やまけんの出張食い倒れ日記

栗原俊朗さん、組合長就任おめでとう!のお祝いの意を込めて、宮崎市田野町に伝わる美しき食の伝統”ぶたかみ”のことを。

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いやーーーめでたいめでたい!今年は、選挙や人事異動といったところで、意中の人が決まることが多いな!本日、JA宮崎中央の組合長に、栗原俊郎さんが就任されました。これね、一大事。JA宮崎中央といえば、、、そう、あの大根やぐらの建ち並ぶ田野町を管内とする有力農協なのだ!

そして俊郎さんは、ご自身はキュウリ農家ながら、大根やぐらの伝統をとても大事にしている農協理事さんであった。僕の撮影活動にも最大限協力してくれていた方だ。

その俊朗さんが、組合長! 未来は明るいぜ、、、

ということで、この俊郎さんが田野町で守っている、ある伝統的な食の行事のことをお伝えしよう。

その名を「ぶたかみ」という。

一頭の豚を分け合って愉しむ「ぶたかみ」はコミュニティの礎だ

「やまけんさん、今年はぜひ「ぶたかみ」に足を運んで下さい!」と声をかけて下さったのは、田野町の農協で理事をしている栗原俊朗さんだ。はて、ぶたかみとはなんぞや?よくわからないままに大根やぐらの撮影を終え、栗原さんのご自宅へ。

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車を降りると異様な光景が拡がっている!軽トラックの荷台いっぱいに豚肉の骨付きの肉塊が乗っていて、包丁や手斧をもった男達がぐわんぐわんと豚を骨ごと切ったり、骨から肉をはずしたりしている。な、ナニゴトですか!?

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「これはぶたかみという行事の準備でしてね、、、宮崎では昔、ご馳走っていったら豚肉だったんですよ。農作業が一段落する時期に年に一度、豚一頭をほふって解体し、肉を分け合ったんです。」

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いまは法律で、家畜はと畜場で解体しなければならないことになっているため、さすがに軒先で豚をほふるわけにはいかない。そこで、豚一頭分の肉を枝肉の状態で持ってきて解体するのだそうだ。

豚は一頭が約100kgある。そこから骨と内臓を抜いても60キロくらいにはなるだろうか。ぶたかみはまず、豚を買うために何人かがお金を出しあい、その人たちが豚肉を捌いて、骨からはずした肉を応分に分け合って持って帰る。あれ、持って帰っちゃうんだ、と思ったら、軽トラの荷台にはやたらと肉が残った骨が乗ったままだ。

「この骨をカットして、大根と里芋を加えて味噌味で煮込む。それをみんなで食べて宴会をするんですよ。」

ああ、そういうことか、「ぶたかみ」は「豚噛み」なんだね!だから骨に肉をちゃんと残してあげているわけだ!

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これはとてもいいお祭りだ。お金に余裕があるなら豚の肉をもらえる側にまわる。残った骨は、地域の人達みんなで宴会を愉しむ分にまわるというわけだ。それにしても栗原さん、豚を購入する胴元であるはずなのに、ぶたかみ鍋を作る側に徹し、まるでサービスマンである(笑)。

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写真にあるとおりの多量の豚骨を水で煮ると、膨大なアクが出てくるので一生懸命捨てまくる。

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薪の火で大根と共に茹でること1時間、芋焼酎や味噌などを投入して味付け。

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その間、ぶたかみの鍋にとって大事な食材だという、里芋の親芋を下準備。

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半端ない量です。ちなみに煮るための装備もすごい。

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ぶたかみ鍋の味噌が大根に染みて、豚肉がホロホロに柔らかくなるまで煮たら、別鍋で下ゆでしておいた里芋の親芋を投入。

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そうこうしているうちに、どこからともなく栗原家のガレージに人が集まりだした!

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およそ40人くらいだろうか、みな呑みたいから、歩きか車で送ってもらってたどり着く。焼酎のお湯割りを片手の人の輪ができていく。じつは田野町は、干し大根やぐらの風景を日本農業遺産に登録したい!という希望を持っている。今回のぶたかみはそれを推進するチームが集まっての景気づけの会なのだ。

「みんなで頑張って、田野町が誇る大根やぐらの文化を日本農業遺産に登録できるよう、頑張りましょう!」

おぉー!とみんなで乾杯。そしてぶたかみ鍋がふるまわれ始めた。「やまけんさーん、これ食べて!」と手渡された容器には、あの、アニメに出てきそうな骨付きの肉塊が!

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豚さんの足の部位ですね、これは箸で食べるようなもんじゃない。「やまけんさん、豚を噛むってのは、骨を噛むってことだからね!」とお声もかかる。ということで、手で持ってかぶりつく!

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「む、、、旨い、、、」

美味しいんですよ!って、そりゃそうか。新鮮な豚肉の骨付き肉を味噌と焼酎で煮込んでるんだもん、骨の髄から出汁が出まくって、美味しくなるに決まっているのだ。豚の肉と骨のうま味が汁に溶け込んで、それがまた大根に染みこみまくりで、ホロッととろける大根の味が最高だ。里芋ももうふわふわに溶けそうになっていて、舌をやけどしそうになるけど、これまた美味しい!

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気づけば日本農業遺産の話しはどこへやら、もう宴会はみなノリノリだ。

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窯焼きピッツァをみんなで焼いていたり、網をだしてさっきの豚肉を網で焼き始めている。ああ、これこそが本当のお祭りなんだなあ、と実感した。昨年の冬から夏まで続いた農作業が一段落し、そして新たなシーズンに入る冬の直前、こうやって豚一頭のために集まって、酒を呑み、豚を噛み、そしてコミュニティの連帯を形作るのだ。なんと美味しくて楽しい行事なんだろう!

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ちなみに、この最後の方にたまったぶたかみ汁が濃厚に煮詰まっていて、なんともうまかった、、、これを白飯にかけて食いたい、、、

ちなみにこの時期、まだ大根やぐらに大根はかかっていない。そのシーズンに入る前の大切な行事なのだ。

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ということで、宮崎にはまだまだすばらしい郷土の食文化あり!

それをささえる農協の組合長に、栗原俊朗さんが就任された。こんなに嬉しいことはないね。

俊朗さん、おめでとう!