やまけんの出張食い倒れ日記

純国産調理用トマト”すずこま”を栽培する、岩手県奥州市の農事組合法人上小田代(かみこだしろ)を訪ねた。そしてこのトマトを使ったスープが、三陸で造られることになった!

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「すずこま」は農研機構とJA全農が開発した調理用トマト品種だ。もともと農研機構の育種した「にたきこま」という品種もあるのだが、このすずこまはそれをさらに改良したものである。

調理用トマトというカテゴリは、日本ではまだまだ不遇だ。10年前に、某雑誌でトマト食べ比べをしたとき、主な調理用品種を集めてトマトソースにしてみたが、美味しいと思えるものはほとんど無かった。味よりも、煮たときに歩留まりがいい(水っぽくない)ということにことに注力した品種が多かったように思う。

僕たちが生で食べるようになじんでいる国産トマトは、ほとんどがピンク系とよばれる品種群だ。そして世界的に主流のトマトは赤系と呼ばれる品種群である。日本で赤系はトマトジュースやトマトケチャップに使われているくらいで、圧倒的にピンク系が多い。赤とピンクの違いは、表面の薄い皮を剥き、光に透かしてみるとわかる。透明であればピンク系、黄色っぽいオレンジ色であれば赤系だ。

ピンク系は水分が多くあっさりした味、糖度も高く品種開発されてきたので、生食にはとても向く。でも、ピンク系トマトを使ってトマトソースなどを造ろうとしても、シャバシャバしてしまって、味も薄く美味しいものができない。

赤系は、ピンク系と比べると生食には向かないものの、加熱調理には向くという触れ込みなのだ。しかし、そうはいっても日本で消費者が買い求めやすい赤系品種はあまりなかった。あっても、先述のようにそれほど美味しいと思えない(加熱調理しても)ものが多かった。それが、数年前からシシリアンルージュなどの、海外からもちこんだ赤系品種が出回ってきた。

で、このすずこまは日本で育種開発されたトマトである。専門的にいうと、地這いまたは低段密植栽培に向く。つまり棚をたてて支柱に這わせる必要が無い。そして芯止まり性をもつ。これは、花房が3段くらいまでついたあと、そこからは伸びないでいてくれるという性質だ。どういうことかというと、トマト栽培では旺盛に脇芽というのが出てくるので、それをとらなければならない。放っておくとそちらが栄養を使ってしまうのだ。けれども芯止まり性があるトマトならば、そうした余分な脇芽をかく必要がないので、省力化できるのである。

このトマトを栽培する、農事組合法人上小田代(かみこだしろ)を先頃に訪ねた。

 

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こんな感じで、雨よけハウス内で密植栽培されていた。

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まだ最盛期の前だったので、それほど赤熟した実はついていない。

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圃場で赤くなっているのを食べてみたが、調理用といってもちゃんとトマトの味がする(あたりまえだが)。

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ごらんのようにゼリー部が少なく、種の入る心室も少ない、果肉が多い実になる。加熱調理しても歩留まりがよいのだ。

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農事組合法人上小田代をとりまとめる伊藤さん。

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この農事組合法人、すずこまトマトへのチャレンジはここ数年だ。生で出荷する以外に、冷凍のトマトピューレにしているのと、その他にもいろんな加工品を試みている。

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ちょっと前まで、トマトプリンという人気商品があったらしいのだが、残念なことにそれを製造してくれていたメーカーが潰れてしまったそうで、人気商品が販売できなくなってしまったという。いろいろ訊いてみたが、岩手県内では加工食品メーカーの数も少なく、商品開発に付き合ってくれるところがあまりないようだ。

そんな中で、いま力を入れているのがこのトマト味噌ラーメン。

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道の駅やイベントなどでよく売れているらしい。僕もいただきました。

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うん、悪くない、悪くは無いんだけど、アミノ酸がきついな、、、舌にぴりぴり、30分くらい残ってました。トマトはグルタミン酸の宝庫なんだから、加えない方がいいよね。

そう思いつつ後にし、陸前高田に復活した八木澤商店に顔を出し、河野会長・社長と話をしてたら、、、

「やまけんさん、この新商品、トマトがポイントなんですよ。でも、いいトマトピューレがなくて、、、」

「えっ いいトマトピューレありますよ!すぐ近くに!」

と上小田代のことを教えたところ、早速視察に行って、500kgの使用が決まったとのこと! いやー 少しは貢献できてよかった。

 

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伊藤さんからお礼にすずこまが送られてきた。

そうそう、上の写真をみて、緑色のへたがついていないことにお気づきだろうか。これはジョイントレスという性質で、へたが着いている部分のジョイントが折れないので、実を採るときにへたもとれてくれるのである。こういう、人にとって有りがたい性質を持つものを育種開発していくことで、品種ができていくのである。

ちょうど友人にバジルペーストとトマトソースを送るタイミングだったので、ソースにしてみる。

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皮が厚めなので、事前にとるかミキサーにかけるかしたほうがいい。酸味は十分、旨みも濃い。ただし、赤熟させると配送時に潰れる傾向があるので、少し若めで収穫したということだったが、たしかにもっと濃い味がしてもいいなあ、と思った。この辺は課題だな。

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でも、とても美味しいソースができましたよ、伊藤さん。

また遊びに行きますね!