さて、モンリュッソンからクレモルフェランを愉しんだ後、一路リモージュへ。途中、リムーザン国立公園という地名の近くを走る。リムーザンといえば、この地方が原産の肉牛品種の名前でもある。1800年代後半に成立したという品種で、シャロレーとならびヨーロッパでは主流の品種だ。
車窓の風景でも、真っ白なシャロレーか、この茶色の牛の二択である。おそらく茶色はリムーザン(オーブラックかもしれないが)であることが多いはずだ。
さて、リモージュ市へは夜に到着。街中へ移動し、リムーザン種の生産から販売までを行っているという会社の人達とディナーを囲むことになっている。そこに、なんとあのユーゴ・デノワイエ氏も来るというのだ。ユーゴを識らない人は検索してみてください。
なんであの有名人が!? と驚くと、オリヴィエがニヤリと笑う。
「ユーゴは俺の妹の同級生でね。子供の頃からのダチなんだよ。」
おお、、、この世の中、ほんとうにコネこそ全てである(笑)
レストランの前を通り過ぎると、中から「おーい、ここだよここだよ」とみなを呼び止めに来てくれたのが、、、なんとユーゴ!中に入るとおびただしい人数が僕らを待っているではないか。
そしてオリヴィエ到着。ガッチリ抱き合う二人。
いや、すげーことになってきたなあ。
オリヴィエの采配で、僕はユーゴの真ん前に。いやだよこのプレッシャーのかかる席!(笑)でも、何冊か持って来ていた拙著「熟成肉バイブル」をプレゼント。
「おお、日本のドライエイジングか!」と熱心に読み出してくれた。
面白かったのは、日本の熟成業者のなかでも、カビが生えている量が最も多いレベルの写真をみて、顔をしかめるのだ。
「俺には、ここまでのカビは行きすぎだよ。どうなんだい?旨いの??ふう~ん」
というもの。アメリカはNYの流儀を手本にしているケースが多い日本の熟成だが、ヨーロッパとくにフランスのそれとは大きく違うことを再認識することとなったのだ。実に興味深い。
「ま、パリの俺の店で、肉を食べさせるから、それで判断しなよ」というような感じ。いやこれは楽しみになってきた!
ちなみに、一番プレッシャーを浴びている人物は、トップトレーディングの中澤社長である。
「なんか、僕、リムーザン牛を買えっ、日本へ輸入しろっ、ていうプレッシャーを受けてる気がします、、、」
ま さ に そうだったのだ(笑)
彼の目の前にはリムーザン牛を扱うカンパニーの社長、その横にはいかにもやり手っぽい女性がいて、リムーザンのトップセールスの前哨戦をしかけて来る。いやーーーー オリビエ氏、日本の有力商社のトップがリムーザンに興味を持って来るからねって言っちゃってるね(笑)
高知県庁の入交氏、ここに来る途中のドライブインで、なんとユーゴの本(肉のレシピ本)を見つけて「これユーゴさんの本ですよ!」と購入しておくというナイスなプレー。もちろんサインを書いてもらうわけです。
ところで、僕の右隣に座ったおっちゃんが、実に興味深いひとだった。
英語を話されるこの御仁、どうやら、この地方のリムーザン種の育種に携わってきた中心人物であるらしいのだ。
「ちょうどいい、土佐あかうしの写真見せよ」と僕がユーゴにあげた「熟成肉バイブル」をめくって、和牛の説明ページを見せると、、、
「おおおおお、、、お前ら、この牛はな、数世代前にきっとうちのリムーザンの血も入ってるに違いないぞ! 」
はいってねーよ!(笑)
それでもこのおっちゃん、「AKAUSI、AKAUSHI」と連呼してくれた。しかもしまいには、「この本、俺にくれ!」とユーゴに言って、強引に持って行ってしまったのである(ユーゴには翌日、あらためて進呈した)。
しかし翌日、このおっちゃんのおかげで大変に面白い状況が現出するのである。
メインは子牛かリードヴォー。僕はもちろんリードヴォー。
デザートまでしっかりいただいて、この日はお開き。
ミートカンパニーの社長が持っているグリーンの袋は、彼が経営するというゴルフ場のレストランで製造しているというチョコレート製品。うわー リモージュ市の名士だわ、これ。やばいやばいやばいやばいヤバイ!
中澤さん、逃げるならいまだぞ!
「うーん ヤバイですね、明日、リモージュ市長からなんかメダルをもらうことになってるそうです」
あーーーーーーもう逃げられない!
そしてリムーザンと会う日がやってきたのである。