やまけんの出張食い倒れ日記

これぞ絶品 ホンモノの賀茂ナスをふんだんに食べる

 昨今、「京野菜」といえばなにやら美味しいイメージがあるので、人気が高い。テレビでも、京都の農家とレストランのシェフとの交流を描く番組がかなり出ており、素材と料理の関係もまた一つ時代が移ったという感がある。
 しかし、京野菜というのも一つのブランドであり、もっと細かく観ていくと、結局栽培をする人が誰かというところに尽きる。また、商標としての京野菜と、伝統的な種を守り続けて播種しつづける京野菜農家とを同列に語るのも、どこか片手落ちのような気がする。

さて
京都大学農学部の偉いセンセイとして教鞭をとっておられる大石から、賀茂茄子が届いた。大石は、学生時代からの付き合いである。当時の京都大学には、このblogでも数回紹介している、関西の農業ネットワーカー「のざけん」が居て、僕と密な情報交換をしていたのだが、大石も当時から強力な磁場を形成していた人間だ。彼は京都大学で、周辺農家の畑に援農にいくサークルを率いていたのだ。そして今や、京都大学で農学原論を教えるセンセイである。

 この大石、上賀茂にある生産者さんの母屋を借りて起居している。かなり古い木造建築で、生産者さんご一家は新居の方に住んでいるのだが、古い方を大石とその妻子一家が借りているのである。この家が、古くてひなびていて、実に最高なのだ。
 その生産者さんというのが、上賀茂にあることからおわかりの通り、京野菜の、特に賀茂茄子を得意とする農家で、田鶴さんという。最近いろんな雑誌に出たりしているのでご存じの方もいるだろう。この田鶴さん、京都を代表する料亭である「○亭」(←店名は二文字、といえばおわかりだろう)に賀茂茄子を卸している農家さんだ。無論、茄子以外にも、豆、ししとうなどの伝統的な種をずっと守り続けている、ホンモノの京野菜農家だ。

大石曰く

「賀茂ナスも最近はかなり出回っているみたいで、京都駅の新幹線コンコースに土産品として並んでいたのにはのけぞった。うちの田鶴さんに言わせると『今でこそ賀茂ナス言うて騒がれてるけど、ブームになる前は、賀茂ナスの種を自家採取できちんと残して作り続けてきた農家は、この賀茂でも2軒くらいしかなかった』とか。うち1軒はうちの田鶴さんのことね。
 だから「ホンマ物」(笑)の賀茂ナスには微妙な特徴がいくつかあるという話。まあ品種改良されてないから、ばらつきも大きいし、絶対的な特徴ではないんだけどね。
 今じゃ、種屋や苗屋で賀茂ナスを買えるんだけど、品種改良されていない原種のおもしろさってあると思うから、そういった種は守っていって欲しいよな。」

とのことである。うーむなるほど、賀茂ナスといって店頭にならぶものは多々あれど、原種に近い物を保存している農家は少ないはずだ。その貴重な賀茂ナスを分けて頂いた。至福である!

 実はこの賀茂ナス、数年前に大石家に泊まりに行った時に食べたことがある。飲んだくれた翌日、大石が母屋に分けてもらいに行ったら、「ちょうど○亭に納品するところだから、余ったのあげるわ」と、数個の茄子をいただいたのだ!

「この茄子、なんにするなぁ」(大石)

「3コもあるからなぁ、、、1コは伝統的な田楽にするとして、後2つは、、、思い切って麻婆茄子でも作るかぁ!」(ヤマケン)

「! な、なに?? 賀茂ナスをマーボー茄子にしちゃうのぉ、、、?(汗)」(大石)

そして強引に麻婆茄子を作ってしまった。当然ながらムチャクチャ旨かった!けど、大石は最後まで「賀茂ナスを麻婆なんて勿体ない、、、バチが当たるわ」といいながら食べていた。懐かしいなあ、大石よ!

 さてよく切れる包丁でスパッと一気に切る。断面にはうっすらと心室が分かれているのがみえる。

 今回は大石も「やまけんに贈ったら何にするかわからん」と思ったのか、できあいの田楽味噌も同封してくれた。思わず笑ってしまったが、性懲りもなく1つは茄子のパスタに贅沢に使ってしまった。スマンな、使い方まちがっとるかな?

 茄子を半割にして格子状の刻みを入れ、ダッチオーブンのフライパンであるスキレットに油を満たし、じんわりと揚げる。中まで火を入れてこんがりと揚げるのには少々時間が必要だ。

茄子と油の相性は最高だ。この照り輝きは非常に美しいではないか。

同封されていた田楽味噌でいただく。山椒の葉っぱがないのが悔しい。用意しておくべきであった。

大石が書いている「ほんまもんの賀茂ナスにある特徴」がなんなのか、僕は知らない。けど、包丁を入れずとも、茄子の心室に沿ってさっくりと自然に箸で割ることができる。この肉離れのよさは、米茄子では味わえない。そして、果肉のトロリとした食感と、立ちのぼる魅惑的な茄子の上品な舞妓さんのような香りは、賀茂ナスしか持ち合わせない美的な特質である!

「うーーん 旨いなぁ、、、」

一人ぼやきながら食べる。本当に綺麗な味だ。これはホンモノの京野菜だな、、、こういうものを食べるときは、僕はアクをわざと抜かない。アクこそが味だと思うからだ。そしてこの賀茂ナスからは、実にきっちりと、独特の「味」が伝わってきた。毒にも薬にもならない野菜が多い中、野太さと上品さを併せ持つ野菜を生み出せるのは、土地の恩恵と、代々伝わる営みを継承していく生産農家の意志そのものだ。

 今年もいいものをいただいた。大石、どうもご馳走様でした。

追伸:
 掲載内容の確認した時に大石に「ほんまもんの特徴」を訊いた。 ふうむなるほど という内容。しかしもう食っちゃったから確認のしようがない、、、