やまけんの出張食い倒れ日記

やった、50mmでアオれた! TTArtisan Tilt 50mm f/1.4 ティルトレンズは安価にティルトを味わうことのできる、使い勝手のよいレンズ!!


中国のレンズメーカーであるTTArtizanは、各社のカメラマウント用に興味深いレンズを出してきた新興メーカーだ。完全に電子的な通信のない単焦点レンズが多く、フルマニュアルと割り切っているからこそだが、F1.4とか1.0とか、とにかく明るいレンズが出ている。しかも日本のカメラメーカーが出してくる純正レンズに比べると桁が違うくらいに安いものが多い。使っている人に聞いたら、レンズクオリティはまあそれなりだよ、と感想が返ってきたが、それでも日本メーカーが出さないレンズを意欲的に繰り出しているのが楽しい。

そのTTArtizanから「うそっ!」というレンズが出た。それがTilt 50mm F1.4だ。


 

このレンズはピント面をコントロールするティルト(アオリ)ができる機構を持った特殊なレンズだ。逆アオリという手法で、ミニチュアジオラマのような写真を撮っている作例がたくさんあるので、それをみれば特徴がわかるだろう。ただ、本来は逆アオリに使うよりも、通常方向のアオリを入れることの方が多い。

このレンズはキヤノンやソニー用だけではなく、LEICAやSIGMA、パナが集まるLマウント用や、そして僕が嬉しかったのはニコンZマウント用もラインナップしてくれているのだ! やったーーーーーー

なんでやったーーーーかというと、ティルト機構を持つZマウント用レンズは現在のところ存在しておらず、Zユーザーは一眼レフ時代のFマウント版のPC-Eレンズをマウントアダプター経由で使用するしかなかった。僕もいま愛用しているのがPC-Eマイクロニッコール85mmf2.8で、料理撮影はほぼこれでやっている。

ただ、85mmといえば中望遠だ。大きめの皿が一枚ならよいが、何皿かの料理を集合で撮影する場合、思い切り離れたところから、しかも脚立を建てて上から撮影しなければならないということがある。もうすこし標準域のレンズで、しかもティルトできるのが欲しいなと思っていた。

「ならば、一眼レフ用だけど、PC-Eマイクロニッコール45mmを買えばいいじゃないか」

と言われるかもしれないが、、、20万円以上するんすよ、、、いつかZで出るかも、という期待を持ちながらこれを買うというのもなぁ、と思って悩んでいた。

そこに出たのがこのレンズだ! しかもこのTTArtizanの日本側輸入代理店に、お世話になったM氏がいる!ということで、貸し出しをお願いすることにした。それが届きました。


TTArtizanのレンズ、意図的にクラシカルにデザインしていると思うんだけど、ムチャ格好いいんですよ、、、



しかもね、これなにげにf1.4と、プライムレンズ並みの明るさなんですよ、、、


でも、このレンズ最大の特徴はf値ではなくティルト機構である。

ティルトというのは別名あおりとも呼ばれるが、レンズの光軸を傾けることを言う。下記のように、二方向にあおることができる。



それで何ができるの?と思われるかもしれないが、そんな方はニコンのこちらをごらんあれ。

https://www.nikon-image.com/products/nikkor/fmount/pc_nikkor_19mm_f4e_ed/features01.html 

この二方向に合わせ、そもそもの土台の角度を0~360°に回すことができる。下記写真のレンズ根本の赤丸が、0°に合っている。


ここを回すことで、レンズの傾き方向を変えることができる。


これをロックするピンがあるのだが、ギュッと締めておかないと、気づかないうちに角度がついてしまう。僕は何度かやってしまいました。「あれっピントが合う範囲がおかしいな、、、」と。


さて、どんな風に使うのか。


普通になにもせず、f1.4の開放で撮影すると、こんな感じだ。


これ、房取りミディトマトの左列したから二番目の実のヘタにピントを合わせている。そこが一番シャキッとピントが合っていて、その前後がボケている様がわかるだろう。

ここでレンズを斜め下にティルトする。


すると、、、


トマトの緑色のヘタをみると、前から後ろまでピントが合っているようにみえるだろう (注:ヘタにしかピントが合ってないと気持悪い写真になるので、f2.0に絞りました)。

もしこのように深いピントを、絞りを大きく絞ることで得ようとすると、画質が低下したり、そもそも無理だったりということがある。そういうときにこのあおりレンズが必要になるのだ。

わかりやすいように連結画像をおいておこう。


なお、お断りを入れておくと、このトマトの一連の写真はトリミングしている。そいうのも、このレンズの欠点はあまり寄れないことで、最短撮影距離が50cmとなっている。通常に撮影するとこんな感じになり、ちょっとピント面がわかりづらい。


ちょっとわかりにくいでしょ、ということでトリミングしているので、本来的にはこんなスケール感だよということをご理解ください。ま、4500万画素あるZ9であればそれくらいのトリミングは屁でもありません。

さて、よりティルトのクセをみておきたいと思って、自然光で絞りによる変化を見られる撮影を試みた。以下の写真をクリックすると、2000ピクセル幅の大きい画像に飛びます。

※注↓左上の画像が「F1.8 開放」と書いているけど、f1.4の間違いです、ゴメン。

s-1n.jpg

どうだろうか、背の低いものはf8あたりでピントが合っているが、さすがに奥左の茶筒は背が高いので、この辺を合わせるにはf10(35mm版フルサイズにおいて)が必要だ。でも、ティルトなしでf10にしてもぜんぜん合わないはずで、もっと絞ると回折の影響で画質が落ちる。

※35mm版フルサイズより小さなセンサーサイズであるAPS-Cやマイクロフォーサーズのカメラで撮ると、もっと小さなF値でピントが来ると思います。マイクロフォーサーズならF5.6でOKでしょう。

f1.4は合焦点もちょっとボヤッとしていて、使うのはナンだなという感じ。f2以上にするとキリッと立ち、F5.6以上で周辺光量も解消してくるので、使える画質となる。F8以降は解像感もしっかりしていて、これなら料理集合に使っても大丈夫かな、という感じだ!

ということで、なかなか使えるんじゃないかな、と思えるレンズだ。なんつったって、ニコン純正は最低でも25万以上ですからねぇ、、、6倍以上の価格差を考えれば、一本持っておいて損はない。しかもこのレンズ、フルマニュアルなので小さくて軽い(450~470g)です。標準ズームに加えて開放f1.4のボケるレンズとして、そしてティルトできる変わり種レンズとしてレンズバッグに忍ばせておくと、表現が拡がるのではないだろうか。

なにより、、、Z9に着けると格好いい!!!


クラシカルな外見に、「おおっ?」という見た目になるアオリ機構。いい感じです。


ということで、ほんとは人物とか建築のポートレートを撮ったりして作例にすればいいのだろうけど、それはもう他の人がやるでしょう(笑)

本来的な使い方である「通常のレンズではピントを合わせきれない条件で、ピントを合わせることが出来るティルト機構」としてのレビューでした!