松山、道後温泉で最も格式の高い温泉旅館「ふなや」で目覚める。結局、今回のメンバ3人とも自慢の温泉には浸からることがなかった!僕だけしっかり朝飯を食べて集合。
「今日は結構回りますよ!なので、大型バスで移動です!」
うおおおお本当に大型バスである。二宮さん、堀江君と共に乗り込み、本日のスケジュールを観る。
■2日目
④味噌・醤油の梶田商店(大洲)
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⑤じゃこ天・おがた蒲鉾(宇和)
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⑥ゆず商品・高田商店(広見)
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⑦じゃこ天・かどや(宇和島)
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⑧じゃこ天・島原かまぼこ
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⑨じゃこ天・田中蒲鉾
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⑩以降、現地対応
「最初は味噌と醤油ね。チョイっと舐めればいいんだな」
なーんて話していたのだが、全く甘かった!松山から小一時間、大洲(おおず)の河原に駐車し、古い町並みに入る。
最初の店、梶田商店の暖簾が見えてくる。若旦那と大旦那が半纏を身にまとい出迎えてくれた。
「こんな遠いところまでよくいらっしゃいました!」
この梶田商店のメインは言うまでもなく醤油である。四国の醤油は若干甘め濃い口が多いのだが、果たしてこの店のはどうだろう。二宮さん、堀江君とともに醤油蔵を見せて頂く。
この四角く区切られたコンクリの部屋一杯にドロドロに満たされているのが、醤油のもろみである。上の方は醗酵しぶくぶくと泡を立てている。
「うちは、通常の脱脂大豆での醤油だけではなく、丸大豆の製品や、もっと手をかけた再仕込み醤油というのも作っています。あとでごゆっくり味わって頂きますよ!」
そう、醤油や味噌を仕込む際には、コストの面から油を絞った後の脱脂大豆粕が使われていることが多い。丸大豆で仕込んだ方が旨いに決まってるのだが、価格差が1.5~2倍になるので消費者はどうしても安い方を選びがちだ。
でもね、醤油っていつも使うものですよ。基本中の基本調味料。それの質がアップすれば、なんだって美味しくいただける。500円の普及価格帯の醤油と、1000円の醤油を比べても、日々使って1ヶ月で使い切った場合、日々の価格で割って考えて欲しい。20円30円の差だろう。それをケチったところで微々たるモノだ。ということで僕は味噌・醤油はお金に糸目をつけないことにしている。
で、ここの醤油だが、丸大豆もあるが再仕込み醤油があるという。これは、できあがった醤油を、新しく仕込む醤油のもろみに半分程度足して再度熟成をかけるというものだ。醤油がどんどん濃縮されていくわけですな。当然、旨味アミノ酸含有量は比べモノにならない。
「な、舐めたい、、、」
「ぜひぜひ、沢山味わって下さい!刺身を用意してますから!」
おおおおおおおおおおおおおお
なんと刺身!
そうだよな醤油だけなめたって個性がわかるわけないもんな!瀬戸内の新鮮なイサキとアジの刺身を、この梶田商店自慢の丸大豆醤油と再仕込み醤油「巳登勢(みとせ)」でいただく。
丸大豆醤油にイサキをちょいと浸して口に運ぶ。甘めのアタリを想像していたが、予想を大きく裏切り、実にシャープな切れ味の醤油の香りが立ち上ってきた!
「うぉっ 旨いじゃないか!これ、甘草とかはつかってない感じですね。」
大旦那が静かに
「うちは余分なものは入れません」
と仰る。うん、そう言う味である。ただし丸大豆は切れ味があるが、逆にコクの深さがもう少し欲しい。そこでとなりにある再仕込み醤油「巳登勢」を味わってみる。
イサキの淡泊な身に醤油を流すように漬け、舌にのせる。瞬間、見事な深いコクと醗酵香が舌と鼻に抜けた!再仕込み醤油のまろやかで拡がる味わいが、淡泊なイサキの身の甘さを最大限に引き出している!
「ぬおおおおおおおおおおおおお こいつぁ 素晴らしい醤油じゃないですか!」
いやビックリである。正直、舐めていた。醤油なめてバスに乗ってじゃこ天だ、と思っていたんだが、初っぱなからかなりハイグレードな攻撃である!
「実はうちでは、この辺に自生していたモチ麦の製品開発をしていまして、、、モチ麦を麺にしたのがこれです。」
なんとモチ麦のうどんである。
モチ麦とは、大麦に由来する品種で、名の通りモチモチとした食感の品種だ。βグルカンという食物繊維が豊富に含まれているので、昨今では機能性が見直されている。けど、そんな機能性より何より旨いかどうか、である!と思いながら啜った。瞬間、なんとも強いもちっとした弾力が歯に圧力をかけてきた!しかも小麦より風味が豊かで、蕎麦とも違うが小麦とも違う、独特の香りと味がするのだ!
観よ、このテクスチャー!うどんって感じじゃないね。
「いやぁー旨いなぁ!」
と、どんどんこのモチ麦うどんをすすり込んでしまった!あとでこれが尾を引くのだが、、、
「山本さん、これも舐めてみて下さい!」
と出てきたのが、モチ麦味噌である。す、すげえ旨そうなんだよねぇ、、、
結果的に実はこのモチ麦味噌が一番僕の気に入った!モロモロとしたこの外観通り、モチ麦がもろみ状態の一番セクシーな香りのする醗酵加減で、塩加減はそれほど強くないため、ご飯にドンとのせて食べることが出来る!
「ごはんにはもろみもありますからこちらを、、、」
といわれてもろみ製品をいただいてみたが、こっちのモチ麦味噌の方が旨い!これ、実に最高である!
愛媛の味噌は、麦の含有量が他地方より高い。麦は強く糖化するので、甘めで旨味の濃い味噌になる。そして独特の麦の風味が漂うのだが、これがマジで僕のスイートスポットを突いた!思わず、出してもらったモチ麦ご飯を3杯も食べてしまったのであった。
「いやぁ~ 醤油と味噌をなめるだけかと思ったら全然違ったなぁ、誤算だったよ」
二宮さん、堀江君と話ながらバスに乗り込む頃には、もうすでに腹が4割方満たされている状態になってしまったのであった。
さて
高速に乗って一路宇和までひとっ走りである。お次は、嬉しいことに僕のblog本にも登場している「おがた蒲鉾」にて、揚げたてのじゃこ天を食べさせてもらうのである!
■おがた蒲鉾
愛媛県西予市宇和町大江412-1
0894-62-5880
この店は本には書いたけど、このblogの記事にはなっていない。まあ、詳細は本を読んでください(笑)
このおがた蒲鉾は、元々八幡浜(やわたはま)という地域にあったのが、宇和町に移ってきたのである。従って八幡浜の味と言って良いのだろうと思う。
前にも書いたと思うが、じゃこ天は地域によって味が違う。これがヘタをすると地域間紛争になるくらいの好みの違いがあって、南予の宇和島の人たちと八幡浜の人たちは「うちのがホンモノじゃ」と譲らないというくらいのこだわりを持っているのである。僕が生まれ落ちた今治の蒲鉾やさんのじゃこ天はさらに全く違って、南予のじゃこ天よりも色が白っぽい。これは、宇和海でしか原料魚のハランボ(ホタルジャコ)が獲れないからだろう。このように土地、素材、造り方などでまったく味が変わるのがじゃこ天なのだ。こんなにも多様な世界があるなんて、素晴らしいではないか!
さてこのおがた蒲鉾のじゃこ天は、八幡浜派という感じなんだろうが、非常にバランスのよい、誰が食べても美味しいと言うだろう味だ。
さっそく出てきた揚げたてじゃこ天にかぶりつく。
「おおっ 揚げたては本当に旨い!」
と堀江君がビックリしている。二宮さんと僕はニマーっと笑う。そう、揚げたてのじゃこ天は、旨いもの世界ランキングでも上位に入ること間違いないんである。あ、でも静岡県の「黒はんぺん」のフライにソースをかけたヤツも、相当上位に入るけどね。
ブログ本の取材でお世話になった河野さんが「どうぞ工場内を観ていってください」と言って下さるので、3人で中に潜入。
これがじゃこ天の原料、「ハランボ」である。学名はホタルジャコ。宇和海でしか水揚げされない希少な魚である。
このハランボの頭などを落として粗くすり身にされた状態で、最後の練りと揚げがあるのである。灰色で決して見た目は旨そうでないが、これが薫り高く味わいの濃い絶品に仕上がるのだから、世の中面白い。
さてじゃこ天の横では蒲鉾(かまぼこ)が作られている。蒲鉾の原材料はエソという魚だ。これに塩分と少量のつなぎすり身にした物を板にのせて蒸したりボイルしたり揚げたりという形で蒲鉾になっていくわけだ。
このすり身を薄い油揚げに塗り、それを巻いて蒸した物が、揚巻だ。
これがまた旨い!仕上がりはこんな感じである。
こういうのを食べつけていると、なんだかクスリ臭い人工的な蒲鉾は食えない!
あと、旨かったのがちくわだ!
焼きたてのちくわは本当に旨い!蒲鉾にするのもちくわにするのも実は同じすり身だ。なのにこんなに味わいが違うなんて、面白いではないか!
「いやぁ ご馳走様でした!」
しかしじゃこ天も蒲鉾も食いまくって、だんだん腹が重くなってきた。この先大丈夫なんだろうかという不安をはらみつつ、巨大バスに乗るのであった、、、