やまけんの出張食い倒れ日記

岩手県北探訪ツアー 二日目のクライマックス! 本物の郷土食「まめぶ」の素晴らしい味に一同恐れ入りました! ホンシメジのバツグンの威力に驚かされた昼だったのである!

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山の精力剤・ヤマブドウの原液を浴びるように飲んだ一行、バスの中でもずいぶんと元気がでてきた感じだ。そして車は一路、山の中へと分け入っていく。僕が岩手県北との最初の邂逅をした、記念すべき地である久慈市山形町へと向かうのである。

山形町はしばらく前まで「山形村」だった。久慈市との合併によって「町」になってしまったのだが、僕の心の中ではいまだに「山形村」である。なので、このエントリでも山形村として記載させていただく。

山形村は、聞いた話に寄れば電気がひかれたのが全国でも最後から二番目くらいという土地で、平地のほうが少ないくらいの中山間地だ。だからこそ、本当に美しい山村の風景が満載。今回は僕も参加者のアテンドで忙しくしていたので思うように撮れなかったが、ネイチャーカメラマンや農村をとりたい人には本当にうってつけの場だと思う。

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美しい水の流れる川では当然、美味しいアユやヤマメ、イワナなどが穫れる。村の人たちは漁の解禁されている期間に魚を捕り、腹を割いて冷凍したのを冬に美味しく食べている。

さて山形村の素晴らしきものは多々あるけれど、今回の目玉と位置づけている郷土料理「まめぶ」をいただくとすれば、ここだ。

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地元の人たちが料理教室をしたりする施設である「そばの匠館」。ここを拠点に山形村の郷土食を伝える「成谷自然食の会」がある。この方々が作る郷土料理が絶品なのだ!

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すでにセットされている山形村の味。今年はものすごいラインナップだった!

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アユの塩焼きに煮物、キノコの「かっくい」の酢の物にほうれん草、揚げ茄子のにんにく醤油漬け、山菜おひたしに漬物。

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そしてなんと手前には松茸ご飯! これに、「まめぶ」と蕎麦がつくのである! 久慈グランドホテルの豪華な朝ご飯に驚いたみんなも、「絶体食べなきゃ!」と決意を新たにする。

「松茸ご飯は持ち帰ってもいいようにポリ容器に入れました」というお心遣いがありがたい。

まもなく運ばれてきたのが本日のメインイベント、まめぶである!

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岩手県はとてつもなく大きな県であり、四国全域と同じくらいの面積をもつ。当然、東西南北で食文化は大きく違い、特徴的な郷土食の宝庫だ。県北部だけでもそうとうに様々なものがある。その中でも、山形村の「まめぶ」は、この辺にしかない非常に珍しい料理だと思う。

みてのとおり地味な茶色ベースの椀物だ。にんじんや大根、ゴボウなどの根菜が中心になるが、この日はにんじん、ユウガオ、この辺の常備食である自家製凍み豆腐、そして生のキノコが入っている。

この料理のスゴイのはまず出汁だ。なんと、本物の野生のホンシメジを干したものでベースの出汁を取っているのである!

この季節になるとスーパー店頭で「キノコの季節です」などといってパック入りのキノコ類を売っているけれども、あんなものは旬でもなんでもない。おがくずやコーンコブなどを固めた床にキノコの菌をつけて栽培した菌床栽培ものがほとんどであり、旬もなにもないものである。ああした荷姿で売られているブナシメジをホンシメジと誤解している人が多いので本当に泣きたくなる。

だって、本物のホンシメジはすさまじい味と食感なのだ! 菌床栽培ものとはぜんっぜん違うのだから。

そのホンシメジの干したものは、この山形村でもご馳走だ。松茸の北限地であるこの辺はキノコの宝庫で、むかしから山の民はみな自分のキノコ穫りスポットを持っていた。しかし収穫はここ数年で激減しているという。温暖化の影響や山の荒廃といった複合的な要因があるだろう。

しかし!

この日、成谷自然食の会のお母さん達は、ふんばって本物の干しシメジを用意してくれたのである。しかも、、、

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なんと、具にまで生のホンシメジを使ってくれたのだ!

ええとですね、このお椀一杯で、東京の料理店で出したとしたら、2000円は下らないんじゃないだろうか。そんなくらいのすごいことですよ!

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しかもこのまめぶ団子、地粉を練った中に黒砂糖とクルミの実を入れた、甘い団子なのである! ホンシメジの出汁のきいたしょっぱいつゆに甘い団子。このコントラストにクルミのカリッとした歯触りと油分がものすごくマッチするのだ!

「いやーーーーー これは旨い! 本シメジの出汁なんてもうほとんど食べられないですよ!」

と眞貝シェフが唸る。あちこちの席で「これは美味しい!」「ホンシメジの出汁なんて初めて食べました、、、」という声が上がる。

そうでしょう、そうでしょう、、、 本当によかった。

そして追い打ちの蕎麦! 「うひゃーもう食べられない!」という声の中、僕は2枚半たべました。

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山形村の蕎麦は、なんとつなぎが卵と豆腐! 水は一滴も入らないのだ。だからだろうか、実に腹持ちのいい蕎麦になる。ただしこの辺ではあらかじめ茹でおきしたものを玉にして、時間をおいて食べることが多い。江戸前のようなゆでたてを食べるものではない。この方式でしか味わえない、なんとも山の地らしい味がする蕎麦なのだ。

満腹!

それにしても限られた予算の中でこんなにもゴージャスな料理をしてくれた成谷自然食の会の皆様には本当に感謝したい。ありがとうございました。