嵐のような一週間だった。ぽつぽつ書いていきます。全米和牛協会の年次総会に出席していろんな情報を収集し、農家にインタビューをし、出会った農家の牧場を視察させてもらい、そしてアメリカWagyuを食べると言うことをしてきた。当初の計画にまったくなかった、コインシデンタルな出来事が多々あった!
さて、全米和牛協会が何かという前に、そもそもアメリカの和牛ってなんだ?という話し。まずスタートポイントととして、和牛ではなくWagyuと英語字表記した方がいいだろう。それは日本の和牛とは少し異なる。
簡単に言えば日本の和牛の遺伝資源が1970年代から1990年代にかけて、海外に流出(というか輸出)した時期がある。その貴重な遺伝資源をなんらかの形で継いでいる人達が各国にいる。全米和牛協会はそうしたアメリカの人達の集まりだ。
アメリカのWagyuについては、2015年に畜産振興事業団(ALIC)がまとめた下記のレポートを読むのが一番わかりやすい。ALICさん素晴らしい仕事してます。
■米国のWagyu生産の現状https://lin.alic.go.jp/alic/month/domefore/2015/feb/wrepo01.htm
重要なのは、和牛の血統が100%保たれているフルブラッドはとても少なく、アンガスをかけてから戻し交配を重ねて血液百分率93.5%にもどしたピュアブラッドか、それ以下に薄まったパーセンテージというのが多いということ。
ただ、日本人はなにかにつけて純血を好むところがあるけれども、アメリカ人はもっと現実的な考え方をするところがあるなあ、と思う。例えば彼らはWagyuとアンガスのF1、またはWagyuとホルスタインのF1など、交雑種で十分じゃん、という考え方をする。重要なのはアンガスやホルスにWagyuの血統が混ざることで、いままでより良い肉質が獲得できる。それは素晴らしいことじゃないかということだ。
日本ではそうした交雑種は純血の和牛より一段低い存在としてみられるけれども、こちらでは「ん、純血じゃないよ、でもいいものだよね」という反応をする生産者が多いような気がする。
ちなみにAWAに集まる人は、圧倒的にブリーダーが多く、肥育一本でやっているという人はあまり見かけない。またブリーダーはみな裕福な人達がやっている(少なくとも生活に窮してはいない)ようにみえる。というのも、ブリーダーはでかい初期投資が必要だし、現金化されるまでに3年以上かかるので、結果的に富裕層しか手を出せないというところだと思う。
AWAはそうした、全米各所、また米国以外の近隣国でWagyuのブリーディングを行っていて、情報収集や情報交換、人脈造りのために集まりを持つ団体という感じだ。
ちなみに、会場内の模様をみておわかりのとおり、テンガロンハット率が非常に高い(笑)テンガロンハットはこちらでは実用品で、日差しが強烈なので、普通の野球帽のように前にひさしが着いているだけだと、全方位から降り注ぐ紫外線を防げない。だからあのような形になっているのだと言われた。なるほど確かに、、、
今年の年次総会のプログラムは、協賛企業のプレゼンテーションや大学の先生による畜産遺伝学の講義、牛が排出するメタンガス等とサステナビリティの関連性の講義などがあった。
このあんちゃんは、「Wagyuの遺伝子情報をクラウドデータベースに登録することで、我々が高度な分析をする。それによって、今までとは違う掛け合わせの評価などをすることができるんだ!」というように、あおるような感じでデータベースの売りこみをしていた。
しかし、聴衆から「その評価のロジックってどんなの?カーカス(枝肉)の評価データとリンクしなきゃ意味ないでしょ、それってちゃんと仕組みがあるの?」というような質問。それに対してあまり答えず「大丈夫、これからできていく」みたいなモヤッとした回答しかなかったので、会場内は少々しらけ気味。日本の講演ではあまり質問がでないが、こちらではバンバン質問が出てきます。
変わって大学の先生みたいな方による畜産遺伝学の講義。面白いことに、前のスピーカーの兄ちゃんが言ってることをちょっと否定(たしなめてる?)内容だったようだ。
ちなみにこの先生は、EPDsつまり日本語では期待後代差をベースに考えましょう、ということを話していた。
うれしいことにカンファレンス中はすべてご飯がでる! 昼ご飯はやっぱりアメリカの郷土食であるハンバーガー!
もちろんパティはWagyuです。
これがですね、期待していた以上に美味しい! こんな旨いパティ日本のグルメバーガーでもあたったことがない。
午後はAWAの組織運営についてのあーだこーだの議論。
ていうか、議論好きなんだなぁ、、、「だれかなにかある?」と聞くとすっげー挙手があって、みんなべらべら自分の意見を話す。
AWA、なかなか活発な組織です。