やまけんの出張食い倒れ日記

ここのところの食品問題を考える。

先週もまた出張(八戸~秋田)の繁忙のうちに過ぎていったのだけど、その間に発生した餃子問題はとにかくいろんなところに波及している。国産の野菜産地には、業務用も含めて中国産の代替出荷の要請が集中しているようだ。昨日はテレビ番組の報道特集への協力を要請されたのだけど、「今日か明日に取材したい」ということだったので、物理的に不可能だったのでお断りをした。おそらくここ一週間でいろんな報道特集がテレビを賑わすことだろう。

出張中に第一報を聴いたとき、農薬が原因とはいえ、原料野菜へ農薬散布されたものが残留してこうなったはずはないよな、と思った。畑にある野菜にどんなに濃度を高く農薬散布したとしても、加工食品になったときに人間が中毒症状を起こすほどの濃度が残留することは考えにくい。畑から出荷され、洗浄され、切り刻まれて細かくなり、他の原料と混ざって希釈され、そして加熱されるという多段階を経ているから、その過程で薄まっていくのが当然だからだ。従って、加工の最終段階に近いところで農薬成分が何らかの形で注入されたとみるのが妥当だろうな、と思ったわけだ。案の定、帰京してテレビなどをチェックしていたら、穴が空いていたとかいうことになっているようだ。

とはいえ原因は完全に究明されたわけではないから、予断は禁物だ。しかし、今回の周辺事情をみるにつけ、あまり中国の食品レベルを「やっぱりダメだ」といい過ぎるのは、客観的評価ではないかもしれない。中国の政府高官の記者会見が「紋切り型で、無責任だ」という論調もあるみたいだけど、向こうにしてみれば、原料受け入れ時の農薬残留などについては問題がなかったと言わざるを得ないだろうから、ちょっと気の毒だ。もちろん、かの企業がテロを産みやすい温床になっていたのならばゆゆしき問題だけど。

あと、今回の件を「農薬の残留」と表現するのももはや妥当ではないと思う。農薬が農薬として使用された結果であればそう書けばいいと思うけど、今回のは先述のような思考からは、毒薬として使われたわけだ。だから、農薬として扱うのではなく、農薬由来の毒物を使った、とするのが妥当なんじゃないかな、と思う(あくまで先の文脈で考えるならという話しだけど)。

国産品を大切にと思う僕としては、これを期に中国野菜バッシングが起こるのは歓迎、、、という気持ちが一片もないとはいえないが、それはやはり客観的でもフェアでもない話しだ。中国の食品工場から出荷された食品に、どこかで毒物が混入した、と捉えるべきなんだろうと思う。

で、要するに今回の事件を通じて思うのは、

「やっぱり人の国に、自国が必要な食を預けるのは危険でしょ」

ということだ。
もちろん今回のような事件は日本でも起こりうる。けれども、あまりに文化風土の違う外国で発生した事件よりは、原因究明もしやすいだろうし、予防策も格段に検討しやすいはずだ。

そしてもう一つ。

「これから、間違いなく食の価格は上がっていく」

これはもう仕方がないことだ。
ここ10年ほど、ワンコインで肉まで食べることができてお腹いっぱいになっていた時代が続いたけれども、それは内外価格差のある諸外国からの輸入原料を使うという前提があってのことだった。小麦や大豆、コーンや加工食品、冷凍食品。今日の飲食大手チェーンで、輸入品を使用せずに安値を維持できるとことなんてあるはずがないのだ。

そして、原油と穀物が高騰している中、ジリジリと食品価格は上がっている。

先日、ある編集者さんと話しをしていたら、「でもねヤマケンさん、ここまで消費者がネットとかを通じていろいろと情報交換できるようになって、メーカーとかへの圧力をかけられる状況で、価格が上がることはないと思いますよ」と言われた。

それってホント?

消費者がいくら怒っても、市場に無いものの価格は上がる。そしていまや、信頼できる食の原料は全世界的に逼迫しているといっていいのだ。アメリカのコーン需要拡大に中国の輸入国化、オーストラリアでは大干ばつで麦も米も穫れなくなった。消費者がいくら騒いでも、価格は上がっていくはずだ。

だから、これから消費に近い段階にいる人たちは、生産者や流通業者と調和を図っていかなければならないだろう。今まで安値を要求されていじめられてきたメーカーは、ここぞとばかりに価格引き上げを行うと思う。その権利を彼らは持っていると僕は思う。けど、もちろん過剰な値上げはやめてよね、というのが消費者の思いだ。だから、消費者は「安くしろ」というのではなくて、「ホントに妥当な価格っていくらくらい?」という問いかけをすべきだろう。

そんなことを思った週末だった。