ヴィーガンが世界的に注目されてしばらく経つが、こういう波が遅く、おそ~くやってくる日本でもようやく話題になってきた。もちろん生粋のヴィーガニズムが広まったと言うことではなく、たまに動物性食品を食べないという選択肢を持つことで、環境排出を抑え、命を奪わない生活に思いを馳せる生活に触れるというくらいのものかもしれないけど、それはそれでよい人生の契機である。
かくいう僕は、畜産物食べる快楽からなかなか抜け出すことができないので、倫理的ヴィーガンの人達を心から尊敬する(マジで)。ただ、僕はほぼ確実に完全なるヴィーガンにはなれないだろうなぁ、、、と思う。だから、自分にできることとして、せめて倫理的な畜産を目指している、というわけだ。
ヴィーガニズムに対する反論として、フランスの動物行動学者であり哲学者でもある著者が書いたこの本を、日本農業新聞の書評欄から寄稿を依頼されたので読んだ。この本、倫理的ヴィーガンの人達からは「お話にならない」と総攻撃されている感のある本なのだが、僕が興味深かったのは著者が結論として倫理的畜産を目指すべきだという結論に達するところだ。
■「肉食の哲学」 ドミニク・レステル著
https://amzn.to/3fUx4bc
肉食が文化として根付いている度合いが日本よりはるかに深い欧米で、どんなことが議論されているのかを識るという意味でも、読んでみると面白いと思う。
さて、それはともかく。
ヴィーガン料理にチャレンジするというのは、少なくとも環境負荷が低いという意味においては明らかにエシカルであるといえる。というのは、いずれ「エシカルはおいしい!!」にもしっかりデータを出していくつもりだけど、あらゆる食品分野のなかで畜肉は圧倒的に環境負荷が高い。肉を食べないという選択肢を採ると、いきなり環境排出の総量が下がるのだ。だから、週に数回でもヴィーガン料理でお腹を満たす日を作るというのは、誰にでもチャレンジ可能な倫理的行為だと言える。
でもね、いきなりヴィーガン料理だからと言って、「野菜と玄米!」みたいなノリにならなくてもよい、と個人的に思っている。ヴィーガンと禁欲的というのとは別な話だ。誰もがおいしいヴィーガン料理を食べればいい。
いやしかし。美味しいヴィーガン料理ってどうやって作るの!?ってなってしまう人もいるだろう。おひたしに野菜炒めに白ごはん?
そういうところで面白い存在になりつつあるのが、OISIXがアメリカのサービスを買収し傘下に収めた、ヴィーガンミールキットサービスのPurple Carrot(パープルキャロット)だ。
■パープルキャロット https://www.oisix.com/shop.g6--purplecarrot--top__html.htm
実は暫く前から、パープルキャロットの製品を何回か食べていた。うちが事務局をしている青果物流通の勉強会組織でこのパープルキャロットについてOISIXの方に話をしていただいたこともあってのことだが、予想以上にいろいろと感心してしまったのだ。
たとえばこれは野菜たっぷりの豆腐そぼろのビビンパ。
ごらんの通り、ごはんさえ炊いておけば他はほぼ要らないようにパックされている。そして、どんな料理下手でも造れるだろ!?というくらい練り込まれた説明書がある。
これにそって野菜類をカットしていく。
造ってるのは弊社の大学生スタッフである市村君です。
素材がですね、ビーツ半分とかニラ30gとか、ちょっとなんですよ。僕のような青果流通の仕事に関わっていた人間からすると「おい少ねーぞ!」と行っちゃいそうな所なんだけど、でも実際、これしかつかわないできちんと二人前できる。
おそらく今日的な人達にとっては「余らせた素材を冷蔵庫でダメにしてしまって罪悪感を感じる」ということがなくなるので、この方がいいはず。僕には一切理解できないことなんだけど、本当にそういう心持ちの人が多いらしい。
とこんなふうに調理を進めるんだけど、、、
この豆腐そぼろって言うのが実に使い出があって美味しく、評価が高いらしい。
つまりこれが挽肉そぼろの代替品として使われるわけなんだけど。
はい、野菜たっぷりのヴィーガンビビンパです。2人前だったのを3人で3等分したんだけど、十分な量だったね。そして、しっかり美味しい。動物性タンパクと動物性油脂をとらない食事というのはほんとうにお腹が楽だなぁ、という実感。ただこのメニューだと「はいはい、だいたいわかるよー 別にパープルキャロットでなくても作れそうだね」となるかもしれない。
ということで、家で簡単に作れるもんばかりじゃないということをお見せしましょう。
これ、なんと、、、このブログでもさんざん紹介してきた、青山TheBurnの米澤文雄シェフが監修した、あのヴィーガンボロネーゼなんですよ!
■ごめんよZ6、お前が悪いのではなかった!ちょっと気持が黒くなってたよ。The Burnのヴィーガンコースをこんなに美しく撮れるんだもん、一緒に頑張っていこうネ。
- やまけんの出張食い倒れ日記 http://bit.ly/321qOVO
ちゃーんと米澤くんが監修したメニューなので、再現性が抜群!
まあもちろん、右下にあるレトルトパックにみえるように、肝心のラグーソースは委託加工したできあいです。でもこれがばっちりいいできなんだよね、、、僕は米澤くんがつくるビーガンボロネーゼ何度も食べてるけど、ほんと「近い!」と思ったもん。
ちなみにこのキット、野菜サラダ付きなんです。
で、こちらがヴィーガンボロネーゼ。
控えめに言って美味しい。もっといえば実に旨い!ていうかマジでヴィーガン!?と叫ぶこと間違いない。
で、この料理に関しては、米澤くんがちゃぁんと「ヴィーガンレシピ」にて材料から造り方までレシピを公開してくれています。
さてそんで今回のメイン。
なんだかわからないかもしれないけど、ラーメンです。あの「ソラノイロ」が監修したヴィーガンラーメン。
感動的なのが、いちばん上にある食材。チャーシューの代わりなのか、油揚げがあるんですけどね、これが青森県が誇る太子食品の練り揚げなんですね。これ、おそらく大きな工場で生産されている油揚げ商品のなかでトップレベルのおいしいお揚げなんですよ。タイシ食品が独自製法を完成させたものなのだけれども、とにかくこれ食べたら「えっ いままでのパサついた油揚げって、、、」と茫然自失になってしまうこと請け合いの旨さ。ただし、取引口座の関係か、なぜかさとの雪が販売者になってるんだけどね。とある流通コンサルタントさんとこの話になって「きっと、オイシックスさんはさとの雪との口座があって、それで取引したかったからこうなったんだろうね」と話していたわけです。いや、推測ですけどね、推測。
はい、説明書通りに造りました。やっぱりね、ソラノイロ特性のベジブイヨンにベジタレ、そしてベジ香味油が味の要なんだけど、これが美味しいのですよ。そのスープを先に作って置いて、先の練り揚げを煮て味を含ませておく。これを麺の上に盛って、野菜を散らしていく。
この、揚げがちゃ~んとチャーシューの代わりになってるんですよ。そりゃそうだよな、うどんの世界では昔から油揚げは主役級の素材だったんだからね(笑)
ラーメンとしてのできもすばらしい!麺はゆめちから小麦使用。なによりヴィーガンスープが美味しい!
うちの妻は日本語学校の教師をしているんだけど、学生にもヴィーガンのひとが割といるんだそうだ。でも、禁欲的な食生活を送っているわけではなく、むしろ「ラーメン食べたい!」という人が多いのだが、ヴィーガン対応のものが少ないので困っているそう。そうしたケースは今後増えていくだろうから、ミールキットだけではなく、外食店でももっともっと増えるべきだろうな。
それはともかく、、、
パープルキャロットのヴィーガンミールキットは、「おいしいヴィーガン料理ってどんなの!?」と疑問を持つひとにおすすめできる。こういうお手本を食べてから、自分でいろいろ踏み出していくというのが理にかなっていると思うのだ。
さて、来週も「時々ヴィーガン」やる日を設定しようかな、、、