェフ)


さすがにヨニコは格のある店らしく、シチリア中のワインがセラーに収まっている。

僕の大好きな白の「ラ・セグレタ」も発見!これは「秘密」という、ちょっと罪悪感をくすぐるいいネーミングの、すっきりしたワインなんだよね。

ドルチェ担当のコバには、みるからにコテコテのシチリア名物ドルチェ「カッサータ」を。死にそうに甘いらしい、、、

リコッタクリームと砂糖をふんだんに使ったクリームが表面に塗り込まれているんだが、ちょっとこれは一口だけでいいやという外見だ。

テーブルでここ数日間の旅程を打ち合わせる。シラクーサにいる3日間はパスクワリーノの海沿いの別荘に泊めてもらうのだが、その行程で行きたい店を話すと、にわかにパスクワリーノとロベルトが重シェフに説得モードである。例えば豚料理で有名な「マヨーレ」という店に行きたいというと、

「確かに悪い店じゃないけど、お前らが絶対にいかないと行けない店だってワケじゃないぞ!俺が豚料理作って喰わせてやるよ!」

「あの店はもう進歩が停まっていて、同じものをずーっと出し続けてるんだから、やめとけやめとけ」

という感じで、要するに俺のところに来たんだから、俺に任せろモードに突入しているのだった。

「いやぁ、シチリアってところは完全にコネの世界で、知ってる人がいるとなんでもすんなり話が通るんだけど、その分こっちに合わせないと行けないんだよねぇ。」

と重シェフが苦笑いする、まあ、行程はもうすこし考えようということになった。

「じゃあ、飯だ飯!」

テーブルに通されると、厨房で先ほど見学したビッツァが運ばれてくる!

一片はゆで卵が乗ったもの、もう一片はハムやサルシッチャなどの肉が乗ったもので、パスクワリーノが肉の方を指して「ピカンテ!(辛いぞ)」という。ゆで卵の方からかぶりつくと、トマトの酸味にゴルゴンゾーラの香りと塩気がたちまち口内に溢れて実に旨い!

サルシッチャの乗った方はたしかにピカンテで、ペペロンチーノ(トウガラシ)が効いている。これも旨い、、、人差し指で頬をぐりぐりし「ヴォーノ!」とやると、パスクワリーノが事も無げに「俺のレシピだぜ」(←想像)と言う。
写真だと分からないかもしれないが一片が大きいのでかなり腹に溜まるが、もう二片出てきた!今度はトマトを使っていないピッツァだ。


奥のはリコッタチーズに海老などの魚介類が載り、レモン(リモーネ)の皮の千切りが散らされている。こいつを一口食べて、押しの弱い見た目と大きく違う、その豊穣な味にビックリしてしまった!

まず、リコッタの味が濃く、風味が強い!

「反則だよなぁ、こっちのリコッタは安くてこんなに旨いんだよ。香りもコクも全然違うでしょ?」(by重ちゃん)

本当に違う!それと、上に乗ったペシェ(魚介類)の風味の強さだ。といっても、小さなむき海老がパラパラと乗っているだけなんだけど、その旨味が無茶苦茶に濃いのだ!なんで?ペシェを煮詰めたスープでも使っているんだろうか?

「いや、乗せてるだけだね。こっちの魚は処理が全然違うんだよ。魚屋に行くとね、むき海老なんて、そこの息子が学校に行かないで手で剥いてるんだよ。こっちじゃ、魚屋の息子は魚屋になるしかないからね。日本じゃ海老なんて水洗いしちゃうでしょ。旨味が全部逃げちゃう。こっちだと、手で剥いたのをそのままくれるから、味が違うんだよ~」

ふうううむ なるほどねぇええ

本当にこの小さな海老の旨味にはビックリしてしまった。しかも上にちらされたリモーネの皮が素晴らしいアクセントになっている!

「もちろんこれもパスクワリーノレシピなんだぜ!」(←想像)

とパスクワリーノが誇らしげにニカ!っとする。

どうだこの笑顔!この後の三日間、僕らは嫌と言うほどこのパスクワリーノ節の洗礼を受けるのだが、この顔がとにかく彼の内面から放射される強いエネルギーを良く表している!

この後、食後酒を楽しんでロベルト一家と別れてパスクワリーノの別荘へ。

ここは、重シェフが修業時代に寝泊まりしていた家である。使い方を一通り説明をしてくれてパスクワリーノが帰ると、僕らも疲れていたので速攻でベッドに入り、寝ることになったのだ、、、

明日からは怒濤のシラクーサの世界、ではなくパスクワリーノの世界が拡がるのであった!

2005年02月14日

長いもの新品種「和ねんじょ幕別一号」を絶品のたまり醤油漬けにして食べた!すんげー旨いよ!

食い倒れ帯広編が世に出たのは、JA幕別町という農協の岡坂さんとノムさんがいたおかげであることは、過去ログをみていただければ分かるとおりだ。

で、十勝平野の中でも重要な生産拠点である幕別町では、大根、ジャガイモ、そして長いもが多く作付けをされている。

彼らに連れられ管内のだだっぴろい畑を見せてもらうと、地平線まで続くかと思われる柵(さく)と、それに緑のツル性作物がからみついている様に圧倒される。

「やまちゃん、これが長いも畑だよ。」

長いもは、いうまでもなくとろろなどに使われる芋だが、こんなに組織的に巨大な面積で作られているのを観たことはない。帯広の他には青森が大産地として知られるが、市場での評価は、僕がきく限りでは帯広産の品質が圧倒的に良いと言うことだ。

「あったりめぇだよ、土が違うし、俺たち農協職員が日夜研究して生産者さんと一緒につくってるからな!」

とノムさんが吠える。

ところでナガイモとヤマイモ、ヤマノイモ、ヤマトイモ、ジネンジョ、これらはすべて別のものであるということはご存じだろうか?一番ネットリしているのはジネンジョ(自然薯)だ。山に自生する自然薯は細く長く、折れやすいために高価である。これを摺り下ろすと粘質度が高く、割り箸一本で摺り下ろしたとろろが全部持ち上がってしまうくらいだ。その代わり、こうした自然薯を畑で栽培すると、収穫後には肥料分がすっからかんになってしまうため、土地を休ませる必要がある。

ナガイモはそこまでハードな芋ではない。スパッと包丁を入れると切り口は瑞々しく、摺り下ろすと適度なトロ味と水分量で食べやすい。ただし、あまり良くない品になると水っぽいだけで味もなにもないものになる。

このナガイモにも色んな品種があるらしいのだが、なんと数万本に一本の割合で見つかる、不思議なナガイモがあるのだ!僕はそれをJA幕別の選果場で見せてもらったことがある。

洗浄された芋がラインに流れてくるのを、女性が選別している。それを観ていた岡坂さんがふっと動き、一本のナガイモをとり上げたのだ。まじまじとそれを眺めた後に僕にそれを差し出す。

「やまちゃん、これ、他の芋と違うんだよ。何が違うか分かる?」

僕はじーっとそれを見つめた。色が淡いのか?形が妙なのか?違う、、、目線をすこし引いて全体を観た時にそれが分かった。

「ああああああああああ  がないじゃないですか!」

「そうなんだよ、こいつにはがないんだよ、、、3万本に一本くらいの割合で混ざってるのに気づいてね。もしかすっと新しい品種かと思って集めて、これを培養しているんだ。」

野菜も自然の中で交配・交雑を繰り返しているから、時にこのような新品種が産まれることがあるのだ。そうした場合、培養が可能なように、とにかくその個体を集める。幸いなことに、芋類はその芋本体があれば、そこから芽を出して繁殖させることが可能だ。しかも分割して植え付けができるので増やすことができる。ちなみにこれが、その新品種を繁殖している実験圃場だ。もちろん場所は極秘である。

「一昨年は100本くらいしか取れなかったんだけど、今年は3000本くらいには成るかなぁと思ってるんだ。」

3000本とは言っても、5キロ箱にしてみれば500箱程度にしかならない量である。なんと貴重な芋なんだろう!

「やまちゃん、この芋をどう売るかっていう企画を考えてみてくれよ。パッケージとかさ、いろいろ考えてるんだけど俺たちじゃ良いアイデアでなくてさ。」

もちろんだ!ということで、実は昨年、自腹で帯広に飛んで、いろいろと企画を提案してきた。それが来年以降実を結ぶかどうか、楽しみなところである。
で、昨年末、嬉しいことにこの貴重な数百ケース分の1箱が僕のオフィスに届いたのである!

農林水産省からも新品種として認められ、見事に品種登録が成った!これはJA幕別が産んだ新しいナガイモなのである!

名前は「和稔じょ」(わねんじょ)。幕別一号とあるが、てことは二号以降も発見されているんだろうか。気になるところである。

さて先ほどから伏せ字にしてある、この品種の特徴である「」とは何だか想像が付くだろうか、、、ではその本体を観てみよう。

箱には白いおがくずが敷き詰められ、その中に三本の和ねんじょが横たわっている。この綺麗なおがくずを手に入れるために、彼らはさんざん木工所を探したそうだ。

そしてこれがその本体表面である。ちなみに下の方についているのがおがくず。ではこれをみて、「がない」がおわかりにならないかな、、、

そう、この和稔じょには毛がないのである。毛というか、ヒゲ根といわれる細い根がまったく出ていないのである!

そのため、昨年の段階では岡坂さんノムさんはこれを「毛無し」と呼んでいた。考えてみれば、ヤマイモ類は、主に株の上部にある吸収根で土中の栄養分を摂取するので、ひょろりと生えているヒゲ根の存在は二次的な栄養摂取手段であるはずだ。そう考えると、この和稔じょは、「あたしの吸収根は肥料吸収能力が高いから、ひげ根なんて美しくないモノは必要無いのヨ、プン!」というような誇りを持った新品種なのではないかと思われるのである!なーんて 専門的見地からはきっと違うでしょうが、、、

で、この和稔じょに毛がないということはいかなる付加価値を生むのか。

「なぜかこの和稔じょは、皮にも渋みとかが無くて、洗ってそのまま摺り下ろしていいんだよ!味にえぐみも全く出ないし、摺り下ろしたとろろも綺麗なんだよ。」

そうか、ひげ根がないから、綺麗に摺り下ろせるのである!

「それとなヤマちゃん、味は普通の芋と全然違うんだよ!なんていうのかなぁ、、、糖度が高いんだ。で、少し梨っぽいフルーツ系の味を感じるんだよ!」
うおおおおおおおおお
それは興味深い!
おそらくいままでこれをお読みの方も、「ナガイモが堪まらなく好き!」というようなナガイモマニアもしくはナガイモフェチはそう居ないだろう。ナガイモ産地あてクイズをしても答えられるひとはそういるまい。しかし、この和稔じょは味がまったく違うというのだ!

さっそく僕も食べてみた。菜切り包丁でスパンと両断し切り口を観ると、果肉がみっちりと詰まっている。水分がジワッと滲み出てくる。

この画像だと表面にシミがついているようにみえるだろうが、送られてきてからすぐに撮影せず保存して3週間後くらいに撮影したので、ちょっとシミが出てしまったというわけだ。届いた瞬間のは、先のように美しい染みひとつない外観だ!で、こうして染みが少し出たものでも、皮付きで摺り下ろしているのに、とろろはこんな純白度になるのだ!不思議!!

醤油も何も入れずに啜ってみる。おおおお確かに甘みを感じる!これははっきりとわかる甘みだ!そして岡坂さんの梨のような風味とは言い得て妙である。本当にフルーティ、上品な味わいである!

調味料として少し醤油を垂らして掻き混ぜる。

よく見られるとろろの風貌になるが、その味、フルーティな香りは変わらない!これは素晴らしい品種の誕生である。

僕だけ食べて感想を言ってもしょうがない。プロにも食べてもらおうと思い、まずは家の近くにある、このblogでも数回登場している八百屋「八百周」のおっちゃんに4分の1に切ったモノをもっていった。実は僕たちはこういう物々交換をよくしているのだ。

「ヤマちゃん、こいつぁ旨いね!芋のキメの細かさが全然違うんだよ!うちのは青森産を扱ってるけど、これはモノが違うねぇ、、、」

やっぱりそうか!

そしてもう一人プロに味見してもらうことにした。ナガイモの食べ方といえばとろろが一番だろうが、千切りにして酢みそをかけ、ぬた和えにしたりもいい。しかし、このシャクシャクとした食感を味わうのに一番いいのは、大ぶりの角切りにして醤油と酒の割り下に漬け、片栗粉をまぶして竜田揚げにしたりすることだ。そして、これに匹敵する旨い食べ方が、たまり醤油漬けである。

「いやぁ ナガイモって漬け物にすると旨いんですよ!」

というのを教えてくれたのは、規模は小さいながらも非常に素晴らしい漬け物を作るメーカ、「べにふじ」の石川専務である。

石川さんは、前の会社で取引でお世話になって以来のダチである。

「石川さん、あの旨いヤマイモのたまり漬けに、新品種を使ってみない?」

「え、毛がないの?面白そうですね、やりますよぜひ!」

こういう実験はプロに頼むに限る。彼のところでも通常は青森産を使うようだが、これで試していただこう。年末に芋を一本送り、年明けに試食しようということになった。

「ナガイモの漬け物はね、まず酢漬けにしてから調味液に漬けるんです。」

「べにふじ」は、いまどきまっとうな漬け物を目指すメーカである。これまで漬け物とは、本来的には日持ちしない野菜を発酵の力で長持ちさせ、あまつさえ栄養価まで高めてしまうという保存食であった。発酵が進むにつれ芳香を漂わせ飴色に変化していくその様態から、「古漬け」、「本漬け」と呼ばれた。これがタクワンや奈良漬け、野沢菜、高菜漬けなどである。

しかし食生活の変化から、時代は浅漬け一辺倒になっていく。野菜を発酵させず、短期間調味液に漬けて出すそれは、野菜の副次的な商品だ。発酵した漬け物よりフレッシュ感はあるわけで、それを好むのもわかるけれども、浅漬け一辺倒の現状は僕から観れば「味覚の幼児化」に繋がっていると思う。発酵で生成されるアミノ酸類の複雑な旨味と香りは、美味しいと感じるまでに経験を要する味だ。その経験をすっ飛ばして敬遠し、野菜の塩まぶしといった浅漬けに偏重してしまうのは問題だ。

「本当は僕たち漬け物屋も浅漬けじゃなくて本漬けを食べてもらいたいんですけどね、、、美味しい商品を地道に作っていくしかないですね!」

さてそんなべにふじさんのラインナップでも「ヤマイモの溜まり漬け」は最高峰の旨さである。その調味液にぜひ和稔じょを使ってもらおうではないか。ということで彼がじっこんにしている新宿の居酒屋にて、試食会を開催したのである。

「たまり醤油漬けの調味液を変えたの2つ、それに梅酢漬け、そして米ぬか液漬けを作ってみました。」

おおおおおおおお
おもしろいじゃん!

米ぬか液というのは、最近できた新技術で作られた米ぬか成分の抽出物で、この液体に漬けると、通常より発酵が進み、ぬかの香りと風味がきっちりつくのだそうである。つまり短時間で旨いぬか漬けができるということだ。

まずは溜まり漬けをいただく。

いったん酢漬けにしたヤマイモをたまり醤油の調味液に漬け、何日で引き上げるかで食感が変わってくる。今回は初めての芋なので、二種つくってもらったのだ。綺麗なきめの細かい肌。歯を立てるとシャクリと割れ、たまり醤油の芳香が立つ中から酸味がつんと立ち上ってくる。果肉がとろりとしながらジューシーで、シャクシャクといいながらとろけていく感じだ!

「旨い!旨いじゃないのこれ!」

「うん、あきらかに通常のナガイモと違いますよ!たしかに甘いし、食感も普通のより軽くていい。風味もあって、実に美味しいですよ。」

そう、特有の風味はたまり醤油の香りに消されることなく、むしろ引き立っているのである!

「梅酢も旨いと思いますよ!」

美しいピンク色に染まった梅酢漬けをシャクリとやると、酸味と綺麗な香りが立つ!予想できる味だが実に上品!これはお茶うけにしたいと思う味である。
そして期待のぬか液漬けだ!これだと芋の美しい白い肌が視覚的にも楽しめる。歯を立てると、口の中で炸裂しジュルリととろけ出すなか、あのぬか漬けの風味が立ち上る!

「うおっ これ旨いじゃん! すっごい乙な味だよ。」

「そうですね、これだと綺麗だし、味も染みるし、ご飯にあう良い漬け物になりますよ!」

本当だ!このぬか液漬け、実に最高な味である。

いやしかし恐れ入った! 「和稔じょ」は、とろろにしても千切りにしても旨いが、漬け物にするとその風味ときめ細かい食感が凄まじく引き立つ!

「年間3000本かぁ、、、これが一般的に手に入るようになればいいんですけどね、、、」

それまではかなり時間がかかりそうだ。JA幕別ではこの和稔じょを正式にはまだ出荷していない。サンプル出荷ということで、限られた関係者にしか出していないのである。あるスーパーのお歳暮商品としては限定で出したのだが。このような新品種は、安売りできるものではない。産地としては売り方を慎重にせざるを得ないのである。

それでもいつか、和稔じょをつかった加工食品、とくに漬け物を世に出してみたいな、そんな風に思うのであった。

「石川君さ、和稔じょはまあちょっと待つとして、ホンモノ志向の漬け物を商品開発してみようよ!」

「おっいいですね!スーパーにはなかなか新しい商品の提案が通りませんから。僕はこれからは消費者の方に直接、面白いオリジナル漬け物商品を提案していきたいんですよ!」

素晴らしいではないか!

よし、なんばんの粕漬けの次は、本格漬け物もやってみようではないか。原料となる青果物もこだわって、漬け方にもこだわって、最高のご飯の友となる漬け物を作る!よし、これは年内にやろう。

そんな意欲をかき立てるにふさわしい、実に逸品なナガイモ「和稔じょ」であった。みなさんも食べたいでしょ?スーパーにいって「和稔じょが欲しい!」って言ってみてください。目を白黒されるだけかもしれないけどね、、、

2005年02月17日

静岡オフ会の申込者数は


静岡オフ会の申し込み、受付終了しました。
人数カウントしてみました、、、

なんとちょうど160人です!

定員60名の2.6倍ですね。それほど狭き門ではありませんでしたかね。とはいっても2.6分の1の確率ということで、、、

当たることをお祈り下さいネ。抽選は来週中頃までいただきたいです。

あ、でも、抽選にするので、4人で申し込んでいる方とかは、一挙に4人が落ちちゃうな。そうすると2.6分の1ではないな、、、うーん まいいや。どうやったら公正な抽選になるか考えます。

それにしても忙しくて首が回りません。今日は何時に寝られるのでしょうか。そしてシチリア編はいつになったら書き終わるのでしょうか。さらに、この間たまる一方の新ネタはいつになったら披露できるのでしょう???

ん~

そうだ、コメントにもレスつけられず申し訳ないです。メールいただいても返事がなかったりするかもしれません。ゴメンナサイ。友達との飲みもほとんど出来ず悔しい!いま俺は最高に付き合いの悪いヤツと化しています。

このblogを書き始めて以来、「ネタがない」ということは一度も体験したことがありません。逆です、、、ネタがありすぎて大変です、、、

2005年03月02日

北海道の味覚 10割蕎麦の達人打ちと巨大鱈鍋で轟沈した!

以前のエントリにも書いてあるように、今までで一番旨い蕎麦だと思ったのは、北海道夕張郡の岩崎農場で食べた蕎麦である。なんと言ってもそば粉が他と違う品種で、試験場では10割蕎麦が作れて旨いにもかかわらず、収量が少ないということで全国採用成らなかった幻の品種だ。それを目の前で石臼機で挽いて、すぐさま蕎麦に打つのだから、旨いに決まっているのである。

「やまけんが来るから、また用意しておいたよ」

と岩崎さんが言う。今回は札幌で仕事ができたので、その会議の前日に岩崎家にお世話になることにしたのである。千歳空港に降り立つと、鮮やかな空と固く白い雪の世界が拡がっていた。

迎えに来てくれていた岩崎夫妻の車に乗せてもらい、一路夕張の栗山町へ。

さて実は北海道にきたら絶対に僕が食べるものがある。それは北海道でコンビニといえばここしかないというセイコーマートにあるものだ。

北海道は本当にセイコーマートが多い。これはおそらく、ハードな雪国の特性を活かしたチェーン展開(ってなんなんだろうか?)の独自ノウハウがあるんだろう。しかしここの最大のウリは、実はサンドイッチなのである!

「あのね、ここの玉子サンドイッチ美味しいのよ!」

と教えてくれたのは岩崎さんの嫁はんである亜紀ちゃんである。彼女は僕と同い年で、ある種苗会社で農業資材の関係の仕事をしていた女性だ。

「セイコーマートのサンドイッチは別モノだね。食べてみて!」と言われて食べてみたら本当に旨かった!以来絶対に欠かさず食べている。

ちなみにセイコーマートのPBブランドのサンドイッチは、よくあるペラペラの薄いビニール包装ではなく、ポリエチレンっぽいちょっと集めのパックに、エアーを入れて密封された形で入っている。それだけ高級感がある。エアーで密封されているので押されても潰れないということなのではないだろうか。ちなみにその横にあるオレンジ色のジュースはナポリンという、これも北海道でしか観ないものだ。北海道ではコーラより知名度の高いコアップガラナと並び、このナポリンは実に良い意味で味わい浅い飲み物だ。おそらく絶対に果汁なんてもんが入ってないだろうと思われる味なんだが、安くて旨い。

で、このサンドイッチだ。パンはフカフカで香りがいい。玉子サラダはマヨネーズが控えめで、玉子の黄身の風味が活かされている。全体的におとなしい味だが、他チェーンのそれとは違ってまさに旨い。セイコーマートが東京にないのは仕方がないが、このサンドイッチだけはなんとか手に入るようにならないだろうか。

さて、1時間ちょっと飛ばして岩崎農場へ着く。札幌を出るといきなり雪がどどーんと積もっていて大変だ。

「よーし 他のメンバーも集まってるかなぁ」

ん?他のメンバーって誰?

「いや 今回ね、ヤマケンが来るっていったら、うちの農場の関連で付き合ってる会社の人たちがぜひ蕎麦をいっしょに打ちたいっていってね。」

ふうん、と思っていたら次々と車が農場に入ってきて停まる。

「こんにちは!」

と声をかけてくださった体格のいい方の姿にビックリした。なんと作務衣(さむえ)である。ある種の予感が背筋をツーと走る。この人、蕎麦マニア、、、?

「道具、どこに運んだらいいですかね?」

と4駆の後部トランクを空け、やおらゴルフバッグを担ぎあげる。ん?ゴルフバッグ?

「あ、これは蕎麦ののし棒なんですよ!」

んー ゴルフバッグに入れるだけののし棒を持ってるって???
そしてなにやらアウトドア用のテーブルセットかと思うような、しかしそれにしてはどでかい木の組板を岩崎家に上げると、なんとそれは蕎麦打ち用の台であった!

「これはですね、私が所属している蕎麦打ちの会で工房に特注した蕎麦打ち台なんですよ。いろいろと細かいところまで設計されていて、蕎麦打ちに最適化された作りになってます。これを持っていけばどこでも蕎麦が打てるのです

なんと!これはモバイル蕎麦打ち台なのだ!そんなの持ってるのにビックリ!しかしやはり蕎麦打ち会というセミプロの会に所属している方であったか!台以外にも、衣装ケースの中に道具類がグワッと収められている。

アレよという間にこの塚越さん、髪の毛が混入しないように帽子をかぶり、前掛けを掛ける。まさに蕎麦屋である!

「いやいや、まだ2年ですから全然素人ですよ、、、」

といいながら塚越さん、てきぱきと他の準備を進める。塚越さんは実は、岩崎農場のシステム開発を手がけているある企業の方である。

「うちはハウスでトマトを大規模に作ってるので、その制御とか管理システムの相談に乗ってもらっているんだよ。あとネット販売用のシステムもね。しかし、こんなに本格的にやってる方がいらっしゃるとは、、、」

と、岩崎氏もこの日こんな展開になるとは思わなかったらしく、ビックリ目である。塚越さん他、チャーミングな主婦の橋本さん、そしてお二人の上司である永井さんがおいでになった。


さてこれがくだんのそば粉である。石臼機で挽いて最初にでてきた粉はさらしな粉といって、中心部の粉である。澱粉なのでサラサラとしてくっつかないので、打ち粉として用いられる。岩崎農場ではさらしな粉を打ち粉にして、その他全体を挽いた粉を蕎麦に用いる。

「良い粉ですねぇ~」

と唸っている。本当は小麦粉を二割いれた二八蕎麦を打とうとしていらっしゃったのだが、ギャラリーのたっての希望で10割蕎麦に変更。

「うーん緊張しますね」

と言いながら目は真剣そのものになってきたのである。

岩崎さんのお母さんも「あらぁ こんなにすごいのは初めてみるよ」と驚き見守る中、粉をふるいにかけるという丁寧な下準備から蕎麦打ちは始まった。

ちなみに蕎麦で最も重要なのは、そば粉に水分を浸透させる水回しという作業だ。水加減で蕎麦打ちが成功するか否かの相当に大きな部分が決まってしまうと言う。

これもスペシャルな捏ねバチに水を細心の注意で注ぐ。

すぐさまダイナミックに両手を使いながら粉に水を行き渡らせる。4分ほどすると色がだんだんと青みがかってきて、そして水を含んでまるまりはじめる。
様子を見ながら水を足したりして、全体をくくりに入る。

くくった塊をやわやわと練り込んで、ひとまとめにし、丸く押して玉のできあがりである。この時てかりというか艶があるのが望ましいらしい。先生の模範演技である。

これを伸してていく。こののしの作業で僕はいつも失敗するのだが、塚越先生の模範演技はいとも簡単そうにやっておられる!

彼が伸していくと、そば粉の塊がなんでこうなるのか?と思うばかりの綺麗な長方形のシートに成っていくのだ。

ちなみに塚越名人の持参した数本ののし棒にはすべて名前が書いてある。原料木も一本一本違っていて、それぞれの木に由来する性格があるそうだ。ふっ深い!

さあ、シートが綺麗に折りたたまれた。なんと美しい、、、端整とはこういうことを言うのだ。

さあこれを切りに入る。その前にこの包丁をご覧いただきたい。手元のほうに塚越名人の顔が写り込んでいる、、、そう、これは実はステンレスではなく鋼なのだが、徹底的に鏡面仕上げに研磨しているのである!触っただけで切れてしまう斬鉄剣のようではないか!

これまた特製のコマ板が出され、いよいよ蕎麦を切り始める塚越さん。トン、トン、トンとリズムが一定である。

そうしてできたのがこちらの麺だ!うわーお素晴らしい!蕎麦打ちができる人は本当に尊敬に値するなぁ。だって麺ができてしまうんだよ?スゴイよね、、、

さて
僕らも観ているだけではダメなので手打ちで応戦である!

まずはこれも経験の長い岩崎さんが打つ。

「僕にも師匠がいるけど、塚越さんの打ち方は参考になるなぁ」

といいながらすんなり蕎麦を仕上げる岩崎氏であった。

お次は僕である。

実は水回し、捏ねの段階まではとても褒めて頂いた。山形など色んなところで教えて頂いていることもあり、大体の工程は分かっているのである。

しかし、、、実はまたもや失敗!水分が多すぎたのか、打ち粉が少なかったのか、のし棒で伸している段階で重なっている面がくっついてしまい、生地が破れてしまったのである!

む、無惨、、、
残念だが破れてしまった部分はもう見捨てて、まだ大丈夫な半分だけを救済することにした。ぐわー 悔しいよぉ

で、いちおう僕は切りは結構旨いといわれる。この日も、あまりに切れ味のよい斬鉄剣包丁のおかげで、かなり細めの蕎麦を切ることができた。


ふぅううう
できたよ、、、でも今回も完遂はならず、という感じだ。次回こそはきっちり一人で打ってやる!

さてあとは食べるだけだ!
塚越名人がゆでを開始する。

さてできた!これが今年初の完全手打ち蕎麦!

実はこれは僕が打った麺なのだが、やはり麺の太さがばらついているか。

まあそれはどうでもいい。まずはこの蕎麦を何もつけずに数本たぐってみる。
すすり込み、噛みしめると同時にブワッと拡がる甘さ!蕎麦本来の甘さがいきなり拡がる。そしてあの蕎麦の香りが、、、これだよ、ここと山形の鈴木製粉所でしか味わえなかった蕎麦の香りが、もう口中、鼻孔中に充満し、むせ返るんばかりになる。

「旨い! やっぱこれだよ蕎麦ってのは!」

もうやまけんご満悦である。僕の打った蕎麦、岩崎さんの蕎麦、そして名人の打った蕎麦と3種をたらふく食べさせて頂く。

正直、この蕎麦に勝る蕎麦にはやはり出会えないな。食ってみれば分かる、、、けど食わせようがない。別物の味と香りなのだ!

「塚越先生、どうもありがとうございました!」

「うーん 塚越君がこんな趣味持っているとは思わなかったなぁ、、、」

と上司の永井さんが笑いながら仰る。

「ま、これから魚も食べさせるから。ぜひ楽しみにしていてね」

そうおっしゃって永井さんは準備のために岩崎家を辞した。蕎麦を食べ過ぎた僕はしばらく放念状態。

そしてすぐさま、夜は始まったのである、、、

2005年03月06日

出張予告

実はすでに怒濤の出張シーズンが幕を開けている。首がマジで回らない状況だけど、食うモノは食っている!

さて
3月7日は青森県で調査。だけど青森はすっとスルーして、鹿角に行きます。鹿角と言えば、、、そう、「幸楽」のホルモンの本拠地である!

■秋田の深淵を覗く その2 絶品の焼きホルモンにノックアウトの夜だった!http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000566.html

ただし、鹿角といっても広い。今回宿泊は小坂という町。で、その小坂にも幸楽の支店があるそうだ!

ということで、夜20時くらいに小坂の「幸楽」に参上予定です。もしその周辺の読者さんがいらっしゃったらぜひご一緒しましょう。

翌日は鹿角で畜産関連の調査をした後、盛岡にバスで出ます。

盛岡と言えば、、、まだblogには書いてませんが「白龍」(←パイロンと読む)のじゃじゃ麺しかありません! ただしバスの着予定が13時になるので、本店が開いていればいいのですが、もしかするとカワトク百貨店地下の分店に行く可能性もあり。この辺、流動的ではありますが、入れなくても本店には絶対に足を運びます。

ということで この周辺の皆様、お会いできたら嬉しいです。

ちなみに、、、 この旅程をみて、

「なんだ、仕事の出張にしては、美味しいものにありつけるルートになっていて、不自然だぞ?食べたいもので出張先を決めてないか?」

と思う人もいるかもしれません。

違います!

まじで偶然のルートです。信じてぇ、、、

2005年03月09日

大館名物 鶏めし弁当 旨い!秀逸だぞこれは!

ホルモンは実に最高だったんだけど、その前に大館駅前で買った鶏めし弁当850円が実に実に秀逸だったので報告!

本当のことを告白しよう。ホルモン食って帰った後、夜中までPCで仕事をしていた。そうするうちにだんだんと腹が減ってきて、、、夜食で食べちゃったんだよね~ 鶏めし。いや 自分でもビックリでした。最初は中身を観るだけにしようかなぁって思ってたんだけどね。

で、これ、大館名物だそうだ。駅の目の前に弁当販売所というのがあったので買い求めただけで、とりたてて期待はしていなかった。

■花善のWeb
http://www.hanazen.co.jp/

包みを開けてみると、、、

なんと端整な面構えだ!
弁当には面構えが重要だ。どれだけ気を配って具材とご飯が盛りこまれているか。それで印象がかなり変わってしまう。この鶏めし弁当、実に容姿端麗美人である。


比内鶏を交配させた独自の鶏品種を使用し、そのスープでご飯を炊き込んでいるということだ。もちろん甘辛く煮揚げた肉が乗り、丁寧にそぼろにされたゆで玉子ものっている。

大体、日本人は鶏のスープを醤油味で炊き込んだご飯が好きである。中国や台湾などでは豚と炊き込んだご飯があるが、日本では通常鶏である。豚や牛ではや香りが味が濃すぎるのだろう。鶏の上品な旨味と醤油の香りの合わさった味が日本人の好みなんだろうな!

このご飯をわしっと掴んで口いっぱいに頬張る。ご飯は冷えているがそれがまた旨い!炊き込みご飯の冷やご飯って旨いよね!炊き加減は絶妙で、粒状感がきっちりと出ている。ネットリ感と甘み・旨味が噛む毎に溶け出す!そこに固く締まった鶏肉を囓ると、肉の香りとタンパク質が合わさり、原初的な快楽感が身を包むのダ!


丁寧に作られている弁当だ、と実感するのは、グレードの高いつけ合わせに手を付けた時だ。柴漬け、白瓜の粕漬け、胡瓜の古漬けどれもきちんとした本漬けである!薬臭い合成品ではなく、きっちりとご飯のおかずになる!

それと、がんもどきと思いきや、魚のすり身と豆腐と混ぜてひろうす状にした揚げ物も、また人工的な味がせず秀逸。

変わりカマボコもこのとおりきちんとしたもので、立派なおかずになっている!

実に素晴らしい!料亭の仕出し弁当を食べているような気分だ。この内容で850円は、俺的にはまったく安い!

カタログを観ると、5名様から予約で特製鶏めし弁当1600円、10名様からでスペシャル鶏めし弁当2100円がある!

うおおおおおおおおおおおお
スペシャル食ってみてぇええええええええええええええええええ
どんな内容なんだろう!

しかし保存料を使用していないので通販はやっていないとのこと!
そういわれるともっと食いたくなる!

一つ前のエントリにコメント下さっている、秋田出身の鈴木さんもおっしゃるとおり、これは数ある鶏めし弁当の中でも最高峰といえるかもしれない。

駅弁ブームで、駅弁物産展に人気があるらしいが、安易で美味しくない駅弁もかなり並んでいる。腹が立つのは1000円前後もするのに量が少なく、具材に神経がいき届いていない弁当だ。そういえば山○駅からの帰りに食べた山○牛焼き肉弁当は本当に腹が立ったなぁ。

そんな中途半端弁当を出しているメーカーにこの鶏めし弁当をたべさせてやりたい。
あー また食いたくなった!

2005年03月10日

盛岡といえば「じゃじゃ麺」の白龍詣で以外に何があろうか!

朝目覚めると、しとしとと雪が降っていた。畜産業者さんのところに調査に行く道すがら、北海道とはまた違う東北の冬の風景が拡がっていた。雪の白に染まった山は美しいが、その危険さには少しぞっとしていしまう。

ヒアリングを終える頃、空は一転して蒼く澄んできた。小坂高校前のバス停から盛岡へ向かう車中で、すっかりピーカンの青空が拡がってきた。盛岡に着くころには、吹き付ける風はほぼ氷点下ながら、雪はどこかへいってしまった。信じてもらえないかもしれないが僕は晴れ男である。昨日の青森でも「昨日までひどかったんですけどね、今日は天気が良いな。明日からまた雨か雪になるそうです。」と言われた。ふふふ、、、

バス停近くにいると、農業関係の研究者のI坂さんが車で迎えに来てくれた。1ヶ月前に東京の農業関連エキスポで会って以来だ。こんなに早く彼を訪ねることができるとは思わなかった。I坂さんは、格闘プロレス団体であるUWFにいた、超高速スープレックス男である中野龍雄に顔もガタイも似た人である。彼が無言でのしのしと歩くと怖い。しかし一端口を開くと無茶苦茶柔和で温和な人なんである。

「いやーようこそ盛岡へ!じゃじゃ麺の白龍ですが、まずは本店に行きましょう。それで本店が満席でもその近くに分店がありますし、一日中開いているカワトク百貨店の地下店もあります。どうしてもお忙しければ、それらを駆使して行きましょう。」

と車を走らせ、盛岡の中心街へと向かうのであった!

さて食い倒れ日記を読んでくれている皆さんは盛岡名物「じゃじゃ麺」をご存じだろうか。盛岡最大の名物はこのじゃじゃ麺であると行って過言ではない!それも「ジャージャー麺」ではなく「じゃじゃ麺」だ。この両者は同じようで違う。その辺は、過去ログに書いてあるのでご参照されたい。

■三軒茶屋 盛岡じゃじゃ麺「じゃじゃおいけん」と カレー「とんがらし」のハシゴ その1
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000186.html

とにかく盛岡の「白龍」(←パイロンと読みます)は、本場中国で食べられているじゃじゃ麺を忠実に再現しなおかつオリジナリティを付加した、東北麺類界の王様といってよい存在である。盛岡といえば冷麺が有名ではあるが、僕はほとんど食べないな。やっぱじゃじゃ麺でしょう!

「最近はじゃじゃ麺の店がいくつか出てますけど、やはり白龍に勝る店はないような気がします。」

と駐車場から歩きながらI坂さんが仰る。そりゃあそうだろう。あのコッテリして深みがあるのにくどさのない、薫り高い肉みそは真似できないはずだ。立派な神社の前、鳥居のある小さな飲食店街の中に、白龍が立っている。僕もここに来るのは9年ぶりだ!

■白龍
岩手県盛岡市内丸5-15
019-624-2247
営業時間:11:30~20:00(本店)
日曜休

「おおおおお 懐かしいなぁ、、、」

本当に懐かしい。当時付き合っていた女の子と東北レンタカー一周旅行をしている時に来たのが最後なのでよーく覚えているのである。ちなみによくある話だがそのコとは旅行中にソリが合わなくなり、ほどなく別れた。

なんて感傷に浸っている最中にもスーツ姿のサラリーマンが店に吸い込まれていく!う、早く入ろう。

狭い店内はギッシリとじゃじゃ麺を啜る人々で満たされていた!オープンキッチンなんてもんじゃない目の前が厨房のため、麺を茹でる香りと立ち上るマイナスイオン(笑)が心地よい!

メニューを観て感動!小350円、中450円、大550円という安さは当時と変わらない!これでは追随店も大変だろうなぁ。

「やまけんさん、本当に大をたのむんですか?」

「当たり前じゃないですかぁ!それ以外にあるわけないでしょう!」

勢いよく大を頼み、しばし厨房に見ほれながら麺のゆであがりを待つのであった。


(おもわせぶりに続く。ていうか時間がない。これから富山日帰り出張。)

盛岡といえば「じゃじゃ麺」の白龍詣で以外に何があろうか!(後編)

ちょうど麺茹での狭間に入ったようで、茹だるまで少し時間がかかる。その間もひっきりなしに客が入ってくるので、たちまちのうちに満員行列になっている。じっとりと待っているとようやく僕らの分らしき2つの大皿が敷かれる!デカ鍋いっぱいに吹きこぼれそうになっている麺を太い菜ばしで皿に盛り込む。おばちゃんがちらっとこちらをみて、

「ちょっと多めですけどいいですか?」

と訊く。いや全く問題ないよ!どんどん盛って!

「ねぎとキュウリが乗りますけど、どっちも大丈夫ですか?」

もうバンバン乗せちゃって!んで、肉みそちょっと多めで!

どど~~~~~~ん!

これがじゃじゃ麺の”大”である!夢にまで見たじゃじゃ麺だ!うおー嬉しいよぉ


じゃじゃ麺の麺は、このとおり小麦粉と塩を練っただけの「うどん」である。カンスイの入った中華麺ではない。それを、さぬきうどんのようなコシのある茹で方ではなく、クタクタのトロトロした食感になるまで軟らかく茹でてある。なぜか数本、緑色の麺が入っているが、ヨモギ入り麺だろうか、、、風流である。

そしてじゃじゃ麺をじゃじゃ麺たらしめているのがこの漆黒の肉みそである!

「味噌だけでも数種ミックスされてますよね」

とI坂さんが言うとおり、ガツンとくる刺激はなくまったりとした味なのに、やみつきになってしまう中毒性をもっている。ゴマの香りが奥深くする、旨味タップリのじゃじゃなのである。中華では甜麺醤を使うが、これは違うな。甜麺醤は小麦粉が原料となった味噌調味料だが、こちらのじゃじゃは大豆由来の味噌ベースなのではないだろうか。

この双方をぐったぐたに混ぜ込みながら食べる。麺に味噌を絡ませ食べるのが旨いから、ここで上品に食べようと思ってはいけない!

ちなみに上に乗っているキュウリとネギも旨いのだけど、ネギは通常の小口切りだが、キュウリの切り方がなかなか特殊だ。中華料理店で出るジャージャー麺や冷やし中華には細い千切りキュウリが定番だが、じゃじゃ麺のキュウリは切り口が長さが2.5センチ、切り口が5ミリ四方になるくらいの直方体に切り揃えられている。

この太さが絶妙なカリポリ食感を産み出しており、柔らかい大量の麺を飽きずに食べさせるアクセントとなっているのである。皿が運ばれてきた当初は瑞々しくパリッとした食感で、食べ進むうちに麺の熱によってしんなりし、食べ終わる頃には食感が変化しているので本当に飽きない。

この他、味の濃い紅ショウガの厚切りとおろし生姜が脇に添えられている。卓上には酢、ラー油がある。カウンターにはなんばん(トウガラシ)の一升漬けと辛みそもおいてあって、自由に使うことができる。ラー油と酢をいれるとまた旨い。また、禁断のニンニク摺り下ろしを混ぜると破壊的に旨いのだが、明日の仕事のことも考え合わせ、泣く泣くあきらめた。

しかし、もう絶品である。これで大盛りが550円とは恐れ入った。

さてこのじゃじゃ麺、目の前の麺を食べて終わりでは、ない。卓上には意味ありげに生卵が入った丼がおかれている。

麺を食べ終わった後には、切れ切れになった麺の残骸とキュウリとネギ、肉みそがペースト状になったのが残っている。ここに卵を割り入れ、掻き混ぜる!


玉子とじゃじゃ麺残骸が混ざり合ったところで、厨房に手渡すのだ。その際に「チータンお願いします」と呪文を唱える。ここで「肉みそ多め」や「スープ少なめ」等のオプショナルな技もある。すると、厨房のおばちゃんが「はい~」と言って、麺茹で鍋から熱々のゆで汁をすくってこの皿の中に入れ、レンゲで掻き混ぜる。そこに肉みそを一盛り入れてこちらに戻してくれるのダ!

これこそがじゃじゃ麺の「後半戦」とも言える「ちいたんたん」(50円)である!絶妙にかき玉汁になった汁に肉みそを溶かし込む。

小麦粉が溶け込んだゆで汁と玉子の柔らかな風味、そこに肉みそが溶け込んだ味はもう筆舌尽くしがたくウマイ。いや、これ単体で食べてどうのという話ではないけど、じゃじゃ麺を食べてチータンで〆めるという、この一連の様式美が素晴らしいではないか!

「いやー旨かった!ご馳走様でした!」

じゃじゃ麺大で550円、ちーたんたん50円で600円。ここから得られる至福感はプライスレス、、、

盛岡のソウルフード、じゃじゃ麺にノックアウトされた午後なのであった、、、

と、そこで終わればいいのだが、終わらないのダ!
出張予告のエントリにコメントくれた方によると、紅茶のお店「シュン」というところの白いカレーなるモノがウマイという。カレー好きとしては押さえておかねばなるまい、と思い並行移動。

有名な商店街の近くにある、非常に綺麗なつくりの店だ。

上品なウェイトレスさんに「白いカレーあります?」と訊くと、、、

「あぁ~ 申し訳ございません、羊の良い肉が今日は手に入らなくて、本日はないんです、、、」

うわあああああああああああああ
ついてない!

ということで、もう一つの定番メニュー「わがままカレー」を食べました。

タマネギをたっぷり使った優しい味のカレー。「辛いですよ」といっていたが、あまり辛くはない。おちついた、紅茶専門店の風格が滲んだカレーだ。これはこれで美味しくいただいた。

いやしかし研究の合間を縫ってご案内頂いたI坂さん、本当にありがとうございました!

車で盛岡駅に行く途中、岩手山がパノラマに綺麗にみえた。

「昨日まで雨だったのに、今日はスゴイ晴れようです。明日からまた崩れるようですが、、、」

はい、それは私が晴れ男だからです。イヤほんとに綺麗な岩手山。満足感に浸りながら、岩手の銘菓「鴎のたまご」を買って社内で食べ、帰京したのであった。

2005年03月16日

富山の豊饒な海の幸は、回転寿司でも十分ゴージャスリッチだ!

さて富山のある米の生産組合に出張である。富山県はコメどころで、篤農家の多い地域である。いうまでもなくコシヒカリの大産地だ。しかも、コメが旨い上に富山湾の海の幸は最高だ!海流の関係上、独特の魚種が獲れるため、日本海側でも絶品な魚が、とくに海老類が豊富である。

富山空港からバスで一路、高岡駅前へ。ここで次に乗る電車を1時間あまり待つので、昼飯タイミングである。この日は、新人の研究者であるY内君が同行してくれている。

「彼は出張は初めてなので、いろいろ教えてやってください」

とその上司の方から言われているので、これはしっかり教えてあげなければならない!そう、出張の快楽を!!

ちなみに冗談ではなく、出張時に心がけていることがいくつかある。まず出張先では、移動時にはなるべく昼寝などせず外を観る。「観る」と書いているには意味がある。ぼーっとみるのではなく、その土地の風景から文化を観ずるということだ。例えば僕は農林水産業の研究者だから、その土地の事情を風景から読むことが重要。空港から高岡に至るまでの田圃の密度や一枚の面積、形状、土質、等々を観るのだ。これが、地域によって全然違う。土質が違えば堅さ、土の粒子構造が違うから農具も変わる。当然種も変わる、、、のである。

「と、いうわけできちんと観察するように。」

と偉そうに言うのだが、実は僕の脳裏にはそんなのは無い!この時、同時並行して昼飯の算段をしているのである!

電車の時刻を確認して切符を買っておき、駅舎を出る。すかさずタクシー乗り場にいって「おいちゃん、この辺の旨い回転寿司屋、教えて!」と声を掛ける。すぐさま、タクシー運ちゃん同士で「あそこがええな」など会議が始まる。その内におばちゃんが「あたしが連れてってあげるわ、800円程度でいけるわよ!」と手を挙げてくれた。

とこのように、僕は事前調査はあまりしないで現地の人に訊いてしまうのである。

「こっちに来たらね、寿司屋なんて回転寿司でいいのよぉ イキがいいから安くて美味しいの!」

とおばちゃんが色々と教えてくれる。ちなみに名物のかぶら寿司はもう時期が終わってしまったらしい。残念!

「あ、ここよここ。帰りは南口に行ってくれって運転手さんに言った方が安いわよ!」

と親切に教えてくれて、ガハハハと笑いながらおばちゃん去っていった。こういうコミュニケーションこそがご馳走である。

さて案内されたのは富山一帯に展開している回転寿司チェーン「すし食いねぇ」の高岡店である。


「回転寿司で美味しいんですか?」

とY内隊員は不安げであるが、ここ富山においては回転寿司でも東京のその辺の店より旨い寿司が食えるのである!回転寿司とは言っても、回転と同時に入店しているので注文を言えばその場で握ってくれる。そのネタはなんとこんなラインナップなのだ!

この黒板はあくまで本日のオススメ。これがもう一枚、内容の違うのがある。そして標準メニューにイカ・アジなどが載っているという豊富なラインナップなのだ!しかもここ、一皿2個入れでこの値段である。安い、、、

そして怒濤の注文が始まったのである。

■ガス海老

この不思議な名前の中型海老を食えば、富山の海の豊饒さがすぐに分かる!トロリとした食感に濃く甘く海老の香りがプアッと突き抜ける、素晴らしい海老なのだ! Y内隊員、一口に食べてしばし沈黙。

「う、旨いですね!!! これは確かに、東京では食べられません!!!」

あとは一気呵成である。

■太刀魚

■サバ

このサバが激旨!大型の脂の乗ったサバを薄く絶妙に〆ていて、昆布の薄切りが乗っている。

とろける舌触りとサバの香り。最高だ!

■ホタルイカ酢みそ

■活白貝

その場で板さんが捌いてくれる白貝、美しい二枚貝だ。

見た目だけじゃなく、中身も最高!綺麗な味と香りだ。

■ブリトロ

富山といえばブリだ!その通常の握りと腹側のトロの握りを食べたが、どっちも旨い!個人的にはトロじゃない方が香りがあって旨い。

■こぶ鯛

■白海老

いつも門仲の寿司処 匠で食べ慣れている白海老は、産地の富山ならもっと旨いだろうと思い注文した。匠では白海老の繊細な香りを尊重して、軍艦にはしない。海苔の風味が強く海老の旨さが伝わらないからだ。ここでは軍艦で出てきたのだが、やはり海苔の香りが強く少しぼやけてしまった。
とはいえ!やっぱり旨いよ、白海老!

■ざす

「ざす」ってなんだ!?というのがわからなかったので頼んでみた。なんとこれ、カジキマグロのことだそうだ。ふうううむ 後にこれが面白い商品になっているのをみかけるのだが、とにかくここでは喰っておきました。

さてこんな感じで食べ続け、僕は13皿(一皿で2個入りだから26個)食べて、アラ汁を頂いた!これで会計がたったの3400円だ!

「うーん 本当に美味しかったです!」

とY内隊員も感動している。よかった、、、彼に出張の素晴らしさを少しでも分かってもらえたようだ、、、

勇躍、駅へと戻り、電車に乗って出張先へ向かった。
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さて、ヒアリングが終了した。今回の産地の担当者さんは、なんと!なんとなんとなんと!僕の著書「実践農産物トレーサビリティ」の読者さんであったのだ!

「山本さんの本の通りに、仕組を作ったんですよ。いやぁ、その著者に会えるとはなぁ、、、」

と、お互いに感動しつつ、和やかにヒアリングを終えた。

駅に戻ると、40分くらいのアイドルタイムがある。そこで目指すは地域のスーパーマーケットである。

「スーパーに行くんですか?」

そう。スーパーはその地域の食文化を写す鏡だ。調味料コーナーと惣菜コーナーを覗けば、地域の食の一端を理解できる。案の定、この富山の町では素晴らしいアイテムが多数発見された!

それらをすべて買い込むと3400円に上ったが、もうそんな金額はどうでもよいのだ。早速電車に乗り込みボックスシートで包みを拡げる。

「ここで食べるんですかぁ?」

そのためにハシと醤油も買ってきたんだよ、Y内君!

■うるめイワシの刺身

関東ではマイワシかカタクチイワシくらいしか生で食べないが、実はこのウルメイワシの刺身は絶品なのだ!マイワシにはない繊細さがあって、でも足が超早いので、鮮度がよくないと食べられない。揺れる社内で醤油をかけ、バクバクと口に放り込む。とろけるような繊細な身が溜まらなく旨い!

■かぶら寿司(サバ)

パックに入っているのは、ブリではなくサバの身を挟んだかぶら寿司だ。これがまた庶民的で旨い!一パック平らげてしまった。

■どじょうの蒲焼き

実はこのどじょうの蒲焼きが、本日のヒアリング先の町の名物なのだ!これで町の名前が分かる人、いるだろうか、、、

「若い子はたべないねー」と売り場のおばちゃんがいっていたが、このどじょう、実に旨いのだ。

串に小さな切り身が刺してあり、カリカリに焼かれて甘辛タレに漬けてある。身が薄いから旨味が濃いわけではないが、淡水魚らしいアッサリ感と骨がカリカリと歯に当たる感覚、そして甘辛タレの香ばしさで、酒のつまみとしては最高の部類にはいるだろう。あ、でも僕はこう言う時には酒は飲みませんが。

そしてこれが今回最大の謎。「べっこう」という惣菜だ!

■べっこう(濃) ←この「濃」というのがまた、謎だ。薄いのもあるんだろうか。

これ、味付けした出汁に玉子を溶き入れて、かきたま状態になったものを寒天で固めたようなものだ。

このべっこう、興味津々で買い求めた。ハシで割って食べると、甘めの味だが旨い。寒天の濃度はそれほど強くなく、口の中でモロモロと崩れて甘みと旨味が溶けていく。しかし、これはどういう時に食べるんだろう?ご飯のおかず?それともおやつ?家庭でも作ることあるのだろうか?

富山ご出身または在住の読者さん、ぜひ教えてください。

そしてこれは家に帰ってから食べたのだが、「ざす」である。寿司屋ではカジキのことをざすといっていたが、スーパー店頭では、カジキまたはサワラを昆布締めして、昆布で挟んだ状態で売っているのを「ザス」というらしい。これが数種類、並んでいた。こんなの観るのは初めてである。

■ざす

写真は家で切り分けているが、切り分ける前は昆布とカジキの3層くらいのサンドイッチという状態だ。わさび醤油につけていただくと、余分な水分が脱水されたカジキの身と昆布の旨味があわさって旨い!

いやぁ
富山、最高!本当に楽しめる。出張って本当に素晴らしい。いい旅でした。富山のみなさん、色々教えてくださーい!

PS: 富山出張中に「あそこが美味しいよ」とコメントやメールをくださった皆さん、どうもありがとうございました。今回は行けませんでしたが、次回は必ず、、、

2005年03月17日

宮崎が誇る「レタス巻き」の元祖「一平」の村岡さんは限りなく熱い情熱の人だった!

プリプリの海老にマヨネーズをつけ、レタスを一枚と一緒に海苔巻きにした「レタス巻き」の元祖にして、最高に旨い!という店が宮崎県宮崎市内にあることは過去エントリでも述べたとおりだ。

■レタス巻きの元祖は宮崎にあるのを知ってますか!? 宮崎市「一平」
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000375.html

このエントリを書いた数週間後、なんと一平寿司の店主である村岡さんからコメントをいただいてしまった!上記エントリのコメント欄にあるのは、村岡さんその人からの生の声である。嬉しかった、、、

で、実は3月12,13日に宮崎出張が入っていたので、村岡さんにメールで「色々お話しを訊かせていただけないか?」とお願いをしたところご快諾いただき、行ってきたのだ!

、、、なんだけど、すみません。このネタ、6月に出る僕の本に掲載する用のネタなのでした。さすがにね、blogをそのまま本にするというのは、違うと思うのですよ。追加取材をしまくって、熱い本にしたいので、この日の内容については本を読んで頂きたいと思うのです。

しかし、一言で言うと熱かった!
村岡さんは本当に熱い人だ!

実は今年の1月、一平寿司の開祖といえる先代ご主人が亡くなったそうだ。このレタス巻きを産み出したその人である、、、名実ともに現・村岡さんと、脇を固めるスタッフがその遺志を継ぎ、変わらぬ旨さを提供してくれている。

この村岡さん、「取材なんてね、実は地元以外のメディアには初めてなんです。」とおっしゃり最初は固かったが、ほどなくしてとてつもなく熱い人だと言うことが分かった!味のこと、寿司のことを話し出すとパワーブースターがブワッと点火されるかんじ。

心に残ったのは、次の言葉だ。

「うちはね、レタス巻き屋。大衆の店なんです。子供が500円玉握りしめてレタス巻き食べに来たら、作ります。そういうのを大切にしていきたいんですよ。だから、それができなくなるような追求の方向性はしないです。」

そんなことを言っているが、サバのバッテラの完成度、仕入れる身の厚いサバのグレード、そしてレタス巻き以外の寿司の充実度、どれをとってもその辺の店は絶対に勝てない!これぞ粋というものだ。

で、おそらくWeb上では本邦初公開だろう、一平の厨房にも入らせて頂いた。これが毎日店で仕込む、酢飯に合う特製マヨネーズである!これをスプーンで舐めさせて頂いた。味は「なるほどぉ!」という感じなのだが、詳細はここでは述べられないのでゴメン(笑)

作って頂いたレタス巻きとバッテラ、玉子巻き(これがまた絶品!)を板の上にドドドっと並べる。

「うわーやっぱり旨い~!」

最高なんである。ああ、この臨場感を早く届けたいがちと待ってて!
僕が「旨いウマいうまい」と食べていると、嬉しそうに笑いながら「本当に食いしん坊なんですねぇ、、、」と喜んでくれた。彼自身も相当に食いしん坊のオーラを漂わせている!

で、彼が言うのだ!

「やまけんさん!あのね、僕はチャーシューが好きで、ラーメン食べても旨いチャーシューにあたったことがなくて、自分で作ることにしたんですよ。僕が作るチャーシューは旨いですよ!実は今、仕込んでるので、お届けしますよ!」

マジ???

厨房の裏にいくと、そこには目を見張らんばかりの光景がっ!
そこには、500g程度の塊に切られた豚バラ肉が数十個、ステンレスの台の上に並べられている!それぞれにフォークでぶすぶすと穴を刺し、塩をするところであった!

「穴をあけて塩をまぶして、蒸してから焼くんですよ。旨いですよぉおおおお」

おおおおおおおおおおおおおおお
これは絶対に旨いに違いないっ

それが本日、届いた!

一平特製の袋に入って、真空パック詰めされたチャーシューが3本!

このコテコテの甘辛そうなタレに浸されたチャーシュー、これだけでウマそうだよぉ、、、

「お好きな厚さに切って、レンジでチンしてから食べてください。食べきれない分は冷凍庫に入れても大丈夫です。今回の豚は、宮崎の「ハーブ豚」です。友人の日高牧場で育てたものです。感想を聞かせてくださいね。」(村岡さん)

よしっ もう決定!本日夜はチャーシューご飯である!
すっげえ楽しみだ!
ちなみにこのチャーシュー、店では出しておられません。このblogみて「食べたい」といっても無理よ、、、ゴメンナサイ、私、役得です。

チャーシューの味はレポートしますね!

2005年03月19日

一平寿司の特製チャーシューを堪能した!

先のエントリに書いたとおり、宮崎の一平寿司の村岡さんから、特製のチャーシューが届いた。旨そう~ということで、こいつをどう食べるかということをつらつらと考える。村岡さんは「ぜひラーメンで」と言っていた。彼自身ラーメン好きで、色々食べ歩いて旨いのがなかったから自分でチャーシューを作るようになったというのが発端らしいのだ、、、だから、ラーメンで食べるのがいいんだろう。

でも家にラーメン作るストックがない。しかしチャーシューは食いたい!つうことで、もう単純にチャーシュー丼にして食べることとした。昼時、凶悪に腹が減っているのでまったなしである。

京都産の特A評価を得たコシヒカリに、富山県産の低アミロース米「ゆめごこち」をブレンドして浸水し、炊きあげる。レンジでチンでいいといわれたけど、レンジはあまり好かない。真空パックのチャーシューを開け、半分くらいを豪快に炊きあがってすぐのご飯鍋にうずめて蒸らす。チャーシューに熱が入ったのを見極めて取り出し、切り分ける。もう、肉と脂身の多層構造がプルプルしている断面を観るだけで身もだえしてしまう!

厚めに切ったチャーシューを、長島農園から送られてきた水菜のみじん切りをまぶしたご飯の上に載せる。しかし、これで終わりではない!この上にさらにご飯を盛り、うなぎの「まむし(間蒸し)」状態にしてさらにその上にホウレンソウの茹でたのとチャーシューを載せ込んだ!

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

チャーシューには濃いめの味がついているが、タレはない。そこで薬味として、なんばんの粕漬けをチョイと漬けながらチャーシューを頬張る。焼き締めている少し硬めの食感、外側部分にチャコール色にまぶされた醤油ダレの甘辛とその香りで、唾液分泌管がフル稼働してしまう!一瞬おいて噛みしめると肉の旨味がジュワッと出てくる!文句なしに旨い!

あとはもうひたすら食べるだけだ。実はご飯を3合炊いたのだが、2合ちかく喰ってしまった!

村岡さん、仰るとおりの旨いチャーシューでした!今度はラーメンもつくってください(笑)
本当にありがとうございました!!

2005年04月19日

緊急情報収集 しうへいさん、パストランテのその後を教えて下さい

業務連絡です。

名古屋のあんかけスパゲティの名店「パストランテ」が、昨年末にビル取り壊しのために閉店し、どこかに移転するはずでしたが、その後の行方が分からず連絡先もわかりません。
問い合わせ先をご存じの方、ご一報頂けませんか?

よろしくお願い致します。

パストランテ 無事に連絡とれました

ご協力いただいたみなさま、ありがとうございました。連絡とれました!
名古屋周辺に移転しているのかと思いきや、岐阜ですよ岐阜。
んー、、、遠いぜ。でも旨いから行くか。

2005年04月22日

昨日、一つ夢が叶った

IMG_3669.jpg昨日、ついに夢が叶ったのだ。

食い倒れ日記史上、僕が最大に愛する店、、、読者の皆様ならおわかりだろう、それは大阪にあるカレーの老舗、「インデアンカレー」である。

※最近の読者さんは、本ページ右上の検索窓で「インデアン」で検索してみてください。「インディアン」ではありませんよ。

ある出張中の昼食でふらりと阪急梅田の地下街にある店に入って初めて食べた時に衝撃を受け、以来僕は関西方面の出張では必ず途中下車して食べるようにしている。

そしてこのblogでも何度も書いたように、このお店のことをもっと知りたいと願ってきた。その熱意を汲んでくれた大阪在住の親友・西垣内がインデアンカレー本社に掛け合ってくれ、今度出る本の取材をご承諾頂いたのだ!

そして昨日、僕は秘密の扉を開けた。

IMG_3686.jpg インデアンカレーの本社はマンションの一室だった。マスコミ嫌いと噂される社長さんは、実はきさくで繊細な素晴らしい女性だった。広報・戦略・全体プロデュース担当の奥内さんは僕と同年代の方であった。今後僕はこの人と仲良くしていきたい!

そして僕が愛して止まない梅田地下の阪急3番街店の「山田チーフ」の謎も解けた(チーフではなかった)。しかも、阪急3番街店の福永店長によるご飯盛り&カレーかけの美技もきっちりと写真に収めさせて頂いた。

11月にオープンする東京店の話も伺った!食い倒れ日記ではこの東京店を全力サポートしていきたいと思う!オープン当日は動員するよ!

もう、帰りの新幹線で事故にあって死んでもイイ、、、そうまで思ってしまった。

短い時間ではあったが、おそらくここまで微に入り細に入り取材をさせていただいた例は過去、ないだろう。

インデアンカレーの皆様、本当にありがとうございました!

さて そろそろこの本の出版についていろんなことを明らかにしましょう。

発売日は5月26日。
出版社は4×4マガジン社(4駆の雑誌を主に出版している出版社です)
価格とかは調整中。

ネット上のエントリをしばらく休んでて申し訳ありません。でも、この食い倒れ本出版もまた、僕の夢。ぜひ心待ちにしていただけると嬉しい!

その前に、やるべき仕事をやります。よし、今日も生きよう!

PS
本文中にも書いたが、取材の申し込み手配をしてくれた西垣内に再度感謝したい。電話ではらちがあかないとみるや、本社までアポ無しで突撃し、僕の食い倒れ日記のプリントアウトを渡して「ただのマスコミ取材じゃないんです、とにかく読んでみてください」と掛け合ってくれた。そのおかげで秘密のベールが少しだけ開かれた。
 勝手ながら彼を食い倒れ党名誉党員とさせていただく。今度無二路で死ぬまで食わせてやるぞ。

2005年05月08日

本の中身をチラッと。絶品鰻重を観てくれ!

IMG_2176.jpgご存じだろうか、実は宮崎県は、鰻の大養殖地帯である。当然、宮崎で食べる鰻は非常に美味しい。中でも僕の大好きな鰻を出す店が西都市にある。

「アニキ、俺が一番美味しいと思う鰻屋さんにいってみましょうよ!」

と、JA西都職員のN君が誘ってくれるがままに、西都市中にある本部鰻店にいってみたのである。

どうだこの圧倒的に迫り来る関西流蒸さない皮バリバリ甘辛ダレ鰻重大盛り!旨そうでしょ!

という原稿を今、執筆中なのである、、、

2005年05月24日

速報・唯我独尊が大阪上陸

大阪在住のバナナさんが、下記をコメントで投稿してくれました。

「明日25日から30日まで大丸梅田店で唯我独尊のカレーが食べられます。 「北海道大グルメ祭」です。 大阪の皆さん是非!

カレー激戦区である大阪で、唯我独尊の味は受け入れられるのか!?
非常に楽しみなところです。
行った方、ぜひご感想を!

2005年06月07日

愛媛巡礼 じゃこ天を巡る冒険 with 二宮清純さんと堀江君

昨日の日テレを観た人へ。先ずはじめに言っておきたいのだが、僕は「料理評論家」ではない。まあ、日本テレビの人も困ったのだろうな。
「おいこのやまけんって人は何て職業なんだ?」
って感じだったのだろう。なにせ僕の名刺には肩書きが書かれていないのだ。

まあ何にしても一昨日、昨日のテレビで堀江君の姿を見つけた人は、その横で僕が居たのにビックリされたことと思う。

「スポーツライターの二宮清純さんと今度、愛媛のじゃこ天を食いに行くんだけど、やまけんもこない?二宮さん、愛媛出身なんだよ~」

と言う連絡があったのだ。一も二もない。僕の本を読んだ人はお分かりだろうけど、僕は愛媛県今治市の病院で生まれた愛媛ラヴァーである。追ってライブドア副社長さんから送られてきたスケジュールを観ると、凄まじい過密スケジュールなのであった。

■1日目
①タルトの六時屋(勝山町)

②うどんの大黒屋道後店

二宮&堀江講演 at 松山市民会館

③道後ぎやまんカフェでじゃこ天といろいろ食事

二宮清純を囲む会(清談クラブ)&会食

三崎漁師物語りにて宇和海の海の幸食い倒れ

■2日目
④味噌・醤油の梶田商店(大洲)

⑤じゃこ天・おがた蒲鉾(宇和)

⑥ゆず商品・高田商店(広見)

⑦じゃこ天・かどや(宇和島)

⑧じゃこ天・島原かまぼこ

⑨じゃこ天・田中蒲鉾

⑩以降、現地対応


特に二日目にじゃこ天が重なっているのをみてお分かりの通り、このツアーのテーマはとにかくじゃこ天である。堀江君がじゃこ天好きだとは知らなかったが、僕も本でじゃこ天を採り上げた人間である。愛媛県のじゃこ天は世界に誇ることができる素晴らしい食べ物だ。どんどんやろうじゃないか!ということで空港に向かったのである。

羽田空港のゲート前に集合すると、背の高い飄々とした表情の二宮清純さんがいらっしゃった。

「どうも~ 食い倒れの人ですね?」

と仰るので、食い倒れ本を一冊プレゼント。なんと機内でちゃんと読んでくださったらしく、「あのシチリア料理の店に行きたいですよ!」と仰る!今度お連れしようっと。

堀江君は帽子をかぶって参上。羽田ではあまりパニックは起きず安心だが、それでも飛行機に乗るまでに何人も握手を求めたり写真を撮ったりする人がいる。

さて愛媛に着いてミニバスに乗り込む。こちらが二宮さん。

こちら堀江君。

と、一緒にテレビカメラマンさんも乗り込む。なんと今回のツアーには日本テレビさんの取材チームが同行。ニュース番組の特集になるんだと。僕はそのことは前日に知った、というかスケジュール表に書いてあることに気付いたのであった。

さてまずは、愛媛でタルトと言えばこれだ!の六時屋タルトである。

■六時屋のタルト

県外には「一六タルト」が有名だが、愛媛県内では圧倒的に「六時屋」という老舗がスタンダードである。お茶とタルトが食べられる店内に入ると他の客がひっきりなしに堀江君を撮影しにやってくる。あたりまえか、、、

さて
愛媛県でタルトといえば、カステラ生地であんこを巻いたこういうものを指す。

オランダから伝来したと言われているのだが、なぜこれをタルトというのかは実はよく分かっていない。ちなみにあんこの中には柚子が練り込まれていて、独特の風味を醸し出している。非常に変わったお菓子であることは間違いない。

ちなみにこのタルトは通常の普及版ではなく、六時屋が誇る「特選」である。通常版と比べて素材が吟味されていて、僕が子供の頃に食べたのより全然上品な味がする。


社長さんいわく「この、カステラ生地とあんこの境目に糖分が滲んでいるくらいの時が一番美味しい食べ頃なんですよ!」
ということであった!確かに美味しい。

しかし愛媛ではタルトと言えばこれだが、県外人には全くわけのわからんシロモノである。

「もっと宣伝しないとダメですよ。」

と堀江君は言うが、「いやいや宣伝下手で、、、」という社長さん。そう、間違いなく愛媛県人は宣伝下手である。美味しいお菓子なのだからもう少し宣伝すべきだな。

ただ、僕はタルトもいいけど、愛媛を代表するお菓子は母恵夢(ぽえむ)だと思っているので、次回はそっちに行きたいなと思うのであった。

さて「ではそろそろ次へ、、、」ということで、バスに乗って移動である。

■うどん・大黒屋
これもまた食い倒れ本で書いてある通りだが、愛媛のうどんは旨い!ほんとは「踊るうどん永木」に連れて行きたいところだが、講演会場に近いというロケーションからだろうか、「大黒屋」にて昼食。

じゃこ天を巡る旅は本当は明日からなのだが、メニューにじゃこ天を発見してしまう。「小手調べにいっちゃおうか!?」ということになる。
これが大黒屋の揚げたてじゃこ天である!

実は格別期待していなかったのだが、結構旨そうなプレゼンテーションである!食べると、ブリブリした食感と、原料魚であるハランボの香りが濃い。旨いじゃないの!二宮さんと僕とで目が合う。

「いけるじゃない!もしかして店で揚げてるのかな?」

「もちろん店ですり身を揚げてつくってますよ!」

なあるほど。愛媛では揚げたてじゃこ天を食べさせる店が多いのだが、ここもちゃんと店内で揚げているのであった。

もちろんうどんもなかなかイケル。僕は最初から飛ばすつもりなので、名物の大黒うどんに海老天のせと玉子ぶっかけを食べる。




まあ、愛媛のうどんの神髄を味わってもらうためのベストチョイスかどうかはわからないが、堀江君も美味しい美味しいと食べていたのでよしとしよう。

さて大黒屋から歩いてすぐの処に、「にきたつ」という通りがあり、そこに造り酒屋がある。

「ここが道後ビールの醸造元ですよ!」

おお、道後ビールか!愛媛県の地ビールである。そうか日本酒メーカが作っていたのかと合点しながら入ると、当然ながら地ビールの振る舞いを受ける。気持ちよい苦みがスッと切れる、食中酒にピッタリの旨い地ビールだ。

「実は焼酎を仕込み始めました。免許を取ったばかりで、まだ商品名も就いてないのですが」

と、未発売の焼酎原酒をいただく。

大吟醸の酒粕を使った、いわゆる粕とり焼酎である。大吟醸の吟醸香がとけ込んだ、綺麗な香りの焼酎だった。仕込み水を少しもらって原酒を20度くらいに割ると、香りが膨らんで甘さが出てきた。悪くない。

「旨いじゃないの、、、やまけん、ライブドアデパートで売ってよ!」

売れるわけ無いじゃん、俺は酒販免許を持っていません。
さてこの酒造に隣接して、ビールと日本酒と料理が食べられるカフェレストランに移動。

ここでも当然ビールセットとじゃこ天を頼む。

まあ、ここのじゃこ天には全然期待していなかったのだ。日本酒の醸造もとだしね。しかし!出てきたじゃこ天は全くのオリジナルじゃこ天だったのだ!

この外観を見た瞬間、またもや二宮さんと僕で目が合い、「おや?」という感じに。

一口噛みきると、通常のじゃこ天よりも強い弾力が歯を押し返す!ブリンブリンとした強い食感で、個性的な味だ。

「実はこのじゃこ天には、ビール酵母が入っているんです。」

おおおおおおおおおおおおおお
なるほど!しかしビール酵母が食感を強めるとは知らんかったゾ!
いや、これは旨い。健康のためとかそういうんじゃなくて、単純に食感が増強されて旨くなる。これが増粘多菌剤なんかで人工的に出されているのだとイヤになるが、ビール酵母の作用だとすればかなりセンスがいいではないか!結構ビックリ。

ちなみにこのカフェ、従業員の女性軍がかな~りキュート揃いであった。今度また行こうっと。

さて講演会場の松山市民会館は、「2000人のキャパシティがほぼ満杯ですよ~ こんなの、市民会館始まっていらいですわ!」ということであった。

舞台の袖で二人の対談を訊きながら、凄いことに気付いてしまった。僕は堀江君のお仕事モードの話を訊くのは初めてだ!話し上手でなかなかやるでないの。メディアや聴衆が「堀江モンにこんなこと言って欲しい」という内容を把握していて、そこになおかつ新鮮なネタと文脈を付加している。しかも、テレビの所業で悪役に切り取られたイメージを払拭するような、かなり聴衆を味方に引き込むしゃべりである。お見事お見事。

それにも増して二宮清純さんという異才の人を初めて間近で観た。切れ味、半端ではない。実は20年くらい前に、毎週読んでいたプロレス雑誌・週刊ゴングにコラムを書いているのを読んで「この人何もの?」と思っていたのだが、まさかそのご本人がいらっしゃるとは。感動である!

さて松山市民会館始まって以来のフィーバーが終わり、地元の名旅館「ふなや」に移動。荷物だけ置いてすぐに「道後ぎやまんの庭」に併設された「ぎやまんカフェ」にてお茶っつうかじゃこ天を食べに行く。

道後温泉の町中を堀江君が歩く。カメラも着いてくるからイヤでも目立ってしまうのであった。

■ぎやまんカフェ

いや実はこのカフェが実に素晴らしかった!水の流れの横にデッキテラスのある、今風小綺麗つまらないカフェかと思ったら、かなりフードメニューが充実している!

「ここはけっこう地産池消を意識していて、地元の農家さんから野菜を買ったりしているらしいですよ」

というだけあって、僕も非常に楽しめる内容だったのだ。

野菜の盛り合わせは、ほぼ愛媛県内の農家さんから直接買う野菜で構成されていた。実に美味しい。

とくにこのなんとか蕪(カブ)が実に秀逸。甘く雑味のない透き通った味だった。

そしてここでもじゃこ天オーダー。

この店のじゃこ天、カリカリのしらすを上に載せた、ダブルジャコという感じのものだ。カリッとしたしらすの食感とじゃこ天の香りが相まって非常に乙なものだった。
昼飯食べて時間経ってないんだけど、フードが旨そうなのでどんどん食べてしまう。

このゴボウの揚げたのが非常に旨かった!また食いたい。

伊予地鶏の黒七味焼き、伊予地鶏は大したこと無いけど、料理は旨かった。

このビビンパみたいなのも野菜がタップリ入っていて旨い。

「山本さん、よく食べるねぇ~」

と、この辺から二宮さんが僕を観る目つきが変わってくる(笑)

この旅で二宮さんは僕のことを「とにかく食うヤツ」と認知したに違いない。まあ確かに今回はよく食べた!

さて旅館に戻り、道後温泉名物の足湯につかりにいく。

足湯の広場はもう堀江フィーバーである。

ちょっと貴重な足湯ショット。左から堀江君、僕、二宮さんである。

さて次は二宮さんの講演会である。そこに堀江君を招いての対談懇親会という感じであった。

びっくりしたのだが、愛媛県での二宮さんの知名度は無茶苦茶高い!愛媛出身の有名人のなかでもインテリだしスポーツだしカッコイイので、当然と言えば当然だが、各界のお歴々が二宮さんの後援会に名を連ねているようである。

この懇親会でホテルの中華料理とか寿司とかでて、大したこと無い料理なんだけどまたバクバク食べてしまった。

「あー 山本さん、そんなのでお腹一杯にしちゃダメだよ、これから三崎の旨い魚たべにいこうよ!」

という二宮さんの号令で、またもや移動!三崎というのは愛媛県の南側、南予の漁港である!その三崎から直送の魚が食べられる店があるのだ!

■三崎漁師物語り

この店の刺身が凄かった!

関サバや関アジとほぼ同じ漁場で揚げられる岬(ハナ)サバや岬(ハナ)アジを、「なんじゃこりゃぁああ」と叫びそうになる厚切りで供するのである。
これは太刀魚の刺身。ものすごく甘くて旨い!

岬アジ。分厚い切り身を観てくれ!

そして岬サバ。これもすさまじい厚切りである。刺身というよりぶつ切りだな。


そしてこれも名物の伊勢エビ。トロントロンの身肉が旨い!

海老の味噌も濃厚なウニみたいな味で旨い!

ホテルの料理のつまらない寿司を13貫たべちゃったんだけど、それでも寿司はどんどん腹に入ってしまう!

そして〆は鯛茶漬けである。

胡麻をまぶした鯛の身に土瓶にはいった出汁を注ぐ鯛茶漬け、まずかろうはずがない。旨い!

この他、岬アジやキンメの干物なども食い漁ったが、15人くらいのテーブルの中で、二宮さん、堀江君、僕のテーブルだけが凄まじい勢いで目の前の皿を消費していた!

みよ、この手の伸ばし具合!

「いやー喰った食った、、、」

「食い過ぎだよ、山本さん!」

もうこれ以上ははいらん! 実はこの旅のメインイベントは明日である。そう、じゃこ天をめぐる冒険の本番が待っているのである、、、


2005年06月10日

愛媛巡礼 じゃこ天を巡る冒険 with 二宮清純さんと堀江君(2日目その1)

松山、道後温泉で最も格式の高い温泉旅館「ふなや」で目覚める。結局、今回のメンバ3人とも自慢の温泉には浸からることがなかった!僕だけしっかり朝飯を食べて集合。

「今日は結構回りますよ!なので、大型バスで移動です!」

うおおおお本当に大型バスである。二宮さん、堀江君と共に乗り込み、本日のスケジュールを観る。

■2日目
④味噌・醤油の梶田商店(大洲)

⑤じゃこ天・おがた蒲鉾(宇和)

⑥ゆず商品・高田商店(広見)

⑦じゃこ天・かどや(宇和島)

⑧じゃこ天・島原かまぼこ

⑨じゃこ天・田中蒲鉾

⑩以降、現地対応

「最初は味噌と醤油ね。チョイっと舐めればいいんだな」

なーんて話していたのだが、全く甘かった!松山から小一時間、大洲(おおず)の河原に駐車し、古い町並みに入る。

最初の店、梶田商店の暖簾が見えてくる。若旦那と大旦那が半纏を身にまとい出迎えてくれた。

「こんな遠いところまでよくいらっしゃいました!」

この梶田商店のメインは言うまでもなく醤油である。四国の醤油は若干甘め濃い口が多いのだが、果たしてこの店のはどうだろう。二宮さん、堀江君とともに醤油蔵を見せて頂く。

この四角く区切られたコンクリの部屋一杯にドロドロに満たされているのが、醤油のもろみである。上の方は醗酵しぶくぶくと泡を立てている。

「うちは、通常の脱脂大豆での醤油だけではなく、丸大豆の製品や、もっと手をかけた再仕込み醤油というのも作っています。あとでごゆっくり味わって頂きますよ!」

そう、醤油や味噌を仕込む際には、コストの面から油を絞った後の脱脂大豆粕が使われていることが多い。丸大豆で仕込んだ方が旨いに決まってるのだが、価格差が1.5~2倍になるので消費者はどうしても安い方を選びがちだ。

でもね、醤油っていつも使うものですよ。基本中の基本調味料。それの質がアップすれば、なんだって美味しくいただける。500円の普及価格帯の醤油と、1000円の醤油を比べても、日々使って1ヶ月で使い切った場合、日々の価格で割って考えて欲しい。20円30円の差だろう。それをケチったところで微々たるモノだ。ということで僕は味噌・醤油はお金に糸目をつけないことにしている。

で、ここの醤油だが、丸大豆もあるが再仕込み醤油があるという。これは、できあがった醤油を、新しく仕込む醤油のもろみに半分程度足して再度熟成をかけるというものだ。醤油がどんどん濃縮されていくわけですな。当然、旨味アミノ酸含有量は比べモノにならない。

「な、舐めたい、、、」

「ぜひぜひ、沢山味わって下さい!刺身を用意してますから!」

おおおおおおおおおおおおおお
なんと刺身!

そうだよな醤油だけなめたって個性がわかるわけないもんな!瀬戸内の新鮮なイサキとアジの刺身を、この梶田商店自慢の丸大豆醤油と再仕込み醤油「巳登勢(みとせ)」でいただく。

丸大豆醤油にイサキをちょいと浸して口に運ぶ。甘めのアタリを想像していたが、予想を大きく裏切り、実にシャープな切れ味の醤油の香りが立ち上ってきた!

「うぉっ 旨いじゃないか!これ、甘草とかはつかってない感じですね。」

大旦那が静かに
「うちは余分なものは入れません」
と仰る。うん、そう言う味である。ただし丸大豆は切れ味があるが、逆にコクの深さがもう少し欲しい。そこでとなりにある再仕込み醤油「巳登勢」を味わってみる。

イサキの淡泊な身に醤油を流すように漬け、舌にのせる。瞬間、見事な深いコクと醗酵香が舌と鼻に抜けた!再仕込み醤油のまろやかで拡がる味わいが、淡泊なイサキの身の甘さを最大限に引き出している!

「ぬおおおおおおおおおおおおお こいつぁ 素晴らしい醤油じゃないですか!」

いやビックリである。正直、舐めていた。醤油なめてバスに乗ってじゃこ天だ、と思っていたんだが、初っぱなからかなりハイグレードな攻撃である!

「実はうちでは、この辺に自生していたモチ麦の製品開発をしていまして、、、モチ麦を麺にしたのがこれです。」

なんとモチ麦のうどんである。
モチ麦とは、大麦に由来する品種で、名の通りモチモチとした食感の品種だ。βグルカンという食物繊維が豊富に含まれているので、昨今では機能性が見直されている。けど、そんな機能性より何より旨いかどうか、である!と思いながら啜った。瞬間、なんとも強いもちっとした弾力が歯に圧力をかけてきた!しかも小麦より風味が豊かで、蕎麦とも違うが小麦とも違う、独特の香りと味がするのだ!

観よ、このテクスチャー!うどんって感じじゃないね。

「いやぁー旨いなぁ!」

と、どんどんこのモチ麦うどんをすすり込んでしまった!あとでこれが尾を引くのだが、、、

「山本さん、これも舐めてみて下さい!」

と出てきたのが、モチ麦味噌である。す、すげえ旨そうなんだよねぇ、、、

結果的に実はこのモチ麦味噌が一番僕の気に入った!モロモロとしたこの外観通り、モチ麦がもろみ状態の一番セクシーな香りのする醗酵加減で、塩加減はそれほど強くないため、ご飯にドンとのせて食べることが出来る!

「ごはんにはもろみもありますからこちらを、、、」

といわれてもろみ製品をいただいてみたが、こっちのモチ麦味噌の方が旨い!これ、実に最高である!
愛媛の味噌は、麦の含有量が他地方より高い。麦は強く糖化するので、甘めで旨味の濃い味噌になる。そして独特の麦の風味が漂うのだが、これがマジで僕のスイートスポットを突いた!思わず、出してもらったモチ麦ご飯を3杯も食べてしまったのであった。

「いやぁ~ 醤油と味噌をなめるだけかと思ったら全然違ったなぁ、誤算だったよ」

二宮さん、堀江君と話ながらバスに乗り込む頃には、もうすでに腹が4割方満たされている状態になってしまったのであった。

さて
高速に乗って一路宇和までひとっ走りである。お次は、嬉しいことに僕のblog本にも登場している「おがた蒲鉾」にて、揚げたてのじゃこ天を食べさせてもらうのである!

■おがた蒲鉾
愛媛県西予市宇和町大江412-1
0894-62-5880

この店は本には書いたけど、このblogの記事にはなっていない。まあ、詳細は本を読んでください(笑)
このおがた蒲鉾は、元々八幡浜(やわたはま)という地域にあったのが、宇和町に移ってきたのである。従って八幡浜の味と言って良いのだろうと思う。

前にも書いたと思うが、じゃこ天は地域によって味が違う。これがヘタをすると地域間紛争になるくらいの好みの違いがあって、南予の宇和島の人たちと八幡浜の人たちは「うちのがホンモノじゃ」と譲らないというくらいのこだわりを持っているのである。僕が生まれ落ちた今治の蒲鉾やさんのじゃこ天はさらに全く違って、南予のじゃこ天よりも色が白っぽい。これは、宇和海でしか原料魚のハランボ(ホタルジャコ)が獲れないからだろう。このように土地、素材、造り方などでまったく味が変わるのがじゃこ天なのだ。こんなにも多様な世界があるなんて、素晴らしいではないか!

さてこのおがた蒲鉾のじゃこ天は、八幡浜派という感じなんだろうが、非常にバランスのよい、誰が食べても美味しいと言うだろう味だ。

さっそく出てきた揚げたてじゃこ天にかぶりつく。

「おおっ 揚げたては本当に旨い!」

と堀江君がビックリしている。二宮さんと僕はニマーっと笑う。そう、揚げたてのじゃこ天は、旨いもの世界ランキングでも上位に入ること間違いないんである。あ、でも静岡県の「黒はんぺん」のフライにソースをかけたヤツも、相当上位に入るけどね。

ブログ本の取材でお世話になった河野さんが「どうぞ工場内を観ていってください」と言って下さるので、3人で中に潜入。


これがじゃこ天の原料、「ハランボ」である。学名はホタルジャコ。宇和海でしか水揚げされない希少な魚である。

このハランボの頭などを落として粗くすり身にされた状態で、最後の練りと揚げがあるのである。灰色で決して見た目は旨そうでないが、これが薫り高く味わいの濃い絶品に仕上がるのだから、世の中面白い。

さてじゃこ天の横では蒲鉾(かまぼこ)が作られている。蒲鉾の原材料はエソという魚だ。これに塩分と少量のつなぎすり身にした物を板にのせて蒸したりボイルしたり揚げたりという形で蒲鉾になっていくわけだ。

このすり身を薄い油揚げに塗り、それを巻いて蒸した物が、揚巻だ。

これがまた旨い!仕上がりはこんな感じである。

こういうのを食べつけていると、なんだかクスリ臭い人工的な蒲鉾は食えない!

あと、旨かったのがちくわだ!

焼きたてのちくわは本当に旨い!蒲鉾にするのもちくわにするのも実は同じすり身だ。なのにこんなに味わいが違うなんて、面白いではないか!

「いやぁ ご馳走様でした!」

しかしじゃこ天も蒲鉾も食いまくって、だんだん腹が重くなってきた。この先大丈夫なんだろうかという不安をはらみつつ、巨大バスに乗るのであった、、、

2005年06月11日

愛媛巡礼 じゃこ天を巡る冒険 with 二宮清純さんと堀江君 (二日目 その2)

なんだか愛媛出身者からのコメントが多く、とても嬉しいです。僕は今治で生まれてすぐに埼玉に移ったので、「育った」わけではないのだけど、埼玉でもオフクロの愛媛の味で暮らしてきたので、魚や蒲鉾は愛媛ラブなのであります。ま、そんな半端な愛媛人なので、南予の地名など間違いが多くてゴメンナサイ。メール等でのご指摘ありがとうございます。

そう、南予は、じゃこ天に関しては特に難しい土地柄である。なんつっても宇和島の人は「じゃこ天って宇和島のものだよ」といい、八幡浜の人は「じゃこ天は八幡浜のが一番美味しい」と譲らない。僕のオフクロの郷里の今治は東予なのでその辺の微妙な関係はぜーんぜんわからないのであった。

さて二日目の昼飯の時間にさしかかる。ていうか、僕は朝ご飯を食べ(おひつのご飯を全部食べた)、梶田商店で刺身とモチ麦ご飯を3杯とモチ麦うどんを1人前と芋炊きを食べ、おがた蒲鉾でじゃこ天と蒲鉾とちくわを食べるという、すでに食い続けの状態である。

「冷たいドリンクで一息入れましょうか!」

と、二宮清純さんの会社であるスポーツコミュニケーションのライターであり愛媛出身者なので今回同行サポートして下さっている石田さんが仰る。スポーツコミュニケーション社はライター軍団の集まりで、とにかくスポーツ関連の記事を日々マシンガン的に書きまくっているらしい。

■スポーツコミュニケーション
http://www.ninomiyasports.com/xoops/modules/news/

ちなみにこの記事が石田さんが書いたものである

石田さんも二宮さんも愛媛出身者だけに、愛媛のスポーツに関するトピックが濃い!野球やサッカーなどの球技が苦手な僕には余りよく分からない世界ではあるのだが、実に濃いドラマが展開されているではないか。ぜひ愛媛の「今」をお読み頂きたい!

■ゆずの里(高田商店)
愛媛県北宇和郡鬼北町近永1022
090-7572-3199

この鬼北町は、広見町・日吉村という二つの村が合併してできた町で、南予と高知県を結ぶ堺にある。高知と言えばゆず関連の商品が有名だが、この鬼北も昔から柚子が多く収穫されるのである。

キンキンに冷えた柚子ドリンクをいただく。このお店はそんなに歴史が古くはないらしいが、醤油蔵である。地域の人たちに直接販売するだけで、「顔が見えないお客さまには販売できない」と、他の販売ルートを持っていないという。柚子ドリンクは堀江君が「某航空会社の機内で出るやつより全然柚子の風味が濃くて旨い!」と絶賛していた。たしかに旨い。腹に溜まりすぎの僕にも清涼剤になってくれた。

「さあ、それじゃあご飯を食べに行きましょう!」

うおおおおおおおお
もう昼ご飯である。昼はとうとう宇和島入りして、鯛飯を食べる。

■かどや
愛媛県宇和島市錦町8-1
0895-22-1543

さて

みなさん鯛飯ってどういう料理だと思いますか?よくある鯛飯は、鯛の身を土鍋などでご飯と一緒に炊き込み、身をほぐして混ぜ込んで食べるものだろう。実は宇和島の鯛飯はそうではない。

甘辛い醤油ダレに鯛の切り身を入れ、玉子の黄身を入れて溶き、

そしてご飯にかけて食べるというものなのだ!

つまり鯛かけご飯なのだ。甘めの醤油ダレと鯛と、玉子の黄身の油分がマッチして実に旨い。お腹一杯でも掻込めてしまう。

「山本さん、もう一杯、茶碗じゃなくておひつにかけて食べてみて!」

と、愛媛側で企画を進めて下さっていた星企画の方々が、こともあろうにもう一つ一合くらいのご飯のつまったおひつを回してくる。しょうがないのでおひつ2杯分食べた。

「ぐあー もうお腹一杯ですよぉ、、、」

「次は鯛そうめんですよ!」

ぐおおおおおお
そうなのだ、実は鯛飯もいいんだけど、無茶苦茶立派な鯛そうめんが鎮座ましましているのだ。

宇和島の鯛そうめんは実に贅沢。尾頭付きの鯛を甘辛く煮揚げて、その煮汁でそうめん汁を作るのだ。

この日の鯛は、「地元でもこんなでかいのは10人以上の座敷じゃないと絶対に出てこない」という立派なものだった!

この鯛のみをほぐし、一人分の椀にそうめんと具を盛り込んで、甘辛い鯛の煮汁ベースのそうめん汁をかけたのがこれだ!

なんという端整な佇まい!美しいではないか!


この鯛そうめん、麺に絡む鯛の煮汁ベースのそうめん汁が実にコクがあって旨い。やや甘めの汁が、うどんよりはくせのあるそうめんに絡んで絶妙な味になるのだ!

鯛飯も旨かったが、僕はこちらのそうめんの方を有り難く頂いてしまった。お代わりを所望し、結局おひつご飯2つ分と鯛そうめん2杯食ってしまった。

んー
腹一杯である!

「さあ、では南予のじゃこ天を、宇和島派と八幡浜派の二種を食べに行きましょう!」

ま、まじ?俺はまだ食うの???
限界ギリギリの腹を抱えてバスに乗り込むのであった、、、

2005年06月13日

愛媛巡礼 じゃこ天を巡る冒険 with 二宮清純さんと堀江君 (二日目 その3)

もう腹一杯なんだけど、、、しかしこの旅の目的はとにかくじゃこ天である。しかもじゃこ天のもう一つ本場、宇和島に入っているのだ。

「なにが『もう一つの本場』だ!じゃこ天は宇和島の食べ物なの!」

という人も居るだろう。まあまあ、とにかくここから2店、宇和島じゃこ天のパラダイス巡りである!まずはこれも大手の島原かまぼこ店へ。パッケージはよく知っているのに、その製造元に来たなんてとても不思議な感じだ。

島原かまぼこ
愛媛県宇和島市祝森甲4668
0895-27-2345


中にはいると、充実の品揃えのケースの前で、若旦那であろう島原豊行さんが迎えて下さる。速攻で工場見学。二宮さんも堀江君もおばちゃん帽子をかぶる。ていうか僕もかぶっています(笑)

さて「大手」とか「工場」とか書いているけど、商品販売ケースの裏のドアを開けるとすぐそこが工場になっているのだ。そして、15人くらいの人たちが一斉にハランボを捌いている凄まじい現場をみた!

みなプロである!黙々と小さなハランボに包丁を入れ、頭と内臓を一気にそぎ取っている。

「頭はとってしまうんですね?」by堀江君

「ええ、堅過ぎるので食感が悪くなってしまうんです。」by島原さん

この人たちの黙然と包丁を操りハランボを捌く様が実に静かで地味で堅実で、素晴らしい。「とてもじゃないが機械化できません」というのはたしかにそうだろう。大型の魚なら機械化しようもあるが、ハランボは手のひらに収まってしまう小ささなのだ。

「うちではハランボのじゃこ天以外にアジをすり身にしたアジ天もありますが、材料費はダントツにハランボの方が高いんですよ。ハランボは一ケースで5000円以上しますからね、、、」

なんとビックリ!以前は獲りたくなくても獲れていたハランボが、かなり漁獲量が減っているのである。減少の理由はやはり生態系バランスのゆがみらしいのだが、いずれハランボのじゃこ天も希少価値のある高級食材になってしまうのであろうか。非常に不安になるのであった。宇和海と瀬戸内海も、温暖化の影響などで生態系に変化が出ているという。研究者も苦労していることだろう。関係各位のご健闘を祈りたい。

さて捌かれたハランボはすり身にされ、揚げられる。捌き場のすぐ横に、揚げ師が待機して油を温めていた!

じゃこ天の造り方はどこでも同じだ。すり身を型にはめ、油で揚げていくのだ。

この型にすり身をはめる時のちょっとした動作が気になった。平らに均すのではなく、微妙に指で押して凸凹をつけるのである。

アレは何でですか?と訊くと、島原さんは我が意を得たりとニヤッとしながら教えてくれる。

「宇和島のじゃこ天は手で押すことによって、火の通り加減が箇所によって違うものになるんです。一枚のじゃこ天に、火の強く通った部分と通りの柔らかい部分ができる。それが旨いんですわ!」

なるほど!そういうことなのか!

みていると、一枚一枚に微妙な指模様がついているのである、すごい!

「さあさあ揚げたてを食べて下さい!」


熱々のじゃこ天が回される。確かに適度な凸凹があるこのじゃこ天のテクスチャをみよ!島原のじゃこ天は今回の中で一番ダークな色のじゃこ天であった。

「うちのは、ハランボ100%に加えて、つなぎのでん粉を少ししか使ってませんから。余所のじゃこ天とは違います」

と、他地のじゃこ天とは違うとビシッと感じさせてくれるプレゼンテーションである。大根おろしをのせてかぶりつくと、やはり一番濃い味である。食感も硬めで、これは本当にハランボ100%に混ぜもの少なめのハードタイプという感じである。

「アジ天も食べて下さい!」

この写真の下にあるほうがアジ天である。

これもまた美味しかったが、アジの方が味が薄い。ハランボの濃厚さには味もかなわないのか、とちょっとビックリなのであった。

じゃこ天3枚にアジ天1枚。うーん 腹一杯だけど旨かった!

「ぜひ、このじゃこ天を日本全国に広めて下さい!」

という島原さんの熱はダイレクトに伝わった!

さてバスに乗ると「あと10分くらいで最後のじゃこ天屋さんに着きまーす」という。とうとう最後かぁ、、、
到着したのは、商店街の一角にある田中蒲鉾である。

田中蒲鉾(じゃこ天)
住所:愛媛県宇和島市中央町1丁目6番15号
TEL:0895-24-0215

さてこの店の社長の田中さんは、愛媛のかまぼこ界では有名なおっちゃんらしい。もうぼくは食い過ぎで苦しかったので、お話しとかは堀江君と二宮さんにおまかせである。

田中さんはかまぼこ原料には「エソ」しか使わないと言う。非常に大きな、型のいいエソを見せてくれた。

「これを安定入手するのが大変なんですよ」最近、入手できないアイテムが多すぎる。農作物とちがって海産物は海の中を覗くことが出来ないので、獲れた獲れないのアップダウンが激しく大変だろうな、と思う。

そんな田中蒲鉾のじゃこ天は、他のどの店とも違うオリジナルなものだった!もちろんハランボ100%のじゃこ天は、実にフンワリ、あっさりとした味なのである。

他の店では外側が香ばしそうな茶色になるまで揚げているが、田中のじゃこ天は揚げ色が着いたか着かないかのギリギリのラインで引き上げてしまう。だから水分も含まれており柔らかな食感なのだ。身肉はプリプリとフレッシュな感じが残っており、絶妙だ。

しかも、味付けが非常に薄口で優しい。

「うちのは本当にジャコの味をそのまんま楽しんでもらう味付けなんですわ。調味料はギリギリにしか入れてません」

そう誇らしげにいう揚げ師のおっちゃんが、大量に揚げたてのじゃこ天を下さった。

「いやぁ~ 食った食った 食いましたねぇ~」

こうして僕らのじゃこ天を巡る冒険の旅路は終わった。松山空港に戻るバスの中ではみな食べ疲れてぐったりしていた。もちろん僕も臨界点である(笑)

しかしそれにしても、僕にとっても今まで以上に愛媛を深く知る旅となったのであった。なんと言っても、どこで食べるじゃこ天も味が違う。同じ味なんて一つもない!

宇和島派と八幡浜派の違い、というのも感じてみたけど、僕には正直、どちらも美味しい!だって全然味が違うのだもの。だいたい、どこの蒲鉾店の人も一様にこう言うのだ。

「揚げたてのじゃこ天は、どこで食べても旨いですよ」

うん、それが全てだ。とにかく県外の人にじゃこ天の文化を味わって頂きたい!で、これが重要なんだけど、揚げたてのじゃこ天を食べてもらうには、愛媛に行くしかない!ぜひ愛媛を訪れて欲しい。

このblogにはまだアップしていないけど、このじゃこ天を食べるルート上には、日向飯(ひゅうがめし)という最高のぶっかけご飯がある!これは僕の本「出張食い倒れガイド」のメインコンテンツの一つなんだけど、とにかく愛媛はみかんだけではない、素晴らしい旨いもの満載の土地なのである。

僕は高らかに言いたい。
ビバ、じゃこ天! ビバ、愛媛!

今年はぜひ、愛媛を巡って頂きたい!

2005年06月18日

現在京都・大阪出張中

これからインデアンカレーを食べに梅田に行く予定。
月曜日夜まで関西にいます。大阪近辺に3泊4日は初めてだなぁ。
更新、できればやっておきます。

関西の方、インデアン、ピッコロ、船場カリー、トクマサ以外に美味しいカレーの店があれば教えて下さいね。

2005年06月20日

絶品ヤンニョムで食べる名物焼肉店が京都・一乗寺にある! 焼肉 「いちなん」で嬉しい夜を過ごした!

 どうにも気になる人、というのがいるものだ。孫さんはそんな人だった。今年の初めに企画された静岡でのオフ会に参加を申し込んできた人の中に「京都から参加したいです!」という人が居たのだ。いやさすがに京都からってのはなぁ、、、と思っていたのだが、、、しかし残念なことにオフ会は、主催者であり駿河若シャモ振興会の会長であった鈴木恵美子さんの急逝により、延期となる。
 そしてその後、この京都からの申込者である孫恵文さんから、「ぜひ味見をしていただきたい」という連絡と共に、自家製キムチとヤンニョム(韓国の辛い練り味噌)、ベーコンと焼き菓子が送られてきた。

「京都で小さな焼き肉屋をやっています。」

とあったのでなるほどと思ったのだ。送られてきたキムチは、やや甘めのヤンニョムで漬けられている感じ。これはおそらく焼き肉に合わせると最高のパフォーマンスを発揮する味にチューニングされているのだろう。旨かった。

そして一緒に入っていた、真空パックされたベーコン塊がまた秀逸だったのだ!この時写真を撮っていないのが悔やまれる。「生肉じゃないの?」と思うほどに生々しい生ベーコン。「冷燻だな」と少し薄めに切って口に運ぶと、まるで生ハムのごときネットリとした舌触りに、薄目の絶妙な塩加減だ。

「う、旨いゾこれ!」

とベーコンエッグ丼にして食べ、パスタにのせて食べ、と瞬く間になくなってしまった。

「こんな本格的な冷燻ができる設備を持った焼き肉屋なのか、、、」

冷燻とは、熱をかけないでじっくり燻す燻製方法だ。僕の過去ログで燻製(ハム・ベーコン)のエントリが多々あるが、これらは全て温燻といって、煙で燻す時に同時に熱をかけて肉に火を通す方法だ。対して冷燻は、熱源は肉に当てず、煙だけを煙突などで誘導して燻煙するので、このようなネットリした生肉味が残る。

「この人、タダモノではないな。少なくともすんごい食いしん坊だ。」

Webを検索してみると、あったあった、「いちなん燻製工房」。

■いちなん燻製工房
http://www.ichinan.com/shopping-online.html

燻製製品や蒸し豚など、旨そうなのが買えるではないか。ということで、ソーセージ、蒸し豚、ベーコン、カレーなどいくつか発注してみたのだ。

はっきりいって悶絶!全部無茶苦茶に旨かった!ベーコンの旨さはわかっていたが、繊細な味わいのウインナーが激烈に旨い。無二路からもらったクラテッロを食す会のパーティをした時にこのウインナーを焼いて出したのだが、「美味しい!」と瞬く間に15本くらいが消えていった。

そして絶品だったのが、蒸し豚である。

蒸し豚なんて自宅でも作れるんだけどな、でも切るだけでパーティに出せるから買ってしまおうという横着心で買ってみたのだが、一切れ食べてみて、自分の失礼千万な思い上がりを正すことになった。激ウマなんである。豚肉臭さが全くないのに、豚の旨味はきっちり残っている。そしてゼラチン質プリプリの皮が付いた蒸し豚なんである!これをスライスし、一緒に買ったチョジャン(唐辛子酢みそ)をつけて食べると、もう死にそうになるほど旨いのだ!

これでもう僕はいちなん燻製工房にどっぷりやられてしまった。こんなのを作る人の焼き肉の店が美味しくないわけがない。

「いずれ、京都に食べに行こう!」

そしてもう一つ。孫さんは、これらの肉製品を送ってくれる時に、「友人がお菓子を焼いているので」と同梱してくれた。

これもまたまさしく絶品なのである!

ガトーショコラがあるなぁ、と思ったら、デカイ栗が入っている。大ぶりに切って口に運ぶと、さっくり焼き上がった部分とチョコレートの生っぽさが残った部分のコントラストが見事である。そして、栗の直下にはチョコ塊が仕込んであり、カリッとした食感に突き当たって口が喜ぶのだ!

しばらくの間、ガトーは代々木上原のカストールにとどめを刺すと思っていたが、こういうやりかたもあるのだな、と感じ入ってしまった。

それ以外の焼き菓子も絶品。味の決まり方、焼き加減、整形の精緻さを観ても、どう考えてもプロか、10年以上、日常的に焼いてきた経験がないと到達しえないような味だったのだ。

しかしこのケーキ職人さんの名前やバックグラウンドを、なかなか孫さんは教えてくれようとしなかった。

「この方もやまけんファンなんですが、趣味で焼いているだけで販売はしない方針なんですよ、、、」

ますますつのる謎!一体どういう人なんだろうか、、、
何度か見事なお菓子を送って下さる中で、なんとその方が、先頃の僕ら夫婦の披露パーティ用にケーキを焼きたいと言って下さったという。是非お願いしたいと言うことでなんとか本名と連絡先を伺った。

その松下さんのフルーツケーキは、洋酒を一杯に染みこませたパウンドで、無茶苦茶風味豊かにして絶品なものだった。披露パーティで出したケーキはカストールのガトーショコラとこの松下さんのケーキの二種で、もちろんのこと超人気を博したのである。

時は満ちた。
このお二方に会いたい!

「京都に遊びに行こう!」

ということで今回、京都での夜が企画されたのである!
焼き肉「いちなん」と松下さんにお会いする旅である。そしてそれはやはり超食いしん坊の会になったのであった。

(続く)

2005年06月21日

絶品ヤンニョムで食べる名物焼肉店が京都・一乗寺ある! 焼肉 「いちなん」で嬉しい夜を過ごした!(後編)

「うちの店は南山というんですが、南山というのは全国に現在7店舗あります。僕の店は一乗寺にありますので、一乗寺の南山、略して「いちなん」です!」

京都の土地勘が全くないのでよくわからなかったのだが、一乗寺は京都駅から少し入ったところにある。河原町のホテルからタクシーでしばらく行った東大路通りのロードサイドに、目指す南山が発見されたのだ。


■「いちなん」 南山 一乗寺店
〒606-8114 京都市左京区一乗寺北大丸町51
電話番号 075-721-6937
営業時間 18:00-23:00
http://www.ichinan.com/index.html



Webページをみた印象とは違ってかなり(?)コッテリとした店構えだ!

表からバシバシと撮影していると、厨房内の孫さんがと目が合い「アハァー、恥ずかしいなぁ!」と笑いながら僕を出迎えてくれた。

「ようこそおいで下さいましたぁ!」


元気印の孫さん、人当たりの柔らかさは俳優のごときである。
入口脇に厨房カウンターがあり、テーブル席と座敷、そして二階席がある造りだ。

「二階席の上にも特等席があるんですよぉ!後でね、、、(ニヤリ)」

厨房に近いテーブル席に座り眺める。孫さんを含め3人がところ狭しと動き回っている。

メニューを観るとすべて良心的価格というか、学生が沢山入っているのをみても、大衆店価格である。

「やまけん、最初のビール何にする?ギネスでもいいし、ヨナヨナエールもあるよ!」

おっ じゃあまずはヨナヨナにしておこうかな!と、すたたたとアテがテーブルに並ぶ。

「まあまずはアテでビール飲んどいてね!肉とか焼いてくるからね!」

しっかり味の付いたキムチやナムルに加え、ズッキーニのナムルが出てきた。これがマジ旨。

熱を通ししっとりしたズッキーニがしんなり、シャックリとした歯触りだ。韓国産のズッキーニでないとこの味、このシャッキリ感がでないらしい。これ、おかわりしてしまいました。

それと旨かったのが、韓国風の塩辛。

「うちのお母ちゃんが、やまけんがくるっていったら『これだしな!』って作りに来よったんよ。」というその韓国風塩辛、よくこなれててビールのアテに最高であった!

さて そうこうしているうちに、京都大学農学部の若手助手ホープである大石登場。そう、しばらく前のエントリで賀茂茄子を送ってくれたのが大石である。

夜の予定がどうなるかわからなかったので事前には京都に行くと言ってなくて、今日になって「暇なら来てよ!」と連絡したのであった。

「いきなり呼ぶなよ~早めにいっといてくれよ~」

悪い悪い。でも来られてよかった!

「じゃあ、これ食べて下さいねぇ~ ハートですぅ!」

と孫さんが出してきたのが、牛の心臓ハツ、関西ではハートである。

ニンニク醤油で和えられたハツは、シャッキリトロリとした歯触りで鮮度の高さを間違いなく感じた!

この一発で内臓系の仕入れの素晴らしさを確認。続いてレバーがやってきた!


胡麻がまぶされたレバーを岩塩入りごま油に浸して食べると、このレバーがまた甘い!

色も赤身麗しく、綺麗な内臓だ。

「旨い!孫さんモツの仕入れ、いいですね!」

「うーん、やっぱりどこの業者さんから仕入れるかで決まっちゃいますからねぇ、うちがお願いしているところは、素晴らしいんですよぉ。だから僕は殆ど何もしれないんですけどねぇ(笑)」

さて お次は僕が取り寄せて感動した蒸し豚2品が出てきた!。

「手前のがアゴ肉、奥のが三枚肉です!」

皮付きの絶品蒸し豚は昨日紹介したばかりだ。そして割と堅いはずのアゴ肉が、ブリブリと歯を押し返す食感に柔らかく蒸し込まれている。

この蒸し豚の旨さを100%引き出すのが、韓国オフクロの味とも言える辛酢みそ「チョジャン」だ。

蒸し豚を食べる時にはいつも、韓国では豚の食べ方が洗練されているなぁと感嘆せざるを得ない。蒸した豚をタレに漬けて食べるだけで、なんて複雑玄妙な旨さを現出できるのだろうか。

まあとにかくこの「いちなん特製蒸し豚」は一度食べてみて欲しい。もう僕は自分の家で蒸し豚食べたい時は孫さんにお願いすることに決めた!

「はい~ やまけん、生ハム食べてねぇ!」

おお、出た!これは生ハムと言っているけど、冷燻された豚肉である。ベーコンの食感というより本当に生ハムに近いのである。

「うわっ 本当に生ハムみたい、、、ネットリしてる!」

と大石も喜んでいる!

冷燻と温燻の違いは一目瞭然である。どちらが美味しいということではないが、いずれ僕もぜひ冷燻にチャレンジしてみたいと思わせるネットリ感、風味であった!

「じゃあその生ベーコンとウインナーを焼いてみて下さいね!」

と出てきたのがこれだ!

このウインナーがまた旨いのだ、、、ウインナーは凄く塩梅が難しくて、過剰に味を付けるとしつこくなって旨くない。ギリギリ薄目の繊細な味加減が必要なんだが、いちなんのウインナーは絶妙なのである。

「ほい、豚焼いてきたよ!」

とカウンター内で焼かれた豚の肩ロース。

ゴロゴロとしたニンニクと一緒に食いまくったので、明日の吐息はもう想像したくないのである。


お次は豚三枚肉をサンチュに包み、特製のゴマだれを塗って巻いて食べる「サムギョプサル」である。


「鶏も焼けたよぉ」

焼き加減が重要なネタは厨房内で焼いてくれるのがこの店の特徴。カリッと最適加減に焼かれて出てくるのだ!

「はいぃ~ 今日はラムも焼いてみましたよぉ、火加減は保証しませんが、、、」

うおおおお 全然最高な火加減ですよ!の骨付きラムが出てきた!

ここは無二路か!というジューシーなラムである!

「学生向け焼き肉とは違うぞこれ、、、絶対に外観をもう少し変えた方がいいと思うけどなぁ、、、」と独りごちる僕であった。

「孫さん、モツ焼いて食べたいなぁ、モツ!」

「うーん やまけんゴメン!今日はあまり無くてね。関西ではホソっていう小腸くらいなんだけどいい??」

と言って出てきたホソがまた、とろける旨さなんである!

関東ではシロと言うけど、噛み切れないのが多い!ここのホソはトロッととろける感じで、しかも臭みが全くない端麗な味である!

「ぜーんぶ業者さんのおかげなんですよぉ。下処理が最高なんです。僕は本当に最低限の手間をかけるだけですよぉ」

と謙遜するがこの店、入店したらとにかくモツを大量発注するのが吉であろう。

さてこのいちなんのテーブルに乗っているステンレス缶がある。この中に満たされているのが、昨日のエントリにも少し書いた「ヤンニョム」である。

ヤンニョムは韓国の練り味噌というべきものだが、京都ではラーメン屋などにもこれが置いてあるらしい。しかし、このいちなんのヤンニョムは超特製なんである!

「実はですねぇ、、、やまけんに感謝しないといけないんです。まあどんな会のなんばんの粕漬けにヒントを得ましてね。もちろん僕、いの一番に買わせてもらって食べました!感動しましたよ、、、すごく複雑で美味しい!しかも、エゴマとクルミが入っているのに感動しました。で、うちで作っているヤンニョムにも使えないかと思ってね!クルミではなく韓国料理でよく使う松の実とエゴマを混ぜてみたんです!そしたら奥行きが深くなって本当に旨くなったんですよぉ!本当にいい食材を教えてもらって感謝です!」

おおおおおおおおおおお
まあどんな会のなんばん粕漬けがリスペクトされ、そして遠く離れた京都の地でこうやって美味しいヤンニョムに影響を与えている!素晴らしいことではないか!

このヤンニョム、うちに送られてきているのは、肉料理の際にかならず食卓に並んでいるほどの出現頻度である。どんな料理にも会う、万能調味料なんである!もし「いちなん燻製工房」で何か取り寄せてみようと思ったなら、絶対にこのヤンニョムを逃すべきではないゾ!

■いちなん燻製工房
http://www.ichinan.com/shopping-online.html

ここで嬉しいゲストが登場!絶品ケーキを焼いて下さった松下さんその人である!

本当に奥ゆかしい方で、最後の最後まで僕に名前すら教えていただけなかった。その方が披露パーティではフルーツケーキを焼いて下さり、来場して下さった。本当に嬉しかったのだ。

「松下さんのおかげでね、うちでノンアルコールドリンクで出してるアイスティーも美味しいのを教えてもらってね!」


というこのアイスティー、マジで絶品!「なんだこの薫りは、ピーチ?ローズ?何だかわからないけど複雑でフルーツ香がして旨いョ!」
アルコール大好きな人でもこのアイスティーは飲んだ方がいいゾ。脂が洗われて感覚をリセットできる!

松下さんも加わり、賑やかに鉄板が彩られていく。

カルビも脂を落とし、適度な部位にカットされているのに注目。

「僕は、脂を食べるような和牛の高いのは好かないんですよ。美味しいと思わない。赤身の旨さをきちんと味わえて、お客さんも安心して食べられる価格の牛肉を仕入れてます」

というのに僕も賛成。黒毛和牛の霜降り肉も旨いけど、サシが入れば入るほどいいという風潮には待ったをかけたい。実は僕のこのWebで焼き肉の話が入る時には必ず書いていることだけど、肉はサシより熟成が命だ!と思ってやまないのである。

「やまけん、イチボも食べてみて下さい」

と焼かれて出てきたイチボ肉も、リーズナブルで美味しい!

塊を焼いてレアで出てくるのを少し鉄板で温めて食べると、赤身のトロリとした旨さが立ってくるのだ。

〆はビビンパ。

「まだ食べるのぉ?」と言われながらガシガシ掻き混ぜていただく。この店のナムルは旨いので、ビビンパにすると最高に旨いだろう。ヤンニョムもタップリ放り込んで混ぜまくって、サンチュに包んでいただく。

この後、暖かいタレで和えた麺もいただき、満腹。お客さんも全員帰って片づけ進行中だ。

「そろそろ帰った方がいいかな、、、」と思ったら、孫さんがニヤッと笑って「第二部は上でやりましょう!」と。そう、この店の二階はライブハウスになっていて、そのまた上に登ると、気持ちのいい屋上なのである!

「ここはね、どんなに京都が暑くなっていても風がヒンヤリと吹いてて涼しいんですよ!大文字もばっちり見えますし、最高な場所なんです!」

おお、本当に居心地がいい!コーヒーが入り、静かに気持ちよくクールダウンするひとときがやってきた。


贅沢なことに、そのコーヒータイムのアテは松下さんのバナナケーキだ。しっとりとバナナタップリ、チョコレートも仕込まれたこのパウンドが最高に美味しいのだ!

なんで松下さんは絶品ケーキを売らないんですか?と訊くが、静かに微笑んで「そのつもりはないんですよ、、、」と言うばかりだ。夭逝されたご主人のことを想いながら焼いているというそのケーキや焼き菓子、絶品なだけに非常に惜しいのだが、いずれきっと他の人の口にも入るようになるだろうことを願って止まない。

「やまけん、これが僕の燻製器なんです!」

おお!これがあの数々の逸品を産み出す薫製機か!中に入っている煙突は、冷燻時には外に出て、室外でチップを燻して煙だけを誘因するようになっているのである。あー やっぱり屋上スペースとかあった方が燻製ってやりやすいよなぁ。ひたすらウラヤマシイ。でもまあ、燻製はプロに任せるか。

涼やかな一時を楽しみ、12時を回ったところでお開きにする。本当に気持ちのよい時間だった。

この屋上での会話で登った話題だが、いつか関西オフ会をやりたいとも思う。

「関西の美味しい店をもっと紹介しなきゃ!」

まったくである。「やまけんの全国出張食い倒れガイド」で関西編は、カレー三軒しか無かったしね。いずれやりましょう、、、

焼き肉「一乗寺 南山」は、ちょっとその前を通りかかっても気付かないような外観である。学生向けじゃないの!と思ってしまうだろうが、店主・孫さんのホスピタリティは最高である。ココでは書かない彼の波瀾万丈な半生と、南山という焼き肉レストランを巡る歴史は、彼の料理にいっそうの奥行きを与えていると思う。お金を無茶苦茶かけて、超高級な料理を食べに行くという感覚ではなく、工夫に工夫を重ね練り込まれた味、誠実な味を楽しみに行くのがいいだろう。予約する時に「食い倒れ日記をみて」と言えば、いろいろ用意してくれるだろう(と思う)。

今日も僕は、お土産に買わせてもらったまたあの蒸し豚とヤンニョムを食べるのである。ああ、夜が待ち遠しい、、、

2005年06月22日

アイラブ インデアンカレーと声高らかに謳おう 阪急三番街店 山田氏のルーかけ技に関する考察

孫さんの店でのたらふくの夜が明けると、相方は京都の友人宅へ行き、僕は一路大阪を目指した。

大阪、大阪、大阪。

僕にとって大阪とはインデアンカレーの街である!

河原町から阪急電鉄で梅田に着くと、すぐさま阪急三番街B2Fにエスカレータで降り、左斜め方向へと小走りながらインデアンカレー阪急三番街店へと向かう。

言うまでもないが、僕の著書「やまけんの出張食い倒れガイド」の中でインデアンカレーのページは超目玉コンテンツとして位置づけている。自分の本を自慢するつもりはないけど、ことインデアンのページ内容については、インデアンファンの方々には絶対に価値のあるものだと断言できる。おそらく今の時点で、僕の本以上にインデアンの社長さまが語っていただいている本は出ていないはずなのだ。

そしてその社長様のご発言中に「阪急三番街店は、特に出入りの多いお店ですね」という言葉があるくらいの繁盛店なのである!

昼の12時10分、この店が一番混み合う時間帯である。しかも土曜日。週末の土日は、平日にこられない家族連れなどが多く、凄まじい状態になるのだ。僕も列に並び本日の注文を考えている。

実は僕の定番はご飯とルー大盛り目玉ピクルス追加である。目玉とは玉子の黄身を二つ載せることだ。しかし本日は朝飯も抜き、昨晩の大飯もすでに胃袋の彼方に過ぎ去り、すこぶる快調である。ということで、入口食券担当の女性に初めてのオーダーを入れた!

「ご飯ダブルルーダブル目玉ピクルス追加!」

そう、ダブルとは二倍のことである!

「お客さま、ご飯とルーのダブルですと、レギュラー二杯分となりますが、よろしいでしょうか?」

「もちろんオッケーですよ!」と断言するとニッコリ笑って黄色プラカード2枚と、小さい紺色のプラカードを渡してくれた。ここで疑問が発生。

僕の本には、インデアンの全プラカードの色と大きさが、なんのメニューに対応しているかという表を掲載している。大阪につくまでの間、自分の本で確認していたのだが、おそらくルーダブルはピンク。ご飯ダブルは紺色の大。それに目玉ということで、玉子を表す茶色が二枚ついてピクルスの紺色小が来ると思っていたのだ。

しかし現実は違った!この謎は後で解かなければならないな、、、と0,001秒くらい思いながらカウンターを振り返る。ひっきりなしに出入りするお客さん向けにルーをかけながら、福永店長が僕をみてニヤっと笑う。

「あっヤマケンだ!」

と隣でご飯を盛りつけている山田氏に小さく言うと、カウンター内の店員さん全員が僕をみてニヤっと笑う。そういえばインデアン本社の広報をみている奥内さんによれば「全店の人間がヤマケンさんの本を読んでます」ということだったからなぁ。

しかし、超満員行列なので、余分に声をかけることはすまい。と思っていたらなんと、福永店長と山田氏の目の前の席が空いた!

「どうぞこちらへ!」

と福永店長が僕をスペシャルリングサイドへと迎え入れてくれた!

「本、拝読いたしましたよ。」

と小声で仰る。光栄の極みです。

この阪急三番街店でのラッシュ時定番の光景、副店長の山田氏がご飯をカッカッカッと盛り、福永店長がナチュラルなフォームでルーをかけるシーンが繰り返し展開される。

そういえば奥内さんいわく、

「福永店長は滅多に笑わないので有名なんですが、やまけんさんの本では笑ってますよね!実はインデアンの社員でもあの本で初めて笑顔をみたっていう人が多いんですよぉ!」

まじ?俺は結構福永さんの笑顔をみているゾ!ラッキーだなぁ、、、

さてルーとご飯ダブル目玉ピクルス追加はこんなんである!

わかりやすいようにレギュラーも載せてみると、こんな感じ。

当たり前の話だが、ダブルの場合はルーをレードルに二杯かけていた!なんという贅沢!うーむこれからはコレだな。

しかしなんだな、インデアンの社長様は「玉子は本当はかけるの好きじゃないのよ、ルー本来の味がわからなくなるから」と仰っているのだが、僕は玉子あったほうが好きなんだよなぁ、、、社長様、申し訳ございません。不肖のファンでございます。

さすがにダブルダブルは腹へのパンチが効く。店長以下全員に目礼をして店を出てJR大阪駅構内に居ると、インデアン本社の奥内さんから携帯に連絡がかかる。

「お着きになられましたか?お迎えにあがりますよ!」

そう、実はこの日、掲載の御礼も兼ねて奥内さんと飲みましょうということになっているのである!結果的には僕からの御礼どころか先方から御礼されてしまって恐縮千万だったのだが、、、

リーガロイヤルの滝の流れるティールームで奥内さんと色んなことを話し込む。その内容はここでは書けないので申し訳ないのだが、とにかく今秋オープンの東京店については、インデアンは気合い入りまくりである。

「もう今から綿密な計画で動いてます。期待していて下さいよ!無論、味などは全部同じです!」

そうだよな、そうでなくてはいけない!

それとさっきのルーダブルご飯ダブルのプラカードの謎が、いとも簡単に解けた!

「黄色プラカードはカレーのレギュラー・玉子入りですね。つまり、ルーダブルご飯ダブルと目玉というオーダーは、レギュラー×2として受けとるということです。」

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
なるほどおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

言葉もない。そう言うことであったか。分量が多ければカードも多いという思いこみがあったが、真実は遥かにシンプルだったのである!

さてこの夜は奥内さんが強固に推薦する「野菜鍋」の店にいったのだが、その店は本当に衝撃の店というか笑激の店というか、、、凄まじい体験だったので別のエントリで書きたい。素晴らしく楽しい夜を過ごさせていただいた。

で、翌朝日曜日。大阪サンルートホテルから梅田まで歩いて10分。その途中の立ち食い「阪急そば」を通るとどうしても醤油味のダシが飲みたくなり、肉うどんを注文してしまう。アホだなぁ俺は、、、

さっさと食い終わって、ヨドバシの地下から阪急三番街へと急ぐ!10時10分、インデアンの開店直後である!

「いらっしゃいませ!」

おおおおおおおおおおおおおおおおお
店内には誰も客がいない!
やったぜ一番乗りか!

「ゆっくり食べられるなぁ、、、」

といいながら席に着く。まだ客が入っていないからか、ご飯盛りとルーかけは山田氏が独りで行っている。思えばこの山田氏のルーかけ美技「シャコッ」から全てが始まったんだョなぁ、、、としばし感慨にふける。この沈黙の名手・山田氏は本当に寡黙で、満足に声を聞いたこともないのだが、彼の人生はルーをかける際の「シャコッ」に凝縮されているので、それでよいのだ!

しかしながら本日のオーダーはちょっと違うのダ。久しぶりにまずはハヤシライスで攻めてみたい。

「今日はね、ハヤシ!」

「はい!」

と、厨房でハヤシが作られる。そう、ハヤシライスだけはお客さんからみえないバックヤードで盛りつけられて出てくる。このバックヤードで何が行われているかという謎が、最近の僕の最大のテーマなのである。

さて本日は瞬間的にハヤシが出てきた!

そう、みてお分かりの通り、インデアンのハヤシは独特である。ドミグラスソースでは全く無い!

ケチャップなのかトマトソースなのか、照り照りと輝くハヤシルーに大ぶりにザクザクと割られたタマネギ、ニンジンが絡む。グリーンピースとオレンジ色のコントラストが絶妙である。

口に運ぶと、ほどよく酸味が抑えられたルーの甘さと、タマネギのシャクッという歯触りがマッチしていて実に旨い!これはこれでアリのオリジナルハヤシライスなのである。

さっさと食べ終え、ご馳走さん。

「ありがとうございました!」

「いや、まだ終わりじゃないよ。」

と言ってカウンターへ。そう、終わるわけがないじゃないか!

「レギュラー!」

レジの女の子もニッコリ笑って「レギュラー一つです!」とカウンター内に声をかける。

ああしかしルーかけは目前で観たい!

「ちょっとルーかけるの待ってね!」と叫んで急いで席に戻る。さすが山田氏、数秒間でご飯を盛り終えている!

そして満を持して、マイ・フェバリット・ルーかけ職人・山田氏の美技である。連続画像でご覧いただきたい!

シャコッ!

美しい!というか、余程目をこらしていないと、手首の返しポイントが目にとまらない美技である。そしてこの連続写真の、レードルをもつ右腕の肘から先の角度に注目されたい。連続写真でそれほど角度が変わっていないのである!しかし下の写真では手首のスナップがクンッと返っている。

注目すべきは肘から先の部分以外にもある。皿を持つ左手がダイナミックに動くのである!そう、ルーをかける右手と、その受けをする左手がダイナミックに動くことが重要なのだ。なおかつ、下の画像では上体がわずかに後ろに反らされているのがわかるだろう。このように可能な限り軸をブレさせないように、力学的に無駄のないフォームがある上で手首の「シャコッ」返しがあるのである!

さあ ご馳走タイムだ! いつもうっかりピクルスをドドンと載せちゃってからカメラを構えるのを思い出すんだが、今回もそうだ、、、

しかし今回、インデアンラヴァーへの天からの贈り物があった!それはである!

今日の肉は、僕が通ってきた中で最大の肉塊である!うわーおヤッタぁ!

ホゴホゴと煮込まれたこの肉の大きさは、インデアンに通う者すべてが一喜一憂する重大要素である。

ああ、これで今日一日、幸せに生きていける、、、

カウンター内の女の子が水を注いでくれる。

「俺の本、読んでくれた?」

「読みましたぁ!」

ぽつぽつと他のお客さんも入ってきた。じっとり滲んできた汗を拭きつつ席を立つ。女の子が「ありがとうございましたぁ!」と朗らかに送るなか、山田氏はあくまでも寡黙である。いや一緒に言っているのかもしれないけどほぼ聞こえない。けどそれで佳い!山田さん、あなたはそのルーかけ道を貫いていただきたい。私はその全てを観ています。

二日連続インデアン。僕はしばらくこれで生きていけそうだ。

ところで東京進出の話題が、在京のブロガー達の間でも話題になっているみたいですね。トラックバックもいただきました。オープン時期についていろいろと情報が飛び交っていますが、僕が取材をさせていただいた4月29日時点では「11月初旬オープン」と仰っていましたよ。

今年の11月初旬は、何も予定を入れないでおこうではないか。


2005年07月11日

元祖レタス巻き 「一平」を再訪した!

金曜日は、宮崎出張だった。西都市の農業者さん達に、今後の農業と主にマーケティングの話をするのである。空港につくと、雨は降っていないものの、少しムアッとした空気が流れていた。

「アニキ!ようこそ!」

と、農協職員で弟分の沼口君が迎えに来てくれている。先日宮崎マンゴーのエントリでも出てきた、196センチの空手猛者にして温和な最高にイイ男である。そういえばマンゴーかなり好評のようですね、コメントありがとうございます!マンゴー、そろそろ時期が終了しますが、まだ間に合うみたいですよ。

日経MJ誌の反響や問い合わせが僕のPHSメールにひっきりなしに転送されて来る中、まずは飯参りである!せっかくだから、僕の「全国出張食い倒れガイド」に掲載させてもらった店に挨拶に伺いたいのである。

「まずは一平だな!」

一平寿司は、もう重ねて言うまでもない、レタスと海老とマヨネーズを巻いた海苔巻き「レタス巻き」の元祖である。朝一番で仕込んだ自家製マヨネーズを味つけに、プリップリの海老とシャクシャクしたレタスを海苔巻きにしたその味は、他店の追随を許さぬ完璧な味付けなのである。

一平寿司は、市内の宮崎観光ホテルのすぐ近くにある、本当に市井の一大衆寿司店という風情である。

僕の本を読んでくれた人はもうご存じの通り、この店のスピリットは「大衆店」

「うちは高級店なんかぜったいに目指しませんよ!子供が500円玉握って食べに来ても、うちは出して上げる。そんな大衆店を守り続けたいんです。」

という、徹底したお客さま志向なのだ。宮崎に来たらとにかく食べに来なければならない店の筆頭である。

さて事前になにも連絡をしていないが、開店直後の11時過ぎに、ガラッと店の引き戸を開ける。

「いらっしゃいま、、、あ!どうも!」

お店の中にいる職人さん、おかみさん達が笑って迎えてくれた。

「あんらまぁ、いい本書いて下さってありがとうございましたぁ、うふふふふふ」

と名物女将さんが言ってくれる。店主の村岡さんはまだ出てきていないということだったが、先にレタス巻きを食べさせて頂くことにした。

レタス巻きを食べる際の注意だが、もし可能であれば(空いていれば)カウンターで頂くことだ。そして、巻いてくれるはしから、手渡しでレタス巻きを受けとって醤油につけ、いただくことである。通常レタス巻きは包丁で二分して盛られてくるのだが、実は二分しないほうが、ノリのパリ感を感じることができるのである。しかしその醍醐味を味わうためには、カウンターから直接もらってすぐさま食べないと、ノリのパリ感自体が飛んでしまうのである。

ネタケースには充実したネタ類がギッシリと入っているが、主役は海老である!

この茹で上げられたまるまる肥った天然海老は、すべてレタス巻き仕様なのである!
そしてこちらがしゃっきりと吸水蘇生したレタスだ!

これらを、店主の村岡さんとツートップの職人さんが巻いていく。実は彼も村岡さんの親戚でこの店ですでに30年のキャリアだそうである。

一日に多い時では1000本以上出るというレタス巻きを、とにかく素早く出していかなければならない。レタス巻きを巻く人と、握りを造る人は別で立つというのがこの店のスタイルだ。何故かと言えば、レタス巻きをやると手に海苔の粉が付くので、握れないのだそうである。

海老、レタス、そして毎日仕込む特製マヨネーズを、目にもとまらぬ早さで巻き込んで完成だ!

↑これが「手渡しレタス巻き」である!包丁をいれずにそのまま手で渡してもらうのが大吉!

これを甘めの醤油につける。

「うちのレタス巻きは甘めの醤油につけて食べるように味を設定していますから、かならず醤油をつけてください!」

ということなのだ、こだわりの味は全てコンセプトメイキングされているのである!さてこれをがぶりと半分くらいかじる!海苔のパリリという音と、レタスのシャックリ感と海老のプリプリ、そして中に仕込まれたマヨネーズがニュルリと舌に滑らかに飛び出してきて、油脂の旨さと淡い酸味を拡げる。酢飯の香りと相まって、これらが渾然一体に音を立てながら混ざり合うのだ!

「ううううううううううううううううううう~ん、旨い!やっぱりこれだよなぁ、、、もう8人前くらい巻き続けて下さい!」

ここから怒濤のレタス巻き攻撃である。10本近く食べただろうか、、、

断面写真も撮りまくりである。そういえばみんな、僕がどういう写真の撮り方をしているか知らないだろう。最近は一眼レフのデジカメも多用しているが、こんな風にして採っている。

おそらく一眼レフをこんなふうに片手撮りするのはいけないというか良くない例なんだけど、、、こんなことをお店でやっているのである。

レタス巻きばかりではない、これは玉子巻きである。

子供用に出してみたら、オトナにも受けが良く、定番になったというこの玉子巻き、やはりマヨネーズで巻いているのだが、トロリとしたマヨと甘くふっくらした卵焼きが相性抜群で実に旨い!

「はいよバッテラ!」

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
俺はサバが大好きなのである!

実はこの一平寿司、サバには無着苦茶こだわっているのだ。

「うちのはね、長崎のある漁港で、年間通じて一番いい時期にあがったサバを全部現地で捌いて、塩をして-60度で瞬間冷凍して押さえてしまうんです。ですから、一年通じて旨いのを食べて頂けるんですよ!戻し方も、酢〆の塩梅も全て計算しています。うちのサバは本当に旨いですよ!」

と村岡さんが言っていた通りのものなのである。

実はこの日はベストタイミングで、昨日まではいい型のサバの無い時期が続いていて、出していなかったんだそうである。それが、新しい取引先の、素晴らしい品質のが見つかったと言うことだったのだ!

みよ、この分厚いサバの身を!しかも肉厚だがとても柔らかい!

「脂が乗りまくってるんですよ!」

マジでスゴイ!言うまでもなく、サバ臭さなぞ一片もない!しかもこの店のバッテラは、サバのみの上に薄い昆布を載せるのだが、その間にレモン片を入れるのだ。このレモンがサッパリとさせ、いい味に決まるのダ!

「やまけんさん、コレ食べて下さい!」

と言って出てきたのは、この店の名物「カニ汁」だ!

大型のワタリガニが丸ごと一杯入っている!この写真の縮尺がわからないだろうか?こんな椀に一杯なのである!

取材の時に訊いたのだが、なんと、

「このカニ汁も、最初は一杯で300円だったのを、10数年前に500円にしてからは、お客さまに申し訳なくて値上げしていません」

なにぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいい
これで500円? それはオカシイ値段ですよ、、、本当にびびるよ!このカニの大きさと美味しさを観たら、、、
しかもカニの足には割目が入れてあり、きちんと身を食べやすい配慮がなされているのだ。本当に隅から隅までお客さま志向なのだ、この店は。

と、感動していると当主・村岡さん登場!タリーズコーヒーの九州FC第一号を宮崎の目抜き通りに出店した、優秀な若手経営者でもある彼である!

「いやぁ やまけんさんのあの本、最高ですよ!みんなで喜んでます。こんどぜひ、一緒になにか宮崎の美味しいものを世に出す企画をやりませんか!?」

そう、村岡さん、かなり色んなアイデアを持っていた。本格的に何か一緒にやりたいと、思わせる人である。

レタス巻き10数本、玉子巻き、ヨコワ(マグロの子供)の握り、バッテラ、そして圧倒のカニ汁を食べて、もう腹一杯である!

暖かく店の方々に見送られながら、12時を過ぎて大混雑の呈をなしてきた店を後にする。宮崎の旅情はとにかく厚いのであった。

2005年07月13日

うなぎファンは宮崎を詣でるべきではないだろうか。 宮崎県西都市「入船」の炭火焼きうなぎは悶死するしかない!

 金曜日の夜の講演は、農業者さんが80人くらいあつまり、2時間にわたる僕の講演をほとんど寝ずに聴いてくれた。なかなかに充実した夜だったのである。

 さて、このWebでは何度も書いていると思うが、僕はうなぎについては断然、関西風が好きである。関東風はうなぎを白焼きにした後、蒸して脂を落とし、その後にタレをつけて焼き目をつける。関西風は、蒸すということをしない。脂が乗ったままバリッと焼き上げるのが特徴である。
 たしかに江戸前も、いい店で食べると非常に美味い、とは思う。しかし、なんだか割り切れなさが残ってしまうのも、また真実。まあ、おいらまだ若いしね(34歳、、、苦笑)。脂を落とさず皮がネッチリとした関西風が大好きなんである。まあ、関東近隣であれば、思い切って静岡県の三島で途中下車して、「本町うなよし」に行って一番デカイサイズのを食べるに限るな、と思っている。

「そんなこと言って味がわからねーやつだ」と言われるんだろうなと思うが、俺は第一に江戸っ子じゃないし、東京で満足できる鰻屋にほとんど出会わないんだからしょうがないのである。「ココは美味いぞ!」と言う店があったら、ぜひオゴリで連れて行って頂きたい(笑)

さて では日本で一番好きなうなぎはどこにあるかというと、迷いも躊躇も一片もみせずに「宮崎県西都市である」と僕は言う。

宮崎県、鹿児島県は、日本でもトップクラスと言っていいほど、うなぎの養殖が盛んである。当然、うなぎ屋はそこここにある。この辺のいきさつは、拙著「やまけんの全国出張食い倒れガイド」に書いたとおりなので、ぜひぜひ読んでください。

で、「食い倒れガイド」には「本部うなぎ店」という名店を訪ねている。この店はブログでは書いたことがないので、本でしか観ることができないので悪しからず。執筆中のこのエントリの写真を見て欲しい。

■本の中身をチラッと。絶品鰻重を観てくれ! (2005年05月08日)

はっきりいって最高でしょ?もうこれは視覚の暴力である。
本部うなぎ店、死ぬほど美味い!しかも関東の感覚からすれば激安なのだ。なにせ写真の大盛り特上鰻重にしても、名物の呉汁が付いて2000円以下なのだ!

と、価格にも旨さにも大満足なのだが、実は元々この西都市のうなぎが好きになった入口は、他の店だったのだ。

その名は「入船」。 おそらく西都市近隣いや宮崎でこの鰻屋を知らない人はそういまい。平日だろうと休日だろうと行列が絶えない、超人気店である。久しぶりの西都詣で、この店ははずせない。

沼口君の車で店の駐車場に乗り入れてまずびっくり。

「こんなに駐車場、広かったっけ!?」

駐車場、15台以上が停まれるような広さである!前もこんなだったっけかなあ。
そして店の方に歩いていく。この建物を観て欲しい。

これ、お店ではない、、、

なんと、待合室ならぬ待合い小屋なのである!

あまりにも待つ人が多いので、小屋を立ててしまったということなのである、、、
小屋の中はこんな感じで、テレビが流れている。

時折マイクで、「ヨシダさーん、5名でお待ちのヨシダさーん、どうぞ店へお上がり下さい」というように待ち客を呼ぶアナウンスが入るのである。いやもう ただごとではない。
ただ、この店はうなぎ以外のメニューなぞないので、回転も相当に速い。酒を飲んでだらりと過ごす店ではないのである。20分ほどで呼ばれて、我々一行も入ることができた。

■入船
宮崎県西都市南方3316-3
0983-43-0511


店の中は非常に広く、座敷が2階にも拡がっている。

とにかくこの店のいいところは、メニューが単純であることだ。

うなぎ定食か鰻丼、うなぎのぬたなどしかないのである。

ちなみに定食には、ご飯とうなぎの蒲焼き、白焼きのぬた、肝焼きと骨せんべい、そして呉汁が付く。

うなぎ定食は

並1890円
上2730円
特上3150円

やっぱり安いのである!
お話しにならないリーズナブルさ加減である。

さて僕は当然、うなぎ定食特上のご飯特盛りである。一瞬、鰻丼にしようかと迷った。皿に並べられたうなぎ蒲焼きと、ご飯の上に載ったそれとでは少し趣が違うからだ。しかし、「タレは別に持ってきますから、ご飯に載せても結構ですよ」という。それなら単純に量が多い方に行くしかないのである。

さて、まずはうなぎのぬたが出てきた。

そう、酢みそをつけて食べる「ぬた」を、うなぎ白焼きでやるのである。これは関東でも関西でも観たことがない、宮崎オリジナルではないだろうか。

このバリ感強く焼き上げられた身を観よ!蒸していないため、繊維・組織がビシッと原型をとどめている感じである。

これを酢みそにつける。酢の酸味と、甘めの麦ミソの香りが立ち上り、うなぎの脂をさわやかにしている!

これにつけあわせの晒しタマネギの薄切りを添えて食べると、実に爽やか、コッテリの相反するハーモニーが口にこだまするのだ!美味いぜヌタヌタ!

「はい、特盛りの方のご飯です!」

と、デカ丼に山盛りになったご飯がやってきた。でかいぜ、、、

僕は、うなぎが好きなのではなく、うなぎとご飯が渾然一体になったものが好きなのである。従ってご飯は重要。入船の白飯は地元・宮崎県産のコシヒカリだ。脂も味も濃いので、コシヒカリしか選択できないだろうな。

そして、満を持してうなぎ登場である!


うなぎ定食はこのように重箱に蒲焼きが並べられてくるのである。

みよ、このタレによって全身褐色にコーディネートされたうなぎちゃんの美しい進化形態を!脂を落とさずに皮目もバリッと焼かれているので、身肉の締まり具合がわかる。そして、写真だと縮尺がわからないだろうが、うなぎは「小さめ」なのである

これが重要なポイントで、西都ではあまり大きな太いうなぎは使わない。脂が乗りすぎているので、蒲焼きにすると美味くないからだ。実際には、脂が適度な中型のうなぎを割いて焼いているのである。だから、蒸す必要がないのだ。 関西風は脂がね、、、と言っている人が良くいるが、そういう配慮がなされているのを認識すべきである。ちなみにお隣鹿児島では、太めのうなぎを使うことが多く、「蒸し」が入ることもあるという。

さてもう俺は我慢ならないのである。

「い、いただきます!」


うなぎ片を白飯に載せ、一口に一片と多量の飯を放り込み、奥歯でかみ締める。瞬間、炭火の香ばしいコゲ香と甘辛いタレのロングフック、そして身肉の旨味とあのうなぎの得も言われぬ香りが口腔と鼻孔に充満し、嘆息とともに漏れ出る。

「美味いよぉ、、、俺はこいつを食べるために西都に来たんだよぉ、、、」

もう泣きそうになりながら狂暴な食欲を制するため、ここからはただひたすら掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込む掻き込むのであった。


ちなみに超大盛りの飯には甘辛タレをかけ、絡ませるのが吉だ!汁ダクにしすぎるのは甘くなりすぎていけないゾ。

それと、この辺だけの習慣だろうが、うなぎに呉汁が付いてくるのである。呉汁とは、一晩水に漬けて戻した大豆を石臼などで磨り潰し、みそ汁や澄まし汁にその「呉」を溶き入れた汁である。

こいつが実にうなぎに合う!

粉砕された大豆片が中にタップリ入った呉汁。濃厚でミルキーなこの味が、なぜかうなぎの脂と甘辛いタレを洗い流しリフレッシュさせてくれるのである!リフレッシュしたらうなぎ!ちょっとだれたら呉汁!このサイクルが延々と続くのであった。

もう、このうなぎを食っている間は全くの無言である。ていうか「フムフムウンウンムマイムマイ」と言葉にならぬ言葉を吐くしかないのだ。

いや、久しぶりに食って大満足!

西都市近隣には、この入船や本部うなぎ店だけではなく、こうしたスタイルの鰻屋が多い。関東とか関西とか関係ない、西都スタイルのうなぎをぜひ味わってみては如何だろうか!あとは、東京に支店を作って欲しい、、、

2005年07月14日

八島のエントリの追記。

ラオタ(ラーメンオタク)さん達が集結する、茅場町の支那そば名店「八島」のエントリで、「チャーハンを頼むことができなかったり、お酒を頼まないと食べられないメニューだと言われたりした」という指摘がありました。

以下、店主さんに確認をとりました。以下、許可を得て掲載しておきます。

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ブログに掲載していただいたおかげでお客様が多い日が増えてきました。本当にありがとうございました。

>もし本当に「チャーハンは初めての人は食べられない」とか、
>「夜は酒を頼まなければならない」という決まり事があるのでしたら、
>私の記事に追加で書いておきますので、教えていただけませんか。

お手数をおかけしまして恐縮です。

お客様からの質問に対して、店主が答えましたが、それに対してお客様が早口で反論されたため、店主は日本語は出来ますが堪能でないことから、うまく説明出来なくて、そのお客様が納得出来なくて怒られたのだと理解しています。

「初めてのお客様には、チャーハンだけの注文は遠慮して頂いています。」

店主は、うちは他には絶対負けない美味しいラーメンを出すラーメン屋さんなので、まず、うちの美味しいラーメンを食べて頂きたい。という強い思いがあるからです。

それと現在、おかげさまで忙しく、手間がかかるため、
「チャーハンはメニューからなくなりました。」

 ただ、もともと常連さんの要望から作ったメニューですので、つまみを食べお酒を飲まれてゆっくりされる常連さん向けの裏メニューとしては残っていて、ご飯があって、店主が忙しくなく、手すきの時に限り、常連さんの要望があれば出すこともあります。
あじのユッケ油そばと同じですね。

「つまみは、あくまで「お酒のつまみ」ですので、基本的にお酒を飲まれる方向けのメニューです。」

メニューが前は単に「つまみ」となっていましたが、明確に「お酒のつまみ」と記載し、お間違いのないように修正しました。
しかしながら、混んでいるときは、ラーメン作るので手一杯ですので、手間のかかるメニューはお断りをすることもあります。

つまみは、夜は、お客様にも時間的余裕があることから、美味しいつまみを食べお酒を飲んでゆっくりしていただき、締めに美味しいラーメンを食べていただきたいということから出していると思います。

(以下略)
=============================

ということでした。
おうさるさんがコメントフォローいれていらっしゃいますが、もしかすると「なんか不信」さんが来店した時点で、チャーハンはメニューには載っていなかったのかもしれません。私があんなに大きく書いてしまって皆さん食べたくなるのも当然なので、申し訳ないです。お酒については、確かに酒を飲みながら食べていたものばかりでした。私一人では頼めないものばかりでしたでしょうが、常連さんといっしょだったので食べさせていただいたわけですね。

ということでした。
それにしても八島はうまい店ですから、ぜひまた行ってみて下さいな。

2005年07月16日

前略 富良野より

IMG_8479.jpgやまけんです。

富良野にいます、、、電波が入らないところが多いので全然みられなかったのですが、予想通りの展開ですな、、、心配してメールや電話くれた方も居るほどなので、覚悟はしていましたが、、、

まあしかし、本当にこの件はこれで終了にしておきませんか。あ、ちなみに八島の店主さんは、調理をご担当の中国からの方の他に、日本人の方がいらっしゃいます。前回掲載したコメントはその方からのものです。

あと、「ちょっと不信」さんのコメント、ああいうこともあるのかな、ということで削除はしませんが、申し訳ないけど出身国に触れているところは僕が観てあまり気持ちよくないので改変させて頂きます。

宮崎編の残部と、富良野編が凄いことになるので、そっちを楽しみにしててくださいね。
では、では、、、

2005年07月17日

暑いところの魚は旨いじゃないか! 宮崎焼酎の里・日南は油津で凄まじい魚介をイヤと言うほど食い倒れた!

このブログには何回も書いているとおり、宮崎の日南にある焼酎メーカである京屋酒造とは長くお付き合いをさせていただいている。商品の販売可能本数を登録するだけで月間500万円以上をたたき出すに至った、同社のWebサイト立ち上げに関わってから、社長の渡邊さんは僕が宮崎に入ると必ず厚くもてなして下さるのだ。

「ヤマちゃん いらっしゃるならぜひお会いしましょう!魚食べたいでしょ?美味しい店に連れてくからさ!」

おおおおおおおおおお
宮崎の魚、油津の魚が食える!

昨年のエントリにあるように、実はこの日南・油津の地魚は最高にうまいのである!怒濤の美味魚群をご確認いただきたい。

■夏真っ盛り! 宮崎出張編 チキン南蛮と日南海岸の魚料理を堪能しまくりhttp://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000371.html
まったく「暑いところの魚は身が締まって無くて不味い」だなんて誰が言ったのだろうかと改心せざるを得ない、劇的な感動が待っているのである。

さて鰻をたらふく食べた僕らは、沼口家にて小さな子供達と戯れた後、速やかに京屋に向かうこととしたのである。

西都市街から1時間15分程度、日南に入り京屋酒造に直行する。あまり声高には言われていないが、しばらく前のNHK連続ドラマで、ヒロインの実家の酒蔵となったのが、この京屋酒造なのである。

「やあ ヤマちゃん!奥さんも沼口君もようこそ!」

と渡邊社長が迎えて下さる。慶應卒で某銀行に勤めた後に蔵に戻ってきた彼は、本当に経営感覚をもちつつ、古いやりかたを継承し、地域振興とは何かを考えながら戦略を練る強者である。

蔵を案内してもらうのももう何回目になることだろう。麹を仕込んでいる室を見せてもらう。日本酒の酵母とは少し違い、雑菌をはねのけるクエン酸が発生するように育成するらしい(違ってたらゴメン)。

これが同社の特徴である甕(かめ)仕込み用の甕だ。土中に大きな甕を埋めているのだ。


「いやぁ、新しいタンクとかを買おうとすると大規模な設備投資になっちゃうからさ、踏み切れなくて古い甕を使っているだけですよ」

と謙遜するがもちろんそんなことではないんであった。この方式で小さく作っていくから旨いというのがあるはずだ。お茶なんかもそうだが、処理する機械が小さければ小さいほど旨いという。大きい機械だと原料全部の個性が取れて均質になってしまうのだ。焼酎も同じことが言えるかもしれないな。いや全然違ったらゴメンナサイ。


これが同社のシンボルとも言える旧型のボイラー。熱効率的には悪いらしいけど、象徴的な存在で、使い続けているということだ。

焼酎の仕込みについては、僕と利き酒師のチエちゃんが書いていた京屋ブログに詳しいので、関心のある方はチェックを。

■京屋酒造ブログ
「京屋酒造の醸造場に潜入!おいしさの秘密を探った!!」
http://blog.e-shouchu.com/archives/2004/10/post_3.html


「さて、メシを食べに行こうかヤマちゃん!」

待ってました!魚だぜサカナ!
油津の幹線道路から細い商店街の脇の小径を入っているのにもかかわらずぶっ飛ばしまくる渡邊社長の運転に必至に沼口君がついて行っているうちに、日南の繁華街の中の一軒家に出た。

■四季の味 「みどりや」
宮崎県日南市材木町6-2
0987-23-6201

「ここはねぇ、最近僕がずっとご飯を食べに通っている店なんだよ。ココのマスターとはホントに長い付き合いでね」

とカウンター内の精悍なマスターをみやると、マスターもニヤリと返してきたのである。

「じゃあ先ず、刺身をどうぞ!」

と運ばれてきたのが、このビンビンのマグロ、ヒラメ、戻り鰹、イカである!

な、なんだなんだ なんなんだこのマグロは!?ベリー霜降りのこの肉質に釘付けなのである。

「もちろん本マですよ!この近海で揚がるんですよ。築地に行く前にこっちの市場にも落としてもらって、もちろん生で食べるから最高なんだよ!」

ほ、ほんとうかよ~ 宮崎でこんなマグロに合うとは思っていなかったので狼狽。さっそく小鉢に醤油を落とす。

「あ、ヤマちゃん、それは甘い醤油だけどいいの?辛い醤油もあるよ。」
と渡邊社長。そう、日南では甘草などを使った甘めのトロリとして醤油が一般的なのである。でも、外から来た人はこれを嫌うことも多いため、大概の店では関東風の濃い口醤油も置いている。

これが甘口の地醤油である。

「いや僕は甘口も好きですよ。宮崎にきたらやっぱり甘口でしょう?」

と訊くと、意外な答えが渡邊社長から帰ってきた。

「うーん そうとも言い切れないんだよ。実はねヤマちゃん、うちの蔵では僕が推さない頃までは醤油も少し醸造していたんだ。祖父の時代だけど、祖父の好みで、関東風の醤油を作っていたんだよね。だから僕は昔からそのキリッとした辛口の醤油が大好きでね。甘い醤油は好きじゃないんだ。」

な、なるほどぉ いちがいに宮崎は甘い醤油処だとは言えないのであるらしい。ちゅうことで、甘口と辛口を同割りにした醤油をこしらえて使うことにしたのである。

このマグロがやっぱり絶品!多少筋が入っていたが、その肉質は最高である。

鰹もまた旨い!皮目を炙ってからも水にさらさないのがここのマスターの流儀だ。

「洗うと旨味が流れちゃいますよ!」

ほのかにぬくもりが残り、炙った皮目が香ばしい香りを立てる鰹は、しっかりネットリした身に戻りの旨味を蓄えていて、実に旨い。

「ホントはね、この辺で『コップン』て呼んでる鰹があるんだけど、これを食べさせてあげたいねぇ。この辺の漁師が、漁が終わって港に帰る寸前、自分の家用に鰹を釣るんだ。そのまま持ち帰ると、身が硬直する前だからか、ゼリーみたいにプルンプルンの身なんだよ!包丁で切るのも大変でね。これが数時間経っちゃうと普通の鰹になっちゃうから、ホントに幻なんだよ。」

うおおおおおおおおおおおおおおおおお
コップン食いてぇえええええええええええええええええ
という叫びが虚しく日南の虚空に消えていくのであった。

それとあまりに旨くて写真撮る間もなかったんだけど、ヒラメが最高に旨かった!

刺身はこれだけではない。気になるのを次々に頼んでしまった。

■平子鰯の刺身

江戸前の入梅鰯よりも丸々としているのがわかる!白く脂肪をまとったなまめかしい姿態のまま、舌の上で溶けていった!

■地蛸

■〆サバの炙り

光り物マニアの僕は、サバがあれば必ず頼むが、この〆サバが実に最高だった!

「こっちのサバは本当に旨いですよ。もちろん刺身でも食べられますけど、どんなに鮮度がよくても〆たほうが好きなんで、、、」

というように、絶妙な加減で〆たサバの皮目を炙り、出してくれる。このサバの身が、鮮度がいいのに脂が乗りまくっているのでトロトロなのだ!
「う、旨いよ、、、」

我々三者、絶句である。
そうそう言い忘れたが酒はもちろんのこと、京屋酒造が誇る芋焼酎「かんろ」。しかも「スーパーライトかんろ」という、地元向けしか売っていない大ヒット商品で、軽やかに薫り高い旨口の焼酎なのである!

「ヤマちゃん、遠慮してるんじゃないの?どんどん頼みなよ。実はね、マスターは刺身とか和モノだけど、息子さんが洋食メニューを作ってるんだ。これが旨いんだよぉ!」

ほほう!そういうことであったか!

メニューを観ると、魚介系のグラタンやコロッケの洋食メニューが豊富だったのだ。じゃあじゃあ頼んでみようではないか。

、、、と、これが予想を軽く上回るハイレベルに研ぎ澄まされたカウンターパンチの連続だったのである!

■魚介グラタン

最初に運ばれてきた定番料理グラタンは、一本丸ごとのカニの身にイカ、蛸、デカイ海老、ホタテなどがギッシリと詰まっているのだが、具材をまとめるホワイトソース、いやこれは正式にペシャメルソースといわなければならんだろうソースが実にしっかりとしていて旨い!

■メヒカリの唐揚げ

このメヒカリ、軽く粉をはたいて揚げているだけで、手前にある茶色味がかった塩をつけていただく。これがなんと!

「カ、カレーの香りじゃねーか!」

そう、ほのかに薫るカレー塩なのである。メヒカリの、上品で芯の通った旨味を引き立てる、かなり技ありのチョイスである。天晴れだ!

■カニクリームコロッケ

このコロッケが出てきて「おっ!」と思ったのだ。みてお分かりの通りミートソースの上に俵型の大ぶりなコロッケが載っている。そのボリュームたるやかなりのものである。

中身はカニを先刻のグラタンのペシャメルの濃度をもっと強めたものでまとめているのだろうか、粘度が高い。

これにもカニがぎしっと詰まっている。中身の濃厚な旨さとミートソースの肉の旨味がプラスされて、惚れ惚れするような熱々の一皿に仕上がっているのだ!

■鶏のセセリのチキン南蛮

出ました宮崎料理チキン南蛮!しかし実はこれが、僕がチキン南蛮を食べてきた中でも最高峰といえる一皿だったのだ!
セセリ肉というネーミングは、胸や腿、手羽といった、骨から剥がし易い身肉ではなく、ガラに残った肉を「せせる」というところから来た言葉であったと思うが、これは首肉を中心に剥がしたモノのようだ。細長い、ササミ大のスティック状の揚げチキンに、南蛮酢とタルタルを合わせている。早速一口食べてビックリした!劇的に旨い!

チキン南蛮の鶏肉は、胸肉を使う場合とモモ肉を使う場合でかなり味の傾向が変わる。チキン南蛮の元祖である小倉チェーンでは、胸肉を使う。胸肉には脂があまりないため、バサバサしないよう薄く伸ばして衣を強め煮付け、濃厚なタルタルでたべさせる。モモ肉は弾力があり旨味も濃いため、それに合わせた味付けにする。そして、このみどりやが使うセセリ肉は、それ単体で実に濃い旨味を持ちながら、モモ肉とは違うシコシコした弾力を持ち、そしてモモ肉以上の上品な旨味を湛えているのである。これに合わせる南蛮酢も強めの酸味と甘さ、一方のタルタルには卵を多く用い、フンワリ優しい味に仕上げている。

「こ、これ絶妙だ!」

この時ご飯を頼んでいたら、大盛り2杯食べてしまっていただろうと思われるのである、、、

いや、洋食部門の息子さん、実に素晴らしい!

「ここは家族仲がよくてね。マスターの人徳だろうけど、子供達が親父さんを慕っているんだよ。ほら給仕の女の子も娘さんだしね。」

照れくさそうに笑って顔を斜に向けるマスター。親子仲良しな店なのである!

さて、そろそろご飯モノで〆たい。

「マスター、何かごっついものをご飯にどどーんと載せてくれませんか!?」

というリクエストにニヤリと笑い、「はいよ!」と手早く作ってくれたのが、あの超絶の本マグロの剥き身をどんぶりご飯に載せ、卵の黄身を落としたマグロトロ丼である!

ぐおおおおおおおおおおおお
もう何も言うことはない。甘口醤油をタップリと回しがけし、濃厚に匂い立つマグロのトロトロを感じながら掻っ込むだけである。

食った!
しかしまだ俺は物足りない!

「マ、マスター、もう一杯、、、この釣りアジで作ってくれませんか!?」

と、ばかでかい釣りアジ(大型のサバくらい)の丼を所望!

もう狂乱の食欲状態で、かろうじて食いかけを撮影。

コリコリシコシコとした釣りアジの感触は、なぜか江戸の粋筋の女を想起させる!

「いやぁ、、、旨かったぁ!」

「そうか、よかったよかった!まあここならヤマちゃんが旨いっていうと自信はあったよ。」

一同大満足である!ご馳走様でした渡邊社長!

いや本当に大満足の店である。宮崎の日南を訪れる人はぜひ足を向けてみて頂きたい。刺身など和食の旨さはもちろん、息子さんの作る洋食も絶品である。

「ごちそうさまでした!」

渡邊社長とお別れをし、一同シーガイアへと戻る。今日はよく食べたけど、量じゃなくて味に感動しっぱなしである。鰻そして海の魚めいっぱい。どちらも旨い宮崎は、かなり最強度の強い國である。だから、僕にとって宮崎は、老後に住みたい地域のトップ3に入っているのであった。

んー 書きながら腹が減ってきました。でもこの食欲は、その辺の海鮮丼とか食べても落ち着きそうにない。罪な店だ、、、

2005年07月19日

狂乱怒濤の北海道は、豚スタ・牛スタから幕を開けたのであった!

さて北海道である。

今回の出張は、まずはJA幕別町での商談だ。JA幕別町といえば、十勝の帯広で、長いもと大根、レタスについては有名な産地だ。そして、僕の食い倒れ日記を昨年から読んでいる人であれば、あまたある豚丼関連のエントリが、このJA幕別町の岡さんとノムさんというお二人による導きで実現していることを思いだしてもらえるだろう。

彼らとは3年前に、農林水産省関連のプロジェクトを一緒にやらせていただいて以来のお付き合いだ。ナガイモの箱にRFIDタグを貼り、農協~卸~仲卸~小売までトレーサビリティ情報を流通する実験をしたのだ。かなり困難を伴う実験で最初は躊躇されたが、東京と帯広を何度か往復する中でなんとか実験を成功裏に導くことができた。その過程でだんだんと仲良くさせて頂けるようになったのだ。

「まあ、あれさ。実際に足を運んでくるヤツには、俺らは優しいョ。一度も顔出さないで『大根くれ』っていわれても出さないけどなぁ」

とそういうことなのだ。で、その後もいろんな相談を僕にしてきてくれる。ありがたいことなのだ。

さてこのJA幕別町で有名なのは、なんといっても個性的なジャガイモであるインカのめざめだ。栗とサツマイモとナッツを合わせたような、とびきり旨いジャガイモ品種。これを日本全国で一番大きく栽培しているのがJA幕別町で、およど50haくらいの作付面積を誇っている。

「やまけんがよ、前にホームページで、浦幌の漁師から送られたインカのめざめが旨いって書いてあったろう?ふざけちゃいけないようちのを食わせてやっからよ!」

と言ってノムさんが車中で携帯でJAの女性に指示を出していたからだろう、挨拶をすませた僕が椅子に座ると、ほかほかの芋が出てきた!

これがインカのめざめという品種のじゃがいもだ。切り口が鮮やかな真っ黄色になっているのがおわかりだろう。通常、9月に収穫されたジャガイモを低温貯蔵して越冬させると、でん粉が糖化して甘くなる。そう、ジャガイモは堀たてよりも、貯蔵したほうが旨くなるのだ。

しかしこのインカのめざめは越冬どころではなく、10ヶ月も経っている。こんなのは食べたことがないぞ!

「まあ食べてみろよヤマケン。そんな芋、全国でもここにしかないぞ。」

といわれるがままに一口食べて仰天した! 甘い!

ここまで甘いインカのめざめは、お世辞抜きで本当に初めてである。ただし10ヶ月も貯蔵していると、表面にはカビが浮くので、それを払わねばならないが(芋自体がかびるわけではない。芋に付着している土が黴びるのです)。

こんなに旨くなるなら全ての芋を貯蔵すればいいのに、と思われるかも知れないが、貯蔵すればするほど芽が出てきてしまったり、傷んで腐ってしまったりというリスクと、貯蔵コスト(場所と冷蔵)がかさんでしまうのである。ということでこの奇跡的な貯蔵芋を食べることが出来たのは僥倖といえるだろう。

「やまけん、これを消費者にもっと知って欲しいんだよ!なんかやろうぜ!」

ま、まじ?
そんなんいくらでもやれそうじゃん!
ということで今年度はインカのめざめを知って頂くキャンペーンを実施することに決めたのである。無論、このブログで紹介してきた浦幌のししゃも漁師である近江さんや、更別でジャガイモを生産している十勝やっちのも紹介する。ジャガイモ饗宴といこうではないか。

「じゃあメシ食いに行くかい。ヤマケンに今回なにたべさそうっかなぁ。そうだな、夜にあんまし食べられないように、昼飯でガツンといっとくかぁ!」

といいながら15分ほど車でぶっとばしたところに、いかにもトラックの運ちゃん御用達のドライブインがあった。

■ドライブイン八重洲
住所・正確にはわからず。「国道38号線新川」あたり。

店内には、ガテン系労働者がいるわいるわという感じだ。そしてなぜか、タバコの煙とは違う、スモーキーでジューシーな白煙が、そこここで立ちこめている。

「あれが牛スタだぁ」

牛スタ=牛スタミナ定食である。そう、鉄板の上でジュワーと焼けているその白煙が、各テーブルからたなびいているのである!

「ここはね、牛スタと豚スタがあってね、ヤマケンはどっちも食え」

とノムさんが言う。いいねぇ、高校時代からとにかく「スタミナ定食」などスタミナという言葉が付くモノには目がない。店のおばちゃんがやってきて、先ず一言目に「ノムラさんは豚スタだよね?」という。なんだ、決まってるんジャン!

「ん、でこいつはね、よくたべっから、豚スタと牛スタ持ってきて!」

驚くおばちゃんをヨソに、各テーブルにたなびく煙を観ていた。調理場ではガタイのいい親父がフライパンをガシガシと振っている。

「おまちどおさま!」

うおおおおおおおおおおおお
出てきた!白煙どころじゃないぞ、噴煙が立ち上っている!!!!

「はいこっちが豚スタね」

ぬおおおおおお
牛スタと豚スタは全く違うではないか!
牛スタはタマネギと牛肉を、ニンニク入りの醤油ダレで焼き付けたもの、豚スタは、どちらかというと豚丼のタレのような甘辛い味付けで炒めたモノだ!芸が細かい!

実に壮観な風景だ。ご飯はもちろん山盛り。事務所で芋を5個くらい食べたにもかかわらず食欲の頂点に達している僕は、狂乱しながらむさぼり食べる!

いやしかしこの豚スタが実に旨い!牛スタも旨いが、とくに際だっているのは北海道の豚肉の旨さだ!フンワリして、脂が上品で、そして味が濃い。北海道の豚肉はあきらかに本州のと違うと思う。その肉に豚丼を思わせる、ほのかに甘い醤油ダレの味が絡まっているのだ。甘過ぎかと思うと、瞬間にタマネギのシャクシャク感がアクセントになり、嫌みを感じさせない!

「ヤマケン、そのマカロニサラダとキャベツを、マヨネーズかけて混ぜると旨いんだよ」

おお、恒例のノムさんチェックが出た!このノムさん、モノを如何にして旨く食べるかということについてはエキスパートなんである。

いやしかし 豚スタ&牛スタはかなりの分量である。食いきってしばし呆然。ご馳走様でした!
これを読んでいる方の数%は、本日の飯はスタミナ定食で決まりだろう(笑)

帰り道、長いもの畑を視察。

こんな感じで百メートル以上も長いもが植えられているのをみることができるのは、北海道か青森だけである。

さらにその帰り道、先ほどのインカのめざめの畑へ。あいにく曇り空だが、やっぱり緑はいい。完全な自然状態もいいが、僕は農地が大好きだ。

人間が区画し自然の摂理に沿って植えた植物群。自然とは克服すべきものではなく協調するものということだろうか。

なんてことを考えながら商談に戻る。今晩はこれ以上に食べることになるんだから、頭を使ってカロリー消費しないといけないのダ!

2005年07月20日

帯広に来たら焼き肉を食え! 絶品トロトロ熟成肉を腹一杯堪能! 「羅山」

時間がないので、本文の後半は後ほど加筆します。

豚スタ・牛スタを食って眠くなりながら打ち合わせを終わり、JA幕別御用達の温泉ホテル「パコ」にチェックイン。2時間後に迎えに来てくれて夜の部である。通常ならここでどこかの豚丼でも食べてしまうところなのだが、本日はおそらくかなりの質量作戦に出てくるであろうことを予知し、静かにホテルで仕事を終わらせる。ノムさんから携帯に連絡があり、降りてこいという。

「やまけん、肉と魚どっちがいい?」

「んー 最後に吟寿司にいって寿司を食べたいんで、肉ですかね?」

「そっかそっか、わかった!」

といいつつタクシーは空港方面へ。

「帯広市内に本店がある、バカ旨の焼き肉屋があるんだけどよ、そこのもう一つの店に行こう。」

帯広まで来て何で焼き肉?と思うかも知れないが、実は十勝にきたら焼き肉が超穴場である。本州の人間からみたら、 「う、うそっ」 というクラスの肉が、非常に安価に食べられるのである。僕も最初に帯広に訪れた夜に焼き肉屋に連れて行って頂いたが、入店前は「もっと帯広らしいもんが食べたいなぁ」と思いながら、食べてビックリという状態だったのだ。

さて訪れたのは、今や帯広で飛ぶ鳥を落とす勢いという焼き肉「羅山」の稲田店である。

■羅山
本店:北海道帯広市西一条南10丁目名門通り 0155-27-5558
稲田店:北海道帯広市西三条南35丁目1-2 0155-47-5677


個室に座ると、ノムさんがメニューに載っている「極上」とか「吟」とか「霜降り」とか、とにかく特別メニューに書かれているのを端から端まで頼み出す!

「まあヤマケン、十勝の肉の旨さを思い知れ!」

そして饗宴が始まったのだ、、、

※以下、メニューに載ってる正式名称は確認しないで来てしまったので、お店でチェックしてくださいね、、、
■霜降り牛タン

この端整な牛タン、実に分厚くカットされている!

どうだ!この迫力である!
これくらいの厚みになると、通常の熟度では噛み切れない。しかしこの店では独自のエージングをしているらしく、かな~り熟成が進んでいてトロトロである!

焼き網で表面だけコロがしてさっと火を通しただけで、「ヤマケン食べろ!」と肉が回ってきた!

タレは梅肉の入ったサッパリ塩ダレと、醤油ダレだ。タンには塩ダレをつけて頂く。肉を噛みしめると、もう本当にトロトロの食感で、歯が色っぽい筋繊維をムチムチと切り裂く心地よい感触に、甘い肉汁が染み出てくる!

「おお!ウマいっす!」

「だろ?ヤマケン!お前、帯広は何でも旨いけど、特に肉は最強なんだよ!よしっ三枚食え!」


牛タン三枚肉厚布団炸裂! ここから、ノムさんと大串課長は一口ずつしか食べずに、僕だけが食べるというローテーションになるのであった。

さて時間がないので、ここからはコメント無し連貼りでご容赦。

■霜降りロース

■サガリ(ハラミ)

■特上ロース?


■牛タン、ロースの刺身


■ホルモン

■ジンギスカン

「ヤマケン、ジンギはなぁ、こうやって空気を逃さないようにお互いにくっつけて焼くと、しっとり旨く焼けるんだぞ!」
といいながら肉を返していくと本当にしっとりと表面だけ旨く焼けている!

■塩ネギタン

これら肉に加えて飯ももちろん食べている!

ナムルとキムチを載せて即席ビビンパである。

いやもう食いまくり食いすぎである。およそ800gくらいの肉を食べた気がする、、、

しばらくもう肉は食いたくない、、、

こうして夜の最初の店での饗宴が過ぎていった。もちろんまだ終わらないのである、、、

2005年07月21日

金ちゃんの店 吟寿司再訪 牛トロ寿司の新天地に驚愕&旨い! そして牛トロの秘密が明かされた、、、(その1)

帯広関連の過去ログの中でも、異色の存在が「吟寿司」である。

「ヤマケンお前、帯広の寿司は日本一旨いんだぞ!」

というノムさんの声に疑問を感じつつ入ったその店で、店主の金ちゃんが握る牛トロ寿司に完璧にノックアウトされたのである!

■豊饒の大地・北海道帯広編その3 仰天の牛トロ寿司は帯広にあり
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000191.html

■帯広の夜はまだまだ続くよ 牛トロ寿司 吟寿司再訪、そしてそれは起こった。
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000354.html

そういうわけで帯広の夜の〆はやはりここしかないんである。

■吟寿司

予め「今日、いくよ!」と連絡していたこともあり、入店すると「おおおお~来たね!」と出迎えられる。遠く帯広で、こんな風に迎えてくれる店があるのは、とても嬉しいものだ。

買って頂いた方はご存じの通り、僕の「食い倒れガイド」の北海道編で、吟寿司は重要な位置を占めている。店主である金ちゃんはとても喜んでくれ、出版社に僕の連絡先を訪ねてくれ、そして絶品のイクラの醤油漬けを送ってくれた。

「やまけんちゃんの本とインターネットを観て来てくれるお客さんがいるんだよ!」

その言葉が一番嬉しいのである。

さて金ちゃんの握りと言えば、驚速のスピード握りである。本当に目にもとまらぬ早さで、かつ正確に握り込んでいくのである。

いつもどおり、〆サバ、穴子、シャコを握ってもらう。焼き肉800gではちきれんばかりの腹がいつのまにか空いている!

■シャコ

いつもながらこのシャコが絶品なのだ。殻付きのまま茹でて、注文を受けてから調理ばさみで綺麗に剥き、ツメを塗って供されるこのシャコ、甲殻類味の強さと香りと甘さが効いて、本当に旨い。

■穴子
そしてこれが演歌歌手○本譲治が15貫食べたという伝説の残る穴子である。

表面がカリッと焼かれており、魅惑的なツメが塗られている。

この穴子がほんっとに実に最高なのだ!穴子は香りが高く、煮すぎていないので締まった身肉で歯応えもあり、甘すぎず濃すぎないツメの加減がこれにマッチしている!

「さあそろそろ牛トロ行くかい!」

(つづく)

2005年07月22日

金ちゃんの店 吟寿司再訪 牛トロ寿司の新天地に驚愕&旨い! そして牛トロの秘密が明かされた、、、(その2

(その1から続く)

さてこの金ちゃんの吟寿司を吟寿司たらしめているのは、何と言っても牛トロ寿司と牛トロ巻きである!

霜降り牛肉をネタに握る寿司は全国色んなところで目にする。けれども基本的に美味しいと思ったことはない。魚とは脂の融点が違うので、口の中でベッタリと蝋(ろう)が残ってしまうような感じがして、美味しいと思えないのだ。霜降り肉を使うより、タルタルステーキに使うような赤身肉でやった方がいいのではないか、と思っていた。

そう思いながら、この店に初めて来た時には、半信半疑で牛トロ寿司を食べた。そして、すべての先入観が消し飛んだのである。

金ちゃんが、ネタケースの裏のクーラーボックスを開け、丁寧に一枚ずつしゃぶしゃぶ肉のようにラッピングされた牛トロの薄切りを取り出す。どうやら超低温で瞬間凍結させているようだ。なるほど牛肉はマグロ以上に大型だから、一頭の個体からかなりの肉が出る。その中で品質がよいものを目利きして買い込んで冷凍しておくのだろう。

しばらく置いて凍結を解いた後にラッピングを外し、握り大に切り分ける。そしてシャリをとり、キュッと握ったところへ、素早く秘伝のミソを塗り、その上に牛トロを載せて握るのだ。

そうして出てきた牛トロ寿司の威容が、冒頭の画像にある魅惑的に美しいまだらピンクの画像である!

「醤油つけないでそのまま食べてね!」

といわれるがまま、一口に食べて驚愕すること間違いないのである!
まず、口の中の温度で牛トロの脂がしっとりと溶け出すのだ。それも、蝋のような脂ではない、トロリと濃い風味を持ちながらサッパリとした脂が、だ。そこに、秘伝のミソの味が絡んでくる。このミソが何とも言えない風味で、肉の旨さとシャリを媒介するのだ。

牛トロ寿司を食べてビックリしていると、たたみ込むように次のネタが出てくる。牛トロ巻きである。

牛トロを細い短冊に切ったものを軍艦の上に載せたものだ。このように切り方が変わり軍艦になるだけで、味の表情は大きく変わる!淡く消えていった牛トロ巻きより、海苔の風味が加わり、牛肉の切り込みのせいもあって立体的な口当たりになる。

ちなみに牛トロの短冊の下には、秘密のミソが塗られている。じっくりこのミソを観察していると、金ちゃんが

「はいよ、舐めてみる?」

とミソだけ指先にチョンと塗ってくれた!

ふうむ、いったいこれはどういうものなんだろう?鼻を近づけると、なんだかとても身近に使っているスパイスのような香りがする。そして舐めてみると、ベースはどう考えても味噌である。麦味噌系の、甘めの味噌がベースになっているようだ。しかしそこに洋風のスパイスや胡椒が練り込まれているのに加え、決定的に味を決めている要素があるようだ。それが何かは、全く見当が付かない。とにかくこの味噌と牛トロが合わさることで、激烈なマッチングになっているのである。

さて、実は僕はここの太巻きを食べたことがなかったのだが、先日僕の友人の野崎が、北海道でチーズの大会の審査員を務めた帰りにこの店に寄ったらしい。そしてその時電話をかけてきて「お前も食ったことがない太巻きを食ったぞ。旨かった」とのたまうのだ。むー何てヤツだ。俺も食ったことがないものを食べるなよ!と思いながら今回は忘れずにそれを頼むのである。

金ちゃんがギシッギシッと巻き簀を締めていく。観ていると、何だか豪勢な具ばかりが巻き込まれていくぞ、、、

「はいっお待ち!これも醤油つけないでそのまま食べてね!」

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
これはベリーゴージャスリッチな太巻きじゃないかぁ!

海老、イカ、マグロ、とびっこ、そしてウニを牛トロが巻き、あの秘伝味噌が二筋アクセントに加えられている。ゴージャスな具がはみ出んばかりのこの太巻きにかぶりつくと、これはマジでヤバイ味である。激旨なのだ!牛トロは実は全てをまったりと包み込んで旨味を増すための介在役で、海老・マグロ・イカの旨さを強く引き出している。そしてウニと秘伝味噌が絶妙のコンビネーションでそれらの具に味を付け、世界を拡げているのである。

旨い!


「ヤマちゃん、まだだよ、これから出てくる牛トロの細巻きが旨いんだよ!」

と岡坂さんが言う。家に土産に持って帰る定番がこの牛トロ巻きなんだそうだ。


この牛トロ巻きには、ネギの細切りが仕込まれている。

「あれっいつもより肉が太いぞ!ヤマケンサービスされてるな!」

というその牛トロ巻き、これもまた絶品なバランスだった。

驚いたことに、牛トロ寿司に牛トロ軍艦巻き、太巻きと細巻きの全ての味がまったく違い、飽きることがない!これは本当に素晴らしい創作寿司だと思う。

しかし本当にこの牛肉が謎だ。一頭の牛からそのまま採ったものなのだろうか、どれくらい熟成させたものなのか、、、等々、頭を色んな推理がよぎる。

「あのね、うちの牛はもう買い入れる農家さんが決まってるんだよ!ほら、この記事を読めばなんでとろけるのかもわかると思うよ」

と言って、金ちゃんがある雑誌の特集記事を読ませてくれた。

なーるほどー
不飽和性脂肪が多量に含まれるような和牛生産をしている農家が、道内にいるのだそうだ。マジックだな、本当に。

しかし、そういった食材を発掘し、それにベストマッチな味噌を創り上げ、独自の路線を確率した金ちゃんは本当にエライ!普通の寿司を握らせても旨いのだけど、ここにきたらやっぱり牛トロ寿司を食わずに帰ってはならないと思う。

「いや、旨かったッス!」

「よかったよ!やまけんちゃんまたおいでよ!」

金ちゃんと、息子さんのケンちゃんと別れを交わす。またすぐこよう。冬はここでタチ(真鱈の白子)の握りを食うのが楽しみなのだ。

さすがに焼き肉と寿司を食って限界。皆さんと別れ、ホテルパコの自室に戻り、ベッドに崩れ落ちたところから、記憶がない。

2005年07月25日

もう一つのインデアン伝説 帯広インデアンカレーはやはりオリジナルで旨いのであった。

昨晩タップリ肉を食いすぎたせいか、朝になっても目が覚めない。眠い、、、シャワーを浴び、昨日の話を反芻する。JA幕別町との今年の取り組みは面白いことになりそうだ。今までよりググッと深い付き合いになり、同JAの誇る絶品農産物を世に問うお手伝いができそうだ。ムズムズしてきた。このブログでも連動企画としてやっていきたいのでぜひ御支援いただきたいと思う。

さて帯広と言えばインデアンカレーである。

「なに?インデアンカレーって、大阪でしょ?」

と言われるかも知れないが、なんと帯広に、大阪のインデアンカレーとは全く違うカレーチェーン「インデアンカレー」が存在している。しかも、「全く違う」とはいうものの、どうやらこちらのインデアンは、大阪のインデアンをリスペクトするあまりにできた店であるということだ。その辺のくだりは、僕がこの帯広インデアンに初めて行った時の驚きの記録をご覧いただきたい。

■2003年12月08日 なんと帯広にもインデアンカレーを発見
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/000129.html

さて
この帯広インデアンのカレーも実に旨い。十勝生まれで十勝育ちの岡坂さんやノムラさんにとっては「カレーの味と言えばインデアン」ということだ。そのインデアンだが、実は源流となるのは「ふじもり」というレストランというか食堂なのだそうだ。

「もともとはふじもりっていう店があって、そこの社長がカレー好きなもんで新しく創ったチェーンがインデアンなんだよなぁ」

ということなのである。よし、それじゃあ今回はその源流であるふじもりのカレーを食べてみようではないかと思ったのである。

帯広駅前からすぐの場所にあるふじもりは、真っ先に豚丼のノボリが目に付く、割と立派なこしらえの店構えだった。そういえば豚丼は今回一度も食べていないな、珍しい、、、と思いながら入店。内装は立派なものである。10時過ぎでまだ昼には時間があるため、店内には複数のおばちゃん連れが点在しているのみの平和な空間である。

ビシッとしたウェイター服のおっちゃんが来た時に「ここってインデアンカレーの元祖なんですよね?」と訊くと、ニッコリ笑って「左様でございます」と返してくれた。

メニューにはビーフカレーとカツカレーなどあるが、帯広内に点在するインデアンカレー各店とは違い、シーフードカレーや野菜などのバリエーションはない。インデアン各店では、インデアンルー、ベーシックルー、野菜ルーという3種のルーを使い分けた細分化されたメニューが楽しめるのだが、さすがは本流、さすがはレストラン。本道で攻めるという意志が見えるのであった。

さてビーフカレーを頼むと、今度はウェイトレスがお冷やを持ってくる、、、ここで驚愕の一品が!そう言えば昨日の晩、岡坂さんに言われていたのだ、、、

「え、ヤマちゃんふじもりに行くの? クックック、、、びっくりするよぉ、まずお冷やと一緒に緑色の液体が出てくるから、、、」

おおおっ!
メロンソーダがコップ一杯運ばれてきた!
なんたるサービス精神であろうか。

思えばメロンソーダというこの緑色の液体は、全くもってメロン由来のものが入っていなさそうにもかかわらず、ホンモノのメロン以上にメロン的魅力を湛えている。僕は今でも喫茶店にいくとたまにクリームソーダを頼んでしまうくらいである。それがお冷やと同じ扱いで出てくるとは、、、恐るべしふじもりである。

郷愁に満ちたメロンソーダを飲みながらしばし待っていると、ステンレス皿に盛られた、みるからにネットリ感の強そうなカレーが運ばれてきた!これが元祖(帯広))インデアンカレーである!

これは単なる好みの問題だろうけど、カレーを盛る皿は真円のものよりも楕円の方が美味しそうに見えるのは、気のせいだろうか。さてこのネットリ感の強いルーにはホロホロに繊維に沿って煮くずれたビーフ片が多く入っている。帯広インデアン各店舗では辛さ指定ができるのだが、今回は普通の味が知りたかったので会えて何もせず(通常僕は「辛口」を頼む)。

一口運ぶと、なんともまったりした、インパクトの強さではなく、まろやかさを感じる味である。これが本店のインデアンルーか。カレーブームの中で、辛さやスパイス香を極限に突出させたものが多く観られるが、そうしたカレーと違って静かにまっすぐの道を歩いているという感じの、美味しいカレーだ。

先日、週間アスキーの連載で取材した帝国ホテルのダイニング「ユーレカ」のビーフカレーにも煮たような感想を抱いたが(味は全く違いますよ、念のため)強い個性はないものの、一度食べたら忘れられない深みのある味である。野菜を多用し、調理しあがったルーを相当時間寝かせて出る味のように感じた。

いやしかしこのようなまろやかカレーを食べると、下はもっと刺激を、アタックの強さを求めてしまう。なんだか食欲増進されちゃうのである。このふじもりで豚丼を食べてみるか、それとも僕が愛用している、駅の反対側にあるスーパー長崎屋の店内にあるインデアンカレーに行って、シーフードカレーを食べるかしばし迷う。こうした時、僕は迷う時間に妥協をしない。この時も5分くらいじっと空になったカレー皿を眺めながら黙考し、「やっぱシーフードカレーを食おう!」と決意するに至った!

非常に丁寧な対応を受けながら勘定をしてふじもりを出る。地方の銘レストランという感じの、非常に好印象を受ける店であった。そのまま帯広駅内を突っ切り、反対側に出ると長崎屋がドドンと建っている。エスカレータで2Fに上がり、生鮮食品売り場を抜けてフードコートへ。懐かしのインデアンのスタンドが見えてくる。

この店にはちょっとだけ馴染みの眼鏡君がいつもいるのだが、ここ数回訪れている時には会っていない。今回厨房には女性陣ばかりであった。女子中学生や家族連れ、おっちゃんなどが食べている中、レジで「シーフードカレー、いやカツもつけます」とオーダー。そう、シーフードカツカレーは、この店で一番値の張るメニューなのである。JA幕別町農産部の凄腕課長、相澤さんが「俺は一番高いのが好きなんだよ」ということで編み出した高級メニュー(笑)である。

ご覧の通りメニューには色々あるのだが、インデアンルー、ベーシックルー、野菜ルーを使い分けしている。これにプラスして、辛さのチョイスが可能だ。

だから地元の人は、自分の好きなルーが使われているカレーをチョイスするのが通例だ。東京で、大衆店でこんなに複雑なオーダーができる店もそう無いだろう。

さてレジでお金を支払いカウンターに座る。もうすでに顔見知りの女性が手際よくカレーを作り出す。この店は、できあがっているカレーを温め直すだけではなく、仕上げ行程をきちんと入れるのが好ましい。特にカツについては、トンカツ屋と張るのではと思わんばかりの立派な、そして美味しいカツを揚げてくれる。

やはり十勝の地域性ゆえだろうか、トンカツは豚肉の質が圧倒的に良いいためか、実に素晴らしいのである。あがったカツをサクサクサクと6分割程度の短冊に切った後、一口で食べられるよう、横に包丁を入れて12分割にする。この大きさが本当に食べやすいのだ。そうしてカツを載せたご飯の上にシーフードルーをタップリとかける。カツは見えなくなりこのようなプレゼンテーションになるのだ!

みてお分かりだろうか、シーフードルーには、関東では観られないほどにタップリの魚介が詰まっているのだ!

観よ、この海老!

観よ、このプクンプクンしたアサリ!

この他ホタテ、イカなども入って、まさしくシーフードである。
そして香ばしくあがったカツがまた旨い!僕はカツカレーには、カレーがかかっていても別にソースをかけて食うのが通例だが、ここのカツカレーにはそれは必要ない。ソースがあまりに濃厚なので、厚みのあるカツもそのルーで食べられてしまうのである!

いやぁ こいつはマジで旨い!
シーフードカレーはベーシックルーという、タマネギの旨味をプラスしたルーである。まろやかでおとなしめのインデアンルーよりも旨味が濃いような気がする。ちなみに辛さは「辛口」にした。程よい辛さで、食べ終わる頃に額にうっすらと汗が滲んでくるくらいのスパイシーさである。

魚介の旨味をたっぷり吸ってネットリ加減を増したルーが硬めのご飯に絡みつき、カツの豚肉の上品な脂と淡泊さが合わさるとコクをさらに増す。間違いなく超絶品カレーである。サッポロを中心にスープカレーが流行っているが、それよりなによりまずは帯広インデアンカレーを味わうべきであろう(←私見)。

大満足して席を立つ。
しかしながらいつ観ても、この帯広インデアンのロゴマークは、大阪インデアンマークとそっくりである。どうひいき目に考えても意匠侵害の恐れがあるのではないかと不安になる。この先問題にならないことを祈るばかりである。なんといっても帯広インデアンは十勝のスタンダードカレーなのだから。

しかし朝10時からカレーを食べて、そしてシーフードカツカレーを食べて、これから僕は富良野に向かうのである。富良野といえば、、、そう!カレーで有名な唯我独尊である! つまり僕は夜もカレーを食べるのである、、、

2005年07月26日

本日は滋賀県

大津に来ています。
台風はまだゆっくり移動しているようで小康状態ですが、帰京予定の19時あたりどんなことになるのか戦々恐々。

そして明日の夜は青森出張、、、うーむ 台風と共に北に向かうルートだ、、、
どうなるのであろうか余談を許さない状況だが、本日しっかりと、日本を代表する発酵食品であるフナ寿司を堪能してきます。農家さんが家で作ってるのを所望しました。

2005年07月28日

青森にて

今、青森にいます。
連戦が続いたせいか体調を崩しました、、、熱が出て喉が腫れてきています。本日も講演なんだけどね、、、
しかも電波状態悪く繋がる時が少ない。
更新、お待ち下さい。
本日夜は秋田に回ります。

ただいま講演終了

講演終わりました。
秋田に移動する時間が余裕あるのでインターネット喫茶にて接続環境を得ました。
地方都市で重宝するのがインターネット喫茶ですね。本当にありがたい限りです。

昨晩は頭と喉が痛かったけど、津軽三味線を聴かせてくれるお店に連れて行っていただいて、久しぶりに津軽民謡を堪能しました。津軽はいい人が多いなぁ、誰と話してもいい感じです。

で、いい加減に書かなきゃいけないことが山積、貯まりまくっているのですが、富良野の唯我独尊編は書かねばならない内容なんで、もうちっとお待ち下さいませ。