やまけんの出張食い倒れ日記

大吹雪の中、唯一無二の食肉料理人集団が拓いた「エレゾエスプリ」に泊まる! 遊牧舎の秦先生と満寿屋パンの杉山社長ご夫妻と一緒に圧倒された夜と朝! その3 これこそがエレゾが世に問うオーベルジュ、エレゾエスプリだ。


ということで、お待たせしました。どうしても前置きが長くなってしまうのだけれど、ごめんなさい。

昨年はエレゾにとって激動の年となった。22年10月、いよいよエレゾ社の建つ大津の灯台からほど近く、海を見下ろす丘にエレゾエスプリのオーベルジュが建造された。

そして、、、10月29日、エレゾの立ち上げ時から章太の心の支えとなっていた、ハンターの尾崎さんが急逝された。山深いところへ猟に向かう中での事故だったそうだ。数日後に執り行われた葬儀に、章太は参列せず、「尾崎さんなら、立ち上げたばかりのエレゾエスプリの仕事をやれ、と言うだろう」との気持で、厨房に立っていたという。精神的支柱ともいえる存在を失ったエレゾ、大丈夫だろうか。陣中見舞いの気持も込めて、僕も足を運びたいと思ったのだ。

北大牧場から自分も養豚農家となった秦先生を、エレゾでの食事にお誘いしたかったということもある。僕が北大の博士課程に入学できたのも、秦先生が農経の坂下先生に声を掛けて下さったからだ。そのお礼をまだしていなかった。

それにしても三名だとちょっと少ないな。ディナーをしっかり楽しむならもう一組、、、となったら、大好きな満寿屋パンの杉山社長ご夫妻に声をかけよう。ということで、十勝帯広空港で杉山夫妻に拾っていただき、秦先生の牧場を観てからエレゾへ向かうという旅路となった。

しかし! 例の豪雪の日にぶつかってしまった! こういうとき、よくあることなんだけど、僕が乗ったJAL便は無事に着陸したものの、その後の便はすべて欠航! 「よく来られましたね~」と杉山社長に言われてしまった。


まずは忠類村に、秦先生を訪ねる。


先生、お元気そうでよかった! 東京のIT企業で80人の部下を持つ優秀なエンジニアが、なぜか住み込みでお手伝いに来ている。なぜかそういう人を呼びこむんだよな、秦先生は。


杉山夫妻を秦先生に紹介できてよかった! 満寿屋商店の店頭に遊ぶたハムサンドが並ぶ日が来るかも!?


雪の中でも、もちろん豚は放牧されてます。



いっとき、ケンボロー種が多かったのだけれども、いまはバークシャー系が多い。


地面に落ちているのが、この辺で特産の、ナガイモの規格外品。



こうしたエコフィードを中心に豚を飼養しています。下の写真が肥育豚。


現在、月間の出荷頭数が10頭くらいに増えてきた。飲食店の引き合い、募集中です。


さて、雪が冗談抜きで勢いを増してきているので、秦先生も自前の車で。ということでエレゾへ向かう! ちなみにエレゾエスプリのある豊頃町大津までは、ほぼバスなどの公共交通機関に頼ることはできないと考えたほうがいい。道外からエレゾエスプリへ行くには、帯広空港や帯広駅などでレンタカーを借りるか、もしくはエレゾエスプリのWebを確認して、提携タクシーで定額料金を予約するかしかない。

まあ、そういうところも含めて、「行くぞ!」と気合いを入れなければ行くことの叶わないオーベルジュなのだ。

スリップしないよう、気をつけて運転してくれる杉山社長の車で、海岸側からキュッと上っていったところ、一面の雪景色。暗い中、灯台からの光がクルクルと廻って、僕らの現在位置を教えてくれる。


ここがエレゾエスプリだ、、、


右側に3棟建っているコテージが宿泊施設で、左の白い建物がレストランとなっている。


コテージはツインベッド。豪雪の中、たどり着くと暖かい室内で「天国!」と思えます。



なお、反対側のバルコニーへ出ると、大津の雄大な海が目の前! なのですがこの日は、、、


豪雪ゆえ、冬の日本海!な風景。これはこれで圧巻!


どんどん辺りは暗くなり、雪が勢いを増してくる。北海道ってすげーな、、、


そこに、秦先生も到着!


室内にセットされている、高品質なドリンクやお菓子類を軽く楽しむ(もちろんこれは別料金!)。


と、サービス担当さんから電話が。

「食事の始まる 18:30 まで少しありますので、皆様をエレゾのLABORATORYに特別にご案内するよう佐々木から申しつかっています。よろしければ車でお送りしますので。」

ちなみに、通常はエレゾの製造施設であるラボの見学は衛生面の関係からも禁止となっている。秦先生や杉山社長らへの特別なはからいで実現したことなので、普通のお泊まり客の視察は受けていないと言うことを了解いただきたい。

ということで、大型車が来てくれて、みんなで移動。エレゾエスプリから製造設備まで敷地内にあるので数百メートルなのだけれども、雪が積もっていく中では、かなりスペクタクル感あり。もう真っ暗だったし吹雪いていたのでので外観は取り損ねたが、2016年に撮影した時の設備に大幅増改築が行われ、エレゾの製造施設は一回り大きなものとなっていた。

なお、実際はHACCP対応もあり、我々も各種消毒を行い白衣で入ることとなるのだが、この日はすでに製造作業を終えた後だったため、特別に普段着で入れていただく。


都内のレストランで料理人として修業していた金子君は、妻君とともにエレゾに合流、佐々木君の右腕以上の存在として製造部門を引っ張っている。変わらないねえ!


内部は清潔の一言! 食肉加工施設特有の匂いもほとんどせず、いかに製造スタッフが手を掛けて清掃しているかよくわかる。道内のHACCP認証の最も厳しい基準をクリアし認証されているそうだ。

シカなど鳥獣の搬入から剥皮、放血、解体といった作業の動線がしっかり設計されている。


満寿屋の杉山さんも、こうしたジビエの食肉加工施設は初めてだそうで、「おお、こうなっているんですね~」と興味津々。


エレゾらしい、ジビエを扱う中で独自の視点から製作された設備もある。通常、イノシシやシカを捌く際は、足の腱にフックを掛けて吊して作業を行うことが多いが、彼らは数え切れないほどの処理を行う中で、違うやり方を開発。金子君の後ろにある台を独自に設計して、ここに置いた状態で捌くほうが効率的だという。


作業部屋内のパネルもごらんの通り綺麗なものをセレクト。食肉加工設備というと、グレーで無彩色の壁面のところが多いが、「そんな環境だと、作業をしている人の気分も沈みがちになります。そうしたことも踏まえ、エレゾでは各作業段階に応じてパネルを設置、色を変えるなどしています。」


剥皮された鳥獣をさらに加工していく作業場へ。ごらんの通り懸垂レールが設置されているので、作業導線に合わせて鳥獣のと体を難なく移動させることができる。



そして、綺麗な精肉パーツ状態になったジビエを調理加工するスペース。


ミキサーやカッターといった精肉加工のための機械がある。


なお、この日のスタッフのまかないを調理しているのが、新人のガイ君。


なんと海外でプロサッカー選手として活躍していたそうで、そこから心機一転、エレゾのスタッフとなったそうだ。頑張って!

さぁそして、ここがエレゾの心臓部とも言える、製品形態に整えた肉の冷蔵・熟成庫。


素晴らしいの一言だ。通常の畜肉だけを扱う工場なら普通の光景だと思うかもしれないが、忘れてはいけない。ここはジビエが主流の食肉加工施設なのですぞ。鹿肉、放牧豚の肉、クマや短角牛、そしてキジバトやエゾライチョウといった野生肉がこのように美しく機能的に格納されている。その美しさ、几帳面さに佐々木章太の性格が表れているよなあ、と思う。

そして、シャルキュトリ部門も確実にレベルアップ。


サラミや生ハムの熟成庫は薫香ただよう素敵な空間。白カビがついているのがわかると思うが、これはスターター菌を使ったものでは無く、自前の蔵付きカビだそう。ちゃんと分析もしていて、ロックフォール系統の白カビなのだそうだ。北海道は本州とカビの種類が違うと言うが、大津の地カビはなかなかに素晴らしいものだ!

「やまけんさん、もうひとつ、みていただきたい場所がありまして、、、」

と金子君が連れて行ってくれたのが、もとは章太の社長室となっていた二階の部屋。入ってビックリ、そこにはおびただしい本数のワインが眠っている!



じつはエレゾは、オーストラリアのワイナリーとパートナーシップを結び、専用のブドウ園地を確保。完全にエレゾ向けのワインを製造してもらうという関係を構築したそうだ。もとはエレゾの顧客として足繁く通っていた人がそのワイナリーの関係者だったそう。

佐々木章太、なかなか素晴らしくて、なんとエレゾのスタッフ全員、それも子供含めて全員の旅費を会社が負担し、ワイナリー視察を行ったそう。「そこまでやってくれるのか!」とワイナリーの人達も感動し、すばらしい提携関係となっているそうだ。

そういうわけで、エレゾエスプリで出てくるワインはすべて自社製品というわけだ。ノンアルコールペアリングも可能だが、できるだけワインをいただくことをお薦めしたい。

「では、そろそろエレゾエスプリへお送りします。」

さて、いよいよだ!