7月は関東甲信越でずーっと曇天が続く、農作物にとってとても条件の悪い状況だった。野菜も果物も、太陽光が照ってくれないとおいしくなりようがない。 それでも先週ごろから一気に気温も上がり、天候も回復してきた。 いよいよ、スイカがおいしい季節だ!(台風だけが気がかりだが、、、)
3Lの大玉、今日、秋葉原近くを通る人は食べに来たらいいですよ。
先月は曇天ばかりだったけれども、シャリ感はっきりあり、そして甘い!おいしいスイカです。
さて写真のスイカは長野県の松本市から送られてきたもの。いま店頭には、この長野県松本市産か、もしくは山形県尾花沢産のものが多いと思う。
いまが旬とはいえ、現在は一年通じてスイカがスーパーの店頭に並ぶ時代だ。というより、スーパーの棚をはなさないために全国のスイカ産地がリレーのように出荷をつなぎ、スイカの定位置を他の果物に取られないように頑張っているというわけだ。
今年のはじめ、そんな全国のスイカ産地が集まる会議があった。「今年のわが産地の作付けは●●ヘクタール、前年度より5日ほど遅めに推移しております」というように昨年対比の現状を報告し合う。へえ、お互いライバルなのに、とおもうけれども、そんなことよりもちゃんと産地リレーを繋いで、棚にスイカが必ずある状況を作ることの方が大事なのだそうだ。
僕はその会議を仕掛けている、全日本のスイカの種でトップシェアをもつ萩原農場さんに、基調講演に呼んでいただいたのだった。そうしたら、その話の内容を気に入っていただいたようで、出席されていたJA松本ハイランドの田中常務に「うちであの話をしてくれないか」とお呼びいただいたのだ。
講演の控え室で、JAの文化広報課の臼井さんが、地元の銘菓を並べて出して下さった。なかでも面白かったのが、松本銘菓の「信濃富士」。
何の変哲も無いクッキーかとおもいきや、、、
なんとクッキー生地の周りは最中! 最中のサクッとした食感の中に、クッキーというかサブレの生地がほろほろと崩れるのがいい。とてもおいしいではないか!
こんな風に、ご当地のお菓子を出して下さる気遣い、とても嬉しいのである。講演はみんな熱心に聞いてくれて、ほぼ居眠りなし。好評だったようでなによりだ。
講演後、ひとつの小さな奇跡が起こった。講演会場から懇親会の店までタクシーで行ったのだが、そのタクシーに乗って、同乗する課長さんを待っていたときのこと。
運転手さんが「あの、やまけんさんですよね? わたし、週刊アスキーの読者で、ずっと記事を読ませていただいて、いまはNHKラジオ第一のやまけんさんコーナーも毎回聴いております」と!
まじかよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
週アスの読者さん、、、てことはかなりデジモノ好きですか?
「はい! いまでもGoogleブック使ってますから。おたくです!」
いやーー最高! 松本ではナンバーワンシェアであるアルピコタクシーのKさんである。戻ってきた課長さん、僕が運転手さんとゲラゲラくっちゃべっているので、目を白黒させておられた。
この日は読んで下さった田中常務と日本料理をば。
〆はもちろんお蕎麦! この店の主が、近くのそば打ち場で打ってきたものだという。
もちろんおいしい!おかわりしちゃいました。
次のお店に行くタクシーも、課長さんが気を利かせてアルピコタクシーに電話をしてKさんを呼んで下さった。
さて、その翌日。せっかくだからスイカ産地を視察させてくださいとお願いしていたのだ。
山に囲まれた田園地帯を走っていると、稲からスイカの葉に切り替わる!
JA松本ハイランドのスイカ栽培面積は約200ha。生産者が約200名なので、一軒あたり1ha程度か。スイカの収穫作業のことを考えるとその面積はでかい。
なぜならスイカがだいたい9~10キロ前後。それを、トラックに200玉積み込んで選果場に運ぶのだそうだ。200玉を4人で手分けして収穫するとしても、一人50玉とすると、10kgのスイカを50回持ち上げたら500kgになる!重労働なのだ。
あ、ちなみにここは田中常務のおうちの畑。奥様と娘さん、息子さんが収穫をしておられた。
この機械が運搬機。これがあるからまあやっていられるとのこと。手で運んでたらやばいよな。
収穫したスイカは、ヘタをカットし、産毛を綺麗にタオルで拭き取る。
そこにアルコールを吹き付けて殺菌。
これを養生したトラックの荷台に、2段に積んで100玉を選果場へ出荷。一日二回これをやるそうだ。ヘタの状態を見て、あまりよくない状態のものは持ち帰り、自家用かご近所産へお裾分け。
ちなみに農協で4人の検査員がいて、毎日農家さんの畑を廻り、収穫しているスイカが出荷基準を満たしているか、チェックをしているそうだ。
どんなことをチェックしているかというと、第一に食べ頃のものが出荷されているかを重点的にみるそうだ。農家さんが早朝に花粉を受粉させるのだが、そこから45日目が出荷適齢期。その前後5日間の範囲で出荷することを徹底しているとのこと。
また、中に穴が空いている空洞果や、熟れ過ぎているものなどをチェック。農家さんからすれば穫り遅れてしまったものなども出荷したいところだが、消費者の手に渡ったときに食べ頃を大きく逃したものだった場合、産地への信頼がなくなってしまうからだ。
このスイカを摘んで、選果場へ。
農家番号を告げて受付をしたら、専用の検査員さんにスイカをバケツリレーのように渡していく。
検査員さんがみためや重量をチェックして出荷基準に満たないものはここでもはじかれる。
この後、光センサーという、対象に穴を開けたりしない、非破壊検査という方法で糖度や熟度を測定。いまの技術では、外から測って熟しすぎているものまでわかる。
甘さや熟度が基準を満たしているものはサイズ別に仕分けられ、目にもとまらない早さでベルトコンベアで運ばれていく。
整然とスイカが動いていく様は観ていて気持ちがいい!
4玉ごとに規格の同じスイカがまとめられて、ツーッと通っていく。規格が変わると線路の切り替え器のように行く先が変わる。
そこから箱詰めなんだけど、ロボットが吸盤でスイカを持って、、、
クッと持ち上げて、、、
ストッと入れていきます。
そしたら目にもとまらぬはやさで封緘して。
出荷ラインでございまーす。
長方形の箱をみておわかりの通り、通常は2玉一箱で出荷する。ただし、なかには5Lという、むちゃくちゃデカい大玉が出てくることもある。それは一玉詰めである。
こうして箱をパレットに積み、最上部だけテープで結束することで、輸送中にゆれても崩れないようにする。ここまで全部自動です。
このように、じつに巨大な選果ラインが動いているのは、スイカがもっとも収益性の高い作物だからだ。
JA松本ハイランドではこの季節に2玉入り93万ケース出荷する、ということは186万玉ということになる!農協としても稼ぎ頭といってよい作物なのだそうだ。
さて、これが事務所に送っていただいた大玉スイカの3L。品種は当然ながら、奈良県の萩原農場の「祭り囃子777」である!
7月のあの曇天で栽培されていたスイカ、コンディションは悪かっただろうに、ビシッと果肉が密に詰まっている。
おいしい、、、さわやかな歯切れとシャリ感、そして甘い!「この曇天でコクが弱いかも」と言っておられたが、そんなことない。十分なコクがあります!
いま、首都圏では店頭での主流は小玉スイカに移り、大玉はカットフルーツでの提供が多くなってきているそうだが、やっぱり大きなスイカを割ってみんなでシャバシャバシャバァっと食べるのが吉!
今年の夏もスイカを食べよう! 松本のみなさん、ごちそうさまでした!!!