やまけんの出張食い倒れ日記

これぞ こごみ祭り! 山形県朝日町より、奥山で採れた本コゴミがやってきた!

いやもう悩殺というほかない。
これが春の山菜の代表格の一つ、本コゴミである。

なんという力に満ちたフォルムさであろうか、、、
濃緑色の茎部と、先端の丸まりの中に密やかに息づき、まさにこれからその力を放たんとしている葉のすぼまりが、なんともダイナミックである。

すぼまりの中に精密に折りたたまれた葉は、ご覧の通り正確なシンメトリーと入れ子構造を描いている。葉の部分の薄緑色と、軸の部分の濃緑色の対比が鮮やかで、本当に息を呑んで見入ってしまう美しさだ。

60mmマクロレンズで拡大しているけれども、このコゴミの先端部は2.8cmくらいの、親指と人差し指でつくる輪っかよりも全然小さいサイズだ。そこに、こんなに美しい世界、いや宇宙と言っても良い秩序とパワーが内包されてる。いや、本当に植物は美しい。そして恐ろしい。人間の手が届かない世界である。

しかもこのコゴミは「本コゴミ」と言っているように、山菜を人為的に栽培したものではなく、野山それも奥山(奥の山)に生えているものを摘み取った、本物の野生の山菜なのである。人知とは無縁のところで生きている植物なのだ。それはそうか、コゴミは草蘇鉄(クサソテツ)と呼ばれるシダ類の植物であり、その歴史は縄文期以前にさかのぼるほど古いのだ。

この本コゴミ、リンゴプロジェクトの話が進んでいる山形県朝日町の阿部さんが送ってきてくれたものだ。

朝日町の阿部です。 今日の夕方発のドラネコクール便で「本コゴミ」を送ります。 少しですが、どうぞ…。

今年、そして今も、山形産の奥山の天然ものの本コゴミはまず食えないと思いますので…。
(畑などに移植しているものは別です。そちらは今が真っ盛りです)

さっき、親父がやまから戻ってきて、今、選別中です。

先日家族で食べたときは、我が家でも初物でしたので、天ぷらやおひたしで「やっぱり山採りはうまい」と唸りながら食いました。ぜひ、おひたしで食べてください。

①おひたし
ゴミをはたいた状態でつめています。塩を入れた、たっぷりのお湯でゆでてください。(細かいゴミは、ゆでると浮いてきたりしてコゴミから離れていきます。が、気になるときは事前に洗ってください)

②天ぷら
そのまま揚げてください。(あげる前にゴミを取ったり洗ったりしても大丈夫です)

いや、阿部さんのお父さんが選別してくださっている写真、もうホントに涙がこぼれそうになります。
ありがとうございます!

そうして届いたのがこれだっ!

全然 「少しですが、、、」 じゃないゾ!

いやー 2キロ発泡スチロール箱にいっぱいの本コゴミ。濡れた新聞紙で丁寧に包まれていた。
阿部さんからは、「届いたらすぐに蓋と新聞紙をとってね。そうじゃないと、箱の中で育っちゃうらしい!」といわれていたのだが、もう昂奮してそれどころじゃなくすぐに撮影である。


さて
夜はもうコゴミ祭りである。
言われたとおりに塩でさっと茹でたものを、1/3程度の量は一番だしと醤油、塩で濃いめにつくった地に浸しておひたしに。そして嫁が木綿豆腐で白和え衣をつくってくれたので、白和えに。メインディッシュは天ぷらを僕が揚げ、味噌汁は我が家で一番気に入っている安藤醸造元の味噌で、コゴミだけを具にした。

山菜料理というと、かなりものものしい手の込んだものを想像しがちだが、わりと産地では簡単におひたしにして食べていることが多い。ただし茹でた山菜を何で味付けするかだけがバリエーションのあるところで、例えばゴマ和えかと思ったらエゴマだったり、それもエゴマの磨り潰し+醤油ではなく味噌を混ぜてあったりと、なかなか日本料理のテキストではみられないような組み合わせで僕らを幻惑する。

でもまあ、基本的には濃いめの出汁に浸すだけで十分に旨い。

先端部のシクッと複雑な食感は、しかしながら柔らかい。そして根本の緩やかに太くなっていく部分はクキッとはっきりした食感で、少しだけヌメリが感じられ、ヌルッとした食感がもう一本と食を進ませるのだ!
味は全く癖がなく、苦みなども感じない。茹でると湯がすこし茶色くなるので、アクは少しあるのだろうが、茹でれば抜けてしまう。

しかし本日最高だったのは白和えだ。

少し甘めに仕上げた白和え衣は、湯通しして締めた木綿豆腐を馬の毛の裏漉し機で滑らかに仕上げたものだ。大豆タンパクの滑らかな口当たりがコゴミの食感を引き立たせ、そしてコゴミが持たない旨みと甘さで芳醇さがプラスされる。

そして極めつけは天ぷらだ。

油で揚げるという方法は、植物の水分を脱水し、旨みを凝縮するのに最も適したものだと思う。けれども旨みは水分のなかにあるのだから、揚げすぎだけは禁物。少し高温すぎて、軸から水分が抜けすぎたものも出てしまったけれども、素人だしそれもご愛敬か。和歌山の海塩と九州の藻塩でいただく。天つゆより塩の方がダイレクトに山菜の風味を味わうことができた。

コゴミを天ぷらで食べてみると、茹でたものではあまり感じなかった、コゴミの風味を強く感じる。なんといったらいいのだろうか、とても”緑”な風味である。印象としてはコゴミの幹のツヤツヤした緑、常緑樹である椿(つばき)の葉のような艶っぽい緑の香りがする、というのでわかるだろうか?ドシッとした樹のような香りが本の一瞬だけ鼻に抜けるのである。

味噌汁に入れたコゴミも、味噌の香りで存在感が薄れるかと思ったが、全くそんなことはなかった。

不思議なもので味噌の醗酵した風味の中では、アクのないはずのコゴミにほんの少し苦みやえぐみのようなものを感じる。それは不快なものでは全くなく、それどころか何の変哲もない味噌汁に絶妙なアクセントを加える、味としての要素をなしているのである。

いやもう
本当に美味しゅうございました。
あんなにぎっしり入っていた本コゴミ、もう2/3は綺麗に片付き、少しだけおひたしにしてあるのが残っているだけです。

阿部さんご一家に感謝。
何より、奥山に分け入り、山の恵みをお裾分けしてくださったお父さんに御礼を言いたい。
ありがとうございました、最高の味でした、ごちそうさまでした!