やまけんの出張食い倒れ日記

徳島の佳い食を料理家・樋口直哉と巡る産地ツアーを心ゆくまで楽しんだ! その1


「料理家の樋口直哉くん&農水省まつじゅん夫妻を連れて、徳島産地ツアーをしようと思うんだけど、来ない? 徳島ではdoorの曽谷さおりさんが案内してくれるんだよ」

という超絶魅力的なお誘いを、溝口さんからいただいた。そりゃぁ 行くよね!

溝口さんは阿波ふうどという徳島の地域商社の立ち上げ主要メンバーの一人で、徳島県内のいいものを隅から隅まで歩いて識っている人だ。そして曽谷さんは、その徳島県の飲食店の家に生まれ育ち、食材のPRやマルシェの企画運営をしつつ、食材を最高な料理に仕立てる飲食店doorを運営するという、徳島食材にとってのキーウーマンだ。そこに、いまや料理家なのか小説家なのかわからなくなるほど大活躍の樋口くんと、農水省のYouTube発信の立役者であるまつじゅんが来るのだから化学反応が起きるに決まっている!

ということで、朝5時起きで一便にのって徳島空港から徳島駅前へ。


一軒目は、徳島県民はあまり識らないかも知れないが、それ以外の地域では有名な四宮蒲鉾店である。


すり身揚げの世界で、リン酸ナトリウムやソルビトールといった添加物を使用せずに製造できるメーカーは本当に少ない。というのも、海外や日本の産地ですり身加工したものには、そうしたものが含まれているからだ。もちろん近海で獲れた魚であればまだ鮮度が良いものなら、リン酸塩を使わなくとも結着できるだろうが、冷凍原料を使わざるを得ない時もあるので、基本的には使用するメーカーが多い。何度か仕事でかまぼこメーカーの製造工程を取材しているが、「ここまでやって、魚の味ってどこかに残ってるの!?」という感想を抱くことが多い。

その点、この四宮蒲鉾店はそうしたものを一切使わず、そして高品質な商品を製造している。

江戸時代後期からつづく四宮蒲鉾店、その4代目だった会長の的石さん、自分が経営に入った30代の頃に、水産市場の仲間と共に、添加物を使わない製品の開発とマーケットの開拓に取り組んだ。


「まあ仕組みさえ作ってしまえばね、あとはそんなに大変じゃないんですよ」なんて飄々とおっしゃるが、そんなわけはない。めちゃめちゃ大変だったはずである。リン酸塩などを打たないすり身原料の確保、そしてフレッシュな近海物を鮮度よく高度に下処理するフローを構築した。


こういう話をすると「添加物は基準を守って使う限りは安全な物で、むしろ添加物を使わないメーカーのものが不安だ、製造工程によっては安全性を損なう恐れがある」というようなことを言ってくる人がいるが、四宮蒲鉾店はとても早い段階でHACCPばっちり取得済みだ。というのも、生協や専門流通など、添加物を使用しない食品を流通するネットワークがこぞって四宮蒲鉾店と取引をしているのだが、いわゆる小売業界なのでそれらの品管はむちゃくちゃ厳しい。識ってる人は識ってると思うけど。


徳島県民の心の味であるフィッシュカツは、魚すり身にカレーの味付けをしてパン粉つけして揚げたものだが、カレースパイスや唐辛子から特別物をあつらえている。

食べてビックリ「あらっ パン粉がカリッとしてる!」

というのは、僕ら消費者はパックに入ったものをトースターなどで温めて食べるのだけど、これは工場でその日の朝にできたもの。まだ揚げたての食感が残っているのだ!

「ここに来ていただいて買ってもらうと、そういうのが食べられますねえ。あと、うちはこの店で売ってる価格が卸値ですから、まあここに来ていただくのが一番安く買えるんです」


的石さんたちの作るすり身揚げは実に優しい味わいだ。口に入れた途端に旨みのパンチを感じるものではない。でも、一噛み二噛みしているうちに、魚の身肉の旨さをベースに、それを壊さぬよう調味するみりん(なんと三州三河みりん使用だ!)や醤油といった調味料の彩りが染み出してくる。

なお、四宮蒲鉾店はしばらく前から週休三日制。卸売市場が休市となる水曜日以外に二日も休める。それでも従業員の給料はそれ以前と同じにしているという。

「やっぱりね、休んで楽しく生活してもらったほうが、仕事もいい感じに仕上がるんですよ。うちの賞味期限は一週間ですけど、うちの休みの日に合わせてくださいってお願いしてます。そしたら、やりくりしてくれるんですよ。」

こういうメーカーや流通がもう少し増えてもいいと思う。


的石さん、どうもありがとうございました! 次回は呑みましょう!


次は、あのMARKS&WEBブランドを展開する松山油脂が、佐那河内村(さなごうちむら)に建てた山神果樹薬草園へ。

■公式ページ


以前、僕はこの建物が建つ前のこの地に来たことがあるのだが、工場施設とショップ&カフェが建ち、素敵な場所になっていた!


最高な借景!


広大な園内を廻る。ユズなど柑橘の木が植えられている。もちろんここだけでは生産はまかなえないので、県内の有力産地からユズなどの原料を仕入れているが、オーガニック原料も増やしていく見込みだそうだ。



ここでは柑橘類を発酵・醸造して、それを蒸留してアロマの強いアルコールを製造し、石けんや化粧品にしている。それらオリジナル商品をショップで購入できる!





やはりソープ&シャンプーなどは肌に直接使用するものだからだろう、女性の関心もとても強く、来訪客が切れない。


そして、アルコール製造によって出てくる柑橘の果肉や皮などを捨てることなく、ジュースやヴィネガー、コーディアルに商品化している。


このカフェではそれらを駆使したドリンクを楽しむことができるのだ!


コーディアルとスダチ酢を炭酸で割ったドリンクが、最強最高においしい!


松山油脂の社長さんは溝口さんと大学つながりがあり、この地への誘致には溝口さんも積極的に動いたそうだ。


プライスレスな一時。素晴らしい場所だった!


そして、かまパン&かま屋でのお昼に向かったのである。