やまけんの出張食い倒れ日記

北の大地よりフルーツトマトとバジルきたる。農産物の生産は本当に安定せず難しい!生産者は苦闘している。楽に儲かる農業もあるけれども、そんなのはごく一部なんだ。

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RICOH GXR  A16ユニット 75mm f5.5 1/160

北海道の下川町にあるアテネファームから、嬉しいトマトとバジルが届いた。下川町はこの夏の時期も昼夜の寒暖差が大きいため、夏でも糖度の高いフルーツトマト栽培ができる数少ない産地だ。ここに中田豪之助さん・麻子さんご夫妻が東京から移り住み、フルーツトマト専業農家として生産をしている。

数年前、「ぜひ相談に乗って欲しい」と連絡を受けて、札幌で豪之助さんとお会いした。生産と販売の双方が安定せず困っているということで、問題を整理して優先順位をつけ、とりあえず今年はこれをやりましょう、こちらは来年にまわしましょうというようにやること・やらないことを整理するところから始めた。農協出荷と自社販売では収益性も違うが取引の安定性も違うため、適正な配分になるようバランスをとるようにした。その上できちんとしたWebを作らなければならなかったので、北海道で信頼できるカメラマンさんを紹介し、形になった。

今年、比較的大口の注文をぼくが仲介し、販売することにした。しかしなかなかに苦労されている。というのは、7月下旬に未曾有の豪雨があり、土中水分量が思いがけず多くなりすぎてしまったのだ。雨の多い夏に栽培するトマトは、水分をドンドン吸い、強い陽光と高い気温にさらされることで、すぐさま肥大してしまう。水分が多く酸味が強いトマトがこの時期多いのはそういうわけだ。

でもフルーツトマトは水分を切って、できるだけじわじわ育てて甘みとうま味を凝縮させなければならない。だからフルーツトマトを夏につくるのは大冒険なのだ。そして今回のような豪雨によって、ハウス内にある土壌までも地下水位の影響を受けてしまう。

結果、糖度が上がらず、自信を持ってフルーツトマトと言えるものがなかなかとれない日が続いたそうなのだ。アテネファームは土耕栽培なので、水分コントロールができない。土耕栽培は味をよくできる分、水耕栽培などに比べそうした危険性があるわけだ。

それでもようやく晴天が続き、朝晩に冷え込みが来るようになり、糖度が高いトマトができるようになったということで送ってくれた。

このトマト、しっかりした甘さと適度な酸味、そして奥深いうま味を味わうことができる。これぞフルーツトマトだ! 遅れていたがこれからガンガン出荷できそうということで一安心だ。

ただし、僕が仲介している大口注文の出荷を優先してもらうので、ここしばらくはネットで注文しても来ないと思いますが、悪しからず。

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このように、農業生産はつねに安定しないリスクがある。

「だから、工場生産的にすべてを管理できる農業をやるべきではないの?」

と考えてしまう人もいるだろうけれども、最近にわかに多くなってきた植物工場ビジネスの倒産例をみてわかるように、そちらも安定的に生産させるのはなかなかに難しい。結局、環境を人工化したとしても、植物は植物であり、目に見えない微生物群との共生の中で育つわけだから、制御するのは難しいものなのだ。

そういうことが当たり前だ、と思った上で農業のことを議論しないと、本当におかしなことになってしまうと思う。

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こちらは同封してくれていたバジル。ありがとう、パスタにしようっと。

中田さん、大変だろうけど、踏ん張ってください。応援してるよ!