やまけんの出張食い倒れ日記

食材の熟成を促進するエイジング・ブースターを駆使する「焼肉にくがとう」にて、同じく熟成促進に取り組むアルベッキオ・ドゥオモ小川シェフとHAGI萩シェフが悶絶する!

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マイクロ波をあてて食材の内部温度を上げつつ、食材の表面は冷蔵機能で冷やすという仕組みで、食材の熟成を促進する機械「エイジング・ブースター」。四国計測工業という真面目でおかたい会社が創り上げた、面白い機械だということは数回述べてきた。その具体的な仕組みについては前回のエントリに書いたとおりだ。

四国の真面目な製造業者が、ふとしたきっかけで作ってしまった「熟成を促進する機械」がスゴい!わかりやすいのはお肉の熟成!
- http://bit.ly/2XUC8l9

この機械のことをはじめて聞いたときは「そんなので熟成が進むわけがない」と思ったのだけれども、百聞は一見にしかずとはこのことで、実際に熟成に時間がかかる牛のネック肉を送り、半分を真空にして冷蔵庫に保管、半分をこのエイジング・ブースターで処理をしてみたところ、あきらかに柔らかさ、旨みや香りの生成に違いが現れた。

「これはイケるかも、、、」ということで、本腰を入れて関わることにした。色んな人にエイジングブースターのことを伝えてきたのだけれども、そのなかでも「これはすごい機械ですよ!」とビビッドな反応をしてくれたのが、焼肉店の新生といえる、「焼肉 にくがとう」だ。

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先のエントリでは六本木ヒルズ内にある店舗をお届けしたが、こちらは日本橋の人形町にある一号店。じつはここに、エイジング・ブースターが鎮座している。

「導入してから、カウンターのお客さんに説明すると、みなさん『食べてみたい‼』と。それで食べ比べをしてもらうと『美味しい!全然違う!』と評判なんですよ」

というのは、このにくがとうを立ち上げた三浦剛くんだ。

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さてこの日は、このにくがとうでエイジングブースターの試用をしている東西シェフがあつまっての食材食べ比べ会だった。いまエイジングブースターは5台程度しか存在しておらず、その貴重な試作機を、さまざまな業態の飲食店に使ってもらっている。

そのなかからこの日は、福島県いわき市でフレンチレストランHAGIを営む萩さんご一家と、香川県高松市で超人気イタリアンであるアルベッキオ・ドゥオモのシェフを務める小川翼さんが上京!

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それぞれのシェフ達は、自分の得意領域の食材をエイジングブースターで熟成することには慣れているけれども、自分のよく識らない分野についてはわからない。「他にもこんなのに使えるんだ!」という気付きを共有するために、集まっていただいたわけだ。

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萩シェフがもちこんだ、ブースターで熟成処理を行った食材がこちら!

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えええっ こんなものまで熟成が!?と思われるかもしれないが、はっきり言って何でも対象となりうるのだという恐ろしい事実を、萩シェフは切り拓いているのだ。

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それはそうと、まずはにくがとう特製コース。いっぱんのお客さんでも「エイジングブースターの熟成たべくらべをしたい!」と予約時に言えば、用意してくれますよ。

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トマトのキムチ旨い!

そして、萩シェフが用意してくれたカツオのエイジングブースターがけ。

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カツオは足が早い魚で、すぐに酸化して臭みが出てしまう。でも、エイジングブースターで熟成促進すると、酸化したくさみは一切なく、そして身肉がネットリとして、いわゆる鮮度の高いモチガツオとはまたちがった食感と旨みを楽しむことができる。

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「熟成は進んでいるのに、劣化はしていないね。」

「表面が酸化するスピードより内部のたんぱく質の分解スピードの方が早いのかな」

など、みんなが考察しまくる!

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そして、、、当然ですが、カラスミの熟成にはかなり効果があるそうだ。最近、カラスミを自家製でしこむ人達が増えているが、風味を熟れさせるのにかなり時間がかかる。エイジングブースターはそのためにも使えるそうだ。

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食材をばんばんもちこんだHAGIの萩シェフ、「これが一番スゴいですよ!」というのが、いわき産のメヒカリである。開いたメヒカリに軽く塩をしたものをエイジングブーストしてある。

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これは、、、といっても、比較対照をするためのエイジングブースとしていないメヒカリがないのでわからないが、とにかく美味しい!

傷みの早い魚種を、品質を保持したままエイジングすることができると、旨みも香りも引き出されるそうだ。

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もちろん、チーズの熟成も進む!

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という、萩シェフの食材実験でみんなが「おおーーーー」っとなったところで、にくがとうの焼き肉食べ比べ。まずはタンの、ふつうのものと、エイジングブーストしたもの。

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贅沢なことに店主の三浦くんが自身が焼いてくれます。

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この牛タン、エイジングブーストの効果がわかりやすいという点ではかなり上位に入る食材。通常の牛タンを食べた後にこれを食べて比べると、柔らかさ、旨み、香りがそれぞれ体感で倍以上に引き出されているのがわかる。とくに食感はみもので、単に柔らかくなっているというのではなく、心地よく歯切れする、次元の違う食感になっている。これでいつまでもかみ切れないミノを熟成したらどうなるだろう、、、

そしてランプ。

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ランプもまた、イチボにくらべると赤身度が強く、食感も強めの部位だ。

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だがやはり、エイジングブーストを施したランプの味わいは、していないものとまったく違う。赤身のたんぱく質の結合が緩くなっている感じがして、とにかく心地よい食感で歯切れしてくれるようになる。

そして、大きく味わいの違うを感じるのは、意外にも脂である。イチボの食べ比べでそれを感じるのだ。

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上質なサシが入るイチボは、いまやサーロインやリブロースよりも人気の部位と言っていいだろう。

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このイチボのエイジングブーストしたものをたべて、みな絶句!

「全然違う、、、」

そう、赤身部分のみならず、脂自体の熟成も進むので、質感がまったく変わってしまうのだ。その変化は赤身中心のランプよりも明らかにビビッドに感じる。

通常熟成のイチボが生々しい感じだったのに対して、エイジングブーストしたイチボは風味が全体的につよくなり、それなのに脂のくどさは消えて、サラリと上質なものになっている。脂の実態であるトリグリセリドの構造が若干変容しているのだろう、と思う。詳しくは書かないがドライエイジングで起こる変化と同じだ。

いや、ちょっと本当に感動しましたねぇ。

ちなみにこの日は小川シェフのお誕生日(一日あとだったかな?)!

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さすがの気配り、三浦くん!

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こうして夜は更けていったのだった。

この翌日、一同は福島県いわき市のHAGIへと向かうのである。つづく!