やまけんの出張食い倒れ日記

三軒茶屋 盛岡じゃじゃ麺「じゃじゃおいけん」と カレー「とんがらし」のハシゴ その1

 すっげー気になっていたのだ!とうとう、東京にあの盛岡じゃじゃ麺の専門店ができたというニュース! 「元祖盛岡じゃじゃ麺専門店 じゃじゃおいけん」というその店、三軒茶屋の思いっきり小さな店らしいのだが、ココロザシの高い若店主により営まれているという。うーむ食べに行きたい。

 と、そこに「三軒茶屋には美味しいカレーを出す「とんがらし」という店がある。」と、カレー好きYからの情報が。それぢゃあ、ぜひこの二軒をハシゴしよう!ということで、急遽三茶に出向いたのであった。もちろんこんなハシゴ企画にYがのってくれるはずもなく、事前に僕が一人でじゃじゃ麺を食べ、その後カレーをということなんだけどね、、、

さて
 盛岡じゃじゃ麺という食べ物をご存じだろうか?中華料理屋で出てくるジャージャー麺とは違う。盛岡オリジナルの素晴らしい麺料理だ。通常、日本の中華料理店でジャージャー麺というと、ラーメンの麺と同じような灌水(カンスイ)入り、玉子麺を茹でた上に、キュウリの千切り、もやしの茹でたのを置いて、そこに甜麺醤(てんめんじゃん)タップリの肉みそをかけたものを指す。
 一方、盛岡のじゃじゃ麺は小麦粉・塩のみで練った、うどんを平べったくしたモノ、、、というかきしめんみたいなプレーンな麺だ。そして、その麺が茹で上がると、水に通すことなく熱いままをドンブリに盛り、キュウリやネギをトッピングし、ここに肉みそをかける。スタイルは同じなのだが、肉みその味や先述の麺の違いなどから、全然別物だと言える。

 この盛岡じゃじゃ麺を創り出したのが、盛岡市内にある老舗白龍(パイロンと読む)」だ。僕は今から8年前の大学院生時代に、講演のついでに東北一周をしている最中にこの店に行って食べた。あまりに美味しくて、普通盛りを食べた後に大盛をもう一つ食べた!
 この店で面白いのは、じゃじゃ麺を食べ終わる頃、少し肉みそを残しておき、テーブルの上の生卵を割り入れてかき混ぜ、厨房に「チータンお願いします」と言うと、うどんの茹で湯を入れてくれるのだ。これがかき玉肉みそスープ「チータンタン」である。こいつが実に旨いのである!以来、じゃじゃ麺の店が沢山できるのだが、この「白龍」こそが、チータンのスタイルも含め、盛岡じゃじゃ麺の発展に多大な影響を与えているわけだ。

 で、実は、本場中国のジャージャー麺は、実は盛岡じゃじゃ麺スタイルらしい、という説がある。こちらを参照して欲しい。

炸醤麺と水餃子情報

僕はこのWebを1年くらい前からチェックしているのだが、とにかく情報量がスゴイ!ジャージャー麺に対するあくなく執着心を感じる、お見事な論考ページだ。いや、論考どころか中国や台湾にも実際に足を運んでジャージャー麺研究をしておられる。世の中、素晴らしい食い倒ラーが居るものだ、、、

 さて話を戻すと、その盛岡じゃじゃ麺の店が東京にできた!と言うわけだ。

■「元祖盛岡じゃじゃ麺専門店 じゃじゃおいけん」
http://member.nifty.ne.jp/yudai/oiken/
↑この方のWebで、店へのアクセスや食べ方が説明されているので、読んでください。

 で、申し訳ないんだが、この日、デジタルカメラを忘れた!なので久々に活字オンリーである。うーむこういう時のためにカメラ付きケータイというのがあるわけだなぁと納得。

 三軒茶屋の南口から歩くこと5分。コスモ石油の裏手にその店はあった。中にはいると本当に小さい。カウンターが9席くらいの店だ。その時店内にはお客は居なかった。

「いらっしゃいませ」

メジャーリーグ・マリナーズのイチローをもう少しぼんやりさせたような、長身の若い店主が迎えてくれる。愛想笑いのヘタそうな、ひたむきな一直線のまなざしを持っていう。

「中盛り。」 ←この後にカレーも食べるのでセーブした

麺が鍋に入る。わりと小刻みに箸でかき混ぜながら茹でているのをみると、くっつきやすいのだろう。麺がゆだるまで店内を眺める。直筆らしい筆字で書いた、じゃじゃ麺の食べ方などの解説がある。そして、ところどころに詩のような、決意表明のような文句をしたためた色紙がある。きっとこの店主が書いたのだろう。

と、男性客が一人入ってくる。すぐ後に女性の一人客も入ってくる。女性は、中盛りにビールを頼んでいる。かっこええなぁ。

 と、じゃじゃ麺が出来上がってくる。うーん 写真がないのが残念だ、、、実に盛岡じゃじゃ麺なのだ。白いきしめんのような麺の上にきゅうりとネギの小口切りが乗り、無造作に肉みそがぽってりと載っている。さて、食べる作法だが、、、とにかくこれをかき混ぜるのダ!上品に食べてはいけない。じゃじゃ麺は絶対によくかき混ぜて食べる食べ物なのだ

 これでもかと言うくらいにかき混ぜ、全体が肉みそに絡まったら、食べる。温かい麺に絡んだ肉みそは、ゴマがタップリ入っており、風味が香る。味はそれほど濃すぎず、上品な肉みそだ。キュウリとネギの食感が素晴らしいアクセントになり、どんどん食べ進むことができる。
 僕としては、白龍の肉みそのギトギト感が欲しいところだが、この店のスタイルはこのあっさり上品系肉みそなのだろう。それに異論はない。実に美味しいじゃじゃ麺だと思う。

 ここで異変発生。隣の男客にもじゃじゃ麺が運ばれたのだが、彼はやおらすり下ろしニンニクを放り込んでかき混ぜている。そのニンニクの香りが暴力的に僕を揺さぶるのダ!いや、実はニンニクは絶対に入れるべきなのだ!でも、、、おいらこの後、人と会うんだよネ、、、と、やまけんらしくない弱気姿勢で、入れてなかったのだ。うーんニンニクいれてぇ と思いながら自制する俺様だった。

 最後の一口を残し、卵を割り入れてかき混ぜ、店主に「チータン」と言って渡す。当たり前のように茹で湯を入れてくれ、あのチータンタンが運ばれてきた。湯気の立ち上るそれを啜ると、小麦粉が溶けた湯の、茫洋とした拡がりの中に肉みそとネギ、そして混沌からカタマリへと遷移し始めた生卵がからみ、喉を焼きながら通っていく。 これに出会いたかったのだ、、、

 一気に食べ、勘定(650円)をする。店主に旨かった、東京に店を出してくれてありがとうと声をかける。

「盛岡の方ですか?」

と目を輝かせながら若店主が言う。

「いや、違いますけど、白龍のファンなんです。」

と言うと、にっこり笑ってくれた。

この店主、目力がナカナカひたむきで佳い。じゃじゃ麺の味はこれからもっと深みを増していくだろう。この店、カメラを持って近く再訪しよう。そしてこの次は絶対に、特盛りににんにくを落として食べよう!と決意しながら、カレーの「とんがらし」へ向かうのであった、、、

(続く)