今年始まった新しいプロジェクトでいちばん大きなものがこれです。多くの農家さんがとっている雑誌「家の光」に連載が始まりました。
「家の光」というタイトルをみて「それって新興宗教?」と誤解されることも多いのだけど、家の光は大正14年から続く、れっきとしたJAグループの出版社です。ちなみに旗艦誌といえる「家の光」はなんと公称45万部!
ごらんの通り表紙やグラビアには有名人が起用され(氷川きよしの次に石川さゆりって、ここんとこ演歌づいてる!?)、人気連載にはあの美輪明宏さんの人生相談があるのだ!
その家の光で、こんな嬉しい新連載が始まりました。
これ、たんに郷土食を巡っておいしいマズいを言う企画ではありません。
南北に長く、また急峻な地形の多い日本では、地域によって様々な食文化が形成されてきました。それは気候や気象条件、土質の違いなどによって、食物の生産や流通、また選択しうる料理方法にも制約があったからであります。その「制約」こそが、多様な郷土食が生まれるためのキーでもあるわけです。
ただし、こうした「制約」は高度経済成長後、幹線道路の発達と流通の発展と、ハウスでの加温栽培などの技術の普及によって、解消されてしまいました。それとともに、本来は「制約」によって生まれた地方の郷土食または伝統食の文化も、その存在の必然性を失い、消えつつあるわけです。様々な分野でグローバル化が進む中、食の世界もグローバル化という均質化の方向に向かいつつあるようにみえるのは、みなさんもお気づきの通り。
他方で、SDGsの進展のなか、文化の多様性を重視することが必要とされています。文化庁も食文化の保存を重要視し、新たな施策を投入している状況です。
しかし、肝心要となる地方の郷土食文化は、ここしばらくの間で食文化の担い手の消滅の危機を迎えているものが多い状況です。
そうした問題意識をもって、郷土食の「現在」をあぶり出すのがこの連載のテーマです。もちろん郷土食の中には滅びつつあるものもあれば、現代化して生き残っているものもあります。地域の有志が頑張って残そうとしているものもあれば、形を変えることでなにも努力せずとも拡がっているものもあるでしょう。
そうした「現在」にこれからたくさん出会う旅をしていきたいと思います。間違いなくこの連載は50代の私のライフワークとなるでしょう。
連載第一回目は広島県海田(かいた)町につたわる「海田さつま」。
広島県民でも「しらない!」という人が多い郷土料理ですが、そこには薩摩藩の参勤交代にまつわる興味深い史実がありました。
そしてなにより、地元の高校生と地域の味噌メーカーによる新商品の開発と販売という、未来につながるプロジェクトが実現したというのが面白いところ。
一般書店にはほとんど置いていない「家の光」ですが、購読はもちろん可能です。機会があればぜひ!手に取ってお読み下さい。購読している農家のみなさま、どうぞこれからよろしくお願いいたします。