世界は広い、そして牛の美味しさもさまざま、ということを識ったピエモンテーゼ牛との邂逅。oberto社が選り抜いたブランド”Fassona”の牛の味とは!? その1 誇り高きOberto社の模様!ゼブ種の血統、ダブルマッスル、未経産36ヶ月肥育!

2018年8月 6日 from 出張

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さて、このピエモンテの地で出会う牛といえば、ピエモンテーゼ種、つまりピエモンテ牛しかいない。イタリアの牛の在来種といえばキアニーナとピエモンテ種こそが二大巨頭といわれる。昨日はキアニーナ、今日はピエモンテーゼと連日のように違う品種の牛を食べられるというのはとても嬉しいことだ。

さて、素晴らしきワイン用ブドウ畑に囲まれたロッディ村の景観からほんの15分程度の場所に、ピエモンテーゼ牛のブランドである”Fassona"(ファッソーナ)を展開するOberto社がある。

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ここで我々を迎えてくれたのが、なんとも美しいイタリア人女性、ルチアーナさん!

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彼女が持っているパンフレットに写っているのがピエモンテ牛だ。

「イタリアの代表的な在来種は白い毛色の品種なのですが、ピエモンテーゼ種もその一種です。毛色は白、鼻は黒くて、舌が灰色というのがピエモンテーゼの特徴です。すくなくとも25000~30000年前には存在したことがわかっている、ルーツの古い牛です。大きな特徴としいては、イタリアの在来種とパキスタンのゼブ種が掛け合わせられた品種ということです。」

えっゼブ種の!?とちょっと驚いた。
世界の牛にはいくつかのタイプがあるが、大きく分けると冷涼な気候に合わせて育つ牛と、熱帯など暑さに強い牛がいる。日本で肉牛として飼われているのはほとんど前者で、アンガスなどの英国品種が代表的だ。いっぽう、インドやブラジル、東南アジア、オーストラリアの北部などの暑い地域では、首の後ろにコブのある牛が育てられている。これがゼブ種と呼ばれる牛の一群だ。

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ゼブは暑い地域でもそだつ適性があるが、日本人的な嗜好から行くと、ちょっとゆるくしまりのない肉質に、風味も独特で、あまりおいしくないという評価をされることが多い。そのゼブの血を色濃く引いているというのか!

それだけではなく、また驚いたことをルチアーナさんが言うのだ。

「1800年代に、ピエモンテーゼ種に重要な瞬間がやってきます。このランゲ地区の小さな村にいたピエモンテーゼ種に、遺伝的な変異が生じたのです。そう、ダブルマッスルと呼ばれる特質を持つ牛が現れたのです。」

うおおおおお なんとダブルマッスルか!
ダブルマッスルとは、筋肉の肥大を抑えるミオスタチンの働きが阻害されることで、通常よりも筋肉量が倍以上に肥大する特質をいう。この遺伝的変異をもった動物は、とにかくみてすぐにわかるほどムキムキの筋肉になる。有名なのはベルジャン・ブルーという牛の品種で、雄の写真をみるとちょっとヤバイくらいのムキムキ牛である。

応接室の壁に掛かっているこの写真をみるとなんとなくわかるだろう。

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尻がでかく(豚尻という)、筋肉がムキッとしているのがわかる。

ただ、よくこれを「遺伝子操作で生まれた不自然な牛」と紹介する人も居るのだけれども、遺伝子操作ではない。かなり確率的には低いものの、どの品種でも突然変異で生まれることがあるらしい。事実、ちょっとまえに岩手県の短角牛でもダブルマッスルの子牛が産まれている。ただ、ダブルマッスルは赤身の肉は多くなるものの、サシは一切入らないという特性がある。それでは日本の食肉格付けでは一切評価されないため、日本ではダブルマッスルは歓迎されず、淘汰されてしまう。

ただし、サシを嫌い赤身肉が好まれるヨーロッパでは、ダブルマッスルは歓迎されるのかもしれない。

「わたしたちオベルト社が扱うピエモンテ牛は、このダブルマッスルの特質をもつ系統の100%純血種で、わたしたちの基準を満たしたメスの、36ヶ月齢育てた未経産牛のみになります。それを”Fassona"(ファッソーナ)というブランドで販売しているというわけです。」

えええええっ
これまた驚いた!
昨日はキアニーナ種の肥育現場に行って、やはりヨーロッパらしく5~6産した経産牛が好まれるんだ、という話しをきいたのに、今日はおなじイタリアなのに36ヶ月齢の未経産牛がいいという。それって日本の好みと同じじゃんか!

36ヶ月齢まで育てることは必ず契約農家に守って貰っています。また、雄は品質が悪いのでうちでは扱いません。なぜ36ヶ月なのかは、理由があります。Fassonaのピエモンテーゼは36ヶ月育てると、マイクロ・マーブリング(つまり超微細なサシ)が入るのです。それによって、柔らかくジューシーで甘い肉質になるのです。最適な期間が36ヶ月なのです。

なるほど、、、マイクロ・マーブリングというのは初めてきいたけれども、おそらく日本で言う「小ザシ」とはまた違うのだろう。見えないくらいの微細なサシがはいるということか。オベルト社はこのFassonaブランドの牛のみを扱うために設立された会社で、いまでも創業者は健在。毎朝、早朝3時には起きて生産者を廻っているそうだ。

週間に40~50頭のと畜頭数、生体重はだいたい800kg程度というから、日本とそう変わりない。オーストラリアの放牧やフィードロットでは、30ヶ月齢も飼わずに生体重も700kg以下でと畜してしまう若齢牛が多いのだが、ここではしっかり味わいを乗せて肉にするわけだ。

「これがFassonaの牛に食べさせている餌よ。」

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餌の設計は50%が乾草などの粗飼料、それにデントコーンサイレージまたは挽き割りのトウモロコシ、大豆、そしてこの辺ではメジャーらしいがソラマメ!なるほどタンパク源がすこし違うのだ。ソルガムやマイロ、亜麻などは使うか?と訊いたのだが、この辺では一切与えないらしい。

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「じゃあ、まずは農場へ行く前に、加工施設をみましょう。」

ということで白衣を着て帽子をかぶり、加工場内へ案内して貰う。

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オベルト社ではと畜場からカーカス(枝肉)状態で引き取り、熟成を施す。カーカスはバラ、ウデから成る前半分と、ロースからモモまでの後ろ半分(上写真)に分ける。このカーカスの状態のままで前半分は2週間、ロインとモモはもうすこし長めに熟成してからパーツに分けて出荷するそうだ。素晴らしい!

これがその肉の断面だ。

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まだ冷やしこんでいないからだろうが、いっさいサシは見えないよ~

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ダブルマッスル形質だというのがよくわかる、まさに「筋肉」!という断面だ。でも、目には見えないけれども「マイクロなマーブリング(霜降り)が入っている」のだという。そうなのか!!!!!

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ちなみに、オベルト社ではレストラン向けがメインらしいが、ブロック状態で発送するのではなく、最終の料理に合わせたカッティングをした肉をパッケージに入れて販売するのが多いらしい。下の写真は、ランプか内モモあたりの、タリアータ用パッケージを作っているところ。

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こちらはTボーン。

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1ポーションが綺麗なパッケージに入って店や小売店頭に届くわけだ。

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1965年からこの形態で販売をしているオベルト社。うーん、素晴らしい!

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もちろん部位によっては加工を施し、サルシッチャやタルタル、ハンバーガー用挽き肉を造ったりしている。

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「さあ、それじゃ、牛を観に行って、それからFassonaを食べていただきましょう!」

ということでドキドキのピエモンテーゼ種との邂逅だ!

Macelleria Oberto ®