やまけんの出張食い倒れ日記

ずるいやつらが震災復興の気運に乗じてTPP推進を進めてる。予想通りだぜ日経新聞に経団連! そうはいかんよ、いま日本がパニックになっていないのは、あんた達が排斥しようとしていた生産者がいてくれたからだぞ。

数日前に宮崎で朝食時に読んでた日経新聞の社説で、案の定というかやっぱり来たかという論調で「こんな時だから、TPPを推進していこう」と書いていた。タイトルが「経済復興のためにもTPP参加を急げ」である。ここから読める。

「日本は自由貿易の中で生きていく国である。その立場は、震災が起きても変わらない。」

だそうである。それホント?この文章、俺が添削するとしたら、頭に「日経新聞としては」とつけるべきだと思うね。自由貿易を推進してきたことは事実だが、この先も自由貿易体制を進めていくのかどうかということについて、まさに議論が巻き起こっていたのだから。いまは原発推進をどうするかという問題と共に、日本の進むべき方向性を考え直す、もしかしたら最後のチャンスなのかもしれない。そう思う人が、震災を機に増えてきているのをけん制しようとしているように読める。

また、

「財政難の下で震災後の復興に必要な資金を稼ぐためにも、日本の輸出を先細りにしてはならない。日米FTAと同じ効果があるTPPへの参加を、これまで以上に急ぐべきだ。日米の経済連携をテコにすれば、EUとの交渉も進めやすくなる。」

とあるけれども、ここもまるで小学校の生徒に対する「言い聞かせ」のようだ。復校に必要な資金を稼ぐためにもといえば誰もが「うーん仕方がない」と思わざるを得ない。さすが文章のプロである。けれども、その公団で「日米FTAと同じ効果があるTPP」と書いているところがくせ者である。そんな効果、本当にあるの?いや、どこにも示されていないでしょう。これまでもTPP推進派は空気のように「TPPに参加しないと経済が」というが、それは全く立証されていない。

震災以後のジャーナリズムの中でも、独立系としてギラッと光っているザ・ジャーナルではこんな記事が載っている。

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■高増明:TPP内閣府試算の罠 ── 菅内閣がひた隠す"不都合な真実"
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2011/04/tpp_15.html

ありがたいことに無償で読める記事なのでぜひご一読いただきたい。いかにTPP推進派が、あやふやな根拠を元にしているかということがわかると思う。

さて先の日経だが、笑っちゃったのは、いつもの日経的締めくくりとして、「被災した地域の農業も、より強い農業にしていくことができる」的な言い方をしていたことだ。

「大津波に襲われた地域の農業を再建するうえで、農地の集約など生産性を高める仕組みが欠かせない。政策次第で、自由化に耐えられる強い農業を東北に築くことができる。菅政権が設立した復興構想会議は、そのための道筋を議論してほしい。」

これ、本当に無責任な書き方だね。「政策次第で~できる」と書いているのは、いずれ失敗した場合でも「政策が悪かったから実現しなかった」と逃げられる、巧妙な文章だ。第一、最後に「復興構想会議は道筋を示して欲しい」と他力本願である。

農地の集約はある程度は有効だが、TPP推進時に大農業産出国と肩を並べるほどの生産性向上には全くなり得ないことはこれまで何度も書いてきたとおりだ。それでも新聞がこうやって何回も書くと、放射能に対して「直ちに影響はない」と言い続けられたように、なんとなく大丈夫なのかなと思ってしまいそうだ。でもごまかされんぞ。

悲しいのは、さきのザ・ジャーナルの記事にも引用されていたが、僕が大学で授業をきいていた竹中平蔵先生がいまだに「東北の農業を単に復元するのではなく、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)対応型の強い農業にする」などという空想を語っていることである。本気ですか、先生。それって、20年前から言っておられることが一貫しているのはご立派ですが、根本から違っているように思えますが。東北に必要なのは「強い農業」という空論をかざすことではなくて、東北の厳しい風土の中で形成された現時点の農業スタイルを、日本の社会が受け入れることではないだろうか。つまり農業が変わるのではなく、「たべもの」というキーワードを軸に、社会が変わっていくべきなのだと思う。

で、震災があったことでTPP議論がふきとびそうになったけれども、きちんと言うべきことは言っておかねばならない。農文協という出版社からでている「季刊 地域」という雑誌でTPP反対の議論を、僕も書いている。

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http://kikanchiiki.net/contents/?p=624

僕は7つの疑問というテーマの中で、「農業」と「たべもの」の二編を執筆した。

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そっちも読んで欲しいが、個人的には、経産省の役人でありながら、現在は京都大学大学院に助教として出向し、切れ味鋭いTPP反対論を展開する中野剛志さんの記事を読んで欲しい。

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季刊地域No.05・2011年春号 総力特集 TPPでどうなる日本? (キカンチイキ)
季刊地域No.05・2011年春号 総力特集 TPPでどうなる日本? (キカンチイキ)農文協 季刊地域編集部

農山漁村文化協会 2011-03-31
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なんにしてもこれだけは言える。もしTPP参加して国内農業が弱体化していたら、今回の震災で東北沿岸部を中心とした被災による影響で、食料生産には大きな打撃を被っていただろう。ところが、福島・宮城・岩手でコメの作付けができない地域が相当あるにも関わらず、今年度のコメの需給は逼迫しない見通しだ。食料生産には冗長性が必要なのである。そこを「効率化」などしてはいけないのである。

節電で暗くなった街、エスカレーターの動かない階段を登りながら最近思うのは、「だいぶ慣れたな。だって、昔はこれが当たり前だったもんな」ということだ。家庭内でも、いままではいつも点けっぱなしにしていた電気製品のスイッチやコンセントをこまめに切るようになった。そうして思うのは、意図的に生活レベルを落とすって、意外にできるじゃん、ということだ。

消費経済の推進者は「昔の生活レベルに戻れますか?」と問うてきた。残念ながら現在の生活レベルが満たされた中では選択肢はないようだった。けれども、こうして震災によって強制的に生活レベルと落とされた時、多くの人が「まあこれでもいいや」と思ったのではないだろうか。つまり、国民の選択で、過剰な生活レベルと落とすことは出来ないわけではないということである。

その感覚をまだ覚えている間に、きっちりとこの国の方向性を考え直していかなければならないと思う。原発についても、食べ物についても。国のたべもののあり方を大きく変えてしまうようなTPPという枠組みへの参加を、6月までにまとめるなんて出来るはずがない。やめましょう。

そう言うのは異端だろうか?そうは思わない。大義はこちらにあると僕は信ずる。