やまけんの出張食い倒れ日記

十勝にて、、、初めて開催された、北海道の短角和牛共励会にて、上田金穂さんの牛が最優秀賞、そして北大牧場の秦先生の牛が一等賞を獲った、うれしい一日!

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すごいことが起きた、、、北海道でアンガス牛や短角和牛を飼っている農家・団体が集まる共励会(「きょうれいか」い」と読む。つまり品評会のことだ)が開催されたのだが、その栄えある第一回目で最優秀を獲ったのが北十勝ファームの上田さん。の肉なのだ!

冒頭の写真を見て欲しい。ロース芯のカタチはなかなかきれいで大きめの楕円形。バラ厚もよし、筋間脂肪の噛みも強すぎない。もちろん短角であり、サシの入りはそれほど強くなく、等級はA2である。黒毛和牛であれば、これが最優秀になることは無いだろう。

でも、「短角牛の規格・基準としてはこれくらいがよいのだ」という、皆の合意で作られた規格・基準において、この牛が最優秀を獲得した。北の大地の記念すべき日だ。

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帯広空港から40分程度、ここ北海道畜産公社では毎年、アンガス牛の共励会が開催されてきた。アンガス牛は50年ほど前にアメリカから輸入された肉専用牛で、北海道の厳しい気候・自然のもとでも放牧・粗飼料中心で育ってくれる牛だ。現在、北海道のアンガスの肉は首都圏の生協であるパルシステムで買うことができる。実はこの日の朝、仕事でお世話になったパルのTさんと、羽田空港でばったり会ったのだが、彼もここに参加するために十勝へ行くのだった。

そして今回、このアンガス共励会と並行して、短角の共励会もやってしまおうということになったのである。とかち帯広空港につくと、北大牧場の秦(はた)先生が迎えに来てくださっていた。秦先生が広大な牧場で、純粋の道産子とともに飼っている短角牛も出品されているのだ。

市場に到着し、着替えて会場へ。すでに枝肉の格付けは終わっており、格付協会の先生からの講評が行われていた。

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天井から枝肉がずらずらっと吊り下がった光景は、いろんな意味で圧巻だ。写真では伝わらないだろう、人間よりはるかに大きな動物の半身が吊り下がっているのだから。それはもうものすごい迫力なのだ。

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これが、アンガス牛部門で最優秀を獲った、ワタミファームのアンガス牛だ。

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ワタミファームは北海道の弟子屈(てしかが)の肉牛牧場を買い取り、運営をしてきた。でもアンガスはいろいろと難しいこともあるらしく、この共励会の出品を最後に、来年度からは短角に集中することにしていたらしい。でも、最優秀賞だからなぁ、少しずつでも続けてみてはどうでしょうか、と話すと「そうなんですよ、ちょっとこの結果を持ち帰ってみます」と農場の人は言っていた。農場の人、とは、もともとワタミの店舗とかをやっていた若者である。

さて、そして短角部門だ!

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さんぜんと輝く「最優秀賞」の札が貼られているのは、、、

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北十勝ファームの牛だ!黒毛和牛のようにコーン中心の濃厚飼料を与えているわけでもなく、粗飼料を中心に給餌しているのに、26ヶ月齢にしてはボリュームがあり、脂の噛みが嫌気がなく、適度な霜降りであることが評価された。

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そしてその次の一位に輝いたのが、、、

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北海道大学の短角牛だ!こちらも粗飼料中心で育て、32ヶ月かけてこの品質に磨いてきた。いい形だ、、、

さて、牛を出荷した生産者のための控え室にて、「北海道肉専用牛枝肉共励会」が開催される。

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立っておられるのは、100%放牧グラスフェッドの牛を育てている北里大学の畔柳(くろやなぎ)先生だ。

アンガス部門優勝がワタミファーム!

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若き農場管理者は、ちょっぴり複雑そうな顔をしていた。

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さあそして短角牛部門の最優秀賞!

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上田さん!やったね!!!

ちなみに上田さんとは、「通販生活」のカタログハウスの仕事で知り合い、その後も交流が続いている。この写真↓は、僕の「さち」を食べる会の時のものだ。わざわざ上京して参加してくれた。

そして上田さんは自分の牧場で、一番きれいな母牛を僕にくれた。

彼女に僕は「べっぴん」という名を贈った。彼女は今年、無事に男の子を産んだ。その子に「大地」という名をつけたのはこのエントリで既報の通りである。

そして次席の一等賞が、北大大学の秦先生だ!おめでとうございます!

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実はこの共励会、初めての試みが重なっている、短角和牛にとって記念すべき会だったのである。それはどういうことかというと、 「霜降り中心の肉に有利な現状の格付けではなく、短角和牛に特化した独自の評価基準」 を導入したものなのだ。

この会の前に、北海道で短角牛を生産している生産者と科学者が集まって、枝肉断面の高精細な写真をみながら「めあわせ」をした。めあわせとは目を合わせることで、公開の場でみなで「ここがこうなってたらよしとする」ということを決めることだ。そこで、短角の特性を加味した基準を作り上げたのだ。

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ここで重要なのが枝肉の画像解析の技術。これを研究・開発したのが、帯広畜産大学の口田先生。

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どこかで伺った名前とお顔だ、、、と思っていたら、なんと松本大策先生に連れられて行った姫路でお会いした先生である!お懐かしや!

先端技術と、生産者自身の評価軸が集合することで、こんなことが実現した。北海道の短角生産者・団体は、それぞれの規模はデカイが、運営主体は10に満たないので、このようにすぐに集まって物事を決めることができる。それが、他県の生産者たちと違うところだろう。

現行の格付けに頼らない独自基準は、褐毛和種(くまもとあか牛や土佐あかうし)、短角和牛などの赤身品種の産地であれば、だれもがやりたいとおもっていることだ。けど、なかなか難しい。

もちろん、北海道のこの規格・基準だって、生産者たちが自主的に評価軸としてもつものであって、公的に通用する基準となるわけではない(ふつうに市場取引する際には、現行の格付けが適用されると思う)。

けれども、声を上げて行くことは大事なことだ。だからこの日は、日本の赤身肉文化に一石を投じる一日だった、といえると僕は思う。

関係者の皆さん、本当にお疲れ様でした。上田さん、秦先生、そしてアンガス部門のワタミファームさん、おめでとうございます!

そして今日も北の大地に居ます、、、