やまけんの出張食い倒れ日記

神田で昼飯はハシゴが基本だよね。 天玉そば「かめや」と親子丼「伊勢」

東京駅からほど近い「神田」って、渋い大人の町(というかサラリーマン天国)だと思うのだが、昼飯を食おうと思うと選択肢が一杯ありすぎて困る。どこもかなり工夫していて激戦区なのだ。けど、腹が激減りで、かつ急いでいる時に僕が使うコースはここしかない、というのをお教えしたい。ていうか絶対にこの近辺に居る人は、同じコースを楽しんでいると思うんだが。

それは、極上の路麺系天玉そば~トロトロ半熟系親子丼の二連戦というコースだ。

まず、JR神田駅の東口(ていうのだろうか)を出て横断歩道を渡り、ガード下の右側にでたところの奥にある立ち食いそば「かめや」に直行。

都内中心に数店舗展開されている店だが、天玉そば元祖の店と銘打っている、路麺界の一流店である。神田には西口にも店舗があるらしいがそちらには行ったことがないんだよな。

昼時はかなり満員率が高いのだが、なんとか潜り込もう。天玉そばは380円。店員に声をかけ、カウンターにダーク(狭いカウンター内で肩を斜めにして立つこと)で立とう。ダークで立たないとケンカの元だからね。

カウンターにおいてあるかき揚げをみると、ふんわり柔らかく、白く上がっている。卵の含有量が少ないのだろうか、この白さがここのかき揚げの特徴なのだ。

この店ではけっこう茹でたて麺が食べられる率が高い。この日も僕の注文から新しく麺を茹でていた。「すこーし麺茹で、待って頂けます?」と言われるが、茹でたて食えるなら待つのは大歓迎である!ザッザッとザルをあげ流水で洗っている量をみると、5玉分くらいと少なめに茹で上げしている。ということは、 一回の茹で量を少なくしている=こまめに茹でている ということで非常に良心的なのだ!

「はい おまちー」

出た!どうだろうかこの白いかき揚げ。ふんわり感が漂ってくるだろう。右中央についているのは温泉卵。ここの天玉は温泉卵なのがポイントなのだ。これにはかなり賛同する。完全な生の白身は、つゆの温度を急激に下げてしまうし、中途半端に固まるので処理にこまることがあるからだ。

つゆは完膚無きまでに醤油色の濃い関東風で、甘めだ。この甘め加減が絶妙で、かき揚げ天を崩してつゆに浸し、温泉卵の黄身を削ってチョイと載せ、下に横たわってる蕎麦と一緒に口に啜り混むと、もう堪えられない世界が拡がるのだ!この感覚を味わうためには関西風の透明度の高いつゆでは無理。

昔から関東風と関西風のうどん・そばつゆの比較で「醤油そのままじゃんか」と言われてきた関東風のつゆだが、愛媛出身の母を持ち、埼玉にいながら関西の味付けの食卓で育った僕ながら、関東風のつゆは大好きである。両者は明らかにベクトルが違うものであって、対立するものではないのだ!

元来、千葉の銚子や埼玉の川越といった醤油蔵がある街が点在していた関東では醤油に含まれる複雑なアミノ酸の旨味世界を最大限に活かした味付けにこだわった。他方、関西では醤油よりも昆布やいりこ+塩分で仕上げたつゆに合わせるため、うどんや蕎麦の麺質もそれにコーディネートされたのだ。昔、蕎麦の専門誌で実施した調査では、関西と関東の蕎麦屋での仕入れコストに占める醤油・昆布・かつお節の割合が全く違い、上述のような結果が出たそうである。

まあ、そんなことはどうでもいい!関東風のドブドブと茶色い濃厚な醤油出汁も大好きなんだ!ていうか通常おれはこっち派だもんね。この醤油の旨味成分の濃さがかき揚げ天に染みこむことによって、天ぷら・玉子・蕎麦の素晴らしき三位一体世界を形作るのである。そういえば関西であまりかき揚げ天を観ないのは(海老天が多いよね)かき揚げが出汁を吸った時、関西風だと味が添わないからではないか、などと推考。

まあそんなことを考えながら2分くらいで蕎麦を啜り混んでしまう。ちなみにここの蕎麦は立ち食いの中ではかなりレベル高い。盛りで頼んでもいいくらいである。

さっと食べ終わり店を出る。かなり深い満足感に浸っているものの、まだ腹は減っている。

そこで先ほど駅から渡った横断歩道を戻り、北に10メートル歩くと、駅のガードに沿ってあずまや風の小さな風体の親子丼「伊勢」がある。

この店は「伊勢ろく」という鶏料理専門店の支店で親子丼しか出さない。
※注:というのは嘘で、夜は焼き鳥やさんになるらしい。夜にいったことないからしらんかった!funaeさんご指摘ありがとうございます。
親子丼といえば湯島の鳥つねやバードコートが有名だが、この伊勢では680円で気軽に食べられるのが吉である。大盛りは100円増しだ。

やたらと狭い店内のカウンターに腰掛け厨房をじっと見ていると、深めのバットに卵を割り入れリズミカルに掻き混ぜている。

親子鍋に二回に分けて卵液を注ぎ、ふんわりと仕上げて白飯に盛り、蓋をして出てくる。

蓋を開けると、半熟トロトロの親子世界が拡がっている!湯気とともに心が踊る瞬間である!

地鶏なのかなんなのか、それほどインパクトの強い鶏肉ではないが、臭みもなく旨い。親子には適している品種なのだろうな。この店では特製七味をふりかけて蓋をしばらくして蒸し、それから食べることを推奨されている。たしかにそうすると旨い!

あとはもうこの親子世界を掻き込むだけだ!水分が多いので、急いでいる人が掻っ込むにはちょうどいい。これぞ丼の真骨頂だろう。

神田お急ぎ充実昼飯コースといえばこれに尽きるかな。JRの改札に戻るまで、15分~20分だ。腹は満腹、心はせわしないが、それもまた東京らしいじゃないか!