やまけんの出張食い倒れ日記

札幌雪景色 3度目の「またつ」を堪能した

北海道にこんなに集中して訪れることになるとは思わなかった。ホクレンの寺尾さんに「ホクレン内部むけに講演をお願いします」と依頼されたので、一も二もなく飛んだ。しかも「たまには嫁さん孝行してください」というので、二人だ。さすがに月に20日間以上も東京にいないのが続いていると具合が悪い。そこをちゃんと見越してくださったようで、ありがたい。
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「奥さん魚好き?じゃあ、三度目になっちゃうけど、「またつ」に連れてく?」

うちの嫁は肉よりは魚好きなので、もちろんそれで異存なし。かくして三度目の「またつ」訪問。昨年の9月に初めて札幌で寺尾さんとお会いしてから、半年以内に3回も同じ店にいくというのは、全くもって珍しいことだ。ここ数年、一年に一回も再訪できない店のほうが多いのに、、、これも縁だな。奇遇なことに、ちょうど先頃の二度目のまたつエントリを観て、アメリカから帰国している時にまたつに行って、大変美味しいものをいただいた、という方からのお礼のメールが届いた。よかった、よかった!
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ところでなんで「またつ」と言う名前なのか。

「うちの実家が、魚の問屋なんですが、『又ツ』と書いてまたつと読むんですよ」

とおかみさんが仰る。なあるほど!上の写真でおかみさんが手にしているイクラのパックの左上に「又ツ」マークがついている。

「いっつも、実家から何も指定しなくても魚がどんどん届くんですよ。それを主人が生け簀にいれて料理して居るんです」

ふふふふ
この店の魚がやたらと旨い理由が分かった。市場から取引をするだけじゃなく、漁港から直行で佳いものが届くルートをギッチリ血縁で確保しているわけだ!

今回もその素晴らしいルートが活きまくったラインナップが並んだ。

■まつかわカレイの刺身をポン酢で
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「えっ まつかわをこんな厚さで、、、?すごい贅沢!」

と隣で声を上げたのが、この夜ご一緒いただいた、北海道で活躍中のフリーアナウンサー・阿部さんだ。

「まつかわカレイは、もうヒラメより美味しいですよね、、、」

とうっとりしながら食べている。

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ほんとうに、ヌメッと官能的な食感に十分な旨味。絶妙な寝かせ加減で出てきている。

■けいじのルイベ、本マグロ中トロ、ホタテ貝柱の刺身

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「今日はね、けいじがあるから贅沢に出すよ!」

おおおおおっと 場が揺れる。今夜けいじに出会えるとは思わなかった。「ま、実は仕入れてはみたものの、食べるっていう人が現れてくれなくてね(笑) 今日は原価提供するよ!」とご主人。

しかし、少しおいて柔らかくなったけいじも当然とろけるような肉質で美味しかったものの、もっと驚いたのはホタテの貝柱だ。
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産地を失念してしまったけども、おかみさんが「ここのじゃなきゃダメ。食感がサクサクしているかのようなんですよ。他のものをたべても、水っぽい。私は、札幌に移り住んでからホタテを食べなくなりました」という。

口に運び、歯を通してみると、本当にシャッキリした歯ごたえとともに貝柱の繊維が断ち割れていく!余計な水分をピチットなどできっちり抜いているのか、もしくは貝柱の素性そのままなのかわからないけれども、いままで食べてきた貝柱とは別物の感覚。やっぱり食材は、わからないものだ。

そして、お次はホクレン寺尾さんのお気に入りの一品。

■メークインのバター煮

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この丹精な佇まい!メークのイメージそのままにぽっくりと茹であがった感じだ。しかも、スプーンを入れると適度な感触を保ちながら、中心部までスーッと同じ柔らかさで火が通っている。しかも、まったく煮くずれていない。
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「やまけんさん、僕はね、マスターにレシピ教えろって迫ったら、あっさり教えてくれたんですよ。秘密はね、なんと一つ一つをガーゼに包んで煮てるんだって!そんなの、家ではできないよねー」

なるほどぉ、手をかけている。でもそれだけじゃない。白いスープは、ミルクのスープかと思うと、予想を裏切ってとても甘い!コーンがぱらりと入っているところをみると、コーン果汁を使っているかのような、果糖とマルトースが入り交じったような甘さだ。その予想外の甘い汁と、全てのでん粉質が熱で滑らかに変化したメークインの組み合わせが絶妙だ。ジャガイモの新品種推進派の僕としては、メークインは過去の品種、と思うけれども、この料理にはメークが合うと思う。

■ズワイガニの特製ソース
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グラタンか!?と思ったが、さにあらず。バーナーで表面だけ焼き目をつけた特製ソースの下にはほぐしてくれたズワイ一本分の身肉がぎっしりと詰まっている!
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またつのご主人は、もともとは寿司職人だったそうだけど、洋食からラーメンも手がけてきた経験からか、魚介を和風らしからぬソースで仕上げるのが旨い。この蟹に使われているソースも、適度な油脂分が甲殻類特有の香りと旨味を増幅してくれる。うーん これを飯にドバッと載せて食いたい。

ちなみにこの日、寺尾さんが呼んでくれた面々が実に面白い人たちだった!
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写真左が寺尾さん、その横の男性が「ロッテリア」の長元さんという方。いまロッテリアが展開している「絶品チーズバーガー」などのスペシャルメニューのプロジェクトのリーダーだそうだ。

なんでロッテリアかというと、、、今度詳しく書くけれども、同社はファーストフードの枠を超えて、国産の農産物を、生産者が再生産できる価格で購入し、商品化するというすごいプロジェクトに着手しているのだ。それでホクレンさんとはがっぷり四つの取組をしているというわけだ。それにしてもこの長元さん、ボクサーあがりで叩き上げからロッテリアの中枢に駆け上がった、ものすごいパワーのお方である。

そして手前にいる美人が、北海道で活躍するアナウンサーの阿部ちあきさんだ。名刺に野菜ソムリエや利き酒師、ワインコーディネーターなどの資格が並んでいるのをみて「なんだまた資格マニアか」と思ってしまった。が、全然違って、本当に真摯に勉強しておられる方だった。モウシワケゴザイマセン。
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そして、ちょっと遅れて参戦したロッテリア助っ人軍団。
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向かって右側のイケジマさんは、久しぶりに目撃した、僕より全然たくさん食べる人である。いや、野人である(笑)左にいるナイスガイ・ユアサさんは、これまた面白い飲食ビジネス論を展開する人だった。

「フランチャイズビジネスは社会を、そして人を幸せにしないモデルです。植民地政策なんですよ! ロッテリアが直営店中心にやっているのは、そういう哲学があるんです!」

と熱く語ってくれたその様は、農業ビジネスにおける僕のスタンスに共通するものがあるなぁ、と勝手に感じてしまった。
さて宴は続く。料理も続く。

■真タチポン酢
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■けいじの塩焼き(!)
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■サロマ湖産の二年もの牡蠣と、厚岸産の一年もの牡蠣、どちらも蒸し牡蠣
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これがこの店名物の、「バケツで出てくる牡蠣」だ。
今回はサロマ湖と厚岸の食べ比べ。
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年数の違いもあろうが、サロマ湖産(右)に軍配だったと思う。なんともしっかりした旨味が醸成されていた!

■原木椎茸と海老しんじょのフライ
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デカイ! 原木椎茸で丁寧に栽培したものだ。その裏に海老しんじょを塗りつけてフライに揚げたもの。これだけでメインのおかずにもなりうるぞ。
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■イカの刺身
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今日はヤリイカ。スルメイカと比べると食感が繊細だ。乗っているのはもちろん山わさび。

■カブの器に牛すじを入れてP1151784
八丁味噌ベースでトロトロに煮こんだ牛すじをカブの竈に入れたものだ。牛すじの歯ごたえが絶妙に残っていて旨い。飯、食いたい、、、という声に応えてか、〆は米!

「さっき食べてもらった蟹の殻を全部煮込んで、ミキサーにかけてシノワで濾したのをベースに、雑炊をつくったから」
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まだ終わらない!ここから寿司が出るか!?
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いやー 今夜も食った食った、、、
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そうそう
このあと、札幌市内の絶品豚丼の専門店である「まむろ」にも表敬訪問。
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店内で食べる「まむろ」の豚丼は激烈に旨かった!
なんといってもタレだ! タレの独特な芳香と濃厚な味が、いっそタレだけで食ってもいいぜというくらいに舌を刺激する。豚肉はさっぱり目の部位で、シツコサがない。そこがまたタレと合うゆえんだ。
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大将、また来ますです!
私の連載はもう終わりましたが、週刊アスキーは読み続けてやってください、、、

そんなこんなでまたもや札幌の一日が過ぎていったのだ。