この4月1日から、東京都中野区にある新渡戸文化短期大学の食物栄養学科の専任教授となり、食物栄養学科の学科長に就任しました。しばらく前に、「4月から新たな仕事がスタート」と書いていたのはこのことでした。念のため言っておきますがエイプリルフールではありません。
新渡戸文化学園は、森本厚吉先生によって拓かれ、あの新渡戸稲造先生が初代学長を務められた、あと3年で創立100年を迎える学校です。雑誌「PEN」の2月号の「新しい学校」特集で大々的にとりあげられていたので、「あそこか!」という方も多いでしょう。
新渡戸先生は札幌農学校(いまの北海道大学)を出て、そこで教鞭を執られていた方。僕も、博士号を北大農学院でいただいたので、ご縁を勝手に感じます。学園には幼稚園から小中高校、そして短大があります。短大は臨床検査学科と食物栄養学科の二つ。その食物栄養学科が、25年4月に『フードデザイン学科』となります。
食物栄養学科は栄養士を養成する伝統ある学部なのですが、栄養士を養成するコースに加え、もうひとつ「食生活デザインコース」を創設します。
このコースの立ち上げの仕事で、ブログを書く暇もなくなる状況だった、というわけなのでした。本当は、学生達にたべもののあれこれを教えて、ゼミを持って研究室でこそこそとやりたいなあ、と思っていたのですが、どこで変わってしまったのか、新しいコースを立ち上げるということになってしまいました。それも、これまで非常勤講師はしてきましたが、専任教授となるのも初めてなのに、いきなり学科長。これからどうなってしまうんでしょうか。
粉骨砕身、頑張ります。
この新しいコースではどんなコトを学べるのか?
食物栄養学科は栄養士資格を取得できるのですが、じつは一定数、卒業後に栄養士の道を選ばない学生がいます。そうした学生が学びたいのは、食に関わるビジネス領域のことであったり、そしてとても今日的だと思うのですが、SDGs的価値観に基づいた食のあり方を具現化していきたい、またはそうしたことに関わる仕事をしたいという思いを持つ学生が多いと感じるのです。そうした学生の思いに応えるための内容を、食生活デザインコースで用意しました。
まず、伝統ある食物栄養学科の重要な学問である栄養学・調理学・食品加工学に関しては、その基礎的な部分はミッチリと、栄養士養成と同様の講義で学んで習得してもらいます。
その上で、「フードプロデュース」では商品開発の実務を、わたしがお付き合いをしてきた現場の方々を招いて、学生自身で企画・開発を学んでもらいます。
「フードマネジメント」では外食・食品メーカー・小売などさまざまな立場のビジネスがどう成り立っているのかを、やはり多様なゲストを招いて体感してもらいます。
そしてそして、「おいしさの科学」「フードテック」「応用調理学」ではなんとあの樋口直哉君に講義を担当してもらいます。樋口くんが正式に「先生」となるのはまだ稀少なことと思いますが、もう離しません。
「フードデザイン論」は本学科の思想的土台となりうる講義ですが、あの最高にエキサイティングな「FOOD DESIGN ~未来の食を探るデザインリサーチ~」を書いた緒方胤浩さんをお招きし、3Dフードプリンタを駆使して学生にフードデザインの考え方を叩き込んでもらいます。
「食文化論」では、なんとあの食文化研究の大家である森枝卓士先生においでいただくことが実現しました。森枝先生を鎌倉まで口説きに行きました(笑)
「食と地域の課題論」は、今後の日本にとって大きな課題となる地域・地方の課題を食の分野から解決していくためのフレームワークを学びます。百貨店の丸井の食品バイヤーを務めたのちに徳島の地域商社「阿波ふうど」で地域商品のマーケティングを行い、いまはネイビープランニングという会社を立ち上げて地方の佳い食品を開発支援・販売支援を行う溝口康さんに、日本国内の話を担当いただきます。そして世界に関しては、日本のカレーをカンボジアやタイといった東南アジアで売り込む、という学生インターンシップ企画「SAMURAIカレー」を率いる森山たつお先生に受け持っていただきます。
そして、幅広い食の産業で働くときに、企画・開発をするだけではなく、それをアウトプットする力を養うことが必要です。
そこで「フードメディアプロデュース論」では、食品やサービスのプレスリリースを発出する技術を身につけるため、食のテキストライティングと、自分で最低限のテーブルコーディネイトを行い、写真撮影を行う。また動画撮影も行い、編集して作品化するというところまで、ガッチリ手を動かして学んでもらいます。服部学園でキャリアを積み、いまや食の動画編集のヒトとなった志賀元清先生に動画をお願いします。あ、写真とテキストは私とゲストで構成します。えーと、食の編集に携わる僕の友人のみなさん、いきなり「講義お願いね」と連絡行きますのでよろしくお願いします。
まだまだあるのですが、いま公にできるのはこんな感じです。
ちなみに、高卒だけでなく、大学を卒業したけど、やはり食の学びに興味があってという方や、社会人の方の学び直しということもお受けします。というより、すでにそういう方も一定数、いらっしゃるのです。
関心のある方はぜひ、公式ページをご覧下さい。
■食生活デザインコースの公式Web 食生活デザインコース | 学校法人 新渡戸文化学園 新渡戸文化短期大学
https://www.nitobebunka.jp/department/food-nutrition/dietary-design/
ということで、今年度から忙しくなります。
あれ? やまけん、自分の会社やコンサル、執筆の仕事はどうするの? と思ってくれた方、ありがとうございます。幸いなことに新渡戸の専任になるといっても、会社経営は続けますし、執筆やメディア出演、できる範囲でコンサルも続けていきます。
日本の食文化創造のための教育の世界で、新しいページを開いていきたい。そのための仲間を募集します。ご関心のある方、そして周りに食に興味を持つ高校生のお子さんがいらっしゃる方、ぜひオープンキャンパスにおいでください。私がご案内します。
さー 頑張るぞ!