10月23日、東京から東北新幹線で20人の料理人さん達が岩手県二戸市に向かって移動。おりしも台風の関東上陸が報じられる早朝だ。このツアーイベントを提案した僕は、当日まで「中止にした方がいいかなぁ、決行でいいかなあ」とグジグジしていた。
一歩間違えば「参加者を危険にさらすなんて企画者失格」といわれるかもしれない。けど、一昨年、同様のツアーを台風予報で中止にしたところ、けっきょく台風の被害は小さく、「決行しておけばよかったね」ということになったことがあったのだ。だから今回は賭けた。そして、ありがたいことになんとかなった。天に感謝!
それにしても、素晴らしいツアーだった。せんだって東京で短角牛セミナーを実施した際に集まってくれた料理人さんや、その他さまざまな方々に声掛けしたツアー。
台風で東京都内の身動きがとれないんじゃないか、という状況のなか、このとき集合できなかったのは高崎線の遅れで新幹線に乗り遅れたひと一名、前日にぜんぜん関係なくケガしたので欠席した人一名。しかも乗り遅れた方は次の電車でリカバー。なんという参加率!
じつはまだ雪の降る今年の2月に同様のイベントを実施、久慈市山形町と岩泉町をまわったので、今回は二戸市の牧野と肥育農家さんをまわるという企画だ。
ただし、新幹線とともに台風が二戸にあがってきているので、もうこの時ビュービュー! 牧野に上がれるかどうかわからないし、あがってもバスが止まった近くに牛がいなかったら、降りないことにしましょう、ということになっていた。
しかし、、、このツアー参加者、なにか強運を持ってる!
バスのすぐ目の前に集まってるんだもん!
ということで、暴風雨のなか、降ります。
牛たちとの邂逅。そして、すぐさま「逃げろーーーっ」と逃げていく牛たち。風で傘の骨がめくりあがり、えらいことになったけど、この瞬間を味わっただけでも参加者みんな、満足なお顔!
二戸の短角の説明はもちろんこの人、杉澤君の出番です。
お昼休みを兼ねて、浄法寺町の庁舎へ。ちょうど浄法寺の天台寺に瀬戸内寂聴さんが赴任していたこともあって、庁舎内に記念館ができているのだ。ほら、ここには寂聴全集が揃ってます。
浄法寺は国産漆の最大の産地でもあるんだぎょ。
漆を掻いたあとの木も展示。料理人さん達は料理を盛る漆器をみたかったようだけど、それは飾られてなかったんだよね。
ぜひここには、飾り皿だけではなくて、ふつうの生活に使える食器を展示して欲しいです。みんな欲しがると思いますよ。
お昼はもちろん、肉のふがね謹製のこれ!
このお弁当は本当に美味しい。
硬いがゼラチン質の入った美味しい部位を軟らかく煮て、それを手で裂いてごはんにのせるのだ。
しかもきんぴらゴボウとか、できあいの輸入野菜原料ではなく、可能な限り地元産の素材を使用。ん、栗はどうだろう、違うかもね。でも立派立派!
さあそして二戸市が誇る肥育農家・漆原さんの畜舎へ。
漆原さんの経営で重要なのが餌。
ずらずらと吊り下がったフレコンに入っている餌は、漆原さんが独自のネットワークで集めてきたエコフィードが入っている。
蕎麦、うどん、南部せんべいなどの切れ端。
そして、花巻から集荷してくる、岩手県名産の雑穀からでたヌカ。
これらに加え、飼料米を破砕したものを与える。配合飼料率はぐっと低く、4~3割。岩手県の素材がこれだけ多いというのはいいじゃないか。しかも、岩手の産地のなかでもかなりパンチの効いた味になるのが漆原短角の特徴だ。
漆原さん、ありがとう!今年はまた僕の牛を預けるので、お願いしますね~!
さて、いよいよバスは盛岡に向かい、これから参加シェフ達自身に肉を焼いてもらうというイベントなのであった。
つづく