やまけんの出張食い倒れ日記

北大マルシェで奇跡的に出会った、福島県の牛飼い 菅野さん。 黒毛和牛の経産牛の肉を送ってくれ、僕はそれを美味しく味わったのだ。3.11後、彼は福島を去り、新天地北海道に来たる。牛飼いは復活するのだろうか!?

2011-02-26№(011)

そう、この北大マルシェでとんでもなく奇跡的な出会いがあったのだ。

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「あの、菅野と申します。今年のはじめに、福島から経産牛の肉を送ったものです。」

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

マジで!? 本気でビックリした!

実はさかのぼること今年の正月あけてすぐの1月11日、菅野さんから初めてのメールをもらう。菅野さんは福島県で繁殖牛の生産をしていたのだが、繁殖用に適さなくなった(つまり受胎率が低く、子牛を育てる能力が衰えた)メス牛はタダ同然の廃用牛として値付けされてしまう。これを、経産牛として商品開発できないかと試行錯誤しているといのだ。

このブログでは何度も書いているが、経産牛は美味しい。条件によっては未経産の牛よりも断然美味しいのではないかと思うことが多い。和牛産地では誇らしげに「未経産(妊娠していない)の処女牛に限り育てています」というように銘打つところが多いけれども、僕からみればナンセンスなことで、経産牛のほうが肉の味の深みが出てくることは間違いない。ただし、特徴的な香り成分も増してくるので、ある時点からそれを「匂いがする」と知覚する人も出てくる。美味しい香りだと思う人もいるので、この辺は肉にどのような目標を置くかで変わってくる。

それはともかく、経産牛はもっと評価されていいのだが、現状はそうではない。そんなことを書いてきたわけだが、それに勇気をもらったという文面だった。それからしばらくして、肉が届いた。

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サーロインとヒレで、どちらも放牧&自家乾草のみで育てた経産牛だという。それにしてはけっこうサシが入ってるなぁと思う。

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早速焼いていただいた。グラス中心のサーロインにも写真のようにけっこうな小ザシが入る。これは先日の赤肉サミットに出品した、国産飼料100%の井さんのくまもとあか牛で確認済みだ。けど、実はこのサシはあまり脂ぎっていないので、結果的に食べてみると「すげーあっさりした肉」と感じる。

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実際、サーロインもヒレも同じような感想。あっさりしていて、若干肉の固さは強く、かみ応えのある感じ。ストイックな旨み。黒毛特有のブドウのような香りは浅い。おそらくコーンなどの穀物中心の再肥育をしていないからであろう。僕は十分に美味しい牛の肉だと思うが、これを「黒毛和牛」として出すと、イメージ的に違うだろう名と思った。

ということを、ブログに書いてからメールで送ろうと思っているうちに、、、3月11日を迎えたわけだ。申し訳ないことに、本件をすっぽり忘れてしまった。

その菅野さんが、北大マルシェにきていた! でも、なんで!?

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「福島でこれからも牛飼いを続けることは難しいと考えて、経営をたたんできました。しばらく北海道の知人のほうに身を寄せて、今後を考えようと思っています」

そうなのか!

福島には今月僕もずーっと気になっていた産地を周りに行くが、すでに彼の地を去った人も居る。本当に残念だ。きちんと賠償金等出ているのだろうか、気になるところだ。

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写真は、そんな菅野さんのありし日の牧場風景をカードにしたもの。もちろん買わせていただきました。

「これから牛飼いやらないの? 短角牛なんかどう?」

と北大牧場の管理者である秦先生が笑いながらオルグする。短角牛がいいかはともかく、せっかくだから牛飼いの道を再度目指していただきたいなぁ、とも思う。だけども、牛肉を巡る状況は空前の酷さだ。牛飼い達に先が見えない状況になってしまった。

ともあれ菅野さんの今後の道のりが拓かれることを心から祈る。菅野さん、不思議な再会でしたね。また会いしましょう。

この後も、出店している農家さんを紹介してもらい、試食や話を楽しんだ。

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そろそろ帰ろうか、と妻と一緒に出口に向かおうとしたところで、大ボス発見!

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林 美香子さん。元札幌テレビアナウンサーであり、現在慶應義塾SDMの特任教授であられる。先日、ホクレンT氏のご紹介で一緒にホルモンを一緒に食べた(注・林さんは肉を食べられない方なので、野菜とシーフードのみ)のである。いやぁビックリ!

「小林先生にヤマケンさんが来てるよって言われて探してたのよ!会えてよかった!」

こちらこそですよ!母校がお世話になっております。

という、実に様々な人とのつながりができた北大マルシェだったのである。

ところでこのマルシェの仕掛け人である小林先生から「ぜひ、辛口な批評を」ということだったので、マルシェ運営側に対する評価をば。

一言でいうと、これは内輪受けでゆるされる学園祭ではなくて、学外の来場者に向けたマルシェなのだということをきちんと認識しないとダメだよ、ということに尽きる。学生よ、もっとちゃんと「仕事」しなさいってことだ。

一日目の各ブースをぶらついたが、学生がサポートに入っているものの、どうも彼らの物腰が「手伝います」的スタンスから脱していない。気合いを入れて客を呼び込んだりコミュニケーションしているのは、農産物生産のハイシーズンである夏にわざわざ商品抱えてやってきた生産者や関係者自身である。マルシェは北大が主催しているのだから、そこの一員として、学生はもっと「自分ごと」として取り組まないとダメでしょう。

出展者から文句も聞いた。各ブースの出展者は事前に、プロフィールや売り文句など、けっこうな情報量の書式を提出させられたらしい。それを看板やPOPのようにしてブースに飾るからということで、面倒だけれども提出したと。しかし、ふたを開けてみたらそんな看板や情報が書かれたものはどこにもない!たしかに各ブース、印刷された紙で小さく何を売っているか書いてある程度で、情報量が圧倒的に少ない。準備側がおいついていなかったそうだ。二日目にはリカバーしたのだろうか?

それ以外にも、エレゾ・マルシェ・ジャポンは前日入りして、プリンを600人分仕込む予定だった。そのための調理施設などを用意しておくということが通っていたにもかかわらず、なんとそのスペースが確保されていなかったという。これには彼らは怒りを通り越して、虚脱していた。

まあ、所詮は大学だからネ、、、というあきらめの言葉ではゆるされない、非常によろしくないことです。きちんと運営しましょう。などと好きなことを書いたけど、「そんなこと言うなら手伝えよな」と坂下先生・小林先生から言われそうで戦々恐々(笑)

北大マルシェ、頑張ってください。来年も期待しています。